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明細書 :水溶性放射性物質の除去・濃縮装置および水溶性放射性物質の除去・濃縮方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-118508 (P2016-118508A)
公開日 平成28年6月30日(2016.6.30)
発明の名称または考案の名称 水溶性放射性物質の除去・濃縮装置および水溶性放射性物質の除去・濃縮方法
国際特許分類 G21F   9/06        (2006.01)
G21F   9/12        (2006.01)
G21F   9/28        (2006.01)
FI G21F 9/06 561
G21F 9/12 501B
G21F 9/28 571F
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2014-259441 (P2014-259441)
出願日 平成26年12月22日(2014.12.22)
発明者または考案者 【氏名】守友 浩
【氏名】柴田 恭幸
【氏名】濱口 純
出願人 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100188558、【弁理士】、【氏名又は名称】飯田 雅人
審査請求 未請求
要約 【課題】水溶性放射性物質を含む水溶液の濃縮が可能であり、かつ、素子の再利用が可能な水溶性放射性物質の除去・濃縮装置および水溶性放射性物質の除去・濃縮方法を提供する。
【解決手段】水溶性放射性物質の除去・濃縮装置10は、水溶性放射性物質のイオンを含む水溶液または水溶性放射性物質のイオンを含まない水に浸漬される正極20および負極30と、正極20と負極30の間に直流電流を供給する電流供給手段40と、を備え、正極20は、化学式NaM[Fe(CN)(式中、Mは、Fe、Co、Ni、MnまたはCdを表わす。xは、0~2を表わす。yは、0~1を表わす。)で表わされるプルシャンブルー類似体を含み、電流供給手段40は、正極20と負極30の間を流れる直流電流の方向を切り替え可能である。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
水溶性放射性物質のイオンを含む水溶液または前記水溶性放射性物質のイオンを含まない水に浸漬される正極および負極と、前記正極と前記負極の間に直流電流を供給する電流供給手段と、を備え、
前記正極は、化学式NaM[Fe(CN)(式中、Mは、Fe、Co、Ni、MnまたはCdを表わす。xは、0~2を表わす。yは、0~1を表わす。)で表わされるプルシャンブルー類似体を含み、
前記電流供給手段は、前記正極と前記負極の間を流れる直流電流の方向を切り替え可能であることを特徴とする水溶性放射性物質の除去・濃縮装置。
【請求項2】
前記負極は、グラファイトからなることを特徴とする請求項1に記載の水溶性放射性物質の除去・濃縮装置。
【請求項3】
水溶性放射性物質のイオンを含む水溶液に、化学式NaM[Fe(CN)(式中、Mは、Fe、Co、Ni、MnまたはCdを表わす。xは、0~2を表わす。yは、0~1を表わす。)で表わされるプルシャンブルー類似体を含む正極と、負極とを浸漬し、前記正極と前記負極の間に直流電流を供給し、前記正極にて還元反応を生じさせ、前記正極に前記水溶性放射性物質のイオンを吸着させる工程と、
前記水溶性放射性物質のイオンを含む水溶液または前記水溶性放射性物質のイオンを含まない水に、前記水溶性放射性物質のイオンを吸着した前記正極と、前記負極とを浸漬し、前記正極と前記負極の間に直流電流を供給し、前記正極にて酸化反応を生じさせ、前記水溶性放射性物質のイオンを含む水溶液または前記水溶性放射性物質のイオンを含まない水に、前記正極に吸着した前記水溶性放射性物質のイオンを放出させる工程と、を有することを特徴とする水溶性放射性物質の除去・濃縮方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性放射性物質の除去・濃縮装置および水溶性放射性物質の除去・濃縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
福島原発事故以来、放射性セシウムの除去・濃縮・彫像技術の開発は、喫緊の課題となっている。事故後3年を経過した現在でも、日に日に増加し続ける汚染水を処理する決定的な手段がないように思われる。また、汚染水を処理できたとしても、放射性セシウムに汚染された大量の廃棄物の保管は、社会・政治問題となっており、解決の目処が立っていない。保管場所の問題が解決されたとしても、今後、気の遠くなるような長い年月の保管は、莫大なコストが掛かる上に、二次汚染の危険性もなくならない。
技術の観点から、上記のような問題に対処するには、放射性セシウムを除去するだけでは不充分である。放射性セシウムを濃縮し、廃棄物の量を極力減らす技術が不可欠である。廃棄物の量を減らすことができれば、保管場所も小さくなるばかりでなく、管理も容易になる。
従来、水溶性放射性セシウムの除去技術としては、イオン交換法が主流である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2013-148552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、イオン交換法において、低濃度の放射性セシウムを含む水溶液では、放射性セシウムを濃縮することができないため、大量の放射性廃棄物が生じてしまうという課題があった。また、イオン交換法では、イオン交換に用いた素子を再利用することができないため、大量の放射性廃棄物が生じてしまうという課題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、水溶性放射性物質を含む水溶液の濃縮が可能であり、かつ、素子の再利用が可能な水溶性放射性物質の除去・濃縮装置および水溶性放射性物質の除去・濃縮方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水溶性放射性物質の除去・濃縮装置は、水溶性放射性物質のイオンを含む水溶液または前記水溶性放射性物質のイオンを含まない水に浸漬される正極および負極と、前記正極と前記負極の間に直流電流を供給する電流供給手段と、を備え、前記正極は、化学式NaM[Fe(CN)(式中、Mは、Fe、Co、Ni、MnまたはCdを表わす。xは、0~2を表わす。yは、0~1を表わす。)で表わされるプルシャンブルー類似体を含み、前記電流供給手段は、前記正極と前記負極の間を流れる直流電流の方向を切り替え可能であることを特徴とする。
【0007】
本発明の水溶性放射性物質の除去・濃縮装置において、前記負極は、グラファイトからなることが好ましい。
【0008】
本発明の水溶性放射性物質の除去・濃縮方法は、水溶性放射性物質のイオンを含む水溶液に、化学式NaM[Fe(CN)(式中、Mは、Fe、Co、Ni、MnまたはCdを表わす。xは、0~2を表わす。yは、0~1を表わす。)で表わされるプルシャンブルー類似体を含む正極と、負極とを浸漬し、前記正極と前記負極の間に直流電流を供給し、前記正極にて還元反応を生じさせ、前記正極に前記水溶性放射性物質のイオンを吸着させる工程と、前記水溶性放射性物質のイオンを含む水溶液または前記水溶性放射性物質のイオンを含まない水に、前記水溶性放射性物質のイオンを吸着した前記正極と、前記負極とを浸漬し、前記正極と前記負極の間に直流電流を供給し、前記正極にて酸化反応を生じさせ、前記水溶性放射性物質のイオンを含む水溶液または前記水溶性放射性物質のイオンを含まない水に、前記正極に吸着した前記水溶性放射性物質のイオンを放出させる工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水溶性放射性物質を含む水溶液の濃縮が可能であり、かつ、素子の再利用が可能な水溶性放射性物質の除去・濃縮装置および水溶性放射性物質の除去・濃縮方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】水溶性放射性物質の除去・濃縮装置の第1の実施形態を示す模式図である。
【図2】水溶性放射性物質の除去・濃縮装置の第2の実施形態を示す模式図である。
【図3】還元反応と酸化反応における容量と電圧の変化を示すグラフである。
【図4】容量のサイクル特性を示すグラフである。
【図5】還元反応と酸化反応におけるプルシャンブルー類似体を含む薄膜の組成の変化を示すグラフである。
【図6】正極において還元反応を継続した場合における電解液中のセシウムの濃度の変化を示すグラフである。
【図7】還元反応と酸化反応における容量と電圧の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の水溶性放射性物質の除去・濃縮装置および水溶性放射性物質の除去・濃縮方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。

【0012】
(第1の実施形態)
[水溶性放射性物質の除去・濃縮装置]
図1は、本実施形態の水溶性放射性物質の除去・濃縮装置を示す模式図である。
本実施形態の水溶性放射性物質の除去・濃縮装置10は、正極20と、負極30と、電流供給手段40と、液槽50とから概略構成されている。

【0013】
液槽50は、水溶性放射性物質のイオンを含む水溶液(以下、「水溶液」と略することもある。)60A、または、水溶性放射性物質のイオンを含まない水(以下、「水」と略することもある。)60Bを収容するための容器である。本実施形態において、水溶性放射性物質とは、放射性セシウム(Cs)や放射性ストロンチウム(Sr)のことである。すなわち、本実施形態において、水溶性放射性物質のイオンとは、セシウムイオン(Cs)やストロンチウムイオン(Sr2+)のことである。

【0014】
正極20および負極30は、液槽50に収容されている水溶液60Aまたは水60Bに浸漬される。
電流供給手段40は、正極20と負極30に電気的に接続され、水溶液60Aまたは水60Bに浸漬された正極20と負極30の間に直流電流を供給する。また、電流供給手段40は、正極20と負極30の間を流れる直流電流の方向を切り替え可能である。

【0015】
正極20は、導電性基材21と、導電性基材21の一方の面21aおよび他方の面21bに形成され、正極活物質として、下記の化学式(1)で表わされるプルシャンブルー類似体の粉末を含む薄膜22とを有する電極である。
また、正極20は、図1に示すように、例えば、矩形の平板状をなしている。

【0016】
導電性基材21としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる基材の一方の面および他方の面(表裏面)に、銅、酸化インジウム錫(Indium Tin Oxide、ITO)等からなる導電性の薄膜(導電膜)が形成されたものや、ステンレスからなる基材が挙げられる。

【0017】
薄膜22は、下記の化学式(1)で表わされるプルシャンブルー類似体の粉末と、導電材と、バインダーと、を含む電極材料からなる。

【0018】
プルシャンブルー類似体は、下記の化学式(1)で表わされる。
NaM[Fe(CN) (1)
化学式(1)中、Mは、Fe、Co、Ni、MnまたはCdを表わす。xは、0~2を表わす。yは、0~1を表わす。
このようなプルシャンブルー類似体としては、例えば、Na1.332Mn[Fe(CN)0.833.5HO、Na1.60Co[Fe(CN)0.902.9HO、Na0.71Na0.13Co[Fe(CN)0.713.8HO、Na0.68Na0.04Ni[Fe(CN)0.685.1HO、Na0.96Na0.88Cd[Fe(CN)0.964.8HO等が挙げられる。

【0019】
導電材としては、特に限定されないが、例えば、アセチレンブラック等が用いられる。

【0020】
バインダーとしては、正極20の性能を損なわずに、プルシャンブルー類似体の粉末と導電材を結合することができるものであれば、特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が用いられる。

【0021】
次に、正極20の製造方法の一例を説明する。
まず、フェロシアン化ナトリウム(Na[Fe(CN)])の濃度が40mmol/Lの水溶液と、硝酸ニッケル(II)(Ni(NO)の濃度が40mmol/Lの水溶液とを調製する。

【0022】
次いで、これら2つの水溶液を混合して、Na[Fe(CN)]の濃度が20mmol/L、Ni(NOの濃度が20mmol/Lの混合溶液とし、その混合溶液を撹拌しながら、Na[Fe(CN)]とNi(NOを1時間反応させる。その後、混合溶液を、室温(300K)で1日静置する。

【0023】
次いで、上記の混合溶液を、アスピレーター、ダイアフラムポンプ、ロータリーポンプ等を用いて濾過し、固形分(粉末)を回収する。
次いで、得られた粉末を、室温(300K)で24時間乾燥し、Na1.48Ni[Fe(CN)0.875.5HO(プルシャンブルー類似体)の粉末を得る。

【0024】
次いで、プルシャンブルー類似体の粉末(700mg)を乳鉢で磨り潰す。
次いで、プルシャンブルー類似体の粉末と、アセチレンブラック(200mg)とを乳鉢で混合する。

【0025】
また、ポリフッ化ビニリデン(100mg)とN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(3.0mL)を混合し、その混合物をペンシルミキサーで撹拌し、その混合物を、凝集体がなくなるまで混合する。

【0026】
次いで、ポリフッ化ビニリデンとN,N-ジメチルホルムアミドの混合物に、プルシャンブルー類似体の粉末とアセチレンブラックの混合物を加え、さらに、N,N-ジメチルホルムアミド(2.0ml)を徐々に加え、その混合物をペンシルミキサーで混合し、正極材料のペーストを調製する。

【0027】
次いで、矩形の平板状をなす厚さ20μmの導電性基材21の一方の面21aおよび他方の面21bに、正極材料のペーストを塗布する。
次いで、正極材料のペーストが塗布された導電性基材21を、真空乾燥機を用いて、100℃で2時間乾燥することにより、導電性基材21の一方の面21aおよび他方の面21bに、上記の化学式(1)で表わされるプルシャンブルー類似体の粉末を含む薄膜22が形成された正極20を得る。

【0028】
負極30としては、白金、金、ニッケル等の金属からなる電極やグラファイトからなる電極が用いられる。これらの中でも、コストの観点から、負極30としては、グラファイトからなる電極が好ましい。
負極30の形状は、図1に示すように、例えば、矩形の平板状をなしている。

【0029】
電流供給手段40としては、正極20と負極30の間に直流電流を供給でき、かつ、正極20と負極30の間を流れる直流電流の方向を切り替え可能であれば特に限定されない。電流供給手段40としては、例えば、乾電池、二次電池、太陽電池等の電源と、これらの電源から供給される直流電流の量を制御する制御部と、直流電流の流れる方向を切り替える切替部とを有するものが挙げられる。
液槽50としては、水溶液60Aまたは水60Bによって腐食しないものであれば特に限定されない。

【0030】
[水溶性放射性物質の除去・濃縮方法]
次に、図1を参照して、本実施形態の水溶性放射性物質の除去・濃縮方法を説明することにより、本実施形態の水溶性放射性物質の除去・濃縮装置10の作用を説明する。
本実施形態の水溶性放射性物質の除去・濃縮方法は、水溶性放射性物質のイオンを含む水溶液60Aに浸漬した正極20と負極30の間に直流電流を供給し、正極20にて還元反応を生じさせ、正極20に水溶性放射性物質のイオンを吸着させる工程と、水溶性放射性物質のイオンを含む水溶液60Aまたは水溶性放射性物質のイオンを含まない水60Bに、水溶性放射性物質のイオンを吸着した正極20と、負極30とを浸漬し、正極20と負極30の間に直流電流を供給し、正極20にて酸化反応を生じさせ、水溶液60Aまたは水60Bに、正極20に吸着した水溶性放射性物質のイオンを放出させる工程と、を有する。

【0031】
本実施形態の水溶性放射性物質の除去・濃縮方法では、まず、液槽50Aに収容されている水溶性放射性物質のイオンを含む水溶液60Aに、正極20と負極30を浸漬する。
なお、本実施形態の水溶性放射性物質の除去・濃縮方法の説明において、正極20にて還元反応を生じさせる際に、水溶液60Aを収容する容器を液槽50Aとし、正極20にて酸化反応を生じさせる際に、水溶液60Aまたは水60Bを収容する容器を液槽50Bとする。

【0032】
水溶液60Aに含まれる水溶性放射性物質のイオンの濃度は、特に限定されないが、通常、1ppm程度である。なお、水溶液60Aには、極微量の水溶性放射性物質のイオンが含まれていても、正極20と負極30の間に直流電流を流せば、正極20に水溶性放射性物質のイオンを吸着することができる。

【0033】
次いで、電流供給手段40から、正極20と負極30の間に直流電流を供給し、正極20と負極30の間に直流電流を流す。このとき、直流電流の流れる方向を、正極20から負極30へと向かう方向とする。これにより、正極20にて還元反応を生じさせ、正極20に、水溶液60Aに含まれる水溶性放射性物質のイオンを吸着させる。
正極20において還元反応が生じる場合、正極20と負極30における化学反応は、例えば、以下の通りとなる。
(正極20)Cs0.61Ni[Fe(CN)0.875.5HO+0.87Cs+0.87e→Cs1.48Ni[Fe(CN)0.875.5H
(負極30)2OH+H→2HO+2e

【0034】
また、還元反応において、正極20と負極30の間に印加する電圧は、特に限定されず、水溶液60Aに含まれる水溶性放射性物質のイオンの濃度に応じて適宜調整されるが、例えば、-1V~1Vである。
また、還元反応において、正極20と負極30の間に直流電流を供給する時間は、特に限定されず、水溶液60Aに含まれる水溶性放射性物質のイオンの濃度に応じて適宜調整されるが、例えば、1時間~100時間である。

【0035】
この還元反応により、正極20に、水溶液60Aに含まれる水溶性放射性物質のイオンを吸着させることにより、水溶液60Aに含まれる水溶性放射性物質を除去することができる。すなわち、水溶液60Aに含まれる水溶性放射性物質を正極20内に貯蔵することができる。

【0036】
次いで、正極20が、水溶液60Aに含まれる水溶性放射性物質のイオンを吸着した後、水溶液60Aから正極20と負極30を引き上げる。
次いで、液槽50Aとは別の液槽50Bに収容されている水溶性放射性物質のイオンを含む水溶液60Aまたは水溶性放射性物質のイオンを含まない水60Bに、正極20と負極30を浸漬する。
水溶液60Aに含まれる水溶性放射性物質のイオンの濃度は、特に限定されない。

【0037】
次いで、電流供給手段40から、正極20と負極30の間に直流電流を供給し、正極20と負極30の間に直流電流を流す。このとき、直流電流の流れる方向を、負極30から正極20へと向かう方向とする。これにより、正極20にて酸化反応を生じさせ、水溶液60Aまたは水60Bに、正極20に吸着した水溶性放射性物質のイオンを放出させる。なお、水溶性放射性物質のイオンを含まない水60Bとは、正極20に吸着した水溶性放射性物質のイオンを放出する前の水であるから、正極20に吸着した水溶性放射性物質のイオンを放出した後の水は全て水溶液60Aである。
正極20において酸化反応が生じる場合、正極20と負極30における化学反応は、例えば、以下の通りとなる。
(正極20)Cs1.48Ni[Fe(CN)0.875.5HO→Cs0.61Ni[Fe(CN)0.875.5HO+0.87Cs+0.87e
(負極30)2HO+2e→2OH+H

【0038】
また、酸化反応において、正極20と負極30の間に印加する電圧は、特に限定されず、正極20に吸着した水溶性放射性物質のイオンの量に応じて適宜調整されるが、例えば、0V~2Vである。
また、酸化反応において、正極20と負極30の間に直流電流を供給する時間は、特に限定されず、正極20に吸着した水溶性放射性物質のイオンの量に応じて適宜調整されるが、例えば、1時間~100時間である。

【0039】
この酸化反応により、水溶液60Aまたは水60Bに、正極20に吸着した水溶性放射性物質のイオンを放出させることができる。
さらに、上述の還元反応を行う工程と、上述の酸化反応を行う工程とを繰り返し行うことにより、水溶液60Aを濃縮することができる。すなわち、水溶液60Aに含まれる水溶性放射性物質の濃度を高くすることができる。これにより、放射性廃棄物を大幅に減容することができる。よって、放射性廃棄物の保管場所を小さくすることができる上に、放射性廃棄物の管理を容易にすることができる。

【0040】
濃縮した水溶液60Aに含まれる水溶性放射性物質は、例えば、特開2013-148552号公報に記載されているセシウムイオンの除去方法および除去装置を用いて、水溶液60Aから除去・回収された後、廃液やスラッジ等を、できる限り焼却処理等で減容した後、固化装置でセメント固化して貯蔵に適した形状に変えられる。あるいは、特開2013-148552号公報に記載されているセシウムイオンの除去方法および除去装置を用いて、水溶液60Aから除去・回収された水溶性放射性物質は、プラント内の燃料プールや高放射性固体廃棄物専用貯蔵プール内に長期貯蔵しておき、放射能の減衰を待って別途の処理が施される。

【0041】
また、上述の酸反応を行う工程において、水溶液60Aまたは水60Bに、正極20に吸着した水溶性放射性物質のイオンを放出させることにより、正極20を、水溶性放射性物質のイオンを吸着する前の状態に回復(復元)することができる。すなわち、正極20を繰り返し使用することができ、装置のコストを大幅に低減することができる。
また、本実施形態の水溶性放射性物質の除去・濃縮装置10および本実施形態の水溶性放射性物質の除去・濃縮方法によれば、水溶液60Aに含まれる水溶性放射性物質を正極20内に吸着(貯蔵)することができるため、吸着した水溶性放射性物質の量を測定することにより、水溶液60Aの放射能レベルをモニター(監視)することができる。

【0042】
(第2の実施形態)
[水溶性放射性物質の除去・濃縮装置]
図2は、本実施形態の水溶性放射性物質の除去・濃縮装置を示す模式図である。図2において、図1に示した第1の実施形態の水溶性放射性物質の除去・濃縮装置と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の水溶性放射性物質の除去・濃縮装置100は、正極20と、負極30と、電流供給手段40と、浮き(フロート)110とから概略構成されている。

【0043】
浮き110は、電流供給手段40を内蔵または外付けし、電流供給手段40に電気的に接続された正極20と負極30を吊り下げるためのものでる。
また、浮き110は、発泡スチロールや、内部に空気などの気体を収容する浮き袋からなる。
図2に示すように、沼、池、湖、川、田、貯水池等の水130に、浮き110を浮かべることにより、浮き110の下面110a側に、正極20と負極30が垂れ下がり、水130に正極20と負極30が浸漬されるとともに、水130の表面(水面)130aよりも上側に、電流供給手段40が配置される。

【0044】
また、浮き110の下面110a側には、水130に浮き110を浮かべたときに、水溶性放射性物質の除去・濃縮装置100が所定の位置に留まるようにするために、碇(錘)120を設けてもよい。

【0045】
[水溶性放射性物質の除去・濃縮方法]
次に、図2を参照して、本実施形態の水溶性放射性物質の除去・濃縮方法を説明することにより、本実施形態の水溶性放射性物質の除去・濃縮装置100の作用を説明する。
本実施形態の水溶性放射性物質の除去・濃縮方法は、水130に浸漬した正極20と負極30の間に直流電流を供給し、正極20にて還元反応を生じさせ、正極20に水溶性放射性物質のイオンを吸着させる工程と、水溶性放射性物質のイオンを含む水溶液または水溶性放射性物質のイオンを含まない水に、水溶性放射性物質のイオンを吸着した正極20と、負極30とを浸漬し、正極20と負極30の間に直流電流を供給し、正極20にて酸化反応を生じさせ、水溶性放射性物質のイオンを含む水溶液または水溶性放射性物質のイオンを含まない水に、正極20に吸着した水溶性放射性物質のイオンを放出させる工程と、を有する。

【0046】
本実施形態の水溶性放射性物質の除去・濃縮方法では、まず、水130に浮き110を浮かべて、水130に正極20と負極30を浸漬する。

【0047】
次いで、電流供給手段40から、正極20と負極30の間に直流電流を供給し、正極20と負極30の間に直流電流を流す。このとき、直流電流の流れる方向を、正極20から負極30へと向かう方向とする。これにより、正極20にて還元反応を生じさせて、水130に水溶性放射性物質のイオンが含まれている場合、正極20に水溶性放射性物質のイオンを吸着させる。

【0048】
また、還元反応において、正極20と負極30の間に印加する電圧は、特に限定されず、水130に含まれる水溶性放射性物質のイオンの濃度に応じて適宜調整されるが、例えば、-1V~1Vである。
また、還元反応において、正極20と負極30の間に直流電流を供給する時間は、特に限定されず、水130に含まれる水溶性放射性物質のイオンの濃度に応じて適宜調整されるが、例えば、1時間~100時間である。

【0049】
この還元反応により、正極20に、水130に含まれる水溶性放射性物質のイオンを吸着させることにより、水130に含まれる水溶性放射性物質を除去することができる。すなわち、水130に含まれる水溶性放射性物質を正極20内に貯蔵することができる。

【0050】
次いで、正極20が、水130に含まれる水溶性放射性物質のイオンを吸着した後、水130から水溶性放射性物質の除去・濃縮装置100を引き上げる。
次いで、水130とは別の液槽等に収容されている水溶性放射性物質のイオンを含む水溶液または水溶性放射性物質のイオンを含まない水に、浮き110を浮かべて、水130に正極20と負極30を浸漬する。
水溶液に含まれる水溶性放射性物質のイオンの濃度は、特に限定されない。

【0051】
次いで、電流供給手段40から、正極20と負極30の間に直流電流を供給し、正極20と負極30の間に直流電流を流す。このとき、直流電流の流れる方向を、負極30から正極20へと向かう方向とする。これにより、正極20にて酸化反応を生じさせ、水溶性放射性物質のイオンを含む水溶液または水溶性放射性物質のイオンを含まない水に、正極20に吸着した水溶性放射性物質のイオンを放出させる。

【0052】
また、酸化反応において、正極20と負極30の間に印加する電圧は、特に限定されず、正極20に吸着した水溶性放射性物質のイオンの量に応じて適宜調整されるが、例えば、-1V~1Vである。
また、酸化反応において、正極20と負極30の間に直流電流を供給する時間は、特に限定されず、正極20に吸着した水溶性放射性物質のイオンの量に応じて適宜調整されるが、例えば、1時間~100時間である。

【0053】
この酸化反応により、水溶性放射性物質のイオンを含む水溶液または水溶性放射性物質のイオンを含まない水に、正極20に吸着した水溶性放射性物質のイオンを放出させることができる。
さらに、上述の還元反応を行う工程と、上述の酸化反応を行う工程とを繰り返し行うことにより、水溶性放射性物質のイオンを含む水溶液を濃縮することができる。すなわち、水溶液に含まれる水溶性放射性物質の濃度を高くすることができる。これにより、放射性廃棄物を大幅に減容することができる。よって、放射性廃棄物の保管場所を小さくすることができる上に、放射性廃棄物の管理を容易にすることができる。

【0054】
濃縮した水溶液に含まれる水溶性放射性物質は、第1の実施形態と同様にして、貯蔵に適した形状に変えられるか、あるいは、長期貯蔵しておき、放射能の減衰を待って別途の処理が施される。

【0055】
また、上述の酸反応を行う工程において、水溶性放射性物質のイオンを含む水溶液または水溶性放射性物質のイオンを含まない水に、正極20に吸着した水溶性放射性物質のイオンを放出させることにより、正極20を、水溶性放射性物質のイオンを吸着する前の状態に回復(復元)することができる。すなわち、正極20を繰り返し使用することができ、装置のコストを大幅に低減することができる。
また、本実施形態の水溶性放射性物質の除去・濃縮装置100および本実施形態の水溶性放射性物質の除去・濃縮方法によれば、水130に含まれる水溶性放射性物質を正極20内に吸着(貯蔵)することができるため、吸着した水溶性放射性物質の量を測定することにより、水130の放射能レベルをモニター(監視)することができる。すなわち、沼、池、湖、川、田、貯水池等における放射線による汚染をモニター(監視)することができる。
【実施例】
【0056】
以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【実施例】
【0057】
「実験例1」
(正極の作製)
フェロシアン化ナトリウム(Na[Fe(CN)])の濃度が40mmol/Lの水溶液と、硝酸ニッケル(II)(Ni(NO)の濃度が40mmol/Lの水溶液とを調製した。
次いで、これら2つの水溶液を混合して、Na[Fe(CN)]の濃度が20mmol/L、Ni(NOの濃度が20mmol/Lの混合溶液とし、その混合溶液を撹拌しながら、Na[Fe(CN)]とNi(NOを1時間反応させた。その後、混合溶液を、室温(300K)で1日静置した。
次いで、上記の混合溶液を、1.0μmの濾紙を用いて濾過し、固形分(粉末)を回収した。
次いで、得られた粉末を、室温(300K)で24時間乾燥し、Na1.48Ni[Fe(CN)0.875.5HOの粉末を得た。
X線回折計(商品名:RINT2000PC、リガク社製)を用いて、Na1.48Ni[Fe(CN)0.875.5HOの粉末の結晶構造を分析したところ、その粉末は、プルシャンブルー類似体の構造(面心立方格子)を有していることが確認できた。
【実施例】
【0058】
次いで、Na1.48Ni[Fe(CN)0.875.5HOの粉末700mgを乳鉢で磨り潰した。
次いで、Na1.48Ni[Fe(CN)0.875.5HOの粉末と、アセチレンブラック200mgとを乳鉢で混合した。
また、ポリフッ化ビニリデン100mgとN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)3.0mLを混合し、その混合物をペンシルミキサーで撹拌し、その混合物を、凝集体がなくなるまで混合した。
次いで、ポリフッ化ビニリデンとN,N-ジメチルホルムアミドの混合物に、プルシャンブルー類似体の粉末とアセチレンブラックの混合物を加え、さらに、N,N-ジメチルホルムアミド2.0mlを徐々に加え、その混合物をペンシルミキサーで混合し、正極材料のペーストを調製した。
次いで、アプリケーターの厚さを4milとして、PET基材と、その表裏面に形成されたITO膜とからなる導電性基材のITO膜上に、正極材料のペーストを塗布した。
次いで、正極材料のペーストが塗布された導電性基材を、真空乾燥機を用いて、100℃で2時間乾燥することにより、導電性基材の表裏面に、Na1.48Ni[Fe(CN)0.875.5HOの粉末を含む薄膜が形成された正極を得た。
【実施例】
【0059】
(容量と電圧の評価)
電解液として、CsClの濃度が1mol/Lの水溶液を調製した。
この水溶液に、Na1.48Ni[Fe(CN)0.875.5HOの粉末を含む薄膜が形成された正極と、白金からなる負極と、Ag/AgClからなる標準電極とを浸漬し、正極と負極の間に、1Cの直流電流を、60分間供給し、正極にて還元反応を生じさせ、正極にCsを吸着させた。このとき、直流電流の流れる方向を、正極から負極へと向かう方向とした。また、直流電流の流れる方向を、負極から正極へと向かう方向に切り替えて、正極と負極の間に、1Cの直流電流を、60分間供給し、正極にて酸化反応を生じさせ、正極に吸着したCsを放出させた。このように、正極と負極の間を流れる直流電流の方向を切り替えて、還元反応と酸化反応における容量と電圧の変化を測定した。容量の変化と電位の変化の測定は、マルチポテンショスタット(商品名:VSP、バイオロジック社製)を用い、充放電曲線測定モードで行った。結果を、図3に示す。
【実施例】
【0060】
図3において、電圧が下降している曲線が、正極にCsを吸着させるとき(還元反応)の容量と電圧の変化を示す曲線(貯蔵曲線)であり、電圧が上昇している曲線が、正極に吸着したCsを放出させるとき(酸化反応)の容量と電圧の変化を示す曲線(放出曲線)である。初期曲線αにおける容量と電圧の変化は、貯蔵曲線および放出曲線とは異なっている。これは、初期過程では、正極に含まれるNaが放出されるためである。2回目以降の還元反応では、正極にCsが吸着され、2回目以降の酸化反応では、正極からCsが放出される。図3の結果から、正極と負極の間に直流電流を流すことにより、正極においてCsを吸着または放出できることが確認できた。また、正極に含まれるNa1.48Ni[Fe(CN)0.875.5HOの1g当たりの容量は54mAh/gであることが分かった。この容量は、セシウムの質量に換算すると、0.28gとなる。すなわち、正極に含まれるNa1.48Ni[Fe(CN)0.875.5HOの1g当たり、セシウムを0.28g吸着、除去できることが分かった。
【実施例】
【0061】
「実験例2」
(容量のサイクル特性の評価)
実験例1と同様の装置を用いて、正極と負極の間を流れる直流電流の方向を複数回切り替えた場合について、容量の変化を評価した。結果を、図4に示す。
図4において、初期容量βは、正極にCsを吸着したとき(還元反応)の容量および正極に吸着したCsを放出したとき(酸化反応)の容量とは異なっている。これは、初期過程では、正極に含まれるNaが放出されるためである。2回目以降の還元反応では、正極にCsが吸着され、2回目以降の酸化反応では、正極からCsが放出される。図4の結果から、正極と負極の間を流れる直流電流の方向を複数回切り替えても、容量の低下がほとんど見られなかった。すなわち、1つの正極を繰り返し用いて、水溶液に含まれるセシウムを吸着、除去できることが分かった。
【実施例】
【0062】
「実験例3」
(正極を構成する薄膜の組成分析)
実験例1と同様の装置を用いて、正極へのCsの吸着(還元反応)と正極からのCsの放出(酸化反応)を繰り返し、ICP発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy、ICP-AES)により、正極を構成するNa1.48Ni[Fe(CN)0.875.5HOを含む薄膜の組成を分析し、薄膜中のセシウムの濃度を測定した。
正極へのCsの吸着および正極からのCsの放出を行う度に、正極を分解した。正極の分解には、まず、N,N-ジメチルホルムアミドに正極を浸漬して、N,N-ジメチルホルムアミドにポリフッ化ビニリデンを溶解し、その溶液を濾過して、ポリフッ化ビニリデンを除去する操作を3回行った。その後、濾過により回収したNa1.48Ni[Fe(CN)0.875.5HOとアセチレンブラックの混合物を、硝酸水溶液に溶解し、ICP発光分光分析法により、その混合物の組成を分析した。ICP発光分光分析には、ICP発光分析装置(商品名:ICPS-8100、島津製作所社製)を用いた。結果を、図5に示す。なお、図5において、縦軸xは、Niに対するCsの割合を示す。
図5の結果から、上記の薄膜は、CsNaNi[Fe(CN)0.87という組成の物質を含むことが分かった。すなわち、正極がCsを吸着することが確認できた。また、正極へのCsの吸着により、Csの吸着量が増加し、正極からのCsの放出により、Csの吸着量が減少することが確認できた。
【実施例】
【0063】
「実験例4」
(正極によるCsの吸着能力の評価)
自然界の水に含まれるセシウムの濃度は非常に低い。そこで、電解液として、セシウムの濃度が0.1ppmとなるようにCsCl水溶液を調製し、実験例1と同様の装置を用いて、水溶液に含まれるセシウムの濃度をどこまで低減できるかを評価した。ここでは、正極と負極の間に印加する電圧を、0.6V、0.4V、0.0V、-1.0Vと変化させた。また、比較のために、正極と負極の間に電圧を印加しない場合についても評価した。正極と負極の間に電流を流してから0.1時間後と48時間後に、ICP発光分光分析法により、電解液中のセシウムの濃度を測定した。結果を、図6に示す。なお、図6において、破線はセシウムの初期濃度(0.1ppm)を示す。
図6の結果から、正極と負極の間に印加する電圧を、0.6Vまたは-1.0Vとした場合、電解液中のセシウムの濃度が0.01ppm以下に減少することが確認できた。これに対して、正極と負極の間に電圧を印加しない場合には、電解液中のセシウムの濃度がほとんど変化しなかった。
【実施例】
【0064】
「実験例5」
(正極の作製)
[Fe(CN)]の濃度が0.5mmol/L、Ni(NOの濃度が0.5mmol/L、NaNOの濃度が1.0mol/Lの水溶液を調製した。
次いで、この水溶液に、PET基材と、その表裏面に形成されたITO膜とからなる正極基板と、白金からなる負極と、Ag/AgClからなる標準電極とを浸漬し、正極基板と負極に-1Vの電圧を、30分間印加した。
これにより、正極基板のITO膜上に、厚さ1μmの薄膜を形成した。
【実施例】
【0065】
(薄膜の評価)
ICP発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy、ICP-AES)とCHN有機元素分析とを組み合わせて、得られた薄膜の組成を分析した。その結果、得られた薄膜は、Na0.68Na0.04Ni[Fe(CN)0.685.1HOからなることが確認された。
また、薄膜を形成するNa0.68Na0.04Ni[Fe(CN)0.685.1HOを、X線回折法で分析した結果、Na0.68Na0.04Ni[Fe(CN)0.685.1HOの結晶構造は、プルシャンブルー類似体特有の面心立方格子であることが確認された。
【実施例】
【0066】
(容量と電圧の評価)
電解液として、SrClの濃度が1mmol/Lの水溶液を調製した。
この水溶液に、Na0.68Na0.04Ni[Fe(CN)0.685.1HOの粉末を含む薄膜が形成された正極と、白金からなる負極と、Ag/AgClからなる標準電極とを浸漬し、正極と負極の間に、1Cの直流電流を、60分間供給し、正極にて還元反応を生じさせ、正極にSr2+を吸着させた。このとき、直流電流の流れる方向を、正極から負極へと向かう方向とした。また、直流電流の流れる方向を、負極から正極へと向かう方向に切り替えて、正極と負極の間に、1Cの直流電流を、60分間供給し、正極にて酸化反応を生じさせ、正極に吸着したSr2+を放出させた。なお、正極、負極および標準電極を0.5M塩化ナトリウム(NaCl)水溶液に浸漬し、塩化ナトリウム水溶液中でNaを放出させてから、正極へのSr2+の吸着および正極からのSr2+の放出を行った。このように、正極と負極の間を流れる直流電流の方向を切り替えて、還元反応と酸化反応における容量と電圧の変化を測定した。容量の変化と電位の変化の測定は、マルチポテンショスタット(商品名:VSP、バイオロジック社製)を用い、充放電曲線測定モードで行った。結果を、図7に示す。
【実施例】
【0067】
図7において、電圧が下降している曲線が、正極にSr2+を吸着させるとき(還元反応)の容量と電圧の変化を示す曲線(貯蔵曲線)であり、電圧が上昇している曲線が、正極に吸着したSr2+を放出させるとき(酸化反応)の容量と電圧の変化を示す曲線(放出曲線)である。図7の結果から、正極と負極の間に直流電流を流すことにより、正極においてSr2+を吸着または放出できることが確認できた。また、正極に含まれるNa0.68Na0.04Ni[Fe(CN)0.685.1HOの1g当たりの容量は67mAh/gであることが分かった。この容量は、ストロンチウムの質量に換算すると、0.11gとなる。すなわち、正極に含まれるNa0.68Na0.04Ni[Fe(CN)0.685.1HOの1g当たり、ストロンチウムを0.11g吸着、除去できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の水溶性放射性物質の除去・濃縮装置および水溶性放射性物質の除去・濃縮方法は、放射性セシウム等の水溶性放射性物質のイオンを含む水溶液から、これらの水溶性放射性物質のイオンを吸着し、また、吸着した水溶性放射性物質のイオンを放出することにより、水溶性放射性物質を濃縮することができる。したがって、放射性廃棄物の減容化および放射性廃棄物の保管場所の小型化を実現することができる。
【符号の説明】
【0069】
10,100・・・水溶性放射性物質の除去・濃縮装置、20・・・正極、21・・・導電性基材、22・・・薄膜、30・・・負極、40・・・電流供給手段、50・・・液槽、60A・・・水溶液、60B・・・水、110・・・浮き(フロート)、120・・・碇(錘)、130・・・水。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6