TOP > 国内特許検索 > 多糖誘導体、及びその蛍光性キラルセンサーとしての用途 > 明細書

明細書 :多糖誘導体、及びその蛍光性キラルセンサーとしての用途

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-199692 (P2016-199692A)
公開日 平成28年12月1日(2016.12.1)
発明の名称または考案の名称 多糖誘導体、及びその蛍光性キラルセンサーとしての用途
国際特許分類 C09K  11/06        (2006.01)
G01N  21/64        (2006.01)
C08H  99/00        (2010.01)
C08B  15/06        (2006.01)
FI C09K 11/06
G01N 21/64 F
C08H 99/00
C08B 15/06
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 36
出願番号 特願2015-081156 (P2015-081156)
出願日 平成27年4月10日(2015.4.10)
発明者または考案者 【氏名】井改 知幸
【氏名】前田 勝浩
【氏名】加納 重義
【氏名】小島 豊
出願人 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
【識別番号】100125070、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 京子
【識別番号】100136629、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 光宜
【識別番号】100121212、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弥栄子
【識別番号】100117743、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 美由紀
【識別番号】100163658、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 順造
【識別番号】100174296、【弁理士】、【氏名又は名称】當麻 博文
審査請求 未請求
テーマコード 2G043
4C090
Fターム 2G043DA02
2G043EA01
4C090AA02
4C090BA34
4C090BB02
4C090BB12
4C090BB36
4C090BB55
4C090BB62
4C090BB63
4C090BB65
4C090BB76
4C090BB77
4C090BB99
4C090BD14
4C090CA35
4C090DA06
4C090DA31
要約 【課題】蛍光強度の変化により光学活性キラル化合物のキラリティーの識別が可能な、多糖誘導体からなるキラルセンサーを提供する。
【解決手段】本発明は、下記式(I):
JP2016199692A_000029t.gif
[式中の各記号は、明細書に記載のとおりである。]で表される多糖誘導体に関する。本発明によれば、前記多糖誘導体からなるキラルセンサーと光学活性キラル化合物との混合溶液の蛍光強度の変化を観測することにより、光学活性キラル化合物のキラリティーを感度良く識別することができる実用的なキラリティーセンシング手法を提供することができる。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
式(I):
【化1】
JP2016199692A_000027t.gif
[式中、
Lは、単結合又はNHを示し;
Rは、独立してそれぞれ、蛍光発光性基を示し;
n個のアノマー位炭素原子は、全て同一の立体配置を示し;及び
nは、10以上の整数を示す。]
で表される化合物又はその塩、或いはその溶媒和物。
【請求項2】
Rが、下記式:
【化2】
JP2016199692A_000028t.gif
[式中、
は、フェニル基との結合位置を示し;
は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよいアシル基を示し;
mは、1~9の整数を示し;
pは、1~3の整数を示し;
qは、1~7の整数を示す。]
から成る群より選択される蛍光発光性基である、
請求項1記載の化合物又はその塩、或いはその溶媒和物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物又はその塩、或いはその溶媒和物からなる、蛍光性キラルセンサー。
【請求項4】
請求項3記載のキラルセンサーの溶液に、識別対象である光学活性キラル化合物を添加し、混合溶液を調製する工程、
前記混合溶液の蛍光スペクトル測定を行う工程、及び
蛍光強度の変化から当該光学活性キラル化合物のキラリティーを決定する工程を含むことを特徴とする、光学活性キラル化合物のキラリティーの識別方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光発光性を有する新規多糖誘導体(例、セルロース誘導体、アミロース誘導体等)に関する。また、本発明は、光学活性キラル化合物のキラリティーを蛍光強度の変化により識別可能な、該多糖誘導体からなる蛍光性キラルセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
有機化合物には物理的、化学的性質、例えば沸点、融点、溶解度といった物性が全く同一であるが、生理活性に差がみられる光学異性体が多く存在する。医薬の技術分野では、生体内の特定の受容体との結合のし易さによる薬理活性の違いがよく研究されており、光学異性体の間で薬効、毒性の点で顕著な差が見られる場合が多いことが広く知られている。このような事情から、光学異性体の選択的な合成技術やラセミ体からの光学異性体の分離技術等と並び、光学異性体のセンシング技術(光学異性体のキラリティーを判定する技術)も注目されている。すなわち、光学異性体が存在する化合物が合成され又は提供された場合において、その化合物がいずれのキラリティーを有するのか、又はラセミ体であるのか、等を微量で判定できる、簡便かつ正確なキラリティーの識別方法の開発は極めて重要な課題となっている。
【0003】
分子の不斉を直接反映したスペクトルを与える円二色性(CD)スペクトルを利用したキラリティー識別、NMRシフト試薬、キラルHPLC等を利用したキラリティー識別等に関する多くの研究がこれまでに報告されているが、キラリティーの検出装置としては非常に高価であるため、簡便なセンシング手法であるとは言い切れない。最も簡便にキラリティーを識別する手法の一つとして、蛍光スペクトルの変化を利用したキラリティーセンシングの手法が挙げられる。
【0004】
かかる手法として、光学活性クラウンエーテル構造を有する蛍光性ホスト化合物(又はポリマー)によるホスト-ゲスト錯形成平衡反応の特徴を利用した、蛍光性キラルセンサーが報告されている(特許文献1、2)。これらは、ホスト化合物である光学活性クラウンエーテル構造とゲスト化合物(識別対象)であるキラル第一級アミンとの錯形成による分子認識に基づくキラリティーセンシングの手法であるが、ホスト化合物のゲスト認識部位に高価な光学活性官能基を導入しておく必要があるなどの課題が残されていた。また、ビナフトール構造を有する低分子型蛍光キラリティーセンサーの報告例もある(非特許文献1)が、センサー化合物の構造上、識別可能な光学活性キラル化合物の種類が限定されるという課題が残されていた。
【0005】
一方、多糖誘導体等の天然の光学活性化合物の特性を利用した光学異性体分離剤は、多数実用化されているが(例えば、株式会社ダイセル製のChiralcel(登録商標)シリーズ、Chiralpak(登録商標)シリーズ等)、光学活性キラル化合物のキラリティーの識別化剤(キラルセンサー)、特に、蛍光性キラルセンサー、としての報告例は、これまでのところ本発明者らが知る限りでは皆無である。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特許第3950117号公報
【特許文献2】特許第4545370号公報
【0007】

【非特許文献1】Tetrahedron: Asymmetry, 2009, 20, 1690-1696
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような背景のもと、安価に感度良く様々な種類の光学活性キラル化合物のキラリティーを、特殊な装置を用いることなく簡便に識別することができる実用的なキラリティーセンシングの手法の開発がますます求められている。
【0009】
本発明の目的は、高価な光学活性な官能基を一切導入する必要がなく、天然に豊富に存在する多糖類(セルロース、アミロース等)を有効利用して、光学活性キラル化合物のキラリティーを蛍光強度の変化を観測することにより識別することができる、簡便且つ実用的なキラリティーセンシングの手法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、かかる状況下、鋭意検討を重ねた結果、光学活性キラル化合物のキラリティーの識別が可能な、下記式(I):
【0011】
【化1】
JP2016199692A_000002t.gif

【0012】
[式中、
Lは、単結合又はNHを示し;
Rは、独立してそれぞれ、蛍光発光性基を示し;
n個のアノマー位炭素原子は、全て同一の立体配置を示し;及び
nは、10以上の整数を示す。]
で表される化合物(以下、「化合物(I)」と称することもある。)又はその塩、或いはその溶媒和物が、光学活性キラル化合物のキラリティーを感度良く識別することができる実用的な蛍光性キラルセンサーとして有用であることを初めて見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]式(I):
【0014】
【化2】
JP2016199692A_000003t.gif

【0015】
[式中、
Lは、単結合又はNHを示し;
Rは、独立してそれぞれ、蛍光発光性基を示し;
n個のアノマー位炭素原子は、全て同一の立体配置を示し;及び
nは、10以上の整数を示す。]
で表される化合物又はその塩、或いはその溶媒和物、
[2]Rが、下記式:
【0016】
【化3】
JP2016199692A_000004t.gif

【0017】
[式中、
は、フェニル基との結合位置を示し;
は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよいアシル基を示し;
mは、1~9の整数を示し;
pは、1~3の整数を示し;
qは、1~7の整数を示す。]
から成る群より選択される蛍光発光性基である、
上記[1]記載の化合物又はその塩、或いはその溶媒和物、
[3]n個のアノマー位炭素原子の立体配置が、全てβ-アノマーである、上記[1]又は[2]に記載の化合物又はその塩、或いはその溶媒和物、
[4]上記[1]~[3]のいずれかに記載の化合物又はその塩、或いはその溶媒和物からなる、蛍光性キラルセンサー、
[5]上記[4]記載のキラルセンサーの溶液に、識別対象である光学活性キラル化合物を添加し、混合溶液を調製する工程、
前記混合溶液の蛍光スペクトル測定を行う工程、及び
蛍光強度の変化から当該光学活性キラル化合物のキラリティーを決定する工程を含むことを特徴とする、光学活性キラル化合物のキラリティーの識別方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の化合物(I)は、広範なキラル化合物の光学分割剤として有用であると共に、光学活性キラル化合物に対して高感度なキラリティー識別能を示す。具体的には、本発明の化合物(I)からなるキラルセンサーと光学活性キラル化合物の各光学異性体との非共有結合的相互作用に起因する蛍光強度の変化の仕方が、各光学異性体間で顕著に相違するので、その変化を利用して容易且つ簡便に、識別対象である光学活性キラル化合物のキラリティーを感度良く識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実験例1で得られた、化合物(I-1)を担持したシリカゲルを充填させたキラルカラムによる化合物(T-1)のラセミ体のキラル分離クロマトグラム(流速:0.1mL/min、溶離液:ヘキサン/2-プロパノール(70:30,v/v)を示す。
【図2】実験例2において、化合物(I-1)と、化合物(T-1R)とを混合した際の蛍光スペクトルの変化(励起波長:450nm)を示す。
【図3】実験例2において、化合物(I-1)と、化合物(T-1S)とを混合した際の蛍光スペクトルの変化(励起波長:450nm)を示す。
【図4】実験例2において観測されたI/Iを化合物(T-1R)又は化合物(T-1S)の添加量(化合物(I-1)に対して、0~5000当量)に対してプロットした図である(ここで、Iは、化合物(I-1)非存在下での波長495nmにおける蛍光スペクトルの極大値を示し、Iは、化合物(T-1R)又は化合物(T-1S)の各当量を添加した際の、化合物(I-1)存在下での波長495nmにおける各蛍光スペクトルの極大値を示す。)。
【図5】実験例3において、化合物(I-2)と、化合物(T-1R)とを混合した際の蛍光スペクトルの変化(励起波長:450nm)を示す。
【図6】実験例3において、化合物(I-2)と、化合物(T-1S)とを混合した際の蛍光スペクトルの変化(励起波長:450nm)を示す。
【図7】実験例3において観測されたI/Iを化合物(T-1R)又は化合物(T-1S)の添加量(化合物(I-2)に対して、0~5000当量)に対してプロットした図である(ここで、Iは、化合物(I-2)非存在下での波長495nmにおける蛍光スペクトルの極大値を示し、Iは、化合物(T-1R)又は化合物(T-1S)の各当量を添加した際の、化合物(I-2)存在下での波長495nmにおける各蛍光スペクトルの極大値を示す。)。
【図8】実験例4において、化合物(I-2)と、化合物(T-2R)とを混合した際の蛍光スペクトルの変化(励起波長:450nm)を示す。
【図9】実験例4において、化合物(I-2)と、化合物(T-2S)とを混合した際の蛍光スペクトルの変化(励起波長:450nm)を示す。
【図10】実験例4において観測されたI/Iを化合物(T-2R)又は化合物(T-2S)の添加量(化合物(I-2)に対して、0~5000当量)に対してプロットした図である(ここで、Iは、化合物(I-2)非存在下での波長495nmにおける蛍光スペクトルの極大値を示し、Iは、化合物(T-2R)又は化合物(T-2S)の各当量を添加した際の、化合物(I-2)存在下での波長495nmにおける各蛍光スペクトルの極大値を示す。)。
【図11】実験例5において、化合物(I-2)と、化合物(T-3R)とを混合した際の蛍光スペクトルの変化(励起波長:450nm)を示す。
【図12】実験例5において、化合物(I-2)と、化合物(T-3S)とを混合した際の蛍光スペクトルの変化(励起波長:450nm)を示す。
【図13】実験例5において観測されたI/Iを化合物(T-3R)又は化合物(T-3S)の添加量(化合物(I-2)に対して、0当量及び2000当量)に対してプロットした図である(ここで、Iは、化合物(I-2)非存在下での波長495nmにおける蛍光スペクトルの極大値を示し、Iは、化合物(T-3R)又は化合物(T-3S)の各当量を添加した際の、化合物(I-2)存在下での波長495nmにおける各蛍光スペクトルの極大値を示す。)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の詳細を説明する。

【0021】
(定義)

【0022】
本明細書中、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。

【0023】
本明細書中、「アルキル(基)」としては、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1以上のアルキル基を意味し、特に炭素数範囲の限定がない場合には、好ましくは、C1-30アルキル基であり、中でも、C1-20アルキル基がより好ましい。

【0024】
本明細書中、「C1-20アルキル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~20のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、エイコシル、2-ヘキシルデシル、2-エチルヘキシル等が挙げられる。

【0025】
本明細書中、「C1-6アルキル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~6のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル等が挙げられる。

【0026】
本明細書中、「C1-4アルキル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~4のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル等が挙げられる。

【0027】
本明細書中、「C3-8シクロアルキル(基)」とは、炭素原子数3~8の環状アルキル基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。

【0028】
本明細書中、「アルコキシ(基)」とは、直鎖または分岐鎖のアルキル基が酸素原子と結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1-6アルコキシ基である。

【0029】
本明細書中、「C1-6アルコキシ(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~6のアルコキシ基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられる。中でも、C1-4アルコキシ基が好ましい。

【0030】
本明細書中、「C1-6アルキルチオ(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~6のアルキル基が硫黄原子と結合した基を意味し、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ネオペンチルチオ、ヘキシルチオ等が挙げられる。中でも、C1-4アルキルチオ基が好ましい。

【0031】
本明細書中、「C1-6アルキルスルホニル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~6のアルキル基がスルホニル基に結合した基を意味し、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec-ブチルスルホニル、tert-ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、イソペンチルスルホニル、ネオペンチルスルホニル、1-エチルプロピルスルホニル、ヘキシルスルホニル、イソヘキシルスルホニル、1,1-ジメチルブチルスルホニル、2,2-ジメチルブチルスルホニル、3,3-ジメチルブチルスルホニル、2-エチルブチルスルホニル等が挙げられる。

【0032】
本明細書中、「C6-10アリールスルホニル基」とは、「C6-10アリール基」がスルホニル基に結合した基を意味し、例えば、フェニルスルホニル、1-ナフチルスルホニル、2-ナフチルスルホニル等が挙げられる。

【0033】
本明細書中、「C1-6アルキルスルホニルオキシ(基)」とは、C1-6アルキルスルホニル基が酸素原子に結合した基を意味し、例えば、メチルスルホニルオキシ、エチルスルホニルオキシ、プロピルスルホニルオキシ、イソプロピルスルホニルオキシ、ブチルスルホニルオキシ等が挙げられる。

【0034】
本明細書中、「C6-10アリールスルホニルオキシ(基)」とは、C6-10アリールスルホニル基が酸素原子に結合した基を意味し、例えば、フェニルスルホニルオキシ、1-ナフチルスルホニルオキシ、2-ナフチルスルホニルオキシ等が挙げられる。

【0035】
本明細書中、「アシル(基)」とは、アルカノイル、アロイル、アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル、又はアルコキシカルボニルを意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1-7アルカノイル基、C7-11アロイル、又はC1-6アルコキシ-カルボニルである。

【0036】
本明細書中、「C1-7アルカノイル(基)」とは、炭素原子数1~7の直鎖又は分枝鎖のホルミル又はアルキルカルボニルであり、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル等が挙げられる。

【0037】
本明細書中、「C7-11アロイル(基)」とは、炭素原子数7~11のアリールカルボニルであり、ベンゾイル等が挙げられる。

【0038】
本明細書中、「C1-6アルコキシ-カルボニル(基)」とは、炭素原子数1~6の直鎖又は分枝鎖のアルコキシカルボニルであり、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等が挙げられる。

【0039】
本明細書中、「C1-7アルカノイルオキシ(基)」としては、例えば、ホルミルオキシ、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、sec-ブチルカルボニルオキシ、tert-ブチルカルボニルオキシ、ペンチルカルボニルオキシ、イソペンチルカルボニルオキシ、ネオペンチルカルボニルオキシ、ヘキシルカルボニルオキシ等が挙げられる。

【0040】
本明細書中、「C7-11アロイルオキシ(基)」としては、例えば、ベンゾイルオキシ、1-ナフトイルオキシ、2-ナフトイルオキシ等が挙げられる。

【0041】
本明細書中、「C6-10アリール(基)」とは、芳香族性を示す単環式あるいは多環式(縮合)の炭素原子数6~10の炭化水素基を意味し、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチルを示し、フェニルが特に好ましい。

【0042】
本明細書中、「C7-14アラルキル(基)」とは、「C1-4アルキル基」に「C6-10アリール基」が置換した基を意味し、例えば、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、(ナフチル-1-イル)メチル、(ナフチル-2-イル)メチル、1-(ナフチル-1-イル)エチル、1-(ナフチル-2-イル)エチル、2-(ナフチル-1-イル)エチル、2-(ナフチル-2-イル)エチル、ビフェニリルメチル等が挙げられる。

【0043】
本明細書中、「トリ置換シリル(基)」とは、同一又は異なる3個の置換基(例、C1-6アルキル基、C6-10アリール基等)により置換されたシリル基を意味し、当該基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等のトリアルキルシリル基(好ましくは、トリC1-6アルキルシリル基)、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等が好ましい。

【0044】
本明細書中、「トリ置換シロキシ(基)」とは、トリ置換シリル基が酸素原子と結合した基を意味する。当該基としては、トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基、トリイソプロピルシロキシ基、tert-ブチルジメチルシロキシ基等のトリアルキルシロキシ基(好ましくは、トリC1-6アルキルシロキシ基)が好ましい。

【0045】
本明細書中、「保護されたアミノ基」とは、「保護基」で保護されたアミノ基を意味する。当該「保護基」としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons刊(1980)に記載のアミノ基の保護基を使用し得、例えば、C1-6アルキル基、C7-14アラルキル基、C6-10アリール基、C1-7アルカノイル基、C7-14アラルキル-カルボニル基、トリC1-6アルキルシリル基等の保護基が挙げられる。上記の保護基は、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基又はニトロ基により更に置換されていてもよい。当該アミノ基の保護基の具体例としては、メチル、アセチル、トリフルオロアセチル、ピバロイル、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル等が挙げられる。

【0046】
本明細書中、「置換されていてもよい」とは、1個以上の置換基を有していてもよいことを意味し、該「置換基」としては、(1)ハロゲン原子、(2)ニトロ、(3)シアノ、(4)C1-6アルキル、(5)C3-8シクロアルキル、(6)C1-6アルコキシ、(7)C6-10アリール、(8)C7-14アラルキル、(9)C1-7アルカノイルオキシ、(10)C7-11アロイルオキシ、(11)C1-7アルカノイル、(12)C7-11アロイル、(13)アジド、(14)C1-6アルキルチオ、(15)C6-10アリールチオ、(16)C1-6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル、(17)C1-6アルキルスルホニルオキシ、(18)C6-10アリールスルホニルオキシ、(19)C1-6アルコキシ-カルボニル、(20)トリ置換シリル基、(21)トリ置換シロキシ基、(22)保護されたアミノ基等が挙げられる。中でも、ハロゲン原子、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルコキシ-カルボニル、アセチル、ホルミル、カルバモイル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、ジメチルアミノ、アセチルアミノ等が好ましく、ハロゲン原子が特に好ましい。また、複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。

【0047】
上記置換基は、さらに上記置換基で置換されていてもよい。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1乃至5個、より好ましくは1乃至3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。

【0048】
本明細書中、「光学活性」とは、光の平面偏光を回転させる性質、すなわち、旋光能を有する状態を意味する。好ましくは、光学的に純粋な状態である。

【0049】
本明細書中、「キラル化合物」とは、中心性キラリティー、軸性キラリティー又は面性キラリティーを持つ化合物を意味し、例えば、中心性キラリティー(不斉中心、すなわち、不斉炭素原子)を持つ化合物が挙げられる。

【0050】
本明細書中、「光学活性キラル化合物」としては、光の平面偏光を回転させる性質、すなわち、旋光能を有する低分子化合物であり、中心性キラリティー、軸性キラリティー又は面性キラリティーを持つ分子量が1000以下の有機化合物又は無機化合物が挙げられるが、特に限定されるものではない。好ましくは、光学的に純粋な化合物であり、例えば、それぞれ光学活性な1,1’-ビナフチル誘導体、ビフェニル誘導体、アミノアルコール誘導体、アミノ酸誘導体、シクロプロパン誘導体、エポキシ誘導体、ベンゾイン誘導体、金属錯体(例、Co(acac)、Cr(acac)、Ru(acac)等)等が挙げられる。中でも、蛍光性基に対し、消光基であることが知られているニトロ基含有基(例、4-ニトロベンゾイル基、4-ニトロベンジル基等)、シアノ基、トリフルオロメチル等の電子求引性基を化合物中に有する、例えば、下記式:

【0051】
【化4】
JP2016199692A_000005t.gif

【0052】
で表される化合物等が、蛍光強度の変化によりキラリティーを識別する本発明のキラルセンシング手法を利用する上では特に好ましい。

【0053】
本明細書中、「ee」とは、鏡像体過剰率(enantiomeric excess)の略称であり、キラル化合物の光学純度を表す。「ee」は、多い方の鏡像体の物質量から少ない方の鏡像体の物質量を引き、全体の物質量で割った値に100を掛けて算出され、「%ee」で表される。

【0054】
本明細書中、「光学的に純粋な」とは、99%ee以上の光学純度を示す状態を表す。

【0055】
本明細書中、「鏡像異性体」とは、光学活性キラル化合物中の全ての不斉炭素原子の立体配置が異なっている光学的対掌体を意味し、光学活性キラル化合物同士が互いに右手と左手との関係にある1対の光学異性体を構成している。具体的には、例えば、光学活性キラル化合物が、(R)-N-(2-ヒドロキシ-1-フェニルエチル)-4-ニトロベンズアミドである場合の鏡像異性体は、(S)-N-(2-ヒドロキシ-1-フェニルエチル)-4-ニトロベンズアミドである。

【0056】
本明細書中、「ラセミ体」とは、キラル化合物の2種類の鏡像異性体(エナンチオマー)が等量存在することにより旋光性を示さなくなった状態の化合物を意味する。

【0057】
本明細書中、「キラルセンサー」とは、光学活性キラル化合物についてキラリティーを高感度に計測、判別することができる物質(化合物等)を意味する。本明細書中、「キラルセンサー」を利用した計測、判別を行うことを「キラルセンシング」という。

【0058】
本明細書中、「蛍光性キラルセンサー」とは、測定物質(識別対象化合物)と混合することにより、蛍光発光を示し、その蛍光強度の変化を利用して、測定物質のキラリティーを識別する物質(化合物等)を意味する。

【0059】
(本発明の化合物(I))
本発明の化合物(I)は、下記式(I):

【0060】
【化5】
JP2016199692A_000006t.gif

【0061】
[式中、
Lは、単結合又はNHを示し;
Rは、独立してそれぞれ、蛍光発光性基を示し;
n個のアノマー位炭素原子は、全て同一の立体配置を示し;及び
nは、10以上の整数を示す。]
で表される化合物又はその塩、或いはその溶媒和物である。

【0062】
化合物(I)の塩とは、例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩、アミノ酸との塩等が挙げられる。

【0063】
無機塩基との塩として、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
有機塩基との塩として、例えば、メチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、グアニジン、ピリジン、ピコリン、コリン、シンコニン、メグルミン等との塩が挙げられる。
アミノ酸との塩として、例えば、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等との塩が挙げられる。

【0064】
化合物(I)又はその塩の溶媒和物とは、化合物(I)又はその塩に、溶媒の分子が配位したものであり、水和物も包含される。例えば、化合物(I)またはその塩の水和物、エタノール和物、ジメチルスルホキシド和物等が挙げられる。

【0065】
以下、化合物(I)の各基について説明する。

【0066】
Lは、単結合又はNHを示し、中でもNHが好ましい。

【0067】
Rは、独立してそれぞれ、蛍光発光性基を示し、好ましくは、全て同一の基である。

【0068】
本明細書中、「蛍光発光性基」とは、溶液状態で、高い蛍光量子収率を示す蛍光性有機分子の部分構造を有する基である。蛍光量子収率が高い部分構造を有する、蛍光性有機分子としては、例えば、従来公知のクマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンゾアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素等が挙げられ、化合物(I)が蛍光スペクトル測定溶媒に可溶である限り、これらの部分構造を有する基を蛍光発光性基として用いることができる。

【0069】
本明細書中、「蛍光スペクトル測定溶媒」とは、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、THF-ヘキサン混合溶媒、クロロホルム、クロロホルム-ヘキサン混合溶媒、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられ、好ましくは、THF、THF-ヘキサン混合溶媒、クロロホルム、クロロホルム-ヘキサン混合溶媒である。

【0070】
本発明の化合物(I)における蛍光発光性基であるRとしては、好ましくは、式:

【0071】
【化6】
JP2016199692A_000007t.gif

【0072】
[式中、
は、フェニル基との結合位置を示し;
は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよいアシル基を示し;
mは、1~9の整数を示し;
pは、1~3の整数を示し;
qは、1~7の整数を示す。]
から成る群より選択される蛍光発光性基であり、より好ましくは、式:

【0073】
【化7】
JP2016199692A_000008t.gif

【0074】
[式中の各基の定義は前記と同義を示す。]から成る群より選択される蛍光発光性基であり、特に好ましくは、式:

【0075】
【化8】
JP2016199692A_000009t.gif

【0076】
[式中の各基の定義は前記と同義を示す。]で表される基である。

【0077】
前記Rとして挙げた各基の式中のRは、好ましくは、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアルコキシ基であり、より好ましくは、C1-20アルキル基又はC1-6アルコキシ基であり、特に好ましくは、C6-20アルキル基である。p個又はq個のRは、結合位置が特定されている場合を除き、環上のいずれの位置に存在していてもよい。

【0078】
mは、好ましくは、mは、1~9の整数であり、より好ましくは、1~5の整数であり、特に好ましくは、1~3の整数である。

【0079】
nは、10以上の整数であり、好ましくは、30以上、2000以下の整数であり、より好ましくは、100以上、500以下の整数である。

【0080】
n個のアノマー位炭素原子は、全て同一の立体配置を示し、アノマー位炭素原子の立体配置が全てβ-アノマーのもの(セルロース型)、又は全てα-アノマーのもの(アミロース型)が好ましい。中でもセルロース型がより好ましい。

【0081】
化合物(I)としては、以下の化合物が好適である。
[化合物(IA)]
Lは、NHであり、
Rは、式:

【0082】
【化9】
JP2016199692A_000010t.gif

【0083】
[式中、
は、フェニル基との結合位置を示し;
は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいアルキル基(より好ましくは、C1-20アルキル基であり、特に好ましくは、C6-20アルキル基である。)、置換されていてもよいアルコキシ基(より好ましくは、C1-6アルコキシ基である。)又は置換されていてもよいアシル基を示し;
mは、1~9の整数を示し;
pは、1~3の整数を示し;
qは、1~7の整数を示す。]
から成る群より選択される同一の基であり、
n個のアノマー位炭素原子は、全て同一の立体配置であり、並びに
nは、10以上の整数
である、化合物(I)。

【0084】
より好適な化合物(I)は、以下の化合物である。
[化合物(IB)]
Lは、NHであり、
Rは、式:

【0085】
【化10】
JP2016199692A_000011t.gif

【0086】
[式中、
は、フェニル基との結合位置を示し;
は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいアルキル基(より好ましくは、C1-20アルキル基であり、特に好ましくは、C6-20アルキル基である。)、置換されていてもよいアルコキシ基(より好ましくは、C1-6アルコキシ基である。)を示し;
mは、1~5の整数を示す。]
から成る群より選択される同一の基であり、
n個のアノマー位炭素原子の立体配置は、全てβ-アノマーであり、並びに
nは、30以上、2000以下の整数
である、化合物(I)。

【0087】
更に好適な化合物(I)は、以下の化合物である。
[化合物(IC)]
Lは、NHであり、
Rは、式:

【0088】
【化11】
JP2016199692A_000012t.gif

【0089】
[式中、
は、フェニル基との結合位置を示し;
は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいアルキル基(より好ましくは、C1-20アルキル基であり、特に好ましくは、C6-20アルキル基である。)を示し;
mは、1~3の整数を示す。]
から成る群より選択される同一の基であり、
n個のアノマー位炭素原子の立体配置は、全てβ-アノマーであり、並びに
nは、30以上、2000以下の整数
である、化合物(I)。

【0090】
化合物(I)の数平均重合度(1分子中に含まれるグルコース単位の平均数)は、10以上、好ましくは30以上であり、特に上限はないが、2000以下であることが取り扱いの容易さの点で望ましい。化合物(I)の数平均重合度は、より好ましくは、100以上、500以下である。

【0091】
好適な化合物(I)の具体例は、例えば、後述する実施例に記載の化合物(I-1)及び化合物(I-2)である。

【0092】
また、化合物(I)は、同位元素(例えば、H、H(D)、14C、35S等)で標識されていてもよい。

【0093】
(化合物(I)の合成)
化合物(I)の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、以下のような反応を経て合成することができる。

【0094】
原料化合物は、特に述べない限り、市販品として容易に入手できるか、あるいは、自体公知の方法(例、J. Organometallic Chem., 2007, Vol. 692, 5727-5753; Chem Eur. J., 2003, Vol. 9, 4430-4441; Chem. Eur. J., 2013, Vol. 19, 8900-8912; J. Org. Chem., 2012, Vol. 77, 9120-9133; PNAS, 2006, Vol. 103, No. 24, 8934-8936; J. Org. Chem., 2014, Vol. 79, 11241-11245; 有機合成化学協会誌, 1993, Vol. 51, 59-71; 科学と工業, 2001, Vol. 75, No. 10, 501-509; Synthetic Metals, 2003, Vol. 133-134, 325-328, J. Chromatography, 1987, Vol. 389, 95-102等)またはこれらに準ずる方法に従って製造することができる。

【0095】
なお、以下の反応式中の各工程で得られた化合物は、反応液のままか粗生成物として次の反応に用いることもできる。あるいは、該化合物は常法に従って反応混合物から単離することもでき、再結晶、蒸留、クロマトグラフィーなどの通常の分離手段により容易に精製することができる。

【0096】
化合物(I)は、例えば、以下の工程により製造することができる。

【0097】
【化12】
JP2016199692A_000013t.gif

【0098】
[式中、Xは、ハロゲン原子(好ましくは、ヨウ素原子)を示し、X’は、水酸基又は脱離基を示し、R-Hは、前記R基のの位置に水素原子が結合した化合物を示し、他の記号は、前記と同義である。]

【0099】
工程1-1
当該工程は、化合物(1)と化合物(2a)と反応させることにより、化合物(3a)へと変換する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、窒素雰囲気下、塩基を用いて行われる。

【0100】
塩基としては、例えば、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ピロール等の有機塩基が挙げられるが、溶媒としても用いることができることから、ピリジンが好適に用いられる。
該塩基の使用量は、化合物(1)の水酸基の当量数(3×nモル)に対して、下限は、同モル量(3×nモル)であり、上限は、100倍モル量(300×nモル)が好ましい(nは、前記と同義を示す)。

【0101】
また、当該反応は、リチウム塩(好ましくは、塩化リチウム)を適量添加することにより、アミロースまたはセルロースの溶解性を向上させることができる。

【0102】
溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒が挙げられ、中でも、DMAが好ましい。

【0103】
当該工程で使用される溶媒の量は、例えば、塩基の使用量の等量~5倍程度の量が好ましい。特に、塩基の使用量の2倍程度の量が好ましい。

【0104】
反応温度は、通常0℃~200℃、好ましくは20℃~120℃である。
反応時間は、通常0.5~30時間である。

【0105】
工程1-2
当該工程は、化合物(1)と化合物(2b)と反応させることにより、化合物(3b)へと変換する工程である。

【0106】
X’が脱離基である化合物(2b)を使用する場合には、当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、塩基存在下で行われる。

【0107】
X’で示される「脱離基」としては、例えば、アシルオキシ(例、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルスルホニルオキシ(例、メタンスルホニルオキシ、エタンスルホニルオキシ、トリクロロメタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ[トリフラート])、置換されていてもよいC6-14アリールスルホニルオキシが挙げられる。「置換されていてもよいC6-14アリールスルホニルオキシ」としては、例えばC1-6アルキル(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル)、C1-6アルコキシ(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ)およびニトロから選ばれる置換基を1ないし3個有していてもよいC6-14アリールスルホニルオキシが挙げられ、具体例としては、ベンゼンスルホニルオキシ、m-ニトロベンゼンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ、ナフチルスルホニルオキシが挙げられる。

【0108】
塩基としては、例えば、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ピロール等の有機塩基が挙げられるが、中でも、溶媒としても用いることができることから、ピリジンが好適に用いられる。
該塩基の使用量は、化合物(1)の水酸基の当量数(3×nモル)に対して、下限は、同モル量(3×nモル)であり、上限は、100倍モル量(300×nモル)が好ましい(nは、前記と同義を示す)。

【0109】
また、当該反応は、リチウム塩(好ましくは、塩化リチウム)を適量添加することにより、アミロースまたはセルロースの溶解性を向上させることができる。

【0110】
溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒が挙げられ、中でも、DMAが好ましい。

【0111】
反応温度は、通常0℃~200℃、好ましくは20℃~120℃である。
反応時間は、通常0.5~30時間である。

【0112】
X’が水酸基の場合は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、有機塩基(例えば、ジメチルアミノピリジン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン等)触媒下、縮合剤(および必要に応じて縮合促進剤)を添加することによりエステル結合が形成される。

【0113】
縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N-エチル-N’-3-ジメチルアミノプロピルカルボジイミドおよびその塩酸塩(EDC・HCl)、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム(PyBop)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート(TBTU)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-5-クロロ-1H-ベンゾトリアゾリウム3-オキシド ヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、O-ベンゾトリアゾール-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロボレート(HBTU)等が挙げられる。

【0114】
縮合剤の使用量は、化合物(1)の水酸基の当量数(3×nモル)に対して、下限は、同モル量(3×nモル)であり、上限は、10倍モル量(30×nモル)が好ましい(nは、前記と同義を示す)。特に好ましくは、同モル量(3×nモル)~5倍モル量(15×nモル)である。

【0115】
縮合促進剤としては、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-1H-1,2,3-トリアゾール-5-カルボン酸エチルエステル(HOCt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)等が挙げられ、好ましくは、HOBtである。

【0116】
縮合促進剤の使用量は、化合物(1)の水酸基の当量数(3×nモル)に対して、下限は、0.05倍モル量(0.15×nモル)であり、上限は、1.5倍モル量(4.5×nモル)が好ましい(nは、前記と同義を示す)。

【0117】
反応温度は、通常-10~40℃、好ましくは0℃~30℃であり、反応時間は、通常1~70時間である。

【0118】
工程2
当該工程は、化合物(3)と化合物(4)とを薗頭反応条件下でカップリングさせて、化合物(I)へと変換する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、塩基存在下、金属触媒を用いて行われる。

【0119】
金属触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd(dba))、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(Pd(PPhCl)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)((CHCN)PdCl)等のパラジウム化合物が挙げられ、中でも、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)が好ましい。
該金属触媒の使用量は、化合物(4)(1モル)に対して、通常0.001~1モルである。

【0120】
塩基としては、例えば、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン等の有機塩基やアンモニア等の無機塩基が挙げられ、中でも、N,N-ジイソプロピルエチルアミンが好ましい。
該塩基は、溶媒として使用することもでき、該塩基の使用量は、化合物(4)(1モル)に対して、通常10~1000モルである。

【0121】
当該工程においては、必要に応じてヨウ化銅や臭化銅等の銅化合物、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル等のホスフィン化合物等の添加物を添加してもよい。

【0122】
溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)や1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトニトリルやN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等の極性溶媒、又はベンゼン等の炭化水素溶媒が挙げられ、中でも、THFが好ましい。

【0123】
反応温度は、通常-10℃~150℃、好ましくは0℃~100℃である。
反応時間は、通常0.5~24時間である。

【0124】
化合物(1)の全ての水酸基が、所望のエステル基又はカルバメート基に変換できたか否かは、化合物(I)の元素分析及びH-NMRを測定することにより確認することができる。

【0125】
(化合物(I)を担持させてなる充填剤をキラル固定相として用いるキラルカラムによる様々なキラル化合物のラセミ体の光学分割能)

【0126】
化合物(I)は、それ自体を光学分割剤として使用することもできるが、通常、多孔質有機担体又は多孔質無機担体等の担体に担持させることが好ましい。

【0127】
担持させるのに最も好ましい担体はシリカゲルであり、シリカゲルの粒径は0.1μm~300μm、好ましくは1μm~10μmであり、平均孔径は10Å~100μm、好ましくは50Å~50000Åである。

【0128】
化合物(I)のシリカゲルへの担持方法としては、最も簡便には、化合物(I)をTHFに溶解し、シリカゲルにコーティングして担持させる方法が挙げられる。

【0129】
化合物(I)のシリカゲルへの担持量は、熱重量分析を用いて確認することができる。

【0130】
化合物(I)が担持されたシリカゲルをスラリー法(溶媒としては、例えば、ヘキサン/2-プロパノール(97/3(v/v))の混合溶媒が好ましい。)によりカラムに充填することによりキラルカラムを調製することができる。

【0131】
上記の操作により得られたキラルカラムを用いて高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと称することもある。)分析を行うことにより、様々なキラル化合物のラセミ体の光学分割を行うことができる。

【0132】
光学分割が可能な化合物としては、例えば、光学活性な1,1’-ビナフチル誘導体、光学活性なビフェニル誘導体、光学活性なアミノアルコール誘導体、光学活性なアミノ酸誘導体、光学活性なシクロプロパン誘導体、光学活性なエポキシ誘導体、光学活性なベンゾイン誘導体、光学活性な金属錯体(例、Co(acac)、Cr(acac)、Ru(acac)(式中のacacは、アセチルアセトナートを示す。)等)等が挙げられる。

【0133】
(化合物(I)からなる本発明の蛍光性キラルセンサーによる光学活性キラル化合物のキラリティーの識別方法)

【0134】
化合物(I)は、被験(識別)対象である光学活性キラル化合物と溶媒中で混合することにより、被験対象が持つ絶対立体配置に応じて、該混合溶液の蛍光強度の変化に差異が観測される。そして、その蛍光強度の変化の差異を観測することにより、識別対象の絶対立体配置を感度良く識別することが可能である。

【0135】
蛍光スペクトル測定によりキラリティーの識別が可能な光学活性キラル化合物としては、前述した通り、本発明の化合物(I)を光学分割剤として使用した際に、ラセミ体の光学分割が可能な化合物が挙げられ、例えば、光学活性な1,1’-ビナフチル誘導体、光学活性なビフェニル誘導体、光学活性なアミノアルコール誘導体、光学活性なアミノ酸誘導体、光学活性なシクロプロパン誘導体、光学活性なエポキシ誘導体、光学活性なベンゾイン誘導体、光学活性な金属錯体(例、Co(acac)、Cr(acac)、Ru(acac)等)等のキラリティーを識別することができる。中でも、蛍光性基に対し、消光基であることが知られているニトロ基含有基(例、4-ニトロベンゾイル基、4-ニトロベンジル基等)、シアノ基、トリフルオロメチル等の電子求引性基を化合物中に有する、例えば、下記式:

【0136】
【化13】
JP2016199692A_000014t.gif

【0137】
で表される化合物等が、両鏡像異性体間での蛍光強度の変化の差異によりキラリティーを識別する本発明のキラルセンシング手法を利用する上では特に好ましい。

【0138】
本発明のキラリティー識別方法は、再現性良く、識別対象である光学活性キラル化合物のキラリティーを識別することができる。また、化合物(I)を蛍光性センサーとして使用する場合には、他の分析機器では十分な分析が不可能な10-7~10-5M程度の極微量の試料を用いても精度良く識別することができるという利点を有する。

【0139】
このように、本発明の化合物(I)からなるキラルセンサーは、化合物(I)中に高価な光学活性な官能基を一切導入する必要がなく、天然から豊富に得られるセルロースやアミロース等の多糖由来のキラリティーのみを利用して、化合物(I)中の蛍光発光性基と、識別対象である光学活性キラル化合物との相互作用による蛍光強度の変化を観測するだけで、識別対象の絶対立体配置を正確に決定することができるという点で、高価且つ特殊な測定装置を必要としない、実用的なキラリティーセンシング手法である。
【実施例】
【0140】
以下、本発明を実施例及び実験例により詳細に説明するが、本発明はこれらより何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0141】
反応は、Merck 60 F254シリカゲルプレート(厚さ0.25mm)を用いて、薄層クロマトグラフィーによりモニターした。H及び13C-NMRスペクトルは、JEOL ECA500を用い、重クロロホルムを溶媒として測定した。H-NMRについてのデータは、化学シフト(δppm)、積分及び割当てとして報告する。フラッシュクロマトグラフィーは、関東化学株式会社(日本、東京)のシリカゲル60Nを用いて行った。平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(日本分光製高速液体クロマトグラフィーポンプ PU-2080、日本分光製紫外可視検出器 UV-970、日本分光製カラムオーブン CO-1560、Shodex製カラム KF-805L)によりポリスチレン換算で算出した。光学分割能の測定には日本分光製高速液体クロマトグラフィーポンプ PU-2080、日本分光製紫外可視検出器 MD-2018、日本分光製円二色性検出器 CD-2095を用いた。蛍光分光分析は、日本分光製蛍光光度計 FP-6300を用いて行った。以下の実施例中の「室温」は約25℃を示す。混合溶媒において示した比は、特に断らない限り容量比を示す。%は、特に断らない限り重量%を示す。
【実施例】
【0142】
実施例1
化合物(I-1)の合成
【実施例】
【0143】
(1)化合物(2a-1)を使用するセルロース(化合物(1a))の水酸基の4-ヨードフェニルカルバメート化による化合物(3a-1)の合成
【実施例】
【0144】
【化14】
JP2016199692A_000015t.gif
【実施例】
【0145】
窒素雰囲気下、セルロース(化合物(1a))(0.2g,1.2mmol)を脱水N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)(6mL)、脱水ピリジン(3mL)、塩化リチウム(0.4g)の混合溶液に溶解させた。4-ヨードフェニルイソシアナート(化合物(2a-1))(1.36g,5.55mmol)を加え、80℃で撹拌した。24時間後、大量のメタノールに再沈殿させ、遠心分離により不溶部の化合物(3a-1)(126mg)を収率60%で回収した。
【実施例】
【0146】
(2)化合物(4a)の合成
(2-1)2-(トリイソプロピルシリルエチニル)チオフェン(5)の合成
【実施例】
【0147】
【化15】
JP2016199692A_000016t.gif
【実施例】
【0148】
窒素雰囲気下、2-ヨードチオフェン(20g,95mmol)、Pd(PPhCl(3.34g,4.76mmol)、ヨウ化銅(0.91g,4.76mmol)を脱水テトラヒドロフラン(THF)/トリエチルアミン(EtN)(3/1)(480mL)混合溶媒に溶解した。トリイソプロピルシリルアセチレン(TIPS-≡)(22.3mL,100mmol)を加え、50℃で4時間撹拌した。反応溶液にヘキサンを加え、1N塩酸、水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製することにより、2-(トリイソプロピルシリルエチニル)チオフェン(5)(25.1g,収率99%)を無色透明油状物として得た。
【実施例】
【0149】
(2-2)2-(トリブチルチン)-5-(トリイソプロピルシリルエチニル)チオフェン(6)の合成
【実施例】
【0150】
【化16】
JP2016199692A_000017t.gif
【実施例】
【0151】
窒素雰囲気下、化合物(5)(25g,95mmol)を脱水テトラヒドロフラン(THF)(340mL)に溶解し、-78℃に冷却した。1.6M n-ブチルリチウム-ヘキサン溶液(62mL,99mmol)を加え、-78℃で2時間撹拌した。塩化トリブチルスズ(30mL,110mmol)を加え、室温で2時間撹拌した後、反応溶液にヘキサンを加え、水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を減圧留去し、2-(トリブチルチン)-5-(トリイソプロピルシリルエチニル)チオフェン(6)を含む淡黄色透明油状物(58g)を得た。さらなる精製を行うことなく次の反応に使用した。
【実施例】
【0152】
(2-3)5-(トリイソプロピルシリルエチニル)-2,2’-ビチオフェン(7)の合成
【実施例】
【0153】
【化17】
JP2016199692A_000018t.gif
【実施例】
【0154】
窒素雰囲気下、化合物(6)を含む淡黄色透明油状物(10g)、2-ブロモチオフェン(2.9g,18mmol)を脱水トルエン/N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(4/1)(80mL)混合溶媒に溶解した。Pd(PPh(0.63g,0.54mmol)を加え、105℃で2時間撹拌した。反応溶液にヘキサンを加え、水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製することにより、5-(トリイソプロピルシリルエチニル)-2,2’-ビチオフェン(7)(4.0g,収率77%)を淡黄色透明油状物として得た。
【実施例】
【0155】
(2-4)5-(トリブチルチン)-5’-(トリイソプロピルシリルエチニル)-2,2’-ビチオフェン(8)の合成
【実施例】
【0156】
【化18】
JP2016199692A_000019t.gif
【実施例】
【0157】
窒素雰囲気下、化合物(7)(2.9g,8.4mmol)を脱水テトラヒドロフラン(30mL)に溶解し、-78℃に冷却した。1.6M n-ブチルリチウム-ヘキサン溶液(5.5mL,8.8mmol)を加え、-78℃で2時間撹拌した。塩化トリブチルスズ(2.6mL,9.6mmol)を加え、室温で2時間撹拌した後、反応溶液にヘキサンを加え、水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を減圧留去し、5-(トリブチルチン)-5’-(トリイソプロピルシリルエチニル)-2,2’-ビチオフェン(8)を含む淡黄色透明油状物(7.9g)を得た。さらなる精製を行うことなく次の反応に使用した。
【実施例】
【0158】
(2-5)5-(2-エチルヘキシル)-5’’-(2-トリイソプロピルシリルエチニル)-2,2’:5’,2’’-ターチオフェン(10)の合成
【実施例】
【0159】
【化19】
JP2016199692A_000020t.gif
【実施例】
【0160】
窒素雰囲気下、化合物(8)を含む淡黄色透明油状物(1.4g)、2-ブロモ-5-(2-エチルヘキシル)チオフェン(9)(0.59g,2.1mmol)を脱水トルエン/N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(4/1)(8mL)混合溶媒に溶解した。Pd(PPh(0.063g,0.055mmol)を加え、105℃で4時間撹拌した。反応溶液にヘキサンを加え、水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製することにより、5-(2-エチルヘキシル)-5’’-(2-トリイソプロピルシリルエチニル)-2,2’:5’,2’’-ターチオフェン(10)(0.98g,収率84%)を黄色透明油状物として得た。
【実施例】
【0161】
(2-6)5-(2-エチルヘキシル)-5’’-エチニル-2,2’:5’,2’’-ターチオフェン(4a)の合成
【実施例】
【0162】
【化20】
JP2016199692A_000021t.gif
【実施例】
【0163】
窒素雰囲気下、化合物(10)(0.98g,1.8mmol)を脱水THF(72mL)に溶解し、1.0M テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)-テトラヒドロフラン溶液(2.2mL,2.2mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。反応溶媒をジクロロメタンで希釈し、1N塩酸、水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水後、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:ヘキサン=1:9)で精製することにより、5-(2-エチルヘキシル)-5’’-エチニル-2,2’:5’,2’’-ターチオフェン(4a)(0.56g,収率81%)を黄色固体として得た。
【実施例】
【0164】
(3)セルローストリス(4-(5’’-(2-エチルヘキシル)-2,2’:5’,2’’-ターチエニル-5-エチニル)フェニルカルバメート)(化合物(I-1))の合成
【実施例】
【0165】
【化21】
JP2016199692A_000022t.gif
【実施例】
【0166】
窒素雰囲気下、化合物(3a-1)(0.14g,0.16mmol)、化合物(4a)(0.27g,0.70mmol)を脱水テトラヒドロフラン/ジイソプロピルアミン(5/1)(4mL)混合溶媒に溶解した。Pd(PPh4(33mg,0.028mmol)、ヨウ化銅(27mg,0.14mmol)を加え、60℃で撹拌した。6時間後、反応溶媒をテトラヒドロフランで希釈し、セライト濾過を行った。ろ液を濃縮し、大量のメタノールに再沈殿させ、遠心分離により不溶部の化合物(I-1)(187mg)を収率57%で回収した。
H-NMR(400MHz,CDCl,55℃):d 11.1-9.63(br,3H,N-H),7.77-6.67(br,30H,Ar-H),5.68-3.00(br,7H,Glucose),2.78-2.67(br,6H,CH),1.65-1.55(br,3H,C-H),1.41-1.22(m,24H,CH),0.92-0.83(br,18H,CH).
【実施例】
【0167】
実施例2
化合物(I-2)の合成
【実施例】
【0168】
(1)化合物(4b)の合成
(1-1)5-(2-ヘキシルデシル)-5’’-(2-トリイソプロピルシリルエチニル)-2,2’:5’,2’’-ターチオフェン(12)の合成
【実施例】
【0169】
【化22】
JP2016199692A_000023t.gif
【実施例】
【0170】
窒素雰囲気下、化合物(8)を含む淡黄色透明油状物(4.8g)、2-ブロモ-5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン(11)(2.72g,7.56mmol)を脱水トルエン/N,N-ジメチルホルムアミド(4/1)(35mL)混合溶媒に溶解した。Pd(PPh(0.26g,0.23mmol)を加え、105℃で2時間撹拌した。反応溶液にヘキサンを加え、水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製することにより、5-(2-ヘキシルデシル)-5’’-(2-トリイソプロピルシリルエチニル)-2,2’:5’,2’’-ターチオフェン(12)(1.46g,収率30%)を黄色透明油状物として得た。
【実施例】
【0171】
(1-2)5-(2-ヘキシルデシル)-5’’-エチニル-2,2’:5’,2’’-ターチオフェン(4b)の合成
【実施例】
【0172】
【化23】
JP2016199692A_000024t.gif
【実施例】
【0173】
窒素雰囲気下、化合物(12)(1.4g,2.2mmol)を脱水THF(90mL)に溶解し、1.0Mテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)-テトラヒドロフラン溶液(2.7mL,2.7mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。反応溶媒を溜去した後、ジクロロメタンで希釈し、1N塩酸、水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水後、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:ヘキサン=1:9)で精製することにより、5-(2-ヘキシルデシル)-5’’-エチニル-2,2’:5’,2’’-ターチオフェン(4b)(1.0g,収率92%)を黄色固体として得た。
【実施例】
【0174】
(2)セルローストリス(4-(5’’-(2-ヘキシルデシル)-2,2’:5’,2’’-ターチエニル-5-エチニル)フェニルカルバメート)(化合物(I-2))の合成
【実施例】
【0175】
【化24】
JP2016199692A_000025t.gif
【実施例】
【0176】
窒素雰囲気下、化合物(3a-1)(0.14g,0.16mmol)、化合物(4b)(0.35g,0.70mmol)を脱水テトラヒドロフラン/ジイソプロピルアミン(5/1)(4mL)混合溶媒に溶解した。Pd(PPh(33mg,0.028mmol)、ヨウ化銅(27mg,0.14mmol)を加え、60℃で撹拌した。12時間後、反応溶媒をクロロホルムで希釈し、セライト濾過を行った。ろ液を濃縮し、大量のメタノールに再沈殿させ、遠心分離により不溶部の化合物(I-2)(180mg)を収率57%で回収した。
H-NMR(400MHz,CDCl,55℃):d 11.1-9.68(br,3H,N-H),7.86-6.70(br,30H,Ar-H),5.68-3.00(br,7H,Glucose),2.87-2.73(br,6H,CH),1.81-1.69(br,3H,C-H),1.47-1.21(br,72H,CH),0.92-0.82(br,18H,CH).
【実施例】
【0177】
実験例1
化合物(I-1)を担持させてなる充填剤(シリカゲル)をキラル固定相として用いるキラルカラムによるキラル化合物のラセミ体の光学分割
【実施例】
【0178】
(1)キラルカラムの調製
【実施例】
【0179】
実施例1で得られた化合物(I-1)(90mg)をTHF(4mL)に溶解し、HPLC用のシリカゲル(490mg、ダイソー製:粒径5μm)に担持した。得られた化合物(I-1)担持シリカゲルをスラリー法(溶媒:ヘキサン/2-プロパノール=97/3(v/v))により長さ25cm、内径0.20cmのステンレスカラムに充填し、キラルカラムを作製した。
【実施例】
【0180】
(2)HPLCによるキラル化合物のラセミ体の光学分割
【実施例】
【0181】
上記の操作で調製されたキラルカラムを用いて、1,1’-ビ-2-ナフトール ジ(4-ニトロベンゾエート)(化合物(T-1))のラセミ体の光学分割をHPLCにより行った(カラム温度:約20℃)。溶離液にはヘキサン/2-プロパノール=70/30(v/v)を用いて、流速は0.1mL/分とした。また、溶離液がカラムを素通りする時間tは1,3,5-トリ-tert-ブチルベンゼンの溶出時間から求めた。その結果、k=2.91、α=1.35と見積もられた(図1、表1)。
【実施例】
【0182】
前記キラルカラムを用いて、化合物(T-1)以外の様々なキラル化合物のラセミ体の光学分割をHPLCにより行った。その分離条件と結果を表1に示した。
【実施例】
【0183】
【表1】
JP2016199692A_000026t.gif
【実施例】
【0184】
ここで保持係数kとは、最初に溶出するエナンチオマーが充填剤とどの程度強く相互作用しているかどうかを表す指標であり、具体的には、式:k=(tR1-t)/t(式中、tR1:最初に溶出するエナンチオマーの溶出時間、t:充填剤と全く相互作用しない物質(1,3,5-トリ-tert-ブチルベンゼン)が溶出してくる時間)で表される式により算出される。また、分離係数αとは、両エナンチオマーの保持係数の比を意味し、具体的には、式:α=k/k(式中、k:先に溶出するエナンチオマーの保持係数、k:後から溶出するエナンチオマーの保持係数)で表される式により算出される。一般には、αが1の場合、溶出時間が全く同じで分離されないことを意味し、α>1であれば、両エナンチオマーが分離可能であることを示し、αが1.2以上であれば、ピークの裾まで完全に分離可能であることを示す。
【実施例】
【0185】
表1によれば、化合物(I-1)担持シリカゲルをHPLCカラムのキラル固定相として使用することにより、アミド、フェノール、アルコール、エポキシド、エステル、ビアリール化合物、金属錯体等の広範なキラル化合物のラセミ体を極めて効率良く分離できることが確認された。
【実施例】
【0186】
実験例2
実施例1で得られた化合物(I-1)と化合物(T-1)の光学活性体を混合した際の蛍光強度の変化による、化合物(T-1)の光学活性体のキラリティーの識別
【実施例】
【0187】
(1)化合物(I-1)と化合物(T-1)のR体(以下、化合物(T-1R)という)を混合した際の蛍光強度の変化
化合物(I-1)をテトラヒドロフラン/ヘキサン(1/1)混合溶媒に溶解させ、10-5Mに調製した。この溶液に0.5M 化合物(T-1R)-テトラヒドロフラン溶液(30μL、化合物(I-1)に対して500当量に相当する(グルコースユニット換算))を10回に分けて添加し、添加する毎に測定した蛍光スペクトル(励起波長:450nm)を図2に示した。化合物(I-1)(0当量)の蛍光スペクトルの極大値(495nm)をI、化合物(T-1R)を添加した際の蛍光スペクトルの極大値(495nm)をIとした場合、I/Iを化合物(T-1R)の添加量に対してプロットした結果を図4に示した。
【実施例】
【0188】
(2)化合物(I-1)と化合物(T-1)のS体(以下、化合物(T-1S)という)を混合した際の蛍光強度の変化
化合物(I-1)をテトラヒドロフラン/ヘキサン(1/1)混合溶媒に溶解させ、10-5Mに調製した。この溶液(3mL)に0.5M 化合物(T-1S)-テトラヒドロフラン溶液(30μL、化合物(I-1)に対して500当量に相当する(グルコースユニット換算))を10回に分けて添加し、添加する毎に測定した蛍光スペクトル(励起波長:450nm)を図3に示した。化合物(I-1)(0当量)の蛍光スペクトルの極大値(495nm)をI、化合物(T-1S)を添加した際の蛍光スペクトルの極大値(495nm)をIとした場合、I/Iを化合物(T-1S)の添加量に対してプロットした結果を図4に示した。
【実施例】
【0189】
図4によれば、化合物(I-1)の溶液に、化合物(T-1R)を添加した場合と化合物(T-1S)を添加した場合で、消光度が異なっていることが分かる。この結果から、化合物(I-1)の蛍光発光性の変化から化合物(T-1)の光学活性体のキラリティーを識別できることが確認できた。
【実施例】
【0190】
実験例3
実施例2で得られた化合物(I-2)と化合物(T-1)の光学活性体を混合した際の蛍光強度の変化による、化合物(T-1)の光学活性体のキラリティーの識別
【実施例】
【0191】
(1)化合物(I-2)と化合物(T-1R)を混合した際の蛍光強度の変化
化合物(I-2)をテトラヒドロフラン/ヘキサン(1/1)混合溶媒に溶解させ、10-5Mに調製した。この溶液に0.5M 化合物(T-1R)-テトラヒドロフラン溶液(30μL、化合物(I-2)に対して500当量に相当する(グルコースユニット換算))を10回に分けて添加し、添加する毎に測定した蛍光スペクトル(励起波長:450nm)を図5に示した。化合物(I-2)(0当量)の蛍光スペクトルの極大値(495nm)をI、化合物(T-1R)を添加した際の蛍光スペクトルの極大値(495nm)をIとした場合、I/Iを化合物(T-1R)の添加量に対してプロットした結果を図7に示した。
【実施例】
【0192】
(2)化合物(I-2)と化合物(T-1S)を混合した際の蛍光強度の変化
化合物(I-2)をテトラヒドロフラン/ヘキサン(1/1)混合溶媒に溶解させ、10-5Mに調製した。この溶液(3mL)に0.5M 化合物(T-1S)-テトラヒドロフラン溶液(30μL、化合物(I-2)に対して500当量に相当する(グルコースユニット換算))を10回に分けて添加し、添加する毎に測定した蛍光スペクトル(励起波長:450nm)を図6に示した。化合物(I-2)(0当量)の蛍光スペクトルの極大値(495nm)をI、化合物(T-1S)を添加した際の蛍光スペクトルの極大値(495nm)をIとした場合、I/Iを化合物(T-1S)の添加量に対してプロットした結果を図7に示した。
【実施例】
【0193】
図7によれば、化合物(I-2)の溶液に、化合物(T-1R)を添加した場合と化合物(T-1S)を添加した場合で、消光度が異なっていることが分かる。この結果から、化合物(I-2)の蛍光発光性の変化から化合物(T-1)の光学活性体のキラリティーを識別できることが確認できた。また、図7の結果が実験例2の図4の結果と酷似していることから、化合物(I-1)及び化合物(I-2)のターチオフェン部分の末端に導入するアルキル鎖の種類は不斉識別能に大きな影響を及ぼさないことが分かった。
【実施例】
【0194】
実験例4
実施例2で得られた化合物(I-2)とN-(2-ヒドロキシ-1-フェニルエチル)-4-ニトロベンズアミド(化合物(T-2))の光学活性体を混合した際の蛍光強度の変化による、化合物(T-2)の光学活性体のキラリティーの識別
【実施例】
【0195】
(1)化合物(I-2)と化合物(T-2)のR体(以下、化合物(T-2R)という)を混合した際の蛍光強度の変化
化合物(I-2)をテトラヒドロフラン/ヘキサン(1/1)混合溶媒に溶解させ、10-5Mに調製した。この溶液に0.5M 化合物(T-2R)-テトラヒドロフラン溶液(30μL、化合物(I-2)に対して500当量に相当する(グルコースユニット換算))を10回に分けて添加し、添加する毎に測定した蛍光スペクトル(励起波長:450nm)を図8に示した。化合物(I-2)(0当量)の蛍光スペクトルの極大値(495nm)をI、化合物(T-2R)を添加した際の蛍光スペクトルの極大値(495nm)をIとした場合、I/Iを化合物(T-2R)の添加量に対してプロットした結果を図10に示した。
【実施例】
【0196】
(2)化合物(I-2)と化合物(T-2)のS体(以下、化合物(T-2S)という)を混合した際の蛍光強度の変化
化合物(I-2)をテトラヒドロフラン/ヘキサン(1/1)混合溶媒に溶解させ、10-5Mに調製した。この溶液(3mL)に0.5M 化合物(T-2S)-テトラヒドロフラン溶液(30μL、化合物(I-2)に対して500当量に相当する(グルコースユニット換算))を10回に分けて添加し、添加する毎に測定した蛍光スペクトル(励起波長:450nm)を図9に示した。化合物(I-2)(0当量)の蛍光スペクトルの極大値(495nm)をI、化合物(T-2S)を添加した際の蛍光スペクトルの極大値(495nm)をIとした場合、I/Iを化合物(T-2S)の添加量に対してプロットした結果を図10に示した。
【実施例】
【0197】
図10によれば、化合物(I-2)の溶液に、化合物(T-2R)を添加した場合と化合物(T-2S)を添加した場合で、消光度が異なっていることが分かる。この結果から、化合物(I-2)の蛍光発光性の変化から化合物(T-2)の光学活性体のキラリティーを識別できることが確認できた。
【実施例】
【0198】
実験例5
実施例2で得られた化合物(I-2)と2-[(4-ニトロベンゾイル)アミノ]酪酸メチルエステル(化合物(T-3))の光学活性体を混合した際の蛍光強度の変化による、化合物(T-3)の光学活性体のキラリティーの識別
【実施例】
【0199】
(1)化合物(I-2)と化合物(T-3)のR体(以下、化合物(T-3R)という)を混合した際の蛍光強度の変化
化合物(I-2)をテトラヒドロフラン/ヘキサン(25/75)混合溶媒に溶解させ、10-5Mに調製した。この溶液に0.5M 化合物(T-3R)-テトラヒドロフラン溶液(120μL、化合物(I-2)に対して2000当量に相当する(グルコースユニット換算))を添加し、添加前後に測定した蛍光スペクトル(励起波長:450nm)を図11に示した。化合物(I-2)(0当量)の蛍光スペクトルの極大値(495nm)をI、化合物(T-3R)を添加した際の蛍光スペクトルの極大値(495nm)をIとした場合、I/Iを化合物(T-3R)の添加量に対してプロットした結果を図13に示した。
【実施例】
【0200】
(2)化合物(I-2)と化合物(T-3)のS体(以下、化合物(T-3S)という)を混合した際の蛍光強度の変化
化合物(I-2)をテトラヒドロフラン/ヘキサン(25/75)混合溶媒に溶解させ、10-5Mに調製した。この溶液(3mL)に0.5M 化合物(T-3S)-テトラヒドロフラン溶液(120μL、化合物(I-2)に対して2000当量に相当する(グルコースユニット換算))を添加し、添加前後に測定した蛍光スペクトル(励起波長:450nm)を図12に示した。化合物(I-2)(0当量)の蛍光スペクトルの極大値(495nm)をI、化合物(T-3S)を添加した際の蛍光スペクトルの極大値(495nm)をIとした場合、I/Iを化合物(T-3S)の添加量に対してプロットした結果を図13に示した。
【実施例】
【0201】
図13によれば、化合物(I-2)の溶液に、化合物(T-3R)を添加した場合と化合物(T-3S)を添加した場合で、消光度が異なっていることが分かる。この結果から、化合物(I-2)の蛍光発光性の変化から化合物(T-3)の光学活性体のキラリティーを識別できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0202】
本発明の化合物(I)は、広範なキラル化合物の光学分割剤として有用であるだけでなく、光学活性キラル化合物に対して高感度なキラリティー識別能を示す。具体的には、本発明のキラルセンサーを使用する光学活性キラル化合物のキラリティーの識別方法は、識別対象である光学活性キラル化合物と化合物(I)との混合溶液の蛍光強度の変化を観測するだけで、識別対象の絶対立体配置を精度良く決定することができるという点で、高価且つ特殊な測定装置を必要としない、実用的なキラリティーセンシング手法を提供するものである。また、本発明のキラルセンサーに使用する化合物(I)は、天然に豊富に存在する多糖類(セルロース、アミロース等)から簡便に合成することができるので、化合物(I)中に高価な光学活性な官能基を一切導入する必要のない、経済的且つ実用的な手法である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12