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明細書 :最大電力追従制御装置及び最大電力追従制御方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-102876 (P2015-102876A)
公開日 平成27年6月4日(2015.6.4)
発明の名称または考案の名称 最大電力追従制御装置及び最大電力追従制御方法
国際特許分類 G05F   1/67        (2006.01)
FI G05F 1/67 A
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 27
出願番号 特願2013-240472 (P2013-240472)
出願日 平成25年11月20日(2013.11.20)
発明者または考案者 【氏名】山本 茂
【氏名】浦 大輔
出願人 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100109210、【弁理士】、【氏名又は名称】新居 広守
審査請求 未請求
テーマコード 5H420
Fターム 5H420BB03
5H420BB14
5H420CC03
5H420DD03
5H420EB13
5H420FF03
5H420FF04
要約 【課題】パラメータ計測及び演算を簡素化しつつ高精度な極値探索が可能な最大電力追従制御装置を提供する。
【解決手段】評価関数y=f(u)の制御対象2に対して出力電力yが最大となるよう変数uを追従制御させる最大電力追従制御装置1は、出力電力yの直流成分を除去した第1信号を出力するHPF部11と、第1信号に第1の摂動信号が乗算された第2信号の低域成分を抽出した第3信号を出力するLPF部12と、第3信号を積分した第4信号を出力する積分部13と、第3信号のみに基づいて設定された判別関数h(ξ)が閾値hthよりも大きい場合、振幅一定の第1の摂動信号を出力し、判別関数h(ξ)が閾値hth以下である場合、振幅が減衰する第2の摂動信号を出力する摂動信号切替部15とを備え、第4信号に第1の摂動信号または第2の摂動信号を加算した信号を制御対象2に入力する。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
出力電力が物理変数の関数として表される発電装置に対して前記出力電力が最大となるよう、前記物理変数を追従制御させる最大電力追従制御装置であって、
前記出力電力の直流成分を除去した信号である第1信号を出力する高域通過部と、
前記第1信号に、第1の摂動信号を乗算する摂動信号乗算部と、
前記第1信号に前記第1の摂動信号が乗算された第2信号の低域成分を抽出した信号であって、前記関数の傾きを反映した信号である第3信号を出力する低域通過部と、
前記第3信号を積分した信号であって、前記関数の傾きに対応した第4信号を出力する積分部と、
前記第1信号~前記第4信号のうち、前記第3信号または前記第4信号である傾き抽出信号のみに基づいて設定された判別関数が所定の閾値よりも大きい場合、振幅が一定である前記第1の摂動信号を出力し、前記判別関数が前記所定の閾値以下である場合、振幅が時間経過とともに減衰する第2の摂動信号を出力する摂動信号切替部とを備え、
前記第4信号に、前記摂動信号切替部から出力された前記第1の摂動信号または前記第2の摂動信号を加算した信号を、前記物理変数として前記発電装置に入力する
最大電力追従制御装置。
【請求項2】
前記判別関数は、前記傾き抽出信号の時間変化を表す関数である
請求項1に記載の最大電力追従制御装置。
【請求項3】
時刻tにおける前記判別関数は、前記第1の摂動信号及び前記第2の摂動信号の周期をTとした場合、前記傾き抽出信号を時刻(t-T)から時刻tまで時間積分した値である第1積分値と、前記傾き抽出信号を時刻(t—nT)から時刻(t-(n-1)T)(nは2以上の整数)まで時間積分した値である第2積分値との差分の絶対値である
請求項1または2に記載の最大電力追従制御装置。
【請求項4】
さらに、
前記関数を変化させる前記発電装置の状態量を検出する状態量検出部と、
前記状態量検出部から取得した前記状態量に応じて、制御対象となる評価関数を、前記発電装置の前記関数から前記状態量に対応した疑似評価関数に置き換える評価関数置換部とを備える
請求項1~3のいずれか1項に記載の最大電力追従制御装置。
【請求項5】
前記評価関数置換部は、前記制御対象となる評価関数を前記発電装置の前記関数から前記疑似評価関数に置き換え、所定の期間が経過した後、前記制御対象となる評価関数を前記疑似評価関数から前記発電装置の前記関数に戻す
請求項4に記載の最大電力追従制御装置。
【請求項6】
前記発電装置は、複数の太陽電池セルが直列接続された太陽電池パネルを含み、
前記関数は、前記物理変数を電圧とする関数であり、
前記状態量検出部は、前記複数の太陽電池セルのそれぞれの日射量を前記状態量として計測し、
前記最大電力追従制御装置は、さらに、
複数の太陽電池セルのそれぞれの日射量と、前記関数における複数の極大値のうち前記関数の最大値が得られる電圧領域との関係を示すテーブルデータを予め格納し、
前記評価関数置換部は、前記状態量検出部から取得した前記日射量に応じて前記関数が複数の極大値を有するか否かを判定し、前記関数が複数の極大値を有すると判定した場合、前記テーブルデータを参照することにより、前記最大値でない極大点が存在する電圧領域から前記最大値である極大点が存在する電圧領域へ向かって単調増加する関数を、前記疑似評価関数として設定する
請求項4または5に記載の最大電力追従制御装置。
【請求項7】
出力電力が物理変数の関数として表される発電装置に対して前記出力電力が最大となるよう前記物理変数を追従制御させる最大電力追従制御方法であって、
前記出力電力の直流成分を除去した信号である第1信号を出力する高域通過ステップと、
前記第1信号に、第1の摂動信号を乗算する摂動信号乗算ステップと、
前記第1信号に前記第1の摂動信号が乗算された第2信号の低域成分を抽出した信号であって、前記関数の傾きを反映した信号である第3信号を出力する低域通過ステップと、
前記第3信号を積分した信号であって、前記関数の傾きに対応した第4信号を出力する積分ステップ部と、
前記第1信号~前記第4信号のうち、前記第3信号または前記第4信号である傾き抽出信号のみに基づいて設定された判別関数が所定の閾値よりも大きい場合、振幅が一定である前記第1の摂動信号を出力し、前記判別関数が前記所定の閾値以下である場合、振幅が時間経過とともに減衰する第2の摂動信号を出力する摂動信号切替ステップと、
前記第4信号に、前記摂動信号切替ステップで出力された前記第1の摂動信号または前記第2の摂動信号を加算した信号を、前記物理変数として前記発電装置に入力する摂動信号加算ステップとを含む
最大電力追従制御方法。
【請求項8】
さらに、
前記関数を変化させる前記発電装置の状態量を検出する状態量検出ステップと、
前記状態量検出ステップで検出した前記状態量に応じて、制御対象となる評価関数を、所定の期間、前記発電装置の前記関数から前記状態量に対応した疑似評価関数に置き換える評価関数置換ステップと、
評価関数置換ステップの後、制御対象となる評価関数を前記疑似評価関数から前記発電装置の前記関数に戻す評価関数復元ステップとを備える
請求項7に記載の最大電力追従制御方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置を最大出力で動作させる最大電力追従制御装置及び最大電力追従制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メガソーラーや住宅用太陽光パネルが普及し、太陽光発電が推進されるようになった。太陽光発電の分野では、気象条件に伴って変化する出力電力を最適動作点で動作させるため、最大電力追従(MPPT:Maximum Power Point Tracking)する制御装置の研究が進められている。
【0003】
上記太陽光発電に代表される発電装置を最大電力で動作させるためのMPPTの一つとして、極値探索制御が挙げられる。
【0004】
極値探索制御は、発電装置の出力電力特性を表す評価関数y=f(u)(uは物理変数)の最大値yと、当該最大値yが得られる最適値uを探す手法の一つである。発電装置は、例えば、太陽電池であり、出力yは太陽電池の出力電力Pであり、物理変数uは電圧Vである。つまり、太陽電池の出力電力は電圧により変化し、この場合の評価関数はP=f(V)となる。
【0005】
極値探索制御を実行する制御装置は、高域通過フィルタと、低域通過フィルタと、積分部と、摂動信号付加部とを有する(非特許文献1)。高域通過フィルタは、出力yの直流成分を除去し、低域通過フィルタは、直流成分が除去された出力yに摂動信号ε(t)が乗算された信号の低域成分を抽出する。積分部は、上記低域成分を積分した結果に基づいて物理変数uを増減させる。そして、上記制御装置は、積分部により調整された物理変数uに摂動信号ε(t)が加算された信号(u+ε(t))を評価関数y=f(u)に入力し、出力yを摂動させながら最大出力点に近づけていく。このようにして、上記制御装置は、高域通過フィルタリング、摂動信号乗算、低域通過フィルタリング、積分、及び摂動信号加算を繰り返す。つまり、物理変数uへの摂動信号の付加により、当該摂動信号による出力yの変化を観測し、当該変化に基づいて出力yが大きくなる方向へと物理変数uを増減させる。結果的に、最適値u及び最大値yの組み合わせが得られる。これにより、発電装置の静特性を事前に測定することなく、評価関数y=f(u)が変化しても、常に、最適値uと最大値yとを抽出することが可能となる。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】浦大輔、他1名、「太陽光発電システムの部分影を考慮した最大電力追従制御」、平成25年電気学会電子・情報・システム部門大会、平成25年9月、p.1334-1339.
【非特許文献2】Scott Moura,et al.,“Lyapunov-based switched extremum seeking for photovoltaic power maximization,” Control Engineering Practice 21,pp.971-980,2013.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した従来の極値探索型の制御装置では、評価関数y=f(u)の変化に対して最適値uと最大値yとを抽出することが可能であるが、定常状態においても一定の摂動信号成分が物理変数uに重畳されている。このため、最大電力点付近で出力yが極限周期軌道に陥り、効率的な稼働が見込めない。
【0008】
そこで、非特許文献2では、さらに、リアプノフ関数に基づいた極値探索制御により、極限周期軌道を除去することが可能な制御装置が提案されている。非特許文献2に記載された制御装置は、高域通過フィルタ、低域通過フィルタ及び積分部で構成された閉ループ系の各パラメータを用いた演算結果により得られたリアプノフ関数Fなるものを定義し、リアプノフ関数Fに応じて、物理変数uに付加すべき摂動信号ε(t)を切り替える。
【0009】
しかしながら、非特許文献2に記載された制御装置では、摂動信号ε(t)を切り替える指標となるリアプノフ関数Fを抽出するにあたり、高域通過フィルタ、低域通過フィルタ及び積分部のそれぞれから出力されるパラメータを計測する必要がある。このため、複数のパラメータ計測のための構成が複雑となる。さらに、計測された複数のパラメータを用い、これらを、座標変換、二次近似及び線形化などを含む煩雑な演算を経てリアプノフ関数Fを得る必要がある。特に、このリアプノフ関数Fの決定には、y=f(u)のような所定の関数形式が必要となる。ところが、評価関数y=f(u)は未知であるので、上記所定の関数形式は想定されたものを用いなければならない。これにより、リアプノフ関数Fは不確かさを含むこととなり、極値探索の精度が低下することが想定され、極値探索の精度という観点からは十分と言えない。
【0010】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、パラメータ計測及び演算を簡素化しつつ高精度な極値探索が可能な最大電力追従制御装置及び最大電力追従制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る最大電力追従制御装置の一形態は、出力電力が物理変数の関数として表される発電装置に対して前記出力電力が最大となるよう、前記物理変数を追従制御させる最大電力追従制御装置であって、前記出力電力の直流成分を除去した信号である第1信号を出力する高域通過部と、前記第1信号に、第1の摂動信号を乗算する摂動信号乗算部と、前記第1信号に前記第1の摂動信号が乗算された第2信号の低域成分を抽出した信号であって、前記関数の傾きを反映した信号である第3信号を出力する低域通過部と、前記第3信号を積分した信号であって、前記関数の傾きに対応した第4信号を出力する積分部と、前記第1信号~前記第4信号のうち、前記第3信号または前記第4信号である傾き抽出信号のみに基づいて設定された判別関数が所定の閾値よりも大きい場合、振幅が一定である前記第1の摂動信号を出力し、前記判別関数が前記所定の閾値以下である場合、振幅が時間経過とともに減衰する第2の摂動信号を出力する摂動信号切替部とを備え、前記第4信号に、前記摂動信号切替部から出力された前記第1の摂動信号または前記第2の摂動信号を加算した信号を、前記物理変数として前記発電装置に入力する。
【0012】
これにより、動作点が最大電力点に近づくにつれ摂動信号の振幅が減衰するので、極限周期軌道に陥らず安定かつ効率的な最大電力追従動作をすることが可能となる。また、摂動信号を切り替える指標となる判別関数の設定には、低域通過部または積分部からの出力である傾き抽出信号のみを計測すればよい。よって、パラメータ計測及び信号の演算が簡素化された高精度な極値探索が可能となる。
【0013】
また、前記判別関数は、前記傾き抽出信号の時間変化を表す関数である。
【0014】
これにより、判別関数の設定は、複数の信号に基づいた座標変換、近似及び線形化などの煩雑な演算を必要とせず、傾き抽出信号の時間変化を監視するだけで実現できる。よって、パラメータ計測及び信号の演算を簡素化できる。
【0015】
また、時刻tにおける前記判別関数は、前記第1の摂動信号及び前記第2の摂動信号の周期をTとした場合、前記傾き抽出信号を時刻(t-T)から時刻tまで時間積分した値である第1積分値と、前記傾き抽出信号を時刻(t—nT)から時刻(t-(n-1)T)(nは2以上の整数)まで時間積分した値である第2積分値との差分の絶対値である。
【0016】
これにより、判別関数の設定は、異なる時刻における傾き抽出信号の積分値を差分するだけで実現できる。よって、パラメータ計測及び信号の演算を簡素化できる。
【0017】
また、さらに、前記関数を変化させる前記発電装置の状態量を検出する状態量検出部と、前記状態量検出部から取得した前記状態量に応じて、制御対象となる評価関数を、前記発電装置の前記関数から前記状態量に対応した疑似評価関数に置き換える評価関数置換部とを備える。
【0018】
これにより、発電装置が多峰性の関数を有する場合であっても、当該関数を、発電装置の状態量に対応した疑似評価関数に置換して極値探索を実行するので、動作点が誤った極大点に収束することを回避できる。
【0019】
また、前記評価関数置換部は、前記制御対象となる評価関数を前記発電装置の前記関数から前記疑似評価関数に置き換え、所定の期間が経過した後、前記制御対象となる評価関数を前記疑似評価関数から前記発電装置の前記関数に戻す。
【0020】
これにより、発電装置が多峰性の関数を有する場合であっても、当該関数を疑似評価関数に置換した後、所定の時間経過後に再び、上記関数へと戻すので、正確な最大電力追従制御が可能となる。
【0021】
また、前記発電装置は、複数の太陽電池セルが直列接続された太陽電池パネルを含み、前記関数は、前記物理変数を電圧とする関数であり、前記状態量検出部は、前記複数の太陽電池セルのそれぞれの日射量を前記状態量として計測し、前記最大電力追従制御装置は、さらに、複数の太陽電池セルのそれぞれの日射量と、前記関数における複数の極大値のうち前記関数の最大値が得られる電圧領域との関係を示すテーブルデータを予め格納し、前記評価関数置換部は、前記状態量検出部から取得した前記日射量に応じて前記関数が複数の極大値を有するか否かを判定し、前記関数が複数の極大値を有すると判定した場合、前記テーブルデータを参照することにより、前記最大値でない極大点が存在する電圧領域から前記最大値である極大点が存在する電圧領域へ向かって単調増加する関数を、前記疑似評価関数として設定する。
【0022】
発電装置が、複数の太陽電池セルで構成されている場合、部分影により、異なる太陽電池セルは異なる日射量を有する場合が想定される。この場合、太陽電池セル間での日射量の差により、発電装置の関数が多峰性(複数の極大値を有する)を示す場合がある。これに対して、本発明の一態様に係る最大電力追従制御装置によれば、上記テーブルデータと、太陽電池セルごとの日射量データとにより、評価関数置換部が、制御対象の評価関数を、適切な疑似評価関数へと置換することができる。よって、天候の変化に対応して制御対象の評価関数を適切に設定できるので、正確な太陽電池パネルの最大電力追従制御が可能となる。
【0023】
なお、本発明は、最大電力追従制御装置として実現できるだけでなく、その最大電力追従制御装置を構成する処理部をステップとする最大電力追従制御方法として実現したり、それらのステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したり、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体として実現したりすることもできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る最大電力追従制御装置及び最大電力追従制御方法によれば、出力電力特性を表す関数に入力される摂動信号を決定するためのパラメータ計測及び演算を簡素化できる。よって、装置構成を簡素化しつつ高精度な極値探索が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来の極値探索型の制御装置を含む制御システムの構成を示す機能ブロック図
【図2】従来の極値探索型の制御装置が最大電力を探索した場合の応答シミュレーション結果を表すグラフ
【図3】非特許文献2に記載された、リアプノフ関数を導入した制御装置を含む制御システムの構成を示す機能ブロック図
【図4】本発明の実施の形態1に係る最大電力追従制御装置を含む制御システムの構成を示す機能ブロック図
【図5】本発明の実施の形態1に係る摂動信号スイッチ部の機能を説明する図
【図6】本発明の実施の形態1に係る最大電力追従制御装置が最大電力を探索した場合の応答シミュレーション結果を表すグラフ
【図7】太陽電池発電装置を含む制御システムの機能ブロック図
【図8A】太陽電池パネルの電圧-電流特性を表すグラフ
【図8B】太陽電池パネルの電圧-電力特性を表すグラフ
【図9】太陽電池発電装置を制御対象とした場合の最大電力追従制御システムの機能ブロック図
【図10】実施例に係る最大電力追従制御装置が最大電力を探索した場合の応答シミュレーション結果を表すグラフ
【図11】本発明の実施の形態2に係る最大電力追従制御装置を含む制御システムの構成を示す機能ブロック図
【図12】本発明の実施の形態2に係る摂動信号切替部の機能を説明する図
【図13】本発明の実施の形態2に係る最大電力追従制御装置が最大電力を探索した場合の応答シミュレーション結果を表すグラフ
【図14】本発明の実施の形態3に係る最大電力追従制御装置を含む制御システムの構成を示す機能ブロック図
【図15】実施の形態3に係る太陽電池パネルの構成及び電気特性を説明する図
【図16】部分影の状態が異なる場合の太陽電池パネルの電気特性を示す図
【図17】部分影が生じた場合の極値探索制御の問題点を説明する図
【図18】疑似評価関数を設定する事例を説明する図
【図19】疑似評価関数への切り替え時の応答特性を表すグラフ
【図20】評価関数置換部とリアプノフ関数に基づいた摂動信号スイッチ部とを有する最大電力追従制御装置を含む制御システムの構成を示す機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0026】
(本発明の基礎となった知見)
本発明者は、「背景技術」の欄において記載した従来の最大電力追従制御装置に関し、以下の問題が生じることを見出した。

【0027】
図1は、従来の極値探索型の制御装置を含む制御システムの構成を示す機能ブロック図である。同図に示された制御システムは、制御対象502の出力を最大にするためのシステムであり、制御対象502と、高域通過フィルタ(HPF)部511と、低域通過フィルタ(LPF)部512と、積分部513とを有する。制御対象502は、物理変数uの関数である評価関数y=f(u)で表され、例えば、太陽電池等の発電装置である。この場合、上記yは出力電力であり、変数uは電圧に相当する。上記制御システムにおいて、HPF部511と、LPF部512と、積分部513とで構成される極値探索型の制御装置は、出力yの最大値yと、当該最大値yが得られる最適値uを探索する。

【0028】
HPF部511は、出力yの直流成分を除去し、LPF部512は、直流成分が除去された出力yに摂動信号ε(t)(=asin(ωt))が乗算された信号の低域成分を抽出する。積分部513は、上記低域成分を積分した積分値に基づいて、変数uを増減させる。そして、上記従来の制御装置は、積分部513により調整された変数uに、摂動信号ε(t)が加算された信号x(=u+ε(t))を評価関数y=f(u)に入力して出力yを摂動させながら最大出力点に近づけていく。このようにして、上記従来の制御装置は、高域通過フィルタリング、摂動信号乗算、低域通過フィルタリング、積分、及び摂動信号加算を繰り返す。つまり、変数uへの摂動信号ε(t)の付加により、当該摂動信号による出力yの変化を観測し、当該変化に基づいて出力yが大きくなる方向へと変数uを増減させる。その結果として、最適値u及び最大値yの組み合わせが得られる。これにより、制御対象502の静特性を事前に測定することなく、評価関数y=f(u)が変化しても、常に、最適値uと最大値yとを抽出することが可能となる。

【0029】
図2は、従来の極値探索型の制御装置が最大電力を探索した場合の応答シミュレーション結果を表すグラフである。図2の上段には、信号x(=u+ε(t))の時間応答特性が示され、下段には、出力yの時間応答特性が示されている。上記制御装置により、信号xは一定の摂動を継続しながら4(a.u.)へと収束し、出力yは10(a.u.)へと収束している。ここで、2秒経過後の定常状態においても、一定の摂動信号ε(t)が変数uに重畳されているため、最大電力点(y=10)付近では、出力yは振動している。つまり、出力yは極限周期軌道に陥るため、効率的な稼働が見込めない。

【0030】
この極限周期軌道の振る舞いを解消すべく、非特許文献2では、リアプノフ関数に基づいた極値探索制御により、極限周期軌道を除去している。

【0031】
図3は、非特許文献2に記載された、リアプノフ関数を導入した極値探索型の制御装置を含む制御システムの構成を示す機能ブロック図である。同図に示された制御システムは、図1に示された従来の制御装置に対して、さらに、リアプノフ関数に基づく摂動信号スイッチ部514を有する。以下、図3に示された制御装置について、図1に示された制御装置と異なる点を中心に説明する。

【0032】
図3に示された極値探索型の制御装置では、積分部513から出力された変数uに対して、以下の式1のように、リアプノフ関数Fに応じて切り替えられる摂動信号ε(t)が加算される。

【0033】
【数1】
JP2015102876A_000003t.gif

【0034】
ここで、aは摂動信号の初期振幅であり、ωは摂動信号の角周波数であり、Fthは閾値であり、γは減衰定数であり、τはF=Fthとなる時刻である。上記式1は、FがFthよりも大きい場合、ε(t)は、時間依存しない一定振幅aを有する正弦波となり、FがFth以下となった場合、ε(t)は、時間経過とともに指数関数的に減衰する振幅を有する正弦波に切り替わることを示している。つまり、出力yが最大点に近づいた場合には、摂動信号ε(t)の振幅を減衰させることで、出力y及び変数uが極限周期軌道に陥らず、安定した最大点動作を実現することが可能となる。

【0035】
ここで、摂動信号ε(t)を切り替えるためのリアプノフ関数Fの導出過程について説明する。まず、リアプノフ関数に基づく摂動信号スイッチ部514は、HPF部511からの出力(y-η)、LPF部512からの出力ξ、及び積分部513からの出力uを計測する。ここで、ηは、出力yの直流成分である。次に、摂動信号スイッチ部514は、u(t)、η(t)及びξ(t)などの、図3に示された閉ループ系の状態方程式を、当該閉ループ系の平衡点(最大電力点)を原点に平行移動させる新たな座標系で変換する。次に、摂動信号スイッチ部514は、新たな座標系で変換された各々の状態方程式を、二次式で近似し非線形システムを得る。次に、摂動信号スイッチ部514は、上記非線形の状態方程式を線形化する。最後に、摂動信号スイッチ部514は、線形化された状態方程式をリアプノフ方程式に代入してリアプノフ関数Fを導出する。

【0036】
つまり、図3に示された極値探索型の制御装置では、摂動信号スイッチ部514が、(1)HPF部511、LPF部512及び積分部513から出力されたパラメータを計測し、(2)閉ループ系の状態方程式を座標変換し、(3)座標変換された状態方程式を二次近似し、(4)二次近似された状態方程式を線形化する、ことによりリアプノフ関数Fを導出する。

【0037】
上述したように、非特許文献2に記載された制御装置では、摂動信号ε(t)を切り替える指標となるリアプノフ関数Fの導出には、上記(1)~(4)のように、各部からの出力であるパラメータの計測、ならびに、座標変換、近似及び線形化などの煩雑な演算が必要となる。このため、複数のパラメータ計測のための構成が複雑となり、また煩雑な上記演算のため制御対象によっては極値探索の精度が低下することが想定され、極値探索の精度という観点からは十分とは言えない。

【0038】
このような問題を解決するために、本発明の一態様に係る最大電力追従制御装置は、出力電力が物理変数の関数として表される発電装置に対して前記出力電力が最大となるよう、前記物理変数を追従制御させる最大電力追従制御装置であって、前記出力電力の直流成分を除去した信号である第1信号を出力する高域通過部と、前記第1信号に、第1の摂動信号を乗算する摂動信号乗算部と、前記第1信号に前記第1の摂動信号が乗算された第2信号の低域成分を抽出した信号であって、前記関数の傾きを反映した信号である第3信号を出力する低域通過部と、前記第3信号を積分した信号であって、前記関数の傾きに対応した第4信号を出力する積分部と、前記第1信号~前記第4信号のうち、前記第3信号または前記第4信号である傾き抽出信号のみに基づいて設定された判別関数が所定の閾値よりも大きい場合、振幅が一定である前記第1の摂動信号を出力し、前記判別関数が前記所定の閾値以下である場合、振幅が時間経過とともに減衰する第2の摂動信号を出力する摂動信号切替部とを備え、前記第4信号に、前記摂動信号切替部から出力された前記第1の摂動信号または前記第2の摂動信号を加算した信号を、前記物理変数として前記発電装置に入力することを特徴とする。

【0039】
本態様によれば、発電装置の出力電力特性を表す関数に入力される摂動信号を決定するためのパラメータ計測及び演算を簡素化できるので、装置構成を簡素化しつつ高精度な極値探索が可能となる。

【0040】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。本発明は、特許請求の範囲によって特定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。

【0041】
(実施の形態1)
[全体構成]
図4は、本発明の実施の形態1に係る最大電力追従制御装置を含む制御システムの構成を示す機能ブロック図である。同図に示された制御システムは、最大電力追従制御装置1と、制御対象2とで構成される。以下、上記制御システムの各構成について説明する。

【0042】
制御対象2は、y=f(u)なる評価関数を有する発電装置である。上記yは発電装置の出力であり、uは物理変数である。発電装置は、例えば、太陽電池であり、この場合には、上記yは出力電力であり、上記uは電圧である。

【0043】
最大電力追従制御装置1は、出力電力が物理変数の関数として表される発電装置に対して当該出力電力が最大となるよう物理変数を追従制御させる制御装置である。最大電力追従制御装置1は、HPF(高域通過フィルタ)部11と、LPF(低域通過フィルタ)部12と、積分部13と、摂動信号乗算部14と、摂動信号切替部15とを備える。

【0044】
HPF部11、LPF部12、積分部13、摂動信号乗算部14、及び制御対象2とで構成された制御系は、極値探索制御を実行する。以下、極値探索制御について説明する。

【0045】
[極値探索制御]
まず、式2のように、y=f(u)なる評価関数に、物理変数u及び摂動成分ε(t)からなるxを入力することにより、出力y(t)は、以下の式2で表される。

【0046】
【数2】
JP2015102876A_000004t.gif

【0047】
上記式2を、二次の項までマクローリン展開すると、出力y(t)は、以下の式3のようになる。

【0048】
【数3】
JP2015102876A_000005t.gif

【0049】
上記式3で表されたy(t)は、高域通過部であるHPF部11を通過する。これにより、HPF部11からの出力は、出力y(t)の直流成分ηが除去された第1信号(y-η)となり、以下の式4で表される。

【0050】
【数4】
JP2015102876A_000006t.gif

【0051】
ここで、図4に示すように、摂動信号乗算部14は摂動信号ε(t)((=asin(ωt))を生成し、当該摂動信号を式4で示された(y(t)-η)に乗算する。これにより、LPF部12の入力信号である第2信号は、以下の式5のようになる。

【0052】
【数5】
JP2015102876A_000007t.gif

【0053】
上記式5で表されたLPF部12の入力信号は、低域通過部であるLPF部12を通過する。これにより、第3信号であるLPF部12の出力ξは、以下の式6のようになる。

【0054】
【数6】
JP2015102876A_000008t.gif

【0055】
上記式6より、LPF部12の出力ξは、評価関数f(u)の傾き(∂f/∂u)に比例することがわかる。つまり、出力ξは、LPF部12の入力信号の低域成分を抽出した信号であって、評価関数y=f(u)の傾きを反映した信号である。従って、出力ξが正であるときは、物理変数uを大きくする方向にf(u)の最大点があり、出力ξが負であるときは、物理変数uを小さくする方向にf(u)の最大点があることがわかる。この関係より、出力ξを積分部13で積分した信号であって評価関数y=f(u)の傾きに対応した信号である第4信号を物理変数uとして評価関数y=f(u)に入力することにより、評価関数f(u)の傾きと物理変数uの増減とが対応づけられる。

【0056】
以上のように、本実施の形態に係る極値探索制御は、評価関数y=f(u)において、u-y平面上でのuに対するyの傾きを摂動信号により取得し、取得されたyの傾きに基づいてuを増減させる。これにより、本実施の形態に係る極値探索制御は、評価関数y=f(u)を事前に測定することなく、当該評価関数が変化しても、最適値uと最大値yとを抽出できる。

【0057】
但し、最適値uと最大値yとが抽出された定常状態において、継続して一定の摂動信号ε(t)が変数uに重畳される場合には、最大電力点付近で出力yが極限周期軌道に陥る。これに対して、本発明の最大電力追従制御装置1は、さらに、摂動信号切替部15を有している。以下、摂動信号切替部15の構成について説明する。

【0058】
[摂動信号切り替え]
摂動信号切替部15は、LPF部12の出力ξを取得し、取得した出力ξを変数とする判別関数h(ξ)と判別閾値hthとを比較し、当該比較結果に基づいて変数uに重畳すべき摂動信号ε(t)を切り替える。以下、図5を用いて、摂動信号切替部15の機能を説明する。

【0059】
図5は、本発明の実施の形態1に係る摂動信号切替部の機能を説明する図である。まず、同図左側のグラフは、式6で示されたLPF部12の出力ξの時間応答特性を表すグラフである。このグラフより、出力ξは、周期T(=2π/ω)を有する振動を繰り返している。ここで、物理変数uが時間の経過とともに変化することにより、出力ξの周期ごとの波形もまた、時間の経過とともに変化する。この出力ξの波形変化を検出するため、以下の式7で表される判別関数h(ξ)を定義する。

【0060】
【数7】
JP2015102876A_000009t.gif

【0061】
上記式7で定義された判別関数h(ξ)は、判別時刻tにおける1周期分(t-T~t)の出力ξを時間積分した値である第1積分値と、当該1周期の直前の1周期分(t-2T~t-T)の出力ξを時間積分した値である第2積分値との差分の絶対値を示している。つまり、判別関数h(ξ)は、出力ξの時間変化を表す関数であり、出力ξが評価関数f(u)の傾きを反映した傾き抽出信号であることから、判別関数h(ξ)は、評価関数f(u)の傾きの変化を表している。例えば、判別関数h(ξ)が大きいほど評価関数f(u)の傾きの時間変化が大きく、判別関数h(ξ)が小さいほど評価関数f(u)の傾きの時間変化が小さい。なお、上記第2積分値が取得される期間は、上記第1積分値が取得される期間の直前の期間であることが望ましいが、これに限られない。上記第2積分値が取得される期間は、時刻(t—nT)から時刻(t-(n-1)T)(nは2以上の整数)であればよい。ここで、上記式7からも明らかであるように、判別関数h(ξ)は、上記第1信号~上記第4信号のうち第3信号のみに基づいて設定された関数である。

【0062】
摂動信号切替部15は、上述した判別関数h(ξ)と、判別閾値hthとを比較することにより、以下の式8のように、摂動信号ε(t)を切り替えて出力する。

【0063】
【数8】
JP2015102876A_000010t.gif

【0064】
ここで、aは摂動信号の初期振幅であり、ωは摂動信号の周期であり、hthは判別閾値であり、γは減衰定数であり、τはh(ξ)=hthとなる時刻である。上記式8は、判別関数h(ξ)が判別閾値hthよりも大きい場合、摂動信号ε(t)は、時間依存しない一定振幅aを有する正弦波となり、判別関数h(ξ)が判別閾値hth以下となった場合、摂動信号ε(t)は、時間経過とともに指数関数的に減衰する振幅を有する正弦波に切り替わることを示している。

【0065】
摂動信号切替部15の上記出力(ε(t))を積分部13からの出力である第4信号(u)に加算した信号(u+ε(t))が、物理変数として制御対象2に入力される。

【0066】
図6は、本発明の実施の形態1に係る最大電力追従制御装置が最大電力を探索した場合の応答シミュレーション結果を表すグラフである。図6の上段には、信号x(=u+ε(t))の時間応答のシミュレーション結果が示され、下段には、出力yの時間応答のシミュレーション結果が示されている。図6の上段に示されているように、信号xは、3秒までは一定の摂動を継続しながら4(a.u.)へと収束し、3~4秒以降では時間経過とともに指数関数的に振幅が減衰する摂動を有しながら4(a.u.)へと収束している。一方、図6の下段に示されているように、出力yは、3秒までは大きな摂動を継続しながら10(a.u.)へと収束し、3~4秒以降では時間経過とともに指数関数的に振幅が減衰する摂動を有しながら10(a.u.)へと収束している。ここで、3~4秒において、摂動信号切替部15が、判別関数h(ξ)と閾値hthとを比較して摂動信号ε(t)を切り替える。このため、出力yは極限周期軌道に陥らず、安定かつ効率的な最大電力追従動作をすることが可能となる。

【0067】
また、本実施の形態に係る最大電力追従制御装置1では、非特許文献2に記載された制御装置と比較して、摂動信号ε(t)を切り替える指標となる判別関数h(ξ)の導出には、HPF部11及び積分部13からの出力パラメータを計測する必要がなく、LPF部12からの出力ξのみを計測すればよい。さらに、座標変換、近似及び線形化などの煩雑な演算を必要とせず、出力ξを一定周期の間積分すればよい。これにより、パラメータ計測及び演算が簡素化された高精度な極値探索が可能となる。

【0068】
以上のように、本実施の形態に係る最大電力追従制御装置1によれば、動作点が最大電力点に近づくにつれ摂動信号の振幅が減衰するので、極限周期軌道に陥らず安定かつ効率的な最大電力追従動作をすることが可能となる。また、摂動信号を切り替える指標となる判別関数の設定には、予めy=f(u)のような所定の関数形式を取得しておく必要がなく、LPF部12からの出力ξのみを計測すればよい。よって、パラメータ計測及び信号の演算が簡素化された高精度な極値探索が可能となる。

【0069】
[実施例]
次に、本実施の形態に係る最大電力追従制御装置1を用いて太陽電池発電装置の出力電力を制御する例を説明する。

【0070】
図7は、太陽電池発電装置を含む制御システムの機能ブロック図である。同図に示された制御システムは、最大電力追従制御装置1と、制御対象である太陽電池発電装置21とを備える。

【0071】
太陽電池発電装置21は、複数の太陽電池セルがアレイ状に配置された太陽電池パネルと、DC/DCコンバータ(昇圧器)とを有する。太陽電池発電装置21の出力端子は、後段に接続されるDC/ACコンバータを介して系統に接続される。太陽電池発電装置21では、以下の式9が成り立つ。

【0072】
【数9】
JP2015102876A_000011t.gif

【0073】
ここで、Vinvは太陽電池発電装置21の出力端に配置されたコンデンサの両端電圧であり、また、DC/ACコンバータの入力電圧である。Vは太陽電池パネルからの直流電圧であり、dはDC/DCコンバータの出力電圧をPWM制御する際のデューティー比である。この場合、最大電力追従制御装置1は、太陽電池パネルからの直流電圧V及び直流電流Iを計測して出力電力P(I×V)を取得し、評価関数をP=f(d)として最大電力追従制御を実行する。具体的には、最大電力追従制御装置1は、太陽電池発電装置21のDC/DCコンバータに最適なデューティー比dを出力する。これにより、後段のDC/ACコンバータに対して一定電圧Vinvが供給される。

【0074】
図8Aは、太陽電池パネルの電圧-電流特性を表すグラフであり、図8Bは、太陽電池パネルの電圧-電力特性を表すグラフである。具体的には、図8A及び図8Bでは、日射量を変化させた場合の特性が表されており、太陽電池パネルを構成する複数の太陽電池セルが同じ性能で、かつ、複数の太陽電池セルに対して日射量が等しい場合を仮定している。また、図8A及び図8Bのグラフは、上記仮定において、太陽電池パネルの電流Iと電圧Vとの関係を表す非線形方程式をニュートン・ラフソン法を用いて数値解析的に解いた結果である。図8Aに示すように、日射量が大きいほど電流Iが大きく流れ、また、図8Bに示すように、日射量が大きいほど出力電力Pは大きい。また、図8Bに示すように、一定の日射量においては、電圧に対する電力は単峰性を示す(1つの極大点を有する)ことがわかる。また、図8Bにおいて、○印を付した点は、最大電力点(MPP:Maximum Power Point)であることを示している。以下、上記特性を有する太陽電池発電装置21が組み込まれた最大電力追従制御システムについて説明する。

【0075】
図9は、太陽電池発電装置を制御対象とした場合の最大電力追従制御システムの機能ブロック図である。同図に示された最大電力追従制御システムは、最大電力追従制御装置1と、太陽電池発電装置21とで構成される。以下、図4に示された制御システムと構成が異なる点を中心に説明する。

【0076】
本実施例の制御システムにおける制御対象は太陽電池発電装置21であり、最大電力追従制御装置1は、物理変数uとして、DC/DCコンバータのデューティー比dを設定し、最大電力Pと当該Pが得られる場合の最適デューティー比dとを追従制御する。つまり、図4に示された制御システムにおける評価関数y=f(u)に対して、本実施例の制御システムにおける太陽電池発電装置21の評価関数は、P=f(d)と置き換えることができる。

【0077】
摂動信号切替部15は、LPF部12の出力ξを取得し、取得した出力ξを変数とする判別関数h(ξ)と判別閾値hthとを比較し、当該比較結果に基づいて変数dに重畳すべき摂動信号ε(t)を切り替える。

【0078】
図10は、実施例に係る最大電力追従制御装置が最大電力を探索した場合の応答シミュレーション結果を表すグラフである。図10の上段には、出力電力Pの追従応答のシミュレーション結果が示され、下段には、判別関数h(ξ)の時間応答のシミュレーション結果が示されている。図10の上段左側のグラフは、日射量の急激な変化(ステップ変化)に対し、最大電力追従制御装置1が最大電力に追従していることを示している。また、図10の上段右側のグラフより、最大電力点に近づくにつれ、極限周期軌道が指数関数的に減衰していることがわかる。一方、図10の下段のグラフに示されたように、判別関数h(ξ)が、閾値hthを横切る状態が表されている。判別関数h(ξ)が閾値hth以下となった時点に呼応して、図10の上段右側のグラフに示された出力電力Pの振幅が減衰し始めていることがわかる。

【0079】
以上のように、本実施例の最大電力追従制御装置1によれば、太陽電池発電装置21の出力電力Pは極限周期軌道に陥らず、安定かつ効率的な最大電力追従動作をすることが可能となる。また、判別関数h(ξ)の導出には、LPF部12からの出力ξのみを計測すればよく、さらに、座標変換、近似及び線形化などの煩雑な演算を必要とせず、出力ξを一定周期の間積分すればよい。これにより、本実施例においても、パラメータ計測及び演算が簡素化された高精度な極値探索が可能となる。

【0080】
(実施の形態2)
実施の形態1に係る最大電力追従制御装置1は、LPF部12の出力ξのみに基づいて判別関数h(ξ)を設定し、当該判別関数h(ξ)と判別閾値hthとの大小関係により、積分部13の出力uに加算する摂動信号ε(t)を切り替えるものである。これに対して、本実施の形態に係る最大電力追従制御装置20は、積分部13の出力uのみに基づいて判別関数h(u)を設定し、当該判別関数h(u)と判別閾値h’thとの大小関係により、積分部13の出力uに加算する摂動信号ε(t)を切り替えるものである。

【0081】
[全体構成]
図11は、本発明の実施の形態2に係る最大電力追従制御装置を含む制御システムの構成を示す機能ブロック図である。同図に示された制御システムは、最大電力追従制御装置20と、制御対象2とで構成される。以下、上記制御システムの各構成について、実施の形態1と同じ点は説明を省略し、異なる点を中心に説明する。

【0082】
最大電力追従制御装置20は、出力電力が物理変数の関数として表される発電装置に対して当該出力電力が最大となるよう物理変数を追従制御させる制御装置である。最大電力追従制御装置20は、HPF部11と、LPF部12と、積分部13と、摂動信号乗算部14と、摂動信号切替部25とを備える。

【0083】
HPF部11、LPF部12、積分部13、摂動信号乗算部14、及び制御対象2とで構成された制御系は、極値探索制御を実行する。極値探索制御については実施の形態1と同様であるので説明を省略する。

【0084】
[摂動信号切り替え]
摂動信号切替部25は、積分部13の出力uを取得し、取得した出力uを変数とする判別関数h(u)と判別閾値h’thとを比較し、当該比較結果に基づいて変数uに重畳すべき摂動信号ε(t)を切り替える。以下、図12を用いて、摂動信号切替部25の機能を説明する。

【0085】
図12は、本発明の実施の形態2に係る摂動信号切替部の機能を説明する図である。まず、同図左側のグラフは、積分部13の出力uの時間応答特性を表すグラフである。このグラフより、出力uは、周期T(=2π/ω)を有する振動を繰り返している。ここで、出力uの周期ごとの波形は、時間の経過とともに変化する。この出力uの波形変化を検出するため、以下の式10で表される判別関数h(ξ)を定義する。

【0086】
【数10】
JP2015102876A_000012t.gif

【0087】
上記式10で定義された判別関数h(u)は、判別時刻tにおける1周期分(t-T~t)の出力uを時間積分した値である第1積分値と、当該1周期の直前の1周期分(t-2T~t-T)の出力uを時間積分した値である第2積分値との差分の絶対値を示している。つまり、判別関数h(u)は、出力uの時間変化を表す関数であり、出力uが評価関数f(u)の傾きに対応した傾き抽出信号であることから、判別関数h(u)は、評価関数f(u)の傾きの変化を表している。例えば、判別関数h(u)が大きいほど評価関数f(u)の傾きの時間変化が大きく、判別関数h(u)が小さいほど評価関数f(u)の傾きの時間変化が小さい。なお、上記第2積分値が取得される期間は、上記第1積分値が取得される期間の直前の期間であることが望ましいが、これに限られない。上記第2積分値が取得される期間は、時刻(t—nT)から時刻(t-(n-1)T)(nは2以上の整数)であればよい。ここで、上記式10からも明らかであるように、判別関数h(u)は、上記第1信号~上記第4信号のうち第4信号のみに基づいて設定された関数である。

【0088】
摂動信号切替部25は、上述した判別関数h(u)と、判別閾値h’thとを比較することにより、以下の式11のように、摂動信号ε(t)を切り替えて出力する。

【0089】
【数11】
JP2015102876A_000013t.gif

【0090】
ここで、aは摂動信号の初期振幅であり、ωは摂動信号の周期であり、h’thは判別閾値であり、γは減衰定数であり、τはh(u)=h’thとなる時刻である。上記式11は、判別関数h(u)が判別閾値h’thよりも大きい場合、摂動信号ε(t)は、時間依存しない一定振幅aを有する正弦波となり、判別関数h(u)が判別閾値h’th以下となった場合、摂動信号ε(t)は、時間経過とともに指数関数的に減衰する振幅を有する正弦波に切り替わることを示している。

【0091】
摂動信号切替部25の上記出力(ε(t))を積分部13からの出力である第4信号(u)に加算した信号(u+ε(t))が、物理変数として制御対象2に入力される。

【0092】
図13は、本発明の実施の形態2に係る最大電力追従制御装置が最大電力を探索した場合の応答シミュレーション結果を表すグラフである。図13の上段には、信号x(=u+ε(t))の時間応答のシミュレーション結果が示され、下段には、出力yの時間応答のシミュレーション結果が示されている。図13の上段に示されているように、信号xは、3秒までは一定の摂動を継続しながら4(a.u.)へと収束し、3~4秒以降では時間経過とともに指数関数的に振幅が減衰する摂動を有しながら4(a.u.)へと収束している。一方、図13の下段に示されているように、出力yは、3秒までは大きな摂動を継続しながら10(a.u.)へと収束し、3~4秒以降では時間経過とともに指数関数的に振幅が減衰する摂動を有しながら10(a.u.)へと収束している。ここで、3~4秒において、摂動信号切替部25が、判別関数h(u)と閾値h’thとを比較して摂動信号ε(t)を切り替える。このため、出力yは極限周期軌道に陥らず、安定かつ効率的な最大電力追従動作をすることが可能となる。

【0093】
また、本実施の形態に係る最大電力追従制御装置20では、摂動信号ε(t)を切り替える指標となる判別関数h(u)の導出には、積分部13からの出力uのみを計測すればよい。よって、実施の形態1に係る最大電力追従制御装置1と同様に、パラメータ計測及び演算が簡素化された高精度な極値探索が可能となる。

【0094】
以上のように、本実施の形態に係る最大電力追従制御装置20によれば、動作点が最大電力点に近づくにつれ摂動信号の振幅が減衰するので、極限周期軌道に陥らず安定かつ効率的な最大電力追従動作をすることが可能となる。また、摂動信号を切り替える指標となる判別関数の設定には、予めy=f(u)のような所定の関数形式を取得しておく必要がなく、積分部13からの出力uのみを計測すればよい。よって、パラメータ計測及び信号の演算が簡素化された高精度な極値探索が可能となる。

【0095】
(実施の形態3)
実施の形態1及び2に係る最大電力追従制御装置1及び20は、制御対象の評価関数が単峰性を有する(出力yの極大値が1つしかない)ことを前提にして最大電力追従制御を行うものである。これに対して、本実施の形態では、制御対象の評価関数が多峰性を有する(出力yの極大値が複数ある)場合に適用可能な最大電力追従制御装置について説明する。

【0096】
図14は、本発明の実施の形態3に係る最大電力追従制御装置を含む制御システムの構成を示す機能ブロック図である。同図に示された制御システムは、最大電力追従制御装置10と、制御対象2とで構成される。以下、上記制御システムの各構成について説明する。

【0097】
[多峰性を有する評価関数]
制御対象2は、y=f(u)なる評価関数を有する発電装置であり、本実施の形態では制御対象2を太陽電池発電装置と想定して、評価関数をP=f(d)としている。実施の形態1の実施例と同様に、上記Pは太陽電池発電装置の出力であり、dはDC/DCコンバータのデューティー比である。ここで、本実施の形態に係る太陽電池発電装置について、実施の形態1に係る太陽電池発電装置と異なる点を中心に説明する。本実施の形態に係る太陽電池発電装置の太陽電池パネルは、直列接続された2つの太陽電池セルで構成されることを想定している。

【0098】
図15は、実施の形態3に係る太陽電池パネルの構成及び電気特性を説明する図である。同図左側に示すように、直列接続された2つの太陽電池セル1及び2に入射する日射量が異なる場合(S≠S)、つまり、部分影が生じている場合、同図右側に示すような電気特性が得られる。例えば、太陽電池セル1がS=1000W/mの日射量を有し、太陽電池セル2がS=400W/mの日射量を有する場合、図15の右上側に示すように、太陽電池パネルの電圧-電流特性は階段状の特性となる。これに対応して、図15の右下側に示すように、太陽電池パネルの電圧-電力特性は、電圧Vに対して多峰性を示している(電力Pの極大値が2つある)。ここで、多峰性を示す電圧-電力特性において、いずれの極大値が最大電力点であるかは、S及びSの日射量の大小関係により決定される。S及びSの日射量の大小関係と電気特性との関係を、図16を用いて説明する。

【0099】
図16は、部分影の状態が異なる場合の太陽電池パネルの電気特性を示す図である。同図には、太陽電池セル1及び2への日射量の差分が異なる3パターンの場合について、それぞれ、電圧-電流特性及び電圧-電力特性が示されている。いずれの場合においても、電圧-電力特性は多峰性を有しているが、|S-S|=200(<S/2)の場合には、最大電力点は高電圧側の極大点Pであり、|S-S|=800(>S/2)の場合には、最大電力点は低電圧側の極大点Pである。また、|S-S|=500(=S/2)の場合には、最大電力点は低電圧側の極大点P及び高電圧側の極大点Pの2点となる。

【0100】
ここで、太陽電池パネル上に部分影が生じた場合の極値探索制御の問題点について説明する。

【0101】
[極値探索制御の問題点]
図17は、部分影が生じた場合の極値探索制御の問題点を説明する図である。図17において、まず、部分影がなく、太陽電池セル1及び2が同じ日射量を有している場合(例えばS=S=1000W/m)、電圧-電力特性は、破線のように単峰性を有する。この場合において極値探索制御が実行されると、電圧Vが摂動しながら初期動作点から最大電力点Pmax1へと移動する。この状態において、太陽電池パネル上に部分影が生じ、|S-S|=800(>S/2)となった場合、電圧-電力特性は、実線のように多峰性へと変化する。この場合、極値探索制御により、最大電力点Pmax1の電圧Vに対応する動作点から、極大点である動作点Pへと探索点が移動し収束する。しかしながら、部分影が発生した場合の最大電力点Pは、Pではなく、より低電圧側に存在する。結果的に、部分影が生じた場合には、動作点がローカルな極大点Pに収束し、最大電力点Pへの正確な最大電力追従ができないといったケースが発生する。

【0102】
これに対して、制御対象が多峰性の評価関数を有する場合であっても、本実施の形態に係る最大電力追従制御装置10によれば、正確な最大電力追従制御が可能となる。以下、最大電力追従制御装置10について説明する。

【0103】
[全体構成]
図14に示すように、本実施の形態に係る最大電力追従制御装置10は、HPF部11と、LPF部12と、積分部13と、摂動信号乗算部14と、摂動信号切替部15と、評価関数置換部26と、日射量検出部27と、テーブルデータ28とを備える。本実施の形態に係る最大電力追従制御装置10は、実施の形態1に係る最大電力追従制御装置1と比較して、評価関数置換部26、日射量検出部27及びテーブルデータ28が付加された点が構成として異なる。以下、本実施の形態に係る最大電力追従制御装置10について、実施の形態1に係る最大電力追従制御装置1と異なる点を中心に説明する。

【0104】
[要部構成]
日射量検出部27は、評価関数を変化させる制御対象2の状態量を計測する制御対象状態量検出部であり、具体的には、太陽電池セル1及び2が受ける日射量を計測する。日射量検出部27は、計測した太陽電池セル1及び2のそれぞれの日射量を評価関数置換部26に出力する。

【0105】
評価関数置換部26は、日射量検出部27から取得した制御対象2の状態量に応じて、制御対象2の評価関数を、疑似評価関数Pfに置き換える。ここで、本実施の形態における疑似評価関数Pfとは、制御対象2の状態量に対応した、擬似的な評価関数である。具体的には、疑似評価関数Pfは、制御対象2の評価関数が多峰性を有すると判断される場合に、当該評価関数の有する複数の極大点のうち、最大点ではない極大点から最大点へ向かって単調増加する関数である。以下、評価関数置換部26の処理手順について説明する。

【0106】
まず、最大電力追従制御装置10は、以下の式12に示される判別式を示すデータを、予めテーブルデータ28として保持している。

【0107】
【数12】
JP2015102876A_000014t.gif

【0108】
ここで、Pは、多峰性を構成する2つの極大点のうち低電圧側の極大点に相当し、Pは、高電圧側の極大点に相当する。つまり、テーブルデータ28は、複数の太陽電池セルのそれぞれの日射量と、評価関数における複数の極大値のうち最大値が得られる電圧領域との関係を示すデータである。

【0109】
次に、評価関数置換部26は、日射量検出部27から取得した太陽電池セル1及び2の日射量S及びSに基づいて、テーブルデータ28を参照し、最大電力点が低電圧側に存在するか、高電圧側に存在するか、または、低電圧側及び高電圧側の双方に存在するかを判定する。なお、評価関数置換部26は、取得した日射量S及びS、ならびに上記テーブルデータ28から、正確な最大動作点を取得するわけではなく、日射量S及びSに基づいて最大動作点の存在する物理変数領域を限定するものである。

【0110】
次に、評価関数置換部26は、上記判定結果に基づいて、現在の評価関数を疑似評価関数Pfに置き換えるか否かを判断する。この判断について、図18を用いて説明する。

【0111】
図18は、疑似評価関数を設定する事例を説明する図である。同図の上側には、太陽電池パネル上に部分影が生じ、|S-S|=800(>S/2)となった場合を想定している。この場合、電圧-電力特性は、実線のように多峰性へと変化する。このとき、評価関数置換部26は、日射量S(=1000W/m)びS(=200W/m)に基づいて、テーブルデータ28(式12)を参照し、CASE1に該当すると判断する。つまり、評価関数置換部26は、日射量検出部27から取得した日射量に応じて評価関数が複数の極大値を有するか否かを判定する。本例では、評価関数置換部26は、最大電力点が低電圧側に存在すると判定し、現在の多峰性の評価関数が有する複数の極大点のうち、最大点ではないPの存在する電圧領域(に属する電圧V)からPの存在する電圧領域(に属する電圧V)へ向かって単調増加する関数を疑似評価関数Pfとし、現在の評価関数を疑似評価関数Pfに置き換えることを選択する。

【0112】
ここで、制御対象の評価関数を疑似評価関数に置き換えるという判定をするのは、制御対象の評価関数が変化した場合において、変化前の最大電力点の存在する物理変数領域と、変化後の最大電力点の存在する物理変数領域とが異なる場合である。図18の例で説明すれば、部分影発生前の単峰性を有する評価関数の最大電力点は高電圧側に存在するが、部分影発生後の多峰性を有する評価関数の最大電力点Pは低電圧側に存在する。よって、評価関数置換部26は、現在の評価関数を疑似評価関数Pfに置き換えることを選択する。

【0113】
なお、図16に示された3つのケースにおいて、いずれの場合であっても、評価関数置換部26は、現在の評価関数を疑似評価関数Pfに置き換えてもよい。例えば、図16の上段の場合、|S-S|=200(<S/2)であり、評価関数置換部26は、テーブルデータ28よりCASE3を選択する。この場合には、評価関数置換部26は、最大電力点が高電圧側に存在すると判定し、現在の多峰性の評価関数が有する複数の極大点のうち、最大点ではないPの存在する電圧領域からPの存在する電圧領域へ向かって単調増加する関数を疑似評価関数Pfとし、現在の評価関数を疑似評価関数Pfに置き換えることを選択する。この場合、疑似評価関数Pfに置き換える必要性はないものの、正確な最大電力追従制御が実行される。

【0114】
次に、最大電力追従制御装置10は、制御対象2の評価関数が疑似評価関数Pfであるとして、極値探索制御を所定の期間Tfの間実行する。これにより、極値探索制御の動作点が、最大点でない極大点を含む電圧領域から、最大点を含む電圧領域へと移動する。

【0115】
次に、評価関数置換部26は、上述した疑似評価関数Pfによる極値探索制御が所定の期間Tfの間実行された後、現在設定されている疑似評価関数Pfを、制御対象2の評価関数へと戻す。これにより、最大点を含む領域へと移動した動作点は、制御対象2の有する真の評価関数に基づいて、最大電力点を高精度に追従する。

【0116】
図19は、疑似評価関数への切り替え時の応答特性を表すグラフである。図19の上段には、電圧Vの時間応答が表されている。部分影発生前(~5秒)では、時間の経過とともに、単峰性の評価関数の高電圧側に存在する最大電力点に収束している。ここで、時刻5秒において部分影が発生し、評価関数が単峰性から多峰性へと変化する。評価関数置換部26は、式12におけるCASE1に該当すると判断し、疑似評価関数PfとしてPの存在する電圧領域からPの存在する電圧領域へ向かって単調増加する関数を選択し、多峰性の評価関数を置き換える。

【0117】
時刻5秒から所定の期間Tfの間、最大電力追従制御装置10は、疑似評価関数Pfについて極値探索制御を実行する。この期間Tfにおいて、動作点は、図19の下段右側に示すように、高電圧側(1.5V~2V)から低電圧側(1V以下)へと移動している。そして、所定の期間Tfの経過後、現在設定されている疑似評価関数Pfを、制御対象2の評価関数へと戻す。これにより、図19下段に示すように、最大電力点を含む領域である低電圧側へと移動した動作点は、制御対象2の有する真の評価関数に基づいて、低電圧領域で最大電力点を高精度に追従する。

【0118】
以上のように、本実施の形態に係る最大電力追従制御装置10によれば、発電装置が多峰性の評価関数を有する場合であっても、当該評価関数を、発電装置の状態量に対応した疑似評価関数に置換して極値探索を実行するので、動作点が誤った極大点に収束することを回避できる。

【0119】
また、評価関数を疑似評価関数に置換した後、所定の期間Tfの経過後に再び、上記評価関数へと戻すので、正確な最大電力追従制御が可能となる。

【0120】
本実施の形態のように、発電装置が、特に、複数の太陽電池セルで構成されている場合、部分影発生による太陽電池セル間での日射量の差により、発電装置の評価関数が多峰性を示す場合がある。これに対して、最大電力追従制御装置10によれば、上記テーブルデータ28と、日射量検出部27からの太陽電池セルごとの日射量データとにより、評価関数置換部26が適切な疑似評価関数Pfを設定することができる。よって、天候等の変化に対応して制御対象の評価関数を適切に設定できるので、正確な太陽電池パネルの最大電力追従制御が可能となる。

【0121】
なお、本実施の形態では、例えば、図18の下段に示された疑似評価関数Pfは、以下のような、電圧Vの二次関数に設定される。

【0122】
【数13】
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【0123】
ここで、α、β、γは、最大点ではないPの存在する電圧領域(に属する電圧V)からPの存在する電圧領域(に属する電圧V)へ向かって単調増加するような関数の定数である。この場合、期間Tfの長さの下限は、例えば、以下の式14によって決定される。

【0124】
【数14】
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【0125】
ここで、kは積分部13の比例ゲインであり、aは摂動信号の初期振幅であり、VinvはDC/ACコンバータの入力電圧である。なお、期間Tfの長さは、これに限られない。期間Tfの長さは、上記式14で規定される長さよりも長く設定されることが望ましい。また、期間Tfの長さは、制御対象の応答性能によっても調整される。

【0126】
(その他)
以上、本発明に係る最大電力追従制御装置について、実施の形態1及び2に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態1及び2に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。

【0127】
例えば、実施の形態3に係る最大電力追従制御装置10の摂動信号切替部15を、実施の形態2に係る最大電力追従制御装置20の摂動信号切替部25に置き換えてもよい。

【0128】
また、摂動信号切替部15は、コンピュータ等に備えられるプロセッサで実行されるプログラムによってソフトウェア的に実現されてもよいし、半導体集積回路等の専用の電子回路によってハードウェア的に実現されてもよい。

【0129】
なお、本発明は、上述した最大電力追従制御装置として実現できるだけでなく、その最大電力追従制御装置を構成する処理部をステップとする最大電力追従制御方法として実現することができる。本発明の最大電力追従制御方法は、出力電力が物理変数の関数として表される発電装置に対して当該出力電力が最大となるよう物理変数を追従制御させる最大電力追従制御方法であって、出力電力の直流成分を除去した信号である第1信号を出力する高域通過ステップと、第1信号に、第1の摂動信号を乗算する摂動信号乗算ステップと、第1信号に第1の摂動信号が乗算された第2信号の低域成分を抽出した信号であって関数の傾きを反映した信号である第3信号を出力する低域通過ステップと、第3信号を積分した信号であって上記関数の傾きに対応した第4信号を出力する積分ステップ部と、第1信号~第4信号のうち第3信号または第4信号である傾き抽出信号のみに基づいて設定された判別関数が所定の閾値よりも大きい場合、振幅が一定である第1の摂動信号を出力し、判別関数が所定の閾値以下である場合、振幅が時間経過とともに減衰する第2の摂動信号を出力する摂動信号切替ステップと、第4信号に摂動信号切替ステップで出力された第1の摂動信号または第2の摂動信号を加算した信号を、物理変数として発電装置に入力する摂動信号加算ステップとを含む。

【0130】
これにより、動作点が最大電力点に近づくにつれ摂動信号の振幅が減衰するので、極限周期軌道に陥らず安定かつ効率的な最大電力追従動作をすることが可能となる。また、摂動信号を切り替える指標となる判別関数の設定には、低域通過部または積分部からの出力である傾き抽出信号のみを計測すればよい。よって、パラメータ計測及び信号の演算が簡素化された高精度な極値探索が可能となる。

【0131】
また、さらに、関数を変化させる発電装置の状態量を検出する状態量検出ステップと、前記状態量検出ステップで検出した前記状態量に応じて、制御対象となる評価関数を、所定の期間、前記発電装置の前記関数から前記状態量に対応した疑似評価関数に置き換える評価関数置換ステップと、評価関数置換ステップの後、制御対象となる評価関数を前記疑似評価関数から前記発電装置の前記関数に戻す評価関数復元ステップとを備えてもよい。

【0132】
これにより、発電装置が多峰性の関数を有する場合であっても、当該関数を、発電装置の状態量に対応した疑似評価関数に置換して極値探索を実行するので、動作点が誤った極大点に収束することを回避でき、正確な最大電力追従制御が可能となる。

【0133】
また、本発明は、最大電力追従制御方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであるとしても良いし、上記コンピュータプログラムからなるデジタル信号であるとしても良い。

【0134】
さらに、本発明は、上記コンピュータプログラムまたは上記デジタル信号をコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリなどに記録したものとしても良い。また、これらの非一時的な記録媒体に記録されている上記デジタル信号であるとしても良い。

【0135】
また、本発明は、上記コンピュータプログラムまたは上記デジタル信号を、電気通信回線、無線または有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしても良い。

【0136】
また、本発明は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、上記メモリは、上記コンピュータプログラムを記憶しており、上記マイクロプロセッサは、上記コンピュータプログラムに従って動作するとしても良い。

【0137】
また、上記プログラムまたは上記デジタル信号を上記非一時的な記録媒体に記録して移送することにより、または上記プログラムまたは上記デジタル信号を、上記ネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしても良い。

【0138】
なお、実施の形態3に係る最大電力追従制御装置10は、HPF部11と、LPF部12と、積分部13と、摂動信号乗算部14と、摂動信号切替部15と、評価関数置換部26と、日射量検出部27と、テーブルデータ28とを備える。しかしながら、多峰性の評価関数を有する制御対象の最大電力を正確に追従する制御装置という観点からは、上記第1信号~上記第4信号のうち第3信号のみに基づいて設定された判別関数により摂動信号を切り替える摂動信号切替部15は、必須の構成要素ではない。上記観点における制御装置は、例えば、摂動信号切替部15に替えて、図3に示されたリアプノフ関数に基づいた摂動信号スイッチ部514を備えてもよい。以下、本制御装置について図20を用いて説明する。

【0139】
図20は、評価関数置換部とリアプノフ関数に基づいた摂動信号スイッチ部とを有する最大電力追従制御装置を含む制御システムの構成を示す機能ブロック図である。同図に示されるように、本最大電力追従制御装置は、HPF部11と、LPF部12と、積分部13と、摂動信号スイッチ部514と、評価関数置換部26と、日射量検出部27と、テーブルデータ28とを備える。本最大電力追従制御装置は、実施の形態3に係る最大電力追従制御装置10と比較して、摂動信号乗算部14及び摂動信号切替部15がなく、摂動信号スイッチ部514が付加されている点が構成として異なる。以下、実施の形態3に係る最大電力追従制御装置10と同じ点は説明を省略し、異なる点のみ説明する。

【0140】
本最大電力追従制御装置は、積分部513から出力された変数uに対して、式1に示すように、リアプノフ関数Fに応じて切り替えられる摂動信号ε(t)が加算される。また、多峰性の評価関数に対して、疑似評価関数への置き換えを実行する構成は実施の形態3に係る最大電力追従制御装置10と同じである。

【0141】
上記構成の場合、リアプノフ関数Fの導出に関し、座標変換、近似及び線形化などの煩雑な演算が必要となるため、パラメータ計測及び演算を簡素化することはできないが、部分影発生などにより評価関数が多峰性を示す場合には、評価関数置換部26が適切な疑似評価関数Pfを設定するので、正確な太陽電池パネルの最大電力追従制御が可能となる。

【0142】
また、実施の形態3では、2つの極大点を有する評価関数に対する最大電力追従制御を紹介したが、これに限られない。本発明の最大電力追従制御装置10は、評価関数の極大点が3点以上存在する場合にも拡張することが可能である。

【0143】
また、実施の形態1~3において、発電装置として太陽電池発電装置を例示したが、これに限られず、風力発電装置や燃料電池発電装置、およびこれらを分散配置した分散電源などにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明は、最大電力追従制御装置として、特に、パラメータ計測及び演算を簡素化しつつ高精度な極値探索が可能となる太陽光発電システムに対して有用である。
【符号の説明】
【0145】
1、10、20 最大電力追従制御装置
2、502 制御対象
11、511 高域通過フィルタ部(HPF部)
12、512 低域通過フィルタ部(LPF部)
13、513 積分部
14 摂動信号乗算部
15、25 摂動信号切替部
21 太陽電池発電装置
26 評価関数置換部
27 日射量検出部
28 テーブルデータ
514 摂動信号スイッチ部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8A】
7
【図8B】
8
【図9】
9
【図10】
10
【図11】
11
【図12】
12
【図13】
13
【図14】
14
【図15】
15
【図16】
16
【図17】
17
【図18】
18
【図19】
19
【図20】
20