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明細書 :照明の分光分布特性および色材の分光反射特性の制御に基づく色彩変化による、照明光の効率的利用方法、並びに当該方法を利用した照明システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6025101号 (P6025101)
公開番号 特開2014-135195 (P2014-135195A)
登録日 平成28年10月21日(2016.10.21)
発行日 平成28年11月16日(2016.11.16)
公開日 平成26年7月24日(2014.7.24)
発明の名称または考案の名称 照明の分光分布特性および色材の分光反射特性の制御に基づく色彩変化による、照明光の効率的利用方法、並びに当該方法を利用した照明システム
国際特許分類 H05B  37/02        (2006.01)
G01J   3/46        (2006.01)
FI H05B 37/02 L
G01J 3/46 Z
請求項の数または発明の数 8
全頁数 16
出願番号 特願2013-002493 (P2013-002493)
出願日 平成25年1月10日(2013.1.10)
審査請求日 平成27年11月20日(2015.11.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
発明者または考案者 【氏名】坂東 敏博
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査官 【審査官】安食 泰秀
参考文献・文献 特開2000-156102(JP,A)
特開2009-259639(JP,A)
特開2011-206319(JP,A)
特開2009-295472(JP,A)
調査した分野 H05B 37/02
G01J 3/46
特許請求の範囲 【請求項1】
照明の分光分布特性および色材の分光反射特性の制御に基づく色彩変化による、照明光の効率的利用方法であって、
照明の分光分布特性および色材の分光反射特性のそれぞれを、横軸を波長、縦軸をそのスペクトル強度または分光反射率としてみたときに、互いに相似したいわゆる櫛歯形状となるように予め準備し、
前記照明の分光分布特性と前記色材の分光反射特性との位相差を制御することにより、前記照明の分光分布特性と前記色材の分光反射特性との積に、人間の目の色覚を担うセンサの分光感度を掛けることによって求まる人間の目のR、G、B各センサへの刺激値を制御し、そして、
このようにしてそれぞれがコントロールされたR、G、B三刺激値の混合比率を変化させることで、人間の目に映る色彩を変化させることを特徴とする、照明の分光分布特性および色材の分光反射特性の制御に基づく色彩変化による、照明光の効率的利用方法。
【請求項2】
前記照明の分光分布特性は、制御装置によって分光分布特性が制御されるスペクトル可変照明光源により形成されることを特徴とする請求項1に記載の照明光の効率的利用方法。
【請求項3】
前記スペクトル可変照明光源は、内蔵されているデジタルマイクロミラーデバイスが制御されることにより分光分布特性が制御され得る波長プログラマブル光源からなることを特徴とする請求項2に記載の照明光の効率的利用方法。
【請求項4】
前記色材の分光反射特性は、特別の色素に因らず物理的構造に基づく光学現象による発色や光沢を呈する構造色からなっていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の照明光の効率的利用方法。
【請求項5】
前記照明の分光分布特性と前記色材の分光反射特性との位相差を制御する手法として、前記照明の分光分布特性の位相を制御する手法が選ばれることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の照明光の効率的利用方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の照明光の効率的利用方法を利用した照明システムであって、
観測者の目に映る対象となる色材と、
前記色材に光を照射する光源であって、時間的に当該光源の分光分布特性を変化させ得るスペクトル可変照明光源と、
前記スペクトル可変照明光源に接続され、予め内部メモリ中に格納された制御プログラムまたは外部指令に基づいて時間的に前記スペクトル可変照明光源の分光分布特性を変化させる指令を送出して前記スペクトル可変照明光源を制御する制御装置と、
を備え、
前記スペクトル可変照明光源の分光分布特性および前記色材の分光反射特性のそれぞれは、横軸を波長、縦軸をそのスペクトル強度または分光反射率としてみたときに、互いに相似したいわゆる櫛歯形状からなっており、
前記スペクトル可変照明光源の分光分布特性と前記色材の分光反射特性との位相差が時間的に制御されることにより、前記スペクトル可変照明光源の分光分布特性と前記色材の分光反射特性との積に、さらに人間の目の色覚を担うセンサの分光感度を掛けることによって求まる人間の目のR、G、B各センサへの刺激値が制御され、このようにしてそれぞれがコントロールされたR、G、B三刺激値の混合比率を変化させることで、前記観測者の目に映る前記色材の色彩を変化させ得ることを特徴とする照明システム。
【請求項7】
前記スペクトル可変照明光源は、内蔵されているデジタルマイクロミラーデバイスが制御されることにより分光分布特性が制御され得る波長プログラマブル光源からなることを特徴とする請求項6に記載の照明システム。
【請求項8】
前記色材の分光反射特性は、特別の色素に因らず物理的構造に基づく光学現象による発色や光沢を呈する構造色からなっていることを特徴とする請求項6または7に記載の照明システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、照明の分光分布特性および色材の分光反射特性の制御に基づく色彩変化による、照明光の効率的利用方法、並びに当該方法を利用した照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
先に本願発明者は、
(1)人間が見える色というのは色材と照明の組み合わせであって、Aを照明の分光分布(光源データより得られる)、Bを色材の分光反射率(反射特性。逆に言えば透過率)とすると、人間による色の見え方はA×Bに応じて変化すること(図7参照)、そして、
(2)LED照明は、
i) 分光分布の幅が狭いことと、
ii) 様々な分光分布のものを得ることができること、
という特徴があることを認識していること、を発想の根拠に、照明と色材の組み合わせを工夫することにより、例えば、照明変化により色彩が変化する色材と変化しない色材の組み合わせを作り、照明のコントロールひとつで模様を浮き上がらせたり消したり、或いは模様を変化させたりできる「照明によるパターン変化の演出法」を発明、提案している(特許文献1参照)。
【0003】
これに引き続き、本願発明者は、例えば、宝飾品のディスプレイにあって、上記A×Bの考え方を適用すると、Aは同様に照明の分光分布であるが、Bは対象物である宝飾品の分光反射率(反射特性)と考えることができることを見い出し、そして、そのような考え方が適用できる余地があるとすれば、Aを刻々と変化させる手法によれば、現状のように観る者の視点の動きを伴わずとも、宝飾品が魅力的に見える要因ともなっている明度分布の急激な変化によるきらめき感や、プリズムの原理による虹色への分光の態様が刻々と変化することに依る宝飾品としての魅力的な色彩美を得ることが可能なディスプレイ方法および装置を提供できる可能性があることを見い出し、スペクトル可変照明光を用いた宝飾品のディスプレイ方法および装置を発明、提案している(特許文献2参照)。
この特許文献2に係る発明は、いわば、照明の分光分布特性の制御に基づく色彩変化を用いた発明に該当する。
【0004】
上記特許文献2に係る発明においては、照明光源としては、スペクトル成分強度を時間的に変化させることが可能なもの、例えば、ピーク波長の異なる多数のLEDの輝度をコンピュータ制御するものや、波長プログラマブル光源を用いれば良い旨、開示されている。
一実施形態においても、そのようなスペクトル可変照明光源として、内蔵されているデジタルマイクロミラーデバイス(DMD; Digital Micromirror Device)が制御されることにより光の色や分光分布が制御され得る波長プログラマブル光源が例示されている。
この装置では、集光されたXeランプ光源からの光がDMDに投射される。そして、DMDの個々のミラーがオン状態に傾いている時の光が投影レンズで拡大され、外部出力される。一方、DMDミラーがオフ状態に傾いているときの光は投影レンズに入らず、捨てられる。
【0005】
このようなスペクトル可変照明光源では、ミラーをオンにしている時間とオフにしている時間の比率で外部出力の明るさが制御される。すなわち、100%オン状態だと最大輝度となるし、50%オン、50%オフだと半分の輝度になる。
またそのようなスペクトル可変照明光源では、カラー外部出力を得るために、一般的に、光源とDMDの間に高速で回転するカラーホイールを配置し、R、G、Bの光を時分割でDMDに当てる手法(単板方式)を採っている。例えば赤色を投影したい場合には赤の光がDMDに当たっている瞬間だけミラーをオン状態にする。
なお、DMDを3個用い、光源もR、G、Bの3つを用意する手法もある。
【0006】
上記DMDを構成するミラーは一般にマイクロ秒単位でオン、オフを変化させることができるため、上記特許文献2に係る発明においてはこの特性を生かして時々刻々とそのスペクトル成分を変化させ得るスペクトル可変照明光源を実現している。なお、上記特許文献2に係る発明において用いられた波長プログラマブル光源では、例えば1nm毎の波長設定が可能な程度の高精度が実現されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2009-295472号公報
【特許文献2】特開2011-206319号公報
【特許文献3】特開平6-17349号公報
【特許文献4】特開平7-34324号公報
【特許文献5】特開2010-85686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、特許文献2に係る発明で用いられた、照明の分光分布特性の制御に基づく色彩変化における照明光の波長選択では、結果として狭い範囲の波長だけが用いられる構成、具体的には、一の色に対して当該色の波長範囲に含まれる一の極小領域における波長だけが用いられ、他の領域における波長は用いられていない構成となっていた。
しかしながら、そのような構成では、
i) 結果として光源のエネルギーの大半を無駄にする非効率な面があった。
また、上記宝飾品等とは異なる通常の一般色材では、分光反射率変化は比較的なだらかになるが、一の色の波長範囲内で分光反射率が高いところと低いところとが存在するため、波長(極小領域における波長)の選択の仕方によって、色材の色の見え方が変化してしまうことがあった。例えば、分光反射率が高い領域内の波長が選択された場合と、分光反射率が低い領域内の波長が選択された場合とで、色の見え方が変化してしまうことがあった。
すなわち、上記照明の分光分布特性の制御に基づく色彩変化における照明光の波長選択では、
ii) 通常の一般色材において思い通りの色の見せ方ができない、
と言った問題点があった。
【0009】
したがって本発明は、上記課題を解決し、照明光の効率的利用が可能であると共に、分光反射率変化がなだらかな一般の色材の色彩変化を抑えることが可能な、照明の分光分布特性および色材の分光反射特性の制御に基づく色彩変化による、照明光の効率的利用方法、並びに当該方法を利用した照明システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく種々検討を行った結果、本願発明者は、
i) 照明の分光分布特性(上述のAに相当)および色材の分光反射特性(上述のBに相当)のそれぞれを、横軸を波長、縦軸をそのスペクトル強度または分光反射率としてみたときのグラフにおいて、互いに相似したいわゆる櫛歯形状となるようにし、その前提の下で、
ii) 上記照明の分光分布特性および色材の分光反射特性それぞれの山と谷の位置を合わせるかずらせるか、すなわち両者の位相を合わせるか否か、或いは両者の位相が一致する比率を制御することにより、上記A×Bに応じて変化する人間による色の見え方をコントロール可能なこと、
iii) 具体的には、上記A×Bに、さらに人間の目の色覚を担うセンサの分光感度(H)を掛けることによって求まる人間の目のR、G、B各センサへの刺激値(T。以下「三刺激値」という)をコントロール可能なこと、そして、このようにしてそれぞれがコントロールされたR、G、B三刺激値の混合比率を変化させることで、人間の目に映る色彩を変化させることが可能なことを見い出し、本発明を完成した。
【0011】
上記課題を解決可能な本発明に係る照明の分光分布特性および色材の分光反射特性の制御に基づく色彩変化による、照明光の効率的利用方法は、(1)照明の分光分布特性および色材の分光反射特性の制御に基づく色彩変化による、照明光の効率的利用方法であって、
照明の分光分布特性および色材の分光反射特性のそれぞれを、横軸を波長、縦軸をそのスペクトル強度または分光反射率としてみたときに、互いに相似したいわゆる櫛歯形状となるように予め準備し、
前記照明の分光分布特性と前記色材の分光反射特性との位相差を制御することにより、前記照明の分光分布特性と前記色材の分光反射特性との積に、人間の目の色覚を担うセンサの分光感度を掛けることによって求まる人間の目のR、G、B各センサへの刺激値を制御し、そして、
このようにしてそれぞれがコントロールされたR、G、B三刺激値の混合比率を変化させることで、人間の目に映る色彩を変化させることを特徴とするものである。
【0012】
このとき、(2)前記照明の分光分布特性は、制御装置によって分光分布特性が制御されるスペクトル可変照明光源により形成されることが好ましい。
【0013】
また、(3)前記スペクトル可変照明光源は、内蔵されているデジタルマイクロミラーデバイスが制御されることにより分光分布特性が制御され得る波長プログラマブル光源からなることが好ましい。
【0014】
また、(4)前記色材の分光反射特性は、特別の色素に因らず物理的構造に基づく光学現象による発色や光沢を呈する構造色からなっていることが好ましい。
【0015】
また、(5)前記照明の分光分布特性と前記色材の分光反射特性との位相差を制御する手法として、前記照明の分光分布特性の位相を制御する手法が選ばれることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明に係る照明システムは、(6)前記(1)~(5)のいずれかに記載の照明光の効率的利用方法を利用した照明システムであって、
観測者の目に映る対象となる色材と、
前記色材に光を照射する光源であって、時間的に当該光源の分光分布特性を変化させ得るスペクトル可変照明光源と、
前記スペクトル可変照明光源に接続され、予め内部メモリ中に格納された制御プログラムまたは外部指令に基づいて時間的に前記スペクトル可変照明光源の分光分布特性を変化させる指令を送出して前記スペクトル可変照明光源を制御する制御装置と、
を備え、
前記スペクトル可変照明光源の分光分布特性および前記色材の分光反射特性のそれぞれは、横軸を波長、縦軸をそのスペクトル強度または分光反射率としてみたときに、互いに相似したいわゆる櫛歯形状からなっており、
前記スペクトル可変照明光源の分光分布特性と前記色材の分光反射特性との位相差が時間的に制御されることにより、前記スペクトル可変照明光源の分光分布特性と前記色材の分光反射特性との積に、さらに人間の目の色覚を担うセンサの分光感度を掛けることによって求まる人間の目のR、G、B各センサへの刺激値が制御され、このようにしてそれぞれがコントロールされたR、G、B三刺激値の混合比率を変化させることで、前記観測者の目に映る前記色材の色彩を変化させ得ることを特徴とするものである。
【0017】
なお、(6)に係る照明システムにおいて、(7)前記スペクトル可変照明光源は、内蔵されているデジタルマイクロミラーデバイスが制御されることにより分光分布特性が制御され得る波長プログラマブル光源からなることが好ましい。
【0018】
同様に、(8)前記色材の分光反射特性は、特別の色素に因らず物理的構造に基づく光学現象による発色や光沢を呈する構造色からなっていることが好ましい。
【0019】
なお、上記「位相」または「位相差」なる表現は、照明の分光分布特性および色材の分光反射特性のそれぞれが、横軸を波長、縦軸をそのスペクトル強度または分光反射率としてみたときに互いに相似したいわゆる櫛歯形状となっていることを前提に、両者の山と谷とのずれの多寡を表現する目的で使用されたものである。
【0020】
本明細書で「スペクトル可変照明光源」とは、任意の分光分布特性を複数通り、また時々刻々瞬時に作り出すことが可能な光源一般を指し示すものとする。
【0021】
また、本明細書で「虹色」とは、気象現象における大気光学現象同様、赤から紫までの光のスペクトルが並んだ光の色のことを指し示すものとする。
光源からの光が宝飾品である対象物中を通過する際に対象物内のカットなどによって屈折、反射されるときに、対象物自体がプリズムの役割をするため、いわゆるプリズムによる白色光の色分解同様、光が分解(分光)されて観測者に複数色(一般に日本では赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の七色とされる。ただ厳密な区分はこれに限定されない)が並んで見える。
要するに、上記した並んで見える複数からなる色のことを本明細書では虹色というものとする。
【0022】
本明細書で「構造色」とは、光の波長或いはそれ以下の微細構造において光の干渉や回折、散乱が起こることにより物体が発色すなわち色付いて見える現象を指し示すものとする。この構造色は、光の波長程度の規則正しい微細構造や回折格子構造による干渉色や遊色現象、薄膜干渉や多層膜干渉による発色など、特別の色素に因らず物理的構造に基づく光学現象による発色や光沢のことをいうものである。構造色を呈する一例としては、コンパクトディスクやシャボン玉などが挙げられる。コンパクトディスクやシャボン玉には、それ自身には色はついていないが、その微細な構造によって光が干渉するため、色づいて見える。構造色の詳細な発色原理その他については、後段において詳述する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、いわゆる櫛歯形状の広い波長範囲の照明光を用いるので、照明光の効率的利用が可能になると共に、分光反射率変化がなだらかな一般の色材の色彩変化を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る照明光の効率的利用方法の基本的な考え方を示す図である。
【図2】図1の考え方の補足説明に係る図である。
【図3】色彩測定における三刺激値の求め方の原理を示す図である。
【図4】色彩測定における三刺激値の求め方の原理を示す別の図である。
【図5】構造色の発色原理の一部を例示する図である。
【図6】本発明に係る照明システムの概要を示す図である。
【図7】人間による色の見え方の基本原理につき示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面および次の実施例に基づき、詳細に説明する。

【0026】
図1に、本発明に係る照明光の効率的利用方法の基本的な考え方を示す。
図1(a)および(b)にその基本原理を示す通り、本発明に係る照明の分光分布特性および色材の分光反射特性の制御に基づく色彩変化による、照明光の効率的利用方法は、
i) 照明の分光分布特性Aおよび色材の分光反射特性Bのそれぞれを、横軸を波長、縦軸をそのスペクトル強度または分光反射率としてみたときに、互いに相似したいわゆる櫛歯形状となるように予め準備し、
ii) 照明の分光分布特性Aと色材の分光反射特性Bとの位相差を制御することにより、照明の分光分布特性Aと色材の分光反射特性Bとの積A×Bに、さらに人間の目の色覚を担うセンサ(錐体)の分光感度を掛けることによって求まる人間の目のR、G、B各センサへの刺激値を制御し、そして、
iii) このようにしてそれぞれがコントロールされたR、G、B三刺激値の混合比率を変化させることで、人間の目に映る色彩を変化させることを特徴とするものである。
なお、照明の分光分布特性Aおよび色材の分光反射特性Bに関しては、後段にて詳細に説明する。

【0027】
上記の通り、特許文献2に係る発明で用いられた、照明の分光分布特性の制御に基づく色彩変化における照明光の波長選択では、結果として狭い範囲の波長だけが用いられる構成、具体的には、一の色に対して当該色の波長範囲に含まれる一の極小領域(例えば、図1(1)の1つの山に相当する領域)における波長だけが用いられる構成となっていたため、結果として光源のエネルギーの大半を無駄にする非効率な面があった。

【0028】
しかしながら、本発明によれば、図1(1)に示す通り、照明の分光分布特性を少なくとも一の色の波長範囲全体にわたる櫛歯形状とすることで、照明光の効率的利用が可能となるほか、後記の通り、分光反射率変化がなだらかな一般の色材の色彩変化を抑えることが可能となる。

【0029】
図2は、図1の考え方の補足説明に係る図である。図1は、本発明に係る照明光の効率的利用方法の基本的な考え方を示すものであり、照明の分光分布特性Aおよび色材の分光反射特性Bのそれぞれを、横軸を波長、縦軸をそのスペクトル強度または分光反射率としてみたときに、少なくとも一の色の波長範囲において互いに相似したいわゆる櫛歯形状とすることを示すものである。すなわち、基本的な考え方が踏襲されていれば、照明の分光分布特性Aおよび色材の分光反射特性Bとしては、必ずしも図1に示す程度にまでエッジがシャープなものとする必要は無く、例えば図2に示すような程度であっても構わない。

【0030】
図2の(1)は、図1に示す照明の分光分布特性Aの一部を取り出したものである。
また、図2の(2)は、図1に示す色材の分光反射特性Bの一部を取り出した図であり、細線で描かれた山は図1(a)に示すように照明の分光分布特性Aおよび色材の分光反射特性Bの山と谷、すなわち両者の位相がずれた場合を示している一方、太線で描かれた山は図1(b)に示すように照明の分光分布特性Aおよび色材の分光反射特性Bの位相が略一致した場合を示している。
そして、図2の(3)は、図2の(1)、(2)に示された照明の分光分布特性Aの一部と色材の分光反射特性Bの一部の積の結果を示すものであり、細線で描かれた山は図1(a)に示すように照明の分光分布特性Aおよび色材の分光反射特性Bの位相がずれた場合を示している一方、太線で描かれた山は図1(b)に示すように照明の分光分布特性Aおよび色材の分光反射特性Bの位相が略一致した場合を示している。

【0031】
図2の(3)からも明らかな通り、照明の分光分布特性Aおよび色材の分光反射特性Bの位相がずれた場合(細線で描かれた図2の(3)の山参照)には、色材から反射される光の分光分布であるA×Bの値は、上記位相のずれの度合いに応じて低いものとなる一方、照明の分光分布特性Aおよび色材の分光反射特性Bの位相が略一致した場合(太線で描かれた図2の(3)の山参照)には、色材から反射される光の分光分布であるA×Bの値は位相がずれている場合と比較して大きくなる。
このように、本発明の基本的な考え方が踏襲されていれば、照明の分光分布特性Aおよび色材の分光反射特性Bとしては、必ずしも図1に示す程度にまでエッジがシャープなものでなくとも構わない。
また、照明の分光分布特性Aおよび色材の分光反射特性Bにおける山の幅(谷の幅)は、必ずしも波長範囲全体にわたって同一である必要はなく、例えば、照明の分光分布特性Aおよび色材の分光反射特性Bにおける山の幅を、長波長側にいくにつれて広くしてもよい。

【0032】
以上の通り、本発明に係る照明光の効率的利用方法によれば、色材から反射される光の分光分布である上記A×Bの値に応じて変化する人間による色の見え方をコントロール可能なことが分かる。
より具体的には、本発明によれば、次に図3および図4を用いて説明する通り、上記A×Bに、さらに人間の目の色覚を担うセンサの分光感度Hを掛けることによって求まる人間の目のR、G、B各センサへの刺激値Tをコントロールすることができ、そして、このようにしてそれぞれがコントロールされたR、G、B三刺激値の混合比率を変化させることで、人間の目に映る色彩を変化させることが可能となる。

【0033】
[色彩測定における三刺激値の求め方の原理について]
次に、確認を含めて、図3および図4を用いて、色彩測定における三刺激値の求め方の原理につき説明する。
図3および図4はそれぞれ、色彩測定における三刺激値の求め方の原理を示す図である。

【0034】
図3は、色彩測定における三刺激値の求め方の原理を示す図である。
一般的に、例えば標準の光D65、Aや蛍光ランプF6をはじめとする照明10の分光分布Aと、色材20(トマト21とキュウリ22)の分光反射特性Bとの積A×Bより、色材20から反射される光の分光分布が求まる。

【0035】
ここで、人間の目の色覚を担うセンサの分光感度、すなわち人間の目のR、G、B各センサの分光感度Hは、個人差はあるにせよ基本的にR、G、B各センサの分光感度特性が時間的に変化しないものと取り扱うことができる。

【0036】
それ故、人間による色の見え方は、色材20から反射される光の分光分布である上記A×Bの値に応じて変化することが分かる。換言すれば、上記の関係から、A×Bの値を変化させることにより、人間による色の見え方をコントロール可能であることが理解される。

【0037】
そして、上記A×Bに、さらに人間の目の色覚を担うセンサの分光感度Hを掛けることによって、人間の目のR、G、B各センサへの刺激値Tを得ることができる。

【0038】
なお、各種表色系の色彩値、つまり、最終的に人間の目に映る色彩は、このR、G、B三刺激値Tの混合比率によって決まる。
通常、身の回りで見えている色の多くのものは、上記したトマト21やキュウリ22のように、赤い色素や緑の色素を有しており、光を吸収・反射する。人間の目は、反射してくる光を水晶体で屈折させて網膜に像を映し、網膜に映った像により色を認識する。

【0039】
特許文献1或いは特許文献2を含む従来技術の下では、分光分布特性が櫛歯形状ではない照明光10を物理的に、または選択される波長或いはその範囲そのものを異ならせることを通じて、R、G、B三刺激値Tの混合比率をコントロールし、人間の目に映る色彩を変化させていた。
他方、本発明に係る照明光の効率的利用方法では、それぞれ横軸を波長、縦軸をそのスペクトル強度または分光反射率としてみたときに、互いに相似したいわゆる櫛歯形状となるように予め準備した照明の分光分布特性Aと色材の分光反射特性Bとの位相差を制御することを通じて、R、G、B三刺激値Tの混合比率をコントロールするので、人間の目に映る色彩を変化させる構成、原理が従来技術とは基本的に相違していることが理解される。

【0040】
図4は、図3で示した色彩測定における三刺激値の求め方の原理を補足する図である。
図4上段および中段の図に示される通り、観測者Oの目のR、G、B各センサへの刺激値Tは、照明10の分光分布Aと色材20の分光反射特性Bとの積A×Bより求まる色材20から反射される光の分光分布に、さらに観測者Oの目の色覚を担うセンサの分光感度Hを掛けることによって得られる。

【0041】
そして、図4下段の図に示される通り、最終的に観測者Oの目に映る色彩は、このR、G、B三刺激値TのR、G、Bそれぞれの構成要素T-1、T-2、T-3の混合比率、すなわち、T-1、T-2、T-3の図中にそれぞれ斜線または網掛けで示されたR成分、G成分およびB成分の面積の比率によって決まる。

【0042】
[照明の分光分布特性について]
図1に示す通り、本発明において照明の分光反射特性Aは、横軸を波長、縦軸をそのスペクトル強度としたとき、次に説明する色材の分光反射特性Bと互いに相似したいわゆる櫛歯形状からなっていることを要するところ、本実施形態では、照明の分光反射特性Aは、制御装置によって分光分布特性が制御されるスペクトル可変照明光源により形成されるものとした。

【0043】
より具体的には、本実施形態では、スペクトル可変照明光源として、内蔵されているデジタルマイクロミラーデバイスが制御されることにより光の色や分光分布が制御され得る波長プログラマブル光源を用いて、照明の分光反射特性Aの形成を行った。
公知の通り、波長プログラマブル光源は光・デジタル処理技術を利用したものであり、プログラムにより例えば1nm毎の波長設定を行うといった分光分布の高精度な可変制御が可能であると共に、高輝度かつ高分解能スペクトルを出力することが可能な、高い柔軟性とスピードとを備えた装置である。

【0044】
なお、本実施形態において使用される波長プログラマブル光源は、特許文献2において使用されたものとハードウェア的な大差は無いものの、上記の通り、これより出力させる照明の分光反射特性Aは、本実施形態と特許文献2とでは全く相違しており、本発明に係る照明光の効率的利用方法並びに当該方法を利用した照明システムの構成要件としてみたときには、得られる作用効果を勘案しても取扱上、基本的に相違するものであることは明らかである。

【0045】
[色材の分光反射特性について]
図1に示す通り、本発明において色材の分光反射特性Bは、横軸を波長、縦軸を分光反射率としたとき、先に説明した照明の分光分布特性Aと互いに相似したいわゆる櫛歯形状からなっていることを要するところ、本実施形態では、色材の分光反射特性Bは、特別の色素に因らず物理的構造に基づく光学現象による発色や光沢を呈する構造色からなるものとした。

【0046】
構造色自体は公知の通りで、人間が通常視覚する色素とは異なる発色であり、構造色を持っている物体自体に色は無く、光の干渉や波長などが関係して色付いて見えるものである。具体的な発色原理としては、図5に代表的なものを一部例示する通り、薄膜による干渉(図5(a)参照)、多層膜による干渉(図5(b)参照)、回折による干渉(図5(c)参照)、微細な溝・突起などによる干渉(図5(d)参照)のほか、微粒子などによる散乱などが挙げられる。
まず図5(a)に、最もシンプルな、薄膜による干渉を通じて構造色を呈する様子を示す。光の波長程度の薄い膜(薄膜)では、膜の上面で反射する光と下面で反射する光が干渉するため、膜の厚さに対応した波長の光(波長光)が色付いて見える。具体的には、例えば空気中に図5(a)のような薄い膜があるとき、薄膜の表面で反射する光と、薄膜に入射し、膜と空気の境界で反射して表面に戻る光がある。この2つの光が強め合うときに、その光の色が強調されて人間の目に入ってくる。シャボン玉や油膜に色が付いて見えるのは、このような薄膜干渉に起因している。シャボンや油膜の厚さに応じて、様々に色付いて見える。
また図5(b)に、多層膜による干渉を通じて構造色を呈する様子を示す。図5(b)に示す通り、これは、薄い膜を何層も重ねたような構造による光の干渉である。それぞれの膜で反射された光が互いに干渉しあい、その結果、色付いて見える。したがって、膜厚の組み合わせ、各層の枚数の組み合わせによって干渉の仕方が変化し、様々な色彩が現れる。多層膜による干渉の一例を挙げれば、アワビ等の貝殻の内側は、真珠母と呼ばれる炭酸カルシウムの薄膜が層構造を形成しており、1つ1つの層から反射される光が干渉することで、様々な色合いが見られる。

【0047】
図5(c)に、回折による干渉を通じて構造色を呈する様子を示す。
これは、次の図5(d)に係る微細な溝・突起などによる干渉と相通じるものであり、規則的に並んだ物体によって、波長に依存した方向性のある光の回折を行うことで色付いて見えるものである。回折による干渉を通じて構造色を呈する例としては、次の図5(d)に係る微細な溝・突起などによる干渉の項で説明するコンパクトディスクやDVD、モルフォチョウの翅のほか、クジャク、カワセミといった鳥類などが挙げられる。

【0048】
そして図5(d)に、微細な溝・突起などによる干渉を通じて構造色を呈する様子を示す。
コンパクトディスクやDVDでは、アルミ薄膜表面に刻まれた凹凸によってデジタル情報を記録している。この凹凸が回折格子の様に光を干渉させるため、記録面側は虹色に見える。
また、クジャク、カワセミといった鳥類では、羽毛にある微細な構造によって、鮮やかな色彩が現れる。

【0049】
同様に、モルフォチョウの翅は、鮮やかな青色をしていることで知られているが、これは鱗粉表面に刻まれた格子状の構造による構造色である。この構造は、青色の光の波長の丁度半分にあたる200nm間隔に並んでおり、干渉により青色の光のみが反射される。

【0050】
なお、この構造を、集束イオンビーム装置を用いてシリコン基板上に作り出すことで、モルフォチョウの青色を再現した例が、近年における構造色の産業上の一応用例として存在する。
その他、光通信分野では誘電率の異なる物質を交互に積層したフォトニック結晶や、ナノ構造体の研究が盛んであり、構造色を利用した発明として、特許文献3では、モルフォチョウの鱗粉の構成を参考に、高屈折率層と低屈折率層(空気層)が交互に複数段積層され、高屈折率層の行間に柱が形成された棚構造体の干渉作用を利用した提案がなされており、安定した光の干渉作用を提供するための高屈折率層の幅と柱の幅の関係や、高屈折率層と低屈折率層の厚みの条件が述べられている。
また、特許文献3に記載の発明では、高屈折率層の幅を変化させることにより棚構造体をツリー形状に形成して、回折格子としての効果が得られる旨の開示もなされている。

【0051】
さらに、特許文献4では、屈折率の異なるポリエステルとナイロンの二つのポリマーを、交互に61層も積み重ねた積層部と、それを覆うポリエステル保護層の二重構造により、美しい色の繊維が実現されている。

【0052】
或いは、特許文献5においては、構造色を広面積において可変制御することが可能な可変構造色形成部材およびその製造方法、並びに当該可変構造色形成部材が外装材として組み込まれ、外装材の色を可変とされた電気機器に係る発明が開示されている。

【0053】
このように、構造色を意図的に工業上実現させることは可能であり、そのようにして実現させた構造色を適用または適宜応用することによって、本発明における色材の分光反射特性Bとして求められる図1に示すような、横軸を波長、縦軸を分光反射率としたとき、先に説明した照明の分光分布特性Aと互いに相似したいわゆる櫛歯形状からなっている色材の分光反射特性Bを実現することは可能である。
【実施例1】
【0054】
次に、上で説明した本発明に係る照明光の効率的利用方法を利用した照明システムにつき説明する。図6は、本発明に係る照明システムの一例を示す図である。
本実施例に係る照明システム100は、スペクトル可変照明光源1およびそれを制御する制御装置2を備えている。制御装置2はスペクトル可変照明光源1に接続されている。
【実施例1】
【0055】
制御装置2は、予め内部メモリ3中に格納された制御プログラムまたは外部指令Cに基づいて時々刻々とスペクトル成分を変化させることによって、横軸を波長、縦軸をそのスペクトル強度とした照明光の分光分布Aの位相を変化させる指令を送出してスペクトル可変照明光源1を制御する。なお外部指令Cは、制御装置2に接続されたコンピュータ4より送出され得るものである。
図6に示す通り、本実施例では、制御装置2は、内部の演算装置(DSP; Digital Signal Processor)における信号制御、演算を通して、例えば、予め内部メモリ3中に格納された制御プログラムに基づいて時間的に各波長ごとのスペクトル成分を変化させる指令を送出して、例えば一定周期でスペクトル可変照明光源1から出力される照明光の分光分布Aの位相を刻々と変化させ、それによって、当該照明光の分光分布Aと、照明光の分光分布Aと互いに相似した、横軸を波長、縦軸を分光反射率としてみたときにいわゆる櫛歯形状となるように準備された色材200の分光反射特性Bとの位相差を制御している。
【実施例1】
【0056】
本実施例では、スペクトル可変照明光源1から出力される照明光は、少なくとも観測者Oからは例えば白色など、一定の色に見えるものとなっている。
しかしながら、この照明光は、見た目は一定の色に見えるまま、実際にはその分光分布Aの位相を時々刻々と変化させて照明の分光分布特性Aと色材の分光反射特性Bとの位相差を制御するべく、制御装置2によって時々刻々と各波長ごとのスペクトル強度が制御されている。すなわち、本実施例では、スペクトル可変照明光源1および制御装置2の相互作用により、時間変化に応じて厳密な意味で「照明」が変えられている。
ただ、図1(a)および(b)に示される通り、照明の分光分布特性Aの位相は、色材200の分光反射特性Bと、山と谷の位置が完全にずれる(a)か一致する(b)かの範囲で制御される程度であり、実際には観測者Oの目には、スペクトル可変照明光源1から出力される照明光は見た目は一定の色のままで、しかも光が揺れているような感覚を全く与えない点は実用上、照明システムとして見たとき有用である。
【実施例1】
【0057】
すなわち、本実施例においては、制御装置2を適切に作用させることにより、波長プログラマブル光源を、その出力光が一見同じ色に見えるまま、実際には制御装置2により時々刻々と各波長ごとのスペクトル強度を制御することにより分光分布Aの位相を変化させ、それによって照明の分光分布特性Aと色材200の分光反射特性Bとの位相差を制御することが可能なスペクトル可変照明光源1として適用している。
【実施例1】
【0058】
本実施例では、スペクトル可変照明光源1より出力される光を分光して、横軸を波長、縦軸をそのスペクトル強度とした照明光の分光分布Aを切り出してみたとき、時間軸上で別のところにおける分光分布Aは同一ではなく、その位相が相違している。本実施例は、かかるスペクトル可変照明光源1の特性を利用して構成されている。
【実施例1】
【0059】
本実施例に係る照明システム100は、照明光の分光分布Aと、例えば構造色Sを呈する色材200に現れるような、横軸を波長、縦軸を分光反射率としてみたときに当該照明光の分光分布Aと互いに相似したいわゆる櫛歯形状からなっている分光反射率(反射特性)Bとの位相差を、照明光の分光分布Aの位相を制御する、すなわち、上記のように観測者Oが直截看取することのできない程度に照明光の分光分布Aを刻々と変化させることを通じて、色材200から反射される光の分光分布A×Bを変化させることができること、又それにより、上記A×Bに応じて変化する観測者Oによる色の見え方をコントロール可能という知見を得るに至ったことが、その根底に流れる思想、本質である。
【実施例1】
【0060】
本実施例に係る照明システム100によれば、いわゆる櫛歯形状の広い波長範囲の照明光を用いるので、照明光の効率的利用が可能になる。
【実施例1】
【0061】
さらに、本実施例に係る照明システム100によれば、分光反射率変化がなだらかな一般の色材の色彩変化を抑えることが可能となる。
なお、この特性を利用して、例えば色材を、本実施例において挙げられた、照明の分光分布特性Aと互いに相似したいわゆる櫛歯形状からなっている分光反射特性Bをもつ色材200と、図3および図4を用いて説明したように通常、身の回りで見えている色素を有する一般の色材20との組み合わせからなるものとすることにより、本実施例に係る照明システム100の下では、観測者Oによる色の見え方が変化する領域(色材200の領域)と色材の色彩変化が起こらない領域(色材20の領域)とを創り出すことが可能である。本発明は、こういった工夫次第で、例えば舞台装置やショールームに応用することが可能である。
【実施例1】
【0062】
[産業上の利用可能性]
このように、本発明に係る照明光の効率的利用方法は、照明の分光分布特性Aおよび色材の分光反射特性Bのそれぞれを、横軸を波長、縦軸をそのスペクトル強度または分光反射率としてみたときに、互いに相似したいわゆる櫛歯形状となるように予め準備し、その上で、これら照明の分光分布特性Aと色材の分光反射特性Bとの位相差を制御することにより、前記照明の分光分布特性Aと前記色材の分光反射特性Bとの積に、さらに人間の目の色覚を担うセンサの分光感度Hを掛けることによって求まる人間の目のR、G、B各センサへの刺激値Tを制御するという発想を源とするものである。
ここで、色材の分光反射特性Bについては一例として、特別の色素に因らず物理的構造に基づく光学現象による発色や光沢を呈する構造色からなっていることが挙げられている点からも認められる通り、本発明は、光の波長以下の規則構造を人工的につくることで光を自由に扱うことを企図しており、光を中心としたフォトニクスに係るものとなっている。
本発明は、上記の作用効果を奏することからも明らかな通り、十分に高い産業上の利用可能性を有するものである。
【実施例1】
【0063】
[変形例]
以上、本発明につき一実施形態に基づき詳細に説明したが、本発明は上記構成に何ら限定されず、種々の変形が可能である。
上記実施形態においてスペクトル可変照明光源は、内蔵されているデジタルマイクロミラーデバイスが制御されることにより照明光の分光分布およびその位相が制御され得る波長プログラマブル光源からなるものとしたが、これに限定されず、例えば制御装置により夫々の輝度が制御されることによって照明光の分光分布およびその位相が制御され得るよう構成された、ピーク波長の異なる複数のLEDの組み合わせからなるものであっても良い。
【実施例1】
【0064】
また、本実施例では、スペクトル可変照明光源1から出力される照明光はスペクトル成分および/または位相を時間的に変化させた白色光からなるものとしたが、スペクトル可変照明光源からの出力光については何ら白色に限定されない。
さらに、照明光を白色光とした場合であっても、照明光の分光分布特性をR、G、Bすべての波長範囲において櫛歯形状とする必要はなく、少なくとも色材の分光反射特性が櫛歯形状となっている色の波長範囲において櫛歯形状とすればよい。
【実施例1】
【0065】
同様に、本実施形態では横軸を波長、縦軸を分光反射率としたとき、照明の分光分布特性と互いに相似したいわゆる櫛歯形状からなっているものとした色材の分光反射特性につき、特別の色素に因らず物理的構造に基づく光学現象による発色や光沢を呈する構造色からなっている旨例示した。
しかしながら、色材の分光反射特性については、構造色からなっている必然性は無く、横軸を波長、縦軸を分光反射率としたとき、照明の分光分布特性と互いに相似したいわゆる櫛歯形状からなるものと出来れば、そのような分光反射特性を有する色材を用いることによっても本発明の照明光の効率的利用方法を用い、また当該方法を利用した照明システムを実現することは可能である。
【実施例1】
【0066】
以上の通り本発明は、照明光の効率的利用が可能であると共に、分光反射率変化がなだらかな一般の色材の色彩変化を抑えることが可能な、照明の分光分布特性および色材の分光反射特性の制御に基づく色彩変化による、照明光の効率的利用方法、並びに当該方法を利用した照明システムを提供する新規かつ有用なるものであることが明らかである。
【符号の説明】
【0067】
C 外部指令
O 観測者
S 構造色
1 スペクトル可変照明光源
2 制御装置
3 内部メモリ
4 コンピュータ
10 照明
20 色材
21 トマト
22 キュウリ
100 照明システム
200 色材
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6