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明細書 :加工方法及び加工装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-127130 (P2016-127130A)
公開日 平成28年7月11日(2016.7.11)
発明の名称または考案の名称 加工方法及び加工装置
国際特許分類 H01L  21/304       (2006.01)
C30B  29/04        (2006.01)
FI H01L 21/304 622W
C30B 29/04 V
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2014-266464 (P2014-266464)
出願日 平成26年12月26日(2014.12.26)
発明者または考案者 【氏名】久保田 章亀
出願人 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100114627、【弁理士】、【氏名又は名称】有吉 修一朗
【識別番号】100182501、【弁理士】、【氏名又は名称】森田 靖之
【識別番号】100190975、【弁理士】、【氏名又は名称】遠藤 聡子
【識別番号】100194984、【弁理士】、【氏名又は名称】梶原 圭太
審査請求 未請求
テーマコード 4G077
5F057
Fターム 4G077AA02
4G077BA03
4G077FG13
4G077FG20
4G077HA06
4G077HA12
5F057AA01
5F057BA30
5F057BB02
5F057CA11
5F057DA31
5F057DA40
5F057EB26
要約 【課題】ダイヤモンド等の難加工性の高機能材料表面の微小な領域を高能率かつ高精度に加工することができる加工方法及びこうした加工方法を実現可能な加工装置を提供する。
【解決手段】加工装置1は、オゾンガス供給ポート2と、無機酸化物製工具3と、ダイヤモンド部材4を保持する試料ホルダー5を有している。オゾンガス供給ポート2は、無機酸化物製工具3の先端近傍に配置され、無機酸化物製工具3及びダイヤモンド部材4の接触部位にむけてオゾンガス6を供給する。無機酸化物製工具3の先端表面は、オゾンにより清浄化かつ親水化処理され、ダイヤモンド部材4が接して被加工物が研磨されることとなる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
金属酸化物で構成された微小な加工部材を被加工物と接触させ、接触部位にオゾンを供給し前記加工部材を清浄化かつ親水化処理すると共に、前記加工部材を前記被加工物に接触させた状態で変位させる工程を備える
加工方法。
【請求項2】
前記加工部材の清浄化かつ親水化処理は、前記加工部材と被加工部材の接触部位に近接した位置からオゾンを供給して行う
請求項1に記載の加工方法。
【請求項3】
前記加工部材は、Alから構成される単結晶状態のサファイア、コランダム、サファイアガラス、サファイアクリスタル、多結晶状態のアルミナ、アルミナセラミックスのうちいずれか1つからなり、
前記被加工物は、ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、CVDダイヤモンド、DLC膜のうちいずれか1つからなる
請求項1または請求項2に記載の加工方法。
【請求項4】
金属酸化物で構成された微小な加工部材と、
所定の被加工物を前記加工部材と接触させて保持する保持機構と、
前記加工部材にオゾンを供給するオゾン供給部と、
前記加工部材と前記被加工物を接触させた状態で、前記加工部材を変位させる駆動部とを備える
加工装置。
【請求項5】
前記オゾン供給部が前記加工部材と被加工部材の接触部位に近接して配置された
請求項4に記載の加工装置。
【請求項6】
前記加工部材は、Alから構成される単結晶状態のサファイア、コランダム、サファイアガラス、サファイアクリスタル、多結晶状態のアルミナ、アルミナセラミックスのうちいずれか1つからなり、
前記被加工物は、ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、CVDダイヤモンド、DLC膜のうちいずれか1つからなる
請求項4または請求項5に記載の加工装置。
【請求項7】
金属酸化物で構成された微小な加工部材を被加工物と接触させ、同加工部材を清浄化かつ親水化処理すると共に、前記加工部材及び前記被加工物の接触部位の周囲の窒素を捕捉して前記加工部材を前記被加工物に接触させた状態で変位させる工程を備える
加工方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は加工方法及び加工装置に関する。詳しくは、ダイヤモンド等の難加工性の高機能材料表面の微小な領域を高能率かつ高精度に加工することができる加工方法及びこうした加工方法を実現可能な加工装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンド半導体は、半導体の中で最も高い絶縁耐圧と最も高い熱伝導率という優れた特性を持つため、次世代パワー半導体デバイス用材料として有力視されている。
【0003】
ダイヤモンドを用いて半導体デバイスを製作するためには、デバイスの下地となるダイヤモンド基板表面を原子レベルで平滑、かつ無擾乱に仕上げる加工技術が必要不可欠であるといわれている。しかしながら、ダイヤモンドは、高硬度かつ化学的に安定であるために、加工することは極めて難しく、加工技術の開発が技術的課題となっている。
【0004】
このため、ダイヤモンドからなる基板の被研磨面に研磨定盤を高圧で接触させると共に、研磨定盤の裏面から基板の研磨面に紫外線を照射しつつ、基板を研磨定盤に対して相対的に擦動させることにより研磨する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ここで、特許文献1に記載の技術では、被加工物である基板の被研磨面に紫外光等の光を直接照射しようとすると、設備が複雑化してしまい、汎用的な加工装置での加工が困難となっていた。
【0006】
こうしたなか、本願の発明者は、高い加工速度を汎用的な装置でも実現可能な加工方法を提案しており、例えば、特許文献2に記載の技術が存在する。
【0007】
特許文献2には、図15に示す加工装置1が記載されている。加工装置100は、合成石英定盤101と、紫外光を照射するための紫外光光源102と、被加工物となるダイヤモンド基板103を保持する試料ホルダー104を有している。
【0008】
合成石英定盤101及び試料ホルダー4はそれぞれ回転軸を中心として回転運動し、合成石英定盤101とダイヤモンド基板103が相対運動するものとなる。そして、合成石英定盤2の上面にダイヤモンド基板103が接して、ダイヤモンド基板103が研磨される。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】国際公開第2007/007683号
【特許文献2】国際公開第2014/034921号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載の加工装置では、加工部材に清浄化かつ親水化処理を施す紫外光光源を用いて、微小な領域への加工、例えば、ダイヤモンド切刃を有する精密切削工具の加工や金型表面の高精度な研磨を行うことが困難であった。
【0011】
具体的には、紫外光は大気中で不安定であり、瞬間的に保有するエネルギーを消失してしまうため、加工部材に均一に照射することが難しかった。特に、数μm程度の微小な領域に対しては均一な照射が難しく、安定的に高い加工精度を実現し難いものであった。
【0012】
また、紫外光はエネルギー的に不安定な性質のため、紫外光光源を加工部材になるべく近接させて照射する必要があるが、紫外光光源のサイズ的な制約があった。即ち、一般的なUVランプ等を加工対象の微小な領域に近づけるには限度があり、充分な加工精度を担保するには特別仕様の加工装置を設ける必要があった。
【0013】
本発明は以上の点に鑑みて創案されたものであって、ダイヤモンド等の難加工性の高機能材料表面の微小な領域を高能率かつ高精度に加工することができる加工方法及びこうした加工方法を実現可能な加工装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[加工方法について]
上記の目的を達成するために、本発明の加工方法は、金属酸化物で構成された微小な加工部材を被加工物と接触させ、接触部位にオゾンを供給し前記加工部材を清浄化かつ親水化処理すると共に、前記加工部材を前記被加工物に接触させた状態で変位させる工程を備える。
【0015】
ここで、金属酸化物で構成された微小な加工部材を被加工物と接触させ、接触部位にオゾンを供給し加工部材を清浄化かつ親水化処理することによって、加工部材の最表面部にOH基を表出させる。
そして、OH基が表出した加工部材の最表面部と被加工物を接触させた状態で加工部材を変位させることによって、加工部材を被加工物の表面と化学的に作用させた上で、被加工物の表面を機械的(物理的)に加工することができる。
【0016】
本発明では、微小な加工部材にオゾンを供給して、加工部材表面を改質(清浄化かつ親水化)し、その改質された領域と被加工物表面との化学的作用によって加工を実現するものである。
【0017】
また、金属酸化物で構成された微小な加工部材を被加工物と接触させ、接触部位にオゾンを供給することによって、被加工物の加工精度を向上させることができる。
【0018】
また、加工部材の清浄化かつ親水化処理を、加工部材と被加工部材の接触部位に近接した位置からオゾンを供給して行うと、より一層、微小な加工部材の最表面にOH基を表出させることができる。
【0019】
本発明では、微小な加工部材にオゾンを供給して、加工部材表面を改質(清浄化かつ親水化)し、その改質された領域と被加工物表面との化学的作用によって加工を実現するものである。一般的な紫外光光源に比べて、オゾンはより微小な供給が可能であるため、微小な加工部材に近接した位置からオゾンを供給することができる。この結果、オゾンの供給源の設置位置により自由度が高まり、微小な領域や微細な表面形状を有する被加工物を精度良く加工可能となる。なお、ここでいう、被加工物の微小な領域とは、μmオーダー以下のサイズの領域を意味するものである。
【0020】
なお、「金属酸化物で構成された微小な加工部材」としては、例えば、SiO、ZrO、Al、TiO2、Fe、MgO、CaO,NaO、KO等の無機酸化物や、SiC、SiN、Al等のセラミックス、及びそれらからなる構成材料で構成された加工部材が挙げられる。更に、被加工物としては、ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、CVDダイヤモンド、DLC膜等のダイヤモンド関連材料、SiC、GaN、サファイア、SiCセラミックス、Siセラミックス、AIN、ガラス等の硬脆材料等が挙げられる。
【0021】
また、加工部材が、Alから構成される単結晶状態のサファイア、コランダム、サファイアガラス、サファイアクリスタル、多結晶状態のアルミナ、アルミナセラミックスのうちいずれか1つからなり、被加工物が、ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、CVDダイヤモンド、DLC膜のうちいずれか1つからなる場合には、より一層充分に被加工部材を高精度に加工することが可能となる。即ち、加工部材の硬度が高く、かつ、熱伝導率に優れるものとなり、より高精度な加工が実現できる。
【0022】
[加工装置について]
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る加工装置は、金属酸化物で構成された微小な加工部材と、所定の被加工物を前記加工部材と接触させて保持する保持機構と、前記加工部材にオゾンを供給するオゾン供給部と、前記加工部材と前記被加工物を接触させた状態で、前記加工部材を変位させる駆動部とを備える。
【0023】
ここで、金属酸化物で構成された微小な加工部材と、所定の被加工物を加工部材と接触させて保持する保持機構と、保持機構にオゾンを供給するオゾン供給部によって、接触部位にオゾンを供給し加工部材を清浄化かつ親水化処理して、加工部材の最表面部にOH基を表出させることができる。
そして、加工部材と被加工物を接触させた状態で、加工部材を変位させる駆動部によって、加工部材を被加工物の表面と化学的に作用させた上で、被加工物の表面を機械的(物理的)に加工することができる。
【0024】
本発明では、微小な加工部材にオゾンを供給して、加工部材表面を改質(清浄化かつ親水化)し、その改質された領域と被加工物表面との化学的作用によって加工を実現するものである。
【0025】
また、保持機構にオゾンを供給するオゾン供給部によって、被加工物の加工精度を向上させることができる。
【0026】
また、オゾン供給部が前記加工部材と被加工部材の接触部位に近接して配置された場合には、より一層、微小な加工部材の最表面にOH基を表出させることができる。
【0027】
本発明では、微小な加工部材にオゾンを供給して、加工部材表面を改質(清浄化かつ親水化)し、その改質された領域と被加工物表面との化学的作用によって加工を実現するものである。一般的な紫外光光源に比べて、オゾンはより微小な供給が可能であるため、微小な加工部材に近接した位置からオゾンを供給することができる。この結果、オゾンの供給源の設置位置により自由度が高まり、微小な領域や微細な表面形状を有する被加工物を精度良く加工可能となる。なお、ここでいう、被加工物の微小な領域とは、μmオーダー以下のサイズの領域を意味するものである。
【0028】
なお、「金属酸化物で構成された微小な加工部材」としては、例えば、SiO、ZrO、Al、TiO、Fe、MgO、CaO,NaO、KO等の無機酸化物や、SiC、SiN、Al等のセラミックス、及びそれらからなる構成材料で構成された加工部材が挙げられる。更に、被加工物としては、ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、CVDダイヤモンド、DLC膜等のダイヤモンド関連材料、SiC、GaN、サファイア、SiCセラミックス、Siセラミックス、AIN、ガラス等の硬脆材料等が挙げられる。
【0029】
また、加工部材が、Alから構成される単結晶状態のサファイア、コランダム、サファイアガラス、サファイアクリスタル、多結晶状態のアルミナ、アルミナセラミックスのうちいずれか1つからなり、被加工物が、ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、CVDダイヤモンド、DLC膜のうちいずれか1つからなる場合には、より一層充分に被加工部材を高精度に加工することが可能となる。即ち、加工部材の硬度が高く、かつ、熱伝導率に優れるものとなり、より高精度な加工が実現できる。
【0030】
また、上記の目的を達成するために、本発明の加工方法は、金属酸化物で構成された微小な加工部材を被加工物と接触させ、同加工部材を清浄化かつ親水化処理すると共に、前記加工部材及び前記被加工物の接触部位の周囲の窒素を捕捉して前記加工部材を前記被加工物に接触させた状態で変位させる工程を備える。
【0031】
ここで、金属酸化物で構成された微小な加工部材を被加工物と接触させ、加工部材を清浄化かつ親水化処理することによって、加工部材の最表面部にOH基を表出させる。
そして、OH基が表出した加工部材の最表面部と被加工物を接触させた状態で加工部材を変位させることによって、加工部材を被加工物の表面と化学的に作用させた上で、被加工物の表面を機械的(物理的)に加工することができる。
【0032】
本発明では、微小な加工部材に清浄化かつ親水化処理を施し、加工部材表面を改質(清浄化かつ親水化)し、その改質された領域と被加工物表面との化学的作用によって加工を実現するものである。
【0033】
また、加工部材及び被加工物の周囲の窒素を捕捉することによって、被加工物の加工精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明を適用した加工方法及び加工装置では、ダイヤモンド等の難加工性の高機能材料表面の微小な領域を高能率かつ高精度に加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を適用した加工装置を説明するための模式図である。
【図2】本発明を適用した加工装置を説明するための模式図である。
【図3】加工部材の表面の親水性について、空気中に暴露したサンプル(a)、洗浄後にアセトンで処理したサンプル(b)、UVを照射したサンプル(c)及びオゾンガスを供給したサンプル(d)の接触角を示したデータである。
【図4】実施例2の被加工面の走査型白色干渉計象である。
【図5】実施例2の図4のA-A'断面のプロファイル(a)及び加工部内部の断面プロファイル(b)である。
【図6】比較例4の被加工面の走査型白色干渉計象である。
【図7】比較例4の図6のA-A'断面のプロファイル(a)及び加工部内部の断面プロファイル(b)である。
【図8】実施例2及び比較例4の加工能率を示すグラフである。
【図9】実施例2及び実施例3の加工能率を示すグラフである。
【図10】比較例5及び比較例6の加工能率を示すグラフである。
【図11】実施例4における2mm×2mmの加工領域とその周辺領域の形状の走査型白色干渉計象である。
【図12】実施例4の加工領域の一部(図11の符号(a)の領域)の表面粗さを非接触形状測定機で測定したデータである。
【図13】実施例4の非加工領域の一部(図11の符号(b)の領域)の表面粗さを非接触形状測定機で測定したデータである。
【図14】実施例4の加工領域の表面粗さを原子間力顕微鏡で測定したデータである。
【図15】従来の加工装置の構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」と称する)について説明する。
図1は本発明を適用した加工装置を説明するための模式図であり、ここで示す加工装置1は、オゾンガス供給ポート2と、無機酸化物製工具3と、ダイヤモンド部材4を保持する試料ホルダー5を有している。なお、ダイヤモンド部材4とは被加工物の一例であり、ダイヤモンド製切削刃やダイヤモンド製型のことを意味するものである。

【0037】
無機酸化物製工具3は、サファイアで形成された微小領域の加工が可能な加工部材の一例である。なお、ここでいう微小領域の加工とは、μmオーダー以下のサイズの加工を意味するものである。

【0038】
オゾンガス供給ポート2は、無機酸化物製工具3の先端近傍に配置され、無機酸化物製工具3及びダイヤモンド部材4の接触部位にむけてオゾンガス6を供給する。無機酸化物製工具3の先端表面は、オゾンにより清浄化かつ親水化処理され、ダイヤモンド部材4が接して被加工物が研磨されることとなる。

【0039】
ここで、本実施の形態では、加工部材がサファイアで形成されている場合を例に挙げて説明を行っているが、オゾンガスの供給で最表面を清浄化かつ親水化することができる材料であれば充分であって、必ずしもサファイアで形成される必要はなく、例えば、SiO、ZrO、Al、TiO、Fe、MgO、CaO,NaO、KO等の無機酸化物や、SiC、SiN、Al等のセラミックス等、及びそれらからなる構成材料で形成されていても構わない。

【0040】
また、無機酸化物製工具3の中心部は、図示しないモーターと接続された回転軸と連結されており、モーターによって無機酸化物製工具3が図1中符号rで示す方向に回転可能に構成されている。

【0041】
また無機酸化物製工具3は、図示しない駆動機構により水平方向にも移動可能に構成されている。試料ホルダー5は、ダイヤモンド部材4を固定した状態で保持し、無機酸化物製工具3とダイヤモンド部材4の接触状態を維持可能にしている。

【0042】
ここで、本実施の形態では、試料ホルダー5に保持される被加工物としてダイヤモンド部材4を例に挙げて説明を行っているが、被加工物の材料はダイヤモンドに限定されるものではなく、多結晶ダイヤモンド、CVDダイヤモンド及びDLC膜等のダイヤモンド関連材料や、SiC、GaN、サファイア、SiCセラミックス、Siセラミックス、AIN、ガラス等の硬脆材料等であっても構わない。

【0043】
また、本実施の形態では、被加工物がダイヤモンド部材4となっているが、その形状は切削刃に限定されるものではなく、微小な加工領域を有する形状であれば被加工物として対象となり、研削用工具や、高精度な研磨を要する金型表面であっても構わない。

【0044】
また、オゾンガス供給ポート2は特に大きさや形状が限定されるものではないが、微小な加工部材及び被加工物に近接した位置からオゾンガス6を供給可能とするため、ノズルの口径が小さいものが採用されることが好ましい。また、オゾンの拡散を低減するために、加工装置1をカバーで覆う構造も採用しうる。

【0045】
また、前述したように、必ずしも、加工部材及び被加工物の組み合わせが限定される必要はない。但し、加工部材として、高硬度かつ熱伝導率に優れ、組み合わせの相性から高精度な加工が実現可能となる点から、無機酸化物製工具3がAlから構成される単結晶状態のサファイア、コランダム、サファイアガラス、サファイアクリスタル、多結晶状態のアルミナ、アルミナセラミックスのうちいずれか1つで形成され、被加工物の素材としてダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、CVDダイヤモンド、DLC膜が採用されることが好ましい。

【0046】
以下、上記の様に構成された加工装置1を用いた加工方法について説明を行う。即ち、本発明を適用した加工方法の一例について説明を行う。

【0047】
図2に示すように、本発明を適用した加工方法の一例では、無機酸化物製工具3を回転させながらオゾンガス供給ポート2からオゾンガス6を供給する。

【0048】
即ち、無機酸化物製工具3の先端部表面にオゾンガス6を供給することで、無機酸化物製工具3の表面の清浄化かつ親水化処理を行う。具体的には、オゾンガスを照射して無機酸化物製工具3の最表面部にOH基を表出させることで、ダイヤモンド部材4の表面の原子との反応サイトを増加する。

【0049】
そして、反応サイトが増加した状態の無機酸化物製工具3の先端部表面とダイヤモンド部材4が接触した状態で無機酸化物製工具3が回転し、かつ、図2中の符号zで示す方向に移動することによって、反応サイトをダイヤモンド部材4の表面の原子と化学的に作用させた上で、ダイヤモンド部材4の表面を機械的に除去することとなる。

【0050】
[効果]
本発明を適用した加工方法及び加工装置は、加工部材にオゾンガスを供給して清浄化かつ親水化処理を行うものであるため、紫外光を照射する装置に比べ、加工部材の表面をより均一に処理可能なものとなっている。この結果、より安定的かつ高い加工精度を実現しうるものとなっている。

【0051】
また、本発明を適用した加工装置は、オゾンガス供給部のサイズ的な制約が、UVランプ等の一般的な紫外光光源に比べ少ないため、より微小な領域にオゾンガスを供給することができるものとなっている。

【0052】
また、本発明を適用した加工方法及び加工装置は、オゾンガスを使用することで、被加工物の加工精度を高めることができるものとなっている。

【0053】
また、本発明を適用した加工方法及び加工装置は、オゾンガスを使用することで、加工部材の表面上の有機物分子を分解かつ除去し、加工部材の表面上にOH基を表出させることができる。このことは、被加工物の有機物汚染を抑制することにもなる。

【0054】
更に、本発明を適用した加工方法及び加工装置は、砥粒を利用していないために、外部から各種金属が混入することがなく、金属汚染を抑制した状態での加工が実現することとなる。

【0055】
また、砥粒を利用した加工の場合には、砥粒をスラリーの状態で供給する必要があり、加工部材や被加工物がスラリーで湿った状態となってしまい、温度が上がりにくく加工が進み難い。
一方、本発明を適用した加工方法では、砥粒を利用していないためにスラリーが供給されることもなく、加工部材や被加工物が乾いた状態であり、摩擦熱も含めて温度が上がり易く化学反応が進みやすい。即ち、難加工材料の高精度、高能率な加工が実現することができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。なお、ここで示す実施例は一例であり本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0057】
(1)加工部材表面の親水性
加工部材としてサファイアを用い、清浄化かつ親水化処理による加工部材表面の親水性について確認を行った。
[実施例1及び比較例1~3]
試料として、表面洗浄後オゾンガスを供給したものを実施例1、空気中に暴露したものを比較例1、表面洗浄後にアセトンで処理したものを比較例2、波長172nmのUVを1時間照射したものを比較例3として準備した。
加工部材表面の親水性の程度は、自動接触角計を用いた接触角(θ)の測定により確認した。加工部材表面の液滴の形状について、加工部材表面に相当する線と、液滴の輪郭曲線と加工部材表面との交点における輪郭曲線の接線とがなす角を接触角(θ)とした。
【実施例】
【0058】
図3(a)~図3(d)から明らかな様に、実施例1のオゾンガスを供給した試料(図3(d))や、比較例3のUV処理をした試料(図3(c))では、接触角の値が小さく、加工部材の表面が充分に親水化されていることが確認された。
【実施例】
【0059】
(2)オゾン供給及び大気下における加工精度及び加工能率
[実施例2、実施例3及び比較例4~6]
本発明の実施例2の加工方法として、被加工物となる単結晶ダイヤモンドをサンプルホルダーに固定し、サファイア工具を500gの荷重で押圧しながら、工具回転数3000rpm、揺動距離1mm、揺動速度1mm/sの条件で同サファイア工具によるライン加工を行った。また、被加工物とサファイア工具との接触部分に気体供給ポートのノズルを近づけて、オゾンガスを供給しながら、かかる状況で1時間の加工を行った。
実施例2と同様の方法で、工具として石英工具を用いたものを実施例3とした。
また、気体を供給せず大気下で加工を行ったものを比較例4とした。
更に、実施例2と同様にオゾンを供給し、工具として鉄製工具を用いたものを比較例5とした。また、比較例と4と同様に気体を供給せず大気下で、工具として鉄製工具を用いたものを比較例6とした。
上記の実施例及び比較例について、実施例2及び比較例4の加工精度を確認した。また、実施例2~3及び比較例4~6の加工能率を確認した。
【実施例】
【0060】
加工精度について、図4~図7でその結果を示す。また、加工能率について、図8~図10でその結果を示す。
図4は実施例2の被加工面の走査型白色干渉計象である。図5は、実施例2の図4のA-A'断面のプロファイル(a)及び加工部内部の断面プロファイル(b)である。図6は、比較例4の被加工面の走査型白色干渉計象である。図7は、比較例4の図6のA-A'断面のプロファイル(a)及び加工部内部の断面プロファイル(b)である。図8は、実施例2及び比較例4の加工能率を示すグラフである。図9は、実施例2及び実施例3の加工能率を示すグラフである。図10は、比較例5及び比較例6の加工能率を示すグラフである。
【実施例】
【0061】
図4~図7から明らかな様に、被加工物の微小な領域に対して、実施例2は比較例4よりも深く幅広い加工がなされていることが分かった。
【実施例】
【0062】
また、図5(a)及び図7(a)を比較すると、実施例2では幅300μm、深さ1.8μmの加工がなされ、比較例4では、幅190μm、深さ1.0μmの加工がなされていた。
【実施例】
【0063】
更に、図5(b)及び図7(b)は、微小な領域における加工方向に沿った断面プロファイルであるが、これらを比較すると、実施例2は加工面の凹凸の差が小さく、大幅に平滑化されていることが分かった。また、比較例4は、加工面の凹凸の差が大きく、平滑性の悪いものであった。
【実施例】
【0064】
図8~図10から明らかな様に、実施例2は充分な加工能率を有するものであった。また、実施例3は比較例5及び比較例6よりも高い加工能率を有するものであった。一方、オゾンを供給しない比較例4は実施例2よりも加工能率が低かった。また、鉄製工具を用いた比較例5及び比較例6の加工能率は、サファイア工具を用いた実施例2及び合成石英工具を用いた実施例3の加工能率よりも低いものとなった。
【実施例】
【0065】
(2)局所加工における加工精度
[実施例4]
本発明の実施例4の加工方法として、被加工物となる単結晶ダイヤモンドをサンプルホルダーに固定し、サファイア工具を500gの荷重で押圧しながら、工具回転数3000rpm、揺動距離2mm、揺動速度1mm/s、揺動速度1mm/s、送りピッチ1μm、走査エリア2mm×2mmの条件で同サファイア工具による局所加工を行った。また、被加工物とサファイア工具との接触部分に気体供給ポートのノズルを近づけて、オゾンガスを供給しながら、かかる状況で2.2時間の加工を行った。
上記の実施例4について、加工後の加工領域及び非加工領域の加工精度の確認を行った。
【実施例】
【0066】
加工精度について、図11~図14でその結果を示す。
図11は、実施例4における2mm×2mmの加工領域とその周辺領域の形状の走査型白色干渉計象である。図12は、実施例4の加工領域の一部(図11の符号(a)の領域)の表面粗さを非接触形状測定機で測定したデータである。図13は、実施例4の非加工領域の一部(図11の符号(b)の領域)の表面粗さを非接触形状測定機で測定したデータ(b)である。図14は、実施例4の加工領域の表面粗さを原子間力顕微鏡で測定したデータである。
【実施例】
【0067】
図11から明らかなように、局所加工により被加工物の2mm×2mmの対象領域が精度高く加工され、その加工深さは150nmであった。また、図12及び図13を比較すると、加工領域の面は、非加工領域の面に比して充分に平滑化していることが明らかとなった。また、図14の原子間力顕微鏡で測定したデータからも、加工領域のダイヤモンド表面がRmsで0.1nmを下回るほどに極めて平滑に加工されたことが分かった。
【符号の説明】
【0068】
1 加工装置
2 オゾンガス供給ポート
3 無機酸化物製工具
4 ダイヤモンド部材
5 試料ホルダー
6 オゾンガス
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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