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明細書 :固体状態で不斉選択性の切り替えが可能な光学異性体分離剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-140845 (P2016-140845A)
公開日 平成28年8月8日(2016.8.8)
発明の名称または考案の名称 固体状態で不斉選択性の切り替えが可能な光学異性体分離剤
国際特許分類 B01J  20/281       (2006.01)
B01J  20/28        (2006.01)
B01J  20/32        (2006.01)
G01N  30/88        (2006.01)
C08F  38/00        (2006.01)
C07C  39/14        (2006.01)
C07C  39/38        (2006.01)
C07C  37/82        (2006.01)
C07B  57/00        (2006.01)
FI B01J 20/26 L
B01J 20/28 Z
B01J 20/32 Z
G01N 30/88 101L
G01N 30/88 W
G01N 30/88 201W
G01N 30/88 201X
C08F 38/00
C07C 39/14
C07C 39/38
C07C 37/82
C07B 57/00 343
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 33
出願番号 特願2015-020345 (P2015-020345)
出願日 平成27年2月4日(2015.2.4)
発明者または考案者 【氏名】井改 知幸
【氏名】前田 勝浩
【氏名】加納 重義
【氏名】佐藤 公
出願人 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
【識別番号】100125070、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 京子
【識別番号】100136629、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 光宜
【識別番号】100121212、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弥栄子
【識別番号】100117743、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 美由紀
【識別番号】100163658、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 順造
【識別番号】100174296、【弁理士】、【氏名又は名称】當麻 博文
審査請求 未請求
テーマコード 4G066
4H006
4J100
Fターム 4G066AA22C
4G066AB05D
4G066AB06D
4G066AB07D
4G066AB09D
4G066AC12B
4G066AC31B
4G066AC33B
4G066AC35B
4G066BA28
4G066FA03
4G066FA07
4G066FA12
4G066FA38
4G066FA40
4H006AA02
4H006AC83
4H006AD17
4H006FC54
4H006FE13
4H006FE73
4H006FE76
4J100AT05P
4J100AT05Q
4J100BA02P
4J100BA02Q
4J100BA03Q
4J100BA05P
4J100BA05Q
4J100BA10P
4J100BA38P
4J100BC44P
4J100BC44Q
4J100CA04
4J100CA10
4J100CA31
4J100DA01
4J100DA04
4J100HA53
4J100HC28
4J100HE41
4J100JA17
要約 【課題】耐溶剤性に優れ、不斉選択性の切り替えが可能な実用的な光学異性体分離剤の提供。
【解決手段】担体上に、一方向巻きらせん構造を有する下記式(I)で表されるポリアセチレン化合物を架橋させて固定化してなる固定化担体を用いる光学異性体分離剤。
JP2016140845A_000018t.gif
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
担体上に、式(I):
【化1】
JP2016140845A_000016t.gif
[式中、
及びR’は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいC1-6アルキル基、ホルミル基、置換されていてもよいC1-6アルキル-カルボニル基、置換されていてもよいC1-6アルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニル基、又は-R-O-R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1-4アルキレン基又は-R-(O-Rn1-(ここで、Rは、C1-4アルキレン基を示し、Rは、C1-4アルキレン基を示し、n1は、1乃至3の整数を示す。)を示し、Rは、置換されていてもよいC1-6アルキル基を示す。)を示し;
は、OR、SR、NHCOR、CONHR、OCOR、OCON(R9’)(R9’’)、又はCO(ここで、Rは、置換されていてもよいC1-30アルキル基を示し、R9’は、水素原子又は置換されていてもよいC1-6アルキル基を示し、R9’’は、置換されていてもよいC1-30アルキル基を示す。)を示し;
2’は、OH、SH又はNHを示し;
、R’、R及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、又は置換されていてもよいC1-6アルコキシ基を示し;
rは、0.05未満を示し;且つ
nは、100以上の整数を示す。]
で表されるポリアセチレン化合物を、前記基R2’にて、架橋させて固定化してなることを特徴とする、固定化担体。
【請求項2】
rが0.002より大きく、0.02未満の範囲である、請求項1記載の固定化担体。
【請求項3】
ポリアセチレン化合物が一方向巻きのらせん構造を有する、請求項1又は2に記載の固定化担体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の固定化担体からなる、クロマトグラフィー用充填剤。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の固定化担体からなる、光学異性体分離剤。
【請求項6】
担体上に、一方向巻きらせん構造を有する式(I):
【化2】
JP2016140845A_000017t.gif
[式中、
及びR’は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいC1-6アルキル基、ホルミル基、置換されていてもよいC1-6アルキル-カルボニル基、置換されていてもよいC1-6アルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニル基、又は-R-O-R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1-4アルキレン基又は-R-(O-Rn1-(ここで、Rは、C1-4アルキレン基を示し、Rは、C1-4アルキレン基を示し、n1は、1乃至3の整数を示す。)を示し、Rは、置換されていてもよいC1-6アルキル基を示す。)を示し;
は、OR、SR、NHCOR、CONHR、OCOR、OCON(R9’)(R9’’)、又はCO(ここで、Rは、置換されていてもよいC1-30アルキル基を示し、R9’は、水素原子又は置換されていてもよいC1-6アルキル基を示し、R9’’は、置換されていてもよいC1-30アルキル基を示す。)を示し;
2’は、OH、SH又はNHを示し;
、R’、R及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、又は置換されていてもよいC1-6アルコキシ基を示し;
rは、0.05未満を示し;且つ
nは、100以上の整数を示す。]
で表されるポリアセチレン化合物を、架橋させて固定化してなる固定化担体の製造方法であって、一方向巻きらせん構造を有さない前記式(I)で表されるポリアセチレン化合物が固定化された固定化担体を、光学活性な低分子化合物又はそれを含む溶液に固体状態で含浸させた後、該低分子化合物を溶媒洗浄により除去する工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項7】
請求項6記載の製造方法により得られる一方向巻きのらせん構造を有するポリアセチレン化合物固定化担体を、請求項6で使用する低分子化合物の鏡像異性体若しくは異なる種類の光学活性低分子化合物又はそれを含む溶液に固体状態で含浸させた後、該鏡像異性体若しくは異なる種類の光学活性低分子化合物を溶媒洗浄により除去することにより、らせんの巻き方向を反転させる工程を更に含む、請求項6に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィー法、特に液体クロマトグラフィーに用いられる光学異性体分離剤及びその製造方法に関し、特に固体状態で不斉選択性を自在に切り替え可能ならせん状高分子化合物を担体に固定化してなる担体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機化合物には物理的、化学的性質、例えば沸点、融点、溶解度といった物性が全く同一であるが、生理活性に差がみられる光学異性体が多く存在する。しかし、光学異性体の物理的、化学的性質は全く同一であるが故に、通常の分離手段では分析が行えないため、広範な種類の有機化合物の光学異性体を簡便、且つ精度良く分析する技術の研究が精力的に行われてきた。それらの中でも、特に高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと称することもある。)による光学分割法は、光学異性体分離機能を有する物質、すなわち、光学異性体分離剤そのもの、或いは光学異性体分離剤を適当な担体上にコーティングすることにより担持させたキラル固定相を使用して光学異性体を分離するものである。例えば、低分子化合物である光学活性なクラウンエーテル化合物を担体にコーティングした充填剤(特許文献1)、合成高分子である光学活性メタクリル酸トリフェニルメチルポリマーを担体にコーティングした充填剤(特許文献2)、多糖の誘導体である三酢酸セルロースを担体にコーティングした充填剤(特許文献3)、安息香酸セルロースを担体にコーティングした充填剤(特許文献4)、セルロースフェニルカルバメートを担体にコーティングした充填剤(特許文献5)、セルロースあるいはアミロース誘導体(非特許文献1)、タンパクであるオボムコイド(特許文献6)等が開発され、その高い光学分割能から商品化され、広く使用されている。
【0003】
また、本発明者らは、最近、一方向巻きのらせん構造を有するポリアセチレン化合物が、優れた光学分割能を有し、且つ光学活性な低分子化合物の存在下、固体状態でらせんの向きを自在に反転させることができること、及び該ポリアセチレン化合物を担体にコーティングにより担持してなる充填剤が、カラム充填後であっても充填剤中の該ポリアセチレン化合物のらせんの巻き方向を自在に反転させることができることを報告した(特許文献7)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開昭62-210053号公報
【特許文献2】特開昭57-150432号公報
【特許文献3】特開昭60-82858号公報
【特許文献4】特開昭60-40952号公報
【特許文献5】特開昭60-108751号公報
【特許文献6】特開昭63-307829号公報
【特許文献7】国際公開第2013/168601号
【0005】

【非特許文献1】Okamoto, Y., Kawashima, M. and Hatada, K. J.Am.Chem.Soc., 1984, 106, 5357.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の通り、光学異性体分離剤を適当な担体上にコーティングすることにより担持させた充填剤は、有機化合物の光学異性体の混合物の分離剤として有用であることが知られているが、単なるコーティングのみにより担持されているため、耐溶剤性が悪く、特に、液体クロマトグラフィー用充填剤として用いる場合には溶離液として使用する溶媒に制限があった。従って、幅広い種類の有機化合物の光学異性体の混合物を簡便且つ安価に、精度良く分析することができ、耐溶剤性も良好な、実用的な光学異性体分離剤の開発がますます求められている。
【0007】
本発明の目的は、耐溶剤性に優れ、不斉選択性の切り替えが可能で、簡便且つ安価に光学異性体を効率良く分離することができる実用的な光学異性体分離剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる状況下、鋭意検討を重ねた結果、担体上に、一方向巻きらせん構造を有する下記式(I):
【0009】
【化1】
JP2016140845A_000002t.gif

【0010】
[式中、
及びR’は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいC1-6アルキル基、ホルミル基、置換されていてもよいC1-6アルキル-カルボニル基、置換されていてもよいC1-6アルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニル基、又は-R-O-R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1-4アルキレン基又は-R-(O-Rn1-(ここで、Rは、C1-4アルキレン基を示し、Rは、C1-4アルキレン基を示し、n1は、1乃至3の整数を示す。)を示し、Rは、置換されていてもよいC1-6アルキル基を示す。)を示し;
は、OR、SR、NHCOR、CONHR、OCOR、OCON(R9’)(R9’’)、又はCO(ここで、Rは、置換されていてもよいC1-30アルキル基を示し、R9’は、水素原子又は置換されていてもよいC1-6アルキル基を示し、R9’’は、置換されていてもよいC1-30アルキル基を示す。)を示し;
2’は、OH、SH又はNHを示し;
、R’、R及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、又は置換されていてもよいC1-6アルコキシ基を示し;
rは、0.05未満を示し;且つ
nは、100以上の整数を示す。]
で表されるポリアセチレン化合物(以下、「らせん化合物(I)」と称する場合がある。)を、前記基R2’にて、架橋させて固定化してなる固定化担体を光学異性体分離剤として使用することにより、固体状態でも効率良く、光学異性体を分離することができると共に、該固定化担体のらせんの巻き方向を反転させることができ、また、耐溶剤性も良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]担体上に、式(I):
【0012】
【化2】
JP2016140845A_000003t.gif

【0013】
[式中、
及びR’は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいC1-6アルキル基、ホルミル基、置換されていてもよいC1-6アルキル-カルボニル基、置換されていてもよいC1-6アルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニル基、又は-R-O-R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1-4アルキレン基又は-R-(O-Rn1-(ここで、Rは、C1-4アルキレン基を示し、Rは、C1-4アルキレン基を示し、n1は、1乃至3の整数を示す。)を示し、Rは、置換されていてもよいC1-6アルキル基を示す。)を示し;
は、OR、SR、NHCOR、CONHR、OCOR、OCON(R9’)(R9’’)、又はCO(ここで、Rは、置換されていてもよいC1-30アルキル基を示し、R9’は、水素原子又は置換されていてもよいC1-6アルキル基を示し、R9’’は、置換されていてもよいC1-30アルキル基を示す。)を示し;
2’は、OH、SH又はNHを示し;
、R’、R及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、又は置換されていてもよいC1-6アルコキシ基を示し;
rは、0.05未満を示し;且つ
nは、100以上の整数を示す。]
で表されるポリアセチレン化合物(以下、単に「化合物(I)」と称する場合がある。)を、前記基R2’にて、架橋させて固定化してなることを特徴とする、固定化担体。
[2]R及びR’が共に-R-O-R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1-4アルキレン基を示し、Rは、C1-6アルキル基を示す。)であり、RがOCOR(ここで、Rは、C4-20アルキル基を示す。)又はOCON(R9’)(R9’’)(ここで、R9’は、水素原子を示し、R9’’は、C1-6アルキル基を示す。)であり、R2’がOHであり、並びにR、R’、R及びR’が共に水素原子である、上記[1]記載の固定化担体。
[3]R及びR’が共にメトキシメチル基であり、且つRがペンタノイロキシ基又はブチルカルバモイルオキシ基である、上記[2]記載の固定化担体。
[4]rが0.002より大きく、0.02未満の範囲である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の固定化担体。
[5]架橋させるための架橋剤がジカルボン酸誘導体である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の固定化担体。
[6]担体がシリカゲルである、上記[1]~[5]のいずれかに記載の固定化担体。
[7]ポリアセチレン化合物が一方向巻きのらせん構造を有する、上記[1]~[6]のいずれかに記載の固定化担体。
[8]上記[1]~[7]のいずれかに記載の固定化担体からなる、クロマトグラフィー用充填剤。
[9]上記[7]記載の固定化担体からなる、光学異性体分離剤。
[10]担体上に、一方向巻きらせん構造を有する式(I):
【0014】
【化3】
JP2016140845A_000004t.gif

【0015】
[式中、
及びR’は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいC1-6アルキル基、ホルミル基、置換されていてもよいC1-6アルキル-カルボニル基、置換されていてもよいC1-6アルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニル基、又は-R-O-R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1-4アルキレン基又は-R-(O-Rn1-(ここで、Rは、C1-4アルキレン基を示し、Rは、C1-4アルキレン基を示し、n1は、1乃至3の整数を示す。)を示し、Rは、置換されていてもよいC1-6アルキル基を示す。)を示し;
は、OR、SR、NHCOR、CONHR、OCOR、OCON(R9’)(R9’’)、又はCO(ここで、Rは、置換されていてもよいC1-30アルキル基を示し、R9’は、水素原子又は置換されていてもよいC1-6アルキル基を示し、R9’’は、置換されていてもよいC1-30アルキル基を示す。)を示し;
2’は、OH、SH又はNHを示し;
、R’、R及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、又は置換されていてもよいC1-6アルコキシ基を示し;
rは、0.05未満を示し;且つ
nは、100以上の整数を示す。]
で表されるポリアセチレン化合物を架橋させて固定化してなる固定化担体の製造方法であって、一方向巻きらせん構造を有さない前記式(I)で表されるポリアセチレン化合物が固定化された固定化担体を、光学活性な低分子化合物又はそれを含む溶液に固体状態で含浸させた後、該低分子化合物を溶媒洗浄により除去する工程を含むことを特徴とする、方法。
[11]上記[10]記載の製造方法により得られる一方向巻きのらせん構造を有するポリアセチレン化合物固定化担体を、上記[10]で使用する低分子化合物の鏡像異性体若しくは異なる種類の光学活性低分子化合物又はそれを含む溶液に固体状態で含浸させた後、該鏡像異性体若しくは異なる種類の光学活性低分子化合物を溶媒洗浄により除去することにより、らせんの巻き方向を反転させる工程を更に含む、上記[10]記載の方法。
[12]光学活性低分子化合物が、(R)-(-)-1-フェニルエチルアルコール又は(S)-(+)-1-フェニルエチルアルコールである、上記[10]又は[11]に記載の方法、に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前記化合物(I)が、担体上に架橋基を介して固定化されることにより耐溶剤性に優れた固定化担体を簡便に合成することができる。また、本発明によれば、化合物(I)が担体上に化学結合により固定化され自由度が制限された状態でありながらも、光学活性低分子化合物又はそれを含む溶液に固体状態で含浸させるだけという簡便な操作により、担体上の化合物(I)に効率よく一方向巻きのらせん構造を誘起することができる。さらに、本発明によれば、当該一方向巻きのらせん構造を誘起された化合物(I)(らせん化合物(I))は、先のらせん構造誘起の際に使用した光学活性低分子化合物の鏡像異性体(若しくは先のらせん構造誘起の際に使用した光学活性低分子化合物とは異なる他の光学活性低分子化合物)又はそれを含む溶液に固体状態で含浸させるだけで、担体上に固定化された状態にありながらも、らせんの巻き方向を効率良く反転させることができるという利点も有する。すなわち、本発明によれば、耐溶剤性に優れ、不斉誘起(らせん構造誘起)や不斉選択性の切り替えを簡便且つ安価に行うことが可能で、光学異性体を効率良く分離することができる実用的な光学異性体分離剤を提供することができる。そして、本発明によれば、担体上に固定化される化合物として従来のように高価な光学活性化合物を用いる必要がなく、また、固定化担体のらせんのキラリティーの誘起及び/又は反転の際に使用する光学活性な低分子化合物も容易に回収、再利用可能であるため、簡便かつ経済的な光学異性体の分離方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例2で得られたカラムA1-a、A1-b及びA1-cによる3,3’-ジフェニル-1,1’-ビ-2-ナフトールのラセミ体の10℃下でのキラル分離クロマトグラム(流速:0.2mL/分、溶出溶媒:ヘキサン/2-プロパノール(97:3,v/v))である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の詳細を説明する。

【0019】
(定義)

【0020】
本明細書中、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。

【0021】
本明細書中、「アルキル(基)」とは、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を意味し、「C1-4アルキル(基)」とは、炭素原子数1~4のアルキル基であり、「C1-6アルキル(基)」とは、炭素原子数1~6のアルキル基であり、これらの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチルが挙げられる。また、「C1-30アルキル(基)」とは、炭素原子数1~30のアルキル基であり、「C8-30アルキル(基)」とは、炭素原子数8~30のアルキル基であり、「C4-20アルキル(基)」とは、炭素原子数4~20のアルキル基であり、「C10-20アルキル(基)」とは、炭素原子数10~20のアルキル基であり、炭素原子数8以上のアルキル基の例としては、例えば、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、エイコシルが挙げられる。

【0022】
本明細書中、「C3-8シクロアルキル(基)」とは、炭素原子数3~8の環状アルキル基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。

【0023】
本明細書中、「C1-6アルコキシ(基)」とは、直鎖または分岐鎖の炭素原子数1~6のアルキル基が酸素原子と結合した基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、1-エチルプロポキシ、ヘキソキシ、イソヘキソキシ、1,1-ジメチルブトキシ、2,2-ジメチルブトキシ、3,3-ジメチルブトキシ、2-エチルブトキシ等が挙げられる。

【0024】
本明細書中、「C1-6アルキルチオ(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~6のアルキル基が硫黄原子と結合した基を意味し、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ネオペンチルチオ、ヘキシルチオ等が挙げられる。

【0025】
本明細書中、「C1-6アルキル-カルボニル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~6のアルキル基がカルボニル基に結合した基を意味し、例えば、メチル-カルボニル(アセチル)、エチル-カルボニル、プロピル-カルボニル、イソプロピル-カルボニル、ブチル-カルボニル(ペンタノイル)、イソブチル-カルボニル、sec-ブチル-カルボニル、tert-ブチル-カルボニル(ピバロイル)、ペンチル-カルボニル、イソペンチル-カルボニル、ネオペンチル-カルボニル、1-エチルプロピル-カルボニル、ヘキシル-カルボニル、イソヘキシル-カルボニル、1,1-ジメチルブチル-カルボニル、2,2-ジメチルブチル-カルボニル、3,3-ジメチルブチル-カルボニル、2-エチルブチル-カルボニル等が挙げられる。

【0026】
本明細書中、「C1-6アルコキシ-カルボニル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~6のアルキルオキシ基がカルボニル基に結合した基を意味し、例えば、メトキシ-カルボニル、エトキシ-カルボニル、プロポキシ-カルボニル、イソプロポキシ-カルボニル、ブトキシ-カルボニル、イソブトキシ-カルボニル、sec-ブトキシ-カルボニル、tert-ブトキシ-カルボニル、ペントキシ-カルボニル、イソペントキシ-カルボニル、ネオペントキシ-カルボニル、1-エチルプロポキシ-カルボニル、ヘキソキシ-カルボニル、イソヘキソキシ-カルボニル、1,1-ジメチルブトキシ-カルボニル、2,2-ジメチルブトキシ-カルボニル、3,3-ジメチルブトキシ-カルボニル、2-エチルブトキシ-カルボニル等が挙げられる。

【0027】
本明細書中、「C1-6アルキルスルホニル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~6のアルキル基がスルホニル基に結合した基を意味し、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec-ブチルスルホニル、tert-ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、イソペンチルスルホニル、ネオペンチルスルホニル、1-エチルプロピルスルホニル、ヘキシルスルホニル、イソヘキシルスルホニル、1,1-ジメチルブチルスルホニル、2,2-ジメチルブチルスルホニル、3,3-ジメチルブチルスルホニル、2-エチルブチルスルホニル等が挙げられる。

【0028】
本明細書中、「C1-20アルキレン(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~20のアルキレン基を意味し、例えば、メチレン、エチレン、プロパン-1,3-ジイル、ブタン-1,4-ジイル、メチルエチレン、ペンタン-1,5-ジイル、ヘキサン-1,6-ジイル、ヘプタン-1,7-ジイル、オクタン-1,8-ジイル、ノナン-1,9-ジイル、デカン-1,10-ジイル、ウンデカン-1,11-ジイル、ドデカン-1,12-ジイル、テトラデカン-1,14-ジイル、ヘキサデカン-1,16-ジイル等を挙げることができ、直鎖のものが好ましい例として挙げられる。

【0029】
本明細書中、「C10-20アルキレン(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数10~20のアルキレン基を意味し、例えば、デカン-1,10-ジイル、ウンデカン-1,11-ジイル、ドデカン-1,12-ジイル、テトラデカン-1,14-ジイル、ヘキサデカン-1,16-ジイル等を挙げることができ、直鎖のものが好ましい例として挙げられる。

【0030】
本明細書中、「C1-4アルキレン(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~4のアルキレン基を意味し、例えば、メチレン、エチレン、プロパン-1,3-ジイル、ブタン-1,4-ジイル、メチルエチレン等を挙げることができ、直鎖のものが好ましい例として挙げられる。

【0031】
本明細書中、「アリール基」とは、芳香族性を示す単環式あるいは多環式(縮合)の炭化水素基を意味し、具体的には、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、ビフェニリル、2-アンスリル等のC6-14アリール基を示す。中でもC6-10アリール基が好ましい。

【0032】
本明細書中、「C6-10アリール基」とは、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチルを示し、フェニルが特に好ましい。

【0033】
本明細書中、「C7-14アラルキル」とは、「C1-4アルキル基」に「C6-10アリール基」が置換した基を意味し、例えば、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、(ナフチル-1-イル)メチル、(ナフチル-2-イル)メチル、1-(ナフチル-1-イル)エチル、1-(ナフチル-2-イル)エチル、2-(ナフチル-1-イル)エチル、2-(ナフチル-2-イル)エチル、ビフェニリルメチル等が挙げられる。

【0034】
本明細書中、「C6-10アリール-カルボニル基」とは、「C6-10アリール基」がカルボニル基に結合した基を意味し、例えば、ベンゾイル、1-ナフトイル、2-ナフトイル等が挙げられる。中でも、ベンゾイル基が好ましい。

【0035】
本明細書中、「C6-10アリールオキシ基」とは、「C6-10アリール基」が酸素原子に結合した基を意味し、例えば、フェノキシ、1-ナフチルオキシ、2-ナフチルオキシ等が挙げられる。中でも、フェノキシ基が好ましい。

【0036】
本明細書中、「C6-10アリールチオ基」とは、「C6-10アリール基」が硫黄原子に結合した基を意味し、例えば、フェニルチオ、1-ナフチルチオ、2-ナフチルチオ等が挙げられる。中でも、フェニルチオ基が好ましい。

【0037】
本明細書中、「C7-14アラルキルオキシ基」とは、「C7-14アラルキル基」が酸素原子に結合した基を意味し、例えば、ベンジルオキシ、1-ナフチルメチルオキシ、2-ナフチルメチルオキシ等が挙げられる。中でも、ベンジルオキシ基が好ましい。

【0038】
本明細書中、「C6-10アリールオキシ-カルボニル基」とは、「C6-10アリールオキシ基」がカルボニル基に結合した基を意味し、例えば、フェノキシカルボニル、1-ナフチルオキシカルボニル、2-ナフチルオキシカルボニル等が挙げられる。中でも、フェノキシカルボニル基が好ましい。

【0039】
本明細書中、「C7-14アラルキルオキシ-カルボニル基」とは、「C7-14アラルキルオキシ基」がカルボニル基に結合した基を意味し、例えば、ベンジルオキシカルボニル、1-ナフチルメチルオキシカルボニル、2-ナフチルメチルオキシカルボニル等が挙げられる。中でも、ベンジルオキシカルボニル基が好ましい。

【0040】
本明細書中、「C6-10アリールスルホニル基」とは、「C6-10アリール基」がスルホニル基に結合した基を意味し、例えば、フェニルスルホニル、1-ナフチルスルホニル、2-ナフチルスルホニル等が挙げられる。中でも、フェニルスルホニル基が好ましい。

【0041】
本明細書中、「トリC1-6アルキルシリル基」とは、同一又は異なる3個のC1-6アルキル基により置換されたシリル基を意味し、当該アルキル基としては、C1-4アルキル基が好ましい。トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、又はtert-ブチルジメチルシリル基が好ましい。

【0042】
本明細書中、「保護されたアミノ基」とは、「保護基」で保護されたアミノ基を意味する。当該「保護基」としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons刊(1980)に記載のアミノ基の保護基を使用し得、例えば、C1-6アルキル基、C7-14アラルキル基、C6-10アリール基、C1-6アルキル-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C7-14アラルキル-カルボニル基、トリC1-6アルキルシリル基等の保護基が挙げられる。上記の保護基は、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基又はニトロ基により更に置換されていてもよい。当該アミノ基の保護基の具体例としては、メチル、アセチル、トリフルオロアセチル、ピバロイル、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル等が挙げられる。

【0043】
本明細書中、「置換されていてもよい」とは、1個以上の置換基を有していてもよいことを意味し、該「置換基」としては、(1)ハロゲン原子、(2)ニトロ、(3)シアノ、(4)C1-6アルキル、(5)C3-8シクロアルキル、(6)C1-6アルコキシ、(7)C6-10アリール、(8)C7-14アラルキル、(9)C1-6アルコキシ-カルボニル、(10)C7-14アラルキルオキシ-カルボニル、(11)C1-6アルキル-カルボニル、(12)C6-10アリール-カルボニル、(13)C6-10アリールオキシ-カルボニル、(14)C1-6アルキルスルホニル、(15)C6-10アリールスルホニル、(16)ホルミル、(17)アジド、(18)C1-6アルキルチオ、(19)C6-10アリールチオ、(20)C1-6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル、(21)トリC1-6アルキルシリル基、(22)保護されたアミノ基等が挙げられる。中でも、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルコキシ-カルボニル、アセチル、ホルミル、カルバモイル、アジド、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、ジメチルアミノ、アセチルアミノ、tert-ブトキシカルボニルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノ等が好ましく、ハロゲン原子が特に好ましい。また、複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。

【0044】
本明細書中、「一方向巻きのらせん構造」とは、右巻き又は左巻きのいずれかに片寄ったらせん構造であればよく、好ましくは完全に右巻き又は左巻きのらせん構造である。

【0045】
本明細書中、「光学活性な低分子化合物」とは、光の平面偏光を回転させる性質、すなわち、旋光能を有する低分子化合物であり、不斉中心、軸不斉、または面不斉を少なくとも1つ有する分子量が500以下の有機化合物を意味する。好ましくは、光学的に純粋な不斉炭素原子を1つ有する化合物であり、例えば、(R)-(-)-1-フェニルエチルアルコール、(S)-(+)-1-フェニルエチルアルコール、(R)-(-)-2-ブタノール、(S)-(+)-2-ブタノール等が挙げられる。中でも、(R)-(-)-1-フェニルエチルアルコール又は(S)-(+)-1-フェニルエチルアルコールが特に好ましい。該光学活性な低分子化合物としては、光学的に純粋な化合物だけでなく、光学純度の低い化合物も包含される。該低分子化合物は、液体でも固体でもよく、好ましくは、液体である。

【0046】
本明細書中、「ee」とは、鏡像体過剰率(enantiomeric excess)の略称であり、キラルな化合物の光学純度を表す。「ee」は、多い方の鏡像体の物質量から少ない方の鏡像体の物質量を引き、全体の物質量で割った値に100を掛けて算出され、「%ee」で表される。

【0047】
本明細書中、「光学的に純粋な」とは、99%ee以上の光学純度を示す状態を表す。

【0048】
本明細書中、「鏡像異性体」とは、光学活性な低分子化合物中の全ての不斉炭素原子の立体配置が異なっている光学的対掌体を意味し、光学活性な低分子化合物と互いに右手と左手との関係にある1対の光学異性体を構成している。具体的には、例えば、光学活性な低分子化合物が(R)-(-)-1-フェニルエチルアルコールである場合の鏡像異性体は(S)-(+)-1-フェニルエチルアルコールである。

【0049】
本明細書中、「らせんの巻き方向を反転させる」とは、一方向巻きのらせんを、それとは逆方向巻きのらせんに反転させることを意味し、具体的には、例えば、右巻きのらせん構造を左巻きのらせん構造へと反転させることである。なお、らせんの巻き方向を完全に反転させることが望ましいが、「らせんの巻き方向を反転させる」とは、必ずしもらせんの巻き方向を完全に反転させる態様のみを意味するのではなく、逆方向巻きに片寄ったらせん構造(逆の符号の比旋光度を有する化合物へと変換されていればよい。)へと変換させる態様も含まれる。

【0050】
本明細書中、「低分子化合物(の鏡像異性体)又はそれを含む溶液に固体状態で含浸させ」とは、低分子化合物(の鏡像異性体)が液体の場合には、それ自体に含浸させることを意味し、低分子化合物(の鏡像異性体)が液体又は固体の場合には、該化合物を有機溶媒に溶解させた溶液に含浸させることを意味する。

【0051】
本明細書中、「光学異性体分離剤」とは、1つ以上の不斉中心、軸不斉、または面不斉を有する低分子化合物の光学異性体の混合物を分離させる能力を有する物質であればよく、特に限定されない。

【0052】
本発明の光学異性体分離剤を用いて、光学活性化合物を光学分割する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、超臨界クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動等のクロマトグラフィー法及び膜分離による光学異性体分離等が挙げられる。

【0053】
本発明の光学異性体分離剤は、担体上に架橋基を介して化学的に固定化されているので、例えば、高速液体クロマトグラフィー用のカラム充填剤の固定相として使用する場合、溶離液としては、特に制限はなく、ヘキサン-イソプロパノール等を用いる順相系、アルコール-水等を用いる逆相系のいずれにおいても応用可能である。

【0054】
本発明において、化合物(I)の固定化に用いられる担体としては、多孔質有機担体又は多孔質無機担体が挙げられ、好ましくは多孔質無機担体である。多孔質有機担体として適当なものは、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート等からなる高分子物質であり、多孔質無機担体として適当なものは、シリカゲル、アルミナ、マグネシア、ガラス、カオリン、酸化チタン、ケイ酸塩、ヒドロキシアパタイトなどである。特に好ましい担体はシリカゲルである。

【0055】
担体としてシリカゲルを使用する場合のシリカゲルの粒径は0.1μm~300μm、好ましくは1μm~10μmであり、平均孔径は10Å~100μm、好ましくは50Å~50000Åである。

【0056】
本明細書中、化合物(I)を担体上に固定化する際、化合物(I)と担体とを架橋させるのに用いられる架橋剤としては、化合物(I)中の基R2’(すなわち、OH、SH又はNH)と反応して結合(エステル結合、チオエステル結合、ウレタン結合等)を形成し得る化合物であればよく、例えば、ジカルボン酸誘導体、ジイソシアナート誘導体、ジエポキシ誘導体、ジビニル誘導体等が挙げられる。中でも、好ましい架橋剤は、ジカルボン酸誘導体(例、C1-20アルキレンジカルボン酸、C1-20アルキレンジカルボン酸の酸ハロゲン化物、C1-20アルキレンジカルボン酸の酸無水物等)、ジイソシアナート誘導体(例、ヘキサメチレンジイソシアナート)であり、特に好ましくは、ジカルボン酸誘導体(例、C10-20アルキレンジカルボン酸(例、テトラデカン二酸等))である。

【0057】
本発明の充填剤は、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、超臨界クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動などのクロマトグラフィー法及び膜分離による光学異性体分離に用いるのが一般的であるが、特に液体クロマトグラフィー法に応用するのが好ましい。

【0058】
更に本発明の充填剤は、主として光学純度測定を目的に使用される高速液体クロマトグラフィーの分析用キラルカラム、数mg~数kgの光学活性体取得を目的とする単カラム方式の液体クロマトグラフィーの分取用キラルカラム、擬似移動床方式に代表される連続式液体クロマトグラフィーの分取用キラルカラム等に好ましく使用される。

【0059】
本発明の固定化担体からなる光学異性体分離剤を、充填剤、すなわち、キラル固定相、として用いるキラルカラムにより分離することができる光学異性体の混合物としては、特に限定されないが、分子量が500以下の低分子化合物の光学異性体分離に好適に使用することができる。該低分子化合物としては、例えば、置換されていてもよい1,1’-ビ-2-ナフトール、コバルト錯体、trans-スチルベンオキシド、トレガー塩基(Troeger’s base)、モノ置換[2.2]パラシクロファン等が挙げられる。

【0060】
(化合物(I))
担体上に架橋基を介して固定化させる、化合物(I)は、下記式(I):

【0061】
【化4】
JP2016140845A_000005t.gif

【0062】
[式中の各記号は、前記と同義である。]
で表されるポリアセチレン化合物である。

【0063】
以下、化合物(I)の各基について説明する。

【0064】
及びR’は、独立してそれぞれ、置換されていてもよいC1-6アルキル基、ホルミル基、置換されていてもよいC1-6アルキル-カルボニル基、置換されていてもよいC1-6アルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニル基、及び-R-O-R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1-4アルキレン基又は-R-(O-Rn1-(ここで、Rは、C1-4アルキレン基を示し、Rは、C1-4アルキレン基を示し、n1は、1乃至3の整数を示す。)を示し、Rは、置換されていてもよいC1-6アルキル基を示す。)からなる群より選択される基である。

【0065】
及びR’は、好ましくは、ともに-R-O-R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1-4アルキレン基を示し、Rは、置換されていてもよいC1-6アルキル基を示す。)であり、特に好ましくは、ともにメトキシメチル基である。

【0066】
は、OR、SR、NHCOR、CONHR、OCOR、OCON(R9’)(R9’’)及びCO(ここで、Rは、置換されていてもよいC1-30アルキル基を示し、R9’は、水素原子又は置換されていてもよいC1-6アルキル基を示し、R9’’は、置換されていてもよいC1-30アルキル基を示す。)からなる群より選択される基である。

【0067】
は、好ましくは、OR、OCOR及びOCON(R9’)(R9’’)(ここで、Rは、置換されていてもよいC4-20アルキル基を示し、R9’は、水素原子を示し、R9’’は、置換されていてもよいC1-30アルキル基を示す。)からなる群より選択される基であり、より好ましくは、OCOR(ここで、Rは、置換されていてもよいC4-20アルキル基を示す。)又はOCON(R9’)(R9’’)(ここで、R9’は、水素原子を示し、R9’’は、置換されていてもよいC1-6アルキル基を示す。)であり、特に好ましくは、ペンタノイロキシ基又はn-ブチルカルバモイルオキシ基である。

【0068】
2’は、OH、SH又はNHである。

【0069】
2’は、好ましくは、OH又はNHであり、特に好ましくは、OHである。

【0070】
、R’、R及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、及び置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群より選択される基である。

【0071】
、R’、R及びR’は、好ましくは、全て水素原子である。

【0072】
rは、0.05未満であり、好ましくは、0.002よりも大きく、0.02未満であり、特に好ましくは、0.005以上、0.015以下である。rは、ポリマー中に存在するR2’基の割合を示す値であるが、ポリマー1分子中に含まれるR2’基の割合を意味するのではなく、全ポリマー中に存在するR2’基の割合の平均値を意味するものである。
rが0.05以上であると、担体上に化合物(I)を強固に固定化することが可能であるが、化合物(I)の自由度が著しく低下するため、らせんのキラリティーを誘起することが難しくなる。

【0073】
nは、100以上の整数であり、好ましくは、400以上10000以下の整数である。

【0074】
化合物(I)としては、以下の化合物が好適である。
[化合物(I-1)]
及びR’が、ともに-R-O-R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1-4アルキレン基を示し、Rは、置換されていてもよいC1-6アルキル基を示す。)であり;
が、OR、OCOR及びOCON(R9’)(R9’’)(ここで、Rは、置換されていてもよいC4-20アルキル基を示す。)からなる群より選択される基であり;
2’が、OH又はNHであり;
、R’、R及びR’が、全て水素原子であり;
rが、0.05未満であり;並びに
nが、100以上の整数である、化合物(I)。

【0075】
[化合物(I-2)]
及びR’が、ともに-R-O-R(ここで、は、酸素原子との結合位置を示し、Rは、C1-4アルキレン基を示し、Rは、置換されていてもよいC1-6アルキル基を示す。)であり;
が、OCOR又はOCON(R9’)(R9’’)(ここで、Rは、置換されていてもよいC4-20アルキル基を示し、R9’は、水素原子を示し、R9’’は、置換されていてもよいC1-6アルキル基を示す。)であり;
2’が、OHであり;
、R’、R及びR’が、全て水素原子であり;
rが、0.05未満であり;並びに
nが、100以上の整数である、化合物(I)。

【0076】
特に好適な化合物(I)は、以下の化合物である。
[化合物(I-3)]
及びR’が、ともにメトキシメチル基であり;
が、ペンタノイロキシ基であり;
2’が、OHであり;
、R’、R及びR’が、全て水素原子であり;
rが、0.002よりも大きく、0.02未満;並びに
nが、400以上10000以下の整数である、化合物(I)。

【0077】
[化合物(I-4)]
及びR’が、ともにメトキシメチル基であり;
が、n-ブチルカルバモイルオキシ基であり;
2’が、OHであり;
、R’、R及びR’が、全て水素原子であり;
rが、0.002よりも大きく、0.02未満;並びに
nが、400以上10000以下の整数である、化合物(I)。

【0078】
本発明に用いられる化合物(I)の数平均重合度(1分子中に含まれるビフェニルエチレン単位の平均数)は、100以上であり、特に上限はないが、10000以下であることが取り扱いの容易さの点で望ましい。

【0079】
本発明に用いられる化合物(I)の立体規則性は、ほぼ100%シス-トランソイドである。

【0080】
化合物(I)には、上記式(I)で表される化合物の他に、それらの塩(酸や塩基との付加塩)、それらの水和物及び溶媒和物も包含される。

【0081】
(化合物(I)の合成)
化合物(I)の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の製造法に示されるような工程を経て合成することができる。

【0082】
本製造法に記載はなくとも、必要に応じて、慣用される方法を適宜選択し、官能基に保護基を導入したり、脱保護を行う(例えば、T.W.Greene,P.G. Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,第3版,1999年等);官能基を前駆体として以下の工程に処し、その後に所望の官能基に変換する等の工夫(例えば、ORGANIC FUNCTIONAL GROUP PREPARATIONS,第2版,ACADEMIC PRESS,INC.,1989年、Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers Inc.,1989年等)により効率のよい製造を実施してもよい。
また、以下の工程において、反応後の処理は、通常行われる方法で行えばよく、単離精製は、必要に応じて、慣用される方法を適宜選択し、また組み合わせて行えばよい。

【0083】
本製造法に使用する原料化合物は、特に述べない限り、市販品として容易に入手できるか、あるいは、自体公知の方法(国際公開第2013/168601号)またはこれらに準ずる方法に従って製造することができる。

【0084】
化合物(I)は、例えば、以下の工程により製造することができる。
(製造法)

【0085】
【化5】
JP2016140845A_000006t.gif

【0086】
[式中の各記号は、前記と同義である。]

【0087】
工程1
当該工程は、化合物1と化合物2を共重合させることにより、化合物(I)へと変換する工程である。使用する化合物1と化合物2のモル比によりrの値が決定される。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、窒素雰囲気下、塩基存在下で金属触媒を用いて行われる。

【0088】
金属触媒としては、例えば、2,5-ノルボルナジエンロジウム(I)クロリド二量体(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-ロジウムクロリド(I)ダイマー:[Rh(nbd)Cl])、シクロオクタジエンロジウム(I)クロリド二量体等のロジウム/ジエン触媒が挙げられ、中でも[Rh(nbd)Cl]が好ましい。
該金属触媒の使用量は、化合物1及び化合物2の総量(1モル)に対して、通常0.00001~0.1モル、好ましくは、0.001~0.05モルである。

【0089】
塩基としては、例えば、トリエチルアミン等の有機塩基が挙げられ、中でもトリエチルアミンが好ましい。
該塩基は、共溶媒として使用することもでき、該塩基の使用量は、化合物1及び化合物2の総量(1モル)に対して、通常1~1000モルである。

【0090】
溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコール-ジメチルエーテル(DME)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム(diglyme))等のエーテル系溶媒が挙げられ、中でもテトラヒドロフランが好ましい。

【0091】
当該工程で使用される溶媒の量は、例えば、化合物1及び化合物2の総濃度が0.001~1M程度となる量が好ましい。特に0.1~0.5M程度の濃度となる量が好ましい。

【0092】
反応温度は、通常-10℃~100℃、好ましくは0℃~40℃である。
反応時間は、通常0.5~24時間である。

【0093】
当該工程で得られる共重合体は、大量の貧溶媒(例、メタノール)で沈殿させ、遠心分離により不溶部を回収することにより単離することができる。

【0094】
上記方法により得られる化合物(I)のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、紫外可視吸光度検出器を用いたSEC測定により求めることができる。

【0095】
上記方法により得られる化合物(I)の立体規則性は、ほぼ100%シス-トランソイドである。

【0096】
同位元素(例、H、H、14C)などで標識された化合物も、化合物(I)に包含される。

【0097】
(担体上への化合物(I)の固定化方法)
化合物(I)は、前記した架橋剤の存在下で、従来公知の方法またはこれらに準ずる方法に従って、化合物(I)のR2’基(すなわち、OH、SH又はNH)及び担体(例、シリカゲル)上の水酸基と、架橋剤の両末端の反応性官能基(例、カルボキシ基、イソシアナート基等)とを、エステル結合又はウレタン結合を介して結合させることにより固定化することができる。

【0098】
化合物(I)のシリカゲルへの担持量は、熱重量分析を用いて確認することができる。

【0099】
(担体上に固定化された化合物(I)への固体状態での一方向巻きのらせんキラリティーの誘起方法とらせんキラリティー記憶の確認方法)
担体上に固定化された化合物(I)(以下、「化合物(I)固定化担体」と称することもある。)への固体状態での一方向巻きのらせんキラリティーの誘起は、例えば、以下の方法により行うことができる。

【0100】
化合物(I)固定化担体を、光学活性な低分子化合物又はそれを含む溶液に固体状態で含浸させた後、該低分子化合物を除去することにより行うことができる。

【0101】
当該低分子化合物としては、前記例示した化合物が挙げられ、中でも、(R)-(-)-1-フェニルエチルアルコール又は(S)-(+)-1-フェニルエチルアルコールが特に好適に使用される。当該低分子化合物は、液体でも固体でもよく、好ましくは、液体である。

【0102】
当該光学活性な低分子化合物としては、光学的に純粋な化合物(99%ee以上)を使用するのが好ましいが、らせんのキラリティーを誘起し得る限りにおいては、光学純度の低い化合物を使用することもできる。

【0103】
化合物(I)固定化担体への一方向巻きのらせんキラリティーの誘起方法としては、具体的には、当該低分子化合物を、有機溶媒に溶解させた溶液に、化合物(I)固定化担体を含浸させることにより、担体上に固定化された化合物(I)に一方向巻きのらせんキラリティーを誘起する方法であるが、当該低分子化合物が液体の場合には、無溶媒で化合物(I)固定化担体を直接含浸させることにより、一方向巻きのらせんキラリティーを誘起することもできる。
含浸させる時間は、使用する低分子化合物にもよるが、通常、数分間から1週間である。

【0104】
低分子化合物を溶解させる有機溶媒としては、例えば、トルエン、アセトン、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトニトリル等が挙げられるが、中でも、トルエンが特に好ましい。

【0105】
一方向巻きのらせんキラリティーが誘起された化合物(I)固定化担体を含む混合液から光学活性な低分子化合物を除去することにより、担体上に固定化された化合物(I)に一方向巻きのらせん構造が記憶された本発明の化合物(I)固定化担体を得ることができる。

【0106】
前記混合液からの光学活性な低分子化合物の除去は、例えば、混合液を濾過後、光学活性な低分子化合物を溶解する有機溶媒により1回以上(数回、好ましくは、2~5回)、化合物(I)固定化担体を洗浄することにより行うことができる。また、洗浄後の洗液から溶媒を留去することにより、光学活性な低分子化合物を100%回収することが可能であり、回収された光学活性な低分子化合物は再利用することができる。

【0107】
前記洗浄のための有機溶媒としては、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、2-プロパノールであり、好ましくは、メタノールである。

【0108】
(一方向巻きのらせん構造を有する化合物(I)固定化担体(らせん化合物(I)固定化担体)のらせんの巻き方向を固体状態で反転させる方法)
らせん化合物(I)固定化担体のらせんの巻き方向を固体状態で反転させるには、前記した一方向巻きのらせんキラリティーの誘起方法と同様の方法により行うことができる。

【0109】
具体的には、前記一方向巻きのらせんキラリティーの誘起方法における原料化合物として、化合物(I)固定化担体に換えて、らせん化合物(I)固定化担体を用い、また、光学活性な低分子化合物に換えて、該光学活性な低分子化合物の鏡像異性体又は該光学活性な低分子化合物とは絶対配置の異なる他の光学活性な低分子化合物(好ましくは、該光学活性な低分子化合物の鏡像異性体)を用いて行うことにより、逆の符号の比旋光度を示す本発明のらせん化合物(I)固定化担体へと変換することができる。

【0110】
固体状態での反転の際に使用する該光学活性な低分子化合物の鏡像異性体、又は該光学活性な低分子化合物とは異なる種類の(絶対配置の異なる他の)光学活性な低分子化合物としては、光学的に純粋な化合物(99%ee以上)を使用するのが好ましいが、らせんのキラリティーを誘起し得る限りにおいては、光学純度の低い化合物を使用することもできる。

【0111】
本発明のらせん化合物(I)固定化担体は、それ自体を光学異性体分離剤として、キラルカラムの固定相に使用することができる。

【0112】
本発明のらせん化合物(I)固定化担体(好ましくは、らせん化合物(I)固定化シリカゲル)をスラリー法(溶媒としては、ヘキサンが好ましい。)によりカラムに充填することによりキラルカラムを調製することができる。

【0113】
本発明の一方向巻きのらせんキラリティーの固体状態での誘起方法、及びらせんの巻き方向の固体状態での反転方法は、化合物(I)固定化担体自体を光学活性な低分子化合物又はそれを含む溶液に含浸させて行う態様のみならず、化合物(I)固定化担体をクロマトグラフィー用充填剤として充填してなるカラムに光学活性な低分子化合物又はそれを含む溶液を満たして静置して行う態様も含まれる。

【0114】
以下の実施例において、原料化合物として使用した化合物1aは、自体公知の方法(国際公開第2013/168601号)若しくはこれらに準ずる方法に従って製造したものを使用した。また、一方向巻きのらせん構造誘起の際に使用した光学活性低分子化合物である、(R)-(-)-1-フェニルエチルアルコール(関東化学株式会社製)及び(S)-(+)-1-フェニルエチルアルコール(関東化学株式会社製)、並びに、光学分割に使用したラセミ化合物(1,1’-ビ-2-ナフトール(Sigma-Aldrich Co. LLC.製)、3,3’-ジフェニル-1,1’-ビ-2-ナフトール(和光純薬工業株式会社製)、6,6’-ジブロモ-1,1’-ビ-2-ナフトール(Sigma-Aldrich Co. LLC.製)、コバルト(III)アセチルアセトナート(ナカライテスク株式会社製))は、市販品を使用した。
【実施例】
【0115】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらより何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0116】
反応は、Merck 60 F254 シリカゲルプレート(厚さ0.25mm)を用いて、薄層クロマトグラフィーによりモニターした。
H及び13C-NMRスペクトルは、JEOL ECA500を用い、重クロロホルムを溶媒として測定した。H-NMRについてのデータは、化学シフト(δppm)、多重度(s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、quint=クインテット、m=マルチプレット、dd=ダブルダブレット、brs=ブロードシングレット)、カップリング定数(Hz)、積分及び割当てとして報告する。
フラッシュクロマトグラフィーは、関東化学株式会社(日本、東京)のシリカゲル60Nを用いて行った。
平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(日本分光製高速液体クロマトグラフィーポンプ PU-2080、日本分光製紫外可視検出器 UV-970、日本分光製カラムオーブン CO-1560、Shodex製カラム KF-805L)によりポリスチレン換算で算出した。
光学分割能の測定には日本分光製高速液体クロマトグラフィーポンプPU-2080、日本分光製紫外可視検出器 MD-2018、及び日本分光製円二色性検出器 CD-2095を用いた。赤外吸収測定は、日本分光製赤外分光光度計 FT/IR-460を用いて行った。熱重量分析は、SIIナノテクノロジー製TG/DTA6200を用いて行った。
以下の実施例中の「室温」は通常約25℃を示す。混合溶媒において示した比は、特に断らない限り容量比を示す。%は、特に断らない限り重量%を示す。
【実施例】
【0117】
実施例1
化合物(I-1)の合成
【実施例】
【0118】
(1)(2,2’-ビス(メトキシメトキシ)-4’-ヒドロキシ-4-ビフェニルイル)アセチレン(化合物1b)の合成
【実施例】
【0119】
【化6】
JP2016140845A_000007t.gif
【実施例】
【0120】
窒素雰囲気下、4’-(トリイソプロピルシリル)エチニル-2,2’-ビス(メトキシメトキシ)ビフェニル-4-オール(化合物1a)(7.9g,17mmol)を脱水THF(300mL)に溶解し、1.0M テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)-テトラヒドロフラン溶液(20.3mL,20.3mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。反応溶媒を酢酸エチルで希釈し、1N塩酸、水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水後、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)で精製することにより、化合物1b(4.2g,収率80%)を淡黄色透明油状物として得た。
IR(KBr,cm-1):3276(≡CH),2105(C≡C);
H-NMR(500MHz,CDCl,rt):δ7.34(s,1H,Ar-H),7.19-7.18(m,3H,Ar-H),7.08(d,J=8.2Hz,1H,Ar-H),6.76(d,J=2.3Hz,1H,Ar-H),6.54(dd,J=5.9Hz,2.3Hz,1H,Ar-H),5.05(d,J=6.4Hz,4H,OCHO),4.78(brs,1H,OH),3.36(d,J=1.8Hz,6H,OCH),3.08(s,1H,C≡C-H);
13C-NMR(125MHz,CDCl,rt):δ156.38,155.90,154.91,132.03,131.84,130.06,125.84,122.09,120.84,119.20,108.77,103.32,95.36,95.24,83.75,77.19,56.11,56.07.
【実施例】
【0121】
(2)(2,2’-ビス(メトキシメトキシ)-4’-ブチルカルバモイル-4-ビフェニルイル)アセチレン(化合物1c)の合成
【実施例】
【0122】
【化7】
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【実施例】
【0123】
窒素雰囲気下、化合物1b(0.47g,1.51mmol)を脱水ジクロロメタン(20mL)に溶解した。トリエチルアミン (3滴)、n-ブチルイソシアナート(0.25mL,2.3mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応溶媒を減圧除去した後、残渣をヘキサンで希釈し、1N塩酸、水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)で精製することにより、化合物1c(0.51g,収率83%)を淡黄色透明油状物として得た。
IR(KBr,cm-1):3241(≡CH),2106(C≡C),1712(C=O);
H-NMR(500MHz,CDCl,rt):δ7.35(s,1H,Ar-H),7.21-7.16(m,3H,Ar-H),7.02(d,J=1.8Hz,1H,Ar-H),6.86(dd,J=8.5,2.1Hz,1H,Ar-H),5.06(s,4H,OCHO),5.00(t,1H,NH),3.35(d,J=2.7Hz,6H,OCH),3.29(dd,J=13.3,6.9Hz,2H,NCH),3.08(s,1H,C≡C-H),1.61-1.54(m,2H,CH),1.41(m,2H,CH),0.96(t,J=7.3Hz,3H,CH);
13C-NMR(125MHz,CDCl,rt):δ155.22,154.70,154.40,151.37,131.51,131.30,129.53,125.60,125.02,122.22,118.85,114.80,109.08,95.09,95.08,83.52,77.13,55.95,53.42,40.95,31.87,19.89,13.72.
【実施例】
【0124】
(3)化合物1bと化合物1cの共重合による化合物(I-1)の合成
(i)化合物(I-1a)(r=0.01)の合成
【実施例】
【0125】
【化8】
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【実施例】
【0126】
窒素雰囲気下、重合管に化合物1b(1mg,3μmol)及び化合物1c(130mg,0.31mmol)を入れ、1時間真空乾燥させた。脱水THF(0.20mL)を加えてモノマーを溶解させた後、トリエチルアミン(0.13mL)を加え、モノマー溶液を調製した。[Rh(nbd)Cl](5.5mg,12μmol)を脱水THF(2.3mL)に溶解し、触媒溶液を調製した。触媒溶液0.3mLをモノマー溶液に加えてすぐに撹拌し、重合を開始した([モノマー]=0.5M,[モノマー]/[Rh]=100)。30℃の恒温槽で3時間静置した後、大量のメタノールに再沈殿させ、遠心分離により不溶部の化合物(I-1a)(126mg)を収率96%で回収した。得られた化合物(I-1a)のSEC測定により求めたポリスチレン換算の数平均分子量Mは3.3×10であり分散度M/Mは2.80であった。また、化合物(I-1a)のH-NMRスペクトル(500MHz,CDCl中,55℃で測定)より、化合物(I-1a)の立体規則性は、ほぼ100%シス-トランソイドであることが分かった。
IR(KBr,cm-1):1720(C=O);
H-NMR(400MHz,CDCl,55℃):δ7.50-6.71(br,4H,Ar-H),6.59(br,1H,Ar-H),6.42(br,1H,Ar-H),5.98(br,1H,C≡C-H),5.21(br,1H,NH),4.74(br,4H,OCHO),3.22(br,2H,NCH),3.05(br,6H,OCH),1.58-1.34(br,4H,2CH),0.94(t,3H,CH).
【実施例】
【0127】
(ii)化合物(I-1b)(r=0.02)の合成
窒素雰囲気下、重合管に化合物1b(2mg,6μmol)及び化合物1c(130mg,0.31mmol)を入れ、1時間真空乾燥させた。脱水THF(0.20mL)を加えてモノマーを溶解させた後、トリエチルアミン(0.13mL)を加え、モノマー溶液を調製した。[Rh(nbd)Cl](5.5mg,12μmol)を脱水THF(2.3mL)に溶解し、触媒溶液を調製した。触媒溶液0.3mLをモノマー溶液に加えてすぐに撹拌し、重合を開始した([モノマー]=0.5M,[モノマー]/[Rh]=100)。30℃の恒温槽で3時間静置した後、大量のメタノールに再沈殿させ、遠心分離により不溶部の化合物(I-1b)(130mg)を収率99%で回収した。得られた化合物(I-1b)のSEC測定により求めたポリスチレン換算の数平均分子量Mは3.5×10であり分散度M/Mは2.24であった。また、化合物(I-1b)のH-NMRスペクトル(500MHz,CDCl中,55℃で測定)より、化合物(I-1b)の立体規則性は、ほぼ100%シス-トランソイドであることが分かった。
IR(KBr,cm-1):1720(C=O);
H-NMR(400MHz,CDCl,55℃):δ7.03-6.70(br,4H,Ar-H),6.59(br,1H,Ar-H),6.43(br,1H,Ar-H),5.98(br,1H,C≡C-H),5.19(br,1H,NH),4.73(br,4H,OCHO),3.22(br,2H,NCH),3.05(br,6H,OCH),1.61-1.33(br,4H,2CH),0.95(t,3H,CH).
【実施例】
【0128】
実施例2
(1)化合物(I-1a)の担体(シリカゲル)上への固定化とカラム充填
(i)化合物(I-1a)の担体(シリカゲル)上への固定化
実施例1の(3)(i)で得られた化合物(I-1a)(90mg)をTHF(4mL)に溶解し、HPLC用のシリカゲル(590mg、ダイソー製:粒径5μm)に物理的に吸着させ、化合物(I-1a)担持シリカゲルを得た。熱重量分析によりシリカゲル上の有機物の割合を算出したところ、13%であった。
窒素雰囲気下、前記化合物(I-1a)担持シリカゲル(600mg)をジメチルスルホキシド(12ml)に分散させた。テトラデカン二酸(270mg,1.0mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(250mg,2.1mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(400mg,2.1mmol)を加え、室温で5時間撹拌した。反応終了後、吸引濾過によりシリカゲルを回収し、ジクロロメタンとテトラヒドロフランを用いて洗浄することで、固定化できなかったポリマーを除去した。真空乾燥後、得られた粉末状物質(510mg)をメタノールに分散させた。2.0Mトリメチルシリルジアゾメタン-ジエチルエーテル溶液(0.3mL,0.6mmol)を加えて5時間振盪機で撹拌を行った。溶媒を溜去した後、ジクロロメタンとテトラヒドロフランを用いて洗浄した。真空乾燥後、化合物(I-1a)固定化シリカゲル(507mg)を回収した。熱重量分析によりシリカゲル上の有機物の割合を算出したところ、9%であった。
(ii)化合物(I-1a)固定化シリカゲルの充填によるカラム調製
前記(1)(i)で得られた化合物(I-1a)固定化シリカゲルをスラリー法(溶媒:ヘキサン)により長さ25cm、内径0.20cmのステンレスカラムに充填し、カラム(以下、「カラムA1」という)を作製した。
【実施例】
【0129】
(2)化合物(I-1b)の担体(シリカゲル)上への固定化とカラム充填
(i)化合物(I-1b)の担体(シリカゲル)上への固定化
実施例1の(3)(ii)で得られた化合物(I-1b)(93mg)をTHF(4mL)に溶解し、HPLC用のシリカゲル(600mg、ダイソー製:粒径5μm)に物理的に吸着させ、化合物(I-1b)担持シリカゲルを得た。熱重量分析によりシリカゲル上の有機物の割合を算出したところ、13%であった。
窒素雰囲気下、前記化合物(I-1b)担持シリカゲル(600mg)をジメチルスルホキシド(12ml)に分散させた。テトラデカン二酸(270mg,1.0mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(250mg,2.1mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(400mg,2.1mmol)を加え、室温で5時間撹拌した。反応終了後、吸引濾過によりシリカゲルを回収し、ジクロロメタンとテトラヒドロフランを用いて洗浄することで、固定化できなかったポリマーを除去した。真空乾燥後、得られた粉末状物質(600mg)をメタノールに分散させた。2.0Mトリメチルシリルジアゾメタン-ジエチルエーテル溶液(0.3mL,0.6mmol)を加えて5時間振盪機で撹拌を行った。溶媒を溜去した後、ジクロロメタンとテトラヒドロフランを用いて洗浄した。真空乾燥後、化合物(I-1b)固定化シリカゲル(540mg)を回収した。熱重量分析によりシリカゲル上の有機物の割合を算出したところ、12%であった。
ポリマー中に含有するフェノール性水酸基の割合を2%に高めることにより、前記(1)(化合物(I-1a)の固定化)の場合(9%)と比べてより、効率良くポリマーを固定化できることが分かった。
(ii)化合物(I-1b)固定化シリカゲルの充填によるカラム調製
前記(2)(i)で得られた化合物(I-1b)固定化シリカゲルをスラリー法(溶媒:ヘキサン)により長さ25cm、内径0.20cmのステンレスカラムに充填し、カラム(以下、「カラムA2」という)を作製した。
【実施例】
【0130】
実施例3
化合物(I-2)の合成
【実施例】
【0131】
(1)(2,2’-ビス(メトキシメトキシ)-4’-ペンタノイロキシ-4-ビフェニルイル)アセチレン(化合物1d)の合成
【実施例】
【0132】
【化9】
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【実施例】
【0133】
窒素雰囲気下、化合物1b(1.17g,3.72mmol)を脱水ジクロロメタン(20mL)に溶解した。ペンタン酸 (0.49mL,4.5mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(550mg,4.5mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(860mg,4.5mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応溶媒を減圧除去した後、残渣をヘキサンで希釈し、1N塩酸、水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を減圧留去した後、残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)で精製することにより、化合物1d(1.29g,収率87%)を淡黄色透明油状物として得た。
IR(KBr,cm-1):3259(≡CH),2103(C≡C),1761(C=O);
H-NMR(500MHz,CDCl,rt):δ7.35(s,1H,Ar-H),7.21-7.18(m,3H,Ar-H),6.97(d,J=2.3Hz,1H,Ar-H),6.81(dd,J=6.0,2.3Hz,1H,Ar-H),5.06(s,4H,OCHO),3.35(d,J=1.4Hz,6H,OCH),3.09(s,1H,C≡C-H),2.57(t,J=7.8Hz,2H,COCH),1.74(quint,J=7.3Hz,2H,CH),1.44(m,2H,CH),0.97(t,J=7.3Hz,3H,CH);
13C-NMR(125MHz,CDCl,rt):δ172.24,155.41,154.27,151.07,131.50,131.46,129.45,125.66,125.55,122.36,118.94,114.79,109.04,95.18,95.14,83.52,77.34,77.21,77.02,76.70,55.99,34.14,26.96,22.27,13.75.
【実施例】
【0134】
(2)化合物1bと化合物1dの共重合による化合物(I-2)の合成
(i)化合物(I-2a)(r=0.01)の合成
【実施例】
【0135】
【化10】
JP2016140845A_000011t.gif
【実施例】
【0136】
窒素雰囲気下、重合管に化合物1b(1mg,3μmol)及び化合物1d(130mg,0.33mmol)を入れ、1時間真空乾燥させた。脱水THF(0.21mL)を加えてモノマーを溶解させた後、トリエチルアミン(0.14mL)を加え、モノマー溶液を調製した。[Rh(nbd)Cl](5.8mg,13μmol)を脱水THF(2.4mL)に溶解し、触媒溶液を調製した。触媒溶液0.31mLをモノマー溶液に加えてすぐに撹拌し、重合を開始した。30℃の恒温槽で3時間静置した後、大量のメタノールに再沈殿させ、遠心分離により不溶部の化合物(I-2a)(124mg)を収率95%で回収した。得られた化合物(I-2a)のSEC測定により求めたポリスチレン換算の数平均分子量Mは2.7×10であり分散度M/Mは1.80であった。また、化合物(I-2a)のH-NMRスペクトル(500MHz,CDCl中,50℃で測定)より、化合物(I-2a)の立体規則性は、ほぼ100%シス-トランソイドであることが分かった。
IR(KBr,cm-1):1758(C=O);
H-NMR(400MHz,CDCl,55℃):δ7.09-6.69(br,4H,Ar-H),6.55(br,1H,Ar-H),6.45(br,1H,Ar-H),5.99(br,1H,C≡C-H),4.74(br,4H,OCHO),3.04(br,6H,OCH),2.48(br,2H,OCOCH),1.75-1.36(br,4H,2CH),0.95(t,3H,CH).
【実施例】
【0137】
(ii)化合物(I-2b)(0<r<0.005)の合成
窒素雰囲気下、重合管に化合物1b(0.2mg,0.63μmol)及び化合物1d(100mg,0.25mmol)を入れ、1時間真空乾燥させた。脱水THF(0.16mL)を加えてモノマーを溶解させた後、トリエチルアミン(0.10mL)を加え、モノマー溶液を調製した。[Rh(nbd)Cl](4.4mg,9.7μmol)を脱水THF(1.9mL)に溶解し、触媒溶液を調製した。触媒溶液0.24mLをモノマー溶液に加えてすぐに撹拌し、重合を開始した。30℃の恒温槽で3時間静置した後、大量のメタノールに再沈殿させ、遠心分離により不溶部の化合物(I-2b)(96mg)を収率96%で回収した。得られた化合物(I-2b)のSEC測定により求めたポリスチレン換算の数平均分子量Mは4.7×10であり分散度M/Mは1.78であった。また、化合物(I-2b)のH-NMRスペクトル(500MHz,CDCl中,50℃で測定)より、化合物(I-2b)の立体規則性は、ほぼ100%シス-トランソイドであることが分かった。
IR(KBr,cm-1):1759(C=O);
H-NMR(400MHz,CDCl,55℃):δ7.05-6.65(br,4H,Ar-H),6.56(br,1H,Ar-H),6.46(br,1H,Ar-H),6.00(br,1H,C≡C-H),4.74(br,4H,OCHO),3.04(br,6H,OCH),2.47(br,2H,OCOCH),1.78-1.37(br,4H,2CH),0.95(t,3H,CH).
【実施例】
【0138】
(iii)化合物1dの重合による化合物(I-2c)(r=0)の合成
窒素雰囲気下、重合管に化合物1d(300mg,0.75mmol)を入れ、1時間真空乾燥させた。脱水THF(0.48mL)を加えてモノマーを溶解させた後、トリエチルアミン(0.30mL)を加え、モノマー溶液を調製した。[Rh(nbd)Cl](13mg,29μmol)を脱水THF(5.7mL)に溶解し、触媒溶液を調製した。触媒溶液0.72mLをモノマー溶液に加えてすぐに撹拌し、重合を開始した。30℃の恒温槽で3時間静置した後、大量のメタノールに再沈殿させ、遠心分離により不溶部の化合物(I-2c)(267mg)を収率89%で回収した。得られた化合物(I-2c)のSEC測定により求めたポリスチレン換算の数平均分子量Mは3.3×10であり分散度M/Mは4.5であった。また、化合物(I-2c)のH-NMRスペクトル(500MHz,CDCl中,50℃で測定)より、化合物(I-2c)の立体規則性は、ほぼ100%シス-トランソイドであることが分かった。
IR(KBr,cm-1):1758(C=O);
H-NMR(400MHz,CDCl,55℃):δ6.96-6.36(br,6H,Ar-H),6.05-5.90(br,1H,C≡C-H),4.91-4.55(br,4H,OCHO),3.20-2.89(br,6H,OCH),2.55-2.40(br,2H,OCOCH),1.75-1.64(br,2H,CH),1.47-1.36(br,2H,CH),1.00-0.90(br,3H,CH).
【実施例】
【0139】
実施例4
(1)化合物(I-2a)の担体(シリカゲル)上への固定化
実施例3の(2)(i)で得られた化合物(I-2a)(90mg)をTHF(4mL)に溶解し、HPLC用のシリカゲル(590mg、ダイソー製:粒径5μm)に物理的に吸着させ、化合物(I-2a)担持シリカゲルを得た。熱重量分析によりシリカゲル上の有機物の割合を算出したところ、13%であった。
窒素雰囲気下、前記化合物(I-2a)担持シリカゲル(600mg)をジメチルスルホキシド(12ml)に分散させた。テトラデカン二酸(270mg,1.0mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(250mg,2.1mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(400mg,2.1mmol)を加え、室温で5時間撹拌した。反応終了後、吸引濾過によりシリカゲルを回収し、ジクロロメタンとテトラヒドロフランを用いて洗浄することで、固定化できなかったポリマーを除去した。真空乾燥後、得られた粉末状物質(560mg)をメタノールに分散させた。2.0Mトリメチルシリルジアゾメタン-ジエチルエーテル溶液(0.3mL,0.6mmol)を加えて5時間振盪機で撹拌を行った。溶媒を溜去した後、ジクロロメタンとテトラヒドロフランを用いて洗浄した。真空乾燥後、固定化シリカゲル(550mg)を回収した。熱重量分析によりシリカゲル上の有機物の割合を算出したところ、13%であった。
【実施例】
【0140】
(2)化合物(I-2b)の担体(シリカゲル)上への固定化
実施例3の(2)(ii)で得られた化合物(I-2b)(90mg)をTHF(4mL)に溶解し、HPLC用のシリカゲル(590mg、ダイソー製:粒径5μm)に物理的に吸着させ、化合物(I-2b)担持シリカゲルを得た。熱重量分析によりシリカゲル上の有機物の割合を算出したところ、13%であった。
窒素雰囲気下、前記化合物(I-2b)担持シリカゲル(500mg)をジメチルスルホキシド(10ml)に分散させた。テトラデカン二酸(220mg,0.85mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(210mg,1.7mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(330mg,1.7mmol)を加え、室温で5時間撹拌した。反応終了後、吸引濾過によりシリカゲルを回収し、ジクロロメタンとテトラヒドロフランを用いて洗浄することで、固定化できなかったポリマーを除去した。真空乾燥後、得られた粉末状物質(440mg)をメタノールに分散させた。2.0Mトリメチルシリルジアゾメタン-ジエチルエーテル溶液(0.3mL,0.6mmol)を加えて5時間振盪機で撹拌を行った。溶媒を溜去した後、ジクロロメタンとテトラヒドロフランを用いて洗浄した。真空乾燥後、固定化シリカゲル(420mg)を回収した。熱重量分析によりシリカゲル上の有機物の割合を算出したところ、2%であった。
【実施例】
【0141】
(3)フェノール性水酸基を有さない化合物(I-2c)担持シリカゲルの調製
実施例3の(2)(iii)で得られた化合物(I-2c)(130mg)をTHF(6mL)に溶解し、HPLC用のシリカゲル(845mg、ダイソー製:粒径5μm)に物理的に吸着させ、化合物(I-2c)担持シリカゲルを得た。熱重量分析によりシリカゲル上の有機物の割合を算出したところ、13%であった。化合物(I-2c)担持シリカゲル(50mg)をジクロロメタンとテトラヒドロフランを用いて洗浄した。真空乾燥後、回収したシリカゲル上の有機物の割合を熱重量分析により算出したところ、0.2%であった。
【実施例】
【0142】
実施例5
(1)カラム内における化合物(I-1a)固定化シリカゲルへの一方向巻きのらせんキラリティーの誘起(らせん化合物(I-1a)固定化シリカゲルへの変換)と、当該カラムを用いたHPLCによる不斉識別
(i)カラム内における化合物(I-1a)固定化シリカゲルへの一方向巻きのらせんキラリティーの誘起
実施例2の(1)(ii)により調製したステンレスカラム(カラムA1)に、光学的に純粋な(R)-(-)-1-フェニルエチルアルコール/トルエン(1/1(v/v))を送液し、カラム内を満たした。25℃で24時間静置した後、ヘキサン/2-プロパノール=97/3(v/v)を流し、カラム内を置換して、(R)-(-)-1-フェニルエチルアルコールを除去することによりカラムA1-aを調製した。
【実施例】
【0143】
(ii)カラムA1-aを用いたHPLCによる不斉識別
上記(i)の操作で調製されたキラルカラム(カラムA1-a)を用いて、3,3’-ジフェニル-1,1’-ビ-2-ナフトールの光学分割をHPLCにより行った(カラム温度:10℃)。溶離液にはヘキサン/2-プロパノール=97/3(v/v)を用いて、流速は0.2mL/分とした。また、溶離液がカラムを素通りする時間tは1,3,5-トリ-tert-ブチルベンゼンの溶出時間から求めた。その結果、k=2.08(-)、α=1.35と見積もられた(図1)。
カラムA1-aを用いて、様々な化合物のラセミ体の光学分割をHPLCにより行った。その結果を表1にまとめて示した。流速は0.2mL/分とした。また、溶離液がカラムを素通りする時間tは1,3,5-トリ-tert-ブチルベンゼンの溶出時間から求めた。
【実施例】
【0144】
【表1】
JP2016140845A_000012t.gif
【実施例】
【0145】
ここで保持係数kとは、最初に溶出するエナンチオマーが充填剤とどの程度強く相互作用しているかどうかを表す指標であり、具体的には、式:k=(t-t)/t(式中、t:最初に溶出するエナンチオマーの溶出時間、t:充填剤と全く相互作用しない物質(1,3,5-トリ-tert-ブチルベンゼン)が溶出してくる時間)で表される式により算出される。また、分離係数αとは、両エナンチオマーの保持係数の比を意味し、具体的には、式:α=k/k(式中、k:先に溶出するエナンチオマーの保持係数、k:後から溶出するエナンチオマーの保持係数)で表される式により算出される。一般には、αが1の場合、溶出時間が全く同じで分離されないことを意味し、α>1であれば、両エナンチオマーが分離可能であることを示し、一般にαが1.2以上であれば、ピークの裾まで完全に分離可能であることを示す。
【実施例】
【0146】
表1によれば、本発明のらせん化合物(I-1a)固定化シリカゲルをHPLCカラムのキラル固定相として使用することにより、ビナフトール類やコバルト錯体等のキラル化合物のラセミ体を極めて効率良く分離できることが確認された。
【実施例】
【0147】
(2)光学異性体の溶出順序の反転化
上記(1)(i)の操作で調製されたカラムA1-aに、光学的に純粋な(S)-(+)-1-フェニルエチルアルコール/トルエン(1/1(v/v))を送液し、カラム内を満たした。25℃で24時間静置した後、ヘキサン/2-プロパノール=97/3(v/v)を流し、カラム内を置換して、(S)-(+)-1-フェニルエチルアルコールを除去することによりカラムA1-bを調製した。カラムA1-bを用いて、3,3’-ジフェニル-1,1’-ビ-2-ナフトールの光学分割をHPLCにより行った(カラム温度:10℃)。溶離液にはヘキサン/2-プロパノール=97/3(v/v)を用いて、流速は0.2mL/分とした。また、溶離液がカラムを素通りする時間tは1,3,5-トリ-tert-ブチルベンゼンの溶出時間から求めた。その結果、k=2.06(+)、α=1.34と見積もられた(図1)。図1の3,3’-ジフェニル-1,1’-ビ-2-ナフトールの分割クロマトグラムから、各光学異性体の溶出順序が逆転したことが確認された。また、上記の操作で得られたカラムA1-bを用いて、様々なラセミ体の光学分割をHPLCにより行った。その結果を表2にまとめて示した。
【実施例】
【0148】
【表2】
JP2016140845A_000013t.gif
【実施例】
【0149】
表2によれば、いずれの化合物においても各光学異性体の溶出順序が逆転したことが確認された。
【実施例】
【0150】
(3)光学異性体の溶出順序の再反転化
上記(2)の操作で調製されたカラムA1-bに、光学的に純粋な(R)-(-)-1-フェニルエチルアルコール/トルエン(1/1(v/v))を送液し、カラム内を満たした。25℃で24時間静置した後、ヘキサン/2-プロパノール=97/3(v/v)を流し、カラム内を置換して、(R)-(-)-1-フェニルエチルアルコールを除去することによりカラムA1-cを調製した。カラムA1-cを用いて、3,3’-ジフェニル-1,1’-ビ-2-ナフトールの光学分割をHPLCにより行った(カラム温度:10℃)。溶離液にはヘキサン/2-プロパノール=97/3(v/v)を用いて、流速は0.2mL/分とした。また、溶離液がカラムを素通りする時間tは1,3,5-トリ-tert-ブチルベンゼンの溶出時間から求めた。その結果、k=2.13(-)、α=1.34と見積もられた(図1)。図1の3,3’-ジフェニル-1,1’-ビ-2-ナフトールの分割クロマトグラムから、各光学異性体の溶出順序が再度逆転したことが確認された。また、上記の操作で得られたカラムA1-cを用いて、様々なラセミ体の光学分割をHPLCにより行った。その結果を表3にまとめて示した。
【実施例】
【0151】
【表3】
JP2016140845A_000014t.gif
【実施例】
【0152】
表3によれば、いずれの化合物においても各光学異性体の溶出順序が再度逆転したことが確認された。
【実施例】
【0153】
(4)カラム内における化合物(I-1b)固定化シリカゲルへの一方向巻きのらせんキラリティーの誘起と、当該カラムを用いたHPLCによる不斉識別
(i)カラム内における化合物(I-1b)固定化シリカゲルへの一方向巻きのらせんキラリティーの誘起
実施例2の(2)(ii)により調製したステンレスカラム(カラムA2)に、光学的に純粋な(R)-(-)-1-フェニルエチルアルコール/トルエン(1/1(v/v))を送液し、カラム内を満たした。25℃で24時間静置した後、ヘキサン/2-プロパノール=97/3(v/v)を流し、カラム内を置換して、(R)-(-)-1-フェニルエチルアルコールを除去することによりカラムA2-aを調製した。
【実施例】
【0154】
(ii)カラムA2-aを用いたHPLCによる不斉識別
上記(i)の操作で調製されたカラム(カラムA2-a)を用いて、様々な化合物のラセミ体の光学分割をHPLCにより行った。その結果を表4にまとめて示した。流速は0.2mL/分とした。また、溶離液がカラムを素通りする時間tは1,3,5-トリ-tert-ブチルベンゼンの溶出時間から求めた。
【実施例】
【0155】
【表4】
JP2016140845A_000015t.gif
【実施例】
【0156】
表4によれば、化合物(I-1b)固定化シリカゲルは、化合物(I-1a)固定化シリカゲルに比べ、効率良くポリマーが固定化され、耐溶剤性は向上するが、いずれのラセミ化合物を用いた場合にも十分な光学分割能が得られないことが確認された。この結果から、ポリマーが担体上に強固に固定化され過ぎるとポリマー自体の自由度が失われ、らせんのキラリティーを十分に誘起することができなくなることに起因するものと推察される。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明によれば、耐溶剤性に優れ、担体上に固定化された固体状態で不斉誘起(らせん構造誘起)や不斉選択性の切り替えが簡便且つ安価に行うことが可能で、且つ光学異性体を効率良く分離することができる実用的な光学異性体分離剤を提供することができる。また、本発明によれば、担体上に固定化される化合物として光学活性化合物を用いる必要がなく、また、らせんのキラリティーの誘起及び/又は反転の際に使用する光学活性な低分子化合物も容易に回収、再利用可能であるため、簡便かつ経済的な光学異性体の分離方法を提供することができる。
図面
【図1】
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