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明細書 :変異RNA発現用線状二本鎖DNA

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-073514 (P2015-073514A)
公開日 平成27年4月20日(2015.4.20)
発明の名称または考案の名称 変異RNA発現用線状二本鎖DNA
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 5/00 102
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 25
出願番号 特願2013-213509 (P2013-213509)
出願日 平成25年10月11日(2013.10.11)
発明者または考案者 【氏名】中村 美紀子
【氏名】赤田 倫治
【氏名】星田 尚司
出願人 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100188352、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 一弘
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
【識別番号】100150902、【弁理士】、【氏名又は名称】山内 正子
【識別番号】100177714、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 昌平
【識別番号】100141391、【弁理士】、【氏名又は名称】園元 修一
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B065
Fターム 4B024AA20
4B024CA01
4B024CA10
4B024CA20
4B024DA02
4B024FA01
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA60
要約 【課題】環状化させることなくそのまま細胞内に導入するだけで、細胞内で変異RNAを発現させることが可能な変異RNA発現用線状二本鎖DNAを提供すること。
【解決手段】(a)RNA発現用DNA配列の上流領域を欠失した下流領域からなる配列1の5’末端領域に変異を有する配列1’と、ターミネータ配列と、プロモータ配列と、前記RNA発現用DNA配列の上流領域からなる配列2とを順次備えた変異RNA発現用線状二本鎖DNAa、(b)前記配列1と、ターミネータ配列と、プロモータ配列と、前記配列2の3’末端領域に変異を有する配列2’とを順次備えた変異RNA発現用線状二本鎖DNAb、又は(c)前記配列1’と、ターミネータ配列と、プロモータ配列と、前記配列2’とを順次備えた変異RNA発現用線状二本鎖DNAcを調製する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(a)~(c)のいずれか記載の変異RNA発現用線状二本鎖DNA。
(a)RNA発現用DNA配列の上流領域を欠失した下流領域からなる配列1の5’末端領域に変異を有する配列1’と、ターミネータ配列と、プロモータ配列と、前記RNA発現用DNA配列の上流領域からなる配列2とを順次備えた変異RNA発現用線状二本鎖DNAa;
(b)前記配列1と、ターミネータ配列と、プロモータ配列と、前記配列2の3’末端領域に変異を有する配列2’とを順次備えた変異RNA発現用線状二本鎖DNAb;
(c)前記配列1’と、ターミネータ配列と、プロモータ配列と、前記配列2’とを順次備えた変異RNA発現用線状二本鎖DNAc;
【請求項2】
配列1の5’末端領域が、配列1の5’末端から50塩基以内の領域であり、かつ、配列2の3’末端領域が、配列2の3’末端から50塩基以内の領域であることを特徴とする請求項1記載の変異RNA発現用線状二本鎖DNA。
【請求項3】
ターミネータ配列が、シミアンウイルス40(SV40)のターミネータ配列であることを特徴とする請求項1又は2記載の変異RNA発現用線状二本鎖DNA。
【請求項4】
プロモータ配列が、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)のプロモータ配列であることを特徴とする請求項1~3のいずれか記載の変異RNA発現用線状二本鎖DNA。
【請求項5】
プラスミドの複製開始点又は薬剤耐性遺伝子を含まないことを特徴とする請求項1~4のいずれか記載の変異RNA発現用線状二本鎖DNA。
【請求項6】
変異RNA発現用線状二本鎖DNAの長さが200~5000塩基であることを特徴とする請求項1~5のいずれか記載の変異RNA発現用線状二本鎖DNA。
【請求項7】
DNAを細胞内に導入し、前記DNAに対応するRNAが発現する形質転換細胞を製造する方法であって、前記DNAが請求項1~6のいずれか記載の変異RNA発現用線状二本鎖DNAであることを特徴とする形質転換細胞の製造方法。
【請求項8】
細胞が哺乳動物細胞であることを特徴とする請求項7記載の形質転換細胞の製造方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、環状化させることなくそのまま細胞内に導入するだけで、細胞内で変異RNAを発現させることが可能な変異RNA発現用線状二本鎖DNAに関する。
【背景技術】
【0002】
様々なタンパク質を細胞内に発現させる技術は、細胞内におけるタンパク質の機能解析、工業・医療・農業分野で商業的に利用されるタンパク質の生産等に広く用いられており、今日では欠かせない技術である。
【0003】
細胞内で特定のタンパク質を発現させるためには、細胞内へタンパク質をコードする遺伝子を導入する方法が有用である。導入する遺伝子の運搬体としてはプラスミドベクターを利用した方法が広く利用されてきたが、プラスミドベクターを利用せずに線状二本鎖DNAを利用する方法も開発されている。
【0004】
また、タンパク質の機能を調べる場合には、タンパク質をコードする遺伝子の様々な位置に置換、欠損、挿入等の変異を導入し、変異を導入した遺伝子を細胞内に導入して変異タンパク質を発現させ、変異による影響を調べる変異解析が行われている。
【0005】
タンパク質をコードする遺伝子に変異を導入する方法としては、近年、PCR法を利用する方法が行われている。例えば、変異を導入しようとする位置よりも前方領域を増幅するためのプライマーセットのうち少なくとも一方のプライマーに変異の導入の目的配列が含まれるプライマーセット、及び、後方領域を増幅するためのプライマーセットのうち少なくとも一方のプライマーに変異の導入の目的配列が含まれるプライマーセットをそれぞれ用いて、目的遺伝子の前方領域と後方領域とをPCR法により増幅し、得られる前方領域の増幅断片と後方領域の増幅断片とを連結させる方法(特許文献1参照)が提案されている。
【0006】
特許文献1記載の方法は、目的遺伝子に変異を有する線状二本鎖DNAを作製することが可能であるものの、作製した線状二本鎖DNAを用いて変異タンパク質を細胞内で発現させるには、ベクターに連結して環状化させる必要があった。
【0007】
また、鋳型となる環状DNA、前記鋳型DNAにアニールし、5’末端側が互いに相補的な領域を有する少なくとも1組の変異導入用プライマー対、並びにDNAポリメラーゼからなる混合液を調製し、調製した混合物をPCRに供し、5’突出末端を有するDNA断片を含むPCR産物として増幅することを特徴とする部位特異的変異導入方法(特許文献2参照)が提案されている。
【0008】
特許文献2に記載の方法は、DNA断片が5’突出末端を有するようにする必要があること、及び、二本鎖DNAが環状構造をとることができるようにするため、用いるプライマー対は互いに9~30塩基のオーバーラップ領域を設け、そのオーバーラップ領域に変異を導入する部位を存在させる必要があること等、プライマーの設計にあたって制約があった。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2005-287415号公報
【特許文献2】特開2008-278806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、環状化させることなくそのまま細胞内に導入するだけで、細胞内で変異RNAを発現させることが可能な変異RNA発現用線状二本鎖DNAを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一般的に細胞内で特定のタンパク質を発現させる場合には、プロモータ配列と、タンパク質をコードする遺伝子配列(構造遺伝子)と、ターミネータ配列とを順次有する配列を含む二本鎖DNAを細胞内に導入する方法が用いられてきた。しかしながら、本発明者らは、線状二本鎖DNAを細胞に導入して細胞内でタンパク質を発現させる際には、用いる線状二本鎖DNAにおいて、プロモータ配列と、タンパク質をコードする遺伝子配列と、ターミネータ配列とを順次備える配列である必要はないことを自らの研究で見いだした。そこで、タンパク質をコードする遺伝子配列の上流領域を欠失した下流領域からなる配列と、ターミネータ配列と、プロモータ配列と、前記タンパク質をコードする遺伝子配列の上流領域からなる配列とを順次備えた線状二本鎖DNAを作製して細胞に導入したところ、細胞内でタンパク質が発現することを確認した。この技術を応用し、前記線状二本鎖DNAにおいて、タンパク質をコードする遺伝子配列の上流領域を欠失した下流領域からなる配列、又はタンパク質をコードする遺伝子配列の上流領域からなる配列に変異を有する変異タンパク質発現用の線状二本鎖DNAをPCRで作製し、かかる変異タンパク質発現用の線状二本鎖DNAを細胞に導入したところ、細胞内で変異タンパク質が発現することを見いだし、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、
[1](a)RNA発現用DNA配列の上流領域を欠失した下流領域からなる配列1の5’末端領域に変異を有する配列1’と、ターミネータ配列と、プロモータ配列と、前記RNA発現用DNA配列の上流領域からなる配列2とを順次備えた変異RNA発現用線状二本鎖DNAa;(b)前記配列1と、ターミネータ配列と、プロモータ配列と、前記配列2の3’末端領域に変異を有する配列2’とを順次備えた変異RNA発現用線状二本鎖DNAb;(c)前記配列1’と、ターミネータ配列と、プロモータ配列と、前記配列2’とを順次備えた変異RNA発現用線状二本鎖DNAc;の(a)~(c)のいずれか記載の変異RNA発現用線状二本鎖DNAや、
[2]配列1の5’末端領域が、配列1の5’末端から50塩基以内の領域であり、かつ、配列2の3’末端領域が、配列2の3’末端から50塩基以内の領域であることを特徴とする上記[1]記載の変異RNA発現用線状二本鎖DNAや、
[3]ターミネータ配列が、シミアンウイルス40(SV40)のターミネータ配列であることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の変異RNA発現用線状二本鎖DNAや、
[4]プロモータ配列が、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)のプロモータ配列であることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか記載の変異RNA発現用線状二本鎖DNAや、
[5]プラスミドの複製開始点又は薬剤耐性遺伝子を含まないことを特徴とする上記[1]~[4]のいずれか記載の変異RNA発現用線状二本鎖DNAや、
[6]変異RNA発現用線状二本鎖DNAの長さが200~5000塩基であることを特徴とする上記[1]~[5]のいずれか記載の変異RNA発現用線状二本鎖DNAに関する。
【0013】
また、本発明は、[7]DNAを細胞内に導入し、前記DNAに対応するRNAが発現する形質転換細胞を製造する方法であって、前記DNAが上記[1]~[6]のいずれか記載の変異RNA発現用線状二本鎖DNAであることを特徴とする形質転換細胞の製造方法や、
[8]細胞が哺乳動物細胞であることを特徴とする上記[7]記載の形質転換細胞の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAは、環状化させることなくそのまま細胞内に導入するだけで、細胞内で変異RNAを発現させることが可能である。また、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAをテンプレートとしてPCRを行うことで、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAに更に変異を有する変異RNA発現用の線状二本鎖DNAを作製することが簡易である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAを製造する方法の例1を示す図である。
【図2】本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAを製造する方法の例2を示す図である。
【図3】本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAを製造する方法の例3を示す図である。
【図4】本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAに新たな変異を導入する方法の例を示す図である。
【図5】参考例1及び実施例に用いたpEGFP-C1のマップを示す図である。
【図6】参考例1で作製した線状二本鎖DNA No.o-3~No.o-10のアガロース電気泳動の結果を示す図である。
【図7】参考例1で作製した線状二本鎖DNA No.o-35~No.o-40のアガロース電気泳動の結果を示す図である。
【図8】参考例1で作製した線状二本鎖DNA No.o-35~No.o-40の配置図である。図中、「GFP」はEGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の下流領域、「E」はEGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の上流領域、「ter」はSV40ターミネータ配列、「5CGC」は配列番号1に示す配列、「CMVp」はCMVプロモータ配列であり、o-36における-1000~-600、o-37における-2000~-600、o-38における-3000~-600、o-39における-3717~-600、o-40における-615~-600はpEGFP-C1中の配列を示す。
【図9】参考例1で作製した線状二本鎖DNA No.o-35~No.o-40をヒト子宮頸部類上皮腫細胞(HeLa細胞)に導入した結果であり、上が蛍光顕微鏡像、下が微分干渉顕微鏡像を示す図である。
【図10】実施例、参考例2で作製した線状二本鎖DNA No.T-15、T-18、T-38、T-39のアガロース電気泳動の結果を示す図である。
【図11】実施例、参考例2で作製した線状二本鎖DNA No.T-45、T-48、T-43、T-44の配置図を示す図である。
【図12】実施例、参考例2で作製した線状二本鎖DNA No.T-45、T-48、T-43、T-44のアガロース電気泳動の結果を示す図である。
【図13】実施例、参考例2で作製した線状二本鎖DNA No.T-45、T-48、T-43、T-44をヒト胎児腎細胞(HEK293細胞)、HeLa細胞、アフリカミドリザル腎臓由来細胞(COS-7細胞)、NIH由来のマウス胎仔由来線維芽細胞(NIH3T3細胞)にそれぞれ導入した結果であり、右が微分干渉顕微鏡像、左が蛍光顕微鏡像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAとしては、
(a)RNA発現用DNA配列の上流領域を欠失した下流領域からなる配列1(以下、単に「配列1」ということがある)の5’末端領域に変異を有する配列1’(以下、単に「配列1’」ということがある)と、ターミネータ配列と、プロモータ配列と、前記RNA発現用DNA配列の上流領域からなる配列2(以下、単に「配列2」ということがある)とを順次備えた変異RNA発現用線状二本鎖DNAa;
(b)前記配列1と、ターミネータ配列と、プロモータ配列と、前記配列2の3’末端領域に変異を有する配列2’(以下、単に「配列2’」ということがある)とを順次備えた変異RNA発現用線状二本鎖DNAb;
(c)前記配列1’と、ターミネータ配列と、プロモータ配列と、前記配列2’とを順次備えた変異RNA発現用線状二本鎖DNAc;
の(a)~(c)のいずれか記載の変異RNA発現用線状二本鎖DNAであれば特に制限されず、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAは環状化させることなくそのまま細胞内に導入するだけで、細胞内で変異RNAを発現させることが可能である。

【0017】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAaとしては、配列1’の下流(3’末端側)にターミネータ配列が動作可能に連結され、ターミネータ配列の下流にプロモータ配列が動作可能に連結され、プロモータ配列の下流に配列2が動作可能に連結されているものであればよく、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAbとしては、配列1の下流にターミネータ配列が動作可能に連結され、ターミネータ配列の下流にプロモータ配列が動作可能に連結され、プロモータ配列の下流に配列2’が動作可能に連結されているものであればよく、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAcとしては、配列1’の下流にターミネータ配列が動作可能に連結され、ターミネータ配列の下流にプロモータ配列が動作可能に連結され、プロモータ配列の下流に配列2’が動作可能に連結されているものであればよい。

【0018】
本発明のRNA発現用DNA配列としては、RNAを発現しうる線状二本鎖DNA配列であればよく、タンパク質をコードする遺伝子配列の他、shRNA(small hairpin RNA)発現配列、siRNA(short interfering RNA)発現配列、miRNA(micro-RNA)、核酸アプタマー発現配列、デゴイ発現配列、アンチセンスオリゴヌクレオチド発現配列、リボザイム発現配列等の機能性核酸を発現するDNA配列を挙げることができる。

【0019】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAを用いてタンパク質を発現する場合は、RNA発現用DNA配列として、タンパク質をコードする遺伝子配列を選択でき、タンパク質をコードする遺伝子配列としては、用途に合わせて全長の遺伝子配列でも、その一部でもよい。また、その由来はいかなる生物から単離された遺伝子でも、遺伝子工学的に作製した人工的な遺伝子でもよく、遺伝子における5’末端の開始コドン及び3’末端の停止コドンは、適宜、含んでも含んでいなくてもよい。

【0020】
また、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAを用いてタンパク質の発現をノックダウンする場合、RNA発現用DNA配列として、タンパク質をコードする遺伝子のmRNAの発現を抑制できるshRNA発現用DNA配列や、siRNA発現用DNA配列や、アンチセンスオリゴヌクレオチド発現用線状二本鎖DNA配列を選択することができる。さらに、本発明のRNA発現用線状二本鎖DNAを用いてタンパク質の活性化作用を阻害又は抑制する場合は、RNA発現用DNA配列として、タンパク質の活性化作用を阻害又は抑制できる核酸アプタマー発現用線状二本鎖DNA配列やリボザイム発現用線状二本鎖DNA配列を選択することができ、特定の遺伝子の転写を抑制する場合は、RNA発現用DNA配列としてデゴイ発現配列を設定することができ、上記配列は、それぞれ標的RNAの配列やその転写因子が結合し得る配列の情報に基づいて設計することができる。

【0021】
本発明の配列1や配列2におけるRNA発現用DNA配列の上流領域としては、RNA発現用DNA配列の中央より5’末端にかけての部分に限らず、任意に設計することができ、例えば、RNA発現用DNA配列の全長に対して90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%上流領域を挙げることができる。本発明の配列2の3’末端は、本発明の配列1の5’末端が結合すると、RNA発現用DNA配列の全長が形成されるように設計されていればよく、例えば、配列1がRNA発現用DNA配列の上流領域60%を欠失した下流領域からなる配列である場合は、配列2はRNA発現用DNA配列の上流領域60%からなる配列、すなわちRNA発現用DNA配列の下流領域40%を欠失した上流領域からなる配列となり、配列2の3’末端に配列1の5’末端が結合するとRNA発現用DNA配列の全長が形成されるように設計される。なお、配列2の3’末端や配列1の5’末端は平滑末端であることが好ましい。

【0022】
本発明において、配列1の5’末端領域には前記下流領域の5’末端が含まれ、配列2の3’末端領域には前記上流領域の3’末端が含まれる。また、本発明の配列1の5’末端領域としては、配列1の5’末端から200塩基以内であればよいが、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAの作製の容易性の点からは、好ましくは150塩基以内、より好ましくは100塩基以内、さらに好ましくは50塩基以内、最も好ましくは30塩基以内の領域を例示することができ、配列2の3’末端領域としては、配列2の3’末端から200塩基以内であればよいが、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAの作製の容易性の点からは、好ましくは150塩基以内、より好ましくは100塩基以内、さらに好ましくは50塩基以内、最も好ましくは30塩基以内の領域を例示することができる。

【0023】
本発明において、「配列1の5’末端領域に変異を有する」における変異とは、配列1の5’末端領域(好ましくは5’末端を除く)のDNA配列に、1又は数個の塩基の置換、1又は数個の塩基の欠損、1又は数個の塩基の挿入等の変異を有することを意味し、「配列2の3’末端領域に変異を有する」における変異とは、配列2の3’末端領域(好ましくは3’末端を除く)のDNA配列に、1又は数個の塩基の置換、1又は数個の塩基の欠損、1又は数個の塩基の挿入等の変異を有することを意味する。また、配列1’又は配列2’に導入できる上記変異の数としては特に制限されず、1個でも、2以上、3以上、5以上、10以上であってもよく、タンパク質等の発現向上や機能解析等、変異RNAを発現させる目的に応じて適宜設定することができる。なお、置換にはアミノ酸をコードするコドンの同義コドンへの置換も含まれ、欠損や挿入では、前述のように設計して形成されることになるRNA発現用DNA配列が対応する変異を有する。

【0024】
本発明において、ターミネータ配列としては、変異RNAの発現を行う目的、変異RNAの発現を行う細胞の種類、プロモータの種類、RNA発現用DNA配列の種類等によって適宜選択することができ、天然に存在するターミネータ配列であっても、データベース上の配列に基づいて人工的に合成したターミネータ配列であってもよい。人工的に合成したターミネータ配列としては、変異RNA発現の誘導に機能しうる限りは、天然に存在するターミネータ配列の部分配列であっても、そのDNA配列に置換、欠損、挿入を有するものであってもよい。

【0025】
人工的に合成したターミネータ配列を用いる場合、本発明のターミネータ配列としては、変異RNAの発現量を高める観点から、長さ40~250塩基、より好ましくは40~200塩基、さらに好ましくは60~120塩基、中でも70~120塩基からなり、1番目の塩基がA(アデニン)、T(チミン)、又はG(グアニン)であり、2番目の塩基がA、T、又はGであり、3番目の塩基がTであり、4番目の塩基がAであり、5番目の塩基がAであり、6番目の塩基がAであり、7番目の塩基がA、T、G、又はC(シトシン)であり、8番目の塩基がA、T、G、又はCであり、9番目の塩基がA、G、又はCである、(A/T/G),(A/T/G),T,A,A,A,(A/T/G/C),(A/T/G/C),(A/G/C)の連続した9塩基の配列を含むターミネータ配列を好適に例示することができ、A,(A/T),T,A,A,A,(A/T/G),(A/G/C),(A/C)の連続した9塩基の配列含むターミネータ配列をより好適に例示することができ、かかる連続した9塩基が1又は2以上含まれていてもよい。

【0026】
このようなターミネータ配列としては、公知の文献(国際公開第2012/147370号パンフレット)等に記載の配列を利用することができ、例えば、ラビットβ-グロビン(β-globin)ターミネータ配列又はシミアンウイルス40(SV40)ターミネータ配列の一部(即ちβ-グロビンターミネータ配列由来又はSV40ターミネータ配列由来)であって上記の長さ及び配列を有するものを好ましく挙げることができ、この中から、変異RNAの発現量を高めることができるものを適宜選択することが好ましい。

【0027】
また、天然に存在するターミネータ配列を用いる場合、本発明のターミネータ配列としては、ウィルスのターミネータ配列であっても、大腸菌、枯草菌等の原核生物のターミネータ配列であっても、酵母、マウス、ヒト、ラビット等の真核生物のターミネータ配列であってもよく、具体的には、ラビットβ-グロビン(Rabbit β-globin)ターミネータ配列、シミアンウイルス40(SV40)ターミネータ配列、ウシ成長ホルモン(BGH)ターミネータ配列、HSV・TKターミネータ配列、CYC1ターミネータ配列、ADHターミネータ配列、SPAターミネータ配列、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのノパリンシンターゼ(NOS)遺伝子ターミネータ配列、カリフラワー・モザイク・ウイルス(CaMV)35S遺伝子のターミネータ配列、トウモロコシ由来のZein遺伝子ターミネータ配列、ルビスコ小サブユニット(SSU)遺伝子ターミネータ配列、サブクローバー・スタント・ウイルス(SCSV)遺伝子ターミネータ配列、LacZアルファターミネータ配列、polyTターミネータ配列等を挙げることができ、変異RNAの発現量を高める観点からは、好ましくはSV40のターミネータ配列やラビットβ-グロビンのターミネータ配列を挙げることができ、より好ましくはSV40のターミネータ配列を挙げることができる。

【0028】
本発明において、プロモータ配列としては、変異RNAの発現を行う目的、変異RNAを発現させる哺乳動物等の細胞の種類やRNA発現用DNA配列、ターミネータ配列等により適宜選択することができ、具体的には、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモータ配列、ヒト伸長因子1-アルファ(EF1α)プロモータ配列、シミアンウイルス(SV40)プロモータ配列、アデノウィルス後期(Adenovirus Major Late、AML)のAMLプロモータ配列、SV40及びHTLV-1 LTRの融合プロモータであるSRαプロモータ配列、ヒトユビキチンCプロモータ配列、α-アクチンプロモータ配列、β-アクチンプロモータ配列、U6プロモータ配列、H1プロモータ配列、テトラサイクリンによってRNA発現が抑制されるTet-Offプロモータ配列、テトラサイクリンによってRNA発現が誘導されるTet-Onプロモータ配列、亜鉛等の金属や種々の刺激により誘導されるメタロチオネインプロモータ配列、活性酸素により誘導されるAREプロモータ配列を挙げることができ、変異RNAの発現量を高める観点からは、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモータ配列を好適に例示することができ、変異RNA発現の誘導に機能しうる限りは、その部分配列であっても、DNA配列の置換、欠損、挿入を含んでいてもよい。

【0029】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAとしては、プラスミドの複製開始点又は薬剤耐性遺伝子を含まないものが好ましく、プラスミドの複製開始点としては、ColE1、R因子、F因子等由来の複製開始点を挙げることができ、プラスミドの薬剤耐性遺伝子としては、アンピシリン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子等を挙げることができる。

【0030】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAにおいて、配列1又は配列1’とターミネータ配列の間や、プロモータ配列と配列2又は配列2’の間には、シグナルペプチドやタグペプチドをコードする配列を備えることもできる。

【0031】
シグナルペプチドとしては、ゴルジ体移行シグナルペプチド、細胞膜移行シグナルペプチド、ミトコンドリア移行シグナルペプチド、核移行シグナルペプチド、シナプス移行シグナルペプチド、核小体移行シグナルペプチド、核膜移行シグナルペプチド、ペルオキシソーム移行シグナルペプチド等を好適に挙げることができ、タグペプチドとしては、FLAGタグペプチド、HAタグペプチド、MYCタグペプチド、GFPタグペプチド、MBPタグペプチド、GSTタグペプチド、HISタグ、SNAPタグ、ACPタグ、CLIPタグ、TAPタグ、V5タグ等を好適に挙げることができる。

【0032】
また、配列1又は配列1’とターミネータ配列の間、ターミネータ配列とプロモータ配列の間、プロモータ配列と配列2又は配列2’の間の少なくとも1つの間には、リンカー配列を備えることもできる。リンカー配列は、配列1又は配列1’とターミネータ配列、ターミネータ配列とプロモータ配列、プロモータ配列と配列2又は配列2’を連結する塩基配列であり、かかるリンカー配列中には、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAを作製する工程で用いられる配列であって、長さとしては9~45塩基、好ましくは12~30塩基であり、塩基としてはシトシン(C)とグアニン(G)が50%以上、好ましくは80%以上である配列(アニーリング配列)、例えば、長さが15塩基で、シトシンとグアニンが100%のCCCCCGGGGGCCCCC(配列番号1)の配列を含むことができる。なお、前述のようにシグナルペプチドやタグペプチドをコードする配列を備える場合、リンカー配列はこれら配列の下流に順次備えることが好ましい。

【0033】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAの長さ(塩基)としては、変異RNAの発現量を高める観点からは、好ましくは200~5000塩基、好ましくは200~3000塩基、より好ましくは200~2000塩基、さらに好ましくは200~1700塩基を挙げることができる。

【0034】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAを製造する方法としては特に制限されず、公知の融合PCR法(例えば特開2009-268360号公報)等のPCR法や、制限酵素処理とDNAリガーゼを用いたライゲーション法等により、配列1と、ターミネータ配列と、プロモータ配列と、配列2’の各配列を上記記載順に連結させて製造する方法や、配列1’と、ターミネータ配列と、プロモータ配列と、配列2の各配列を上記記載順に連結させて製造する方法や、配列1’と、ターミネータ配列と、プロモータ配列と、配列2’の各配列を上記記載順に連結させて製造する方法を例示することができるが、PCR法を用いた方法を好適に例示することができる。

【0035】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAを製造する方法(PCR法を用いた方法)の例1として、
(g)配列1と、ターミネータ配列と、リンカー配列とを順次備えた線状二本鎖DNAgを作製する工程;
(h)リンカー配列と、プロモータ配列と、配列2とを順次備えた線状二本鎖DNAhを作製する工程;
(i)線状二本鎖DNAg及び線状二本鎖DNAhをテンプレートとして、線状二本鎖DNAgにおける配列1の5’末端領域のセンス鎖配列に変異を導入した配列を含むフォワードプライマーiと、線状二本鎖DNAhの配列2における3’末端領域のアンチセンス鎖配列に変異を導入した配列を含むリバースプライマーiを用いてPCRを行う工程;
の工程(g)~(i)を備えた変異RNA発現用線状DNAを製造する方法を挙げることができる。図1に例1の概要を示す。

【0036】
工程(g)において、配列1と、ターミネータ配列と、リンカー配列とを順次備えた線状二本鎖DNAgは、配列1と、ターミネータ配列とを順次備えた配列を含む二本鎖DNAをテンプレートとして、配列1の5’末端領域のセンス鎖配列を含むフォワードプライマーgと、リンカー配列とターミネータ配列の3’末端領域のアンチセンス鎖配列とを順次備えた配列を含んだリバースプライマーgとを用いてPCRを行うことにより作製が可能である。工程(h)において、リンカー配列と、プロモータ配列と、配列2とを順次備えた線状二本鎖DNAhは、プロモータ配列と、配列2とを順次備えた配列を含む二本鎖DNAをテンプレートとして、リンカー配列とプロモータ配列の5’末端領域のセンス鎖配列とを順次備えた配列を含むフォワードプライマーhと、配列2の3’末端領域のアンチセンス鎖配列を含んだリバースプライマーhとを用いてPCRを行うことにより作製が可能である。工程(g)、(h)におけるフォワードプライマー及びリバースプライマーの長さは、PCRの可能な範囲で適宜選択することができ、プライマーの作製コストや設計の容易さの観点から、8塩基~250塩基、好ましくは10塩基~200塩基、より好ましくは12塩基~100塩基、さらに好ましくは15塩基~50塩基を例示することができる。

【0037】
工程(i)において、前記フォワードプライマーi又は前記リバースプライマーiの一方は変異を導入していないプライマーを用いてもよいが、テンプレートとなるDNAにアニールできる限り、前記フォワードプライマーi又は前記リバースプライマーiに複数の変異を有することや、前記フォワードプライマー及び前記リバースプライマーに1又は2以上の変異を有することで、線状二本鎖DNAg及び線状二本鎖DNAhをテンプレートとして、一回のPCRで複数の変異を有する変異RNA発現用線状二本鎖DNAを作製することが可能となる。

【0038】
また、工程(i)におけるフォワードプライマーi及びリバースプライマーiの長さについては、上記工程(g)、(h)におけるフォワードプライマー及びリバースプライマーの長さと同様である。なお、配列1の長さに応じて、フォワードプライマーiにターミネータ配列の5’末端領域のセンス鎖配列を含んでもよく、また、配列2の長さに応じて、リバースプライマーiにプロモータ配列の3’末端領域のアンチセンス鎖配列を含んでもよい。

【0039】
前記PCR法を用いた方法の例2として、
(j)配列1と、ターミネータ配列と、プロモータ配列と、配列2とを順次備えた線状二本鎖DNAjを作製する工程;
(k)線状二本鎖DNAjをテンプレートとして、線状二本鎖DNAjにおける配列1の5’末端領域のセンス鎖配列に変異を導入した配列を含むフォワードプライマーkと、線状二本鎖DNAjの配列2における3’末端領域のアンチセンス鎖配列に変異を導入した配列を含むリバースプライマーkを用いてPCRを行う工程;
の工程(j)及び(k)を備えた変異RNA発現用線状DNAを製造する方法も挙げることができる。図2に例2の概要を示す。

【0040】
工程(j)において、配列1と、ターミネータ配列と、プロモータ配列と、配列2とを順次備えた線状二本鎖DNAjは、配列1とターミネータ配列とを順次備えた配列を含む線状二本鎖DNAをテンプレートとしてPCRを行い、配列1とターミネータ配列とを順次備えた線状二本鎖DNAを作製し、さらに、プロモータ配列と配列2とを順次備えた配列を含む線状二本鎖DNAをテンプレートとしてPCRを行い、プロモータ配列と配列2とを順次備えた線状二本鎖DNAを作製し、前者の線状二本鎖DNAの3’末端に後者の線状二本鎖DNAの5’末端を公知の方法により連結することにより作製が可能である。

【0041】
工程(k)において、フォワードプライマーk又はリバースプライマーkの一方は変異を有していないプライマーを用いてもよいが、テンプレートとなるDNAにアニールできる限り、フォワードプライマーk又は前記リバースプライマーkに複数の変異を有することや、前記フォワードプライマー及び前記リバースプライマーに1又は2以上の変異を有することで、線状二本鎖DNAjをテンプレートとして、一回のPCRで複数の変異を有するRNA発現用線状二本鎖DNAを作製することが可能となる。なお、配列1の長さに応じて、フォワードプライマーkにターミネータ配列の5’末端領域のセンス鎖配列を含んでもよく、また、配列2の長さに応じて、リバースプライマーkにプロモータ配列の3’末端領域のアンチセンス鎖配列を含んでもよい。工程(k)におけるフォワードプライマーk及びリバースプライマーkの長さについては、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAを製造する方法の例1の場合と同様である。

【0042】
前記PCR法を用いた方法の例3として、
(l)プロモータ配列とRNA発現用DNA配列とターミネータ配列を順次備えた二本鎖DNAをテンプレートとして、(A)環状化配列fとプロモータ配列の5’末端領域のセンス鎖配列とを順次備えた環状化用フォワードプライマーと、前記環状化配列fに相補的に結合可能な環状化配列rとターミネータ配列の3’末端領域のアンチセンス鎖配列とを順次備えた環状化用リバースプライマー、(B)ターミネータ配列の3’末端領域のセンス鎖配列とプロモータ配列の5’末端領域のセンス鎖配列とを順次備えた環状化用フォワードプライマーと、ターミネータ配列の3’末端領域のアンチセンス鎖配列からなる環状化用リバースプライマー、(C)プロモータ配列の5’末端領域のセンス鎖配列からなる環状化用フォワードプライマーと、プロモータ配列の5’末端領域のアンチセンス鎖配列とターミネータ配列の3’末端領域のアンチセンス鎖配列とを順次備えた環状化用リバースプライマー、の(A)~(C)のいずれかの組み合わせのプライマーを用いてPCRを行う工程;
(m)工程(l)で得られた線状二本鎖DNAにおける両末端の互いに相補的に結合可能な配列が自己結合することで線状二本鎖DNAが環状化した環状化二本鎖DNAを得る工程;
(n)工程(m)で得られた環状化二本鎖DNAをテンプレートとして、環状化二本鎖DNA中のRNA発現用DNA配列の一部の配列のセンス鎖配列に変異を導入した配列を含む線状化用フォワードプライマーと、前記線状化用フォワードプライマーがアニールするRNA発現用DNA配列中の5’末端の上流側に隣接する一塩基及び該一塩基の上流側のRNA発現用DNA配列の一部の配列のアンチセンス鎖配列に変異を導入した線状化用リバースプライマーを用いてPCRを行う工程;
の工程(l)~(n)を備えた変異RNA発現用線状二本鎖DNAを製造する方法を挙げることができる。

【0043】
工程(l)における環状化配列fや環状化配列rの塩基の長さとしては、9~45塩基、好ましくは12~30塩基であり、塩基としてはシトシン(C)とグアニン(G)が50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは100%を好適に例示することができる。

【0044】
工程(n)においては、前記線状化用フォワードプライマー又は前記線状化用リバースプライマーの一方は変異を有していないプライマーを用いてもよいが、テンプレートとなるDNAにアニールできる限り、線状化用フォワードプライマー又は線状化用リバースプライマーに複数の変異を有することや、前記線状化用フォワードプライマー及び前記線状化用リバースプライマーに1又は2以上の変異を有することで、工程(m)で作製した環状化DNAをテンプレートとして、一回のPCRで複数の変異を有するRNA発現用線状二本鎖DNAを作製することが可能となる。

【0045】
また、工程(n)における線状化用フォワードプライマーは、環状化二本鎖DNA中のRNA発現用DNA配列の一部の配列の長さに応じてターミネータ配列の5’末端領域のセンス鎖配列を含んでもよく、工程(n)における線状化用リバースプライマーは、前記線状化用フォワードプライマーがアニールするRNA発現用DNA配列中の5’末端の上流側に隣接する一塩基及び該一塩基の上流側のRNA発現用DNA配列の一部の配列の長さに応じて、プロモータ配列の3’末端領域のアンチセンス鎖配列を含んでもよい。なお、工程(n)における線状化用フォワードプライマーや線状化用リバースプライマーの長さについては、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAを製造する方法の例1の場合と同様である。

【0046】
図3に、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAを製造する方法の例3において、工程(l)で環状化配列fと、プロモータ配列の5’末端領域のセンス鎖配列とを順次備えた環状化用フォワードプライマーと、前記環状化配列fに相補的に結合可能な環状化配列rとターミネータ配列の3’末端領域のアンチセンス鎖配列とを順次備えた環状化用リバースプライマーを用いた(A)の組合せの場合の例を示す。

【0047】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAをテンプレートとして変異を有するプライマーを用いてPCRを行うことで、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAに新たな変異を導入することが可能となる。本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAに新たな変異を導入する方法の例1としては、変異RNA発現用線状二本鎖DNAaをテンプレートとして、
(1)配列1’の5’末端領域のセンス鎖配列を含むフォワードプライマー1’(以下、「フォワードプライマー1’ということがある」)と、配列2の3’末端領域のアンチセンス鎖配列に変異を導入した配列を含むリバースプライマー2M(以下、「リバースプライマー2Mということがある」)、
(2)配列1’の5末端領域のセンス鎖配列に変異を導入した配列を含むフォワードプライマー1’M(以下、「フォワードプライマー1’Mということがある」)と、配列2の3’末端領域のアンチセンス鎖配列を含むリバースプライマー2(以下、「リバースプライマー2ということがある」)、
(3)前記フォワードプライマー1’Mと、前記リバースプライマー2M、
のフォワードプライマーとリバースプライマーの組み合わせのいずれかを用いてPCRを行う方法を挙げることができる。

【0048】
また、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAに新たな変異を導入する方法の例2として、変異RNA発現用線状二本鎖DNAbをテンプレートとして、
(4)配列1の5末端領域のセンス鎖配列を含むフォワードプライマー1(以下、「フォワードプライマー1ということがある」)と、配列2’の3’末端領域のアンチセンス鎖配列に変異を導入した配列を含むリバースプライマー2’M(以下、「リバースプライマー2’Mということがある」)、
(5)配列1の5末端領域のセンス鎖配列に変異を導入した配列を含むフォワードプライマー1M(以下、「フォワードプライマー1Mということがある」)と、配列2’の3’末端領域のアンチセンス鎖配列を含むリバースプライマー2’(以下、「リバースプライマー2’ということがある」)、
(6)前記フォワードプライマー1Mと、前記リバースプライマー2’M、
のフォワードプライマーとリバースプライマーの組み合わせのいずれかを用いてPCRを行う方法も挙げることができる。

【0049】
さらに、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAに新たな変異を導入する方法の例3として、変異RNA発現用線状二本鎖DNAcをテンプレートとして、
(7)前記フォワードプライマー1’と、前記リバースプライマー2’M、
(8)前記フォワードプライマー1’Mと、前記リバースプライマー2’、
(9)前記フォワードプライマー1’Mと、前記リバースプライマー2’M、
のフォワードプライマーとリバースプライマーの組み合わせのいずれかを用いてPCRを行う方法も挙げることができる。

【0050】
図4に、変異RNA発現用線状二本鎖DNAcをテンプレートとして、前記(9)フォワードプライマー1’Mと、前記リバースプライマー2’Mを用いてPCRを行い、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAに新たな変異を導入する方法を示す。

【0051】
フォワードプライマー1’Mにおける、配列1’の5末端領域のセンス鎖配列に変異を導入した配列としては、配列1’の5末端領域のセンス鎖配列が有する変異の位置と異なる位置に変異を導入した配列のほか、配列1’の5末端領域のセンス鎖配列が有する変異の位置と同じ位置に変異を導入した配列も含まれ、リバースプライマー2’Mにおける、配列2’の3’末端領域のアンチセンス鎖配列に変異を導入した配列としては、配列2’の3’末端領域のアンチセンス鎖配列が有する変異の位置と異なる位置に変異を導入した配列のほか、配列2’の3’末端領域のアンチセンス鎖配列が有する変異の位置と同じ位置に変異を導入した配列も含まれる。

【0052】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAに新たな変異を導入する方法において、前記フォワードプライマー1’としては、変異RNA発現用線状二本鎖DNAにおける配列1’の5’末端領域のセンス鎖配列からなるフォワードプライマーを好適に例示することができるが、配列1’の長さに応じて、ターミネータ配列の5’末端領域のセンス鎖配列を含むこともできる。

【0053】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAに新たな変異を導入する方法において、前記リバースプライマー2Mとしては、変異RNA発現用線状二本鎖DNAにおける配列2の3’末端領域のアンチセンス鎖配列に変異を導入した配列からなるリバースプライマーを好適に例示することができるが、配列2の長さに応じて、プロモータ配列の3’末端領域のアンチセンス鎖配列を含むこともできる。

【0054】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAに新たな変異を導入する方法において、前記フォワードプライマー1’Mとしては、変異RNA発現用線状二本鎖DNAにおける配列1’の5’末端領域のセンス鎖配列に変異を導入した配列からなるフォワードプライマーを好適に例示することができるが、配列1’の長さに応じて、ターミネータ配列の5’末端領域のセンス鎖配列を含むこともできる。

【0055】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAに新たな変異を導入する方法において、前記リバースプライマー2としては、変異RNA発現用線状二本鎖DNAにおける配列2の3’末端領域のアンチセンス鎖配列からなるリバースプライマーを好適に例示することができるが、配列2の長さに応じて、プロモータ配列の3’末端領域のアンチセンス鎖配列を含むこともできる。

【0056】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAに新たな変異を導入する方法において、前記フォワードプライマー1としては、変異RNA発現用線状二本鎖DNAにおける配列1の5’末端領域のセンス鎖配列からなるフォワードプライマーを好適に例示することができるが、配列1の長さに応じて、ターミネータ配列の5’末端領域のセンス鎖配列を含むこともできる。

【0057】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAに新たな変異を導入する方法において、前記リバースプライマー2’Mとしては、変異RNA発現用線状二本鎖DNAにおける配列2’の3’末端領域のアンチセンス鎖配列に変異を導入した配列からなるリバースプライマーを好適に例示することができるが、配列2’の長さに応じて、プロモータ配列の3’末端領域のアンチセンス鎖配列を含むこともできる。

【0058】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAに新たな変異を導入する方法において、前記フォワードプライマー1Mとしては、変異RNA発現用線状二本鎖DNAにおける配列1の5’末端領域のセンス鎖配列に変異を導入した配列からなるフォワードプライマーを好適に例示することができるが、配列1の長さに応じて、ターミネータ配列の5’末端領域のセンス鎖配列を含むこともできる。

【0059】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAに新たな変異を導入する方法において、前記リバースプライマー2’としては、変異RNA発現用線状二本鎖DNAにおける配列2’の3’末端領域のアンチセンス鎖配列からなるリバースプライマーを好適に例示することができるが、配列2’の長さに応じて、プロモータ配列の3’末端領域のアンチセンス鎖配列を含むこともできる。

【0060】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAに新たな変異を導入する方法において、前記フォワードプライマー1’、前記リバースプライマー2、前記フォワードプライマー1、前記リバースプライマー2’の長さとしては、好ましくは12塩基~100塩基、より好ましくは15塩基~50塩基を例示することができる。また、前記リバースプライマー2M、前記フォワードプライマー1’M、リバースプライマー2’M、前記フォワードプライマー1Mの長さとしては、配列1’、配列2、配列1又は配列2’中の変異を導入したい位置に応じて適宜長さを調節することができるが、好ましくは8塩基~250塩基、より好ましくは10塩基~200塩基、特に好ましくは12塩基~100塩基、中でも15塩基~50塩基を例示することができる。

【0061】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAに新たな変異を導入する方法において、前記リバースプライマー2M、フォワードプライマー1’M、リバースプライマー2’M、フォワードプライマー1Mのそれぞれに含まれる変異の数は特に制限されないが、複数の変異を導入する場合には、1回のPCRで複数の新たな変異を導入できる点から、テンプレートとなるDNAにアニールする機能を失わない限り、1つのプライマー上に2以上の変異を含むことができ、3以上の変異を含むこともでき、5以上の変異を含むこともできる。

【0062】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAに新たな変異を導入する方法を行う場合には、テンプレートとして用いる本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAを作製する段階において、新たな変異を導入する塩基の位置が配列1若しくは配列1’の5’末端領域、又は配列2若しくは配列2’の3’末端領域に含まれるように、配列1、配列1’、配列2、又は配列2’を設計することが、新たな変異を導入するためのプライマー作製の容易性の観点から好ましい。

【0063】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAに新たな変異を導入する方法を用いれば、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAに新たな変異を簡易かつ短時間で導入することができる。さらに、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAに新たな変異を導入する方法によって得られた変異RNA発現用線状二本鎖DNAをテンプレートとして、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAに新たな変異を導入する方法を行うことを繰り返すことで、1回のPCR毎に1又は複数の新たな変異を導入することが可能となり、複数の変異を有する変異RNA発現用線状二本鎖DNAが容易に作製できる。

【0064】
本発明において、変異RNA発現用線状二本鎖DNAを細胞内に導入し、前記DNAに対応するRNAが発現する形質転換細胞を製造する方法としては、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAを細胞内に導入し、前記DNAに対応するRNAが発現する形質転換細胞を製造する方法であれば特に制限されず、その方法としては、前記変異RNA発現用線状二本鎖DNAを哺乳動物等の細胞内に導入する一般的な方法であればよく、リポソーム法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、DEAEデキストラン法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等を挙げることができ、Lipofectin Reagent(登録商標)、Lipofectamine(登録商標)、Lipofectamine(登録商標)2000 Reagent(インビトロジェン社製)、SuperFect(登録商標)Transfection Reagent(キアゲン社製)、FuGENE(登録商標)HD Transfection Reagent、FuGENE(登録商標)6 Transfection Reagent(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)等の市販のトランスフェクション試薬ならびに当技術分野で広く用いられている手法を挙げることができる。

【0065】
本発明における変異RNA発現用線状二本鎖DNAを細胞内に導入し、前記DNAに対応するRNAが発現する形質転換細胞を製造する方法において、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAを導入する細胞としては、哺乳動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、酵母等を挙げることができ、好ましくは哺乳動物細胞が挙げられる。哺乳動物細胞としては、ヒト、サル、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、イヌ等の哺乳動物由来の細胞であればよく、具体的には、HEK293細胞、HeLa細胞、COS-7細胞、NIH-3T3細胞、ヒト骨肉腫細胞(HOS細胞)、培養ヒト骨芽細胞(SaM-1細胞)、ヒト白血球T細胞(jurkat細胞)、ヒト乳癌培養樹立細胞(MCF-7細胞)、ヒト肝臓ガン由来細胞(HepG2細胞)、ヒト結腸癌由来細胞(CaCO-2細胞)、ヒト骨芽細胞(SaOS細胞)、ヒト慢性骨髄性白血病細胞(K562細胞)、サル腎由来細胞(CV-1細胞)、アフリカミドリザル腎臓細胞(COS-1細胞)、マウス由来線維芽細胞(L929細胞)、マウス奇形腫細胞(F9細胞)、マウス骨芽様細胞(MC-3T3-E1細胞)、ラット副腎髄質褐色腫(PC-12細胞)、ラット骨芽細胞様細胞(ROS17/2.8細胞)、チャイニーズハムスター卵巣由来細胞(CHO-K1細胞)、ハムスター腎細胞(BHK-21細胞)等を挙げることができ、中でもHEK293細胞、HeLa細胞、COS-7細胞、NIH-3T3細胞が好ましい。また、上記哺乳動物細胞には、株化Bリンパ芽球(EB3細胞)等の胚性幹細胞(ES細胞)や、組織から採取した初代培養細胞も含まれる。

【0066】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAは、細胞内で変異RNAを発現させるためのキットや、変異RNAを発現させる線状二本鎖DNAを作製するためのキットとして提供することもでき、かかるキットには本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAの他、バッファー、dNTPs、コントロールテンプレート、説明書等を含んでもよい。また、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAにおけるRNA発現用DNA配列を疾患の治療効果を有するタンパク質を発現する配列や、疾患の原因又は進行に関わるタンパク質の発現抑制機能を有する配列とすることにより、DNAワクチンとして応用することができる。

【0067】
[参考例1:配列1と、ターミネータ配列と、プロモータ配列と、配列2とを順次備えた非変異RNA発現用線状二本鎖DNAの作製]
(リンカー配列と、CMVプロモータ配列と、EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の上流領域からなる配列2とを順次備えた線状二本鎖DNAの作製)
pEGFP-C1(クロンテック社製:図5)をテンプレートとして、表1に記載の配列番号2~7に示されるフォワードプライマーと配列番号8に示されるリバースプライマーを用いてPCRを行い、リンカー配列と、CMVプロモータ配列と、EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の上流領域からなる配列2とを順次備えた線状二本鎖DNA No.o-3~No.o-8をそれぞれ作製した。PCR反応はGXLポリメーラーゼ(タカラバイオ社製)を用いてその推奨プロトコールに準じて行った。それぞれの最終濃度は、テンプレート0.5pg/μl、フォワードプライマー0.3μM、リバースプライマー0.3μMに調製し、icyclerサーマルサイクーラー(BIO-RAD社製)を用いて98℃10秒、60℃15秒、68℃2分のサイクルを30回行った。作製した線状二本鎖DNA No.o-3~No.o-8のアガロース電気泳動の結果を図6に示す。

【0068】
【表1】
JP2015073514A_000002t.gif

【0069】
(EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の下流領域からなる配列1と、SV40ターミネータ配列と、リンカー配列とを順次備えた線状二本鎖DNA、及び、EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の下流領域からなる配列1と、SV40ターミネータ配列とを順次備えた線状二本鎖DNAの作製)
pEGFP-C1(クロンテック社製)をテンプレートとして、表2に記載の配列番号9に示されるフォワードプライマーと配列番号10に示されるリバースプライマーを用いてPCRを行い、EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の下流領域からなる配列1と、SV40ターミネータ配列と、リンカー配列とを順次備えた線状二本鎖DNA No.o-9を、配列番号9に示されるフォワードプライマーと配列番号11に示されるリバースプライマーを用いてPCRを行い、EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の下流領域からなる配列1と、SV40ターミネータ配列とを順次備えた線状二本鎖DNA No.o-10をそれぞれ作製した。PCR反応は、上記と同様に行った。作製した線状二本鎖DNA No.o-9~No.o-10のアガロース電気泳動の結果を図6に示す。

【0070】
【表2】
JP2015073514A_000003t.gif

【0071】
(EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の下流領域からなる配列1と、SV40ターミネータ配列と、リンカー配列と、CMVプロモータ配列と、EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の上流領域からなる配列2とを順次備えた非変異RNA発現用線状二本鎖DNAの作製)
下記表3中のテンプレート欄に記載した2種類の線状二本鎖DNAであるNo.o-3とNo.o-9、No.o-4とNo.o-9、No.o-5とNo.o-9、No.o-6とNo.o-9、No.o-7とNo.o-9、No.o-8とNo.o-10をそれぞれテンプレートとして、配列番号9に示すフォワードプライマーと配列番号8に示されるリバースプライマーを用いてそれぞれPCRを行い、EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の下流領域からなる配列1と、SV40ターミネータ配列と、リンカー配列と、CMVプロモータ配列と、EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の上流領域からなる配列2とを順次備えた非変異RNA発現用線状二本鎖DNA No.o-35~No.o-40を作製した。PCR反応は、98℃10秒、60℃15秒、68℃5分のサイクルを30回行った以外は、前述の線状二本鎖DNAの作製におけると同様に行った。作製した線状二本鎖DNAのアガロース電気泳動の結果を図7に、配置図を図8に示す。なお、図8における数字は、図5に示すように、pEGFP-C1のEGFP遺伝子の開始コドンのアデニンの位置を1とした場合のpEGFP-C1上の塩基の位置を示し、例えば1018はpEGFP-C1のEGFP遺伝子の開始コドンのアデニンの位置を1とした場合の下流側の1018番目の塩基を示し、-600はpEGFP-C1のEGFP遺伝子の開始コドンのアデニンの位置を1とした場合の上流側の600番目の塩基を示す。線状二本鎖DNA No.o-35~o-40の長さは、No.o-35が1631塩基、No.o-36が2031塩基、No.o-37が3031塩基、No.o-38が4031塩基、No.o-39が4748塩基、No.o-40が1631塩基である。

【0072】
【表3】
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【0073】
(細胞への導入)
HeLa細胞を4000細胞/wellになるように96wellプレートに播種して18時間培養後、上記で得られた線状二本鎖DNA No.o-35~No.o-40のそれぞれ30pmolをFuGENE(登録商標)HD Transfection Reagentキット(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)により各細胞に導入し、24時間後に蛍光顕微鏡で観察した。

【0074】
(結果)
蛍光顕微鏡の観察結果を図9に示す。線状二本鎖DNA No.o-40、o-35、o-36では300msの露光時間で緑蛍光が観察され、No.o-37、o-38、o-39では1sの露光時間で緑蛍光が少し観察された。上記結果より、配列1と、ターミネータ配列と、プロモータ配列と、配列2とを順次備えた非変異RNA発現用線状二本鎖DNAをそのまま細胞内に導入することで、細胞内でRNAが発現すること、及び、前記線状二本鎖DNAの長さが短いほど細胞内におけるRNA発現量が多いことが明らかとなった。
【実施例】
【0075】
(EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の下流領域からなる配列1と、SV40ターミネータ配列と、リンカー配列とを順次備えた線状二本鎖DNAの作製)
pEGFP-C1(クロンテック社製)をテンプレートとして、配列番号9に示されるフォワードプライマーと配列番号10に示されるリバースプライマー、及び、配列番号12に示されるフォワードプライマーと配列番号10に示されるリバースプライマーを用いてそれぞれPCRを行い、EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の下流領域からなる配列1と、SV40ターミネータ配列と、リンカー配列とを順次備えた線状二本鎖DNA No.T-18、T-39を作製した。PCR反応はGXLポリメーラーゼ(タカラバイオ社製)を用いてその推奨プロトコールに準じて行った。それぞれの最終濃度は、テンプレート50pg/μl、フォワードプライマー0.3μM、リバースプライマー0.3μMに調製し、icyclerサーマルサイクーラー(BIO-RAD社製)を用いて98℃10秒、55℃15秒、68℃2分のサイクルを30回行った。作製した線状二本鎖DNA No.T-18、T-39のアガロース電気泳動の結果を図10に示す。
【実施例】
【0076】
(リンカー配列と、CMVプロモータ配列と、EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の上流領域からなる配列2とを順次備えた線状二本鎖DNAの作製)
pEGFP-C1(クロンテック社製)をテンプレートとして、配列番号13に示されるフォワードプライマーと配列番号8に示されるリバースプライマー、及び、配列番号13に示されるフォワードプライマーと配列番号14に示されるリバースプライマーを用いてそれぞれPCRを行い、リンカー配列と、CMPプロモータ配列と、EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の上流領域からなる配列2とを順次備えた線状二本鎖DNA No.T-15、T-38を作製した。PCR反応は上記と同様の反応溶液組成にて、98℃10秒、55℃15秒、68℃2分のサイクルを30回行った。作製した線状二本鎖DNA No.T-15、T-38のアガロース電気泳動の結果を図10に示す。
【実施例】
【0077】
(EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の下流領域の5’末端領域に変異を有する配列1’と、SV40ターミネータ配列と、リンカー配列と、CMVプロモータ配列と、EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の上流領域の3’末端領域に変異を有する配列2’とを順次備えた変異RNA発現用線状二本鎖DNAの作製)
上記で作製した線状二本鎖DNA No.T-15及びT-18をテンプレートとして、配列番号15に示されるフォワードプライマー及び配列番号16に示されるリバースプライマーを用いてPCRを行い、EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の下流領域の5’末端領域に変異を有する配列1’と、SV40ターミネータ配列と、リンカー配列と、CMVプロモータ配列と、EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の上流領域の3’末端領域に変異を有する配列2’とを順次備えた変異RNA発現用線状二本鎖DNA No.T-48を作製した。作製した線状二本鎖DNA No.T-48の配置図を図11(b)に示し、アガロース電気泳動の結果を図12に示す。PCR反応はGXLポリメーラーゼ(タカラバイオ社製)を用いてその推奨プロトコールに準じて行った。それぞれの最終濃度は、テンプレートそれぞれ0.5pg/μl、フォワードプライマー0.3μM、リバースプライマー0.3μMに調製し、icyclerサーマルサイクーラー(BIO-RAD社製)を用いて98℃10秒、65℃15秒、68℃3分のサイクルを30回行った。
【実施例】
【0078】
なお、線状二本鎖DNA No.T-48は、EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の下流領域からなる配列1の5’末端領域において、配列番号17に示されるEGFPのアミノ酸配列における66番目のスレオニン(T)をコードする配列をセリン(S)をコードする配列に置換し、EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の上流領域からなる配列2の3’末端領域において、EGFPのアミノ酸配列における69番目のバリン(V)をコードする配列をイソロイシン(I)をコードする配列に置換した配列であり、EGFPタンパク質において、66番目のスレオニン(T)をセリン(S)に、69番目のバリン(V)をイソロイシン(I)に置換すると、緑蛍光を発光する能力が失われることが知られている。
【実施例】
【0079】
(EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の下流領域からなる配列1と、SV40ターミネータ配列と、リンカー配列と、CMVプロモータ配列と、EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の上流領域の3’末端領域に変異を有する配列2’とを順次備えた変異RNA発現用線状二本鎖DNAの作製)
上記で作製した線状二本鎖DNA No.T-38及びT39をテンプレートとして、配列番号18に示されるフォワードプライマーと配列番号12に示されるリバースプライマーを用いてPCRを行い、EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の下流領域からなる配列1と、SV40ターミネータ配列と、リンカー配列と、CMVプロモータ配列と、EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の上流領域の3’末端領域に変異を有する配列2’とを順次備えた変異RNA発現用線状二本鎖DNA No.T-44を作製した。作製した線状二本鎖DNA No.T-44の配置図を図11(d)に示し、アガロース電気泳動の結果を図12に示す。PCR反応はGXLポリメーラーゼ(タカラバイオ社製)を用いてその推奨プロトコールに準じて行った。それぞれの最終濃度は、テンプレートそれぞれ0.5pg/μl、フォワードプライマー0.3μM、リバースプライマー0.3μMに調製し、icyclerサーマルサイクーラー(BIO-RAD社製)を用いて98℃10秒、65℃15秒、68℃3分のサイクルを30回行った。なお、線状二本鎖DNA No.T-44はEGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の上流領域からなる配列2の3’末端領域において、EGFPのアミノ酸配列(配列番号17)における163番目のリジン(K)をコードする配列をグルタミン(Q)をコードする配列に置換し、164番目のバリン(V)をコードする配列をアラニン(A)をコードする配列に置換した配列であり、EGFPタンパク質において、163番目のリジン(K)をグルタミン(Q)に、164番目のバリン(V)をアラニン(A)に置換しても緑蛍光の発光能力は失われないことが知られている。
【実施例】
【0080】
[参考例2:EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の下流領域からなる配列1と、SV40ターミネータ配列と、リンカー配列と、CMVプロモータ配列と、EGFP遺伝子における上流領域からなる配列2とを順次備えた非変異RNA発現用線状二本鎖DNAの作製]
上記で作製した線状二本鎖DNA No.T-15及びT18をテンプレートとして、配列番号8に示されるフォワードプライマーと配列番号9に示されるリバースプライマーを用いてPCRを行い、EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の下流領域からなる配列1と、SV40ターミネータ配列と、配列番号1に示すリンカー配列と、CMVプロモータ配列と、EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の上流領域からなる配列2とを順次備えた非変異RNA発現用線状二本鎖DNA No.T-45を作製した。
【実施例】
【0081】
また、作製した線状二本鎖DNA No.T-38及びNo.T39をテンプレートとして配列番号14に示されるフォワードプライマーと、配列番号12に示されるリバースプライマーを用いてPCRを行い、EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の下流領域からなる配列1と、SV40ターミネータ配列と、配列番号1に示すリンカー配列と、CMVプロモータ配列と、EGFPタンパク質をコードする遺伝子配列の上流領域からなる配列2とを順次備えた非変異RNA発現用線状二本鎖DNA No.T-43を作製した。線状二本鎖DNA No.T-45とT-43の配置図をそれぞれ図11(a)、(c)に示し、アガロース電気泳動の結果を図12に示す。
【実施例】
【0082】
PCR反応はGXLポリメーラーゼ(タカラバイオ社製)を用いてその推奨プロトコールに準じて行った。それぞれの最終濃度は、テンプレートそれぞれ0.5pg/μl、フォワードプライマー0.3μM、リバースプライマー0.3μMに調製し、icyclerサーマルサイクーラー(BIO-RAD社製)を用いて98℃10秒、65℃15秒、68℃3分のサイクルを30回行った。
【実施例】
【0083】
(細胞への導入)
HEK293細胞、HeLa細胞、COS-7細胞、NIH3T3細胞をそれぞれ2000細胞/wellになるように96wellプレートに播種して18時間培養後、上記で得られた線状二本鎖DNA No.T-45、T-48、T-43、T-44のそれぞれ100ngをFuGENE(登録商標)HD Transfection Reagentキット(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)により各細胞に導入し、24時間後に蛍光顕微鏡で観察した。観察結果を図13に示す。
【実施例】
【0084】
(結果)
図13より、線状二本鎖DNA No.T-44を導入したHEK293細胞、HeLa細胞、COS-7細胞、NIH3T3細胞のいずれにおいても緑蛍光が観察され、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAを細胞内にそのまま導入すると、変異を有するRNAが細胞内で発現していることが明らかとなった。また、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAを細胞に導入した場合の変異RNAの発現量は、変異を有さないRNA発現用線状二本鎖DNAを細胞に導入した場合のRNA発現量と同程度であることが確認できた。さらに、線状二本鎖DNA No.T-48を導入した各細胞においては緑蛍光が観察されなかったことから、本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAを細胞に導入すると、変異が有効に機能していることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の変異RNA発現用線状二本鎖DNAは、そのまま細胞内に導入するだけで、細胞内で変異RNAを発現させることが可能であることから、細胞内におけるタンパク質の機能解析や、工業・医療・農業分野で商業的に利用されるタンパク質の生産等の分野において有利に使用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図8】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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