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明細書 :色素増感型光電変換素子の光入射側電極の製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-064944 (P2015-064944A)
公開日 平成27年4月9日(2015.4.9)
発明の名称または考案の名称 色素増感型光電変換素子の光入射側電極の製造法
国際特許分類 H01M  14/00        (2006.01)
H01L  31/04        (2014.01)
FI H01M 14/00 P
H01L 31/04 Z
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2013-196730 (P2013-196730)
出願日 平成25年9月24日(2013.9.24)
発明者または考案者 【氏名】吉門 進三
【氏名】佐藤 祐喜
【氏名】川上 亮
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 5F151
5H032
Fターム 5F151AA14
5F151FA04
5F151FA06
5F151GA03
5H032AA06
5H032AS06
5H032AS16
5H032BB02
5H032BB05
5H032BB07
5H032BB10
5H032CC11
5H032HH01
5H032HH04
5H032HH05
要約 【課題】色素増感型光電変換素子の光入射側電極を安価にかつ安定的に製造できる方法を提供する。
【解決手段】平均粒径が異なる複数の半導体微粒子群を準備する(S1)。複数の半導体微粒子群のそれぞれを個別に分散媒中に混ぜて複数のコロイドを形成する(S2)。平均粒径が最小の半導体微粒子群のコロイド中に、一方が透明導電膜を有する透明基板からなる一対の電極を挿入し、電極間に電流を流して電気泳動を行う(S3)。電気泳動の間に、残りの半導体微粒子群のコロイドを平均粒径が小さいものから順に、所定の時間間隔で所定量添加することにより、透明基板の透明導電膜上に半導体微粒子を積層する(S4)。半導体微粒子を積層した透明基板を熱処理し(S5)、当該透明基板上の半導体微粒子層に色素を吸着させる(S6)。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
色素増感型光電変換素子の光入射側電極の製造法であって、
(1)平均粒径が異なる複数の半導体微粒子群を準備するステップと、
(2)前記複数の半導体微粒子群のそれぞれを個別に分散媒中に混ぜることにより、複数のコロイドを形成するステップと、
(3)前記複数の半導体微粒子群のうちの平均粒径が最小の半導体微粒子群のコロイドを容器に収容し、当該コロイド中に、少なくとも一方が透明導電膜を有する透明基板からなる一対の電極を挿入し、前記一対の電極間に、前記透明導電膜を有する透明基板が陰極となるように電流を流して電気泳動を行うステップと、
(4)前記電気泳動の間に、残りの半導体微粒子群のコロイドを、平均粒径が小さいものから順に所定の時間間隔で所定量添加することにより、前記陰極側の前記透明基板の透明導電膜上に半導体微粒子を積層するステップと、
(5)前記半導体微粒子を積層した前記透明基板を前記容器から取り出して熱処理するステップと、
(6)前記熱処理後の透明基板上の半導体微粒子層に色素を吸着させるステップと、からなっていることを特徴とする製造法。
【請求項2】
前記ステップ(4)において、コロイドの添加を、当該添加すべきコロイドを一定の添加速度で所定の時間にわたって連続的に添加することによって行うことを特徴とする請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
前記複数の半導体微粒子群のそれぞれを結晶構造が異なる半導体微粒子から形成するとともに、
前記ステップ(6)において、前記半導体微粒子層への色素の吸着を、前記半導体微粒子群毎に当該半導体微粒子群に適合する色素を準備し、前記平均粒径が最小の半導体微粒子群に適合する色素の溶液を第2の容器中に収容し、当該色素の溶液中に前記透明基板を一方の電極とする一対の電極を挿入し、前記一対の電極間に電流を流して電気泳動を行い、この電気泳動の間に、残りの色素のそれぞれの溶液を、平均粒径が小さい半導体微粒子群に適合するものから順に所定の時間間隔で所定量添加することにより、前記透明基板上の半導体微粒子層に色素を吸着させることによって行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の製造法。
【請求項4】
前記複数の半導体微粒子群のそれぞれを異なる種類の半導体から形成したことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の製造法。
【請求項5】
前記複数の半導体微粒子群をいずれも酸化チタンから形成したことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の製造法。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の製造法によって製造された色素増感型光電変換素子の光入射側電極であって、
透明導電膜を有する透明基板と、
前記透明基板の透明導電膜上に形成された半導体微粒子層と、
前記半導体微粒子層に吸着された色素と、からなり、
前記半導体微粒子層が、前記透明基板から遠ざかるにつれて、次第に粒径の大きい半導体微粒子の割合が増大するように構成されていることを特徴とする光入射側電極。
【請求項7】
請求項3に記載の製造法によって製造された色素増感型光電変換素子の光入射側電極であって、
透明導電膜を有する透明基板と、
前記透明基板の透明導電膜上に形成された半導体微粒子層と、
前記半導体微粒子層に吸着された色素と、からなり、
前記半導体微粒子層が、前記透明基板から遠ざかるにつれて、次第に粒径の大きい半導体微粒子の割合が増大するとともに、この粒径の遷移に対応して半導体微粒子の結晶構造が次第に変化するように構成され、さらに、前記半導体微粒子層には、前記半導体微粒子の結晶構造に適合した色素が吸着されていることを特徴とする光入射側電極。
【請求項8】
前記複数の半導体微粒子群のそれぞれが異なる種類の半導体からなっていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の光入射側電極。
【請求項9】
前記複数の半導体微粒子群がいずれも酸化チタンからなっていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の光入射側電極。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感型光電変換素子、特に色素増感型太陽電池の光入射側電極を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコン系太陽電池に代わる新たな太陽電池として、色素増感型太陽電池が注目されている。
色素増感型太陽電池は、通常、透明導電膜を有する透明基板、および当該透明基板上に形成され、色素を吸着した多孔質半導体層からなる光入射側電極と、光入射側電極の多孔質半導体層に対向して配置された対極と、光入射側電極および対極間に保持された電解液層と、から構成されている。
【0003】
そして、光が光入射側電極の透明基板側(光入射面)から入射し、入射光は、多孔質半導体層に到達すると、色素に吸収され、色素分子中の電子が励起される。この励起電子のエネルギーレベルは、多孔質半導体層を構成する半導体微粒子のフェルミレベルよりも負側にあるので、励起電子は半導体微粒子に注入される。一方、色素は酸化された状態となる。半導体微粒子に注入された電子は、多孔質半導体層内を移動し、光入射側電極の透明導電膜に達した後、外部回路を通って対極に至る。対極では、電解液との界面において酸化還元種の還元反応が起こり、対極に達した電子は電解質中のイオンに受け渡される。電子を受け渡されたイオンは、電解質中を多孔質半導体層まで移動し、酸化状態にある色素を還元する。そして、この一連のプロセスが繰り返されることによって、太陽光線等の光エネルギーから電気エネルギーが取り出される。
【0004】
この場合、色素増感型太陽電池の光電変換の効率を上げるには、多孔質半導体層中の色素による入射光の吸収効率を上げることが重要であり、そのため、従来技術においては、光入射側電極の多孔質半導体層を多層構造化し、光入射面側から遠ざかるにつれて、半導体微粒子の平均粒径が層毎に次第に増大するように構成した光入射側電極が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
この光入射側電極によれば、光入射面側に位置する平均粒径の小さい半導体微粒子の層において光の散乱が抑制される一方、光入射面から遠い側に位置する平均粒径の大きい半導体微粒子の層において光が散乱されることによって、入射光が色素に効率よく吸収され、その結果、色素増感型太陽電池の光電変換の効率が上がる。
【0006】
しかしながら、この従来技術においては、多層構造の多孔質半導体層の形成が、予め準備されたそれぞれ平均粒径の異なる複数種類のコロイド溶液を、平均粒径の小さいものから順に、基板上に塗布し、塗布するたびに、得られた塗膜を乾燥した後、50~800℃の温度範囲内で10秒~12時間程度焼成することによってなされる。そのため、3層以上の多層構造の多孔質半導体層を得ようよすると、時間がかかり、また製造コストもかかるという問題があった。加えて、塗布では、広い面積にわたり、また湾曲した面上に均一な厚さの塗膜を形成することは容易ではなく、よって、大きなサイズの電極や、平板状でない電極を製造することは難しかった。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2002-352868号公報
【特許文献2】特開2003-217688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、色素増感型光電変換素子の光入射側電極を安価にかつ安定的に製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明によれば、色素増感型光電変換素子の光入射側電極の製造法であって、(1)平均粒径が異なる複数の半導体微粒子群を準備するステップと、(2)前記複数の半導体微粒子群のそれぞれを個別に分散媒中に混ぜることにより、複数のコロイドを形成するステップと、(3)前記複数の半導体微粒子群のうちの平均粒径が最小の半導体微粒子群のコロイドを容器に収容し、当該コロイド中に、少なくとも一方が透明導電膜を有する透明基板からなる一対の電極を挿入し、前記一対の電極間に、前記透明導電膜を有する透明基板が陰極となるように電流を流して電気泳動を行うステップと、(4)前記電気泳動の間に、残りの半導体微粒子群のコロイドを、平均粒径が小さいものから順に所定の時間間隔で所定量添加することにより、前記陰極側の前記透明基板の透明導電膜上に半導体微粒子を積層するステップと、(5)前記半導体微粒子を積層した前記透明基板を前記容器から取り出して熱処理するステップと、(6)前記熱処理後の透明基板上の半導体微粒子層に色素を吸着させるステップと、からなっていることを特徴とする製造法が提供される。
【0010】
上記製造法において、好ましくは、前記ステップ(4)において、コロイドの添加は、当該添加すべきコロイドを一定の添加速度で所定の時間にわたって連続的に添加することからなっている。
【0011】
そして、上記本発明の製造法によれば、透明導電膜を有する透明基板と、前記透明基板の透明導電膜上に形成された半導体微粒子層と、前記半導体微粒子層に吸着された色素と、からなり、前記半導体微粒子層が、前記透明基板から遠ざかるにつれて、次第に粒径の大きい半導体微粒子の割合が増大するように構成されていることを特徴とする光入射側電極が製造される。
【0012】
本発明の別の好ましい実施例によれば、前記複数の半導体微粒子群はそれぞれ結晶構造が異なる半導体微粒子から形成されるとともに、前記ステップ(6)において、前記半導体微粒子層への色素の吸着が、前記半導体微粒子群毎に当該半導体微粒子群に適合する色素を準備し、前記平均粒径が最小の半導体微粒子群に適合する色素の溶液を第2の容器中に収容し、当該色素の溶液中に前記透明基板を一方の電極とする一対の電極を挿入し、前記一対の電極間に電流を流して電気泳動を行い、この電気泳動の間に、残りの色素のそれぞれの溶液を、平均粒径が小さい半導体微粒子群に適合するものから順に所定の時間間隔で所定量添加することにより、前記透明基板上の半導体微粒子層に色素を吸着させることによって行われる。
【0013】
そして、この製造法によれば、透明導電膜を有する透明基板と、前記透明基板の透明導電膜上に形成された半導体微粒子層と、前記半導体微粒子層に吸着された色素と、からなり、前記半導体微粒子層が、前記透明基板から遠ざかるにつれて、次第に粒径の大きい半導体微粒子の割合が増大するとともに、この粒径の遷移に対応して半導体微粒子の結晶構造が次第に変化するように構成され、さらに、前記半導体微粒子層には、前記半導体微粒子の結晶構造に適合した色素が吸着されていることを特徴とする光入射側電極が製造される。
【0014】
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記複数の半導体微粒子群はそれぞれ異なる種類の半導体から形成される。
本発明の別の好ましい実施例によれば、前記複数の半導体微粒子群はいずれも酸化チタンから形成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、色素増感型光電変換素子の光入射側電極の半導体微粒子層を電気泳動によって形成し、この電気泳動を、予め準備しておいた平均粒径が異なる複数の半導体微粒子群のうち平均粒径が最小の半導体微粒子群のコロイドから出発して、このコロイドに、残りの半導体微粒子群を平均粒径が小さい順に添加することによって行うので、光入射側電極の半導体微粒子層を、当該層中において、透明基板から遠ざかるにつれて、次第に粒径がより大きい半導体微粒子の割合が増大するような構造とすることができる。
【0016】
半導体微粒子層のこの構造によって、透明基板側(光入射面)から入射した光の半導体微粒子層中の透過率は、透明基板から遠ざかるにつれて低下し、そして、入射光は、透明基板から最も離れた半導体微粒子層の端部に達したときには適度に減衰する。こうして、入射光を半導体微粒子層によって効率的に捕集することが可能となる。
【0017】
そして、本発明によれば、電気泳動の間のコロイド中の半導体粒子群の混合比を制御するだけで、半導体微粒子層中の半導体微粒子の粒径の遷移を自在に変えることができ、従来の塗布法を用いた場合のように多層構造を形成すべく層毎に乾燥・焼成を繰り返す必要がなく、よって、光電変換素子の光入射側電極をより短時間に低コストで製造することができる。
さらに、本発明では、電気泳動によって透明基板上に半導体微粒子層を形成するので、サイズの大きな電極や、平板状以外の形状の電極であっても安定的に製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の1実施例による色素増感型光電変換素子の入射側電極の製造法のフロー図である。
【図2】(A)は、図1に示した製造法の電気泳動プロセスを説明する概略図であり、(B)は、図1に示した製造法で作製した光入射側電極を用いた色素増感型太陽電池の構成例を示す断面図である。
【図3】図1に示した製造法で作製した光入射側電極の1例の断面SEM画像である。
【図4】(A)は、各実施例の電気泳動の間におけるコロイド中の半導体微粒子の混合比の予測値を示すグラフであり、(B)は、各実施例の光入射側電極の光捕集の入射光波長依存性を示すグラフである。
【図5】(A)は、各実施例の光入射側電極を用いた色素増感型太陽電池の電流密度-電圧特性を示すグラフであり、(B)は、実施例の光入射側電極および比較例の光入射側電極をそれぞれ用いた色素増感型太陽電池の電流密度-電圧特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例について説明する。図1は、本発明の1実施例による色素増感型光電変換素子の光入射側電極の製造法を説明するフロー図である。
図1を参照して、本発明によれば、まず、平均粒径が異なる複数の半導体微粒子群が準備される(図1のステップS1)。この場合、半導体微粒子群毎に粒子径を揃えるために、通常、分級法が使用される。また、複数の半導体微粒子群のそれぞれが異なる種類の半導体から形成されていてもよいし、複数の半導体微粒子群がいずれも、例えば酸化チタン等のような同じ種類の半導体から形成されていてもよい。

【0020】
次に、複数の半導体微粒子群のそれぞれが個別に分散媒中に混ぜられ、複数のコロイドが形成される(図1のステップS2)。
そして、図2(A)に示すように、複数の半導体微粒子群のうちの平均粒径が最小の半導体微粒子群のコロイド2が容器1に収容され、当該コロイド2中に、少なくとも一方が透明導電膜3aを有する透明基板3からなる一対の電極3、4が挿入され、これら一対の電極3、4間に、透明導電膜3aを有する透明基板3が陰極となるように電流が流されて電気泳動が行われる(図1のステップS3)。

【0021】
この電気泳動の間に、残りの半導体微粒子群のコロイドが平均粒径の小さいものから順に、所定の時間間隔で所定量添加され、それによって、陰極側の透明基板3の透明導電膜3a上に、半導体微粒子が積層されて、多孔質の半導体微粒子層が形成される(図1のステップS4)。
この場合、コロイドの添加は、当該添加すべきコロイドを一定の添加速度で所定の時間にわたって連続的に添加することによって行われることが好ましい。

【0022】
その後、半導体微粒子の積層された透明基板3が容器1から取り出されて熱処理され(図1のステップS5)、熱処理後の透明基板上の半導体微粒子層に色素が吸着される(図1のステップS6)。
この半導体微粒子層への色素の吸着は、通常、浸漬法を用いて行われる。
しかしながら、複数の半導体微粒子群のそれぞれが結晶構造の異なる半導体微粒子から形成されている場合には、結晶構造が異なるとそのエネルギー準位も異なることから、結晶構造毎に、それに適合した色素を吸着させることが好ましい。

【0023】
よって、複数の半導体微粒子群のそれぞれが結晶構造の異なる半導体微粒子から形成されている場合には、半導体微粒子層への色素の吸着が、半導体微粒子群毎に当該半導体微粒子群に適合する色素を準備し、平均粒径が最小の半導体微粒子群に適合する色素の溶液を第2の容器中に収容し、当該色素の溶液中に当該半導体微粒子層を備えた透明基板を一方の電極とする一対の電極を挿入し、一対の電極間に電流を流して電気泳動を行い、この電気泳動の間に、残りの色素のそれぞれの溶液を、平均粒径が小さい半導体微粒子群に適合するものから順に所定の時間間隔で所定量添加することにより、透明基板上の半導体微粒子層に色素を吸着させることによって行われる。

【0024】
こうして、本発明によれば、色素増感型光電変換素子の光入射側電極の半導体微粒子層を電気泳動によって形成し、この電気泳動を、予め準備しておいた平均粒径が異なる複数の半導体微粒子群のうち平均粒径が最小の半導体微粒子群のコロイドから出発して、このコロイドに残りの半導体微粒子群を平均粒径が小さい順に添加することによって行うので、光入射側電極の半導体微粒子層を、当該層中において、透明基板から遠ざかるにつれて、次第に粒径がより大きい半導体微粒子の割合が増大するように構成することができる。

【0025】
それによって、透明基板側(光入射面)から入射した光の半導体微粒子層中の透過率は、透明基板から遠ざかるにつれて低下し、入射光は、透明基板から最も離れた半導体微粒子層の端部に達したときには適度に減衰する。それによって、入射光を半導体微粒子層によって効率的に捕集することができる。

【0026】
そして、本発明によれば、電気泳動の間のコロイド中の半導体粒子群の混合比を制御するだけで、半導体微粒子層中の半導体微粒子の粒径の遷移を自在に変えることができ、従来の塗布法を用いた場合のように多層構造の形成時に層毎に乾燥・焼成を繰り返す必要がなく、よって、光電変換素子の光入射側電極をより短時間に低コストで製造することができる。加えて、本発明では、電気泳動によって透明基板上に半導体微粒子層を形成するので、サイズの大きな電極や、平板状以外の形状の電極であっても安定的に製造することが可能である。

【0027】
次に、本発明の作用効果を調べるべく実証実験を行った。実験の内容は次のとおりである。
(実施例1)
(i)TiOナノ粒子の形成
チタン酸アルコキシドとしてテトライソプロピルオルトチタネート(TIPT)と、有機溶媒としてアセチルアセトン(ACAC)をモル比1:1で混合し、TIPT溶液を形成した。次いで、このTIPT溶液に、水溶性界面活性剤として0.1モルのラウリルアミン塩酸塩(LAHC)水溶液をモル比4:1で混合し、沈殿を生じさせた。
そして、この混合液を恒温槽中においてマグネットスターラによって40℃で3~5日間撹拌することで沈殿物をすべて溶かし、その後、80℃で加水分解および重縮反応を進行させることで、酸化チタン(TiO)ナノ粒子を形成(合成)した。

【0028】
(ii)粒子の分級
形成したTiOナノ粒子を、分散媒(2-プロパノール)中に分散させて遠心管に封入し、まず10000rpmで遠心分離を行い、粒径の大きい粗い粒子を沈殿させて取り除いた。続いて、残った上澄み液を、さらに高速の13,500rpmで分離沈殿させることにより、粒子径の揃ったTiOナノ粒子群(平均粒径=5nm)を得た。
また、市販のP25微粒子(デグッサ製)を水に分散させて遠心管に封入し、前と同様に遠心分離を行うことによって、粒子径の揃ったP25微粒子群(平均粒径=50nm)を得た。

【0029】
(iii)コロイドの形成
・コロイドA
分級によって得られたTiO微粒子群(平均粒径=5nm)を、エタノール中に濃度0.40Vol%となるように加え、マグネットスターラにより5分間撹拌後、超音波を5分間照射し、再びマグネットスターラにより5分間撹拌し、コロイドAを調製した。
・コロイドB
分級によって得られたP25微粒子群(平均粒径=50nm)を、エタノール中に濃度1.0Vol%となるように加え、マグネットスターラによる5分間の拡散、および5分間の超音波照射を繰り返し行うことで、コロイドBを調製した。

【0030】
(iv)電気泳動による半導体微粒子の積層
40ccのコロイドAを容器に入れ、コロイドA中に、陰極としてITO基板(フルウチ化学製、10Ω/cm)と、陽極としてアルミニウム板(純度99.99%)を挿入し、ITO基板面がコロイド液面に垂直になり、かつITO基板とアルミニウム板が互いに平行になるように配置した。
そして、極板間に一定電流(0.1A/cm)を供給するとともに、電流供給の開始から60秒間はコロイドAのみで電気泳動を行い、次いで(電流供給の開始から60秒経過後)、コロイドBをコロイドAに滴下速度6.24×10-2cc/秒で300秒間添加した後、電流供給を停止して電気泳動を終了し、基板上に厚さが7.2μmの半導体微粒子層を積層させた。
(v)色素の吸着
増感色素としてN719(Cis-di(thiocyanate)bis(2,2’-bipyridy 1-4,4’-di-carboxy-late) - ruthenium (II) bis - tetra - butylammonium)と呼ばれるルテニウム金属錯体色素を用い、これを濃度3.0×10-4Mとなるようにエタノール中に溶解させて色素分散溶液を調製した。
そして、半導体微粒子層を積層させた基板を取り出して熱処理した後、この色素分散溶液中に、溶液の温度を40℃に保った状態で24時間浸漬させることによって、半導体微粒子層中に色素を吸着させ、光電変換素子の光入射側電極を作製した。

【0031】
(実施例2)
コロイドBの滴下速度を4.16×10-2cc/秒として、実施例1と同様にして電気泳動を行い、基板上に厚さが4μmの半導体微粒子層を積層させ、実施例1と同様にして半導体微粒子層中に色素を吸着させることによって、光電変換素子の光入射側電極を作製した。
(実施例3)
コロイドBの滴下速度を2.08×10-2cc/秒として、実施例1と同様にして電気泳動を行い、基板上に厚さが5μmの半導体微粒子層を積層させ、実施例1と同様にして半導体微粒子層中に色素を吸着させることによって、光電変換素子の光入射側電極を作製した。

【0032】
図4(A)は、上記実施例1~3のそれぞれにおける電気泳動中の時間経過に伴う容器中のTiOナノ粒子とP25微粒子の混合比の変化の予測値を示したグラフである。図4(A)において、X、YおよびZは、それぞれ、実施例1、実施例2および実施例3のグラフを示している。

【0033】
(比較例1)
実施例1で分級によって得た平均粒径が5nmのTiOナノ粒子群と、平均粒径が50nmのP25微粒子群とを1:1の質量比で混合したコロイドを形成し、このコロイド中に、実施例1と同様の一対の電極を挿入して電気泳動を行い、透明基板の透明導電膜上に厚さが7.2μmの半導体微粒子層を積層し、この半導体微粒子層中に実施例1と同様にして色素を吸着させることによって光電変換素子の光入射側電極を作製した。
(比較例2)
実施例1で分級によって得た平均粒径が50nmのP25微粒子群を用い、実験1と同様にしてコロイドを形成し、このコロイド中に、実験1と同様の一対の電極を挿入して電気泳動を行い、透明基板の透明導電膜上に厚さが7.2μmの半導体微粒子層を積層し、この半導体微粒子層中に実施例1と同様にして色素を吸着させることによって光電変換素子の光入射側電極を作製した。

【0034】
[実験1]
実施例1の光入射側電極の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)によって観察した。図3は、このSEM画像を示したものであり、(A)は断面の全体の画像であり、(B)~(E)は、それぞれ、(A)中の領域(1)~(4)の拡大画像である。
図3(A)において、領域(1)は、コロイドBの滴下前のコロイドAのみでの電気泳動にて形成された領域であり、そして、図3(B)から、この領域にはTiOナノ粒子のみが積層されていることがわかる。
図3(A)において、領域(2)は、コロイドBの滴下が開始直後に形成された領域であり、そして、図3(C)から、この領域においてTiOナノ粒子の層からP25微粒子の層への移行部分が形成されていることがわかる。
図3(A)において、領域(3)は、コロイドBの滴下の中間時点で形成された領域であり、領域(4)は、電気泳動の終了直前に形成された領域であり、そして、図3(D)、(E)から、コロイドBの滴下時間の経過につれてP25微粒子の割合が増大していることがわかる。

【0035】
[実験2]
実施例1、実施例2および実施例3のそれぞれの光入射側電極について、その光捕集効率の入射光波長依存性を測定した。
測定結果を図4(B)のグラフに示した。図4(B)において、X、YおよびZは、それぞれ、実施例1、実施例2および実施例3のグラフを示している。
図4(B)のグラフから、光入射側電極の半導体微粒子層の層厚が増大するにつれて、入射光の全波長にわたって光捕集効率が向上することがわかった。

【0036】
[実験3]
実施例1の光入射側電極を使用して、色素増感型太陽電池を作製した。図2(B)に、作製した太陽電池の構成を概略的に示す。
図2(B)を参照して、まず、実施例1の光入射側電極5の色素を吸着させた半導体微粒子層5a上に、スペーサー6として、中央に5.0mm×5.0mmの開口部6aを有する厚さ50μmのハイミラン(登録商標)の板を載せ、スペーサ6の開口部6aに電解質溶液7を注入した。なお、電解質溶液7は、溶媒として3-Methoxy-propionitrileを用い、これにLiIを0.1M、Iを0.005M、DMPII(1-propyl-2,3 dimethylimidazolium iodide)を0.6M、TBP(4-tert-butylpyridine)を0.5M添加したものからなっている。

【0037】
そして、スペーサー6の上に、白金をスパッタしたITOガラス電極8を重ね合わせ、2枚の電極5、8を(図示しない)外側からバインダークリップで挟んで固定することによって、太陽電池とした。
得られた色素増感型太陽電池の光入射面(光入射側電極の半導体微粒子層と反対側の面)に、標準光源として、校正されたソーラシミュレータ(SAN-EI ELECTRIC, XES-40S1)の光を照射し、太陽電池の電流密度-電圧特性を測定した。

【0038】
実施例1の光入射側電極の代わりに実施例2の光入射側電極を使用し、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を作製し、得られた色素増感型太陽電池の電流密度-電圧特性を実施例1の場合と同様にして測定した。
また、実施例1の光入射側電極の代わりに実施例3の光入射側電極を使用し、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を作製し、得られた色素増感型太陽電池の電流密度-電圧特性を実施例1の場合と同様にして測定した。

【0039】
これらの測定結果を図5(A)のグラフに示した。図5(A)中、X、YおよびZは、それぞれ、実施例1、実施例2および実施例3のグラフを示している。
図5(A)のグラフから、光入射側電極の半導体微粒子層の厚さが増大するにつれて、より大きな短絡電流密度が得られることがわかった。

【0040】
[実験4]
実施例1の光入射側電極の代わりに比較例1の光入射側電極を使用し、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を作製し、得られた色素増感型太陽電池の電流密度-電圧特性を実施例1の場合と同様にして測定した。
また、実施例1の光入射側電極の代わりに比較例2の光入射側電極を使用し、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を作製し、得られた色素増感型太陽電池の電流密度-電圧特性を実施例1の場合と同様にして測定した。

【0041】
これらの測定結果を図5(B)のグラフに示した。図5(B)中、CおよびCは、それぞれ、比較例1および比較例2のグラフを示している。なお、図5(B)中のグラフXは、比較のために、図5(A)に示した実施例1のグラフXを再掲載したものてある。
図5(B)のグラフから、実施例1、比較例1、比較例2の順に、短絡電流密度が大きくなることがわかった。

【0042】
これは、実施例1では、半導体微粒子層を、当該層中において、透明基板から遠ざかるにつれて、次第に粒径がより大きい半導体微粒子の割合が増大するような構造としたので、入射光の半導体微粒子層中の透過率が透明基板から遠ざかるにつれて低下し、そして、入射光が透明基板から最も離れた半導体微粒子層の端部に達したときには適度に減衰し、それによって、入射光が半導体微粒子層に効率的に捕集されるのに対し、比較例1や比較例2では、入射光が半導体微粒子層中で適度に減衰せず、この層によって十分に捕集されなかったためであると考えられる。
【符号の説明】
【0043】
1 容器
2 コロイド
3 透明基板
3a 透明導電膜
4 電極
5 光入射側電極
5a 色素を吸着させた半導体微粒子層
6 スペーサ
6a 開口部
7 電解質溶液
8 電極
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図3】
4