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明細書 :ポリ乳酸微粒子の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5918736号 (P5918736)
公開番号 特開2015-067616 (P2015-067616A)
登録日 平成28年4月15日(2016.4.15)
発行日 平成28年5月18日(2016.5.18)
公開日 平成27年4月13日(2015.4.13)
発明の名称または考案の名称 ポリ乳酸微粒子の製造方法
国際特許分類 C08J   3/14        (2006.01)
C08L 101/16        (2006.01)
FI C08J 3/14 ZBP
C08L 101/16
請求項の数または発明の数 3
全頁数 6
出願番号 特願2013-199978 (P2013-199978)
出願日 平成25年9月26日(2013.9.26)
審査請求日 平成27年5月13日(2015.5.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
発明者または考案者 【氏名】八尾 滋
【氏名】岩田 昇子
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000578、【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
審査官 【審査官】中山 基志
参考文献・文献 国際公開第2012/105140(WO,A1)
特表2011-512810(JP,A)
特開2009-242728(JP,A)
特開2008-208172(JP,A)
調査した分野 C08J3/00-3/28;99/00
C08L101/16
特許請求の範囲 【請求項1】
ポリ乳酸をクロロフォルムに溶解した溶液にエタノールを加えてから攪拌し、その後静置してポリ乳酸微粒子を析出させるポリ乳酸微粒子の製造方法であって、
前記エタノールを加える量は、前記エタノールを加えた後の前記溶液におけるポリ乳酸の濃度が1.70~1.80wt%の範囲内となる量であることを特徴とするポリ乳酸微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記エタノールを加える量は、前記エタノールを加えた後の前記溶液に白濁が生じる量であることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸微粒子の製造方法。
【請求項3】
カードハウス構造を有するポリ乳酸微粒子を析出させることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリ乳酸微粒子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸微粒子の製造方法関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料から製造される樹脂微粒子は、表面積が大きいことにより、種々の機能を発現する。このような樹脂微粒子は、近年、化粧品パウダー、塗料等、多くの技術分野において利用されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】WO2011-132680
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂微粒子を含む製品を廃棄する際、樹脂微粒子を回収することはほぼ不可能であり、樹脂微粒子はそのまま環境中に流出されている。化石燃料から製造される樹脂微粒子は生分解されにくいため、流出された樹脂微粒子は環境面での負荷となる。
【0005】
ところで、ポリ乳酸は、バイオマスであり、かつ生分解性を有するため、化石燃料から製造される樹脂微粒子の代わりにポリ乳酸微粒子を用いれば、環境面での負荷を軽減できる。しかしながら、ポリ乳酸微粒子を容易に製造する方法は知られていない。
【0006】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、ポリ乳酸微粒子を容易に製造できる製造方法提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のポリ乳酸微粒子の製造方法は、ポリ乳酸を第1の溶媒に溶解した溶液に、前記第1の溶媒よりポリ乳酸の溶解度が低い第2の溶媒を加え、ポリ乳酸微粒子を析出させることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ポリ乳酸微粒子を容易に製造することができる。本発明で製造するポリ乳酸微粒子は、例えば、カードハウス構造等の機能構造を有する微粒子とすることができる。ここで、機能構造とは、何らかの機能を発現する構造を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】1Aは、倍率4000倍でポリ乳酸微粒子を観察したときのSEM写真であり、1Bは、倍率1000倍でポリ乳酸微粒子を観察したときのSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を説明する。ポリ乳酸は、乳酸がエステル結合により重合した化合物である。ポリ乳酸の分子量は、5万~20万の範囲が好適である。ポリ乳酸としては、例えば、市販品(例えば、株式会社武蔵野化学研究所製のPLA AL lot No.PLL10529等)を用いることができる。また、ポリ乳酸は、例えば、植物(例えば、トウモロコシ、イモ類、ビート、サトウキビ等)から取り出したデンプンを発酵することで乳酸を得て、その乳酸を重合させて製造することができる。ポリ乳酸を構成する乳酸は、L体であってもよいし、D体であってもよいし、両者が混在していてもよい。

【0012】
製造するポリ乳酸微粒子の粒径は、例えば、2~20μmとすることができる。なお、この粒径は、電子顕微鏡観察、コールターカウンター、あるいは光散乱法等の方法で測定した値である。

【0013】
第1の溶媒としては、ポリ乳酸を溶解可能なものを適宜選択して用いることができる。第1の溶媒としては、例えば、クロロフォルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6-ジクロロトルエン等の炭化水素系溶媒の他、各種エステル系溶媒、ケトン系溶媒、カルボン酸系溶媒等が挙げられる。

【0014】
第2の溶媒を加える前の溶液におけるポリ乳酸の濃度は、2.5~2.8wt%の範囲が好ましい。この範囲内であることにより、ポリ乳酸微粒子が一層生成し易くなる。
第2の溶媒としては、第1の溶媒よりもポリ乳酸の溶解度が低い溶媒を適宜選択して用いることができる。第2の溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。

【0015】
溶液の温度は、例えば、第2の溶媒を加える前、及び加えた後において、それぞれ、常温(例えば25℃)とすることができる。また、ポリ乳酸微粒子の製造方法における一部又は全部の工程において、適宜、溶液の温度を調整(例えば加温又は冷却)してもよい。

【0016】
第2の溶媒の添加量は、第2の溶媒を加えた後の溶液におけるポリ乳酸の濃度(以下、添加後濃度とする)が1.65~2.30(好ましくは1.70~1.80)wt%の範囲内となる量が好ましい。添加後濃度が1.65wt%以上(好ましくは1.70wt%以上)である場合、第2の溶媒を添加した後の溶液にポリ乳酸微粒子の凝集体が析出し難い。また、添加後濃度が2.30wt%以下(好ましくは1.80wt%以下)である場合、ポリ乳酸微粒子が溶液中に生成し易い。

【0017】
第2の溶媒の添加後、例えば、溶液を攪拌することができる。攪拌することにより、ポリ乳酸微粒子の凝集を軽減することができる。攪拌の手段としては、例えば、撹拌子、撹拌翼、ディスペンサー等を用いることができる。例えば、上記の攪拌後、溶液を静置することで、ポリ乳酸微粒子を沈殿させることができる。

【0018】
溶液中で析出したポリ乳酸微粒子は、周知の方法(例えば吸引濾過や溶媒蒸発等)により溶媒と分離し、取り出すことができる。
本発明のポリ乳酸微粒子は、例えば、上述した製造方法で製造できる。本発明のポリ乳酸微粒子は、カードハウス構造を有する。そのため、ポリ乳酸微粒子の表面積が非常に大きくなり、例えば、皮脂の吸着や光散乱能等の用途において優れた特性を有する。なお、カードハウス構造とは、特許第3696415号公報、特許第2621145号公報等に記載されたものであり、トランプのカードが重なり合った様な構造を意味する。

【0019】
本発明のポリ乳酸微粒子は、ポリ乳酸のみから成っていてもよいし、ポリ乳酸とともに、他の成分を含んでいてもよい。また、本発明のポリ乳酸微粒子は、表面の一部又は全部を、ポリ乳酸以外の成分から成る層で覆われていてもよい。
(実施例)
1.ポリ乳酸微粒子の製造方法
常温下で、ポリ乳酸をクロロフォルム(第1の溶媒の一実施形態)に溶解し、ポリ乳酸のクロロフォルム溶液(以下、ポリ乳酸溶液とする)を調製した。このとき、ポリ乳酸として、株式会社武蔵野化学研究所製のPLA AL lot No.PLL10529を用いた。また、ポリ乳酸溶液におけるポリ乳酸の濃度は、2.7wt%とした。

【0020】
次に、常温下で、ポリ乳酸溶液にエタノール(第2の溶媒の一実施形態)を添加した。添加後の溶液におけるポリ乳酸濃度は1.74wt%であった。エタノールの添加後、溶液中に白濁、凝集体が形成された。この凝集体は、析出したポリ乳酸微粒子の凝集体である。

【0021】
次に、攪拌子を用いて、30分間、溶液を攪拌した。この攪拌により、溶液中の凝集体が分散した。攪拌終了後、溶液を1日静置すると、ポリ乳酸微粒子の沈殿が生じた。その後、吸引濾過により、沈殿したポリ乳酸微粒子を分離し、乾燥させた。

【0022】
2.ポリ乳酸微粒子の評価
上述した製造方法で得られたポリ乳酸微粒子をカーボンテープに貼り付け、60秒間スパッタリングをした後、電子顕微鏡(SEM)観察を行った。なお、スパッタリングは、SEM観察中にポリ乳酸微粒子が溶けることを防止するための処理である。

【0023】
観察時に撮影したSEM写真を図1A、1Bに示す。この写真から、直径10μm程度のポリ乳酸微粒子が得られたことが確認できた。また、ポリ乳酸微粒子がカードハウス構造を有することが確認できた。

【0024】
3.ポリ乳酸微粒子の製造方法が奏する効果
(1)本実施例の製造方法によれば、生分解性高分子から成るポリ乳酸微粒子を容易に製造することができる。

【0025】
(2)製造されたポリ乳酸微粒子はカードハウス構造を有し、その表面積が非常に大きいため、例えば、皮脂の吸着や光散乱能等の用途において優れた特性を有する。
(3)本実施例の製造方法では、揮発性でない有機溶媒を使用しないため、溶媒除去が容易である。

【0026】
(4)ポリ乳酸微粒子は生分解性を有するため、環境面での負荷を軽減できる。
(5)ポリ乳酸微粒子自身がアンチエイジング機能を有している。
(参考例1)
基本的には前記実施例と同様の方法であるが、エタノールの添加量を変えることで、エタノール添加後の溶液におけるポリ乳酸の濃度を1.59~1.69wt%として、ポリ乳酸微粒子を製造した。この場合、エタノール添加後に生じた凝集体が、攪拌後も一部残っていた。
(参考例2)
前記実施例と同様にポリ乳酸溶液を調製し、そのポリ乳酸溶液にエタノールを添加した。ただし、エタノール添加後の溶液におけるポリ乳酸の濃度は2.30wt%とした。この場合、エタノール添加後の溶液中に、ポリ乳酸微粒子が析出しなかった。

【0027】
尚、本発明は前記実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、前記実施例において、クロロフォルムの代わりに、適宜選択した他の溶媒を用いても略同様の効果を奏することができる。

【0028】
また、前記実施例において、エタノールの代わりに、適宜選択した他の溶媒を用いても略同様の効果を奏することができる。
また、前記実施例において、他のポリ乳酸(例えば、製造方法、分子量、光学異性体の比率等が異なるもの)を用いてもよい。
図面
【図1】
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