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明細書 :胚盤胞とその生産方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-174553 (P2016-174553A)
公開日 平成28年10月6日(2016.10.6)
発明の名称または考案の名称 胚盤胞とその生産方法
国際特許分類 C12N   5/073       (2010.01)
A61K  35/54        (2015.01)
A61P  15/00        (2006.01)
FI C12N 5/00 202B
A61K 35/54
A61P 15/00
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2015-055960 (P2015-055960)
出願日 平成27年3月19日(2015.3.19)
発明者または考案者 【氏名】吉川 史隆
【氏名】岩瀬 明
【氏名】堀 勝
【氏名】水野 正明
【氏名】田中 宏昌
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100087723、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 修
【識別番号】100165962、【弁理士】、【氏名又は名称】一色 昭則
審査請求 未請求
テーマコード 4B065
4C087
Fターム 4B065AA90X
4B065BA30
4B065BB40
4B065CA44
4C087AA03
4C087BB61
4C087BB64
4C087NA14
4C087ZA81
要約 【課題】 内部細胞塊(ICM)の密度の高い胚盤胞を成長させることを図ったヒト胚盤胞とその生産方法を提供することである。
【解決手段】 ヒト胚盤胞の生産方法は、培養液に非平衡大気圧プラズマを照射するプラズマ照射工程と、非平衡大気圧プラズマを照射した培養液で受精卵を培養する受精卵培養工程と、を有する。
【選択図】図8
特許請求の範囲 【請求項1】
胚盤胞の生産方法において、
培養液に非平衡大気圧プラズマを照射するプラズマ照射工程と、
非平衡大気圧プラズマを照射した培養液で受精卵を培養する受精卵培養工程と、
を有すること
を特徴とする胚盤胞の生産方法。
【請求項2】
請求項1に記載の胚盤胞の生産方法において、
前記非平衡大気圧プラズマのプラズマ密度とプラズマ照射時間との積であるプラズマ密度時間積は、
3×1016sec・cm-3以上3×1018sec・cm-3以下であること
を特徴とする胚盤胞の生産方法。
【請求項3】
胚盤胞において、
非平衡大気圧プラズマを照射した培養液で受精卵を培養したものであること
を特徴とする胚盤胞。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本明細書の技術分野は、胚盤胞とその生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体外受精技術は、家畜の品種改良やヒトの不妊治療に応用されている。体外受精においては、例えば、次のような手順を実施する。まず、生体外で卵子と精子とを受精させて受精卵を生産する。次に、その受精卵を胚盤胞の段階まで培養する。そして、その胚盤胞を子宮に移植する。
【0003】
特許文献1には、受精卵を培養する培養装置および培養方法について開示されている。この培養装置は、チャネルを有する。そして、チャネルの内部に受精卵と培養液とを充填する。そして、そのチャネルの姿勢を変更したり、チャネルを介して受精卵に物理的刺激を与える(特許文献1の段落[0032]-[0039]等参照)。これにより、受精卵の培養環境が、より生体に近いものとなる旨が開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2008-271964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、体外受精の成功率は、約25%程度であると記載されている(特許文献1の段落[0003]参照)。また、子宮に移植する胚盤胞として良好なものを選択した場合には、胚盤胞1個当たりの妊娠率は、30%-40%程度である。
【0006】
そして、近年、胚盤胞における内部細胞塊(Inner Cell Mass:ICM)の密度が高いほど、妊娠率が高いことが明らかとなってきている。
【0007】
本明細書の技術は、前述した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは、内部細胞塊(ICM)の密度の高い胚盤胞を成長させることを図った胚盤胞とその生産方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様における胚盤胞の生産方法は、培養液に非平衡大気圧プラズマを照射するプラズマ照射工程と、非平衡大気圧プラズマを照射した培養液で受精卵を培養する受精卵培養工程と、を有する。
【0009】
この胚盤胞の生産方法では、非平衡大気圧プラズマを照射した培養液で受精卵を培養する。そのため、内部細胞塊の割合の高い胚盤胞を生産することができる。内部細胞塊の割合が高いため、この胚盤胞を子宮に移植する場合の妊娠率は従来の場合の妊娠率に比べて高い。
【0010】
第2の態様における胚盤胞の生産方法においては、非平衡大気圧プラズマのプラズマ密度とプラズマ照射時間との積であるプラズマ密度時間積は、3×1016sec・cm-3以上3×1018sec・cm-3以下である。
【0011】
第3の態様における胚盤胞は、非平衡大気圧プラズマを照射した培養液で受精卵を培養したものである。
【発明の効果】
【0012】
本明細書では、内部細胞塊(ICM)の密度の高い胚盤胞を成長させることを図った胚盤胞とその生産方法が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態のプラズマ装置の概略構成を説明するための概念図である。
【図2】図2.Aは第1のプラズマ発生部の構成を示す断面図であり、図2.Bは電極の形状を示す図である。
【図3】図3.Aは第2のプラズマ発生部の構成を示す断面図であり、図3.Bはプラズマ領域の長手方向に垂直な断面における部分断面図である。
【図4】プラズマ装置が培養液にプラズマを照射している様子を示す図である。
【図5】胚盤胞の総細胞数を示すグラフである。
【図6】胚盤胞の内部細胞塊(ICM)の細胞数を示すグラフである。
【図7】胚盤胞の栄養外胚葉(TE)の細胞数を示すグラフである。
【図8】胚盤胞における栄養外胚葉(TE)の細胞数に対する内部細胞塊(ICM)の細胞数の比を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、具体的な実施形態について、ヒト胚盤胞とその生産方法を例に挙げて図を参照しつつ説明する。

【0015】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について説明する。本実施形態のヒト胚盤胞の生産方法は、培養液に非平衡大気圧プラズマを照射するプラズマ照射工程と、非平衡大気圧プラズマを照射した培養液で受精卵を培養する受精卵培養工程と、を有する。そのため、まず、プラズマ装置について説明する。

【0016】
1.プラズマ装置
1-1.プラズマ装置の構成
図1は、本実施形態のプラズマ装置PMの概略構成を示す図である。本実施形態のプラズマ装置PMは、図1に示すように、プラズマ照射部P1と、アームロボットM1と、を有している。プラズマ照射部P1は、非平衡大気圧プラズマを発生させるとともに、その非平衡大気圧プラズマを培養液に向けて照射するためのものである。

【0017】
アームロボットM1は、図1に示すように、プラズマ照射部P1の位置をx軸、y軸、z軸方向のそれぞれの方向に移動させることができるようになっている。なお、説明の便宜上、プラズマを照射する向きを-z軸方向としている。これにより、溶液の液面と、プラズマ照射部P1との間の距離を調整することができる。また、このプラズマ装置PMは、予めプラズマ照射時間を設定することにより、その時間だけプラズマを照射することができるものである。

【0018】
プラズマ照射部P1には、後述するように、2種類の方式(第1のプラズマ発生部P10および第2のプラズマ発生部P20)がある。そして、いずれの方式を用いてもよい。

【0019】
1-2.第1のプラズマ発生部
図2.Aはプラズマ発生部P10の概略構成を示す断面図である。ここで、プラズマ発生部P10は、プラズマを点状に噴出する第1のプラズマ発生部である。図2.Bは、図2.Aのプラズマ発生部P10の電極2a、2bの形状の詳細を示す図である。

【0020】
プラズマ発生部P10は、筐体部10と、電極2a、2bと、電圧印加部3と、を有している。筐体部10は、アルミナ(Al2 3 )を原料とする焼結体から成るものである。そして、筐体部10の形状は、筒形状である。筐体部10の内径は2mm以上3mm以下である。筐体部10の厚みは0.2mm以上0.3mm以下である。筐体部10の長さは10cm以上30cm以下である。筐体部10の両端には、ガス導入口10iと、ガス噴出口10oとが形成されている。ガス導入口10iは、プラズマを発生させるためのガスを導入するためのものである。ガス噴出口10oは、プラズマを筐体部10の外部に照射するための照射部である。なお、ガスの移動する向きは、図中の矢印の向きである。

【0021】
電極2a、2bは、対向して配置されている対向電極対である。電極2a、2bの対向面方向の長さは、筐体部10の内径より小さい。例えば1mm程度である。電極2a、2bには、図2.Bに示すように、対向面のそれぞれに凹部(ホロー)Hが多数形成されている。そのため、電極2a、2bの対向面は、微細な凹凸形状となっている。なお、この凹部Hの深さは、0.5mm程度である。

【0022】
電極2aは、筐体部10の内部であってガス導入口10iの近傍に配置されている。電極2bは、筐体部10の内部であってガス噴出口10oの近傍に配置されている。そのため、プラズマ発生部P10では、電極2aの対向面の反対側からガスを導入するとともに、電極2bの対向面の反対側にガスを噴出するようになっている。そして、電極2a、2b間の距離は、24cmである。電極2a、2b間の距離は、これより小さい距離であってもよい。

【0023】
電圧印加部3は、電極2a、2b間に交流電圧を印加するためのものである。電圧印加部3は、商用交流電圧である、60Hz、100Vを用いて9kVに昇圧するとともに、電極2a、2b間に電圧を印加する。

【0024】
ガス導入口10iからアルゴンを導入するとともに、電圧印加部3により、電極2a、2b間に電圧を印加すると、筐体部10の内部にプラズマが発生する。図2.Aの斜線で示すように、プラズマが発生する領域をプラズマ発生領域Pとする。プラズマ発生領域Pは、筐体部10に覆われている。

【0025】
1-3.第2のプラズマ発生部
図3.Aはプラズマ発生部P20の概略構成を示す断面図である。ここで、プラズマ発生部P20は、プラズマを線状に噴出する第2のプラズマ発生部である。図3.Bは、図3.Aのプラズマ発生部P20のプラズマ領域Pの長手方向に垂直な断面における部分断面図である。

【0026】
プラズマ発生部P20は、筐体部11と、電極2a、2bと、電圧印加部3と、を有している。筐体部11は、アルミナ(Al2 3 )を原料とする焼結体から成るものである。筐体部11の両端には、ガス導入口11iと、多数のガス噴出口11oとが形成されている。ガス導入口11iは、図3.Aの左右方向を長手方向とするスリット形状をしている。ガス導入口11iからプラズマ領域Pの直上までのスリット幅(図3.Bの左右方向の幅)は1mmである。

【0027】
ガス噴出口11oは、プラズマを筐体部11の外部に照射するための照射部である。ガス噴出口11oは、円筒形状もしくはスリット形状である。円筒形状の場合のガス噴出口11oは、プラズマ領域の長手方向に沿って一直線状に形成されている。ガス噴出口11oの内径は1mm以上2mm以下の範囲内である。また、スリット形状の場合には、ガス噴出口11oのスリット幅を1mm以下とすることが好ましい。これにより、安定したプラズマが形成される。また、ガス導入口11iは、電極2aと電極2bとを結ぶ線と交差する向きにガスを導入するようになっている。

【0028】
電極2a、2bおよび電圧印加部3については、図1に示したプラズマ発生部P10と同じものである。そして、同様に、商用交流電圧を用いて、電極2a、2b間に電圧を印加する。これにより、プラズマを一直線状に噴出することができる。

【0029】
また、この一直線状にプラズマを噴出するプラズマ発生部P20を図3.Bの左右方向に列状に並べて配置すれば、プラズマをある長方形の領域にわたって平面的に噴出することができる。

【0030】
2.プラズマ発生部により発生されるプラズマ
2-1.第1のプラズマ発生部および第2のプラズマ発生部
プラズマ発生部P10、P20により発生されるプラズマは、非平衡大気圧プラズマである。ここで、大気圧プラズマとは、0.5気圧以上2.0気圧以下の範囲内の圧力であるプラズマをいう。

【0031】
本実施の形態では、プラズマ発生ガスとして、主にArガスを用いる。プラズマ発生部P10、P20により発生されるプラズマの内部では、もちろん、電子と、Arイオンとが生成されている。そして、Arイオンは、紫外線を発生する。また、このプラズマは大気中に放出されているため、大気中の分子に由来するラジカル等を発生させる。

【0032】
このプラズマのプラズマ密度は、1×1014cm-3以上1×1017cm-3以下の範囲内である。なお、誘電体バリア放電により発生されるプラズマにおけるプラズマ密度は、1×1011cm-3以上1×1013cm-3以下の程度である。したがって、プラズマ発生部P10、P20により発生されるプラズマのプラズマ密度は、誘電体バリア放電により発生されるプラズマのプラズマ密度に比べて、3桁程度大きい。したがって、このプラズマの内部では、より多くのArイオンが生成する。そのため、ラジカルや、紫外線の発生量も多い。なお、このプラズマ密度は、プラズマ内部の電子密度にほぼ等しい。

【0033】
そして、このプラズマ発生時におけるプラズマ温度は、およそ1000K以上2500K以下の範囲内である。また、このプラズマにおける電子温度は、ガスの温度に比べて大きい。しかも、電子の密度が1×1014cm-3以上1×1017cm-3以下の範囲内の程度であるにもかかわらず、ガスの温度はおよそ1000K以上2500K以下の範囲内である。このプラズマの温度は、プラズマの発生しているプラズマ領域Pでの温度である。したがって、プラズマの条件や、ガス噴出口から液面までの距離を異なる条件とすることにより、液面の位置でのプラズマ温度を室温程度とすることができる。

【0034】
2-2.プラズマ密度時間積
プラズマ密度時間積は、プラズマ密度とプラズマ照射時間との積である。プラズマ密度時間積は、培養液に照射されたプラズマ生成物(ラジカル等)の総量にほぼ比例する。プラズマ発生部P10、P20により発生されるプラズマのプラズマ密度を、1×1017cm-3であるとする。プラズマ照射時間は、1秒以上10秒以下であると仮定する。このとき、プラズマ密度時間積は、1×1017sec・cm-3以上1×1018sec・cm-3以下である。

【0035】
プラズマ密度時間積は、例えば、3×1016sec・cm-3以上3×1018sec・cm-3以下であるとよい。好ましくは、5×1016sec・cm-3以上2×1018sec・cm-3以下である。より好ましくは、1×1017sec・cm-3以上1×1018sec・cm-3以下である。プラズマ照射時間は、プラズマ密度に応じて設定するとよい。

【0036】
3.ヒト胚盤胞
本実施形態のヒト胚盤胞は、非平衡大気圧プラズマを照射した培養液で受精卵を培養したものである。そして、このヒト胚盤胞は、その受精卵を胚盤胞まで成長させたものである。胚盤胞は、内部細胞塊(ICM)と栄養外胚葉(TE)とを有している。内部細胞塊(ICM)は、胎児となる部分である。栄養外胚葉(TE)は、胎盤や胚膜に分化する部分である。本実施形態のヒト胚盤胞の内部細胞塊(ICM)の密度は、プラズマによる処置を施していないヒト胚盤胞の内部細胞塊(ICM)の密度より高い。そのため、本実施形態のヒト胚盤胞を子宮に移植することにより、妊娠率は向上する。

【0037】
4.ヒト胚盤胞の生産方法
4-1.受精卵準備工程
本実施形態のヒト胚盤胞の生産方法について説明する。まず、ヒトの卵巣から卵子を採取する。そして、採取した卵子に精子を供給して体外受精させる。これにより、受精卵を得る。

【0038】
4-2.プラズマ照射工程
次に、図4に示すように、培養液に非平衡大気圧プラズマを照射する。その際に、本実施形態のプラズマ装置PMを用いればよい。プラズマ密度は、1×1014cm-3以上1×1017cm-3以下の範囲内である。非平衡大気圧プラズマを培養液に照射する照射時間(プラズマの照射時間)は、例えば、1秒以上10秒以下である。

【0039】
4-3.受精卵培養工程
次に、非平衡大気圧プラズマを照射した培養液で受精卵を培養する。そして、受精卵をヒト胚盤胞の段階まで成長させる。

【0040】
5.変形例
5-1.培養液の交換
受精卵の成長段階に応じて培養液の種類を交換してもよい。受精卵の成長段階に応じた好適な環境下に受精卵をおくことで、品質の高い受精卵を成長させるためである。そして、受精卵の成長段階に応じて培養液の種類を交換する際に、新たな培養液に非平衡大気圧プラズマを照射してもよい。

【0041】
5-2.プラズマの照射
本実施形態では、非平衡大気圧プラズマを照射した培養液で受精卵を培養する。しかし、受精卵を培養している最中の培養液に非平衡大気圧プラズマを照射してもよい。その場合には、受精卵が受精してから細胞分裂を開始するまでの間に受精卵を培養している培養液に非平衡大気圧プラズマを照射するとよい。そして、その培養液で受精卵を引き続き培養するとよい。

【0042】
5-3.動物の胚盤胞
本実施形態の胚盤胞は、ヒト胚盤胞である。しかし、その他の動物の受精卵についても本明細書の技術を適用することができる。例えば、家畜となる動物や、水産資源となる魚類等に対しても、本明細書の技術を適用することができる。

【0043】
6.本実施形態のまとめ
以上詳細に説明したように、本実施形態のヒト胚盤胞は、受精卵を培養する培養液に非平衡大気圧プラズマを照射し、その培養液中で受精卵を胚盤胞まで成長させたものである。このヒト胚盤胞の内部細胞塊(ICM)の密度は、プラズマを照射していない培養液で培養したヒト胚盤胞の内部細胞塊(ICM)の密度より高い。そのため、本実施形態のヒト胚盤胞を子宮に移植することにより、妊娠率は向上する。
【実施例】
【0044】
1.実験A
1-1.実験方法
本実験では、マウスの受精卵を用いた。培養液に非平衡大気圧プラズマを照射した。このようにプラズマを照射した培養液をプラズマ培養液ということとする。そして、プラズマ培養液中でマウスの受精卵を胚盤胞の状態になるまで培養した。また、この胚盤胞と比較するために、プラズマを照射しない通常の培養液中でマウスの受精卵を胚盤胞の状態になるまで培養した。そして、プラズマ培養液で培養した胚盤胞と通常の培養液で培養した胚盤胞とを比較した。
【実施例】
【0045】
本実験におけるプラズマ装置のプラズマ密度は、1.0×1017cm-3であった。プラズマ照射時間は、5秒であった。プラズマ密度時間積は、5.0×1017sec・cm-3であった。液面からガス噴出口までの距離は5mmであった。
【実施例】
【0046】
1-2.実験結果
図5は、胚盤胞の総細胞数を示すグラフである。図5の縦軸は、胚盤胞の総細胞数である。つまり、内部細胞塊(ICM)の細胞数と栄養外胚葉(TE)の細胞数との和である。そして、図5は、プラズマ培養液で培養した胚盤胞(plasma)の総細胞数と、通常の培養液で培養した胚盤胞(control)の総細胞数と、を示す。
【実施例】
【0047】
図5に示すように、プラズマ培養液で培養した胚盤胞(plasma)の総細胞数は、約88である。通常の培養液で培養した胚盤胞(control)の総細胞数は、約93である。このように、プラズマ培養液で培養した胚盤胞(plasma)の総細胞数は、通常の培養液で培養した胚盤胞(control)の総細胞数よりもやや少ない。
【実施例】
【0048】
図6は、胚盤胞の内部細胞塊(ICM)の細胞数を示すグラフである。図6の縦軸は、胚盤胞の内部細胞塊(ICM)の細胞数である。そして、図6は、プラズマ培養液で培養した胚盤胞(plasma)の内部細胞塊(ICM)の細胞数と、通常の培養液で培養した胚盤胞(control)の内部細胞塊(ICM)の細胞数と、を示す。
【実施例】
【0049】
図6に示すように、プラズマ培養液で培養した胚盤胞(plasma)の内部細胞塊(ICM)の細胞数は、約25である。通常の培養液で培養した胚盤胞(control)の内部細胞塊(ICM)の細胞数は、約17である。このように、プラズマ培養液で培養した胚盤胞(plasma)の内部細胞塊(ICM)の細胞数は、通常の培養液で培養した胚盤胞(control)の内部細胞塊(ICM)の細胞数よりも多い。
【実施例】
【0050】
図7は、胚盤胞の栄養外胚葉(TE)の細胞数を示すグラフである。図7の縦軸は、胚盤胞の栄養外胚葉(TE)の細胞数である。そして、図7は、プラズマ培養液で培養した胚盤胞(plasma)の栄養外胚葉(TE)の細胞数と、通常の培養液で培養した胚盤胞(control)の栄養外胚葉(TE)の細胞数と、を示す。
【実施例】
【0051】
図7に示すように、プラズマ培養液で培養した胚盤胞(plasma)の栄養外胚葉(TE)の細胞数は、約63である。通常の培養液で培養した胚盤胞(control)の栄養外胚葉(TE)の細胞数は、約76である。このように、プラズマ培養液で培養した胚盤胞(plasma)の栄養外胚葉(TE)の細胞数は、通常の培養液で培養した胚盤胞(control)の栄養外胚葉(TE)の細胞数よりもやや少ない。
【実施例】
【0052】
図8は、胚盤胞における栄養外胚葉(TE)の細胞数に対する内部細胞塊(ICM)の細胞数の比を示すグラフである。図8の縦軸は、胚盤胞における栄養外胚葉(TE)の細胞数に対する内部細胞塊(ICM)の細胞数の比(以下、単に「細胞数比」という)である。そして、図8は、プラズマ培養液で培養した胚盤胞(plasma)の細胞数比と、通常の培養液で培養した胚盤胞(control)の細胞数比と、を示す。
【実施例】
【0053】
図8に示すように、プラズマ培養液で培養した胚盤胞(plasma)における細胞数比は、約0.28である。通常の培養液で培養した胚盤胞(control)における細胞数比は、約0.19である。このように、プラズマ培養液で培養した胚盤胞(plasma)の細胞数比は、通常の培養液で培養した胚盤胞(control)の細胞数比よりも大きい。
【実施例】
【0054】
以上の結果を表1にまとめる。
【実施例】
【0055】
[表1]
プラズマ培養液 通常の培養液
総細胞数 87.9±9.2 93.3±9.9
内部細胞塊の細胞数 24.5±5.7 17.4±3.4
栄養外胚葉の細胞数 63.3±13.5 75.8±9.7
細胞数比 0.28±0.08 0.19±0.03
【実施例】
【0056】
このように、プラズマを照射した培養液で受精卵を培養することにより、胚盤胞の総細胞数はやや少なくなるものの、内部細胞塊(ICM)の細胞数は増加する。そのため、プラズマを照射した培養液で受精卵を培養することにより、受精卵の細胞の分化の状態は変化する。そして、上記のように、内部細胞塊(ICM)の密度の高い胚盤胞が得られる。つまり、状態の良好な胚盤胞が生産される。したがって、妊娠率は向上する。
【実施例】
【0057】
なお、培養液へのプラズマの照射時間が長くなると、胚盤胞の段階まで発育する受精卵の割合は少なくなる。そのため、プラズマ照射時間は、プラズマ密度にもよるが、例えば、30秒以下であるとよい。また、10秒以下であるとよい。また、本実験は、マウスについての実験である。しかし、ヒトの受精卵についても、本明細書の技術を適用することにより、良好なヒト胚盤胞が得られると考えられる。また、その他の動物一般にも、本明細書の技術を適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
PM…プラズマ装置
P1…プラズマ照射部
M1…ロボットアーム
P10、P20…プラズマ発生部
10、11…筐体部
10i、11i…ガス導入口
10o、11o…ガス噴出口
2a、2b…電極
P…プラズマ領域
H…凹部(ホロー)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7