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明細書 :希土類金属の回収方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6090737号 (P6090737)
公開番号 特開2014-111802 (P2014-111802A)
登録日 平成29年2月17日(2017.2.17)
発行日 平成29年3月8日(2017.3.8)
公開日 平成26年6月19日(2014.6.19)
発明の名称または考案の名称 希土類金属の回収方法
国際特許分類 C25C   1/22        (2006.01)
C25C   1/00        (2006.01)
FI C25C 1/22
C25C 1/00 301Z
請求項の数または発明の数 6
全頁数 9
出願番号 特願2012-266082 (P2012-266082)
出願日 平成24年12月5日(2012.12.5)
審査請求日 平成27年11月20日(2015.11.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】吉本 信子
【氏名】森田 昌行
【氏名】江頭 港
【氏名】佐川 洋行
審査官 【審査官】菅原 愛
参考文献・文献 特開2013-204126(JP,A)
特開平02-310390(JP,A)
特開2012-087329(JP,A)
調査した分野 C25C1/00- 7/08
C25D1/00- 7/12
C22B1/00-61/00
特許請求の範囲 【請求項1】
電解槽内において、希土類金属イオンと希土類金属以外の金属イオンとが溶存するジアルキルスルホンの溶液を電解処理して、陰極表面に希土類金属を電析する希土類金属の回収方法において、電析時の電位及び陰極過電圧の相違による電解時の電流値の変化に基づき、希土類金属の回収における初期又は終期を定めることを特徴とする希土類金属の回収方法。
【請求項2】
ジアルキルスルホンが次式(1)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項1記載の希土類金属の回収方法。
【化1】
JP0006090737B2_000006t.gif

【請求項3】
希土類金属がネオジムである請求項1又は2記載の希土類金属の回収方法。
【請求項4】
希土類金属がジスプロシウムである請求項1又は2記載の希土類金属の回収方法。
【請求項5】
陽極として、粗希土類金属又は希土類合金を用い、該陽極から、ジアルキルスルホン溶液中に少なくとも希土類金属イオンを供給しつつ電解を行うことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の希土類金属の回収方法。
【請求項6】
陽極がネオジム磁性物である請求項記載の希土類金属の回収方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電析により希土類金属を回収する方法であり、特に電解に用いる溶媒として、ジアルキルスルホンを用いることを特徴とする希土類金属の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類金属は、発火合金、特殊レンズ、蛍光体、レーザー、永久磁石、ガラス等の着色剤、光磁気記録装置等、種々の工業材料に用いられているが、その資源は、比較的少なく、しかも、偏在しており、需要の増加により、価格の高騰が懸念される元素であり、近年そのリサイクルの研究が多くなされている。しかし、現状では、必ずしも合理的なプロセスが開発されているとは言い難い。例えば、1000℃以上の過酷な条件であったり、回収率が低く、結局高コストとなり、工業的実現性に問題があった。
【0003】
例えば、希土類合金をハライド化合物の溶融塩に浸漬し、該溶融塩に希土類元素のハロゲン化合物を溶出させ、蒸気として回収する方法(特許文献1)、希土類元素を含むレニウム溶液から、レニウムを回収した後、残渣液から、希土類金属の酸化物を得、これを溶融塩電解して希土類金属を回収する方法(特許文献2)。或いは溶融塩電解に際し、陽極と陰極との間を、希土類金属合金からなるバイポーラー電極型核膜で分画して、陽極室に希土類金属イオンを供給し、陰極に希土類金属又はその合金を電析させる方法(特許文献3)等が提案されているが、これらは溶融塩電解によるため、1000℃又はそれ以上の高温を必要とし、エネルギー的にも、また装置としても高価となる欠点があった。また、NbFeB磁石の削りくずや、スラグについて、酢酸やスルファミン酸を電解質液として用い、電解により鉄を分離した後、フッ化水素を加えて、フッ化ネオジムの沈殿を採取する方法(特許文献4)、本発明者らによるイットリウムやジスプロシウムに対してジメチルホルムアミド中での電析の報告(被特許文献1,2)等も知られているが、前者における電解は、鉄を除去するだけであり、希土類はフッ化物となるため、別途還元工程等を必要とする。また後者は、希土類金属イオンのジメチルホルムアミドへの溶解度が小さく、高電流密度での電析に難点があった。
【0004】
そこで本発明は、より効率よく、工業化に耐え得る希土類金属の回収方法を検討することを目的とするものである。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】WO2009/119720
【特許文献2】特開2010-285680
【特許文献3】特開2009-287119
【特許文献4】USP 5,129,724
【0006】

【非特許文献1】表面技術誌 Vol.42 No.1(1991)127~128頁
【非特許文献2】表面技術誌 Vol.42 No.2(1991)116~117頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記理由に鑑み、より低コスト、具体的には、より低温(30℃~130℃程度)で、且つ低設備コストによる希土類金属の回収方法の開発を目指し、電析法に注目し、希土類、中でもネオジム(Nd)やジスプロシウム(Dy)の新規回収方法の発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において、上記課題を解決するための、請求項1に記載の発明は、電解槽において、希土類金属イオンと希土類金属以外の金属イオンとが溶存するジアルキルスルホンの溶液を電解処理して、陰極表面に希土類金属を電析する希土類金属の回収方法において、電析時の電位及び陰極過電圧の相違による電解時の電流値の変化に基づき、希土類金属の回収における初期又は終期を定めることを特徴とする希土類金属の回収方法である。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記ジアルキルスルホンが次式(1)で表わされる化合物であることを特徴とする希土類金属の回収方法である。
【0010】
【化1】
JP0006090737B2_000002t.gif
但し、R,Rは、同一又は異なる炭素数のアルキル基で、R,Rの炭素数の合計は、2乃至6であり、両者は結合されていてもよい。
【0012】
本願の請求項に係る発明は、対象とする希土類金属として、ネオジムであることを特定した発明である。
【0013】
本願の請求項に係る発明は、対象とする希土類金属として、ジスプロシウムを特定した発明である。
【0014】
更に本願の請求項に係る発明は、陽極として、希土類金属、特に粗希土類金属又は希土類合金を用い、該陽極から、電解液であるジアルキルスルホン溶液中に少なくとも希土類金属イオンを供給しつつ電解を行うことを特徴とする発明である。
【0015】
また更に、本願の請求項に係る発明は、前記陽極としてネオジム磁性体、例えば使用済みのネオジム磁石、ネオジム磁石を製造する時に生ずる削りくず等の廃棄磁性体を用いることを特徴とする発明である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、少なくとも希土類金属イオンを溶存するジアルキルスルホン溶液を電解液として用い、電析により陰極表面上に希土類金属を析出させて回収することにより、比較的低温(30℃~130℃程度)で、希土類金属を回収することができる。このため、エネルギー的にも、装置的にもきわめて低コストを実現し得るのである。
【0017】
本発明の最大の特徴は、電解質液として、ジアルキルスルホンを用いることにある。かくして、希土類金属の比較的高い溶解度が得られ、このため電解電流を大きくすることが可能となり工業的レベルの希土類回収が可能となるのである。
【0018】
本発明の今一つの特徴は、電解質溶液中での電解であり、希土類金属の標準還元電位(V)が、表1に示す如く、Fe(-0.440V)やAl(-1.676V)等に較べて非常に低いという特性を利用する点である。
【0019】
【表1】
JP0006090737B2_000003t.gif
更に、陽極として希土類含有物、例えば不純物を含む希土類や合金、中でもネオジム磁石等を用い、電解液中に、希土類金属イオンを供給しつつ電解を行うことにより、希土類を含む金属類から、ほぼ一工程で、且つ高い回収率で、希土類元素を回収できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の原理を説明する図である。
【図2】本発明において合金を陽極とし、電解液中に金属イオンを供給しつつ電解を行う場合の図である。
【図3】40℃における5ボルト定電圧下におけるFeClとNdClにおける電流値(mA/cm)の経時変化を示す図である。
【図4】本発明において、電極間に隔膜を用い、電解液を電解槽外に循環させて鉄イオン等の希土類金属イオン以外の溶存イオンを除去する方法を示す概略図である。
【図5】本発明の実験に用いた電解槽の概略図である。
【図6】本発明の実施例における電析(Nd)の状態を示すSEM写真である。
【図7】図6におけるX線パターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の最大の特徴は、電解液にある。すなわち、イオン液体等の高価な電解質溶液を用いるのではなく、ジアルキルスルホンを用いる点にある。すなわち、驚くべきことに希土類金属イオンが、例えばアルミニウム等の他の土類金属とは異なり、ジアルキルスルホン溶液のみを主たる電解液として用いることができるという点である。

【0022】
本発明に用いられるジアルキルスルホンは、次の式(1)に示される。

【0023】
【化2】
JP0006090737B2_000004t.gif


上記式(1)において、R,Rは、同一又は異なる炭素数よりなるアルキル基であり、R,Rの炭素数の合計は、2~6である。またR,Rの一方端は硫黄原子に結合しているが、他は、場合によっては両者が結合し、環状を形成していてもよい。アルキルの具体例としては、メチル基、エチル基、プロプル基、ブチル基、ペンチル基であり、これらは分枝を有していてもよいし、また2重結合が存在していてもよい。但し、アルキル基が大きくなると、金属イオンの溶解液が低下するため、本発明にあっては、R,Rの合計の炭素数は6程度までが好ましい。従って、本発明のジアルキルスルホン化合物としては、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、メチルプロピルスルホン、メチルブチルスルホン、メチルペンチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルプロピルスルホン、エチルブチルスルホン、ジプロピルスルホン、スルホラン、メチルアクリルスルホン、メチルアリルスルホン等であり、例えばジメチルスルホンやスルホラン等の如く融点が常温以上の場合は、それらが溶解する以上の温度、例えば30℃~130℃程度の温度で電解を行えばよい。

【0024】
また、該ジアルキルスルホン中に溶存させる少なくとも希土類金属イオンとしては、特に限定されず、イットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)及びランタノイド(La, Ce, Pr, Nd, Pm, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Lu)の17元素のうち、いずれであってもよいし、またこれらの混合物であってもよい。特にこれらの金属に例えば鉄(Fe)やホウ素(B)等の他元素である金属又は非金属イオンが混在していてもよい。

【0025】
本発明にあっては、これらの希土類金属は、一般に前記ジアルキルスルホンに可溶な塩としてジアルキルスルホンに溶解して用いる。一般にはハロゲン化合物、特に塩化物等である。

【0026】
更に好ましい本発明の態様は、陽極として希土類金属を含む合金、例えばネオジム磁性合金或いはその他の元素を含む伝導性粗希土類物質を用い、電解中に希土類金属イオンを電解液中に供給しつつ電解を行い陰極表面に希土類金属を電析する方法である。

【0027】
かかる手段として好ましい材料は、使用済みのネオジム磁石であり、これらから、ネオジム又はジスプロシウムを回収する方法である。勿論、ネオジムは又はジスプロシウムの回収はネオジム磁石のみからの回収ではなく、ジアルキルスルホン溶液に共存しているこれら金属イオンについても同様に回収することは可能である。

【0028】
本発明における電解は、一般に行われる電解槽やメッキ槽を何等制限されることなく使用することができる。本発明の原理は、図1に示すとおり、陽極と陰極を設けた電解槽にジアルキルスルホン溶液を電解質液として満たし、直流又はパルス直流電流を印加する。この場合ジアルキルスルホン中に希土類金属イオンを溶存させておき、該希土類金属イオンの電析に必要な電圧すなわち、該希土類金属の還元電位や陰極の過電圧以上の電位を印加し、陰極上に該希土類金属を析出させる。一般にジアルキルスルホンは、希土類金属イオンは溶解するが、電解に際しては0.05モル乃至飽和濃度で溶存させるのがよい。

【0029】
また、希土類金属以外の金属、例えば鉄やホウ素等が共存している場合は、それらのイオンとの電解電位(陰極での還元電位)や過電圧の差によってイオンの析出が異なるので、例えば電解槽を定電圧制御しておけば電流量が急激に変化する時点で析出状態が変わるので、あらかじめ目的とする希土類金属イオンの電解電圧をチェックしておき、それ以上の電圧を印加しておき電流量の変化で、希土類金属の析出における始期又は終期が判定し得るので、使用する陰極を取り替えるか、別の電解槽に移動させて電解を行えばよい。

【0030】
図2は、ジアルキルスルホン中に陽極から希土類金属を供給しつつ電解を行う場合の模式図である。該図では、ジスプロシウムを含むネオジム磁石を陽極とし、陽極酸化によりジアルキルスルホン中に希土類金属イオンを供給しつつ電解を行う場合の例である。

【0031】
この場合、図3に示す如く、例えば鉄イオンが共存すると、鉄は希土類金属例えばネオジムやジスプロシウムに比べ還元電位が貴であるため鉄イオンが先に析出する。

【0032】
図3にあっては、陰極として銅を用い、ジアルキルスルホン電解液に鉄又はネオジムのイオンを0.1モル溶存させた場合の電流量の差(mA/cm)を経時的に示した図である。このようにあらかじめ、目的とする希土類の析出電位を求めておけば、定電圧制御下に電流密度の変化によって、希土類析出の始期又は終期を知り、その時点で陰極を交換するなり別の電解槽に電解液を移して希土類金属の回収を行うことができるのである。

【0033】
なお、場合によっては、鉄イオン等の希土類金属以外のイオンと錯体を形成し、沈殿を生ずる化合物(キレート化剤)等を共存させておくことも好ましい。

【0034】
図4は、電解液を電解槽外に循環させ鉄イオン等の希土類金属イオン以外の溶存イオンとキレートを形成する化合物のカラムを通して、不純物である希土類以外のイオンを除去して電解槽に戻しつつ電解を行う方法であり、この方法も好ましい。この場合、好ましくは、陽極と陰極の間に隔膜を設け、陽極側の溶液を循環することによって不純物イオンを除去するのが好ましい。また隔膜としては半透膜、微多孔膜等であり、電解液に侵されない材質であればプラスチックや繊維織物等特に制限されない。

【0035】
尚、陰極に用いられる材料としては、好ましくは目的とする希土類金属であるが、その他導電性材料、例えば銅、ニッケル、白金、炭素、グラッシーカーボン等、又は鉄とアマルガムを作らない水銀等も好適な材料である。

【0036】
以下に実施例を示す。

【0037】
実施例においては、図5に示す電解槽を用いた。図中、参照極は銀線、作用極は銅、対極はグラッシーカーボンを表す。
〔実験方法〕

【0038】
電析用電解液の溶媒には有機溶媒として、ジメチルスルホン(DMSO,東京化成工業株式会社),スルホラン(キシダ株式会社),エチルメチルスルホン(東京化成工業株式会社), イソプロピルメチルスルホン(東京化成工業株式会社) , N,N-ジメチルホルムアミド(DMF, 和光純薬工業株式会社;比較例)を使用した。電解質塩には、無水の塩化ネオジム(NdCl, 和光純薬工業株式会社:99.9 %)を使用した。窒素雰囲気下のグローブボックス中でNdClを0.25 g量りとり、上記のそれぞれの有機溶媒10 ml中に0.1 mol dm-3となるように溶解させたものを電析用電解液とした。電析実験にはビーカー型セルを用い、
試験極には銅板(0.5 cm×2.5 cm)を、対極にはグラシーカーボン板(2
cm×2.5 cm)、 参照極には銀線を使用した(図1参照)。電析には、ポテンショガルバノスタット(東陽テクニカ solartoron 1280C)を使用し定電位-3.5 V(vs. Ag)で1時間行った。電析出物の形態は、走査型電子顕微鏡(SEM, 株式会社キーエンスVE-9800)で観察した。析出物の定性は、 エネルギー分散型X線分析装置(EDX, エダックスジャパン株式会社)で行った。

【0039】
結果は表2に示す。

【0040】
【表2】
JP0006090737B2_000005t.gif
なお、ジメチルホルムアミドは比較例である。
上記(a)~(d)の電極結果のSEM写真を図6に示し、エネルギー分散型X線分析図を図7に示す。図6において、左から(a)、(b)、(c)、(d)の結果を示す。

図面
【図3】
0
【図4】
1
【図5】
2
【図7】
3
【図1】
4
【図2】
5
【図6】
6