TOP > 国内特許検索 > 粘弾性可変装置 > 明細書

明細書 :粘弾性可変装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-045369 (P2015-045369A)
公開日 平成27年3月12日(2015.3.12)
発明の名称または考案の名称 粘弾性可変装置
国際特許分類 F16F  15/03        (2006.01)
C08L  21/00        (2006.01)
C08K   3/02        (2006.01)
F16F   6/00        (2006.01)
F16F   1/36        (2006.01)
FI F16F 15/03 D
C08L 21/00
C08K 3/02
F16F 6/00
F16F 1/36 C
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2013-176534 (P2013-176534)
出願日 平成25年8月28日(2013.8.28)
発明者または考案者 【氏名】井上 敏郎
【氏名】小松崎 俊彦
出願人 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001379、【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 3J048
3J059
4J002
Fターム 3J048AA01
3J048BB05
3J048BD04
3J048BD08
3J048BE09
3J048CB01
3J048CB12
3J048EA01
3J048EA07
3J048EA16
3J048EA26
3J059AA09
3J059AB03
3J059BA41
3J059BC02
3J059BC07
3J059BC11
3J059DA36
3J059GA02
3J059GA09
3J059GA14
3J059GA50
4J002AC031
4J002AC061
4J002BB151
4J002CP031
4J002DA086
4J002DC006
4J002EN086
4J002EN096
4J002FD206
4J002GR00
要約 【課題】 粘弾性可変装置において、電力の消費量を低減する。
【解決手段】 粘弾性可変装置1において、磁性粒子12が内部に分散され、印加される磁場の強さに応じて弾性率が変化する磁気粘弾性エラストマ2と、磁気粘弾性エラストマに磁場を印加する永久磁石3と、磁気粘弾性エラストマに磁場を印加すると共に、印加する磁場を変化させる電磁石4とを有するようにした。また、電磁石は、永久磁石の磁場と同じ向き、又は永久磁石の磁場と反対の向きの磁場を発生するようにした。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
磁性粒子が内部に分散され、印加される磁場の強さに応じて弾性率が変化する磁気粘弾性エラストマと、
前記磁気粘弾性エラストマに磁場を印加する永久磁石と、
前記磁気粘弾性エラストマに磁場を印加すると共に、印加する磁場を変化させる電磁石とを有することを特徴とする粘弾性可変装置。
【請求項2】
前記電磁石は、前記永久磁石の磁場と同じ向き、又は前記永久磁石の磁場と反対の向きの磁場を発生することを特徴とする請求項1に記載の粘弾性可変装置。
【請求項3】
前記永久磁石を変位可能に支持する永久磁石支持部材を有し、
前記電磁石が発生する磁場に応じて前記永久磁石が前記磁気粘弾性エラストマに対して変位することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粘弾性可変装置。
【請求項4】
前記電磁石は、前記磁気粘弾性エラストマと正対するように配置された環状のコイルと、コイルの中心部に設けられたコアとを有し、
前記永久磁石支持部材は、前記永久磁石を前記コアに対して変位可能に支持することを特徴とする請求項3に記載の粘弾性可変装置。
【請求項5】
前記電磁石は、前記磁気粘弾性エラストマと正対するように配置された環状のコイルを有し、
前記永久磁石支持部材は、前記永久磁石を前記コイルの中心部に対して出没可能に支持することを特徴とする請求項3に記載の粘弾性可変装置。
【請求項6】
前記電磁石は、前記磁気粘弾性エラストマと正対するように配置された環状のコイルを有し、
前記永久磁石は、前記コイルの中心部に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粘弾性可変装置。
【請求項7】
前記磁気粘弾性エラストマの側面に沿うように設けられた磁性体を更に有し、
前記磁性体は、前記永久磁石及び前記電磁石の磁場によって磁化されることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1つの項に記載の粘弾性可変装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、粘弾性可変装置に関する。粘弾性可変装置は、印加される磁場の強さに応じて弾性率が変化する磁気粘弾性エラストマと、磁気粘弾性エラストマに磁場を印加する磁場印加手段とを有する。
【背景技術】
【0002】
磁場の作用により磁気分極する磁性粒子を粘弾性エラストマの内部に分散させた磁気粘弾性エラストマが公知となっている(例えば、特許文献1)。磁気粘弾性エラストマ中の磁性粒子は、磁場が印加されたときに、分極し、互いに磁気的結合を形成する。これにより、粘弾性エラストマは、内部に磁性粒子が連鎖的に結合した網目構造が形成され、弾性率(剛性)及び粘性率が増大する。磁性粒子の分極及び磁気的結合の程度は、印加される磁場の強さに応じて変化するため、印加する磁場の強さ及び向きを制御することによって磁気粘弾性エラストマの粘弾性を制御することができる。磁場を印加する磁場印加手段としては、発生する磁場の強さ及び向きを変更可能な電磁石が用いられる。粘弾性可変装置は、エネルギーの伝達や吸収、防振のための装置として利用され、例えば自動車のエンジンマウントや、ブッシュ、ダンパ、ショックアブソーバ、クラッチ、荷重センサ等に利用される。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平4-266970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような各種装置として粘弾性可変装置を使用する場合には、通常時には基準となる所定の弾性を発現するようにし、外部から加わる荷重や振動に応じて基準値から弾性を増減させるように制御する手法が考えられる。このような手法では、基準となる弾性を発現するために通常時から一定の磁場を磁気粘弾性エラストマに印加し、弾性を変化させる場合に磁場を通常時の強さ及び向きから変化させる。そのため、電磁石を磁気印加手段として使用する場合には、通常時から磁気粘弾性エラストマが基準となる粘弾性を発現するように、電磁石に常に電力を供給して所定の磁場を発生させる必要がある。そのため、粘弾性可変装置は、常に電力を消費することになる。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであって、粘弾性可変装置において、電力の消費量を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、粘弾性可変装置(1)であって、磁性粒子(12)が内部に分散され、印加される磁場の強さに応じて弾性率が変化する磁気粘弾性エラストマ(2)と、前記磁気粘弾性エラストマに磁場を印加する永久磁石(3)と、前記磁気粘弾性エラストマに磁場を印加すると共に、印加する磁場を変化させる電磁石(4)とを有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、永久磁石が発生する磁場が磁気粘弾性エラストマに印加され、磁気粘弾性エラストマは基準となる所定の弾性率(剛性)及び粘性率を発現する。そして、電磁石が発生する磁場が磁気粘弾性エラストマに印加されることによって、磁気粘弾性エラストマは基準となる弾性率から増減した弾性を発現する。永久磁石は外部からのエネルギー供給を必要としないため、粘弾性可変装置は基準となる弾性を発現するために、電力等のエネルギーを消費しない。そのため、粘弾性可変装置は、省エネルギーな装置として構成される。
【0008】
また、上記の発明において、前記電磁石は、前記永久磁石の磁場と同じ向き、又は前記永久磁石の磁場と反対の向きの磁場を発生するとよい。また、永久磁石のN極及びS極を結ぶ線分と、電磁石のN極及びS極を結ぶ線分とが互いに平行となっていることが好ましい。また、永久磁石のN極及びS極を結ぶ線分と、電磁石のN極及びS極を結ぶ線分とが、1つの直線上に配置されることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、永久磁石の磁場と同じ向きの磁場を電磁石が発生することによって、磁気粘弾性エラストマに印加される磁場が強くなり、磁気粘弾性エラストマの弾性率が大きくなる。一方、永久磁石が発生する磁場と反対の向きの磁場を電磁石が発生することによって、永久磁石が発生する磁場と電磁石が発生する磁場とが打ち消し合い、磁気粘弾性エラストマに印加される磁場が弱くなり、磁気粘弾性エラストマの弾性率が小さくなる。永久磁石の磁場と反対の向きの磁場を電磁石が発生する場合においては、電磁石が発生する磁場の強さを調整することによって、磁気粘弾性エラストマに印加される磁場を概ね0とすることができ、磁気粘弾性エラストマの弾性率を最小にすることができる。
【0010】
また、上記の発明において、前記永久磁石を変位可能に支持する永久磁石支持部材(52)を有し、前記電磁石が発生する磁場に応じて前記永久磁石が前記磁気粘弾性エラストマに対して変位するようにするとよい。
【0011】
この構成によれば、電磁石の磁場によって、永久磁石が磁気粘弾性エラストマに対して変位する。そのため、粘弾性可変装置の弾性を低下させたい場合に、永久磁石を磁気粘弾性エラストマから離し、永久磁石から磁気粘弾性エラストマに印加される磁場を弱くすることができる。これにより、永久磁石の磁場を打ち消すために必要な逆向きの磁場を弱くすることができ、電磁石に供給する電力を低減することができる。
【0012】
また、上記の発明において、前記電磁石は、前記磁気粘弾性エラストマと正対するように配置された環状のコイル(22)と、コイルの中心部に設けられたコア(51)とを有し、前記永久磁石支持部材は、前記永久磁石を前記コアに対して変位可能に支持するとよい。
【0013】
この構成によれば、コアによって電磁石が発生する磁場の強さが大きくなる。また、永久磁石とコアとの間で作用する吸引力又は斥力によって、永久磁石が移動する。
【0014】
また、上記の発明において、前記電磁石は、前記磁気粘弾性エラストマと正対するように配置された環状のコイル(22)を有し、前記永久磁石支持部材は、前記永久磁石を前記コイルの中心部に対して出没可能に支持するとよい。
【0015】
この構成によれば、粘弾性可変装置の大型化を招くことなく、永久磁石の移動ストロークを確保することができる。
【0016】
また、上記の発明において、前記電磁石は、前記磁気粘弾性エラストマと正対するように配置された環状のコイル(22)を有し、前記永久磁石は、前記コイルの中心部に配置されているとよい。
【0017】
この構成によれば、粘弾性可変装置をコンパクトに形成することができる。
【0018】
また、上記の発明において、前記磁気粘弾性エラストマの側面に沿うように設けられた磁性体(5、6)を更に有し、前記磁性体は、前記永久磁石及び前記電磁石の磁場によって磁化されるようにするとよい。
【0019】
この構成によれば、磁気粘弾性エラストマの側面に沿うように設けられた磁性体が、永久磁石及び電磁石によって磁化されるため、永久磁石及び電磁石から発生する磁場は磁性体を介して均質に磁気粘弾性エラストマに印加させる。
【発明の効果】
【0020】
以上の構成によれば、粘弾性可変装置において、電力の消費量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態に係る粘弾性可変装置を示す構成図
【図2】第1実施形態に係る粘弾性可変装置の状態を示す説明図であって、(A)基準状態、(B)高弾性状態、(C)低弾性状態
【図3】第1実施形態に係る粘弾性可変装置の使用例を示す図であって、(A)縦配置例1、(B)縦配置例2、(C)横配置例1
【図4】第2実施形態に係る粘弾性可変装置を示す構成図
【図5】第2実施形態に係る粘弾性可変装置の状態を示す説明図であって、(A)基準状態、(B)高弾性状態、(C)低弾性状態
【図6】第3実施形態に係る粘弾性可変装置を示す構成図
【図7】第3実施形態に係る粘弾性可変装置の状態を示す説明図であって、(A)基準状態、(B)高弾性状態、(C)低弾性状態
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明のセンサ装置の実施形態について説明する。

【0023】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る粘弾性可変装置を示す構成図である。図1に示すように、粘弾性可変装置1は、磁気粘弾性エラストマ2と、永久磁石3と、電磁石4と、第1磁性体5と、第2磁性体6とを有する。

【0024】
磁気粘弾性エラストマ2は、マトリックスとしての粘弾性を有する基質エラストマ11と、基質エラストマ11内に分散された磁性粒子12とを有する。基質エラストマ11は、例えば、エチレン-プロピレンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、シリコンゴム等の室温で粘弾性を有する公知の高分子材料であってよい。基質エラストマ11は、所定の中心軸線Aを有し、一側の外面に軸線Aに直交する第1主面14を有し、第1主面14と相反する側に、第1主面14と平行に形成された第2主面15とを有している。基質エラストマ11は、任意の形状に形成することができ、例えば直方体や円柱形とすることができる。第1主面14及び第2主面15は、基質エラストマ11が直方体の場合には互いに相反する一対の外面であり、基質エラストマ11が円柱形の場合には、軸線に直交する両端面とすることができる。

【0025】
磁性粒子12は、磁場の作用によって磁気分極する性質を有するものであり、例えば、純鉄、電磁軟鉄、方向性ケイ素鋼、Mn-Znフェライト、Ni-Znフェライト、マグネタイト、コバルト、ニッケル等の金属、4-メトキシベンジリデン-4-アセトキシアニリン、トリアミノベンゼン重合体等の有機物、フェライト分散異方性プラスチック等の有機・無機複合体等の公知の材料から形成された粒子である。磁性粒子12の形状は、特に限定はなく、例えば球形、針形、平板形等であってよい。磁性粒子12の粒径は、特に限定はなく、例えば0.01μm~500μm程度であってよい。

【0026】
磁性粒子12は、基質エラストマ11内において、磁場が印加されていない状態においては互いの相互作用が小さく、磁場が印加された状態においては磁気相互作用によって互いに作用する引力が増大するようになっている。例えば、磁性粒子12は、基質エラストマ11内において、磁場が印加されていない状態においては接触部位が少なく、磁場が印加された状態においては磁気的結合によって互いの接触部位が増大し得る様に分散されている。また、磁性粒子12は、磁場が印加されていない状態においては、基質エラストマ11内において互いに接触しない程度に分散されていてもよいし、一部が接触して連続するように分散されていてもよい。磁性粒子12の基質エラストマ11に対する割合は、任意に設定可能であるが、例えば体積分率で5%~60%程度であってよい。磁性粒子12の基質エラストマ11に対する分散状態は、基質エラストマ11の各部において均一にしてもよいし、一部に密度差を設けてもよい。

【0027】
第1磁性体5及び第2磁性体6は、強磁性体又はフェリ磁性を有する材料から形成され、例えばフェライト等の鉄系金属から形成されている。第1磁性体5及び第2磁性体6は、板状に形成されている。第1及び第2磁性体5、6は、外部磁場が無いときには磁化されず、磁場が印加されたときに、その向きに磁化するようになっている。第1磁性体5は主面が磁気粘弾性エラストマ2の第1主面14に接合され、第2磁性体6は主面が磁気粘弾性エラストマ2の第2主面15に接着等によって接合されている。これにより、第1磁性体5及び第2磁性体6は、磁気粘弾性エラストマ2を挟持するように配置されている。

【0028】
電磁石4は、ボビン21と、ボビン21に巻き回されたコイル22とを有している。ボビン21は、両端が開口した筒部24と、筒部24の両端から径方向外向きに突出した一対のフランジ部25とを有している。コイル22は、筒部24の外周側に巻き回されている。電磁石4は、その中心軸(筒部24の中心軸)が磁気粘弾性エラストマ2の軸線Aと一致するように、一方のフランジ部25が第1磁性体5の主面に接合されている。すなわち、電磁石4は、第1磁性体5及び磁気粘弾性エラストマ2と正対するように配置されている。フランジ部25と第1磁性体5との接合は、接着剤や機械的な係止手段によって行われてよい。

【0029】
永久磁石3は、ネオジム磁石やフェライト磁石、アルニコ磁石等の公知の永久磁石である。永久磁石3は、電磁石4の筒部24の内孔26に配置される。このとき、永久磁石3は、そのN極及びS極を結ぶ線分が、磁気粘弾性エラストマ2の軸線Aと一致するように配置される。永久磁石3は、N極又はS極のいずれかが第1磁性体5に正対するように配置され、当接する。永久磁石3は、第1磁性体5及び電磁石4の少なくとも一方に接合されている。これにより、第1磁性体5、電磁石4、及び永久磁石3は、相対位置が互いに固定されている。第1磁性体5及び電磁石4の少なくとも一方と永久磁石3との接合は、接着剤や機械的な係止手段によって行われてよい。

【0030】
永久磁石3及び電磁石4は、磁気粘弾性エラストマ2に磁場を印加する磁場印加手段を構成する。永久磁石3が発生する磁場は、向き及び強さが一定である。一方、電磁石4が発生する磁場は、コイル22に供給される電流の向き及び強さに応じて、向き及び強さが変化する。また、電磁石4は、コイル22に電力が供給されていない場合には磁場を発生しない。電磁石4は、永久磁石3の磁場と同じ向き、又は前記永久磁石の磁場と反対の向きの磁場を発生することができる。換言すると、電磁石4が形成するN極及びS極を結ぶ線分は、永久磁石3のN極及びS極を結ぶ線分と互いに平行になっており、また磁気粘弾性エラストマ2の軸線Aと互いに平行になっている。本実施形態では、電磁石4が形成するN極及びS極を結ぶ線分、永久磁石3のN極及びS極を結ぶ線分、磁気粘弾性エラストマ2の軸線Aは、1つの直線上に配置されている。

【0031】
第1及び第2磁性体5、6は、永久磁石3及び電磁石4から生じる磁場によって磁化され、分極して磁石になる。第1及び第2磁性体5、6は、磁気粘弾性エラストマ2の第1主面14及び第2主面15を永久磁石3及び電磁石4よりも広範囲にわたって覆うように配置されている。永久磁石3及び電磁石4から生じる磁場は、第1及び第2磁性体5を介することによって磁気粘弾性エラストマ2に一層均質に印加される。

【0032】
図2は、第1実施形態に係る粘弾性可変装置の状態を示す説明図であって、(A)基準状態、(B)高弾性状態、(C)低弾性状態である。図2中の実線矢印は電磁石4から生じる磁力線を表し、破線矢印は永久磁石3から生じる矢印を表す。図2(A)に示すように、粘弾性可変装置1の基準状態では、電磁石4への電力供給が停止され、電磁石4は磁場を発生しない。一方、永久磁石3は、所定の磁場を発生し、第1及び第2磁性体5、6を介して磁気粘弾性エラストマ2に印加する。磁気粘弾性エラストマ2に磁場が印加されると、磁場の強さに応じて磁性粒子12は分極し、磁気的結合を形成する。磁性粒子12は、例えば連鎖的に結合して網目構造を形成し、磁気粘弾性エラストマ2の弾性率(剛性)及び粘性率が基質エラストマ11単独の弾性率及び粘性率よりも増大する。磁気粘弾性エラストマ2に印加される磁場が強いほど、磁気粘弾性エラストマ2の弾性率及び粘性率は増大し、磁気粘弾性エラストマ2は荷重に対して変形し難くなる。

【0033】
図2(B)に示すように、粘弾性可変装置1の高弾性状態では、電磁石4が永久磁石3と同方向の磁場を発生するように、電磁石4に電流が供給される。これにより、永久磁石3と電磁石4とを合わせた磁場は、基準状態の磁場と比べて同じ方向に強くなるため、磁気粘弾性エラストマ2に印加される磁場が強くなり、磁気粘弾性エラストマ2の弾性が基準状態よりも増大する。電磁石4が発生する磁場の向きと永久磁石3が発生する磁場の向きとが同じ場合には、電磁石4に供給される電流が増大し、電磁石4が発生する磁場が強くなるほど、磁気粘弾性エラストマ2の弾性が増大する。

【0034】
図2(C)に示すように、粘弾性可変装置1の低弾性状態では、電磁石4が発生する磁場の向きが、永久磁石3が発生する磁場の向きと反対になるように、電磁石4に電力が供給される。すなわち、低弾性状態では、高弾性状態に対して、電磁石4に供給する電流の向きが反対になる。これにより、電磁石4が発生する磁場は、永久磁石3が発生する磁場を打ち消す方向に作用する。電磁石4が発生する磁場の強さは、永久磁石3が発生する磁場の強さ以下の範囲で変更可能である。

【0035】
電磁石4が発生する磁場の強さが、永久磁石3が発生する磁場の強さ以下の範囲では、永久磁石3が生じる磁場の少なくとも一部が、電磁石4が生じる磁場によって打ち消され、磁気粘弾性エラストマ2に印加される磁場が基準状態よりも弱くなり、磁気粘弾性エラストマ2の弾性率が基準状態よりも小さくなる。この範囲では、電磁石4に供給する電流を増大させ、電磁石4が発生する磁場を大きくするほど、磁気粘弾性エラストマ2に印加される磁場が一層弱くなり、磁気粘弾性エラストマ2の弾性率が一層小さくなる。電磁石4が発生する磁場が、永久磁石3が発生する磁場と同一の強さのときには、電磁石4が発生する磁場と永久磁石3が発生する磁場とは互いに相殺され、磁気粘弾性エラストマ2に印加される磁場が略0になる。この状態では、磁気粘弾性エラストマ2の粘弾性は、基質エラストマ11単独の弾性率と略同一となり、最も小さくなる。

【0036】
なお、電磁石4が発生する磁場が、永久磁石3が発生する磁場に対して逆向きであり、かつ永久磁石3が発生する磁場より強い場合には、永久磁石3が発生する磁場が完全に打ち消された後も電磁石4が発生する磁場が残り、磁気粘弾性エラストマ2に印加される。そのため、この範囲では、電磁石4が発生する磁場が強くなるほど、磁気粘弾性エラストマ2に印加される磁場が強くなり、磁気粘弾性エラストマ2の弾性率が大きくなる。

【0037】
以上のように、粘弾性可変装置1は、基準状態では電磁石4への電力供給を停止し、永久磁石3によって磁場を印加するため、電力消費量を低減することができる。基準状態における磁気粘弾性エラストマ2の弾性率を所定の値に調整するためには、永久磁石3の素材を変更して発生する磁場の強さを調整する手法や、永久磁石3の形状や永久磁石3と磁気粘弾性エラストマ2との相対位置を変更することによって磁気粘弾性エラストマ2に印加される磁場の強さを調整する手法を用いるとよい。粘弾性可変装置1は、基準状態から、電磁石4によって永久磁石3の磁場と同じ方向の磁場を加えることによって、磁気粘弾性エラストマ2に印加される磁場を強くし、磁気粘弾性エラストマ2の弾性率を大きくすることができる。また、粘弾性可変装置1は、基準状態から、電磁石4によって永久磁石3の磁場と反対の方向の磁場を加えることによって、磁気粘弾性エラストマ2に印加される磁場を弱くし、磁気粘弾性エラストマ2の弾性率を小さくすることができる。

【0038】
以上のように構成した粘弾性可変装置1は、例えば車両の車体骨格と内燃機関との間に介装されるエンジンマウントや、車輪を支持するナックルとサスペンションアームとの間に介装されるブッシュとして適用することができる。

【0039】
図3は、第1実施形態に係る粘弾性可変装置の使用例を示す図であって、(A)縦配置例1、(B)縦配置例2、(C)横配置例1である。図3に示すように、粘弾性可変装置1を緩衝装置としてのエンジンマウントに使用する場合には、車体骨格に一体に設けられた第1部材31と、内燃機関と一体に設けられた第2部材32との間に粘弾性可変装置1を介装する。このとき、図3(A)の縦配置例1に示すように、磁気粘弾性エラストマ2の軸線Aと第1部材31及び第2部材32が対向する方向とが一致するように、永久磁石3及び電磁石4のボビン21を第1部材31に取り付け、第2磁性体6を第2部材32に取り付ける。また、図3(B)の縦配置例2に示すように、永久磁石3及び電磁石4を、第1磁性体5に対して小さく形成し、電磁石4よりも外側に延出した第1磁性体5に第1部材31を取り付け、第2磁性体6を第2部材32に取り付けてもよい。また、図3(C)の横配置例1に示すように、磁気粘弾性エラストマ2の軸線Aと第1部材31及び第2部材32が対向する方向とが直交するように、第1部材31及び第2部材32の間に磁気粘弾性エラストマ2のみを介装してもよい。粘弾性可変装置1は、内燃機関の振動に応じて、内燃機関の振動を抑制するように、電磁石4に電流を供給し、磁気粘弾性エラストマ2に印加される磁場を変化させ、磁気粘弾性エラストマ2の弾性率を変化させる。

【0040】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る粘弾性可変装置50は、第1実施形態に係る粘弾性可変装置1に比べて永久磁石3の位置及び支持構造が異なる。以下の説明では、第2実施形態に係る粘弾性可変装置50の構成について、第1実施形態に係る粘弾性可変装置1と同様のものは同一の符号を付して説明を省略する。

【0041】
図4は、第2実施形態に係る粘弾性可変装置を示す構成図である。図4に示すように、粘弾性可変装置50では、ボビン21の筒部24の内孔26に、永久磁石3に代えてコア51が設けられている。コア51は、強磁性体又はフェリ磁性を有する材料から形成され、例えばフェライト等の鉄系金属であってよい。コア51は、第1磁性体5及びボビン21の少なくとも一方に接合されている。他の実施形態では、コア51は、ボビン21と一体に形成されていてもよい。

【0042】
ボビン21の第1磁性体5側と相反する側のフランジ部25には、磁石ホルダ52が接合されている。磁石ホルダ52は、磁化されず、磁場の影響を受けない非磁性体から形成されている。磁石ホルダ52は、コア51と対向する部分に、磁気粘弾性エラストマ2の軸線Aと同軸になるように、ガイド孔53が形成されている。ガイド孔53には、永久磁石3が軸線A方向に摺動可能に挿入されている。また、磁石ホルダ52は、ガイド孔53のコア51側と相反する側の端部に、フック状のストッパ54を有している。永久磁石3は、コア51に突き当たる第1位置と、ストッパ54に係止される第2位置との間で、軸線Aに沿って変位可能に磁石ホルダ52に支持されている。

【0043】
永久磁石3は、ガイド孔53内において、そのN極とS極とを結ぶ線分が軸線Aと平行になるように配置されている。また、本実施形態では、永久磁石3のN極とS極とを結ぶ線分、電磁石4のN極とS極とを結ぶ線分、及び軸線Aは、1つの直線上に配置されている。

【0044】
図5は、第2実施形態に係る粘弾性可変装置の状態を示す説明図であって、(A)基準状態、(B)高弾性状態、(C)低弾性状態である。図5中の実線矢印は電磁石4から生じる磁力線を表し、破線矢印は永久磁石3から生じる矢印を表す。図5(A)に示すように、粘弾性可変装置1の基準状態では、電磁石4への電力供給が停止され、電磁石4は磁場を発生しない。永久磁石3は、所定の磁場を発生し、対向するコア51と、第1磁性体5及び第2磁性体6とを磁化する。これにより、永久磁石3は、コア51に吸引され、第1位置に位置する。この状態では、永久磁石3は、コア51、第1及び第2磁性体5、6を介して磁気粘弾性エラストマ2に印加する。

【0045】
図5(B)に示すように、粘弾性可変装置50の高弾性状態では、電磁石4が永久磁石3と同方向の磁場を発生するように、電磁石4に電流が供給される。これにより、コア51、第1及び第2磁性体5、6は、電磁石4及び永久磁石3から同方向の磁場を受けて磁化される。これにより、永久磁石3は、コア51に一層吸引され、第1位置に維持される。永久磁石3と電磁石4とを合わせた磁場は、基準状態の磁場と比べて同じ方向に強くなるため、磁気粘弾性エラストマ2に印加される磁場が強くなり、磁気粘弾性エラストマ2の弾性率が基準状態よりも増大する。電磁石4が発生する磁場の向きと永久磁石3が発生する磁場の向きとが同じ場合には、電磁石4に供給される電流が増大し、電磁石4が発生する磁場が強くなるほど、磁気粘弾性エラストマ2の弾性率が増大する。

【0046】
図5(C)に示すように、粘弾性可変装置50の低弾性状態では、電磁石4が発生する磁場の向きが、永久磁石3が発生する磁場の向きと反対になるように、電磁石4に電力が供給される。すなわち、低弾性状態では、高弾性状態に対して、電磁石4に供給する電流の向きが反対になる。コア51、第1及び第2磁性体5、6は、電磁石4からの磁場を受けて、基準状態及び高弾性状態とは反対の向きに磁化される。これにより、コア51における永久磁石3と対向する一面側には、対向する永久磁石3と同極の磁極が発生し、永久磁石3とコア51との間には斥力が生じる。これにより、永久磁石3は、軸線Aに沿ってコア51から離れる方向、すなわち第2位置側に移動する。永久磁石3が第2位置側に移動することによって、永久磁石3と磁気粘弾性エラストマ2との距離が大きくなり、永久磁石3の磁場が磁気粘弾性エラストマ2に与える影響が小さくなる。すなわち、永久磁石3によって磁気粘弾性エラストマ2に印加される磁場が弱くなる。

【0047】
低弾性状態では、電磁石4が発生する磁場が、永久磁石3が発生する磁場を打ち消す方向に作用するため、磁気粘弾性エラストマ2に印加される磁場は弱くなる。このとき、第2実施形態に係る粘弾性可変装置50は、第1実施形態に係る粘弾性可変装置1に比べて、永久磁石3が磁気粘弾性エラストマ2から離れる方向に移動するため、磁気粘弾性エラストマ2に印加される磁場は一層弱くなる。すなわち、永久磁石3から磁気粘弾性エラストマ2に印加される磁場が弱くなるため、電磁石4はより弱い磁場で磁気粘弾性エラストマ2に印加される磁場を打ち消すことができる。これにより、電磁石4に供給する電流を低減することができる。

【0048】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る粘弾性可変装置70は、第2実施形態に係る粘弾性可変装置50に比べてコア51を省略した点が異なる。以下の説明では、第3実施形態に係る粘弾性可変装置70の構成について、第1及び第2実施形態に係る粘弾性可変装置1、50と同様のものは同一の符号を付して説明を省略する。

【0049】
図6は、第3実施形態に係る粘弾性可変装置を示す構成図である。図6に示すように、第3実施形態に係る粘弾性可変装置70は、ボビン21の筒部24の内孔26からコア51が省略されている。内孔26は、磁石ホルダ52のガイド孔53と接続し、連続したガイド通路71を形成している。内孔26は、ガイド孔53と同一の横断面を有し、永久磁石3を摺動可能に収容する。これにより、永久磁石3は、ストッパ54に係止される第2位置と、内孔26内に位置し、第1磁性体5に突き当たる第3位置との間で、軸線Aに沿って変位可能に磁石ホルダ52及びボビン21に支持されている。すなわち、永久磁石3は、コイル22の内部(内孔26)に対して出没可能に、電磁石4及び磁石ホルダ52に支持されている。

【0050】
図7は、第3実施形態に係る粘弾性可変装置の状態を示す説明図であって、(A)基準状態、(B)高弾性状態、(C)低弾性状態である。図7中の実線矢印は電磁石4から生じる磁力線を表し、破線矢印は永久磁石3から生じる矢印を表す。図7(A)に示すように、粘弾性可変装置1の基準状態では、電磁石4は磁場を発生せず、永久磁石3は所定の磁場を発生し、第1磁性体5及び第2磁性体6を磁化する。永久磁石3は、第1磁性体5に吸引され、第3位置に位置する。

【0051】
図7(B)に示すように、粘弾性可変装置70の高弾性状態では、電磁石4が永久磁石3と同方向の磁場を発生するように、電磁石4に電流が供給される。これにより、第1及び第2磁性体5、6は、電磁石4及び永久磁石3から同方向の磁場を受けて磁化され、永久磁石3は、第1磁性体5に一層吸引され、第3位置に維持される。永久磁石3と電磁石4とを合わせた磁場は、基準状態の磁場と比べて同じ方向に強くなるため、磁気粘弾性エラストマ2に印加される磁場が強くなり、磁気粘弾性エラストマ2の弾性率が基準状態よりも増大する。

【0052】
図7(C)に示すように、粘弾性可変装置70の低弾性状態では、電磁石4が発生する磁場の向きが、永久磁石3が発生する磁場の向きと反対になるように、電磁石4に電力が供給される。第1及び第2磁性体5、6は、電磁石4からの磁場を受けて、基準状態及び高弾性状態とは反対の向きに磁化され、永久磁石3と第1磁性体5との間には斥力が生じる。これにより、永久磁石3は、軸線Aに沿って第1磁性体5から離れる方向、すなわち第2位置側に移動し、永久磁石3によって磁気粘弾性エラストマ2に印加される磁場が弱くなる。低弾性状態では、電磁石4が発生する磁場が、永久磁石3が発生する磁場を打ち消す方向に作用するため、磁気粘弾性エラストマ2に印加される磁場は弱くなる。このとき、永久磁石3が磁気粘弾性エラストマ2から離れる方向に移動するため、磁気粘弾性エラストマ2に印加される磁場は一層弱くなる。

【0053】
第3実施形態に係る粘弾性可変装置70は、第2実施形態に係る粘弾性可変装置50に比べて、永久磁石3の変位ストロークが長いため、永久磁石3が磁気粘弾性エラストマ2に印加する磁場の強さの可変範囲を大きくすることができる。また、永久磁石3は、基準状態及び高弾性状態において磁気粘弾性エラストマ2に一層接近することができるため、磁気粘弾性エラストマ2に印加する磁場を強くすることができる。永久磁石3はボビン21の内孔26内に出没するため、装置の大型化を避けつつ、変位ストロークを長く確保することができる。

【0054】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。また、上記実施形態で示した各構成は、適宜取捨選択することができる。例えば、第1実施形態に係る粘弾性可変装置1では、第1及び第2磁性体5、6は、必須の構成ではなく、省略してもよい。また、上記実施形態のボビン21の構成は例示であり、フランジ部25は省略することができる。また、第2実施形態では、ボビン21を省略し、コア51の外周にコイル22を直接に設けてもよい。また、ボビン21と磁石ホルダ52を一体に形成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1、50、70…粘弾性可変装置、2…磁気粘弾性エラストマ、3…永久磁石、4…電磁石、5…第1磁性体、6…第2磁性体、11…基質エラストマ、12…磁性粒子、14…第1主面、15…第2主面、21…ボビン、22…コイル、24…筒部、25…フランジ部、26…内孔、31…第1部材、32…第2部材、51…コア、52…磁石ホルダ(永久磁石支持部材)、53…ガイド孔、54…ストッパ、71…ガイド通路、A…中心軸線
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6