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明細書 :新規オキセタン化合物及びそのポリマー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6218282号 (P6218282)
公開番号 特開2015-205849 (P2015-205849A)
登録日 平成29年10月6日(2017.10.6)
発行日 平成29年10月25日(2017.10.25)
公開日 平成27年11月19日(2015.11.19)
発明の名称または考案の名称 新規オキセタン化合物及びそのポリマー
国際特許分類 C07D 305/08        (2006.01)
H01M  10/0565      (2010.01)
H01B   1/06        (2006.01)
C08G  65/18        (2006.01)
FI C07D 305/08 CSP
H01M 10/0565
H01B 1/06 A
C08G 65/18
請求項の数または発明の数 16
全頁数 31
出願番号 特願2014-088359 (P2014-088359)
出願日 平成26年4月22日(2014.4.22)
審査請求日 平成28年12月2日(2016.12.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】堤 宏守
【氏名】中野 陽平
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100188352、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 一弘
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
【識別番号】100150902、【弁理士】、【氏名又は名称】山内 正子
【識別番号】100177714、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 昌平
【識別番号】100141391、【弁理士】、【氏名又は名称】園元 修一
審査官 【審査官】伊藤 幸司
参考文献・文献 特開2013-43980(JP,A)
特開平10-53626(JP,A)
特開2008-277218(JP,A)
Polymer International,2005年,54,pp.1440-1448
調査した分野 C07D 305/08
C08G 65/18
H01B 1/06
H01M 10/0565
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
式(1)で表されるオキセタン化合物。
【化1】
JP0006218282B2_000049t.gif

[式中、Rは、C1~C6のアルキル基を表す。Rは、C1~C4のアルキレン基を表す。R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、C1~C10のアルキル基、又は式(2)で表される末端にニトリル基を有する基
【化2】
JP0006218282B2_000050t.gif

(式中、Rは、エーテル(-O-)、スルフィド(-S-)及びアミン(-NH-)からなる群から選択される基を1又は2以上含んでもよいC1~C10のアルキレン基を表し、波線は炭素原子に対する共有結合を表す。)を表す。ただし、R、R及びRの少なくとも一つは式(2)で表される末端にニトリル基を有する基である。]
【請求項2】
が、式(2)で表される末端にニトリル基を有する基
【化3】
JP0006218282B2_000051t.gif

(式中、Rは、エーテル(-O-)、スルフィド(-S-)及びアミン(-NH-)からなる群から選択される基を1又は2以上含んでもよいC1~C10のアルキレン基を表し、波線は炭素原子に対する共有結合を表す。)であり、R及びRが水素原子又はC1~C10のアルキル基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
及びRが、式(2)で表される末端にニトリル基を有する基
【化4】
JP0006218282B2_000052t.gif

(式中、Rは、エーテル(-O-)、スルフィド(-S-)及びアミン(-NH-)からなる群から選択される基を1又は2以上含んでもよいC1~C10のアルキレン基を表し、波線は炭素原子に対する共有結合を表す。)であり、Rが水素原子又はC1~C10のアルキル基である請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
、R及びRのすべてが式(2)で表される末端にニトリル基を有する基
【化5】
JP0006218282B2_000053t.gif

(式中、Rは、エーテル(-O-)、スルフィド(-S-)及びアミン(-NH-)からなる群から選択される基を1又は2以上含んでもよいC1~C10のアルキレン基を表し、波線は炭素原子に対する共有結合を表す。)である請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
式(2)で表される末端にニトリル基を有する基が、
【化6】
JP0006218282B2_000054t.gif
である請求項1~4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
がエチル基であり、Rがメチレン基であり、式(2)で表される末端にニトリル基を有する基が
【化7】
JP0006218282B2_000055t.gif
である請求項1~4のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
式(3)で表される繰り返し単位をもつポリマー。
【化8】
JP0006218282B2_000056t.gif

[式中、Rは、C1~C6のアルキル基を表す。Rは、C1~C4のアルキレン基を表す。R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、C1~C10のアルキル基、又は式(2)で表される末端にニトリル基を有する基
【化9】
JP0006218282B2_000057t.gif

(式中、Rは、エーテル(-O-)、スルフィド(-S-)及びアミン(-NH-)からなる群から選択される基を1又は2以上含んでもよいC1~C10のアルキレン基を表し、波線は炭素原子に対する共有結合を表す。)を表す。ただし、R、R及びRの少なくとも一つは式(2)で表される末端にニトリル基を有する基である。nは繰り返し単位の数を示す。]
【請求項8】
が、式(2)で表される末端にニトリル基を有する基
【化10】
JP0006218282B2_000058t.gif

(式中、Rは、エーテル(-O-)、スルフィド(-S-)及びアミン(-NH-)からなる群から選択される基を1又は2以上含んでもよいC1~C10のアルキレン基を表し、波線は炭素原子に対する共有結合を表す。)であり、R及びRが水素原子又はC1~C10のアルキル基である請求項7に記載のポリマー。
【請求項9】
及びRが、式(2)で表される末端にニトリル基を有する基
【化11】
JP0006218282B2_000059t.gif

(式中、Rは、エーテル(-O-)、スルフィド(-S-)及びアミン(-NH-)からなる群から選択される基を1又は2以上含んでもよいC1~C10のアルキレン基を表し、波線は炭素原子に対する共有結合を表す。)であり、Rが水素原子又はC1~C10のアルキル基である請求項7に記載のポリマー。
【請求項10】
、R及びRのすべてが式(2)で表される末端にニトリル基を有する基
【化12】
JP0006218282B2_000060t.gif

(式中、Rは、エーテル(-O-)、スルフィド(-S-)及びアミン(-NH-)からなる群から選択される基を1又は2以上含んでもよいC1~C10のアルキレン基を表し、波線は炭素原子に対する共有結合を表す。)である請求項7に記載のポリマー。
【請求項11】
式(2)で表される末端にニトリル基を有する基が
【化13】
JP0006218282B2_000061t.gif
である請求項7~10のいずれかに記載のポリマー。
【請求項12】
がエチル基であり、Rがメチレン基であり、式(2)で表される末端にニトリル基を有する基が
【化14】
JP0006218282B2_000062t.gif
である請求項7~10のいずれかに記載のポリマー。
【請求項13】
請求項7~12のいずれかに記載のポリマーを含むことを特徴とする固体電解質。
【請求項14】
イオンキャリアーを含むことを特徴とする請求項13に記載の固体電解質。
【請求項15】
補強材を含むことを特徴とする請求項13又は14に記載の固体電解質。
【請求項16】
請求項13~15のいずれかに記載の固体電解質を含むことを特徴とする電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なオキセタン化合物及びそのポリマーに関し、また、該ポリマーを含む固体電解質に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、携帯電話やノート型パソコンといった小型電子機器の電源として使用され、現代社会に不可欠な存在となっている。通常、リチウムイオン電池には、例えばプロピレンカーボネートやエチレンカーボネートといった可燃性有機溶媒が電解質として含まれる。近年、電気自動車や家庭用大型二次電池の電源としてもリチウムイオン電池が使用されるようになってきており、それら電源の大型化に伴い、液漏れや火災の危険の対策をして、安全性のさらなる向上が必要とされている。
【0003】
安全性の問題を解決する手段として、電解質に溶媒を全く含まない固体電解質、すなわち、真性ポリマー電解質のリチウムイオン電池への利用が注目されている。真性ポリマー電解質は、金属塩とポリマーから構成され、溶媒を含まないことに加えて、電池の形状を自由に設計できる利点がある。
【0004】
しかし、真性ポリマー電解質は、液状である電解質と比べてイオン伝導度が低い、柔軟性が低いために電極との密着性が良くない等の問題点がある。
【0005】
本発明の発明者らは、上記の問題を解決すべく検討し、これまでにトリメチレンオキシド構造(-CHCHCHO-)をポリマーの繰り返し構造として有し、側鎖末端にニトリル基を有する基をもつポリマーを開示している(特許文献1、2、3)。前記ポリマーを含む電解質は、トリメチレンオキシド構造によって柔軟性が付与され、ニトリル基によりリチウム塩が解離してイオン伝導度を示すことがわかった。
【0006】
しかし、真性ポリマー電解質の材料として用いられるポリマーの種類は特許文献1及び3に示されるものに限られており、実際に電池に使用可能である、柔軟性と高い伝導度を備えた新規ポリマーをさらに見出し、材料であるポリマーの選択の幅を広げることが課題となっている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2008-277218号公報
【特許文献2】特開2013-043980号公報
【特許文献3】特開2013-043880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
イオン伝導度に優れ、柔軟性に富むポリマー及びその原料となるモノマーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題の解決のために鋭意研究の結果、特定のオキセタン化合物を重合したトリメチレンオキシド構造(-CHCHCHO-)をポリマーの繰り返し構造として有する新規ポリマーが、イオン伝導度に優れ、柔軟性に富むことを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は
(1)式(1)で表されるオキセタン化合物、
【化1】
JP0006218282B2_000002t.gif
[式中、Rは、C1~C6のアルキル基を表す。Rは、C1~C4のアルキレン基を表す。R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、C1~C10のアルキル基、又は式(2)で表される末端にニトリル基を有する基
【化2】
JP0006218282B2_000003t.gif
(式中、Rは、エーテル(-O-)、スルフィド(-S-)及びアミン(-NH-)からなる群から選択される基を1又は2以上含んでもよいC1~C10のアルキレン基を表し、波線は炭素原子に対する共有結合を表す。)を表す。ただし、R、R及びRの少なくとも一つは式(2)で表される末端にニトリル基を有する基である。]
(2)Rが、式(2)で表される末端にニトリル基を有する基
【化3】
JP0006218282B2_000004t.gif
(式中、Rは、エーテル(-O-)、スルフィド(-S-)及びアミン(-NH-)からなる群から選択される基を1又は2以上含んでもよいC1~C10のアルキレン基を表し、波線は炭素原子に対する共有結合を表す。)であり、R及びRが水素原子又はC1~C10のアルキル基である前記(1)に記載の化合物、
(3)R及びRが、式(2)で表される末端にニトリル基を有する基
【化4】
JP0006218282B2_000005t.gif
(式中、Rは、エーテル(-O-)、スルフィド(-S-)及びアミン(-NH-)からなる群から選択される基を1又は2以上含んでもよいC1~C10のアルキレン基を表し、波線は炭素原子に対する共有結合を表す。)であり、Rが水素原子又はC1~C10のアルキル基である前記(1)に記載の化合物、
(4)R、R及びRのすべてが式(2)で表される末端にニトリル基を有する基
【化5】
JP0006218282B2_000006t.gif
(式中、Rは、エーテル(-O-)、スルフィド(-S-)及びアミン(-NH-)からなる群から選択される基を1又は2以上含んでもよいC1~C10のアルキレン基を表し、波線は炭素原子に対する共有結合を表す。)である前記(1)に記載の化合物、
(5)式(2)で表される末端にニトリル基を有する基が、
【化6】
JP0006218282B2_000007t.gif
である前記(1)~(4)のいずれかに記載の化合物、
(6)Rがエチル基であり、Rがメチレン基であり、式(2)で表される末端にニトリル基を有する基が
【化7】
JP0006218282B2_000008t.gif
である前記(1)~(4)のいずれかに記載の化合物、
(7)式(3)で表される繰り返し単位をもつポリマー、
【化8】
JP0006218282B2_000009t.gif

[式中、Rは、C1~C6のアルキル基を表す。Rは、C1~C4のアルキレン基を表す。R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、C1~C10のアルキル基、又は式(2)で表される末端にニトリル基を有する基
【化9】
JP0006218282B2_000010t.gif
(式中、Rは、エーテル(-O-)、スルフィド(-S-)及びアミン(-NH-)からなる群から選択される基を1又は2以上含んでもよいC1~C10のアルキレン基を表し、波線は炭素原子に対する共有結合を表す。)を表す。ただし、R、R及びRの少なくとも一つは式(2)で表される末端にニトリル基を有する基である。nは繰り返し単位の数を示す。]
(8)Rが、式(2)で表される末端にニトリル基を有する基
【化10】
JP0006218282B2_000011t.gif
(式中、Rは、エーテル(-O-)、スルフィド(-S-)及びアミン(-NH-)からなる群から選択される基を1又は2以上含んでもよいC1~C10のアルキレン基を表し、波線は炭素原子に対する共有結合を表す。)であり、R及びRが水素原子又はC1~C10のアルキル基である前記(7)に記載のポリマー、
(9)R及びRが、式(2)で表される末端にニトリル基を有する基
【化11】
JP0006218282B2_000012t.gif
(式中、Rは、エーテル(-O-)、スルフィド(-S-)及びアミン(-NH-)からなる群から選択される基を1又は2以上含んでもよいC1~C10のアルキレン基を表し、波線は炭素原子に対する共有結合を表す。)であり、Rが水素原子又はC1~C10のアルキル基である前記(7)に記載のポリマー、
(10)R、R及びRのすべてが式(2)で表される末端にニトリル基を有する基
【化12】
JP0006218282B2_000013t.gif
(式中、Rは、エーテル(-O-)、スルフィド(-S-)及びアミン(-NH-)からなる群から選択される基を1又は2以上含んでもよいC1~C10のアルキレン基を表し、波線は炭素原子に対する共有結合を表す。)である前記(7)に記載のポリマー、
(11)式(2)で表される末端にニトリル基を有する基が
【化13】
JP0006218282B2_000014t.gif
である前記(7)~(10)のいずれかに記載のポリマー、
(12)Rがエチル基であり、Rがメチレン基であり、式(2)で表される末端にニトリル基を有する基が
【化14】
JP0006218282B2_000015t.gif
である前記(7)~(10)のいずれかに記載のポリマー、
(13)前記(7)~(12)のいずれかに記載のポリマーを含むことを特徴とする固体電解質、
(14)イオンキャリアーを含むことを特徴とする前記(13)に記載の固体電解質、
(15)補強材を含むことを特徴とする前記(13)又は(14)に記載の固体電解質、
(16)前記(13)~(15)のいずれかに記載の固体電解質を含むことを特徴とする電池に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリマーは、イオン伝導度に優れ、柔軟性に富むことから、電池に用いるための真性ポリマー電解質の材料として使用できる。可燃性溶媒を含まないことから、液漏れや火災の心配がなく、大型の電池に使用できる。また、真性ポリマー電解質は固体であり、電池の形状を自由に設計できる。また、本発明のポリマーは、既知の特許文献1に記載の3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン及び特許文献3に記載のN-[2-(2-シアノエトキシ)-1,1-ビス〔(2-シアノエトキシ)メチル〕エチル]-3-エチル-3-オキセタンアミドを重合させて得られるポリマーよりも重合度を大きくできるため、強度をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】1CEESのHNMRチャート
【図2】1CEESの13CNMRチャート
【図3】1CEESのFT-IRチャート
【図4】2CEESのHNMRチャート
【図5】2CEESの13CNMRチャート
【図6】2CEESのFT-IRチャート
【図7】3CEESのHNMRチャート
【図8】3CEESの13CNMRチャート
【図9】3CEESのFT-IRチャート
【図10】P1CEESのHNMRチャート
【図11】P1CEESのFT-IRチャート
【図12】P1CEESのGPCチャート
【図13】P2CEESのHNMRチャート
【図14】P2CEESのFT-IRチャート
【図15】P2CEESのGPCチャート
【図16】P3CEESのHNMRチャート
【図17】P3CEESのFT-IRチャート
【図18】P3CEESのGPCチャート
【図19】P1CEESの各Li/CN値でのイオン伝導度
【図20】P2CEESの各Li/CN値でのイオン伝導度
【図21】P3CEESの各Li/CN値でのイオン伝導度
【発明を実施するための形態】
【0013】
(化合物)
本発明の化合物は、式(1)で表される以下のオキセタン化合物である。

【0014】
【化15】
JP0006218282B2_000016t.gif

【0015】
式中、Rは、C1~C6のアルキル基を表す。Rは、C1~C4のアルキレン基を表す。R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、C1~C10のアルキル基、又は式(2)で表される末端にニトリル基を有する基
【化16】
JP0006218282B2_000017t.gif
(式中、Rは、エーテル(-O-)、スルフィド(-S-)及びアミン(-NH-)からなる群から選択される基を1又は2以上含んでもよいC1~C10のアルキレン基を表し、波線は炭素原子に対する共有結合を表す。)を表す。ただし、R、R及びRの少なくとも一つは式(2)で表される末端にニトリル基を有する基である。

【0016】
における、前記C1~C6のアルキル基とは、炭素数1~6の直鎖又は分岐を有するアルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等を表す。

【0017】
における、前記C1~C4のアルキレン基とは、炭素数1~4の直鎖又は分岐を有するアルキレン基を意味し、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、tert-ブチレン基等を表す。

【0018】
、R及びRにおける、前記C1~C10のアルキル基とは、炭素数1~10の直鎖又は分岐を有するアルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプシル基、n-オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基等を表す。

【0019】
における、前記エーテル(-O-)、スルフィド(-S-)及びアミン(-NH-)からなる群から選択される基を1又は2以上含んでもよいC1~C10のアルキレン基とは、エーテル(-O-)、スルフィド(-S-)、アミン(-NH-)を含んでもよい炭素数1~10の直鎖又は分岐を有するアルキレン基を意味し、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、tert-ブチレン基、へキシレン基、オクチレン基及びドデシレン基、-CH-O-CH-、-CH-O-(CH-、-(CH-O-(CH-、-CH-S-(CH-、-CH-NH-(CH-、-(CH-S-(CH-、-(CH-NH-(CH-等を表す。

【0020】
式(1)で表される化合物は、具体的には、表1に示す化合物を例示することができる。

【0021】
【表1】
JP0006218282B2_000018t.gif

【0022】
(化合物の合成)
本発明の式(1)で表される化合物の合成法は、特に制限されるものではないが、例えば、式(4)で表される3-アルキル-3-オキセタン酸と式(5)で表されるアルコールを、必要に応じて適当な反応溶媒中で、縮合剤及び触媒の存在下又は非存在下、脱水縮合する方法が挙げられる。

【0023】
【化17】
JP0006218282B2_000019t.gif

(R、R、R、R、Rは前記と同じ意味を表す。)

【0024】
前記縮合剤は、通常脱水縮合反応に用いられる縮合剤であれば特に限定されず、例えば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、(ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ)トリスジメチルアミノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、(ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、(7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリスピロリジノホスホニウムホスフェート(PyAOP)、ブロモトリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BroP)、クロロトリス(ピロリジン-1-イル)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyCroP)、3-(ジエトキシホスホリロキシ)-1,2,3-ベンゾトリアジン-4(3H)-オン(DEPBT)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、4-(5,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリン塩酸塩(DMTMM)等が挙げられる。縮合剤の使用量は、特に限定されないが、式(4)で表される3-アルキル-3-オキセタン酸に対する当量比として、1.0~10、好ましくは1.0~3.0の範囲から適宜選択される。

【0025】
前記触媒は、通常脱水縮合反応に用いられ、カルボン酸を活性化する作用があるものであれば特に限定されず、例えば、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)等が挙げられる。触媒の使用量は、特に限定されないが、式(4)で表される3-アルキル-3-オキセタン酸に対する当量比として、0.01~10、好ましくは0.05~1.0の範囲から適宜選択される。

【0026】
前記脱水縮合における溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトニトリル、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。これら反応溶媒は、それぞれ単独で用いても2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。溶媒の使用量は、特に限定されないが、式(4)で表される化合物が、0.01~2(mol/L)、好ましくは0.05~1.0(mol/L)の濃度になる範囲から適宜選択される。

【0027】
前記脱水縮合反応時の温度は、通常0~200℃、好ましくは20~130℃であるが、使用する溶媒によって適宜選択される。反応は空気雰囲気下で行ってもよいが、通常は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしてはアルゴン、ヘリウム、窒素ガス等が挙げられる。

【0028】
前記脱水縮合反応が終了後の反応溶液を必要に応じて濃縮した後、残渣をそのまま、あるいは、適宜な後処理を行った後に、式(1)で表される化合物として用いてもよい。後処理の具体的な方法としては、抽出、晶出、再結晶、クロマトグラフィー等の公知の精製が挙げられる。

【0029】
前記式(4)で表される3-アルキル-3-オキセタン酸は、アルデヒド(6)とホルムアルデヒドを縮合した後に、パティソンの方法(J. Am. Chem. Soc., 1957, 79)により、トリオール(7)からアルコール(8)を合成したのちに、公知の方法(特開2013-43880号公報)によって酸化することで得られる。アルコール(7)は、市販の3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール(ECO)等を用いてもよい。
【化18】
JP0006218282B2_000020t.gif

(Rは前記と同じ意味を表す。)

【0030】
アルコール(5)は、
が、式(2)で表される末端にニトリルを有する基
【化19】
JP0006218282B2_000021t.gif

(式中、R、波線は前記と同じ意味を表す。)であり、R及びRが水素原子又はC1~C10のアルキル基である場合(アルコールI);
、Rが、式(2)で表される末端にニトリルを有する基であり、Rが水素原子又はC1~C10のアルキル基である場合(アルコールII);
、R及びRのすべてが式(2)で表される末端にニトリルを有する基である場合(アルコールIII)
の3つの場合があり、それぞれ以下の方法で合成される。

【0031】
[アルコールIの合成]
式(9)で表されるジオールをハロゲン化した後に、シアン化カリウム、シアン化ナトリウム等のシアン化化合物でニトリル化する方法(方法A)が挙げられるがこれらに限定されない。

【0032】
(方法A)
【化20】
JP0006218282B2_000022t.gif

(R、Rは、前記と同じ意味を表す。R及びRは、水素原子又はC1~C10のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。)

【0033】
特に、式(2)で表される末端にニトリルを有する基が式(2-1)、
【化21】
JP0006218282B2_000023t.gif

(R’は、エーテル(-O-)、スルフィド(-S-)及びアミン(-NH-)からなる群から選択される基を1又は2以上含んでもよいC1~C8のアルキレン基を表し、波線は炭素原子に対する共有結合を表す。)
で表されるとき、式(9-1)で表されるジオールを市販のアクリロニトリルと反応させることによりアルコールIを合成することができる(方法B)。

【0034】
(方法B)
【化22】
JP0006218282B2_000024t.gif

(R’、Rは、前記と同じ意味を表す。R及びRは水素原子又はC1~C10のアルキル基を表す。)

【0035】
式(9)及び式(9-1)で表されるジオールとしては、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ジエチレングリコール、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、2-ヒドロキシエチルスルフィド等が挙げられる。

【0036】
[アルコールIIの合成]
式(11)で表されるトリオールをハロゲン化した後に、シアン化カリウム、シアン化ナトリウム等のシアン化化合物でニトリル化する方法(方法C)等が挙げられるがこれらに限定されない。

【0037】
(方法C)
【化23】
JP0006218282B2_000025t.gif

(R、R、Xは、前記と同じ意味を表す。Rは、水素原子又はC1~C10のアルキル基を表す。)

【0038】
特に、式(2)で表される末端にニトリルを有する基が式(2-1)、
【化24】
JP0006218282B2_000026t.gif

(R’、波線は、前記と同じ意味を表す。)
で表されるとき、式(11-1)で表されるトリオールを市販のアクリロニトリルと反応させることによりアルコールIIを合成することができる(方法D)。

【0039】
(方法D)
【化25】
JP0006218282B2_000027t.gif

(R、R’は前記と同じ意味を表す。Rは、水素原子又はC1~C10のアルキル基を表す。)

【0040】
式(11)及び式(11-1)で表されるトリオールとしては、例えば、下記に示すように式(13)で表されるアルデヒドとホルムアルデヒドとの反応により1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)アルカンとして合成できる。また、市販の1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)エタン、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン等を式(11)及び式(11-1)で表されるトリオールとして使用することもできる。
【化26】
JP0006218282B2_000028t.gif

(Rは、水素原子又はC1~C10のアルキル基を表す。)

【0041】
また、式(11)及び式(11-1)で表されるトリオールは、前記1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)アルカンを酸化、Wittig反応、ヒドロホウ素化によって増炭することによっても合成できる。さらに、前記1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)アルカンと2-ブロモエタノール等のような第1級水酸基と第1級ハロゲンを含むアルカンとをウィリアムソン反応し、エーテル結合を構築し、式(11)及び式(11-1)で表されるトリオールを合成することもできる。

【0042】
、R’が、スルフィド(-S-)を含む、C1~C10のアルキレン基である場合、まず、前記1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)アルカンをアッペル反応等の方法によって水酸基をハロゲン化した後、アルカリの存在下硫化水素と反応させる方法やチオ尿素と反応させる方法等によって、チオールへと誘導する。次に、前記第1級水酸基と第1級ハロゲンを含むアルカンを求核置換反応することで、C1~C10のアルキレン基にスルフィド(-S-)を導入できる。

【0043】
、R’が、アミン(-NH-)を含む、C1~C10のアルキレン基である場合、まず、前記1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)アルカンをアッペル反応等の方法によって水酸基をハロゲン化した後、アンモニア(NH)と反応させる。次に、前記第1級水酸基と第1級ハロゲンを含むアルカンを求核置換反応することで、C1~C10のアルキレン基にアミン(-NH-)を導入できる。

【0044】
[アルコールIIIの合成]
式(13)で表されるテトラオールをハロゲン化した後に、シアン化カリウム、シアン化ナトリウム等のシアン化化合物でニトリル化する方法(方法E)等が挙げられるがこれらに限定されない。

【0045】
(方法E)
【化27】
JP0006218282B2_000029t.gif

(R、R、Xは、前記と同じ意味を表す。)

【0046】
特に、式(2)で表される末端にニトリルを有する基が式(2-1)、
【化28】
JP0006218282B2_000030t.gif

(R’、波線は、前記と同じ意味を表す。)
で表されるとき、式(13-1)で表されるテトラオールを市販のアクリロニトリルと反応させることによりアルコールIIIを合成することができる(方法F)。

【0047】
(方法F)
【化29】
JP0006218282B2_000031t.gif

(R’、Rは前記と同じ意味を表す。)

【0048】
式(13)及び式(13-1)で表されるテトラオールとしては、ペンタエリスリトールが挙げられる。また、ペンタエリスリトールを酸化、Wittig反応、ヒドロホウ素化によって増炭することによっても、式(13)及び式(13-1)で表されるテトラオールを合成できる。さらに、ペンタエリスリトールと2-ブロモエタノール等のような第1級水酸基と第1級ハロゲンを含むアルカンとをウィリアムソン反応し、エーテル結合を構築することによっても、式(13)及び式(13-1)で表されるテトラオールを合成することができる。

【0049】
、R’が、スルフィド(-S-)を含む、C1~C10のアルキレン基である場合、まず、式(13)及び式(13-1)で表されるテトラオールをアッペル反応等の方法によって水酸基をハロゲン化した後、アルカリの存在下硫化水素と反応させる方法やチオ尿素と反応させる方法等によって、チオールへと誘導する。次に、前記第1級水酸基と第1級ハロゲンを含むアルカンを求核置換反応することで、C1~C10のアルキレン基にスルフィド(-S-)を導入できる。

【0050】
、R’が、アミン(-NH-)を含む、C1~C10のアルキレン基である場合、まず、式(13)及び式(13-1)で表されるテトラオールをアッペル反応等の方法によって水酸基をハロゲン化した後、アンモニア(NH)と反応させる。次に、前記第1級水酸基と第1級ハロゲンを含むアルカンを求核置換反応することで、C1~C10のアルキレン基にアミン(-NH-)を導入できる。

【0051】
(ポリマー)
本発明のポリマーは、式(1)で表される化合物を重合することで得られる式(3)で表される以下のポリマーである。
【化30】
JP0006218282B2_000032t.gif

【0052】
式中、R、R、R、R及びRは、前記と同じ意味を表す。nは繰り返し単位の数を示す。

【0053】
式(3)で表されるポリマーを得る方法としては、式(1)で表される化合物を、必要に応じて適当な反応溶媒中で、ルイス酸触媒の存在下又は非存在下、オキセタン環を開環重合する方法が挙げられる。

【0054】
ルイス酸触媒は、オキセタン環の酸素原子に配位して活性化する作用があるものであれば特に限定されず、例えば、塩化亜鉛、塩化鉄、塩化コバルト、塩化スズ、塩化アルミニウム、塩化チタンなどの金属ハロゲン化物、ボロントリフルオリド-エチルエーテルコンプレックス(BF・EtO)等のハロゲン化ホウ素化合物、イットリウムトリフラート、ハフニウムトリフラート等のトリフラート化合物等が挙げられる。触媒の使用量は、特に限定されないが、式(1)で表される化合物に対する当量比として、0.01~10、好ましくは0.1~5.0の範囲から適宜選択される。

【0055】
前記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトニトリル、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。これら反応溶媒は、それぞれ単独で用いても2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。

【0056】
前記重合反応時の温度は、通常-20~200℃、好ましくは20~130℃であるが、使用する溶媒によって適宜選択される。反応は空気雰囲気下で行ってもよいが、通常は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしてはアルゴン、ヘリウム、窒素ガス等が挙げられる。

【0057】
前記重合反応を必要に応じて、エタノール等の溶媒などで反応を停止し、終了後の反応溶液を必要に応じて濃縮した後、残渣をそのまま、あるいは、適宜な後処理を行った後に、式(3)で表されるポリマーとして用いることができる。後処理の具体的な方法としては、抽出、晶出、再沈殿、クロマトグラフィー等の公知の精製が挙げられる。

【0058】
本発明のポリマーの繰り返し単位数であるnは、2~10000であり、好ましくは2~1000である。また、前記ポリマーの分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、5以下であり、好ましくは3以下である。

【0059】
(電解質)
本発明における電解質は、本発明の式(3)で表されるポリマーとイオンキャリアーとして用いられる無機塩類を含み、それ自体単独で固体電解質として電池等に用いることもできるが、成型性や形の維持力を高めるために補強材として他の高分子物質を混合してもよい。

【0060】
イオンキャリアーとして用いられる無機塩類は、従来のリチウム電池等に用いられる1価又は2価の金属塩類が使用できる。例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiSiF、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CFCFSON、LiB(C、LiPF(CFCF、LiTFSA(リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド)等のリチウム塩、Mg(ClO、Mg(CFSO等がのマグネシウム塩等が挙げられるが、これらに限られるものではない。また、好ましいのは、LiPF、LiBF、LiTFSAである。

【0061】
前記無機塩は、一般に固体電解質中に固体電解質全質量(なお後述する補強材は含めない)に対して10~90質量%程度混合される。好ましくは、50~80質量%である。10質量%未満では伝導性や高負荷充放電性に劣る。また、100質量%を超えて多量の無機塩類を混合することは困難であり、全体が硬くなり且つ脆くなり成型性が劣る。

【0062】
前記補強材としての他の高分子物質としては、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-HFPと略す)、ポリアクリロニトリル、アクリル酸エステル、又はメタアクリル酸エステルの重合体、アクリル酸、又はメタアクリル酸の重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドなどの極性基を持つ重合体が使用できるが、特にPVDF-HFPは耐久性があるため好ましい。

【0063】
前記補強材としての他の高分子物質は、一般に本発明のポリマーに対し、200質量%程度まで混合できる。補強材の混合割合が少ないと形成時の強度が劣り、200質量%を超えて大量に混合すれば強度は向上するが、伝導性は低下する。そこで、一般に50~100質量%程度を目安として、適宜目的に応じて混合割合を決めればよい。

【0064】
(電池)
本発明における電池には、本発明の電解質を含むものであれば限定されず、また、その構造は、特に制限されるものではなく、一般の電池、特に公知の固体電解質を用いた一次電池又は二次電池と同じ構造が採用される。例えば、正極と負極及びその間に必要に応じて短絡防止の隔膜を配し、両極間に固体電解質を存在させる。

【0065】
正極としては、イオンキャリアーを吸蔵及び放出することができる材料である。正極としては、リチウムを含む正極活物質として、例えば、LixMO、LiyM(但し、Mは遷移金属、Xは0~1の数、yは0~2の数)等を挙げることができ、具体的には、LiCoO、LiMnO、LiMn、LizMO(Mは、Ni、Mn、Co、Al又はMg、Zは0.9~1.2の数を表す)である。また、リチウムを含まない正極活物質としては、S、MnO、FeO、FeS、V、V13、TiO、TiS、MoS、NbSe或いは、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール等も正極活物質となり得る。
これらの中でも、リチウム含有化合物は高電圧及び高エネルギー密度を得ることができるので好ましい。

【0066】
正極活物質の粒子径は、一般に0.1μm~100μm、好ましくは1μm~10μmである。

【0067】
正極は一般に前記正極活物質に対して導電助剤やバインダ等を加えてペーストとし、正極集電体に塗布する。本発明にあっては、本発明のポリマー自体に付着性があるため、導電助剤やバインダを省略することができ一層有利となる。

【0068】
正極集電体はAl、Ni又はステンレスの箔又は不織布等である。

【0069】
負極は、負極活物としてイオンキャリアーとなる無機塩構成金属、例えばリチウムイオンを吸蔵又は放出することができる材料、例えば金属リチウム等、或いはアモルファスカーボン、黒鉛、熱分解炭素、コークス、グラッシーカーボン、炭素繊維、活性炭、カーボンブラック等、或いは、フェノール樹脂やフラン樹脂の焼成体などの炭化物等も利用できる。更にイオンキャリアーとなる金属イオン、例えばリチウムと他の金属の合金も、負極活物質となり得る。例えば、Ti、Sn、Pb、Al、In、Si、Zn、Sb、Bi、Ga、Ge、As、Ag、Hf、Zr、Yなどの合金も使用することができる。中でもTi、Si及びSn等が好ましい合金材料である。

【0070】
負極活物質は、粒径0.1μm~100μm、好ましくは、1μm~10μmである。

【0071】
負極についても正極と同様、導電助剤やバインダ-を加え、必要により、溶剤に分散してベースとし、負極集電体に塗布するが、正極同様、本発明のポリマー自体の粘性及び延伸を利用することもできる。

【0072】
負極の集電体は、例えばCu、Ni又はステンレス等の箔又は不織布等である。

【0073】
また、必要に応じて用いられるセパレータは、イオン透過性が大きく、機械的強度に優れた絶縁性膜であり、例えば織布、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔膜などが用いられる。
【実施例】
【0074】
以下に、実施例において本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術範囲は、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0075】
実施例1.3-プロポキシ-プロパンニトリル 3-エチル-3-オキセタノエート(3-propoxy-propanenitrile 3-ethyl-3-oxetanoate, 1CEES)の合成
【実施例】
【0076】
【化31】
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【実施例】
【0077】
2wt%水酸化ナトリウム水溶液(150g)、ジクロロメタン(150mL)、1,3-プロパンジオール(86.1mL,1.2mol)、アクリロニトリル(26.2mL,0.4mol)をナスフラスコに加え、室温で16時間撹拌した。反応終了後、ジクロロメタン(150mL)で3回抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水処理を行った。得られた有機層をロータリーエバポレーターを用いて減圧下で溶媒を除去し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/酢酸エチル:ヘキサン 3:1)で精製し、1CEを無色液体として得た。
ナスフラスコに1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(23.00g,0.12mol)、公知の方法(特開2013-043880号公報)で合成したECO(13.01g,0.1mol)、1CE(12.90g,0.1mol)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(6.11g,0.05mol)、ジクロロメタン(150mL)を加え、室温にて16時間攪拌した。反応終了後、食塩水(150mL)で2回洗浄を行った。その後、有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水処理を行った。得られた有機層をロータリーエバポレーターを用いて減圧下で溶媒を除去し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/酢酸エチル-ヘキサン 2:3)で精製し目的生成物(1CEES)を無色液体として得た。得られた1CEESのHNMRを図1に、13CNMRを図2に、FT-IRを図3にそれぞれ示す。
【実施例】
【0078】
実施例2.2,2-[(2-シアノエトキシ)メチル]-ブタン 3-エチル-3-オキセタノエート(2,2-[(2-cyanoethoxy)methyl]-butane 3-ethyl-3-oxetanoate, 2CEES)の合成
【実施例】
【0079】
【化32】
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【実施例】
【0080】
2wt%水酸化ナトリウム水溶液(150mL)、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン(40.25g,0.3mol)、ジクロロメタン(150mL)をナスフラスコに加えた。この混合液を還流させながらアクリロニトリル(43.2mL,0.66mol)を加え、室温にて24時間攪拌した。反応終了後、水(150mL)で2回洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水処理を行った。得られた有機層をロータリーエバポレーターを用いて減圧下で溶媒を除去し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/アセトニトリル:トルエン1:4)で精製し2CEが無色液体として得られた。
ナスフラスコに1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(16.24g,0.0847mol)、ECO(9.18g,0.0706mol)、2CE(16.95g,0.0706mol)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(4.31g,0.0353mol)、ジクロロメタン(200mL)を加え、室温で16時間撹拌した。反応終了後、水(150mL)で2回洗浄を行った。その後、有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水処理を行った。得られた有機層をロータリーエバポレーターを用いて減圧下で溶媒を除去し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/酢酸エチル-ヘキサン1:1)で精製し目的生成物(2CEES)を無色液体として得た。得られた2CEESのHNMRを図4に、13CNMRを図5に、FT-IRを図6にそれぞれ示す。
【実施例】
【0081】
実施例3.2,2-ビス[(2-シアノエトキシ)メチル]-3-プロポキシ-プロパンニトリル 3-エチル-3-オキセタノエート(2, 2-bis[(2-cyanoethoxy)methyl]-3-propoxy-propanenitrile 3-ethyl-3-oxetanoete 、3CEES)の合成
【実施例】
【0082】
【化33】
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JP0006218282B2_000038t.gif
【実施例】
【0083】
2wt%水酸化ナトリウム水溶液(75mL)、ペンタエリスリトール(20.42g,0.15mol)、ジクロロメタン(75mL)、アクリロニトリル(31.44mL,0.48mol)をナスフラスコに加え、13時間還流した。反応終了後、水(75mL)で2回洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水処理を行った。得られた有機層をロータリーエバポレーターを用いて減圧下で溶媒を除去し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/酢酸エチル:ヘキサン 2:1)で精製し3CEを無色液体として得た。
ナスフラスコに1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(11.41g,0.0595mol)、ECO(6.45g,0.0496mol)、3CE(14.65g,0.0496mol)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(3.03g,0.0248mol)、ジクロロメタン(140mL)を加え、室温で40時間撹拌した。反応終了後、水(100mL)で2回洗浄を行った。その後、有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水処理を行った。得られた有機層をロータリーエバポレーターを用いて減圧下で溶媒を除去し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/酢酸エチル-ヘキサン 3:2)で精製し目的生成物(3CEES)を無色液体として得た。得られた3CEESのHNMRを図7に、13CNMRを図8に、FT-IRを図9にそれぞれ示す。
【実施例】
【0084】
実施例4.P1CEESの合成
【実施例】
【0085】
【化34】
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【実施例】
【0086】
30mLナスフラスコに1CEES(1.00g,0.00415mol)を加えた。次に、BF・EtO(0.261mL,0.00207mol)を室温にて加え攪拌した。1分攪拌後、攪拌子が回らなくなり、その後、10分静置した。次に、溶解させるためジクロロメタン(5mL)を加え、更に反応を停止させるため、エタノール(2mL)を加えた。反応停止後、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で溶媒を除去した。その後、良溶媒としてジクロロメタン、貧溶媒としてエタノールを加えて7回再沈澱した。再沈澱後、80℃で、16時間減圧乾燥を行い淡黄色のP1CEES0.45g(収率45%、数平均分子量:約2700g/mol)を得た。得られたP1CEESのHNMRを図10に、FT-IRを図11に、GPCチャートを図12にそれぞれ示す。
【実施例】
【0087】
実施例5.P2CEESの合成
【実施例】
【0088】
【化35】
JP0006218282B2_000040t.gif
【実施例】
【0089】
30mLナスフラスコに2CEES(1.00g,0.00284mol)を加えた。次に、BF・EtO(0.358mL,0.00284mol)を室温にて加え攪拌した。1時間攪拌後、攪拌子が回らなくなり、その後、36時間静置した。次に、溶解させるためジクロロメタン(5mL)を加え、更に反応を停止させるため、エタノール(2mL)を加えた。反応停止後、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で溶媒を除去した。その後、良溶媒としてジクロロメタン、貧溶媒としてエタノールを加えて3回再沈澱した。再沈澱後、80℃で、24時間減圧乾燥を行い淡黄色のP2CEES0.72g(収率72%、数平均分子量:約3700g/mol)を得た。得られたP2CEESのHNMRを図13に、FT-IRを図14に、GPCチャートを図15にそれぞれ示す。
【実施例】
【0090】
実施例6.P3CEESの合成
【実施例】
【0091】
【化36】
JP0006218282B2_000041t.gif
【実施例】
【0092】
30mLナスフラスコに3CEES(1.00g,0.00246mol)を加えた。次に、BF・EtO(0.310mL,0.00246mol)を室温にて加え攪拌した。1時間攪拌後、攪拌子が回らなくなり、その後、30分静置した。次に、溶解させるためジクロロメタン(5mL)を加え、更に反応を停止させるため、エタノール(2mL)を加えた。反応停止後、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で溶媒を除去した。その後、良溶媒としてジクロロメタン、貧溶媒としてエタノールを加え5回再沈澱した。再沈澱後、80℃で、16時間減圧乾燥を行い淡黄色のP3CEES0.82g(収率82%、数平均分子量:約1900g/mol)を得た。得られたP3CEESのHNMRを図16に、FT-IRを図17に、GPCチャートを図18にそれぞれ示す。
【実施例】
【0093】
実施例7.P1CEESを含む電解質膜の調製
【実施例】
【0094】
以下に示す手順で、Li/CNの物質量の比率を変えてP1CEESの電解質膜を調製した。Li/CNは、ニトリル基1mol当たりのリチウムの物質量を表し、例えば、P1CEESとフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-HFP)を重量比1:1で含む膜において、ニトリル基1mol当たりLiTFSAを0.557mol含む場合、Li/CN=0.557と表記する。
サンプル管にLiTFSA、アセトン2mLを加え、LiTFSAを溶解させた。この溶液を実施例4で得られたP1CEES、PVDF-HFPの入ったサンプル管に加え、室温で4時間攪拌した。得られた混合溶液をテフロン(登録商標)板の上に注ぎ、これを板等を用いてテフロン(登録商標)板上に展開してキャストし、60℃、減圧下で17時間溶媒の除去を行い製膜した。LiTFSA、P1CEES、PVDF-HFPの混合した量は下記の表2に示す。
【実施例】
【0095】
【表2】
JP0006218282B2_000042t.gif
【実施例】
【0096】
実施例8.P2CEESを含む電解質膜の調製
【実施例】
【0097】
以下に示す手順で、Li/CNの物質量の比率を変えてP2CEESの電解質膜を調製した。
サンプル管にLiTFSA、アセトン2mLを加え、LiTFSAを溶解させた。この溶液を実施例5で得られたP2CEES、PVDF-HFPの入ったサンプル管に加え、室温で15時間攪拌した。得られた混合溶液をテフロン(登録商標)板の上に注ぎ、これを板等を用いてテフロン(登録商標)板上に展開してキャストし、80℃、減圧下で21時間溶媒の除去を行い製膜した。LiTFSA、P2CEES、PVDF-HFPの混合した量は下記の表3に示す。
【実施例】
【0098】
【表3】
JP0006218282B2_000043t.gif
【実施例】
【0099】
実施例9.P3CEESを含む電解質膜の調製
【実施例】
【0100】
以下に示す手順で、Li/CNの物質量の比率を変えてP3CEESの電解質膜を調製した。
サンプル管にLiTFSA、アセトン2mLを加え、LiTFSAを溶解させた。この溶液を実施例6で得られたP3CEES、PVDF-HFPの入ったサンプル管に加え、室温で4時間攪拌した。得られた混合溶液をテフロン(登録商標)板の上に注ぎ、これを板等を用いてテフロン(登録商標)板上に展開してキャストし、60℃、減圧下で17時間溶媒の除去を行い製膜した。LiTFSA、P3CEES、PVDF-HFPの混合した量は下記の表4に示す。
【実施例】
【0101】
【表4】
JP0006218282B2_000044t.gif
【実施例】
【0102】
実施例10.電解質膜のイオン伝導度の測定
【実施例】
【0103】
交流インピーダンス法により、実施例7~9で製造した高分子固体電解質膜のイオン伝導度を測定した。測定試料は、高分子固体電解質膜を直径1.5cmの円形に切り抜き、スクリューセルを用いて恒温槽[東京理化器械(株)EYELA PRO COOL BATH NCB-3100]中で温度制御を行いながら、20~70℃の温度範囲で測定を行った。なお、測定にはLCRメーター[日置電機(株)3532-80 CHEMICAL IMPEDANCE METER]を使用した。また、イオン伝導度は以下の式を用いて算出した。
[式1]
σ=d/(SZ(cosθ))
(式中、σは伝導率(S/cm)、dはサンプルの膜厚(cm)、Sはサンプルの面積(cm、Zはインピーダンス(Ω)、θは位相角を表す。)
図19は、P1CEESの各Li/CN値でのイオン伝導度を表す。図20は、P2CEESの各Li/CN値でのイオン伝導度を表す。図21は、P3CEESの各Li/CN値でのイオン伝導度を表す。
σ値が大きいほどイオン伝導度が高いことを表し、P3CEESがリチウム塩濃度に関わらず最もイオン伝導性が高いことが明らかになった。また、P1CEES、P2CEES及びP3CEESのすべてにおいて、リチウム塩濃度が0.557のときにイオン伝導度が高いことが明らかになった。
【実施例】
【0104】
実施例11.ガラス転移点(T)の測定
合成したP1CEES、P2CEES、P3CEES及びそれらより製造した電解質膜のガラス転移点(T)を示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry、DSC)により行った。
測定は、各試料を所定のアルミニウム製シール容器に2~5mg秤量し、サンプルシーラーにより密封後、もう一つのシール容器に2~5mgのα-アルミナを詰めた標準試料と共に測定装置にセットし、測定を行った。測定条件は、昇温速度・降温速度を共に10℃/minとし、-100~100℃の温度範囲で測定を行った。
なお、測定には示差走査熱量分析[ブルカーAXS(株) DSC3100S]を使用した。
表5に各ポリマーのTを示す。
【表5】
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表6にP1CEESを含む電解質膜のTを示す。
【表6】
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表7にP2CEESを含む電解質膜のTを示す。
【表7】
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表8にP3CEESを含む電解質膜のTを示す。
【表8】
JP0006218282B2_000048t.gif
【実施例】
【0105】
P1CEES、P2CEES、P3CEESの各ポリマー、及び前記ポリマーを含む電解質膜は、いずれも低いガラス転移温度であり、室温で柔軟性に優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の固体電解質は、通常の電池に含まれる可燃性の溶媒を含まず、液漏れや火災の危険性が少ない。そのため、電気自動車や家庭用大型二次電池等の安全性が求められる電池に使用できる。また、本発明の電解質は固体であるため、電池の形状を自由にできる利点がある。さらに、本発明の固体電解質は柔軟性を有し、電極との密着に優れる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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