TOP > 国内特許検索 > 高強度強靱性ZrO2‐Al2O3系固溶体セラミックスの作製法 > 明細書

明細書 :高強度強靱性ZrO2‐Al2O3系固溶体セラミックスの作製法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5930317号 (P5930317)
登録日 平成28年5月13日(2016.5.13)
発行日 平成28年6月8日(2016.6.8)
発明の名称または考案の名称 高強度強靱性ZrO2‐Al2O3系固溶体セラミックスの作製法
国際特許分類 C04B  35/48        (2006.01)
C04B  35/64        (2006.01)
FI C04B 35/48 C
C04B 35/64 E
請求項の数または発明の数 3
全頁数 13
出願番号 特願2013-513978 (P2013-513978)
出願日 平成24年4月26日(2012.4.26)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 2011年12月15日 社団法人粉体粉末冶金協会 発行の第58巻第12号「粉体および粉末冶金」にて発表
国際出願番号 PCT/JP2012/061196
国際公開番号 WO2012/153645
国際公開日 平成24年11月15日(2012.11.15)
優先権出願番号 2011107228
優先日 平成23年5月12日(2011.5.12)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年3月27日(2015.3.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
発明者または考案者 【氏名】廣田 健
【氏名】佐藤 英行
【氏名】柴谷 健伍
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査官 【審査官】末松 佳記
参考文献・文献 特開平11-147762(JP,A)
特開2002-255642(JP,A)
特開平06-306352(JP,A)
特開2004-075532(JP,A)
特開2006-225205(JP,A)
O. YAMAGUCHI, et al.,Fabrication and mechanical properties of ZrO2 solid solution and composite ceramics in the system Zr,Advanced Synthesis and Processing of Composites and Advanced Ceramics,1995年,p.353-360
調査した分野 C04B 35/48-35/493
C04B 35/624-35/65
特許請求の範囲 【請求項1】
高強度強靱性のZrO‐Al系固溶体セラミックスを作製することが可能な方法であって、当該方法が、
工程A:ゾル‐ゲル法を用いてZrOに対し0.3~1.7mol%Yを添加したZrO(99.7~98.3mol%ZrO‐0.3~1.7mol%Y)‐20~30mol%Alの非晶質固溶体粉体を調製し、得られた非晶質固溶体粉体を結晶化温度以上で仮焼して結晶質のZrO固溶体粉体を調製する工程、及び
工程B:前記工程Aで得られた結晶質のZrO固溶体粉体を成形し、次いで、不活性ガス雰囲気下、昇温速度50~100℃/分、圧力60MPa、焼結温度1270~1330℃、保持時間10分の条件にてパルス通電加圧焼結法で焼結する工程
を含むことを特徴とする高強度強靱性ZrO‐Al系固溶体セラミックスの作製法。
【請求項2】
上記工程Bにおける成形を冷間静水圧プレスにて行うことを特徴とする請求項1に記載の高強度強靱性ZrO‐Al系固溶体セラミックスの作製法。
【請求項3】
上記工程Bにおける焼結をアルゴンガス雰囲気下又は窒素ガス雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の高強度強靱性ZrO‐Al系固溶体セラミックスの作製法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度強靱性のZrO‐Al系固溶体セラミックスを作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属に比較して、化学的安定性、対腐食性、高温環境下での使用可能といった多くの特徴を有するセラミックス材料は、硬度や強度が高いが、靱性が低いという弱点のため、その応用が限定されてきた。
セラミックスの強靱性、すなわち破壊靱性値(KIC)向上のため現在まで多くの研究がなされてきており、特に、酸化イットリウム(Y)を2~3mol%添加固溶させた部分安定化ジルコニア(Partially stabilized zirconium, PSZ)に注目が集まり、熱間静水圧プレス(Hot isostatic pressing:HIP)焼結によるY部分安定化ZrO‐Al複合材料の強靱性・高強度化が明らかになった。他方、ZrO‐Al系固溶体はあまり注目されていなかった。
【0003】
そこで、本発明者等は、下記の非特許文献1において、ゾル‐ゲル法(金属の有機及び無機化合物の溶液をゲルとして固化し、ゲルの加熱によって酸化物の固体を作製する方法)を用いてZrO‐25mol%Al固溶体粉体を調製し、HIP焼結によりこの系の固溶体セラミックスを作製し、破壊靱性値KICが23MPa・m1/2というセラミックスでは驚異的な値を報告した。しかし、曲げ強度(σ)は約570MPaに留まり、σが1GPa以上必要な実用化には及ばず、高強度(≧1GPa)と強靱性(≧15MPa・m1/2)を同時に満足する高強度強靱性のセラミックスが求められていた。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】K. Hirota et al., Powder Metallurgy World Congress (1993) 1381-1384
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術における前述の問題点を解決し、高強度(≧1GPa)と強靱性(≧15MPa・m1/2)を同時に満足する高強度強靱性のZrO‐Al系固溶体セラミックスを作製可能な方法を提供することを課題とする。
本発明者等は、種々検討を行った結果、ゾル‐ゲル法を用いてZrOに対し1.5mol%Yを添加したZrO(98.5mol%ZrO‐1.5mol%Y)‐25mol%Alの非晶質の固溶体粉体(以下、「ZrO(1.5Y)‐25mol%Al固溶体粉体」と表す)を調製し、この固溶体粉体を結晶化温度以上で仮焼した後に成形し、その後、一定条件下で焼結を行なった場合に、上記の強度(曲げ強度)及び破壊靱性値を同時に満足する高強度強靱性のZrO‐Al系固溶体セラミックスが作製できることを見出し、Y添加量の最適範囲を検討して本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決可能な本発明の高強度強靱性ZrO‐Al系固溶体セラミックスの作製法は、以下の工程A及びB:
工程A:ゾル‐ゲル法を用いてZrOに対し0.3~1.7mol%Yを添加したZrO(99.7~98.3mol%ZrO‐0.3~1.7mol%Y)‐20~30mol%Alの非晶質の固溶体粉体を調製し、得られた固溶体粉体を結晶化温度以上で仮焼して結晶質のZrO固溶体粉体を調製する工程、及び
工程B:前記工程Aで得られた結晶質のZrO固溶体粉体を成形し、次いで、不活性ガス雰囲気下、昇温速度50~100℃/分、圧力60MPa、焼結温度1270~1330℃、保持時間10分の条件にてパルス通電加圧焼結法(Pulsed Electric-Current Pressure Sintering:PECPS)で焼結する工程を含むことを特徴とする。
【0007】
又、本発明は、上記の特徴を有した作製法において、前記工程Bにおける成形を冷間静水圧プレス(cold isostatic pressing:CIP)にて行うことを特徴とするものでもある。
【発明の効果】
【0008】
固溶体粉体から、焼結時に微細な酸化アルミニウムAl微粒子を均一に析出させることで、強靱化が達成され、また、ゾル‐ゲル法を用いたナノ粒子を緻密化することで、高強度が得られ、本発明の作製法を用いることによって、曲げ強度σ≧1GPaで、しかも、破壊靱性値KIC≧15MPa・m1/2の高強度強靱性ZrO‐Al系固溶体セラミックスが作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の高強度強靱性ZrO‐Al系固溶体セラミックス作製法における工程を示すフローチャートである。
【図2】(A)は、1100℃で焼結したZrO‐25mol%Al固溶体セラミックスのXRDパターンであり、(B)は、1200℃で焼結したZrO‐25mol%Al固溶体セラミックスのXRDパターンであり、(C)中の(a)は、820℃で仮焼したZrO(1.5Y)‐25mol%Al固溶体粉末のXRDパターンであり、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)はそれぞれ、1100℃、1200℃、1250℃、1300℃、1350℃で焼結したZrO(1.5Y)‐25mol%Al固溶体セラミックスのXRDパターンである。
【図3】(A)-1は、800℃で仮焼したZrO‐25mol%Al固溶体セラミックス粉末のSEM写真であり、(A)-2は、1200℃で焼結したZrO‐25mol%Al固溶体セラミックスの破面のSEM写真である。又、(B)-1は、820℃で仮焼したZrO(1.5Y)‐25mol%Al固溶体セラミックス粉末のSEM写真であり、(B)-2は、1200℃で焼結したZrO(1.5Y)‐25mol%Al固溶体セラミックスの破面のSEM写真であり、写真の右側には、それぞれの平均粒径が記載されている。
【図4】(A)1200℃、(B)1250℃、(C)1300℃で焼結したZrO(1.5Y)‐25mol%Al固溶体セラミックスの破面のSEM写真であり、それぞれの平均粒径も記載されている。
【図5】焼結温度と、ZrO(1.5Y)‐25mol%Al固溶体セラミックスの曲げ強度σ、破壊靱性値KIC、ビッカース硬度Hの関係を示すグラフである。
【図6】固溶体粉体を使用して種々の焼結温度で作製したZrO(1.5Y)‐25mol%Al固溶体セラミックス及び、混合粉体を使用して種々の焼結温度で作製したZrO(3.0Y)‐25mol%Alコンポジットセラミックスの機械的特性(曲げ強度、ビッカース硬度、破壊靱性値)を示すグラフである。
【図7】ZrO‐25mol%Al固溶体セラミックスにおいて,ZrOに添加するY量を変化させた1300℃で焼結したセラミックスの、破壊靱性値及びビッカース硬度の変化を示すグラフである。
【図8】ゾル‐ゲル法を用いて得られた原料から作製されたZrO(1.5Y)‐25mol%Al固溶体セラミックスの機械的特性と、水溶性原料を用いて得られたものの機械的特性を比較した表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
高強度強靱性のZrO‐Al系固溶体セラミックスを作製することが可能な本発明の方法における工程A及び工程Bについて説明する。
本発明における工程A(ZrO固溶体粉体の調製工程)では、ゾル‐ゲル法を用いてZrOに対し0.3~1.7mol%Yを添加したZrO70~80mol%に対して30~20mol%のAlを添加してなる固溶体粉体を調製するが、このような固溶体粉体の調製は、例えば、図1に示されるフローチャートに記載されるような工程により行われる。ただし、この図1に示された工程で使用されている原料及び条件に限定されるものではない。この際、ZrOに対するYの添加量が0.3~1.7mol%に限定されるのは、0.3mol%未満でも、逆に添加量が1.7mol%を超えても、室温における曲げ強度σが1000Maより小さく、又、破壊靱性値KICが15MPa・m1/2より小さくなるからであり、又、Alの添加量が20~30mol%に限定されるのは、20mol%未満の添加量でも、逆に添加量が30mol%を超えても、曲げ強度σが1000MPa未満となるからである。
尚、本発明において、固溶体粉体を仮焼して正方晶(tetragonal)のZrO固溶体粉体を調製する際の温度は結晶化温度以上であれば良く、700℃~900℃が好ましい。

【0011】
又、本発明における工程B(焼結工程)では、前記工程Aで得られた結晶質のZrO固溶体粉体を成形し、次いで、不活性ガス雰囲気下、昇温速度50~100℃/分、圧力60MPa、焼結温度1270~1330℃、保持時間10分の条件にてパルス通電加圧焼結法で焼結することによって、高強度強靱性ZrO‐Al系固溶体セラミックスを製造する。ZrO固溶体粉体の成形を行うには冷間静水圧プレスが適しており、得られた成形体の焼結を行うには、アルゴンガス又は窒素ガス雰囲気下でのパルス通電加圧焼結法が適している。一軸加圧下において、低電圧でパルス状直流電流を流し、火花放電現象により瞬時に高エネルギーを発生させて試料の焼結を行うパルス通電加圧焼結法が適しているのは、急激なジュール加熱により溶解と高速拡散が起こり、短時間で高速焼結できるので、比較的粒成長を抑えた緻密な焼結体(相対密度90%以上)を得ることができるからであり、放電プラズマ焼結法が適しているのも同様の理由による。
本発明におけるパルス通電加圧焼結の特に好ましい条件は、アルゴンガス雰囲気下、昇温速度50~100℃/分、加圧力60MPa、焼結温度1270~1330℃、保持時間10分の条件である。この際、焼結温度が1250℃未満になると、高い曲げ強度(≧1GPa)が得られず、焼結温度が1350℃を超えると、高い破壊靱性値(≧15MPa・m1/2)が得られなくなるので好ましくない。保持時間については、3~30分で充分緻密化するが、加圧力が30MPa未満では焼結密度が低くなり、逆に100MPaを超えると通電加圧焼結に使用する金型の強度に上限があり使用出来なくなるという問題がある。昇温速度については、50℃/分未満になると長時間の熱処理となり製造コストが高くなり、逆に100℃/分を超えると、焼結体内部の微細構造にムラが生じ、均質で大型の試料の作製が困難となるので好ましくない。
尚、本発明において、曲げ強度σは、スパン長さ8mm、クロスヘッドの送り0.5mm/minの条件で測定された三点曲げ強度の値であり、破壊靱性値KICは、荷重10kg(98N)で5秒間正四角錐のダイヤモンド圧子をセラミックス表面に押し込み、形成された圧痕の四隅に発生するクラックの長さから評価するインデンテーション(IF)法(K. Niihara et al., J. Master. Sci. Lett., 1, 13-16 (1982))に従って測定された値である。
【実施例】
【0012】
実施例1:高強度強靱性ZrO‐Al系固溶体セラミックスの製造条件の検討
ゾル‐ゲル法を用いてZrOに対して、1.5mol%Yを添加(98.5mol%ZrO‐1.5mol%Y)したZrO(1.5Y)‐25mol%Al固溶体粉体(ZrO(1.5Y)/Al=75/25mol比)を調製し(この段階では粉体は非結晶)、この粉体を820℃で空気中1時間仮焼して結晶質のZrO固溶体粉体を得た。そして、この結晶質の固溶体粉体を整粒した後、金型成形(98MPa)し、ついで冷間静水圧(245MPa)プレス処理し、その後、市販のパルス通電加圧焼結装置(SPSシンテックス(株)/SPS-510Aを使用)を用いて、アルゴンガス雰囲気下、加圧圧力60MPa、焼結温度1100~1350℃、保持時間10分、昇温速度100℃/分の条件でパルス通電加圧焼結を行い、焼結体(ZrO(1.5Y)‐Al固溶体セラミックス)を得た。
一方、Yを添加せずにゾル‐ゲル法を用いてZrO‐25mol%Alの非晶質の固溶体粉体(ZrO/Al=75/25mol比)を調製し、同様の条件にて仮焼を行い、結晶質のZrO固溶体粉体を得た。そして、この結晶質の固溶体粉体を用いて、上記と同様にして金型成形、冷間静水圧プレス処理を行い、焼結温度1100℃及び1200℃において同様のパルス通電加圧焼結を行い、焼結体(ZrO‐Al固溶体セラミックス)を得た。
【実施例】
【0013】
図2には、このようにして得られた固溶体セラミックス焼結体のXRDパターンが示されており、(A)は、1100℃で焼結したZrO‐25mol%Al固溶体セラミックスのXRDパターン、(B)は、1200℃で焼結したZrO‐25mol%Al固溶体セラミックスのXRDパターンである。(C)中の(a)は、820℃で仮焼したZrO(1.5Y)‐25mol%Al固溶体粉末のXRDパターンであり、(b)~(f)には、焼結温度を1100℃~1350℃に変化させて得られたZrO(1.5Y)‐25mol%Al固溶体セラミックスのXRDパターンが示されている。
この図2の(A)~(C)より、酸化イットリウム(Y)が添加されていない(A)と(B)の場合(仮焼温度700~900℃、焼結温度1100℃及び1200℃)には、単斜晶の酸化ジルコニウム(m-ZrO)及び、正方晶の酸化ジルコニウム(t-ZrO)の両回折ピークが存在しているのに対し、酸化イットリウム(Y)が1.5mol%添加された(C)の場合には、仮焼により得られた粉末(a)においても、焼結により得られた固溶体セラミックス(b)~(f)においても、主として正方晶の酸化ジルコニウムである酸化イットリウムジルコニウムの回折ピークが存在していることがわかった。
【実施例】
【0014】
又、図3には、このようにして得られた仮焼粉末及び、固溶体セラミックス焼結体の破面のSEM写真が示されており、(A)-1は、800℃で仮焼したZrO‐25mol%Al固溶体セラミックス粉末のSEM写真であり、(A)-2は、1200℃で焼結したZrO‐25mol%Al固溶体セラミックスの破面のSEM写真である。又、(B)-1は、820℃で仮焼したZrO(1.5Y)‐25mol%Al固溶体セラミックス粉末のSEM写真であり、(B)-2は、1200℃で焼結したZrO(1.5Y)‐25mol%Al固溶体セラミックスの破面のSEM写真である。
この図3のSEM写真から、酸化イットリウム(Y)が添加されていない(A)-1及び(A)-2の場合には、仮焼後の粒(子)径は110nm、1200℃で焼結したセラミックスの結晶粒(子)径は200nmと約2倍粒成長していることがわかり、酸化イットリウム(Y)が1.5mol%添加された(B)-1及び(B)-2の場合には、粒子径はそれぞれ100及び180nmで、やや酸化イットリウムを添加し固溶させると粒成長が抑制されることがわかった。
そして、平均粒径の比較から、Yを1.5mol%添加したセラミックスの方が結晶粒(子)径が小さくなることがわかった。
【実施例】
【0015】
図4には、焼成温度を変えた際の、ZrO(1.5Y)‐25mol%Al固溶体セラミックスの破面のSEM写真が示されており、(A)は焼成温度が1200℃の場合、(B)は焼成温度が1250℃の場合、(C)は焼成温度が1300℃の場合である。これらのSEM写真から、焼成温度が1200℃~1300℃になるとともに組織が緻密になっていることがわかり、それぞれの平均粒径の比較から、焼成温度の上昇とともに180から200nmへと少し大きくなることがわかる。
【実施例】
【0016】
以下の表1及び表2には、上記実験にて作製されたZrO‐25mol%Al固溶体セラミックス及び、ZrO(1.5Y)‐25mol%Al固溶体セラミックスについての、正方晶酸化ジルコニウム(t-ZrO)/単斜晶酸化ジルコニウム(m-ZrO)の体積比率(t/m)、理論密度、かさ密度、相対密度が要約されている。
【実施例】
【0017】
【表1】
JP0005930317B2_000002t.gif
【実施例】
【0018】
【表2】
JP0005930317B2_000003t.gif
【実施例】
【0019】
上記表1及び表2から、焼成温度が1300℃の場合に得られたZrO(1.5Y)‐25mol%Al固溶体セラミックスが、かさ密度、相対密度の点において最も良好な結果を示すことがわかった。
【実施例】
【0020】
又、図5には、焼成温度を変化させた際の、ZrO(1.5Y)‐25mol%Al固溶体セラミックスについての、焼結温度と、曲げ強度σ、破壊靱性値KIC、ビッカース硬度Hの関係がグラフにより示されている。
【実施例】
【0021】
図5のグラフから、焼結温度が約1250℃以上の場合に1GPa以上の曲げ強度σが達成でき(焼結温度が1300℃の場合に1.33GPa)、焼結温度が約1230℃~1360℃の場合に18MPa・m1/2以上、約1270℃~1330℃の場合に20MPa・m1/2以上の破壊靱性値KIC(焼結温度が1300℃の場合に21.3MPa・m1/2)が達成できることがわかる。尚、ビッカース硬度Hは、焼結温度が約1230℃以上の場合に13GPa以上(焼結温度が1300℃の場合に13.4GPa)であった。
【実施例】
【0022】
実施例2:本発明により作製されたZrO‐Al系固溶体セラミックスと、他の方法により作製されたZrO‐Al系固溶体セラミックスとの特性比較
(比較品1)
市販の1.5mol%Yを添加(98.5mol%ZrO‐1.5mol%Y)したZrO(1.5Y-ZrO)粉体と市販のAl微粒子を、遊星ボールミルを用いて混合して得られた混合粉体(ZrO/Al=75/25mol比)を、前記実施例1と同様に、金型成形(98MPa)し、ついで冷間静水圧(245MPa)プレス処理し、その後、市販のパルス通電加圧焼結装置を用いてパルス通電加圧焼結(焼結温度1300℃)して焼結体を得た。
このような混合により作製されたZrO(1.5Y)‐Al系コンポジットセラミックスの特性値を測定したところ、曲げ強度σは1.11GPaであったが、破壊靱性値KICは9.08MPa・m1/2であり、15MPa・m1/2以上の破壊靱性値を達成することはできなかった。
【実施例】
【0023】
(比較品2)
ゾル‐ゲル法を用いて、Yが添加されていないZrO‐25mol%Alの非晶質固溶体粉体を調製し、この粉体を1000℃で空気中1時間仮焼して結晶質のZrO固溶体粉体を得た。そして、この結晶質の固溶体粉体を整粒した後、成形(196MPa)し、ついで冷間静水圧(392MPa)プレス処理し、その後、市販のピストンシリンダー型高圧発生装置を用いて、加圧圧力1GPa、焼結温度900℃、保持時間30分の条件下で高圧焼結を行い、焼結体を得た。
このようにして作製されたZrO‐Al固溶体セラミックスの特性値を測定したところ、曲げ強度σが1.125GPaで、破壊靱性値KICが15.8MPa・m1/2であることが確認されたが、1GPa以上の曲げ強度と、15MPa・m1/2以上の破壊靱性値を達成するには、上記の如く、非常に高い圧力下での成形工程、冷間静水圧プレス処理工程、焼結工程が必要であることがわかった。
【実施例】
【0024】
実施例3:固溶体粉体を用いて作製したZrO(1.5Y)‐25mol%Al固溶体セラミックスと、混合粉体を用いて作製したZrO(3.0Y)‐25mol%Alコンポジットセラミックスとの機械的特性比較
焼結温度を1100~1350℃の範囲で変化させ、固溶体粉体を用いて作製したZrO(1.5Y)‐25mol%Al固溶体セラミックスと、混合粉体を焼結して作製したZrO(3.0Y)‐25mol%Alコンポジットセラミックスについて、それぞれの機械的特性(曲げ強度、ビッカース硬度、破壊靱性値)を測定した。図6には、その結果が示されており、(a)は曲げ強度σの変化、(b)はビッカース硬度Hの変化、(c)は破壊靱性値KICの変化を示すグラフであり、○は固溶体粉体を使用した場合、□は混合粉体を使用した場合である。
図6のグラフから、固溶体粉体を使用し、かつ、焼結温度が1250~1350℃の範囲において、曲げ強度σ1000MPa以上、破壊靭性値KIC18MPa・m1/2以上のZrO(1.5Y)‐25mol%Al固溶体セラミックスが作製できることがわかった。尚、混合粉体を焼結して作製したZrO(3.0Y)‐25mol%Alコンポジットセラミックスの場合には、ビッカース硬度は大きくなる(16GPa以上)が、曲げ強度が1000MPa以下となり、破破壊靭性値が7MPa・m1/2以下となる。
【実施例】
【0025】
実施例4:Y添加量を変化させた際の、破壊靱性値及びビッカース硬度の変化
の添加量を0~3mol%の範囲で変化させた際の、破壊靱性値及びビッカース硬度の変化を測定した。尚、焼結条件は、圧力50~60MPa、焼結温度1300℃、保持時間10分とした。その結果を図7に示す。
図7(a)のグラフから、破壊靱性値KICに関して、Y添加量が0.3~1.7mol%の範囲において15MPa・m1/2以上となり、0.7~1.5mol%の範囲では18MPa・m1/2以上となることがわかった。又、このような添加量の範囲における曲げ強度は1GPa以上であることが確認された。尚、図7(b)のグラフから、ビッカース硬度に関しては、Y添加量が0.3~1.7mol%の範囲において12GPa以上となり、0.7~1.5mol%の範囲では14GPa以上となることがわかった。
このことから、高強度強靱性のZrO‐Al系固溶体セラミックスを作製するためのY添加量は0.3~1.7mol%の範囲であり、特に好ましい範囲は0.7~1.5mol%であることがわかった。
【実施例】
【0026】
実施例5:ゾル‐ゲル法を用いて得られた原料から作製されたZrO(1.5Y)‐25mol%Al固溶体セラミックス(本発明品)の機械的特性と、水溶性原料を用いて得られたものの機械的特性
図8に記載した製造条件にて、3種類のZrO(1.5Y)‐25mol%Al固溶体セラミックスを製造し、それぞれについて各種機械的特性を測定した。
図8に示された測定結果から、ゾル‐ゲル法による原料を用いた場合(本発明の製法)の場合には、作製された固溶体セラミックスの結晶構造において単斜晶(m)よりも正方晶(t)の割合が高くなり、1000MPa以上の曲げ強度を有し、15MPa・m1/2以上の破壊靱性値を有した固溶体セラミックスが得られるが、ゾル‐ゲル法を用いない場合には、本発明の製法にて得られる固溶体セラミックスのような優れた機械的特性を有するものが作製できないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の作製法を用いて得られるZrO‐Al系固溶体セラミックスは、1GPa以上の曲げ強度と、15MPa・m1/2以上の破壊靱性値を有しているので、高強度及び強靱性が求められる各種用途、例えばセラミックス製機械部品、生体用セラミックス(人工歯根、人工関節、人工骨)、家庭用包丁、まな板等に利用可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図5】
2
【図6】
3
【図7】
4
【図8】
5
【図3】
6
【図4】
7