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明細書 :固体NMR装置の測定試料管用インサート及び測定試料管セット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-102474 (P2015-102474A)
公開日 平成27年6月4日(2015.6.4)
発明の名称または考案の名称 固体NMR装置の測定試料管用インサート及び測定試料管セット
国際特許分類 G01R  33/30        (2006.01)
G01N  24/08        (2006.01)
FI G01N 24/02 510A
G01N 24/02 510E
G01N 24/08 510S
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 6
出願番号 特願2013-244471 (P2013-244471)
出願日 平成25年11月27日(2013.11.27)
発明者または考案者 【氏名】大橋 竜太郎
【氏名】笹川 匡裕
出願人 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100154966、【弁理士】、【氏名又は名称】海野 徹
審査請求 未請求
要約 【課題】測定試料管内の測定試料を全量回収して保管することができ、更に固体試料の位置決め用スペーサーが不要な固体NMR(核磁気共鳴)装置の測定試料管用インサート及び測定試料管セットを提供する。
【解決手段】固体NMR装置の測定試料管用インサート10は、一方の端部に開口部を備えると共に内部に試料収容部22を備える有底中空の筒状本体20と、前記開口部を封鎖する蓋体30とからなり、測定試料管に対して前記筒状本体の底部側から挿入する。従来のように実験終了後に固体試料Sを試料収容部の外に取り出して回収・保管する必要がなく、固体試料が収容された状態のインサートごと回収・保管することになるので、測定試料回収時のロスを無くすことができる。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
一方の端部に開口部を備えると共に内部に試料収容部を備える有底中空の筒状本体と、前記開口部を封鎖する蓋体とからなり、測定試料管に対して前記筒状本体の底部側から挿入されることを特徴とする固体NMR装置の測定試料管用インサート。
【請求項2】
前記試料収容部を、筒状本体の長手方向のうち固体NMR装置によって磁場が印加される範囲のみに設けることを特徴とする請求項1に記載の測定試料管用インサート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の測定試料管用インサートを内部に挿入して成ることを特徴とする固体NMR装置用の測定試料管セット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、固体試料用の核磁気共鳴(NMR)装置に用いる測定試料管用インサート及び測定試料管セットに関する。
【背景技術】
【0002】
NMR装置では試料が液体の場合にはブラウン運動により異方性相互作用が平均化されてシャープなNMRスペクトルを得られる。一方、試料が固体の場合には化学シフトの異方性が打ち消されないためNMRスペクトルの形状に大きな影響を与えるという問題や、双極子相互作用が打ち消されないためNMRスペクトルの線幅が極端に広がるという問題が生じる。
そこで、固体試料のNMRスペクトルを測定する際には試料管を静磁場の方向から54.7°傾けた状態で高速回転させて上記相互作用を打ち消すMAS(Magic
Angle Spinning)法が用いられる。
固体NMR装置で用いる一般的な測定試料管は、両端又は一方の端部が開口していてその内部に固体試料を収容する筒状本体と当該開口を封鎖する蓋体から構成される。測定試料管は装置内においてラジアル気体軸受とスラスト気体軸受によって周囲に対して非接触状態で保持され、ブレード機能を併せ持つ上記蓋体にエアジェットを噴射することでその軸回りに高速回転する仕組みになっている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平9-178829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の測定試料管では測定試料は筒状本体の内面に接触した状態で収容されることから、測定終了後、測定試料を保管するべく筒状本体から取り出す際に内面に付着してしまい、全量回収が困難になる(測定試料のロスが生じる)という問題がある。特に測定試料が高価・希少な場合には大きな問題となる。
特許文献1に開示された測定試料管は、筒状本体の内部にインサートを挿入し、インサート内に測定試料を収容する構造になっているが、この場合も測定試料の一部が筒状本体の底面に接触する構造になっているため、測定試料を全量回収し、保管することができないという問題は依然として残る。
また、従来の測定試料管は、その底部にスペーサーを挿入して測定試料の位置(測定試料管内の長手方向の位置)を調節することで、測定試料を磁場印加用コイルにできるだけ近付けて感度を高める工夫を施しているが、スペーサーを挿入する手間が煩わしいという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題を考慮して、測定試料管内の測定試料を全量回収して保管することができ、更に固体試料の位置決め用スペーサーが不要な固体NMR装置の測定試料管用インサート及び測定試料管セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の固体NMR装置の測定試料管用インサートは、一方の端部に開口部を備えると共に内部に試料収容部を備える有底中空の筒状本体と、前記開口部を封鎖する蓋体とからなり、測定試料管に対して前記筒状本体の底部側から挿入されることを特徴とする。
また、前記試料収容部を、筒状本体の長手方向のうち固体NMR装置によって磁場が印加される範囲のみに設けることを特徴とする。
本発明の測定試料管セットは、上記測定試料管用インサートを内部に挿入して成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の測定試料管用インサート及び測定試料管セットによれば、測定終了後はインサートを測定試料管から取り出した状態で保管でき、他の実験を行うなどの必要が生じた際には、固体試料をインサートごと取り出し、固体NMR装置に装着すればよい。
従来のように実験終了後に固体試料を試料収容部内から外部に取り出して回収・保管する必要がなく、固体試料を収容した状態のインサートごと回収・保管することになるので、測定試料のロスを無くすことができる。
また、試料収容部を固体NMR装置によって磁場が印加される範囲のみに設けることにすれば、試料収容部の体積(収容可能量)を小さくすることができ、固体試料の使用量を最小限に抑えることができると共に固体試料の位置決め用スペーサーが不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】蓋体の側面図(a)、上面図(b)、底面図(c)及び筒状本体の側面図(d)
【図2】蓋体の縦断面図(a)及び筒状本体の縦断面図(b)
【図3】固体試料を収容し、蓋体を筒状本体に螺合した状態の側面図(a)及び縦断面図(b)
【図4】一般的な測定試料管の側面図(a)及び縦断面図(b)
【図5】測定試料管セットの縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1~図3に示すように本発明の測定試料管用インサート10(以下、単に「インサート10」と表記する場合もある。)は筒状本体20と蓋体30から概略構成される。
筒状本体20はその一方の端部に開口部21を備える有底の部材である。筒状本体20の寸法(外径及び軸方向の長さ)は、インサート10が挿入される測定試料管40(図4参照)の内部寸法に合わせて設定すればよい。
筒状本体20はその長手方向のほぼ中央部に固体試料Sを収容するための試料収容部22を備えており、上記開口部21から試料収容部22までを空間的に繋げることで中空形状になっている。
固体試料Sとは例えば炭素13核で安定同位体標識を施したアミノ酸やタンパク質などが挙げられるが、これに限定されるものではない。

【0010】
試料収容部22の寸法及び位置は特に限定されるものではなく、例えば試料収容部22の内径は、筒状本体20の強度に問題がない範囲において、試料の体積等に合わせて適宜調節すればよい。また、インサート10を測定試料管40内に挿入した状態で、試料収容部22を、測定に必要な試料の量を考慮の上で、その長手方向のうち固体NMR装置によって磁場が印加される範囲のみに設けることにすれば、微量の固体試料SでNMRスペクトルを測定することができると共に固体試料Sの位置決め用スペーサーが不要になるため好ましい。
筒状本体20の材料としては、固体試料Sとの接触によって化学変化を生じない程度の非反応性、MASの回転による遠心力を受けても密封状態をある程度維持できる程度の密封性や非変形性を備えているものが好ましく、更に、大きな磁化率を持っていないことや、NMR測定に悪影響を及ぼす可能性がある不純物等が含有されていないのが好ましい。このような材料として例えば、テフロン(登録商標)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK))等に代表される各種エンジニアリングプラスチックが挙げられる。

【0011】
蓋体30は上記開口部21を封鎖するための部材であり、円形の本体31とその中央からのびる挿入部32から構成される。蓋体30の寸法(本体31の外径及び厚さ)は、本インサート10が挿入される測定試料管40の内部寸法に合わせて設定すればよい。
挿入部32の表面にはネジ山32aが形成されており、開口部21を介して固体試料Sを試料収容部22内に収容した後、開口部21の内面に形成したネジ溝21aに螺合させながら挿入部32を開口部21内に挿入することで蓋体30が開口部21を封鎖する構造になっている。なお、接着剤やヒーター等の周知の手段により蓋体30を開口部21に接着、融着することにしてもよい。
蓋体30の材料としては上記筒状本体20の同様のもの用いることができる。

【0012】
図5は上記インサート10を一般的な測定試料管40に挿入して構成される本発明の測定試料管セット50を示している。
測定試料管40は上下両端が開口した筒状であり、その下部開口41は蓋体30としての機能も有するブレード42によって封鎖されている。また、その上部開口43は本来的には測定試料管40に付属する蓋体30で封鎖されることになるが、本発明では上記インサート10を測定試料管40内に挿入するため付属の蓋体30は不要になる。
そして、試料収容部22内に固体試料Sを収容し、蓋体30を螺合した状態のインサート10を、筒状本体20の底部側から測定試料管40の上部開口43を介して内部に挿入することで固体試料Sを測定試料管40内に定置した状態になる。

【0013】
測定試料管40はNMRスペクトル測定時に高速回転することから、インサート10が内部で空転しないように、筒状本体20及び蓋体30の外周面と測定試料管40の内周面との密着度が高まるように筒状本体20及び蓋体30の外径寸法を設定する必要がある。あるいはインサート10の空転を防ぐ目的で筒状本体20の表面に、測定に悪影響を及ぼさない材料からなる粘着剤等を塗布してもよい。
そして、本発明の測定試料管40を固体NMR装置に装着することにより固体試料SのNMRスペクトルを測定する。
測定終了後はインサート10を測定試料管40から取り出した状態で回収・保管しておき、他の実験を行うなどの必要が生じた際には、保管場所から固体試料Sをインサート10ごと取り出し、測定試料管40に挿入し、固体NMR装置に装着すればよい。
このように、本発明の測定試料管用インサート10及び測定試料管セット50では、実験終了後に固体試料Sを試料収容部22の外に取り出して回収・保管する必要がなく、固体試料Sが収容された状態のインサート10ごと回収・保管することになるので、測定試料回収時のロスを無くすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は、測定試料管内の測定試料を全量回収して保管することができ、更に固体試料の位置決め用スペーサーが不要な固体NMR装置の測定試料管用インサート及び測定試料管セットに関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0015】
S 固体試料
10 測定試料管用インサート
20 筒状本体
21 開口部
21a ネジ溝
22 試料収容部
30 蓋体
31 本体
32 挿入部
32a ネジ山
40 測定試料管
41 下部開口
42 ブレード
43 上部開口
50 測定試料管セット

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4