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明細書 :風力発電システムの出力電力最大化装置及び方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-046899 (P2016-046899A)
公開日 平成28年4月4日(2016.4.4)
発明の名称または考案の名称 風力発電システムの出力電力最大化装置及び方法
国際特許分類 H02P   9/00        (2006.01)
F03D   7/04        (2006.01)
F03D  80/00        (2016.01)
FI H02P 9/00 F
F03D 7/04 A
F03D 11/02
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 29
出願番号 特願2014-168912 (P2014-168912)
出願日 平成26年8月22日(2014.8.22)
発明者または考案者 【氏名】山本 茂
【氏名】浦 大輔
出願人 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100098545、【弁理士】、【氏名又は名称】阿部 伸一
【識別番号】100087745、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 善廣
【識別番号】100106611、【弁理士】、【氏名又は名称】辻田 幸史
審査請求 未請求
テーマコード 3H178
5H590
Fターム 3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB09
3H178BB10
3H178BB31
3H178DD03Z
3H178DD12Z
3H178DD52Z
3H178DD54X
3H178EE05
3H178EE18
3H178EE25
5H590AA02
5H590AA21
5H590AA30
5H590CA14
5H590EB14
5H590FA05
5H590GA09
5H590HA02
5H590HA27
要約 【課題】機械的負荷を増加させることなく、発電機出力の最大化をすることができる、風力発電システムの出力電力最大化装置を提供すること。
【解決手段】ブレードが風から得る出力に比例する信号を導出する演算部10と、信号の直流成分を除去した第1の信号を出力する高域通過フィルタ部20と、第1の信号にブレードの回転角周波数による摂動信号を乗算する摂動信号乗算部30と、第1の信号に摂動信号が乗算された第2の信号が入力され、第2の信号の低域成分を抽出した信号である第3の信号を出力する低域通過フィルタ部40と、第3の信号が入力され、第3の信号を積分した結果に基づき増減する第4の信号を出力する積分部50と、第4の信号に摂動信号を加算する摂動信号加算部60と、第4の信号に摂動信号が加算された第5の信号に基づいて発電機の制動トルクを制御する制御部70とを備える
【選択図】 図6
特許請求の範囲 【請求項1】
風力発電システムの出力電力が最大となるように制御する出力電力最大化装置であって、
ブレードが風から得る出力に比例する信号を導出する演算部と、
前記信号の直流成分を除去した第1の信号を出力する高域通過フィルタ部と、
前記第1の信号に前記ブレードの回転角周波数による摂動信号を乗算する摂動信号乗算部と、
前記第1の信号に前記摂動信号が乗算された第2の信号が入力され、前記第2の信号の低域成分を抽出した信号である第3の信号を出力する低域通過フィルタ部と、
前記第3の信号が入力され、前記第3の信号を積分した結果に基づき増減する第4の信号を出力する積分部と、
前記第4の信号に前記摂動信号を加算する摂動信号加算部と、
前記第4の信号に前記摂動信号が加算された第5の信号に基づいて発電機の制動トルクを制御する制御部と、を備えることを特徴とする風力発電システムの出力電力最大化装置。
【請求項2】
前記ブレードの回転に同期させた正弦波を前記摂動信号として用いることを特徴とする請求項1に記載の風力発電システムの出力電力最大化装置。
【請求項3】
風力発電システムの出力電力が最大となるように制御する出力電力最大化方法であって、
ブレードが風から得る出力に比例する信号を導出する演算ステップと、
前記信号の直流成分を除去した第1の信号を出力する高域通過ステップと、
前記第1の信号に前記ブレードの回転角周波数による摂動信号を乗算する摂動信号乗算ステップと、
前記第1の信号に前記摂動信号が乗算された第2の信号の低域成分を抽出した信号である第3の信号を出力する低域通過ステップと、
前記第3の信号を積分した信号であって、前記積分の結果に基づき増減する第4の信号を出力する積分ステップと、
前記第4の信号に前記摂動信号を加算する摂動信号加算ステップと、
前記第4の信号に前記摂動信号が加算された第5の信号に基づいて発電機の制動トルクを制御する制御ステップと、を備えることを特徴とする風力発電システムの出力電力最大化方法。
【請求項4】
前記ブレードの回転に同期させた正弦波を前記摂動信号として用いることを特徴とする請求項3に記載の風力発電システムの出力電力最大化方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、出力電力の最大化と機械的負荷の低減を同時に実現する、風力発電システムの出力電力最大化装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料の枯渇問題の解決や地球温暖化の緩和方法として、再生可能でクリーンな電源である風力発電システムが注目されている。風力発電システムは、風力エネルギーをブレード(風車)により回転エネルギーに変換して、これにより発電機を回転させて電気エネルギーを得るシステムである。風力発電では風速が変動する不確定環境下において、出力電力を最適動作点で動作させることが肝要で、従来より最大電力追従(MPPT) として研究が進められている。
極値探索制御は、数式モデルを用いることなく、未知で時変の最適パラメータを探索する手法で、風力発電の最適動作点は未知で時変であるためMPPT にも応用されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】橋本英明,早川朋久,「極値探索制御を用いた風力発電システムの出力最適化」,第10回制御部門大会,2010年3月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
風力発電システムへの極値探索制御の適用に際し、出力係数の最大化と風力エネルギーの最大化は等価である。さらに、風力発電システムへの入力の最大化と発電機出力の最大化は等価である。したがって、出力係数を最大化することで風力発電システムの発電機出力の最大化が可能となる。しかし、極値探索制御の適用にあたって、摂動信号の周期はシステムのダイナミクスの時定数に比べて十分小さいものが一般的に用いられるが、この高周波信号を風力発電システムに加えると、発電機トルクを高周波で変動させることとなり、摂動信号は機械的な負荷を増加させる原因となってしまう。
【0005】
そこで本発明は、機械的負荷を増加させることなく、発電機出力の最大化をすることができる、風力発電システムの出力電力最大化装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の風力発電システムの出力電力最大化装置は、風力発電システムの出力電力が最大となるように制御する出力電力最大化装置であって、ブレードが風から得る出力に比例する信号を導出する演算部と、前記信号の直流成分を除去した第1の信号を出力する高域通過フィルタ部と、前記第1の信号に前記ブレードの回転角周波数による摂動信号を乗算する摂動信号乗算部と、前記第1の信号に前記摂動信号が乗算された第2の信号が入力され、前記第2の信号の低域成分を抽出した信号である第3の信号を出力する低域通過フィルタ部と、前記第3の信号が入力され、前記第3の信号を積分した結果に基づき増減する第4の信号を出力する積分部と、前記第4の信号に前記摂動信号を加算する摂動信号加算部と、前記第4の信号に前記摂動信号が加算された第5の信号に基づいて発電機の制動トルクを制御する制御部とを備えることを特徴とする。
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の風力発電システムの出力電力最大化装置において、前記ブレードの回転に同期させた正弦波を前記摂動信号として用いることを特徴とする。
請求項3に記載の風力発電システムの出力電力最大化方法は、風力発電システムの出力電力が最大となるように制御する出力電力最大化方法であって、ブレードが風から得る出力に比例する信号を導出する演算ステップと、前記信号の直流成分を除去した第1の信号を出力する高域通過ステップと、前記第1の信号に前記ブレードの回転角周波数による摂動信号を乗算する摂動信号乗算ステップと、前記第1の信号に前記摂動信号が乗算された第2の信号の低域成分を抽出した信号である第3の信号を出力する低域通過ステップと、前記第3の信号を積分した信号であって、前記積分の結果に基づき増減する第4の信号を出力する積分ステップと、前記第4の信号に前記摂動信号を加算する摂動信号加算ステップと、前記第4の信号に前記摂動信号が加算された第5の信号に基づいて発電機の制動トルクを制御する制御ステップとを備えることを特徴とする。
請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載の風力発電システムの出力電力最大化方法において、前記ブレードの回転に同期させた正弦波を前記摂動信号として用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、出力電力の最大化と機械的負荷の低減を同時に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】風力発電システムの概略構成図
【図2】風力発電システムのブレード(風車)を示す図
【図3】風力発電システムの駆動系を示す図
【図4】従来の極値探索制御を適用したMPPTのブロック図
【図5】同出力係数曲線を示す図
【図6】本発明の極値探索制御を適用したMPPTのブロック図
【図7】本発明と従来法のシミュレーションに用いた風速を示す図
【図8】本発明と従来法のシミュレーションの結果(回転角速度)を示す図
【図9】本発明と従来法のシミュレーションの結果(出力係数)を示す図
【図10】本発明と従来法のシミュレーションの結果(制動トルク)を示す図
【図11】本発明と従来法のシミュレーションの結果(図10の一部拡大)を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による風力発電システムの出力電力最大化装置は、ブレードが風から得る出力に比例する信号を導出する演算部と、信号の直流成分を除去した第1の信号を出力する高域通過フィルタ部と、第1の信号にブレードの回転角周波数による摂動信号を乗算する摂動信号乗算部と、第1の信号に摂動信号が乗算された第2の信号が入力され、第2の信号の低域成分を抽出した信号である第3の信号を出力する低域通過フィルタ部と、第3の信号が入力され、第3の信号を積分した結果に基づき増減する第4の信号を出力する積分部と、第4の信号に摂動信号を加算する摂動信号加算部と、第4の信号に摂動信号が加算された第5の信号に基づいて発電機の制動トルクを制御する制御部とを備えるものである。
本発明の実施の形態によれば、ブレードの回転角速度に応じて発電機を制御することができるので、出力電力の最大化と機械的負荷の低減を同時に実現することができる。

【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態における風力発電システムの出力電力最大化装置において、ブレードの回転に同期させた正弦波を摂動信号として用いるものである。
本発明の実施の形態によれば、より自然な極値探索制御になり、速応性の改善と機械的負荷の低減を同時に実現することができる。

【0011】
本発明の第3の実施の形態による風力発電システムの出力電力最大化方法は、ブレードが風から得る出力に比例する信号を導出する演算ステップと、信号の直流成分を除去した第1の信号を出力する高域通過ステップと、第1の信号にブレードの回転角周波数による摂動信号を乗算する摂動信号乗算ステップと、第1の信号に摂動信号が乗算された第2の信号の低域成分を抽出した信号である第3の信号を出力する低域通過ステップと、第3の信号を積分した信号であって、積分の結果に基づき増減する第4の信号を出力する積分ステップと、第4の信号に摂動信号を加算する摂動信号加算ステップと、第4の信号に摂動信号が加算された第5の信号に基づいて発電機の制動トルクを制御する制御ステップとを備えることを特徴とする。
本発明の実施の形態によれば、ブレードの回転角速度に応じて発電機を制御することができるので、出力電力の最大化と機械的負荷の低減を同時に実現することができる。

【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第3実施の形態における風力発電システムの出力電力最大化方法において、ブレードの回転に同期させた正弦波を摂動信号として用いるものである。
本発明の実施の形態によれば、より自然な極値探索制御になり、速応性の改善と機械的負荷の低減を同時に実現することができる。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
図1は風力発電システムの概略構成図、図2は風力発電システムのブレード(風車)を示す図、図3は風力発電システムの駆動系を示す図である。
本実施例による風力発電システム1は、風力エネルギーをブレード(風車)2により回転エネルギーに変換して、ギヤボックス3を介して発電機4を回転させて電気エネルギーを得る。
本実施例においては、ブレード2の回転角速度ωが可変で、ブレード2のピッチ角βが固定の可変速風力発電装置を対象とし、出力電力の最大化を図る。
また、本実施例では、発電機4の固定子起因の磁場上を回転子が回転するときに発生する制動トルクτ(t)を操作量とする。以下で、風力発電システム1のダイナミクスを記述する数式モデルを導出する。
まず、風速をv(t)としたとき、ブレード2が風から得る出力P(t)は、次式(1)で与えられる。
【実施例】
【0014】
【数1】
JP2016046899A_000003t.gif
ここで、ρは空気密度、Rはブレード2の半径、C(λ(t))は出力係数、λ(t)は周速比を表す。この周速比λ(t)はブレード2の先端速度ω(t)Rと風速v(t)の比、つまり次式(2)で定義され、風力エネルギーから回転エネルギーに変換する効率に関わる重要なパラメータである。
【実施例】
【0015】
【数2】
JP2016046899A_000004t.gif
さらに、一般に出力係数C(λ(t))はあるλ*で唯一の最大値C*を持つが、このλ*の正確な導出は困難とされている。数値シミュレーションによる検証では出力係数Cp(λ)をλの多項式として近似し、ここでは次式(3)で与えられるものとする。
【実施例】
【0016】
【数3】
JP2016046899A_000005t.gif
実際は、出力係数C(λ)の係数パラメータα、(j=1,...,7)は未知である。
次に、ブレード2の運動方程式を導出する。式(3)よりブレード2の運動方程式は次式(4)で与えられる。
【実施例】
【0017】
【数4】
JP2016046899A_000006t.gif
ただし、J:=J+(n/η)であり、イナーシャJ、ギヤ比n及びギヤ効率ηは既知とする。また、ブレード2が風から得るトルクτは次式(5)を満たす。
【実施例】
【0018】
【数5】
JP2016046899A_000007t.gif
【実施例】
【0019】
風力発電システム1では回転子に印加する電圧を入力として、シャフトに発生する発電機4起因の制動トルクτ(t)を操作できる。また、印加電圧から制動トルクτ(t)への応答は、ブレード2のダイナミクスに比べて十分に速いことが知られているため、ここでは、制動トルクτ(t)を風力発電システム1への入力u(t)と考え、次式(6)とする。
【実施例】
【0020】
【数6】
JP2016046899A_000008t.gif
以上、式(1)と式(4)~式(6)から入力u(t)とブレード2の回転角速度ω(t)の関係は次式(7)で記述される。
【実施例】
【0021】
【数7】
JP2016046899A_000009t.gif
【実施例】
【0022】
図4は従来の極値探索制御を適用したMPPTのブロック図であり、図5は同出力係数曲線を示す図である。
風力発電システム1への極値探索制御の適用に際し、再度、対象となる問題を整理する。式(1)より出力係数C(λ)の最大化と風力エネルギーP(t)の最大化は等価である。さらに、風力発電システム1への入力P(t)の最大化と発電機4の出力P(t)の最大化は等価である。したがって、出力係数C(λ)を最大化することで風力発電システム1の発電機4の出力P(t)の最大化が可能となる。
以上より、風力発電システム1への極値探索制御適用の目的は出力係数C(λ)の最大化となる。以降、一般性を保持するために極値探索制御の出力y(t)は出力係数C(λ)をρπR/2だけ定数倍したものとするが,この値は非特許文献1にあるように次式(9)で表現できる。以上をまとめると、極値探索制御の対象(評価関数)は、次式(8)及び(9)で与えられる。
【実施例】
【0023】
【数8】
JP2016046899A_000010t.gif
【数9】
JP2016046899A_000011t.gif

この式(9)において、ω’(t)はブレード2の回転角加速度である。この対象に対して、制御則を次式(10)で与える。
【実施例】
【0024】
【数10】
JP2016046899A_000012t.gif
入力を式(10)で与えることにより、式(8)を平衡点周りで線形化した微分方程式の解は安定となることが証明できる。
【実施例】
【0025】
式(8)と式(9)に極値探索制御を適用した制御系が図4である。
図4においては、出力係数Cは未知の特性である。また、出力係数Cに比例する極値探索制御御の信号yで式(9)にしたがって計算される演算部110、信号yの直流成分ydcを除去した第1の信号(y-ydc)を出力する高域通過フィルタ部120、第1の信号(y-ydc)に摂動信号(sin(ωt))を乗算する摂動信号乗算部130、第1の信号(y-ydc)に摂動信号(sin(ωt))が乗算された第2の信号の低域成分を抽出した信号であって、出力係数Cの関数の傾きを反映した信号である第3の信号ζを出力する低域通過フィルタ部140、第3の信号ζが入力され、出力係数Cの関数の傾きに対応した第4の信号γを出力する積分部150、第4の信号γに摂動信号(ε(t)=asin(ωt))を加算し第5の信号κを出力する摂動信号加算部160、第5の信号κに基づいて発電機4の制動トルクを制御する制御部170を備えている。この制御系の目的は、図5に示すような形状の出力係数を最大化することである。数値シミュレーションでは次式(11)を用いた。
【実施例】
【0026】
【数11】
JP2016046899A_000013t.gif
図4において、摂動信号ε(t)の周期はシステムのダイナミクスの時定数に比べて十分小さいものが一般的に用いられるが、この高周波信号を風力発電システム1に加えると、発電機4のトルクτ(t)を高周波で変動させることとなり、摂動信号ε(t)は機械的な負荷を増加させる原因となることが知られている。
そこで、本発明ではこの機械的負荷を低減させるための極値探索制御を用いる。
【実施例】
【0027】
ここでは、図2におけるブレード2の回転角領域θ(t)と時間領域tの関係について述べる。角度領域における回転系の数式モデルを求める際、時間領域から角度領域へ変換可能であるためには、次式(12)の変換条件が要求される。
【実施例】
【0028】
【数12】
JP2016046899A_000014t.gif
時間領域tから角度領域θ(t)へ変換可能であるための必要十分条件は任意の時間において、回転系の回転方向が変わらないことである。つまり、実際の回転方向を回転の正方向とすると、必要十分条件は式(12)のように記述される。
【実施例】
【0029】
式(12)は回転角度θ=θ(t)の逆関数t:=t(θ)の存在条件を示している。式(12)が満たされているとき、時間領域における変数と角度領域における変数の間には次式(13)~(16)のような関係が成り立つ。
【実施例】
【0030】
【数13】
JP2016046899A_000015t.gif
【数14】
JP2016046899A_000016t.gif
【数15】
JP2016046899A_000017t.gif
【数16】
JP2016046899A_000018t.gif
【実施例】
【0031】
図6は本発明の極値探索制御を適用したMPPTのブロック図である。また、図8~図11は本発明と従来法のシミュレーションの結果を示す図であり、図7は同シミュレーションに用いた風速を示す図である。
【実施例】
【0032】
図6において、出力係数Cは、未知の特性である。また、高域通過フィルタ部20の前段には、出力係数Cに比例する極値探索制御の出力yで式(9)にしたがって計算される演算部10を設けている。また、高域通過フィルタ部20は、出力yが入力され、出力yの直流成分ydcを除去した第1の信号(y-ydc)を出力する。また、摂動信号乗算部30は、第1の信号(y-ydc)にブレード2の回転角周波数ωによる摂動信号(sin(ω(t)t))を乗算する。また、低域通過フィルタ部40は、第1の信号(y-ydc)に摂動信号(sin(ω(t)t))が乗算された第2の信号が入力され、第2の信号の低域成分を抽出した信号であって、出力係数Cの関数の傾きを反映した信号である第3の信号ζを出力する。ここで、第3の信号ζが正のときは周速比λを小さくする方向にC(λ)の最大点があり、第3の信号ζが負のときは周速比λを大きくする方向にC(λ)の最大点がある。したがって、第3の信号ζが入力され、出力係数Cの関数の傾きに対応した第4の信号γを出力する積分部50は、第3の信号ζに応じて第4の信号γを増減する。また、摂動信号加算部60は、第4の信号γに摂動信号(ε(t)=asin(ω(t)t))を加算し第5の信号κを出力する。そして制御部70は、第4の信号γに摂動信号(ε(t)=asin(ω(t)t))が加算された第5の信号κに基づいて、制御則(η/n×ωκ)である信号uを用いて風力発電システム1の発電機4の制動トルクを制御する。
【実施例】
【0033】
風力発電システム1に内在する回転系の周波数の一つに、ブレード2の回転角速度ω(t)がある。この風力発電システム1に元々存在する周波数ω(t)を摂動信号の周波数に採用することで、より自然な極値探索制御になり、機械的負荷を低減できる。しかし、この周波数ω(t)は時変であるため、これを採用した摂動信号ε(t)=asin(ω(t)t)は時間tに関して周期性を持たなくなる。ゆえに、摂動信号としてε(t)=asin(ω(t)t)を使用するためには極値探索制御系を再構築する必要がある。以下で、その手順を示す。
まず、角度領域θ(t)における極値探索制御において、ブレード2の回転角速度ω(t)を周波数とする摂動信号は次式(17)で表される。
【実施例】
【0034】
【数17】
JP2016046899A_000019t.gif
式(17)は角度θ(t)に関して周期性を持つ。つまり、摂動信号に周期関数を用いているため、極値探索制御系として実現可能である。しかし、現実では時間tに関して制御を行うため、角度領域で成立する制御系から時間領域で成立する制御系に再構築する必要がある。その際、再構築の対象は、高域通過フィルタ部20と低域通過フィルタ部40、積分部50の三つであり次のように角度領域から時間領域に変換する。
まず、低域通過フィルタ部40(GLPF(s))を次式(18)で定義する。
【実施例】
【0035】
【数18】
JP2016046899A_000020t.gif
すると、入力x(s)と出力y(s)に対して次式(19)が成り立つ。
【実施例】
【0036】
【数19】
JP2016046899A_000021t.gif
ゆえに、式(18)は角度領域で成り立っていることや、ラプラス変数sは微分操作に対応することに注意すると式(19)は次式(20)のように角度領域から時間領域に座標変換できる。
【実施例】
【0037】
【数20】
JP2016046899A_000022t.gif
ゆえに、時間領域における低域通過フィルタ部40の入出力関係は次式(21)から得ることができる。
【実施例】
【0038】
【数21】
JP2016046899A_000023t.gif
同様に、高域通過フィルタ部40(GHPF(s))と積分部50(G(s))の入出力関係は、次式(22)及び(23)で表すことができる。
【実施例】
【0039】
【数22】
JP2016046899A_000024t.gif

【数23】
JP2016046899A_000025t.gif
【実施例】
【0040】
以上、ブレード2の回転角速度ω(t)を周波数とする摂動信号ε(t)を用いた極値探索制御系は図6のようになる。ただし、低域通過フィルタ部40や高域通過フィルタ部20、積分部50の入出力関係はそれぞれ、式(21)、式(22)及び式(23)に従うものとする。
【実施例】
【0041】
実際に、図6に示す本発明を用いた極値探索制御のシミュレーション結果を図8~図11に示す。このシミュレーションは図7に示す風速の下で、従来法と本発明を比較したものであり、シミュレーションパラメータは表1に示すものを用いた。
【実施例】
【0042】
【表1】
JP2016046899A_000026t.gif
【実施例】
【0043】
図9から本発明は従来法に比べ、速応性が改善されており、より効率的な風力発電システム1の稼働が期待できる。また、図11より本発明では従来法に比べて発電機4のトルクτ(t) の変化が緩やかになり、機械的負荷が低下していることが確認できる。これを以下で定量的に考察する。
ここでの機械的負荷を「高周波摂動信号印加による、トルクの増加(減少)から減少(増加)の変化が高周波である際の負荷」と定義する。つまり、トルクの変化の度合いはτ(t)の微分値dτ/dtで評価できる。ゆえに、この微分値dτ/dtを用いて、風力発電システム1の機械的負荷を次式(24)の微分二乗面積で評価する。
【実施例】
【0044】
【数24】
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ただし、図10の過渡状態における信号の立ち上がりの速さ(微分値に相当)の影響を無視するため、図10の定常状態(150[s]~200[s])において、式(24)に従い、機械的負荷を評価する。実際、従来法では||τ||=0.073、本発明では||τ||=0.004となり、本発明では風力発電システム1の機械的負荷が低減されていることが定量的に説明できる。
従来法では「機械的負荷の低減」と「速応性改善」は摂動信号ε(t)の振幅aについてトレードオフの関係にあるが、本発明ではこのトレードオフの緩和が可能であることが分かる。
以上より、ブレード2の回転角速度ω(t)と同期した周波数をもつ摂動信号ε(t)を用いた極値探索制御を風力発電システム1に適用することで、速応性の改善と機械的負荷低減が同時に実現可能であることが確認できた。
【実施例】
【0045】
閉ループ系の安定性解析および速応性に関する考察として、初めに、本発明(図6)の閉ループ系の安定性解析を行う。図6において、ブレード2の回転角速度ω(t)に関する運動方程式はС=ρπRC/2とすると、次式(25)で与えられる。
【実施例】
【0046】
【数25】
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したがって、角度領域におけるダイナミクスは、次式(26)で与えられる。
【実施例】
【0047】
【数26】
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よって、平衡点ω*は次式(27)となる。
【実施例】
【0048】
【数27】
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以降、この平衡点ω*=(С/κ(θ))1/3周りでの安定性解析を行う。
図6の閉ループ系は角度領域において次式(28)~(30)で与えられる。
【実施例】
【0049】
【数28】
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【数29】
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【数30】
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ここで、各パラメータの最適値(・)*を用いて評価関数f(λ):=ρπRC(λ)/2の最大値を原点に平行移動させる新たな座標系を次式(31)~(33)のように定義する。
【実施例】
【0050】
【数31】
JP2016046899A_000034t.gif
【数32】
JP2016046899A_000035t.gif
【数33】
JP2016046899A_000036t.gif
この座標系を用いて、式(28)~(30)を書き直すと、次式(34)~(36)となる。
【実施例】
【0051】
【数34】
JP2016046899A_000037t.gif
【数35】
JP2016046899A_000038t.gif
【数36】
JP2016046899A_000039t.gif
また、極値探索制御では傾き推定に際して、正弦波を摂動信号として入力に印加するため、システムの実際の挙動と平均的な挙動は一致する。そこで、以降では平均化システムを用いてシステムの安定性を判別する。
式(34)~式(36)を平均化すると、図6に示す極値探索制御系の平均化システムを記述する次式(37)~(39)のような状態方程式を得ることができる。
【実施例】
【0052】
【数37】
JP2016046899A_000040t.gif
【数38】
JP2016046899A_000041t.gif
【数39】
JP2016046899A_000042t.gif
次に、κ(θ)から出力y(θ)までの入出力関係について次式(40)が成り立つ。
【実施例】
【0053】
【数40】
JP2016046899A_000043t.gif
式(40)はκ(θ)からy(θ)への合成関数を表しており、関数λ=g(κ)を定義すると、次式(41)という関係を得ることができる。
【実施例】
【0054】
【数41】
JP2016046899A_000044t.gif
ただし、
【実施例】
【0055】
【数42】
JP2016046899A_000045t.gif
である。また、
【実施例】
【0056】
【数43】
JP2016046899A_000046t.gif
であるので式(42)をκ(θ)=κ*周りで一次の項までテイラー展開すると次式(44)のように近似できる。
【実施例】
【0057】
【数44】
JP2016046899A_000047t.gif
ゆえに、関数y=f(λ)の最大点を原点に平行移動する写像関数hを次式(45)で定義し、
【実施例】
【0058】
【数45】
JP2016046899A_000048t.gif
原点において次式(46)のように二次近似する。
【実施例】
【0059】
【数46】
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ただし、式(46)は上に凸の二次関数であり、最大点を原点に平行移動したものであるのでb=0、b=0、b<0であることに注意する。さらに、この式(46)を用いて平均化システムを書き直すと、最終的に次式(47)~(49)のような非線形システムが得られる。
【実施例】
【0060】
【数47】
JP2016046899A_000050t.gif
【数48】
JP2016046899A_000051t.gif
【数49】
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ここで、上記非線形システムの線形化のため、g=g=g=0とする固定点(δr ̄,ζ ̄,δη ̄)を求めると、次式(50)~(52)となる。
【実施例】
【0061】
【数50】
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【数51】
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【数52】
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したがって、非線形システムのヤコビアンJは、次式(53)となる。
【実施例】
【0062】
【数53】
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ここで、式(53)はブロック対角行列であるため、その安定性と式(53)の2×2の首座小行列の安定性は等価である。そのため次式(54)とすると、
【実施例】
【0063】
【数54】
JP2016046899A_000057t.gif
次式(55)となる。
【実施例】
【0064】
【数55】
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ゆえに、b<0であるのでフルビッツの安定判別法より式(53)で記述される線形化システムは安定となり、図6に示す本発明の閉ループ系の安定性が証明された。
図4に示す従来法における極値探索制御系の閉ループ系の安定性解析も同様に行うことができ、極値探索制御系を記述する線形状態方程式は、本発明が次式(56)、従来法が次式(57)となる。
【実施例】
【0065】
【数56】
JP2016046899A_000059t.gif
【数57】
JP2016046899A_000060t.gif
ここで、式(56)を角度領域から時間領域に変換すると次式(58)となる。
【実施例】
【0066】
【数58】
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さらに、本発明の線形状態方程式の係数行列をApro、従来法の線形状態方程式の係数行列をAconvとすると、次式(59)となる。
【実施例】
【0067】
【数59】
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ここで、行列と固有値に関して、「ある行列Aの固有値から成るベクトルがλのとき、行列Aをある定数c倍した行列cAの固有値から成るベクトルはcλとなる」という性質に基づけば、ω(t)が一定で、ω(t)>1ならば、式(59)より、Aconvの固有値の絶対値よりもAproの固有値の絶対値の方が大きくなる。実際、図8より、ω(t)>1なので、本発明における線形状態方程式の係数行列Aproの固有値の絶対値の方が大きくなるといえる。ゆえに、図9に示すように、本発明では従来法に比べ、速応性が改善されることが説明できる。
【実施例】
【0068】
本発明は、機械的負荷低減を考慮した風力発電システムの制御に適している。
【符号の説明】
【0069】
10 演算部
20 高域通過フィルタ部
30 摂動信号乗算部
40 低域通過フィルタ部
50 積分部
60 摂動信号加算部
70 制御部
80 定数乗算部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10