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明細書 :新規化合物およびそれを利用した酸素濃度測定試薬

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-101570 (P2015-101570A)
公開日 平成27年6月4日(2015.6.4)
発明の名称または考案の名称 新規化合物およびそれを利用した酸素濃度測定試薬
国際特許分類 C07F  15/00        (2006.01)
G01N  31/00        (2006.01)
G01N  31/22        (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
C09K  11/06        (2006.01)
FI C07F 15/00 CSPE
G01N 31/00 L
G01N 31/22
G01N 21/78 C
C09K 11/06 660
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2013-244186 (P2013-244186)
出願日 平成25年11月26日(2013.11.26)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 2013年光化学討論会講演要旨集 発行日 平成25年9月7日 2013年光化学討論会 開催日 平成25年9月11日~13日
発明者または考案者 【氏名】吉原 利忠
【氏名】村山 沙織
【氏名】飛田 成史
出願人 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100100549、【弁理士】、【氏名又は名称】川口 嘉之
【識別番号】100126505、【弁理士】、【氏名又は名称】佐貫 伸一
審査請求 未請求
テーマコード 2G042
2G054
4H050
Fターム 2G042AA01
2G042BA07
2G042CA10
2G042CB03
2G042DA09
2G042EA20
2G042FA06
2G042FB02
2G054AA08
2G054CA08
2G054CE02
2G054EA03
2G054GA03
2G054GA04
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB92
4H050WB11
4H050WB14
4H050WB21
要約 【課題】細胞などのミクロ環境の酸素濃度を発光スペクトル変化から高感度リアルタイムで定量するための発光試薬を提供すること。
【解決手段】リンカーと、該リンカーの第1の端に結合したカチオン性イリジウム錯体を含む酸素濃度応答性りん光団と、該リンカーの第2の端に結合した蛍光団とを含む化合物、具体的には下記のような化合物を用いて酸素濃度を測定する。
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【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
リンカーと、該リンカーの第1の端に結合した酸素濃度応答性りん光団と、該リンカーの第2の端に結合した蛍光団とを含む化合物であって、酸素濃度応答性りん光団がカチオン性イリジウム錯体を含む基である、化合物。
【請求項2】
酸素濃度応答性りん光団の三重項準位が、蛍光団の三重項準位よりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
カチオン性イリジウム錯体が下記(1)、(2)または(3)の構造を有する、請求項1または2に記載の化合物。
【化1】
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【請求項4】
蛍光団が下記いずれかの基を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【化2】
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【請求項5】
リンカーが下記の構造を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【化3】
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各環の炭素-炭素結合の1またはそれ以上は2重結合であってもよい。
【請求項6】
リンカーがポリプロリンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
下記化合物である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【化4】
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【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物を含む酸素濃度測定試薬。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は新規化合物およびそれを利用した酸素濃度測定試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞のようなミクロな構造体の特定の部位の酸素濃度を非侵襲的かつ高感度に計測する方法として、発光プローブ法は非常に有効である。一般に発光プローブを用いた酸素濃度計測法は、プローブ分子の発光が酸素分子との衝突によって消光を受けること、すなわち、発光プローブの発光強度が酸素濃度に依存して変化することを利用する。発光強度の変化から酸素濃度を求める方法は、プローブ分子の濃度と励起光強度分布が均一な場合には正確な値を与えるが、細胞内酸素濃度計測のように、プローブ分子の濃度分布が均一でない場合には、濃度の影響を受けてしまい、解析が困難になる。そこで、濃度の影響を受けない方法として、発光寿命の変化を利用する方法が考えられている。しかし、一般に発光寿命の測定にはパルスレーザーのような高価な光源と高度な光計測技術が必要なため、装置が大掛かりになってしまうという欠点を有する。
【0003】
本発明者は先行技術(特許文献1:WO 2010/044465)として、上記原理に基づいた酸素濃度測定試薬(下記化合物C343-Pro4-BTP)を開発し、溶液中および脂質膜中における酸
素濃度定量を行った。また、C343-Pro4-BTPを用いて培養細胞内の酸素濃度計測を試みた
。しかし、C343-Pro4-BTPは、脂溶性が高すぎるため細胞への移行性が低く、定性的な評
価に止まることが分かった。
【化1】
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【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】WO 2010/044465
【発明の概要】
【0005】
本発明は、細胞などのミクロ環境の酸素濃度を発光スペクトル変化から高感度でリアルタイムで定量するための発光試薬を提供することを課題とする。
【0006】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、リンカーと、該リンカーの第1の端に結合した酸素濃度応答性りん光団と、該リンカーの第2の端に結合した蛍光団とを含む化合物において、酸素濃度応答性りん光団としてカチオン性イリジウム錯体を用いることで、細胞内酸素濃度が効率よく測定できることを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]リンカーと、該リンカーの第1の端に結合した酸素濃度応答性りん光団と、該リン
カーの第2の端に結合した蛍光団とを含む化合物であって、酸素濃度応答性りん光団がカチオン性イリジウム錯体を含む基である、化合物。
[2]酸素濃度応答性りん光団の三重項準位が、蛍光団の三重項準位よりも小さいことを特徴とする、[1]に記載の化合物。
[3]カチオン性イリジウム錯体が下記(1)、(2)または(3)の構造を有する、[1]または[2]に記載の化合物。
【化2】
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[4]蛍光団が下記いずれかの基を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の化合物。
【化3】
JP2015101570A_000005t.gif
[5]リンカーが下記の構造を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の化合物。
【化4】
JP2015101570A_000006t.gif
各環の炭素-炭素結合の1またはそれ以上は2重結合であってもよい。
[6]リンカーがポリプロリンである、[1]~[4]のいずれかに記載の化合物。
[7]下記化合物である、[1]~[6]のいずれかに記載の化合物。
【化5】
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[8][1]~[7]のいずれかに記載の化合物を含む酸素濃度測定試薬。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化合物を用いた酸素濃度測定試薬は、一つの分子内に短寿命(ナノ秒オーダー)の蛍光を発する蛍光団と長寿命(マイクロ秒オーダー)のりん光を発するりん光団を有することが特徴である。蛍光は寿命が短いために溶存酸素の影響をほとんど受けない。一方、りん光は、寿命が長いため、励起寿命内に酸素分子と衝突し顕著な消光を受ける。従って、例えば、蛍光団に緑色の発光を与える分子を、りん光団に赤色の発光を与える分子を用いれば、酸素が存在しないときには、両発光団の発光が混ざり合うために黄色の発光を与え、酸素が存在すると、赤色りん光が消光するため緑色の発光を与えるインテリジェントな発光プローブとなる。さらにこのプローブを用いて発光スペクトルを測定すれば、蛍光強度とりん光強度の比を取るレシオ法によって簡便に酸素濃度を定量することができる。
本発明の化合物は細胞透過性がよいので、細胞内酸素濃度の測定に好適に使用できる。
本発明で開発した試薬を細胞培地に添加し、蛍光顕微鏡で発光画像を取得することで酸素濃度イメージング画像が得られる。また、マイクロプレートリーダーを用いることで、リアルタイムで酸素濃度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】化合物(C343-Pro4-BTQ+、C343-Pro8-BTQ+)のアセトニトリル中における吸収、発光スペクトルを示す図。
【図2】C343-Pro4-BTQ+、C343-Pro8-BTQ+、C343-Pro4-BTPを添加したHeLa細胞またはMCF-7細胞の蛍光顕微鏡による観察結果を示す図(写真)。
【図3】HeLa細胞において、C343-Pro4-BTQ+を添加し、20%および2.5%酸素分圧下で20時間培養した後に、蛍光顕微鏡でC343蛍光(励起波長:400-410 nm、観測波長:> 460-510 nm)、BTQ+りん光(励起波長:400-410 nm、観測波長:> 610 nm)を観察した発光顕微画像およびレシオイメージング画像(りん光画像/蛍光画像)を示す図(写真)。
【図4】HeLa細胞において、C343-Pro8-BTQ+を添加し、20%および2.5%酸素分圧下で20時間培養した後に、蛍光顕微鏡でC343蛍光(励起波長:400-410 nm、観測波長:> 460-510 nm)、BTQ+りん光(励起波長:400-410 nm、観測波長:> 610 nm)を観察した発光顕微画像およびレシオイメージング画像(りん光画像/蛍光画像)を示す図(写真)。
【図5】96穴ブラックマイクロプレートでHeLa細胞またはMCF-7細胞にC343-Pro4-BTQ+またはC343-Pro8-BTQ+を添加して20時間培養した後の発光スペクトルを示す図。
【図6】HeLa細胞またはMCF-7細胞にC343-Pro8-BTQ+を添加し、酸素分圧を変えて培養した時のレシオ(りん光強度/蛍光強度)測定結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を詳しく説明する。

【0011】
本発明の化合物は、酸素濃度応答性りん光団と酸素非感受性である蛍光団とが、それぞれリンカーの第1及び第2の端に結合して連結されたものである。蛍光団の三重項準位がりん光団の三重項準位よりも低いとりん光団から蛍光団にエネルギー移動が起こり、りん光強度の著しい低下をきたすことがあるので、酸素濃度に依存して発光色が変化する発光プローブを設計するには、下記の図に示すように、蛍光団の励起三重項(T1)準位が、りん光団の励起三重項(T1')準位よりも高くなるように発光団を組み合わせることが好ま
しい。

【0012】
【化6】
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【0013】
酸素濃度応答性りん光団としては、酸素濃度に依存したりん光を発する基であり、具体的にはカチオン性イリジウム錯体を含む基である。
カチオン性イリジウム錯体は、Ir(III)を中心金属とし、芳香族系分子を配位子とする
金属錯体であってカチオン性のものを意味するが、例えば、下記の(1)または(2)のイリジウム錯体が挙げられる。
なお、カチオン性イリジウム錯体は、陰イオンとの間で塩を形成していてもよい。陰イオンとしては、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6-)、塩化物イオン(Cl-)、臭化物イ
オン(Br-)、トリフルオロ酢酸イオン(CF3COO-)などが挙げられる。
【化7】
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なお、これらりん光団の励起三重項(T1')準位はそれぞれ、181.5 kJ/mol、175.1 kJ/mo1、167.8kJ/molである。

【0014】
蛍光団は上記りん光団に応じて適宜選択することができ、NBD(4-Nitrobenzo-2-oxa-1,3-diazole)、FITC、またはクマリン系色素、ローダミン類、BODIPY、シアニン系色素な
どが例示されるが、下記のNBD、FITC、またはC343が好ましい。
【化8】
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なお、これら蛍光団の励起三重項(T1)準位はそれぞれ181, 197, 206 kJ/molである。

【0015】
蛍光団とりん光団を連結するリンカーは両者を化学的に結合するものであれば特に制限されないが、蛍光団とりん光団との近接を避けるため、蛍光団とりん光団を連結するリンカーは、できるだけ剛直であることが望ましい。また、その長さは20Å以上であることが好ましい。長さの上限は特に制限はないが、30Å以下であることが好ましい。リンカー部分の分子量としては、4,000以下が好ましい。

【0016】
ステロイド、ポリペプチドは比較的容易に発光団と結合させることができるため、リンカーとして好適に使用しうる。また、ペプチド残基としてアスパラギン酸、リシンのような水溶性アミノ酸を含むペプチドを用いれば、化合物に水溶性を持たせることもできる。ポリペプチドとしてはアミノ酸残基数4~20(より好ましくは4~12)のポリペプチドが好ましく、例えば、ポリプロリンが例示される。

【0017】
例えば、リンカーとして下記のようなコレステロール骨格を含むものを用いることもできる。
【化9】
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なお、各環の炭素-炭素結合の1またはそれ以上は2重結合であってもよい。

【0018】
より具体的には、下記の化合物が挙げられる。ただし、本発明の化合物は酸素濃度に依存した発色を示すものである限り、下記化合物に限定されるものではない。
【化10】
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この化合物は上記のエネルギー関係T1>T1'を満たしている。

【0019】
【化11】
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【0020】
本発明の化合物は、りん光団化合物と、蛍光団化合物を両端に反応性の基を有するリンカー化合物と反応させることによって得ることができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法に従って合成することができる。

【0021】
また、上記化合物においてC343に代えて他の蛍光団を用いることもできる。

【0022】
本発明の化合物は、酸素濃度に応じてその発光色が変化するため、その発色に基づいて酸素濃度を測定するための酸素濃度測定試薬として用いることができる。例えば、化合物C343-Pro4-12-BTQ+の場合、紫色のときは酸素濃度が低く、青色のときは酸素濃度が高い
というような判定ができる。

【0023】
また、あらかじめ酸素濃度と、りん光強度と蛍光強度の比(Ip/If)との関係を求めて
おくことにより、酸素濃度を定量的に測定することも可能である。
【数1】
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【0024】
本発明の酸素濃度測定試薬を用いて試料中の酸素濃度を検出する場合、本発明の酸素濃度測定試薬を試料に添加してインキュベートした後、化合物を励起してりん光を観察できるような蛍光顕微鏡、蛍光測定装置、蛍光イメージング装置、マイクロプレートリーダーなどを用いてりん光および蛍光を観察することができる。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
<化合物の合成>
C343-Pro4-BTQ+の合成
C343-Pro4-COOHの合成
Scheme 1. にC343-Pro4-OtBuの脱保護の手順を示す。C343-Pro4-OtBu(72.4 mg, 0.10 mmol) に塩酸ジオキサン(10 mL)を加え、一晩静置した。反応終了後、脱水テトラヒドロフラン(THF)を加え、減圧下において濃縮し、C343-Pro4-COOHを得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ: 7.09(s, 1H), 6.31(s, 1H), 4.93-4.52(m, 4H), 4.23-4.11(m, 2H), 3.87-3.80(m, 1H), 3.49-3.42(m, 1H), 3.34-3.25(m, 4H), 2.71-2.64(m, 3H),
2.38-1.68(m, 23H)
【化12】
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【実施例】
【0027】
C343-Pro4-(phen-Pipe)の合成
Scheme 2. にC343-Pro4-COOHとphen-Pipeの縮合反応を示す。C343-Pro4-COOH(~0.3 mmol) にphen-Pipe(~0.3 mmol)を加え、脱水ジメチルホルムアミド(DMF)(5 mL)を加えた。HATU(200 mg, 0.52 mmol)、HOBt(75.0 mg, 0.49 mmol)を加えた。さらに脱水DMF(5 mL)、DIEA(200 μL)を加え、窒素雰囲気下で一晩反応させた。
反応後、反応溶液に蒸留水(50 mL)、塩水(50 mL)を加え、クロロホルム(200 mL×2)を
用いて生成物を抽出した。有機層にNa2SO4を加え乾燥させた後、減圧下において濃縮した
。濃縮後、アルミナカラム(CHCl3 : MeOH = 98 : 2)で精製を行った。その後、クロロホ
ルム、ヘキサンで再沈を行ったところ、黄色結晶のC343-Pro4-(phen-Pipe) (97.8 mg, 0.11 mmol, 収率35.4 %)を得た。
ESI-MS (positive) : calcd. for C52H57N9O7+ :919.44, found : m/z =942.6 ([M+Na]+ )
【化13】
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【実施例】
【0028】
C343-Pro4-BTQ+の合成
Scheme 3. にC343-Pro4-BTQ+の合成を示す。C343-Pro4-(phen-Pipe) (~0.05mmol)とBTQの塩素二橋架錯体(0.025 mmol)にジクロロメタン(CH2Cl2)とメタノール(MeOH)を加え、
窒素雰囲気下で4時間還流した。その後、室温に戻してKPF6を加え、1時間反応させた。精製は全てアミンカラム(CHCl3 : MeOH = 98 : 2)で行い、赤色結晶のC343-Pro4-BTQ+を得
た。
ESI-MS (positive) : calcd. for C86H77F6IrN11O7PS2 :1777.47, found : m/z =827.7 ([M-PF6+H+Na]2+ )
【化14】
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【実施例】
【0029】
なお、Scheme 3において、BTQの塩素二橋架錯体の代わりに、以下のようなイリジウム
錯体の塩素二橋架錯体を用いて本発明の化合物を合成することもできる。後述のScheme 5でも同様である。
【化15】
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【実施例】
【0030】
なお、(II)の化合物は以下のようにして合成することができる。
【化16】
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【実施例】
【0031】
C343-Pro8-BTQ+の合成
H-Pro4-OtBuの合成
Scheme 4. にZ-Pro4-OtBuの脱保護の手順を示す。Z-Pro4-OtBu (1.8 g, 3.0 mmol)にPd
/ CおよびMeOHを加え、水素添加反応でZ基の脱保護を行った。反応終了後、減圧下にお
いて濃縮し、白色結晶のH-Pro4-OtBuを得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 4.77-4.67(m, 2H), 4.44-4.41(m, 1H), 3.80-3.5(m, 7H),
3.16-3.10(m, 1H), 2.81-2.75(m, 1H), 2.22-1.70(m, 16H), 1.41(s, 9H)
【実施例】
【0032】
Z-Pro4-OHの合成
Scheme 4. にZ-Pro4-OtBuの脱保護の手順を示す。Z-Pro4-OtBu (1.8 g, 3.0 mmol)に塩酸ジオキサン(15 mL)を加えて一晩静置し、tBuエーテルの脱保護を行った。反応終了後、脱水THFを加え、減圧下において濃縮し、白色結晶のZ-Pro4-OHを得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.40-7.27(m, 4H), 5.19-4.96(m, 2H), 4.76-4.41(m, 4H), 3.84-3.45(m, 8H), 2.31-1.80(m, 16H)
【化17】
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【実施例】
【0033】
Z-Pro8-OtBuの合成
Scheme 5. にH-Pro4-OtBuとZ-Pro4-OHの縮合反応を示す。H-Pro4-OtBu (~3 mmol) とZ-Pro4-OH (~3 mmol)にHOBt(505 mg, 3.3 mmol)を加えた。さらにEDC塩酸塩(690 mg, 3.6
mmol)、脱水ジクロロメタン(50 mL)を加え、窒素雰囲気下で一晩反応させた。反応終了
後、減圧下において濃縮し、ジクロロメタン(50 mL)、10%クエン酸水溶液(50 mL×2)、炭酸水素ナトリウム水溶液(50 mL×2)、水(50 mL)、塩水(50 mL)を加えて生成物を抽出した。有機層にNa2SO4を加え乾燥させた後、減圧下において濃縮した。白色結晶のZ-Pro8-OtB
u (2.38 g, 2.41 mmol, 収率80.3 %)が得られた。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 7.37-7.27(m, 5H), 5.19-4.96(m, 2H), 4.78-4.71(m, 6H), 4.58-4.40(m, 2H), 3.78-3.36(m, 16H), 2.13-1.81(m, 32H), 1.41(s, 9H)
ESI-MS (positive) : calcd. for C52H72N8O11+ :984.53, found : m/z =1007.1 ([M+Na]+ )
【化18】
JP2015101570A_000021t.gif
【実施例】
【0034】
H-Pro8-OtBuの合成
Scheme 6. にZ-Pro8-OtBuの脱保護の手順を示す。Z-Pro8-OtBu (2.38 g, 2.41 mmol)にPd / C、メタノールを加え、水素添加反応でZ基の脱保護を行った。反応終了後、減圧下
において濃縮した。灰色結晶のH-Pro8-OtBu (2.04 g, 2.40 mmol, 収率99.6 %)が得られ
た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 4.76-4.66(m, 6H), 4.43-4.40(m, 1H), 3.92-3.49(m,15H), 3.18-3.12(m, 1H), 2.90-2.84(m, 1H), 2.19-1.70(m, 31H), 1.41(s, 9H)
【化19】
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【実施例】
【0035】
C343-Pro8-OtBuの合成
Scheme 7. にH-Pro8-OtBuとC343の縮合反応を示す。H-Pro8-OtBu (936 mg, 1.1 mmol) とC343 (285.3 mg, 1.0 mmol)にHATU(494.3 mg, 1.3 mmol)を加えた。さらにDIEA(1 mL) 、脱水DMF(30 mL)を加え、窒素雰囲気下で一晩反応させた。反応終了後、減圧下において濃縮し、クロロホルム(50 mL)、水(50 mL×2)を加えて生成物を抽出した。有機層にNa2SO4を加え乾燥させた後、減圧下において濃縮した。精製はシリカゲルカラムクロマトグラ
フィー(CHCl3 : MeOH = 19:1)で行った。ヘキサンを加え減圧下で濃縮し、黄色結晶のC343-Pro8-OtBuが得られ、NMRで同定を行った。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.79(s, 1H), 6.81(s, 1H), 4.80-4.71(m, 7H), 4.44-4.41(m, 1H), 3.92-3.26(m, 16H), 2.94-2.71(m, 4H), 2.25-1.65(m, 40H), 1.41(s, 9H)
【化20】
JP2015101570A_000023t.gif
【実施例】
【0036】
C343-Pro8-OHの合成
Scheme 8. にC343-Pro8-OtBuの脱保護の手順を示す。Z-Pro4-OtBu (871 mg, 0.78 mmol)に塩酸ジオキサン(30 mL)を加えて一晩静置し、tBuエーテルの脱保護を行った。反応終
了後、脱水THFを加え、減圧下において濃縮し、C343-Pro8-OHを得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.81(s, 1H), 6.84(s, 1H), 4.81-4.59(m, 7H), 4.41-4.32(m, 1H), 3.75-3.47(m, 16H), 3.30-3.26(m, 2H), 2.95-2.73(m, 2H), 2.37-1.82(m, 40H)
【化21】
JP2015101570A_000024t.gif
【実施例】
【0037】
C343-Pro8-(phen-Pipe)の合成
Scheme 9. にC343-Pro8-OHとphen-Pipeの縮合反応を示す。C343-Pro8-OtBu (871 mg, 0.78 mmol) とphen-Pipe (463 mg, 1.75 mmol)にHATU(494 mg, 1.01 mmol)を加えた。さらにDIEA(2 mL) 、脱水DMF(30 mL)を加え、窒素雰囲気下で一晩反応させた。反応終了後、
減圧下において濃縮し、クロロホルム(50 mL)、水(50 mL×2)を加えて生成物を抽出した
。有機層にNa2SO4を加え乾燥させた後、減圧下において濃縮した。精製はアミンカラムクロマトグラフィー(CHCl3)で行った。ヘキサンを加え減圧下で濃縮し、黄色結晶C343-Pro8-(phen-Pipe) (184.5 mg, 0.14 mmol, 収率12.7 %)が得られた。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 9.19-9.18(m, 1H), 9.08-9.01(m, 1H), 8.57-8.54(m, 1H), 8.13-8.11(m, 1H), 7.79(s, 1H), 7.71-7.37(m, 3H), 6.81(s, 1H), 5.00-4.71(m, 8H), 3.91-3.52(m, 18H), 3.29-3.25(m, 4H), 2.90-2.72(m, 2H), 2.22-1.87(m, 38H), 1.29-1.21(m, 4H), 0.916-0.853(m, 2H)
ESI-MS (positive) : calcd. for C72H85N13O11 :1307.65, found : m/z =665.6 ([M+H+Na]2+ )
【化22】
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【実施例】
【0038】
C343-Pro8-BTQ+の合成
Scheme 10. にC343-Pro8-BTQ+の合成を示す。C343-Pro4-(phen-Pipe) (~0.1 mmol)とBTQの塩素二橋架錯体 (0.05 mmol)にCH2Cl2(20 mL)とMeOH(15 mL)を加え、窒素雰囲気下、50℃で4時間還流した。その後、室温に戻してKPF6を加え、1時間反応させた。反応終了後、減圧下において濃縮した。精製はアミンカラムクロマトグラフィー(CHCl3 : MeOH = 19
: 1)で行った。ヘキサンを加え減圧下で濃縮し、橙色結晶のC343-Pro8-BTQ+を得た。
ESI-MS (positive) : calcd. for C106H105F6IrN15O11PS2 :2165.68, found : m/z =1021.8 ([M-PF6+H+Na]2+ )
【化23】
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【実施例】
【0039】
<スペクトルデータ>
C343-Pro4-BTQ+の合成
C343-Pro4-COOH
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ: 7.09(s, 1H), 6.31(s, 1H), 4.93-4.52(m, 4H), 4.23-4.11(m, 2H), 3.87-3.80(m, 1H), 3.49-3.42(m, 1H), 3.34-3.25(m, 4H), 2.71-2.64(m, 3H),
2.38-1.68(m, 23H)
【実施例】
【0040】
C343-Pro4-(phen-Pipe)
ESI-MS (positive) : calcd. for C52H57N9O7 :919.44, found : m/z = 942.6 ([M+Na]2+
)
【実施例】
【0041】
C343-Pro4-BTQ+
ESI-MS (positive) : calcd. for C86H77F6IrN11O7PS2 :1777.47, found : m/z =827.7 ([M-PF6+H+Na]2+ )
【実施例】
【0042】
C343-Pro8-BTQ+の合成
H-Pro4-OtBu
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 4.77-4.67(m, 2H), 4.44-4.41(m, 1H), 3.80-3.5(m, 7H),
3.16-3.10(m, 1H), 2.81-2.75(m, 1H), 2.22-1.70(m, 16H), 1.41(s, 9H)
【実施例】
【0043】
Z-Pro4-OH
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.40-7.27(m, 4H), 5.19-4.96(m, 2H), 4.76-4.41(m, 4H), 3.84-3.45(m, 8H), 2.31-1.80(m, 16H)
【実施例】
【0044】
Z-Pro8-OtBu
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 7.37-7.27(m, 5H), 5.19-4.96(m, 2H), 4.78-4.71(m, 6H), 4.58-4.40(m, 2H), 3.78-3.36(m, 16H), 2.13-1.81(m, 32H), 1.41(s, 9H)
ESI-MS (positive) : calcd. for C52H72N8O11 :984.53, found : m/z =1007.1 ([M+Na]+
)
【実施例】
【0045】
H-Pro8-OtBu
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 4.76-4.66(m, 6H), 4.43-4.40(m, 1H), 3.92-3.49(m,15H), 3.18-3.12(m, 1H), 2.90-2.84(m, 1H), 2.19-1.70(m, 31H), 1.41(s, 9H)
【実施例】
【0046】
C343-Pro8-OtBu
1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ: 7.79(s, 1H), 6.81(s, 1H), 4.80-4.71(m, 7H), 4.44-4.41(m, 1H), 3.92-3.26(m, 16H), 2.94-2.71(m, 4H), 2.25-1.65(m, 40H), 1.41(s, 9H)
【実施例】
【0047】
C343-Pro8-OH
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.81(s, 1H), 6.84(s, 1H), 4.81-4.59(m, 7H), 4.41-4.32(m, 1H), 3.75-3.47(m, 16H), 3.30-3.26(m, 2H), 2.95-2.73(m, 2H), 2.37-1.82(m, 40H)
【実施例】
【0048】
C343-Pro8-(phen-Pipe)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 9.19-9.18(m, 1H), 9.08-9.01(m, 1H), 8.57-8.54(m, 1H), 8.13-8.11(m, 1H), 7.79(s, 1H), 7.71-7.37(m, 3H), 6.81(s, 1H), 5.00-4.71(m, 8H), 3.91-3.52(m, 18H), 3.29-3.25(m, 4H), 2.90-2.72(m, 2H), 2.22-1.87(m, 38H), 1.29-1.21(m, 4H), 0.916-0.853(m, 2H)
ESI-MS (positive) : calcd. for C72H85N13O11 :1307.65, found : m/z =665.6 ([M+H+Na]2+ )
【実施例】
【0049】
C343-Pro8-BTQ+
ESI-MS (positive) : calcd. for C106H105F6IrN15O11PS2 :2165.68, found : m/z =1021.8 ([M-PF6+H+Na]2+ )
【実施例】
【0050】
<化合物の評価>
図1に化合物(C343-Pro4-BTQ+、C343-Pro8-BTQ+)のアセトニトリル中における吸収、発光スペクトルを示す。405nmを励起波長として発光スペクトルを測定したところ、C343
に由来する蛍光およびBTQ+に由来するりん光が観測された。また、BTQ+のりん光強度は、脱酸素条件下と比較して空気飽和下において著しく減少することが確認された。
【実施例】
【0051】
図2にC343-Pro4-BTQ+、C343-Pro8-BTQ+、またはC343-Pro4-BTP溶液をHeLa細胞あるい
はMCF-7細胞の培養液に最終濃度5μMになるように添加し、20時間培養後、洗浄し、蛍光
顕微鏡で観察した顕微画像(励起波長:400-410 nm、観測波長:> 455 nm)を示す。その結果、C343-Pro4-BTQ+、C343-Pro8-BTQ+においてのみ明瞭な発光画像が得られた。C343-Pro4-BTPは著しく高い脂溶性のため、培養液中で凝集し細胞移行性が低いことが問題であ
った。本発明においては、イリジウム錯体をカチオン性としたため、培養液中での凝集が抑制され細胞移行性が大幅に増加したと考えられる。
【実施例】
【0052】
次に、HeLa細胞の培養液にC343-Pro4-BTQ+(図3)、C343-Pro8-BTQ+(図4)溶液を最
終濃度5μMになるように添加し、20%および2.5%酸素分圧下で20時間培養した後、洗浄し
、蛍光顕微鏡でC343蛍光(励起波長:400-410 nm、観測波長:> 460-510 nm)、BTQ+りん光(励起波長:400-410 nm、観測波長:> 610 nm)を観察した。発光顕微画像およびレシオイメージング画像(りん光画像/蛍光画像)を図3および図4に示す。その結果、C343-Pro4-BTQ+、C343-Pro8-BTQ+ともにC343蛍光とBTQ+りん光が観測され、20%あるいは2.5%酸素分圧下では蛍光強度がほぼ変化しないのに対して、りん光強度は20%と比較して2.5
%酸素分圧下で増加することがわかった。また、レシオイメージング画像においても20%よりも2.5%酸素分圧下でレシオが増加していることがわかった。画像のレシオが細胞内
においてほぼ一定であることから細胞内の酸素濃度はほぼ均一であることがわかる。
【実施例】
【0053】
さらに、酸素濃度定量を行うためにマイクロプレートリーダーを用いて実験を行った。96穴ブラックマイクロプレートでHeLa細胞あるいはMCF-7細胞を培養し、C343-Pro4-BTQ+
、C343-Pro8-BTQ+溶液を最終濃度5μMになるように添加し、20時間培養した後、洗浄し、マイクロプレートリーダーで計測を行った。図5に得られた発光スペクトルを示す。その結果、C343-Pro4-BTQ+ではC343蛍光がほとんど観測されていないのに対して、C343-Pro8-BTQ+ではC343蛍光とBTQ+りん光が観測された。この結果より、マイクロプレートリーダーを用いた実験ではC343-Pro8-BTQ+が有用であることが確認された。また、BTQ+のりん光強度は、2.5%酸素分圧下において増加しており、顕微鏡を用いた実験と一致する。
【実施例】
【0054】
また、図6に培養酸素分圧を変えてレシオ(りん光強度/蛍光強度)を測定した結果を
示す。20%酸素分圧ではHeLa細胞で6.4、MCF-7細胞で7.4であるのに対して2.5%酸素分圧
ではHeLa細胞で8.5、MCF-7細胞で9.9であった。他の酸素分圧で同様な実験を行うことで
検量線を作製することができ、それをもとに細胞内酸素濃度をリアルタイムで定量することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の酸素濃度測定試薬は分析化学、生命科学、バイオイメージング分野、医療診断、細胞生物学、環境計測などの分野に用いることができる。具体的には、酸素濃度定量試薬、低酸素細胞画像化試薬、低酸素腫瘍診断試薬などとして用いることができる。
図面
【図1】
0
【図5】
1
【図6】
2
【図2】
3
【図3】
4
【図4】
5