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明細書 :細胞増殖抑制活性を有する化合物、医薬組成物及びスクリーニング方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-051946 (P2015-051946A)
公開日 平成27年3月19日(2015.3.19)
発明の名称または考案の名称 細胞増殖抑制活性を有する化合物、医薬組成物及びスクリーニング方法
国際特許分類 C07H  19/067       (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61K  45/00        (2006.01)
A61K  31/7072      (2006.01)
A61K  31/7068      (2006.01)
A61K  31/337       (2006.01)
A61K  31/475       (2006.01)
FI C07H 19/067 CSP
A61P 35/00
A61K 45/00
A61K 31/7072
A61K 31/7068
A61K 31/337
A61K 31/475
請求項の数または発明の数 15
出願形態 OL
全頁数 39
出願番号 特願2013-185327 (P2013-185327)
出願日 平成25年9月6日(2013.9.6)
発明者または考案者 【氏名】菊田 敏輝
【氏名】並木 秀男
出願人 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
【識別番号】593056831
【氏名又は名称】株式会社フロンティア
個別代理人の代理人 【識別番号】100080089、【弁理士】、【氏名又は名称】牛木 護
【識別番号】100121153、【弁理士】、【氏名又は名称】守屋 嘉高
【識別番号】100161665、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 知之
【識別番号】100178445、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 淳二
審査請求 未請求
テーマコード 4C057
4C084
4C086
Fターム 4C057BB02
4C057DD01
4C057LL14
4C057LL17
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB262
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086CB21
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
要約 【課題】生体内に常在し、細胞情報伝達系に影響する化合物を利用することにより、正常な細胞、組織及び器官への影響が小さく、腫瘍細胞のみを増殖抑制又は死滅可能であり、副作用がなく安全性の高い、悪性腫瘍の治療及び/又は予防のための医薬組成物の提供。
【解決手段】下記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の有効量を含む、悪性腫瘍の治療及び/又は予防のための医薬組成物。
JP2015051946A_000013t.gif
Xは、O又はS、nは0、1又は2、mは0ないし5の整数、lは0、1又は2、R、RはH、-CH、-CHOH、リン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、又は、RとRのリン酸基を共有するリン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、RはH、-CH又は-CHOH、RはF、-NH又はN、及び、Wは複素環及びその誘導体を表す。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物。
【化1】
JP2015051946A_000010t.gif

前記式1において、
Xは、O又はS、
nは0、1又は2、
mは0ないし5の整数、
lは0、1又は2
RはH、-CH3、-CH2OH、リン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、又はR1のリン酸基と共有するリン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、
1はH、-CH3、-CH2OH、リン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、又は、前記Rのリン酸基を共有するリン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、
2はH、-CH3又は-CH2OH、
3はF、-NH2又はN3、及び、
Wは複素環及びその誘導体を表す。

【請求項2】
前記Wは、ピリミジン基又はその誘導体であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。

【請求項3】
前記Wは、下記式2で表されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化合物。
【化2】
JP2015051946A_000011t.gif

前記式2において、R4及びR5は、独立して、H、-OH、-NH2、-CH3、-CH2CH3、-CH2OH、-NHCOCH3、-OCOCH3又は-CH2OCOCH3を表す。

【請求項4】
前記式2において、R4はアミノ基であることを特徴とする、請求項1ないし3に記載の化合物。

【請求項5】
前記式1において、
XはO、
nは1、
mは1、
lは0、
RはH、
1は-CH2OH、リン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、又は、前記Rのリン酸基を共有するリン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、及び、
2はHであることを特徴とする、請求項1ないし4に記載の化合物。

【請求項6】
前記式1において、2-デオキシ-D-リボース及び2-ヒドロキシ-D-リボース、又は、その5’-1リン酸エステル体がWに結合することを特徴とする、請求項1ないし5に記載の化合物。

【請求項7】
前記式1で表される化合物は、腫瘍細胞の細胞膜上の、又は細胞外に分泌されたヌクレオチダーゼによりチミジンに代謝され、細胞に取り込まれることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。

【請求項8】
請求項1ないし7に記載の化合物及び/又は薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物を含有することを特徴とする、医薬。

【請求項9】
請求項1ないし7に記載の化合物及び/又は薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物を含有することを特徴とする、悪性腫瘍の治療及び/又は予防のための医薬組成物。

【請求項10】
前記式1で表される化合物に、さらに、細胞増殖抑制活性を有する他の化合物を含有することを特徴とする、悪性腫瘍の治療及び/又は予防のための医薬組成物。

【請求項11】
前記抗腫瘍活性を有する他の化合物は、パクリタキセル、タキサジエン、バッカチンIII、ドセタキセル、タクスチニンA、ブレビフォリオール、タキサスパインD、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、シスプラチン、ムスチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ミトラマイシン、ブレオマイシン、プロカルバジン、メトトレキサート、エトポシド、イリノテカン、タモキシフェン、イマチニブ、アフィディコリン、オファツムマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、イブリツモマブ チウキセタン、トラスツズマブ、パニツムマブ、モガムリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、及び、リツキシマブからなる群から選択される1種以上の化合物であることを特徴とする、請求項10の医薬組成物。

【請求項12】
培養細胞の細胞膜上に存在する酵素及び/又は培養細胞から細胞外に分泌される酵素により代謝されることにより、細胞内に取り込まれ、細胞増殖抑制作用を発揮することを特徴とする化合物のスクリーニング方法。

【請求項13】
前記培養細胞は、腫瘍細胞であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。

【請求項14】
前記酵素は、ヌクレオチダーゼであることを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。

【請求項15】
前記化合物は、下記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩であることを特徴とする、請求項12ないし14に記載の方法。
【化3】
JP2015051946A_000012t.gif

前記式1において、
Xは、O又はS、
nは0、1又は2、
mは0ないし5の整数、
lは0、1又は2
RはH、-CH3、-CH2OH、リン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、又はR1のリン酸基と共有するリン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、
1はH、-CH3、-CH2OH、リン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、又は、前記Rのリン酸基を共有するリン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、
2はH、-CH3又は-CH2OH、
3はF、-NH2又はN3、及び、
Wは複素環及びその誘導体を表す。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍細胞への細胞増殖抑制活性の選択性の高いヌクレオシド誘導体化合物、及び該化合物を有効成分として含有する腫瘍の治療及び/又は予防のための医薬組成物に関する。また、本発明は、腫瘍細胞の細胞膜上に存在する酵素及び/又は腫瘍細胞から細胞外に分泌される酵素により代謝されることにより、細胞内に取り込まれ、細胞増殖抑制作用を発現する化合物のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、我が国における死因の第一位は、悪性腫瘍であり、悪性腫瘍に対する治療及び/又は予防のために多くの抗腫瘍剤が開発されている。そして、これらの抗腫瘍剤として、多くのヌクレオシド誘導体が開発されている。
【0003】
ヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、チミジン、ウリジン、及び、シチジン)のリン酸化エステル誘導体であるヌクレオチドは、遺伝情報の保存や発現をつかさどるDNAやRNAの構成成分として生体内に豊富に存在し、種々の生命現象で重要な役割を果たしていることが知られている。例えば、アデノシン5’-3リン酸は、高エネルギー物質として生体内のエネルギー代謝に関与している。また、環状リン酸エステル誘導体であるcAMP及びcGMPは細胞内でセカンドメッセンジャーとして細胞内情報伝達に関与している。
【0004】
また、ヌクレオシドのプリン塩基やピリミジン塩基の構造の一部を修飾した誘導体、糖部分の水酸基を置換又は修飾した誘導体、及び、糖部分を伴わないプリン塩基やピリミジン塩基自体の誘導体が、前記ヌクレオチドの疑似化合物として生体内で作用する特性を利用して、抗腫瘍剤として使用されている。具体的には、前記抗腫瘍剤としてシタラビン(Ara-C)、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル(5-FU)等をはじめとした多くの化合物が腫瘍治療の化学療法で使用されている(特許文献1~3)。
【0005】
しかし、一般的にこれらの薬剤を用いる化学療法では、副作用が深刻な問題となる。例えば、シタラビンはDNAポリメラーゼを阻害し(非特許文献1)、ゲムシタビンはDNA合成を直接的及び間接的に阻害し(非特許文献2)、5-フルオロウラシルは、チミジル酸合成を阻害して腫瘍細胞の増殖を抑制することを目的とする(非特許文献3)が、これらの薬物は生体内の腫瘍細胞以外の細胞に作用し、副作用を発現するとの問題を有する。
【0006】
一方、細胞には、DNA損傷修復に代表される自己修復・自己治癒機能が存在し、個々の細胞が生きていくために必要とされる能力である。これにより、細胞内で問題が生じた場合でも、ある程度までは自己修復・自己治癒することが可能である。これは組織や器官レベルにおいても同様であり、外傷が治癒したり、手術で一部摘出された肝臓が元の大きさに回復したりする現象がよく知られている。
【0007】
このような自己修復・自己治癒機能は、腫瘍形成に対しても発揮されると考えられ、正常細胞から腫瘍細胞への何らかの情報伝達が存在すると予想された。そして、5’-ヌクレオチダーゼは、腫瘍患者の血清濃度の上昇が認められるところから(非特許文献4)、この情報伝達を担う化合物として、遺伝情報の保存や発現に関与し、生体内に常在するヌクレオシド誘導体が利用されると予想された。すなわち、ヌクレオシド誘導体は、腫瘍化した細胞に対してその活動を停止させる何らかの特性を有すると考えられた。また、この特性を有する化合物を利用することにより、腫瘍細胞への選択的作用の向上との従来の抗腫瘍剤にない優れた特性を有する抗腫瘍剤又は腫瘍治療用医薬組成物の創製が期待された。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開昭55-002601号公報
【特許文献2】特開昭61-148193号公報
【特許文献3】特開昭52-078887号公報
【0009】

【非特許文献1】Higashigawa M.ら、Med.Oncol. & Tumor Pharmacother.、7、223(1990)
【非特許文献2】Plunkett,W.ら、Cancer Research、51、6110(1991)
【非特許文献3】Hartmann K.U.ら、J.Biol.Chem.、236、3006(1961)
【非特許文献4】Schwartz MKら、Cancer、18:886(1965)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、生体内に常在し、正常な細胞、組織及び器官への影響が小さく、腫瘍細胞のみを増殖抑制又は死滅可能な、副作用がなく安全性の高い化合物を有効成分として含有する腫瘍の治療及び/又は予防のための医薬組成物、及び、前記化合物のスクリーニング方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、正常細胞が腫瘍細胞に対して細胞増殖候補化合物として、生体内に常在する化合物であり、かつ、腫瘍患者でその代謝系酵素の活性が亢進している化合物であるヌクレオシド誘導体、特にヌクレオチド誘導体を選択した。そして、本発明者らは、生体内常在性化合物の腫瘍細胞に対する抑制効果を評価し、チミジン誘導体が、正常細胞に影響しない濃度で腫瘍細胞に選択的に細胞増殖抑制作用及び細胞死惹起作用を有することを見出し、その構造活性相関を明らかにすることにより本発明を完成させた。
【0012】
具体的には、本発明は、下記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物を提供する。
【化1】
JP2015051946A_000002t.gif

前記式1において、
Xは、O又はS、
nは0、1又は2、
mは0ないし5の整数、
lは0、1又は2
RはH、-CH3、-CH2OH、リン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、又はR1のリン酸基と共有するリン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、
1はH、-CH3、-CH2OH、リン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、又は、前記Rのリン酸基を共有するリン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、
2はH、-CH3又は-CH2OH、
3はF、-NH2又はN3、及び、
Wは複素環及びその誘導体を表す。
【0013】
本発明の前記化合物において、前記Wは、ピリミジン基又はその誘導体の場合がある。
【0014】
本発明の前記化合物において、前記Wは、下記式2で表される場合がある。
【化2】
JP2015051946A_000003t.gif

前記式2において、R4及びR5は、独立して、H、-OH、-NH2、-CH3、-CH2CH3、-CH2OH、-NHCOCH3、-OCOCH3又は-CH2OCOCH3を表す。
【0015】
本発明の前記化合物において、前記式2のR4はアミノ基の場合がある。
【0016】
本発明の前記化合物において、
前記式1の、
XはO、
nは1、
mは1、
lは0、
RはH、
1は-CH2OH、リン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、又は、前記Rのリン酸基を共有するリン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、及び、
2はHの場合がある。
【0017】
本発明の前記化合物において、前記式1では、2-デオキシ-D-リボース及び2-ヒドロキシ-D-リボース、又は、その5’-1リン酸エステル体がWに結合する場合がある。
【0018】
本発明の前記化合物において、前記式1で表される化合物は、腫瘍細胞の細胞膜上の又は細胞外へ分泌されたヌクレオチダーゼでチミジンに代謝され、細胞に取り込まれる場合がある。
【0019】
本発明は、本発明の前記化合物及び/又はその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物を含有する医薬を提供する。
【0020】
本発明は、悪性腫瘍の治療及び/又は予防のための前記式1若しくは前記式2の化合物を提供する。
【0021】
本発明は、前記式1若しくは前記式2の化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物の有効量を含有することを特徴とする、悪性腫瘍の治療及び/又は予防のための医薬組成物を提供する。
【0022】
本発明は、前記式1で表される化合物に、さらに、細胞増殖抑制活性を有する他の化合物を含有する、悪性腫瘍の治療及び/又は予防のための医薬組成物を提供する。
【0023】
本発明の前記医薬組成物において、前記抗腫瘍活性を有する他の化合物は、パクリタキセル、タキサジエン、バッカチンIII、ドセタキセル、タクスチニンA、ブレビフォリオール、タキサスパインD、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、シスプラチン、ムスチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ミトラマイシン、ブレオマイシン、プロカルバジン、メトトレキサート、エトポシド、イリノテカン、タモキシフェン、イマチニブ、アフィディコリン、オファツムマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、イブリツモマブ チウキセタン、トラスツズマブ、パニツムマブ、モガムリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、及び、リツキシマブからなる群から選択される1種以上の化合物の場合がある。
【0024】
本発明は、培養細胞の細胞膜上に存在する酵素及び/又は培養細胞から細胞外に分泌される酵素により代謝されることにより、細胞内に取り込まれ、細胞増殖抑制作用を発揮する化合物のスクリーニング方法を提供する。
【0025】
本発明の前記スクリーニング方法において、前記培養細胞は、腫瘍細胞の場合がある。
【0026】
本発明の前記スクリーニング方法において、前記酵素は、ヌクレオチダーゼの場合がある。
【0027】
本発明の前記スクリーニング方法において、前記化合物は、下記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物の場合がある。
【化3】
JP2015051946A_000004t.gif

前記式1において、
Xは、O又はS、
nは0、1又は2、
mは0ないし5の整数、
lは0、1又は2
RはH、-CH3、-CH2OH、リン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、又はR1のリン酸基と共有するリン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、
1はH、-CH3、-CH2OH、リン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、又は、前記Rのリン酸基を共有するリン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、
2はH、-CH3又は-CH2OH、
3はF、-NH2又はN3、及び、
Wは複素環及びその誘導体を表す。
【0028】
本発明は、本発明の化合物又はその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物の有効量を、これを必要とする患者に投与するステップを含む、悪性腫瘍の治療、進行予防及び/又は予防方法を提供する。
【0029】
本発明の治療、進行予防及び/又は予防方法において、前記医薬組成物は、下記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の有効量を含む場合がある。
【化4】
JP2015051946A_000005t.gif

前記式1において、
Xは、O又はS、
nは0、1又は2、
mは0ないし5の整数、
lは0、1又は2
RはH、-CH3、-CH2OH、リン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、又はR1のリン酸基と共有するリン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、
1はH、-CH3、-CH2OH、リン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、又は、前記Rのリン酸基を共有するリン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、
2はH、-CH3又は-CH2OH、
3はF、-NH2又はN3、及び、
Wは複素環及びその誘導体を表す。
【0030】
本発明の前記方法において、前記Wは、ピリミジン基又はその誘導体の場合がある。
【0031】
本発明の前記方法において、前記Wは、下記式2で表される場合がある。
【化5】
JP2015051946A_000006t.gif

前記式2において、R4及びR5は、独立して、H、-OH、-NH2、-CH3、-CH2CH3、-CH2OH、-NHCOCH3、-OCOCH3又は-CH2OCOCH3を表す。
【0032】
本発明の前記方法において、前記式2のR4はアミノ基の場合がある。
【0033】
本発明の前記方法において、前記式1において、
XはO、
nは1、
mは1、
lは0、
RはH、
1は-CH2OH、リン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、又は、前記Rのリン酸基を共有するリン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、及び、
2はHの場合がある。
【0034】
本発明の前記方法において、前記式1では、2-デオキシ-D-リボース及び2-ヒドロキシ-D-リボース、又は、その5’-1リン酸エステル体がWに結合する場合がある。
【0035】
本発明の前記方法において、前記式1で表される化合物は、腫瘍細胞の細胞膜上又は腫瘍細胞から分泌されたヌクレオチダーゼでチミジンに代謝され、細胞に取り込まれる場合がある。
【0036】
本発明は、前記式1で表される化合物に、さらに、抗腫瘍活性を有する他の化合物及び薬学的に許容可能な添加物を併せて、悪性腫瘍の治療、進行予防及び/又は予防のためにその有効量を、これらを必要とする患者に投与するステップを含む、悪性腫瘍の治療、進行予防及び/又は予防方法を提供する。
【0037】
本発明の治療、進行予防及び/又は予防方法において、前記抗腫瘍活性を有する他の化合物は、パクリタキセル、タキサジエン、バッカチンIII、ドセタキセル、タクスチニンA、ブレビフォリオール、タキサスパインD、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、シスプラチン、ムスチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ミトラマイシン、ブレオマイシン、プロカルバジン、メトトレキサート、エトポシド、イリノテカン、タモキシフェン、イマチニブ、アフィディコリン、オファツムマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、イブリツモマブ チウキセタン、トラスツズマブ、パニツムマブ、モガムリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、及び、リツキシマブからなる群から選択される1種以上の化合物の場合がある。
【0038】
本発明は、悪性腫瘍の治療及び/又は予防のための医薬を製造するための下記式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩、及び、それらの溶媒和物の使用を提供する。
【化6】
JP2015051946A_000007t.gif

前記式1において、
Xは、O又はS、
nは0、1又は2、
mは0ないし5の整数、
lは0、1又は2
RはH、-CH3、-CH2OH、リン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、又はR1のリン酸基と共有するリン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、
1はH、-CH3、-CH2OH、リン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、又は、前記Rのリン酸基を共有するリン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、
2はH、-CH3、又は、-CH2OH、
3はF、-NH2又はN3、及び、
Wは複素環及びその誘導体を表す。
【0039】
本発明の前記使用において、前記Wは、ピリミジン基又はその誘導体の場合がある。
【0040】
前記Wは、下記式2で表される場合がある。
【化7】
JP2015051946A_000008t.gif

前記式2において、R4及びR5は、独立して、H、-OH、-NH2、-CH3、-CH2CH3、-CH2OH、-NHCOCH3、-OCOCH3又は-CH2OCOCH3を表す。
【0041】
本発明の前記使用において、前記式2のR4はアミノ基の場合がある。
【0042】
本発明の前記使用における前記式1において、
XはO、
nは1、
mは1、
lは0、
RはH、
1は-CH2OH、リン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、又は、前記Rのリン酸基を共有するリン酸基でエステル化されたヒドロキシメチル基、及び、
2はHの場合がある。
【0043】
本発明の前記使用における前記式1において、2-デオキシ-D-リボース及び2-ヒドロキシ-D-リボース、又は、その5’-1リン酸エステル体がWに結合する場合がある。
【0044】
本発明の前記使用において、前記式1で表される化合物は、腫瘍細胞の細胞膜上の、又は腫瘍細胞から分泌されたヌクレオチダーゼでチミジンに代謝され、細胞に取り込まれる場合がある。
【0045】
本発明は、さらに、細胞増殖抑制活性を有する他の化合物を含有する悪性腫瘍の治療及び/又は予防のための医薬を製造するための下記式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩、及び、それらの溶媒和物の使用を提供する。
【0046】
本発明の前記使用において、前記抗腫瘍活性を有する他の化合物は、パクリタキセル、タキサジエン、バッカチンIII、ドセタキセル、タクスチニンA、ブレビフォリオール、タキサスパインD、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、シスプラチン、ムスチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ミトラマイシン、ブレオマイシン、プロカルバジン、メトトレキサート、エトポシド、イリノテカン、タモキシフェン、イマチニブ、アフィディコリン、オファツムマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、イブリツモマブ チウキセタン、トラスツズマブ、パニツムマブ、モガムリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、及び、リツキシマブからなる群から選択される1種以上の化合物の場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】1mM又は10mMのAMP、GMP、TMP又はCMPが添加された培養条件で7日間培養したNHDF細胞の顕微鏡写真。図1のAないしIは、それぞれ、以下の被験化合物を含む培養条件の実験群を示す。A:対照、B:1mM AMP、C:1mM GMP、D:1mM TMP、E:1mM CMP、F:10mM AMP、G:10mM GMP、H:10mM TMP、I:10mM CMP。
【図2A】1mMのAMP、GMP、TMP又はCMPが添加された培養条件におけるNHDF細胞の生存細胞数(平均値±標準誤差、各n=6)の経時変化を表すグラフ。図2Aのプロットは、それぞれ、以下の被験化合物を含む培養条件の実験群を示す。○:対照、△:1mM AMP、▽:1mM GMP、□:1mM TMP、◇:1mM CMP。
【図2B】10mMのAMP、GMP、TMP又はCMPが添加された培養条件におけるNHDF細胞の生存細胞数(平均値±標準誤差、各n=6)の経時変化を表すグラフ。図2Bのプロットは、それぞれ、以下の培養条件の実験群を示す。○:対照、△:10mM AMP、▽:10mM GMP、□:10mM TMP、◇:10mM CMP。
【図3】1mM又は10mMのAMP、GMP、TMP又はCMPが添加された培養条件で9日間培養したHeLa細胞の顕微鏡写真。図3のAないしJは、それぞれ、以下の被験化合物を含む培養条件の実験群を示す。A:対照、B:1mM AMP、C:1mM GMP、D:1mM TMP、E:1mM CMP、F:10mM AMP、G:10mM GMP、H:10mM TMP、I:10mM CMP、J:対照。
【図4A】1mMのAMP、GMP、TMP又はCMPが添加された培養条件におけるHeLa細胞の生存細胞数(平均値±標準誤差、各n=6)の経時変化を表すグラフ。図4Aのプロットは、それぞれ、以下の被験化合物を含む培養条件の実験群を示す。○:対照、△:1mM AMP、▽:1mM GMP、□:1mM TMP、◇:1mM CMP。
【図4B】10mMのAMP、GMP、TMP又はCMPが添加された培養条件におけるHeLa細胞の生存細胞数(平均値±標準誤差、各n=6)の経時変化を表すグラフ。図2Bのプロットは、それぞれ、以下の被験化合物を含む培養条件の実験群を示す。○:対照、△:10mM AMP、▽:10mM GMP、□:10mM TMP、◇:10mM CMP。
【図5】10mMのAMP、GMP、TMP又はCMPが添加された培養条件におけるHL60細胞の生存細胞数(平均値±標準誤差、各n=6)の経時変化を表すグラフ。図5のプロットは、それぞれ、以下の被験化合物を含む培養条件の実験群を示す。○:対照、△:10mM AMP、▽:10mM GMP、□:10mM TMP、◇:10mM CMP。
【図6】1mM又は10mMのAMP、GMP、TMP又はCMPが添加された培養条件で7日間培養したNHDF細胞の顕微鏡写真。図6のAないしJは、それぞれ、以下の被験化合物を含む培養条件の実験群を示す。A:対照(非培地交換)、B:1mM AMP、C:1mM GMP、D:1mM TMP、E:1mM CMP、F:10mM AMP、G:10mM GMP、H:10mM TMP、I:10mM CMP、J:対照(培地交換)。
【図7A】1mMのTMP、TTP、TDP、チミジン又はチミンが添加された培養条件におけるHeLa細胞の生存細胞数(平均値±標準誤差、各n=6)の経時変化を表すグラフ。図7Aのプロットは、それぞれ、以下の被験化合物を含む培養条件の実験群を示す。○:対照、□:1mM TMP、△:1mM TTP、▽:1mM TDP、◇:1mM チミジン、×:1mM チミン。
【図7B】1mMのチミン、2-デオキシ-D-リボース、チミン+2-デオキシ-D-リボース、TMP、又は、チミジンが添加された培養条件におけるHeLa細胞の生存細胞数(平均値±標準誤差、各n=6)の経時変化を表すグラフ。図7Bのプロットは、それぞれ、以下の被験化合物を含む培養条件の実験群を示す。○:対照、×:1mM チミン、●:1mM 2-デオキシ-D-リボース、▲:1mM チミン+1mM 2-デオキシ-D-リボース、□:1mM TMP、◇:1mM チミジン。
【図8A】1mMのTMP、cTMP、UMP、3’-TMP又はrTMPが添加された培養条件におけるHeLa細胞の生存細胞数(平均値±標準誤差、各n=6)の経時変化を表すグラフ。図8Aのプロットは、それぞれ、以下の被験化合物を含む培養条件の実験群を示す。○:対照、□:1mM TMP、△:1mM cTMP、◇:1mM UMP、▽:1mM 3’-TMP、×:1mM rTMP。
【図8B】1mMのTMP、dUMP、UMP又はrTMPが添加された培養条件におけるHeLa細胞の生存細胞数(平均値±標準誤差、各n=6)の経時変化を表すグラフ。図8Bのプロットは、それぞれ、以下の被験化合物を含む培養条件の実験群を示す。○:対照、□:1mM TMP、●:1mM dUMP、◇:1mM UMP、×:1mM rTMP。
【図9】1mM又は10mMのTMP、dUMP、UMP又はrTMPが添加された培養条件で7日間培養したHeLa細胞の顕微鏡写真。図9のAないしIは、それぞれ、以下の被験化合物を含む培養条件の実験群を示す。A:対照、B:1mM TMP、C:1mM dUMP、D:1mM UMP、E:1mM rTMP、F:10mM TMP、G:10mM dUMP、H:10mM UMP、I:10mM rTMP。
【図10】1mM、2mM、5mM又は10mMのTMP又はrTMPが添加された培養条件で7日間培養したHeLa細胞の顕微鏡写真。図10のAないしHは、それぞれ、以下の被験化合物を含む培養条件の実験群を示す。A:10mM TMP、B:5mM TMP、C:2mM TMP、D:1mM TMP、E:10mM rTMP、F:5mM rTMP、G:2mM rTMP、H:1mM rTMP。
【図11】培地交換して7日間培養したHeLa細胞、及び、培地交換せずに7日培養したHeLa細胞に対するTMPの影響を示す顕微鏡写真。図17のAないしFは、それぞれ、以下の被験化合物を含む培養条件の実験群を示す。A:対照(非培地交換)、B:1mM TMP(非培地交換)、C:10mM TMP(非培地交換)、D:対照(培地交換)、E:1mM TMP(培地交換)、F:10mM TMP(培地交換)。
【図12】培地交換して7日間培養したHeLa細胞、及び、培地交換せずに7日培養したHeLa細胞に対するチミジン又はTMPの影響を示す顕微鏡写真。図17のAないしHは、それぞれ、以下の被験化合物を含む培養条件の実験群を示す。A:対照(非培地交換)、B:1mM チミジン(非培地交換)、C:10mM チミジン(非培地交換)、D:1mM TMP(非培地交換)、E:対照(培地交換)、F:1mM チミジン(培地交換)、G:10mM チミジン(培地交換)、H:1mM TMP(培地交換)。
【図13】種々の濃度のTMP及び/又は抗腫瘍剤が添加された培養条件で3日間又は7日間培養したHeLa細胞の顕微鏡写真。図19のAないしJは、それぞれ、以下の培養条件の実験群を示す。A:1μM シスプラチン(3日間)、B:10μM シスプラチン(3日間)、C:対照(3日間)、D:0.01μg/mL マイトマイシンC(3日間)、E:0.1μg/mL マイトマイシンC(3日間)、F:1mM TMP(3日間)、G:10nM パクリタキセル(3日間)、H:100nM パクリタキセル(3日間)、I:1mM TMP(7日間)、J:対照(7日間)。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本明細書において、ヌクレオシド誘導体とは、ヌクレオシドが化学的に修飾された化合物であって、生体内で代謝され、細胞増殖抑制作用及び/又は細胞死惹起作用を発揮する化合物及びその塩をいう。前記ヌクレオシドは、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン及びビタミンB2を含むが、これらに限定されない。前記ヌクレオシド誘導体は、リン酸エステル誘導体を含む。前記ヌクレオシド誘導体は、アデノシン5’-1リン酸、アデノシン5’-2リン酸、アデノシン5’-3リン酸、グアノシン5’-1リン酸、グアノシン5’-2リン酸、グアノシン5’-3リン酸、チミジン5’-1リン酸、チミジン5’-2リン酸、チミジン5’-3リン酸、ウリジン5’-1リン酸、ウリジン5’-2リン酸、ウリジン5’-3リン酸、シチジン5’-1リン酸、シチジン5’-2リン酸、シチジン5’-3リン酸、デオキシアデノシン5’-1リン酸、デオキシアデノシン5’-2リン酸、デオキシアデノシン5’-3リン酸、デオキシグアノシン5’-1リン酸、デオキシグアノシン5’-2リン酸、デオキシグアノシン5’-3リン酸、2’-ヒドロキシチミジン5’-1リン酸、2’-ヒドロキシチミジン5’-2リン酸、2’-ヒドロキシチミジン5’-3リン酸、デオキシウリジン5’-1リン酸、デオキシウリジン5’-2リン酸、デオキシウリジン5’-3リン酸、デオキシシチジン5’-1リン酸、デオキシシチジン5’-2リン酸、デオキシシチジン5’-3リン酸、2’-デオキシチミジン3’-1リン酸、チミジン3’,5’-環状1リン酸、シタラビン(Ara-C)、ゲムシタビン、2’3’-ジデオキシチミジン5’-3リン酸、ブチルフェニルデオキシグアノシン3リン酸、カペシタビン、塩酸アンシタビン、ネララビン、ペントスタチン、及び、ブロクスウリジンを含むが、これらに限定されない。

【0049】
本明細書において、ヌクレオシド誘導体は、エナンチオマー、ジアステレオマー、及び/又は、それらの混合物を含む。

【0050】
本明細書において、リン酸エステル誘導体は脱リン酸化され、腫瘍細胞に対して特異的な抗腫瘍活性を発揮する場合がある。前記リン酸エステル誘導体は、ヌクレオチダーゼによって脱リン酸化される場合がある。前記ヌクレオチダーゼはホスホジエステル結合を加水分解できる。

【0051】
前記リン酸エステル誘導体に誘導化されることにより、腫瘍細胞膜上の、又は腫瘍細胞から分泌されたヌクレオチダーゼで脱リン酸化され、腫瘍細胞に特異的な増殖抑制活性を発揮するヌクレオチド誘導体として、チミジン、シタラビン、カペシタビン、塩酸アンシタビン、ネララビン、ペントスタチン及びブロクスウリジンのリン酸化エステル誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。

【0052】
これらのヌクレオチド誘導体は、例えば、特開昭55-002601号公報等に記載の方法や定法に基づき、チミジン、シタラビン、ジドブジン、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、カペシタビン、塩酸アンシタビン、ゲムシタビン、ネララビン、クロファラビン、ペントスタチン及びブロクスウリジンをリン酸エステル化又はその誘導体とすることにより、合成することができるが、これらに限定されない。

【0053】
好ましくは、前記ヌクレオチド誘導体は、下記式3で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩、及び、それらの溶媒和物である。
【化8】
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式3において、R6は-Hもしくは-COR8(R8は、置換基を有していてもよいC1~C3のアルキル基)、R7は-(PO2-O)n9(nは、1ないし3の整数、R9は-Hもしくは-COR10、R10は置換基を有していてもよいC1~C3のアルキル基)を表し、又は、R6とR7はこれらが結合する原子と一緒になってPを含むヘテロ環を形成してもよい。

【0054】
好ましくは、前記ヌクレオシド誘導体はチミジン誘導体であり、該チミジン誘導体は、チミジン5’-1リン酸、チミジン5’-2リン酸、チミジン5’-3リン酸、チミジン3’,5’-リン酸及びその薬学的に許容可能な塩を含むが、これらに限定されない。チミジン5’-2リン酸、チミジン5’-3リン酸、及び、チミジン3’,5’-リン酸は、腫瘍細胞膜上の、又は腫瘍細胞から分泌されたヌクレオチダーゼにより速やかにリン酸エステルが加水分解され、チミジン5’-1リン酸に代謝される。好ましくは、前記チミジン誘導体はチミジン5’-1リン酸である。チミジン5’-1リン酸は、チミジンに代謝される場合がある。

【0055】
前記式1の化合物は定法により薬学的に許容可能な塩にすることができる。薬学的に許容可能な塩は、酢酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等のアミノ酸塩等を含むが、これらに限定されない。

【0056】
また、リン酸基を有するヌクレオシド誘導体は定法により種々のアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアミノ酸との塩にすることができる。具体的には、式1の化合物の塩は薬学的に許容可能な塩であり、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アスパラギン塩、グルタミン塩等の場合があるが、これらに限定されない。

【0057】
さらに、式1の化合物は、水和物又は薬学的に許容可能な各種溶媒和物も形成でき、本発明に含まれる。

【0058】
本発明の医薬組成物は、散剤、顆粒剤、丸剤、錠剤若しくは内用液剤等の経口製剤、又は、注射剤(静脈内、筋肉内等)、坐剤、軟膏剤、経皮用貼付剤等の非経口投与製剤のいずれの形態であってもよいが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物は、製剤として、当分野において通常用いられている薬剤用担体、賦形剤等を含む。

【0059】
前記経口製剤において、有効成分は、乳糖、マンニトール、ブドウ糖、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、デンプン、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の少なくとも1つの希釈剤と混合されてもよい。

【0060】
本発明の医薬組成物は、前記希釈剤以外の添加剤、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒプロメロース若しくはマクロゴール6000のような結合剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム若しくはタルクのような滑沢剤、クロスポピドンのような崩壊剤、ラクトースのような安定化剤、グルタミン酸又はアスパラギン酸のような溶解補助剤、ツイーン80のような可塑剤、酸化チタン若しくはカルナウバロウのような光沢剤、マクロゴール6000のような被覆剤、又は、三二酸化鉄のような着色剤を含有してもよい。

【0061】
錠剤又は丸剤は、必要により、ショ糖、ゼラチン若しくは寒天などの糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質のフィルムで被膜されてもよい。

【0062】
経口投与のための内用液剤は、薬学的に許容可能なシロップ剤、懸濁シロップ剤、ドライシロップ、乳剤、懸濁剤、リモナーデ剤又はエリキシル剤等を含む。また、前記内用液剤は、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水及びエタノールを含むが、これらに限定されない溶剤で調整できる。さらに、前記内用液剤は、不活性な希釈剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤又は防腐剤等を含有してもよい。

【0063】
非経口投与製剤としての注射剤は、無菌の水性又は非水性の溶液性注射剤、懸濁性注射剤又は乳濁性注射剤を含むが、これらに限定されない。水性の溶液剤又は懸濁剤には、例えば注射用蒸留水及び生理食塩液等が含まれる。非水溶性の溶液剤又は懸濁剤には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類、又はポリソルベート80(局方名)、トロメタモール等が含まれる。これらの注射剤は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、又は溶解補助剤を含んでもよい。これらの注射剤は、例えば定法の濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらの注射剤は、予め製造された無菌の固体組成物を、使用時に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解又は懸濁して使用されてもよい。

【0064】
前記医薬品添加剤は、前記例示された医薬品添加剤以外の公知の化合物を、公知の用法及び用量(例えば、医薬品添加物辞典2007(日本医薬品添加剤協会編、薬事日報社、東京、2007)に記載)で使用できる。本発明の医薬組成物の製造は、好ましくは、医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理規範に適合した条件(good manufacturing practice、GMP基準)で実施される。

【0065】
本発明の経口用製剤及び非経口用製剤の好ましい処方例は、以下の処方例を含むが、これらに限定されない。例えば、前記経口用製剤の好ましい処方例は、1錠(重量0.6g)中、チミジン5’-1リン酸300mgに、カルナウバロウ、クロスカルメロースナトリウム、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース(置換度タイプ:2910)、マクロゴール6000、D-マンニトールなどを添加し、打錠した後に、フィルムコーティングした錠剤である。例えば、前記非経口用製剤の好ましい処方例は、トロメタモール1694mgを含む精製水20mLにチミジン5’-1リン酸1gを溶解し、pH調整剤と等張化剤で、pH8.2~8.6、浸透圧比:約4に調整した注射剤である。

【0066】
本明細書において「増殖抑制」とは、細胞増殖を抑制する作用をいい、腫瘍細胞の増殖を抑制すること、及び、腫瘍細胞の細胞死を惹起又は腫瘍細胞を死滅すること、腫瘍形成を抑制すること、腫瘍の成長を抑制すること、並びに、腫瘍、悪性腫瘍、がん又は癌の治療又は予防を行うことを含む。治療は、根治的治療及び予防的治療を含み、予防は、発症予防、進行予防、転移予防及び再発予防を含むが、これらに限定されない。

【0067】
本明細書における「腫瘍」は、エイズ関連カポジ肉腫、悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫、細網肉腫、リンパ肉腫、ホジキン病)、悪性骨・軟部腫瘍、肝臓がん、急性白血病、結腸・直腸がん、骨肉腫、子宮頸がん、小細胞肺がん、白血病(急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、及び悪性リンパ腫等)、小児悪性固形腫瘍(ユーイング肉腫ファミリー腫瘍,横紋筋肉腫,神経芽腫,網膜芽腫,肝芽腫その他肝原発悪性腫瘍,腎芽腫その他腎原発悪性腫瘍等)、消化器がん(胃がん、胆のう・胆管がん、膵臓がん、肝がん、結腸がん、直腸がん等)、食道がん、腎腫瘍、成人急性非リンパ性白血病骨髄異形成症候群(Myelodysplastic Syndrome)、前立腺がん、多発性骨髄腫、胆管がん・胆道がん、乳がん、尿路上皮がん、肺がん、肺小細胞がん、非小細胞肺がん、有棘細胞がん、卵黄嚢腫瘍、卵管がん、卵巣がん、睾丸腫瘍、絨毛がん、胚細胞腫瘍(精巣腫瘍,卵巣腫瘍,性腺外腫瘍)、膀胱がん、膵がん、顆粒膜細胞腫、脳腫瘍を含むが、これらに限定されない。好ましくは、前記腫瘍は、子宮頸がん、ならびに、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病及び悪性リンパ腫などの白血病を含む。

【0068】
本明細書における「患者」は、前記腫瘍を有する動物である。前記動物は、サル、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ヤギ、ブタ、ヒツジ、ラクダ、ウマ、ウシ、ネコ及びイヌ等、特に限定されないが、好ましくはヒトである。

【0069】
本明細書における「有効量」は、前記患者体内で本発明の効果を発揮するために必要な下記式1で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩の投与量であって、薬物作用を生じる最小有効量から、薬物作用を生じ、かつ、中毒作用を生じない最大有効量までの間をいう。

【0070】
前記ヌクレオシド誘導体又はその薬学的に許容可能な塩及び/又はその溶媒和物の投与量(1日量)は、疾患の症状、投与対象の年齢、人種、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定され、単回投与(1日1回投与)又は1日複数回投与される。

【0071】
前記ヌクレオシド誘導体は又はその薬学的に許容可能な塩及び/又はその溶媒和物の投与量は、通常、成人1人あたり約1日量0.01~20g、好ましくは1日量0.1~10.0gである。そして、前記投与量が1日1~4回に分けて経口又は非経口投与される。

【0072】
本発明のスクリーニング方法において、ヌクレオシド誘導体として、微生物、菌類、植物及び動物から調製される化合物、化学的に合成される化合物等が評価できる。これらの化合物は、定法に従い調製又は合成できる。例えば、特開昭55-002601号公報等に記載の方法により市販の原料より合成できるが、これらに記載の方法に限定されない。本発明のスクリーニング方法において、培養細胞は、当業者に標準的な方法で調製し、培養できる。培養方法及び培養条件は、培養する細胞の種類によって適切に選択される。前記培養細胞は、ヒト、実験動物から採取され、培養された細胞、及び、細胞株を含むが、これらに限定されない。好ましくは、前記培養細胞は、腫瘍細胞である。前記培養細胞の由来は、サル、マウス及びラット等、特に限定されないが、好ましくはヒトである。ヒトの腫瘍細胞株は、例えば、American Type Culture Collection(ATCC)や理化学研究所バイオリソースセンターの細胞バンクから入手可能であり、例えば、Hep G2細胞、HEK293細胞、HeLa細胞、Jurkat細胞、HL-60細胞を含むが、これらに限定されない。本発明のスクリーニング方法において、細胞増殖抑制作用は、被験化合物(ヌクレオシド誘導体)を添加した実験群の細胞数、DNA量、mRNA量又はタンパク質量を、被験化合物を添加していない対照群の細胞数、DNA量、mRNA量又はタンパク質量と比較して評価される場合がある。前記実験群及び対照群の細胞数、DNA量、mRNA量及びタンパク質量の測定値は、定法により標準化した後に比較される場合がある。細胞数、DNA量、mRNA量又はタンパク質量は、定法により測定できる。例えば、細胞数は、顕微鏡観察、セルソーター、FACS等によって測定できる。例えば、DNA量は、PCR、サザンブロット等によって測定できる。例えば、mRNA量は、RT-PCR、ノザンブロット等によって測定できる。例えば、タンパク質量は、ELISA、ウェスタンブロット、免疫沈降法、免疫比濁法等によって測定できる。本発明のスクリーニング方法において、スクリーニング条件(例えば、被験化合物以外の化合物の種類、濃度や、培養の温度、時間や、エンドポイント等)が変更される場合がある。なお、本発明のスクリーニング方法において、培養細胞の代わりに、実験動物個体(例えば、ノックアウトマウス、トランスジェニックマウス、腫瘍細胞を移植されたヌードマウス等)、又はこれらの動物から摘出した腫瘍組織を用いて、ヌクレオシド誘導体の細胞増殖抑制作用、細胞死惹起作用、副作用等が評価されてもよい。

【0073】
以下に説明する本発明を実施するための形態及び実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の主旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。

【0074】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
【実施例1】
【0075】
NHDF細胞の増殖に対するヌクレオシド誘導体(ヌクレオチド)の影響
材料及び方法
被験化合物含有培地の調製
被験化合物として、市販のアデノシン5’-1リン酸2ナトリウム塩(以下AMPと記載)(306-50741、和光純薬工業株式会社)、グアノシン5’-1リン酸2ナトリウム塩(以下GMPと記載)(078-04361、和光純薬工業株式会社)、チミジン5’-1リン酸2ナトリウム塩(以下TMPと記載)(T7004、シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)、及び、シチジン5’-1リン酸2ナトリウム塩(以下CMPと記載)(030-05363、和光純薬工業株式会社)が使用された。基本培地として、10%FBS(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を含むDMEM(1000mg/L D-グルコース、L-グルタミン、5mM HEPES緩衝液、及び、110mg/L ピルビン酸ナトリウム)(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)が使用された。前記AMP、GMP、TMP及びCMPは、それぞれ、1mM又は10mMとなるように前記基本培地(DMEM、10%FBS、抗生物質不含)に添加され、被験化合物含有培地が調製された。
【実施例1】
【0076】
細胞培養
市販のNHDF細胞(ヒト正常皮膚線維芽細胞:Lonza Walkersville, Inc., Walkersville,MD, USA)が、6500細胞個/cm2となるように12穴プレート(旭硝子、東京)に播種された(各群n=6)。その後、前記NHDF細胞は、前記被験化合物含有培地(1mM又は10mMのAMP、GMP、TMP又はCMP)で培養された。対照として、前記NHDF細胞は、前記被験化合物を含まない基本培地で培養された。
【実施例1】
【0077】
観察
前記NHDF細胞の変化が、ヌクレオチド存在下0、1、3、5、7及び9日後に倒立位相差顕微鏡(ライカマイクロシステムズ株式会社 DM IL LED)で経時的に観察された。
【実施例1】
【0078】
細胞数の測定
観察後、各ウェルの細胞が0.25%トリプシン溶液(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)で剥離され、生存細胞数が血球計算盤を用いて細胞数を測定することにより求められた。
【実施例1】
【0079】
統計解析
各実験群と対照群とについて、ポストホックな双方向性の繰り返しのある分散分析(two-way repeated ANOVA with post-hoc analysis)が行われた。ポストホック分析には、Tukey HSD testが使用された。
【実施例1】
【0080】
結果
図1は、1mM又は10mMのAMP、GMP、TMP又はCMPが添加された培養条件で7日間培養したNHDF細胞の顕微鏡写真である。図2Aは、1mMのAMP、GMP、TMP又はCMPが存在する培養条件におけるNHDF細胞の生存細胞数(平均値±標準誤差、各n=6)の経時変化を表すグラフである。1mMのAMP実験群及び1mMのCMP実験群では、細胞は対照群と変わらずに増殖した。1mMのGMP実験群では、細胞は、対照群、1mMのAMP実験群、及び、1mMのCMP実験群よりも底面に広がって接着し、細胞数の増加は少なかった。1mMのTMP実験群では、細胞形態は、対照群、1mMのAMP実験群、及び、1mMのCMP実験群と変わらないが、全体的に密度が低いままコンフルエントになった。また、1mMのTMP実験群の細胞数は、対照群、1mMのAMP実験群、及び、1mMのCMP実験群に比べて少なかった(図1、図2A)。細胞数について、対照群と比較して、1mMのAMP実験群及び1mMのCMP実験群は統計学的な有意差が認められなかったが、1mMのGMP実験群及び1mMのTMP実験群は統計学的な有意差が認められた(p<0.0001)。すなわち、1mMのAMP及びCMPはNHDF細胞に作用しなかった。また、1mMのGMP及びTMPは細胞増殖を抑制したが、細胞死を惹起しなかった。
【実施例1】
【0081】
図2Bは、10mMのAMP、GMP、TMP又はCMPが添加された培養条件におけるNHDF細胞の生存細胞数(平均値±標準誤差、各n=6)の経時変化を表すグラフである。10mMのAMP実験群では、細胞は培養開始後5日まで対照群と比較すると低速に増殖したが、細胞死が培養後7日に惹起された。10mMのGMP実験群では、細胞は培養後3日まで殆ど増殖せず、細胞死が培養後5日に惹起された。10mMのTMP実験群では、細胞は培養後7日までは対照群より密度が低い状態で増殖し、培養後9日で全体的に網状の形態であった。細胞数は培養後9日まで緩やかに増加した(図1、図2B)。10mMのCMP実験群では、細胞は培養後5日まで低速で増加したが、細胞死が培養後7日に惹起された。細胞数について、対照群と比較して、10mMの4群全は統計学的な有意差が認められた(p<0.0001)。
【実施例1】
【0082】
以上の結果から、1mMのAMP実験群及び1mMのCMP実験群では正常細胞の増殖への影響が認められなかった。lmMのGMP実験群では、対照群を含む他群と相違して、細胞は底面に大きく広がって接着したため、一定面積あたりの細胞数は減少した。しかし、細胞密度の増加は認められず、細胞間隙を認めた。本結果は、細胞同士のコンタクトインヒビションによる増殖阻害の可能性を示すものである。
【実施例1】
【0083】
一方、1mMのTMP実験群では、NHDF細胞は細胞密度が低い状態でコンフルエントになった。本結果は、細胞がお互いにより強固に接着し、細胞そのものが他群よりも大きくなった可能性、若しくはコンタクトインヒビションにより細胞数が少なくなった可能性を示すものである。
【実施例1】
【0084】
10mMのAMP実験群、10mMのGMP実験群及び10mMのCMP実験群それぞれで細胞が死滅した。一方、10mMのTMP実験群では観察期間中に細胞死が惹起されなかった。また、培養後9日では細胞密度が不均一になったが、細胞死は惹起されなかった。TMPは他のヌクレオチド(AMP、GMP及びCMP)と比較して高濃度においてもNHDF細胞に対して細胞死を惹起しなかった。すなわち、10mMのAMP、GMP及びCMPはNHDF細胞を死滅するため、AMP、GMP及びCMPは、腫瘍細胞以外の正常細胞に細胞死を惹起することが認められた。10mMのTMPは、NHDF細胞を死滅しないため、正常細胞に対して細胞死を惹起しないことが認められた。
【実施例2】
【0085】
HeLa細胞の増殖に対するヌクレオシド誘導体(ヌクレオチド)の影響
材料及び方法
被験化合物含有培地の調製、細胞培養、観察、細胞数の測定、及び、統計解析は、原則として実施例1と同様に行われた。前記細胞培養では、HeLa細胞(ヒト子宮頸がん細胞)(JCRB細胞バンク、大阪)が7000細胞個/cm2で12穴プレート(旭硝子、東京)に播種された(各群n=6)。
【実施例2】
【0086】
結果
図3は、1mM又は10mMのAMP、GMP、TMP又はCMPが添加された培養条件で9日間培養したHeLa細胞の顕微鏡写真である。図4Aは、1mMのAMP、GMP、TMP又はCMPが存在する培養条件におけるHeLa細胞の生存細胞数(平均値±標準誤差、各n=6)の経時変化を表すグラフである。1mMのAMP実験群、1mMのGMP実験群、及び、1mMのCMP実験群では、細胞は対照群と同様に増殖した。1mMのTMP実験群では他の実験群に比べて細胞増殖が抑制された。細胞数について、対照群と比較して、1mMのAMP実験群、1mMのGMP実験群、及び、1mMのCMP実験群は統計学的な有意差が認められなかったが、1mMのTMP実験群のみは統計学的な有意差が認められた(P<0.0001)(図3、図4A)。すなわち、1mMのAMP、GMP及びCMPはHeLa細胞に作用せず、1mMのTMPのみが細胞の増殖を抑制することが明らかとなった。
【実施例2】
【0087】
図4Bは、10mMのAMP、GMP、TMP又はCMPが添加された培養条件におけるHeLa細胞の生存細胞数(平均値±標準誤差、各n=6)の経時変化を表すグラフである。対照群では細胞は培養後9日まで急速に増殖した。AMP実験群では細胞増殖が抑制され、細胞は、対照群と比較して培養後9日まで低速で増殖した。GMP実験群では細胞は殆ど増殖しなかったが、細胞形状の変化が培養後3日に現れ、細胞死が培養後5日に惹起された。TMP実験群では細胞は培養後5日までAMP実験群とほぼ同じ速度で増殖したが、細胞死が培養後7日に惹起された。CMP実験群では細胞の増殖速度は培養後5日まで対照群とほぼ同じであったが、それ以降は対照群に比べて遅かった。細胞数について、対照群と比較して、AMP実験群(p<0.0001)、GMP実験群(p<0.0001)、TMP実験群(p<0.0001)、及び、CMP群(p=0.001)は統計学的な有意差が認められた(図3及び図4B)。すなわち、10mMのAMP、GMP及びTMPは腫瘍細胞のHeLa細胞を死滅し、CMPは増殖をわずかに抑制することが明らかとなった。
【実施例2】
【0088】
実施例1及び2の結果から、TMP及びCMPに対する感受性が、正常細胞と、腫瘍細胞とでは異なることが明らかとなった。ここで、TMPは、生体に常在する化合物である。したがって、これらの結果は、正常細胞を死滅させず、腫瘍細胞を死滅させるTMPは、副作用の少ない抗腫瘍剤として有用であることを示すものである。
【実施例3】
【0089】
HL60細胞の増殖に対するヌクレオシド誘導体(ヌクレオチド)の影響
材料及び方法
被験化合物含有培地の調製
被験化合物として、市販のAMP、GMP、TMP及びCMPが使用された。浮遊培養用基本培地として、市販のPRMI1640(L-グルタミン、25mM HEPES緩衝液)(ライフテクノロジーズジャパン株式会社、東京)が使用された。前記AMP、GMP、TMP及びCMPは、それぞれ、10mMとなるように浮遊培養用基本培地(PRMI1640、10%FBS、抗生物質不含)に添加され、被験化合物含有培地が調製された。
【実施例3】
【0090】
細胞培養
HL60細胞(ヒト前骨髄性白血病細胞)(JCRB細胞バンク、大阪)が、160000細胞個/mlで浮遊培養用12穴プレート(BD,Franklin Lakes,NJ,USA)に播種された(各群n=6)。その後、前記HL60細胞は、前記被験化合物含有培地(10mMのAMP、GMP、TMP又はCMP)で培養された。対照として、前記HL60細胞は、前記被験化合物を含まない基本培地で培養された。
【実施例3】
【0091】
観察
前記HL60細胞の変化が、0、1、3、5、7、9及び14日後に経時的に観察された。
【実施例3】
【0092】
細胞数の測定
培地中に浮遊している細胞が培地中に均一に分布するように懸濁された後、細胞数が血球計算盤を用いて測定することにより求められた。
【実施例3】
【0093】
統計解析
各実験群と対照群とについて、ポストホックな双方向性の繰り返しのある分散分析(Two-way repeated ANOVA with post-hoc analysis)が行われた。ポストホック分析には、Tukey HSD testが使用された。
【実施例3】
【0094】
結果
図5は、10mMのAMP、GMP、TMP又はCMPが添加された培養条件におけるHL60細胞の生存細胞数(平均値±標準誤差、各n=6)の経時変化を表すグラフである。細胞数について、対照群と比較して、CMP実験群は統計学的な有意差が認められ、AMP実験群、GMP実験群及びTMP実験群は統計学的な有意差が認められなかった(3群ともにp<0.0001)。つまり、AMP、GMP及びTMPは、HeLa細胞に対してと同様に、HL60細胞に対して増殖抑制効果を有するが、CMPは増殖抑制効果を有さなかった。
【実施例3】
【0095】
以上の結果から、生体内常在性のヌクレオチド化合物による影響が、細胞の種類で、特に正常細胞と腫瘍細胞との間で異なること、及び、10mMのTMPは、腫瘍細胞を死滅し、1mMのTMPは、腫瘍細胞の増殖を抑制することが明らかとなった。また、TMPの細胞増殖抑制効果は、HeLa細胞及びHL60細胞で類似することが示された。
【実施例4】
【0096】
コンフルエント状態の正常細胞に対するヌクレオシド誘導体(ヌクレオチド)の影響
本実施例では、NHDF細胞のコンフルエント状態を正常組織のモデルとした。そして、NHDF細胞が密集している状態で高濃度ヌクレオシド誘導体(ヌクレオチド)の影響が評価された。
【実施例4】
【0097】
材料及び方法
被験化合物含有培地の調製、細胞培養、観察、細胞数の測定、及び、統計解析は、原則として実施例1と同様に行われた。NHDF細胞(ヒト正常皮膚線維芽細胞)は6500細胞個/cm2となるように12穴プレート(旭硝子、東京)に播種され、コンフルエントになるまで基本培地で培養された(各群n=6)。その後、前記NHDF細胞はPBS(カルシウム/マグネシウム フリー、ライフテクノロジーズジャパン株式会社、東京)で2回洗浄され、細胞培養培地が、培養後7日に基本培地から被験化合物含有培地に切り換えられた。前記NHDF細胞は、前記被験化合物含有培地(1mM又は10mMのAMP、GMP、TMP又はCMP)で培養され、NHDF細胞の変化が、培地交換0、1、3、5、7、9及び14日後に経時的に観察された。
【実施例4】
【0098】
結果
図6は、1mM又は10mMのAMP、GMP、TMP又はCMPの培養条件で7日間培養したNHDF細胞の顕微鏡写真である。1mMのAMP実験群、1mMのGMP実験群、1mMのTMP実験群、1mMのCMP実験群、非培地交換対照群、及び、培地交換対照群では、明確な変化はなく、線維芽細胞に典型的なコンフルエント状態が維持された。
【実施例4】
【0099】
10mMのAMP実験群の細胞の状態は、培地交換後1日まで非培地交換対照群と培地交換対照群と同様であった。しかし、培地交換後3日から接着が弱化し、培地交換後5日以降は徐々に接着細胞数が減少し、細胞間が疎密になった。培地交換後14日では細胞が配向性を持たない網状に並んだ。
【実施例4】
【0100】
10mMのGMP実験群では、コンフルエント状態から、培地交換3日後に細胞が存在しない空白エリアが出現した。同エリアは徐々に大きくなり、細胞がやがて死滅した(培地交換14日後)。
【実施例4】
【0101】
10mMのTMP実験群の細胞の状態は両対照群と同様であったが、培地交換7日後から細胞間間隙が認められた。
【実施例4】
【0102】
10mMのCMP実験群では細胞が存在しない空白エリアは培地交換7日後には認めなかった。しかし、前記空白エリアは培地交換9日後に出現し、培地交換14日後までに拡大した。
【実施例4】
【0103】
以上の結果から、1mMのヌクレオチドのいずれも細胞の形態の変化を認めず、本濃度では密集した正常細胞、すなわち正常組織には影響しないことが示された。10mMの4種のヌクレオチドの全てで、コンフルエント状態から何らかの形態変化があった。ヌクレオチドの種類によって形態は異なったが、10mMのヌクレオチドは正常組織に影響を与える可能性があることが示された。また、細胞間に十分な間隔がある状態で被験化合物含有培地で培養を開始した場合と、コンフルエント状態から被験化合物含有培地で培養を開始した場合とで、ヌクレオチドの細胞への影響が異なることが明らかとなった。
【実施例5】
【0104】
腫瘍細胞の増殖に対するチミジン関連分子の影響
材料及び方法
被験化合物含有培地の調製
被験化合物として、市販のTMP、チミジン5’-3リン酸ナトリウム塩(以下TTPと記載)(T0251、シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)、チミジン5’-2リン酸3ナトリウム塩(以下TDPと記載)(152139、和光純薬工業株式会社)、チミジン(205-08091、和光純薬工業株式会社)、チミン(205-01391、和光純薬工業株式会社)、2-デオキシ-D-リボース(045-00473、和光純薬工業株式会社)、5-メチル-ウリジン5’-1リン酸2ナトリウム塩(以下rTMPと記載)(Hongene Biotechnology、上海)、2’-デオキシチミジン3’-1リン酸2ナトリウム塩(以下3’-TMPと記載)(Hongene Biotechnology、上海)、ウリジン5’-1リン酸2ナトリウム塩(以下UMPと記載)(214-00284、和光純薬工業株式会社)、チミジン3’,5’-環状1リン酸ナトリウム塩(以下cTMPと記載)(T6754、シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)、及び、2’-デオキシウリジン5’-1リン酸2ナトリウム塩(以下dUMPと記載)(D3876、シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)が使用された。基本培地として、10%FBS(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を含むDMEM(1000mg/L D-グルコース、L-グルタミン、5mM HEPES緩衝液、及び、110mg/L ピルビン酸ナトリウム)(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)が使用された。前記TMP、TTP、TDP、チミジン、チミン、2-デオキシ-D-リボース、rTMP、3’-TMP、UMP、cTMP及び/又はdUMPは、それぞれ、1mM、2mM、5mM又は10mMとなるように前記基本培地(DMEM、10%FBS、抗生物質不含)に添加され、被験化合物含有培地が調製された。
【実施例5】
【0105】
細胞培養
細胞培養は、原則として実施例2と同様に行われた。TMP、TTP、TDP、チミジン及びチミンの曝露実験(図7A)の細胞培養では、HeLa細胞が7800細胞個/cm2で12穴プレートに播種された。TMP、TTP、TDP、チミジン及びチミンは、それぞれ、1mMの最終濃度で使用された。チミン、2-デオキシ-D-リボース、チミン+2-デオキシ-D-リボース、TMP、及び、チミジンの曝露実験(図7B)の細胞培養では、HeLa細胞が9000細胞個/cm2で12穴プレートに播種された。チミン、2-デオキシ-D-リボース、チミン(1mM)+2-デオキシ-D-リボース(1mM)、TMP、及び、チミジンは、それぞれ、1mMの最終濃度で使用された。TMP、cTMP、UMP、3’-TMP及びrTMPの曝露実験(図8A)の細胞培養では、HeLa細胞が13000細胞個/cm2で12穴プレートに播種された。TMP、cTMP、UMP、3’-TMP及びrTMPは、それぞれ、1mMの最終濃度で使用された。TMP、dUMP、UMP及びrTMPの曝露実験(図8B、図9)の細胞培養では、HeLa細胞が7000細胞個/cm2で12穴プレートに播種された。TMP、dUMP、UMP及びrTMPは、それぞれ、1mM又は10mMの最終濃度で使用された。TMP及びrTMPの曝露実験(図10)の細胞培養では、HeLa細胞が6500細胞個/cm2で12穴プレートに播種された。TMP及びrTMPは、それぞれ、1mM、2mM、5mM及び10mMの最終濃度で使用された。
【実施例5】
【0106】
観察、細胞数の測定、及び、統計解析は、実施例2と同様に行われた。
【実施例5】
【0107】
結果
TMP、TTP、TDP、チミジン及びチミンの曝露実験
図7Aは、1mMのTMP、TTP、TDP、チミジン又はチミンが添加された培養条件におけるHeLa細胞の生存細胞数(平均値±標準誤差、各n=6)の経時変化を表すグラフである。細胞数について、対照群と比較して、TMP実験群、TDP実験群、TTP実験群、及び、チミジン実験群は統計学的有意な細胞増殖抑制作用が認められ(4実験群ともにp<0.0001)、チミジン実験群は統計学的な有意差が認められなかった。また、TMP実験群と比較して、TTP実験群、TDP実験群、及び、チミジン実験群は統計学的有意な作用が認められなかった。
【実施例5】
【0108】
チミン、2-デオキシ-D-リボース、チミン+2-デオキシ-D-リボース、TMP、及び、チミジンの曝露実験
図7Bは、1mMのチミン、2-デオキシ-D-リボース、チミン+2-デオキシ-D-リボース、TMP、又は、チミジンが添加された培養条件におけるHeLa細胞の生存細胞数(平均値±標準誤差、各n=6)の経時変化を表すグラフである。細胞数について、対照群と比較して、TMP実験群、及び、チミジン実験群は統計学的な有意差が認められ(2実験群ともにp<0.0001)、チミン実験群、2-デオキシ-D-リボース実験群、チミン+2-デオキシ-D-リボース実験群は統計学的有意な作用が認められなかった。
【実施例5】
【0109】
TMP、cTMP、UMP、3’-TMP及びrTMPの曝露実験
図8Aは、1mMのTMP、cTMP、UMP、3’-TMP又はrTMPが添加された培養条件におけるHeLa細胞の生存細胞数(平均値±標準誤差、各n=6)の経時変化を表すグラフである。細胞数について、対照群と比較して、TMP実験群(p<0.0001)、3’-TMP実験群(p<0.0001)、及び、cTMP実験群(p=0.0004)は統計学的有意な細胞増殖抑制作用が認められた。cTMP実験群では細胞増殖は、培養開始後5日まで対照群と同様であった。その後、細胞数が減少し、細胞数は培養開始後9日でTMP実験群と同程度になった。rTMP実験群及びUMP実験群は統計学的な有意差が認められなかった。TMP実験群と比較して、3’-TMP実験群は統計学的な有意差が認められずTMP実験群と同様の細胞増殖抑制作用が認められたが、その他の実験群全て統計学的有意に弱い細胞増殖抑制作用しか認められなかった(4実験群ともにp<0.0001)。
【実施例5】
【0110】
TMP、dUMP、UMP及びrTMPの曝露実験
図8Bは、1mMのTMP、dUMP、UMP又はrTMPが添加された培養条件におけるHeLa細胞の生存細胞数(平均値±標準誤差、各n=6)の経時変化を表すグラフである。細胞数について、対照群と比較して、TMP実験群(p<0.0001)のみは統計学的有意な細胞増殖抑制作用が認められた。dUMP実験群では細胞増殖が培養開始後5日からわずかに抑制されたが、対照群と比較して統計学的な有意差は認められなかった。対照群と比較して、UMP実験群及びrTMP実験群は統計学的な有意差が認められなかった。
【実施例5】
【0111】
図9は、1mM又は10mMのTMP、dUMP、UMP又はrTMPが添加された培養条件で7日間培養したHeLa細胞の顕微鏡写真である。10mMのrTMP実験群及びTMP実験群では、細胞が死滅した。10mMのdUMP実験群では、細胞は1mMのdUMP実験群と同程度に増殖抑制されたが、死滅しなかった。10mMのUMP実験群では、細胞は対照群と同程度に増殖した。
【実施例5】
【0112】
TMP及びrTMPの曝露実験
図10は、1mM、2mM、5mM又は10mMのTMP又はrTMPの培養条件で7日間培養したHeLa細胞の顕微鏡写真である。5mM及び10mMのTMP実験群では細胞が培養開始後7日に死滅し始めた。1mM及び2mMのTMP実験群では、細胞は増殖抑制されたが、死滅しなかった。5mM及び10mMのrTMP実験群では、細胞が培養開始後5日に死滅し始め、培養開始後7日にほぼ死滅した。2mMのrTMP実験群では、細胞は増殖抑制されたが、死滅しなかった。1mMのrTMP実験群では、細胞は増殖抑制されず、対照群と同程度に増殖した。
【実施例5】
【0113】
以上の結果から、細胞増殖は、チミン実験群及び対照群で相違が認められず、チミンは細胞増殖抑制作用を有しないことが示された。したがって、細胞増殖抑制作用の発現には、チミジン型のヌクレオチド構造が必要であり、糖部分に結合したリン酸基の数は細胞増殖抑制効果に関係しないことが明らかとなった。1mMのcTMP実験群では、HeLa細胞は培養開始後5日まで対照群と同様に増加した後、細胞数が減少した。この結果は、cTMPはTMPと比較して細胞内への取込又は活性型への変換に時間を要するためである。また、rTMPも同様の理由により、細胞増殖抑制効果を発揮するまでに時間を要するため、培養開始後7日において、1mMのrTMP実験群では細胞増殖が抑制されず、10mMのrTMP実験群では細胞増殖が抑制された。そして、これらの結果は、cTMP及びrTMPはプロドラッグとして使用できることを示すものである。
【実施例6】
【0114】
腫瘍細胞の増殖に対する培地交換の影響(1)
材料及び方法
被験化合物含有培地の調製、細胞培養、及び、観察は、原則として実施例2と同様に行われた。細胞培養では、HeLa細胞が6500細胞個/cm2で12穴プレートに播種された。その後、前記HeLa細胞は、前記被験化合物含有培地(1mM又は10mMのTMP)で培養された。1つの実験群は24時間ごとに新鮮な被験化合物含有培地に交換された(培地交換実験群)。別の実験群は24時間ごとに新鮮な被験化合物含有培地に交換せずに、同一の培地で培養した(非培地交換実験群)。また、前記細胞培養では、24時間ごとに新鮮な基本培地に交換された対照群(培地交換対照群)と、24時間ごとに新鮮な基本培地に交換されなかった対照群(非培地交換対照群)とが使用された。
【実施例6】
【0115】
結果
図11は、培地交換して7日間培養したHeLa細胞、及び、培地交換せずに7日間培養したHeLa細胞に対するTMPの影響を示す顕微鏡写真である。培地交換実験群では、実施例2の結果と同様に、細胞死が10mMのTMPで培養後7日に惹起された。また、1mMのTMPは細胞増殖を抑制した。非培地交換実験群では、細胞死は1mM及び10mMのいずれの濃度のTMPにおいても培養後7日に惹起されず、細胞は非培地交換対照群と同程度に増殖した。
【実施例7】
【0116】
腫瘍細胞の増殖に対する培地交換の影響(2)
材料及び方法
被験化合物含有培地の調製、細胞培養、及び、観察は、原則として実施例6と同様に行われた。細胞培養では、HeLa細胞が6500細胞個/cm2で12穴プレートに播種された。その後、前記HeLa細胞は、前記被験化合物含有培地(1mM又は10mMのチミジン、又は、1mMのTMP)で培養された。1つの実験群は24時間ごとに新鮮な被験化合物含有培地に交換された(培地交換実験群)。別の実験群は24時間ごとに新鮮な被験化合物含有培地に交換せずに、同一の培地で培養した(非培地交換実験群)。また、前記細胞培養では、24時間ごとに新鮮な基本培地に交換された対照群(培地交換対照群)と、24時間ごとに新鮮な基本培地に交換されなかった対照群(非培地交換対照群)とが使用された。
【実施例7】
【0117】
結果
図12は、培地交換して7日間培養したHeLa細胞、及び、培地交換せずに7日間培養したHeLa細胞に対するチミジン又はTMPの影響を示す顕微鏡写真である。チミジン培地交換実験群(1mM及び10mM)では、チミジン非培地交換実験群(1mM及び10mM)の結果と同様に、腫瘍細胞の増殖が抑制され、チミジンの腫瘍細胞抑制効果は濃度依存的であった。チミジン非培地交換実験群では、細胞死が10mMのチミジンで培養後5日に惹起された。また、チミジン培地交換実験群(1mM)、チミジン非培地交換実験群(1mM)、及び、TMP培地交換実験群(1mM)では、腫瘍細胞の増殖抑制効果は、ほぼ同一であった。さらに、培地交換対照群、非培地交換対照群、及び、TMP非培地交換実験群(1mM)では、細胞死は惹起されなかった。
【実施例7】
【0118】
前記のとおり、悪性腫瘍患者では、健常者と比較して、血中のヌクレオチダーゼ濃度が高いことが知られている。そこで、腫瘍細胞であるHeLa細胞もヌクレオチダーゼを細胞外に放出しており、ヌクレオシド誘導体、特にTMP、TDP及びTTPは、前記ヌクレオチダーゼによってチミジンに代謝(例えば、脱リン酸化)されるために、チミジン、TMP、TDP、TTPはいずれも腫瘍細胞を死滅及び/又は増殖抑制を示したものと考えられる(図7参照)。そして、培地交換実験群では、ヌクレオチダーゼ自体及び/又はチミジンが除去されるために、腫瘍細胞の死滅及び/又は増殖抑制が惹起されない(図11及び12参照)。したがって、ヌクレオシドを化学的に修飾し(例えば、リン酸化)、腫瘍組織でその上昇を認めるヌクレオチダーゼにより代謝されることによって、腫瘍細胞に対する高い選択毒性を有するヌクレオシド誘導体の抗腫瘍剤を開発することができる。
【実施例8】
【0119】
腫瘍細胞の形態に対する抗腫瘍剤及びTMPの影響
材料及び方法
被験化合物含有培地の調製、細胞培養、及び、観察は、原則として実施例2と同様に行われた。前記被験化合物として、TMP(1mM)、シス-ジアンミン白金(II)ジクロリド(以下シスプラチンと記載)(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)(1μM及び10μM)、マイトマイシンC(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)(0.01μg/mL及び0.1μg/mL)、又は、パクリタキセル(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)(10nM及び100nM)が培養培地に添加された。前記細胞培養において、TMP実験群、シスプラチン実験群及びマイトマイシンC実験群では、HeLa細胞が7800細胞個/cm2で12穴プレートに播種された。また、パクリタキセル実験群ではHeLa細胞が7000細胞個/cm2で12穴プレートに播種された。
【実施例8】
【0120】
結果
図13は、種々の濃度のTMP及び/又は抗腫瘍剤が添加された培養条件で3日間又は7日間培養されたHeLa細胞の顕微鏡写真である。対照群と比較して、10μMのシスプラチン実験群及び0.1μg/mLのマイトマイシンC実験群では、扁平で大きく広がった形態の細胞が培養後3日に出現した。同様に、1mMのTMP実験群では、扁平で大きく広がった形態の細胞が培養後7日に出現した。
【実施例8】
【0121】
シスプラチン実験群、マイトマイシンC実験群では、これらの化合物を添加して増殖抑制した細胞で典型的に見られる、扁平で大きく広がった形態の細胞が出現した。したがって、TMP実験群では、ヌクレオチダーゼにより代謝された後、シスプラチンやマイトマイシンCと同様の作用機序(DNAの複製及び/又は転写の阻害)で、腫瘍細胞の増殖が抑制されることを示すものである。
【実施例8】
【0122】
まとめ
以上の結果より、以下の点が明らかとなった。
(1)高濃度ヌクレオチド処理による細胞への影響は、細胞増殖及び細胞死惹起作用を指標とした場合、正常細胞と腫瘍細胞とで異なる。
(2)これらの細胞への影響に対して、AMP、GMP、TMP、及び、CMPとで各々影響が異なる。
(3)TMP及びその誘導体は、他のヌクレオチドと相違し、正常細胞に影響しない濃度で、腫瘍細胞に対して細胞増殖抑制作用、及び、細胞死惹起作用が認められる。
(4)さらに、TMP及びその誘導体は、正常組織モデルである密集正常細胞には1mMの濃度では作用しない。
(5)TMP及びその誘導体(TDP、TTP、cTMP、rTMP等)による腫瘍細胞に選択性の高い増殖抑制作用の発現には、リボース又はデオキシリボースの糖とチミンとを有するヌクレオシドであることが必要であり、リン酸エステルのリン酸基の数は影響しない。
(6)TMP及びその誘導体による腫瘍細胞の増殖抑制作用の発現には、TMP等が代謝される必要があり、この代謝酵素は、腫瘍組織で濃度が上昇しているヌクレオチダーゼであることが示された。
(7)TMP及びその誘導体による正常細胞と比較した場合の腫瘍細胞への増殖抑制作用の発現は、腫瘍組織で上昇したヌクレオチダーゼによる活性発現体への代謝が関与する。
【実施例8】
【0123】
これらの結果から、腫瘍治療及び/又は予防用医薬組成物の有効成分としてのTMPの有用性が明らかとなった。即ち、正常組織には作用せず腫瘍細胞のみに細胞死を惹起出来れば、患者に負荷をかけずに治療することが可能である。
【実施例8】
【0124】
生体内、特に細胞内に豊富に存在するヌクレオチドは、副作用がなく安全性が高い。前記結果は、生体内常在性のTMP、もしくは、腫瘍細胞膜上の、又は細胞外でヌクレオチダーゼにより代謝されるTDP、TTP、cTMP、又は、これらの塩及び/又は溶媒和物を有効成分として含有する医薬組成物を用いれば、正常な細胞、組織及び器官には影響を与えずに腫瘍細胞のみを死滅させることができることを示すものである。
【実施例8】
【0125】
また、本結果は、腫瘍細胞の細胞膜上の、又は腫瘍細胞から分泌されたヌクレオチダーゼによる脱リン酸化により活性体に代謝され、抗腫瘍活性を発現するヌクレオシド類似構造を有する抗腫瘍剤のリン酸エステル誘導体、又は、これら化合物の塩及び/又は溶媒和物も、プロドラッグとして、正常な細胞、組織及び器官には影響を与えずに腫瘍細胞のみを死滅させることができることを示すものである。
図面
【図1】
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【図2A】
1
【図2B】
2
【図3】
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【図4A】
4
【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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