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明細書 :触覚センサー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5892549号 (P5892549)
公開番号 特開2014-066526 (P2014-066526A)
登録日 平成28年3月4日(2016.3.4)
発行日 平成28年3月23日(2016.3.23)
公開日 平成26年4月17日(2014.4.17)
発明の名称または考案の名称 触覚センサー
国際特許分類 G01N  19/02        (2006.01)
FI G01N 19/02 Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 11
出願番号 特願2012-209957 (P2012-209957)
出願日 平成24年9月24日(2012.9.24)
審査請求日 平成27年7月29日(2015.7.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
発明者または考案者 【氏名】喜成 年泰
【氏名】立矢 宏
【氏名】吉村 史也
【氏名】高桑 匡平
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100114074、【弁理士】、【氏名又は名称】大谷 嘉一
審査官 【審査官】渡邉 勇
参考文献・文献 特開2010-093058(JP,A)
特開2008-256490(JP,A)
特開2009-145140(JP,A)
特開2007-017243(JP,A)
特開2004-077346(JP,A)
特開2002-116101(JP,A)
実開平01-058150(JP,U)
実開昭63-109640(JP,U)
特開平11-279936(JP,A)
調査した分野 G01N 17/00 - 19/10
特許請求の範囲 【請求項1】
被検体の表面に接触する接触子と、
前記接触子と被検体表面とを相対的に回転運動させる回転制御手段と、
前記接触子が被検体表面に接触することにより得られる摩擦係数の計測手段と、前記計測手段により得られた摩擦係数の振動に基づいて被検体の表面構造を解析するための解析手段とを有し、
前記解析手段は、摩擦係数の振動数のFFT解析手段又は/及び摩擦係数の変動解析手段であり、
前記摩擦係数の計測手段は弾性変形可能なプレート状のベース部材と、当該ベース部材に取り付けた接触子とを有し、前記接触子の先端が被検体の表面をなぞることで生じるベース部材の歪みに基づいて計測するものであることを特徴とする触覚センサー。
【請求項2】
請求項1記載の触覚センサーを用いた被検体の表面の凹凸構造の認別及び解析方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は被検体の表面をなぞることで、当該被検体の表面構造を認識できる触覚センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、布、織物、編物等の分野においては、糸の太さや糸密度、織り方等により、表面構造が異なり、質感が変化する。
また、紙製品、ゴム製品、樹脂製品等においても、表面の凹凸形状により質感が変化する。
これらの表面構造を定量的に認識する方法として、特許文献1にはCCDカメラを用いて被検体の表面画像を取得し、この表面画像を解析するためのシボ織物のシボ立ち性測定装置を開示する。
しかし、画像処理方法では高倍率カメラ等の専用装置が必要となるだけでなく、光源の強さや角度によっても計測条件が相異し、織物の織り構造等の解析には適用が困難である。
特許文献2は、弾性変形可能なベース部材にウイスカを装着した複数個の触覚センサーからなるセンサーユニットを開示する。
同公報に開示するセンサーユニットは比較的簡単な構成であるが、複数のセンサーを組み合せる必要があった。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平11-279936号公報
【特許文献2】特開2002-116101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、被検体の表面をなぞるだけで当該被検体の表面構造の認識や解析が可能な触覚センサーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る触覚センサーは、被検体の表面に接触する接触子と、前記接触子と被検体表面とを相対的に回転運動させる回転制御手段と、前記接触子が被検体表面に接触することにより得られる摩擦係数の計測手段と、前記計測手段により得られた摩擦係数の振動に基づいて被検体の表面構造を解析するための解析手段とを有することを特徴とする。
【0006】
ここで、接触子と被検体表面とを相対的に回転運動させると表現したのは、接触子の先端が被検体の表面を円で描くようになぞることができれば、センサー側が回転しても被検体側が回転してもよい。
例えば本発明に係るセンサーをロボットハンドに把持させて被検体の表面をなぞってもよい。
【0007】
接触子の先端が被検体の表面をなぞる際に、この被検体の表面の構造により変動する鉛直方向の力(圧縮力)Nと、水平方向の力(摩擦力)Fがこの接触子に作用する。
従って、摩擦係数の計測手段は弾性変形可能なベース部材と、当該ベース部材に取り付けた接触子と歪みゲージとを有し、接触子の先端が被検体の表面をなぞることで生じるベース部材の変形を歪みゲージで検出するようにすると、前記NとFとから動摩擦係数を算出することができる。
このようにして得られた動摩擦係数は被検体の表面構造を反映した波形として出現するので、FFT解析することでスペクトルチャートが得られる。
これにより特定のスペクトルの周波数やそのピークの大きさにより被検体の表面構造を認識することができる。
また、動摩擦係数の振幅の変動を解析することで、表面構造の認識や解析を行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る触覚センサーにあっては、触覚センサーの接触子が被検体の表面を相対的に回転するようになぞるので、例えば織物のたて糸やよこ糸に対するなぞり角度が変化し、その複雑な表面構造を認識することができる。
織物等の表面を一方向になぞり、歪みゲージを介して表面構造を検出する方法の場合には織物に対するなぞり方向の角度を順次変えて情報を取り込む必要があるのに対して、本発明に係る触覚センサーは、なぞり方向の角度が連続的に変化するので、測定時間が短く摩擦係数の変動の見落としを防止する。
また、回転運動により、なぞり角度を変えながら摩擦係数の連続的な変化を計測した後に所定のなぞり角度に沿って詳細に計測することもできるので、検出精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は検出部の構造例を示し、(b)は接触子部分の拡大図を示す。
【図2】なぞり動作を模式的に示す。
【図3】(a)は圧縮力とひずみの関係を示し、(b)は摩擦力とひずみの関係を示す。
【図4】実験装置の構造例を示す。
【図5】織物三原組織の表面写真を示す。
【図6】(a)は摩擦係数の波形例を示し、(b)はそのFFT解析例を示す。
【図7】主ピーク周波数とよこ糸密度の関係を示す。
【図8】動摩擦係数振幅とよこ糸太さの関係を示す。
【図9】動摩擦係数振幅となぞり方向の関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る触覚センサーを用いた実験結果を説明する。
触覚センサーは図1に示すように、正方形状のベース部材11(厚さ1mm,25mm四方)の中心に被検体の表面と接触する接触子12を取り付けた構造となっている。
接触子12はアクリル製の帯板(厚さ0.5mm,幅5mm,長さ10mm)からなる支持部12bに接触部12aであるピアノ線(直径0.5mm)を接着した構造であり、全長は15mmである。
ベース部材11は弾性材からなり、接触子12が被検体の表面をなぞる際に生じる圧縮力Nと摩擦力Fが、このベース部材11に伝達されるように連結部12cにて連結してある。
その際にベース部材11に生じる歪みを検出できるように本実験では、図1及び図2に示すようにベース部材11のなぞり方向であって、接触子12の前後に歪みゲージA,Bをそれぞれ貼付し、歪みゲージBに対応したベース部材11の裏面側に歪みゲージCを貼付した。
図2に接触子12が被検体1の表面部1aを矢印の方向になぞる場合のベース部材11の変形を模式的に示す。

【0011】
上記のようになぞり動作によって接触子12には鉛直方向の力(圧縮力)Nと水平方向の力(摩擦力)Fが作用する。
ベース部材11に生じる歪みは、これらの影響の和となる。
接触部12aにNとFをそれぞれ与えた実験結果を図3に示す。
各歪みゲージに生じるひずみは、NとFに対して線形である。
よって式(1)が成り立つ。
εは歪みゲージA,B,Cの歪みを示し、a,bは比例定数である。
これらの値は図3を最小二乗近似することで得ることができる。
【数1】
JP0005892549B2_000002t.gif
【数2】
JP0005892549B2_000003t.gif
【数3】
JP0005892549B2_000004t.gif
FをNで除することで動摩擦係数μが求められる。

【0012】
本実験では、図4に示すように被検体を回転テーブル20の上に固定し、触覚センサー10に所定のおもりを載置し、鉛直方向の荷重を調整しながら行った。
実験時には、回転テーブル20を一定速度で回転させ接触子12で被検体である織物をなぞった。
この場合に図1(a)に示すようにベース部材11の4隅に設けた取付孔11aを用い、保持体14にボルトナット15により固定し、この保持体14を上下動するアームに取り付けた。
織物をなぞる方向は、接触子の幅方向をよこ糸に平行とし、たて糸方向を接線方向として、なぞる向きをなぞり方向0°と定義する。
測定は、なぞり方向-2.5°~182.5°において行なった。
また、接触子12と回転中心との距離は20mmとした。
試料の織物には、多くの織物の基礎となっている三原組織の平織,綾織,朱子織を使用し、糸太さや糸密度がそれぞれ異なるものを十数種類用意した。
なお、代表的な試料の写真を図5に示す。

【0013】
織物の表面を本発明に係る触覚センサーでなぞると、図6(a)に示すような動摩擦係数の振動波形が得られ、これをFFT解析すると図6(b)に示すようなスペクトルチャートが得られる。
本実験では、なぞり方向-2.5°~2.5°において測定された動摩擦係数1024点をFFT解析した。
そのとき、スペクトルが最も大きくなる周波数をなぞり方向0°における主ピーク周波数fp0と定義する。
17種類の織物を用い、よこ糸密度とfp0の関係を求め、図7に示す。
よこ糸密度[pick/cm]は、織物のたて方向の単位長さに何本のよこ糸がならんでいるかを表す単位で、織物の表面凹凸間隔に関係していると考えられる。
図7中の一点鎖線は、接触子が各糸を乗り越える度に動摩擦係数の振動が生じるとして、よこ糸密度と回転テーブルの回転速度および回転半径から算出した理論周波数である。
図7より、平織の試料ではfp0と理論周波数がほぼ一致しており、糸密度の推定が可能だと考えられる。
綾織および朱子織の試料においては、fp0が理論周波数よりも低い値となっている。
これにより、織物の平織、綾織、朱子織の区別ができる。

【0014】
次に、なぞり方向-2.5°~2.5°において測定された動摩擦係数の平均偏差を動摩擦係数振幅Aと定義する。
なぞり方向0°でのよこ糸太さと動摩擦係数振幅Aの関係を求め、図8に示す。
図8より、平織試料ではAとよこ糸太さに正の相関がみられる。
これは糸太さが増加することにより、表面の凹凸は大きくなり、凹凸を乗り越えるとき接触子が大きくたわむためだと考えられる。
綾織の試料においてはAとよこ糸太さに相関が認められなかったのは、表面のたて糸の占める割合が大きかったためと思われる。

【0015】
次に、織物組織が異なる3種の試料に対する、なぞり方向と動摩擦係数振幅Aの関係を図9に示す。
Aはプロットのあるなぞり方向の±2.5°の区間の動摩擦係数の平均偏差を表している。
図9から、各試料により、Aが増加するなぞり方向が異なることがわかる。
平織では、よこ糸が接触子に平行に当たる0°と、たて糸がこの接触子に平行に当たる90°にピークが出現するとともに、よこ糸とたて糸の交錯点を拾った約45°と135°にもピークが出現している。
また、綾織の場合は120°付近に斜め方向の綾線を示すピークが出現している。
朱子織の場合は、表面にあるたて糸の割合により100°付近の大きなピークとその両側に小さなピークが数ヶ所に出現した。
このことから、動摩擦係数の振幅変動を解析することで表面構造の認別が可能であることが分かる。
【符号の説明】
【0016】
1 被検体
1a 表面部
10 検出部
11 ベース部材
12 接触子
12a 接触部
12b 支持部
12c 連結部
13a 歪みゲージ
14 保持体
20 回転テーブル
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8