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明細書 :磁気特性測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-064280 (P2015-064280A)
公開日 平成27年4月9日(2015.4.9)
発明の名称または考案の名称 磁気特性測定方法
国際特許分類 G01N  23/04        (2006.01)
G01N   1/28        (2006.01)
G01R  33/12        (2006.01)
FI G01N 23/04
G01N 1/28 G
G01R 33/12 M
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2013-198163 (P2013-198163)
出願日 平成25年9月25日(2013.9.25)
発明者または考案者 【氏名】矢野 正雄
【氏名】小野 寛太
出願人 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【識別番号】504151365
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100099759、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 篤
【識別番号】100077517、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 敬
【識別番号】100087413、【弁理士】、【氏名又は名称】古賀 哲次
【識別番号】100123593、【弁理士】、【氏名又は名称】関根 宣夫
【識別番号】100144417、【弁理士】、【氏名又は名称】堂垣 泰雄
審査請求 未請求
テーマコード 2G001
2G017
2G052
Fターム 2G001AA01
2G001AA04
2G001BA11
2G001CA01
2G001GA01
2G001KA12
2G001KA20
2G001LA02
2G001MA05
2G001RA04
2G017CA12
2G017CB02
2G017CB18
2G017CB20
2G052EC14
2G052EC18
2G052GA19
要約 【課題】磁性材料を構成している多結晶バルク体における、結晶粒単位での磁気特性を測定することが可能な方法を提供する。
【解決手段】X線を試料に照射し、試料を透過したX線を検出することにより試料の磁気特性を測定する方法であって、X線を透過させる方向の試料の厚みが50~1000nmであることを特徴とする方法。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
X線を試料に照射し、試料を透過したX線を検出することにより試料の磁気特性を測定する方法であって、X線を透過させる方向の試料の厚みが50~1000nmであることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記X線が円偏光X線である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
試料の同一の部位に右回り円偏光X線と左回り円偏光X線を入射させ、この右回り円偏光と左回り円偏光の入射におけるX線の吸収の差である磁気円二色性を検出し、これにより試料の磁気特性を測定することを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
偏光の向きに対し試料の磁場の方向とその反対の方向のX線の吸収の差を検出し、これにより試料の磁気特性を測定することを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記試料が、集束イオンビームを用いてエッチングすることにより、50~1000nmの厚みに加工される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
磁場中において測定を行うことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性材料の磁気特性を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の観察域に励起光又は電子線からなる入射ビームを照射し、試料の表面から放出される放出電子を介して、試料の表面近傍の性状又は構造を観察、解析、分析等を行うことが知られていた。ところが、従来の方法では熱消磁もしくは磁場消磁させた状態の試料を用いて観察しているにすぎず、永久磁石等を着磁した状態で観察した例は報告されていなかった。そこで、磁性材料の磁気特性を観察する方法として、試料に放射光等の入射ビームを照射し、試料から放出された放出電子を検出して、試料の微細状況を示す観察像を形成する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2010-151455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁性体の磁気特性は、その微小領域の磁気特性によってきめられており、従って新規な磁性材料開発にはそのような微小領域の磁気特性評価を行うことが必要不可欠である。しかしながら、特許文献1にも記載されているように、カー効果顕微鏡、磁気力顕微鏡、高電子顕微鏡などが磁性体の磁気情報(磁区、磁気モーメント等)を得る手法として知られているが、いずれも試料の最表面の磁気情報のみしか得ることができず、複数のナノスケールの結晶粒で構成される多結晶体の場合、平均情報は取り出すことはできるものの、結晶粒1つのみの情報を取り出すことはできなかった。
【0005】
そこで、本願発明は、磁性材料を構成している多結晶バルク体における、結晶粒単位での磁気特性を測定することが可能な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願発明によれば、X線を試料に照射し、試料を透過したX線を検出することにより試料の磁気特性を測定する方法であって、X線を透過させる方向の試料の厚みが50~1000nmであることを特徴とする方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本願発明によれば、試料を50~1000nmという、測定可能なX線の透過率を達成し、あるいは結晶粒径厚さに対応する厚さに加工することにより、高精度で透過X線を検出し、単一結晶粒の磁気特性を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】エッチング前の試料の斜視図である。
【図2】エッチング後の試料の斜視図である。
【図3】観察工程を示す斜視図である。
【図4】X線磁気円二色性(XMCD)の原理を示す略図である。
【図5】走査型透過X線顕微鏡を用いた、本発明の方法を実施する装置の配置図である。
【図6】本発明の方法を実施する装置の配置図である。
【図7】X線透過率の試料厚さ依存性の測定結果を示すグラフである。
【図8】試料側面からのTEM像である。
【図9】加工後の試料形状を示す斜視図である。
【図10】X線透過量より求めた試料の厚さ分布を示す。
【図11】試料のXMCDの区間分布を示す。
【図12】磁気特性測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願発明の方法において、まず、磁気特性を測定しようとする試料を、その観察箇所の厚みが50~1000nmとなるように加工する。この厚みは、試料を構成する材料、試料を透過させるX線、このX線のエネルギー等によってきまるが、X線の透過率が1%以上であれば十分検出することができ、この透過率を達成するために試料の厚みを1000nm以下とする。好ましくは、試料の厚みは結晶粒の厚さ、例えば50~100nmとすることにより、結晶粒単位での磁気特性の分析が可能となる。また、100nm以下の分解能でのイメージングが可能となり、磁場印加が局所領域に与える影響を調べることができる。

【0010】
この加工を行うには、特に制限はなく各種の方法を用いることができるが、1000nm以下という精度で薄膜化するためには、集束イオンビームを用いてエッチングすることが好ましい。具体的には、図1に示す試料1に集束ビーム2をあててエッチングを行う。こうして、図2に示すように、試料1の目的とする観察部位を、厚さ(t)1000nm以下の精度で残すことができる。

【0011】
ここで試料としては、磁気特性を測定しようとする各種材料のものを用いることができる。例えば、軟磁性材料、硬磁性材料、複数の磁性相を有する材料などを用いることができる。また、集束イオンビーム2を発生させる装置としては、Gaイオンビーム等の微細なイオンビームを放出するイオン銃及びイオン光学系と、イオンビームを試料表面上で走査させる機構からなる、一般的な集束イオンビーム装置を用いることができる。

【0012】
集束イオンビーム2により試料をエッチングした後、図3に示すように、観察部位にX線3を透過させて、透過したX線を検出することにより試料の磁気特性を測定する。

【0013】
試料に透過させるX線は、10nm程度に集光した円偏光X線を用いることが好ましい。具体的には、右回り円偏光と左回り円偏光を発生するX線発生装置から出たX線3が、試料1の測定部位に入射する。試料を透過したX線は、検出器で検出される。ここで、X線発生装置から右円偏光X線が出射される場合の透過X線強度IRと、左円偏光X線が出射される場合の透過X線強度ILを交互に測定することにより、これらの差である磁気円二色性を検出する。これが、X線が試料に入射する場所における試料内部磁化に対応する。続けて、試料を二次元に走査しながら試料の各点でこの測定を行うことにより、二次元データを得ることができる。あるいは、右円偏光と左円偏光のいずれか一方を用い、この偏光の向きに対して試料の磁場の方向のX線の吸収と、試料の磁場に方向に対して反対の方向のX線の吸収を測定し、その差から磁気特性を検出することもできる。

【0014】
さらに詳細に説明すれば、図4に示すX線磁気円二色性(XMCD)の原理を用いて試料の磁気情報を抽出している。入射光として特定の軌道間の電子励起が起こるエネルギーにX線のエネルギーを調整することで、特定の原子のみの情報を抽出することができるため、この手法は元素選択性を有する。また、円偏光を用いることで、特定元素の磁気モーメントの向きを知ることができる。

【0015】
図4に示すように、円偏光角運動量方向と原子の角運動量方向に応じて吸収スペクトルが変化する。(1)円偏光X線の角運動量と原子角運動量が平行の場合と、(3)円偏光X線の角運動量と原子角運動量が反平行の場合の差分(これを円二色性という)から、軌道角運動量、スピン角運動量、磁気モーメントといった磁性に関する基礎物性を知ることができる。

【0016】
そして、図5に示すように、集光した放射光X線を用いて、試料位置を高精度に走査することによって、XMCDの試料位置依存性を知ることができる。

【0017】
図6に、本発明の方法に使用する、FZP(Fresnel Zone Plate)、OSA(Order-Sorting Aperture)、試料及び検出器の配置図を示す。この構成において、FZP、OSA、試料及び検出器のそれぞれにおいて、x、y、zの3軸制御が可能であり、すべてのステージをピエゾ素子にすることにより、粗動ステージのnm単位での高精度の位置再現が可能になる。また、真空中かつ磁場中での高効率なX線検出を行うため、軽量かつ磁場中での使用が可能な光ファイバー、及び広いダイナミックレンジを持つAPD(アバランシェフォトダイオード)用いることが好ましい。さらに、モーターやレーザなどの熱を発生する部品を排除することにより、従来の問題であって熱ドリフトによる分解能劣化を防ぐことができる。これは、ナノ結晶磁石の単一粒子のXMCDを測定するためには必須である。さらに、磁場中での測定を可能にするため、部品、素子をすべて非磁性とすることが好ましく、磁場中での測定を可能とする超伝導マグネットと組み合わせることにより、装置構成全体をコンパクトにすることができる。
【実施例】
【0018】
試料としてNd2Fe14BとSm2Fe173を用い、集束イオンビームにて加工し、X線透過率の試料厚さ依存性を測定した。Nd2Fe14Bの場合、Ndの吸収端(X線エネルギー=980.4eV)、Sm2Fe173の場合、Smの吸収端(X線エネルギー=1083.3eV)で計算した。この結果を図7に示す。
【実施例】
【0019】
図7に示す結果より、透過率0.01(1%)以上を分析可能な厚さと設定すれば、試料厚さの測定可能な範囲は、Nd2Fe14Bの場合、上限値は750nm以下、500nm以下、さらには100nm以下と設定することができ、Sm2Fe173の場合、上限値は1000nm以下、500nm以下、さらには100nm以下と設定することができ、下限値は50nm以上と設定することができる。
【実施例】
【0020】
試料としてNd-Fe-B磁石を用い、試料側面からのTEM像を取得した。この像を図8に示すが、この図より、結晶粒1個の大きさはおよそ50~100nmであると見積もられる。
【実施例】
【0021】
そこで、図9に示すような加工後の試料形状を狙い、集束イオンビーム法を用いて試料加工を行った。得られた試料について、X線透過量を測定し、このX線透過量より求めた厚さ分布を図10に示す。試料厚さは、下式より求めることができる。
【実施例】
【0022】
t=λln(I0/I)
上式中、t:試料厚さ
λ:物質固有のX線透過率
0:入射X線強度
I:透過X線強度
【実施例】
【0023】
図10に示すように、集束イオンビームにより、狙いの試料厚さである50~1000nmの厚さに試料を加工することができていることがわかる。
【実施例】
【0024】
こうして集束イオンビームにより加工した試料に対し、円偏光X線を照射し、磁気特性を測定する。図11にXMCDの空間分布を示す。図中、白・黒のコントラストは磁気モーメントの向きの違いを示しており、これが磁性体の磁区像に相当する。図中(A)の部分の磁気特性は、図12に示すように、981eVと1003eVにピークを持つことがわかる。このスペクトル解析から、スピン磁気モーメント、軌道磁気モーメントといった、結晶粒1個の磁気情報を得ることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 試料1
2 集束ビーム
3 X線
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図9】
7
【図12】
8
【図8】
9
【図10】
10
【図11】
11