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明細書 :ヨウ化物イオン除去剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-083284 (P2015-083284A)
公開日 平成27年4月30日(2015.4.30)
発明の名称または考案の名称 ヨウ化物イオン除去剤
国際特許分類 B01J  20/22        (2006.01)
C02F   1/28        (2006.01)
B01J  20/30        (2006.01)
G21F   9/12        (2006.01)
FI B01J 20/22 B
C02F 1/28 E
B01J 20/30
G21F 9/12 501B
G21F 9/12 501J
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2013-222090 (P2013-222090)
出願日 平成25年10月25日(2013.10.25)
発明者または考案者 【氏名】中山 雅晴
【氏名】佐藤 あゆ
出願人 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100188352、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 一弘
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
【識別番号】100150902、【弁理士】、【氏名又は名称】山内 正子
【識別番号】100177714、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 昌平
【識別番号】100141391、【弁理士】、【氏名又は名称】園元 修一
審査請求 未請求
テーマコード 4D624
4G066
Fターム 4D624AA04
4D624AA05
4D624AB11
4D624BA14
4D624BA16
4D624BB02
4D624BB05
4D624BB08
4G066AA26B
4G066AB10B
4G066AB11B
4G066BA03
4G066CA31
4G066DA07
4G066FA03
4G066FA05
要約 【課題】本発明の課題は、液体中に含まれるヨウ化物イオンを選択的に効率よく除去することができ、体積当たりのヨウ化物イオンの除去量が大きく、ヨウ化物イオン除去後の回収が容易であり、安価な原材料を用いて簡易な製造方法で製造できるヨウ化物イオン除去剤や、その製造方法、及びかかる除去剤を用いたヨウ化物イオン除去方法や除去装置を提供することにある。
【解決手段】液体中に含まれるヨウ化物イオンを除去するためのヨウ化物イオン除去剤であって、層状構造を有するマンガン酸化物と、親水基及び疎水基を有するカチオン性化合物を備え、該カチオン性化合物が、前記マンガン酸化物の層間に担持されていることを特徴とするヨウ化物イオン除去剤や、かかる除去剤を用いたヨウ化物イオン除去方法や除去装置。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
液体中に含まれるヨウ化物イオンを除去するためのヨウ化物イオン除去剤であって、層状構造を有するマンガン酸化物と、親水基及び疎水基を有するカチオン性化合物を備え、該カチオン性化合物が、前記マンガン酸化物の層間に担持されていることを特徴とするヨウ化物イオン除去剤。
【請求項2】
カチオン性化合物の有する疎水基の少なくとも一つが、炭素数が5以上の炭化水素基であることを特徴とする請求項1記載のヨウ化物イオン除去剤。
【請求項3】
カチオン性化合物が、ピリジン環を有する第4級アンモニウムであることを特徴とする請求項1又は2記載のヨウ化物イオン除去剤。
【請求項4】
親水基及び疎水基を有するカチオン性化合物と、2価のマンガンイオンとが存在する溶液中で、前記2価のマンガンイオンを電気化学的に酸化することにより、層状構造を有し、該層間に前記カチオン性化合物が担持されたマンガン酸化物を析出させることを特徴とするヨウ化物イオン除去剤の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載のヨウ化物イオン除去剤の製造方法により得られることを特徴とするヨウ化物イオン除去剤。
【請求項6】
基材上に、請求項1、2、3又は5記載のヨウ化物イオン除去剤を固定し、前記ヨウ化物イオン除去剤が固定された基材を、ヨウ化物イオンを含む液体中に浸漬して、液体中に含まれるヨウ化物イオンを除去することを特徴とするヨウ化物イオン除去方法。
【請求項7】
請求項1、2、3又は5記載のヨウ化物イオン除去剤から形成されるヨウ化物イオン除去膜。
【請求項8】
ヨウ化物イオンを含む液体と接触する部位に、請求項7記載のヨウ化物イオン除去膜を備えたことを特徴とするヨウ化物イオン除去装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
液体中に含まれるヨウ化物イオンを除去するためのヨウ化物イオン除去剤であって、層状構造を有するマンガン酸化物と、親水基及び疎水基を有するカチオン性化合物を備え、該カチオン性化合物が、前記マンガン酸化物の層間に担持されていることを特徴とするヨウ化物イオン除去剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、原子力発電所から流出した放射性ヨウ素の除去が課題となっている。放射性ヨウ素としては、ヨウ素129、ヨウ素131等が知られており、ヨウ素131は半減期が約8日と短いが、ヨウ素129の半減期は1570万年と非常に長い。また、ヨウ素は甲状腺に蓄積するため、多量に摂取すると甲状腺癌を引き起こし人体に有害となる。そのため、原子力発電所から排出される汚染水、汚染水が流入した、あるいは大気中に放出された放射性ヨウ素が溶解した河川水、地下水、海水等に含まれるヨウ素の除去が特に課題となっている。
【0003】
従来、液体中に含まれるヨウ素の除去方法としては、銀をシリカ、アルミナ、ゼオライト等に担持させて液体中に浸漬し、液体中のヨウ化物イオンをヨウ化銀として固定化し除去する方法や(特許文献1)、液体中のヨウ化物イオンに酸化剤を作用させて、ヨウ素分子やポリヨウ素イオンとした後、活性炭、ゼオライト、陰イオン交換樹脂等の吸着体により吸着、除去する方法(特許文献2)などがある。前者の銀を用いる方法では、銀が高価であり、また、銀を多く担持させるためには、担持体であるシリカ、アルミナ等を微粒子化して比表面積を大きくする必要があるため、ヨウ素の固定化後に液体中からこれらの粒状物を回収するのが難しい、さらに、液体中に塩素イオン等の他のハロゲンイオンが含まれていると、ヨウ化物イオンを選択的に除去することができないという問題があった。また、後者の方法では、酸化剤の添加が必要であるため、除去工程が複雑となる。そして、酸化剤を添加しないで、活性炭、ゼオライト、陰イオン交換樹脂等を用いた場合、海水中のようなナトリウムイオンや塩化物イオンの存在下では、ヨウ化物イオンの除去効果が低いことが報告されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平09-171096号公報
【特許文献2】特開2012-251912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記問題点を解決し、液体中に含まれるヨウ化物イオンを選択的に効率よく除去することができ、体積当たりのヨウ化物イオンの除去量が大きく、ヨウ化物イオン除去後の回収が容易であり、安価な原材料を用いて簡易な製造方法で製造できるヨウ化物イオン除去剤や、その製造方法、及びかかる除去剤を用いたヨウ化物イオン除去方法や除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、原子力発電所から排出される汚染水や、河川水、地下水、海水等の液体中に含まれるヨウ化物イオンを選択的に効率良く除去することを目指して、液体中に含まれるヨウ化物イオンを除去する方法の開発を行った。まず、従来の方法の改良を試みたが、目立った改善効果は得られなかった。そこで、本発明者らは、新たなヨウ化物イオン除去剤の開発に着手し、従来はヨウ化物イオンの除去に用いられてこなかったマンガン酸化物について検討をすすめたところ、層状構造を有するマンガン酸化物と、親水基及び疎水基を有するカチオン性化合物とを組み合わせると、液体中の塩化物イオン、硫酸イオン、ナトリウムイオン等の影響を受けずに選択的にヨウ化物イオンをマンガン酸化物に収着させることができ、しかも膜状に形成できるため、取り扱いの非常に容易なヨウ化物イオン除去剤が得られることを見いだした。
【0007】
すなわち、本発明は以下に関する。
(1)液体中に含まれるヨウ化物イオンを除去するためのヨウ化物イオン除去剤であって、層状構造を有するマンガン酸化物と、親水基及び疎水基を有するカチオン性化合物を備え、該カチオン性化合物が、前記マンガン酸化物の層間に担持されていることを特徴とするヨウ化物イオン除去剤。
(2)カチオン性化合物の有する疎水基の少なくとも一つが、炭素数が5以上の炭化水素基であることを特徴とする上記(1)記載のヨウ化物イオン除去剤。
(3)カチオン性化合物が、ピリジン環を有する第4級アンモニウムであることを特徴とする上記(1)又は(2)記載のヨウ化物イオン除去剤。
(4)親水基及び疎水基を有するカチオン性化合物と、2価のマンガンイオンとが存在する溶液中で、前記2価のマンガンイオンを電気化学的に酸化することにより、層状構造を有し、該層間に前記カチオン性化合物が担持されたマンガン酸化物を析出させることを特徴とするヨウ化物イオン除去剤の製造方法。
(5)上記(4)記載のヨウ化物イオン除去剤の製造方法により得られることを特徴とするヨウ化物イオン除去剤。
(6)基材上に、上記(1)、(2)、(3)又は(5)記載のヨウ化物イオン除去剤を固定し、前記ヨウ化物イオン除去剤が固定された基材を、ヨウ化物イオンを含む液体中に浸漬して、液体中に含まれるヨウ化物イオンを除去することを特徴とするヨウ化物イオン除去方法。
(7)上記(1)、(2)、(3)又は(5)記載のヨウ化物イオン除去剤から形成されるヨウ化物イオン除去膜。
(8)ヨウ化物イオンを含む液体と接触する部位に、上記(7)記載のヨウ化物イオン除去膜を備えたことを特徴とするヨウ化物イオン除去装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明のヨウ化物イオン除去剤は、液体中のヨウ化物イオンを、塩化物イオン、硫酸イオン、ナトリウムイオン等の他のイオンの影響を受けずに選択的に除去でき、除去剤体積当たりのヨウ化物イオンの収着量が大きいので、ヨウ化物イオンの除去能力に優れる。また、本発明のヨウ化物イオン除去剤を用いると、基材上に、かかる除去剤からなるヨウ化物イオン除去膜を形成することができるので、ヨウ化物イオン収着後の除去剤の回収が容易であり、ヨウ化物イオンの収着面積を大面積化でき、基材の形状に応じて加工できるため加工性に優れる。また、マンガンという安価な材料を用いて、電気化学法という、安価な装置を用いた簡易な方法によって製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1(a)は、実施例1のIの紫外-可視吸光スペクトルの経時変化を、図1(b)は、比較例1のIの紫外-可視吸光スペクトルの経時変化をそれぞれ示す。
【図2】図2は、実施例2、3及び比較例2のLangmuir型収着等温線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、液体中に含まれるヨウ化物イオンを除去するためのヨウ化物イオン除去剤であって、層状構造を有するマンガン酸化物と、親水基及び疎水基を有するカチオン性化合物を備え、該カチオン性化合物が、前記マンガン酸化物の層間に担持されていることを特徴とするヨウ化物イオン除去剤である。本発明におけるマンガン酸化物としては、層状構造を有するマンガン酸化物であれば特に限定されず、例えば、バーネサイト型やブセライト型の層状構造を有するマンガン酸化物等を挙げることができる。中でも、バーネサイト型の層状構造を有するマンガン酸化物が好ましい。バーネサイト型層状マンガン酸化物は、Mn3+/Mn4+の混合原子価をもつマンガン酸化物(MnO)であり、安定した層状構造を有し、全体として負の電荷を帯びているため、親水基及び疎水基を有するカチオン性化合物を安定した状態で担持することができる。マンガン酸化物の層間隔は、特に制限されるものではないが、ヨウ化物イオンをマンガン酸化物の層間に収着されやすくする観点から、一つの層の厚みとその次の層との間の間隔を加えた値(層間距離)が、0.4~5.0nmが好ましく、1.0~3.5nmがより好ましい。

【0011】
本発明における親水基及び疎水基を有するカチオン性化合物としては、親水基及び疎水基を有するカチオンや、水溶液中で解離して、かかるカチオンを生じる化合物であれば、特に限定されず、例えば、アミン塩由来のカチオン、第4級アンモニウムカチオン、アミン塩、第4級アンモニウム塩等を挙げることができ、これらはカチオン性親水基と疎水基とを有している。前記アミンとしては、特に限定されず、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンのいずれでもよく、窒素原子に結合する炭化水素基は、アルキル基でもアリール基でもよく、アルキルアミン、アリールアミン、複素環アミンのいずれでもよい。前記アミンのアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、アリール基は、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基等を挙げることができ、これらアルキル基やアリール基は置換基を有していてもよい。また、前記複素環アミンは、例えば、ピリジン、ピロール、キノリン、イミダゾール、インドール、ピリミジン、ピロリジン、ピペリジン、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。前記第4級アンモニウムとしては、特に限定されず、窒素原子に結合する4つの炭化水素基は、上記アルキル基、アリール基のいずれでもよく、上記複素環アミンの窒素原子に、上記アルキル基、アリール基が結合したものでもよい。第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウムにおいて、窒素原子に結合する複数の炭化水素基は、それぞれ異なっていても同一であってもよい。これらのアミンや第4級アンモニウムの塩としては、例えば、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン塩、塩酸塩、水酸化物などが挙げられる。本発明のヨウ化物イオン除去剤では、カチオン性化合物が親水基及び疎水基を有する化合物であるため、層状構造を有するマンガン酸化物の層間に、安定した状態で高濃度に担持され、担持されたカチオン性化合物とヨウ化物イオンとの親和性によって、マンガン酸化物の層間に、ヨウ化物イオンを他の成分の影響を受けることなく、選択的に効率的に収着させ、液体中のヨウ化物イオンを除去することができる。

【0012】
上記アミンや第4級アンモニウムにおいて、窒素原子に結合する炭化水素基のうち、少なくとも一つの炭化水素基は、炭素数が5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、12以上であることが更に好ましい。疎水基である炭化水素基の炭素数が前記範囲にあると、マンガン酸化物の層間において、カチオン性化合物がより安定した状態で存在でき、処理液中の他のイオン等の成分に影響されずに、ヨウ化物イオンを選択的に収着する効果がより高まる。このような炭化水素基として、アルキル基の場合は、直鎖状のアルキル基であって、炭素数が5以上であるもの、10以上であるもの、12以上であるものを挙げることができ、また、アルキル基が分岐部を有する場合は、主鎖の炭素数が5以上であるもの、10以上であるもの、12以上であるものを挙げることができる。また、疎水基である炭化水素基の炭素数の上限は、マンガン酸化物の層間に担持できる範囲であれば特に制限されない。本発明におけるカチオン性化合物としては、例えば、オクチルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウム、ジステアリルジメチルアンモニウム等のジアルキルジメチルアンモニウム、ベンザルコニウム、ベンゼトニウム、及びこれらの塩素や臭素の塩などを挙げることができ、中でもドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、及びこれらの塩素や臭素の塩を好適に例示できる。また、本発明におけるカチオン性化合物としては、ヨウ化物イオンとの親和性の観点から、複素環アミンであるピリジンの窒素原子に、炭化水素基が結合したピリジン環を有する第4級アンモニウムが好ましく、例えば、ブチルピリジニウム、ドデシルピリジニウム、ヘキサデシルピリジニウム等を挙げることができ、中でもドデシルピリジニウム、ヘキサデシルピリジニウム、及びこれらの塩素や臭素の塩を好適に例示できる。

【0013】
本発明のヨウ化物イオン除去剤は、基材上に、ヨウ化物イオン除去膜を形成することができる。本発明における基材としては、特に限定されないが、導電性を有する基材が好ましい。導電性を有する基材としては、例えば、金属、導電層を形成したガラスやプラスチック、炭素等を挙げることができる。上記金属としては、例えば、白金、金、ステンレス、チタン、ニッケル、タンタル等を挙げることができ、上記ガラスとしては、例えば、ソーダガラス、溶融石英ガラス、結晶石英ガラス、合成石英ガラス等を挙げることができる。また、上記プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエステル、ポリアクリル、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルフォン、ポリエステルスルフォン、ポリシクロオレフィン等を挙げることができ、上記炭素としては、例えば、カーボン、グラファイト等を挙げることができる。上記基材の形状としては、板状、シート状、フィルム状、棒状、繊維状等のいずれの形状であってもよい。例えば、炭素基材の場合は、カーボンクロス、カーボンシート、カーボンナノチューブ、炭素繊維等を用いることができる。ガラス基材やプラスチック基材に形成する導電層としては、例えば、錫をドープした酸化インジウム(ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、酸化スズ(SnO)、ZnO等を挙げることができる。また、プラスチック基材として、導電性プラスチックを用いる場合は、導電層を設けなくてもよい。

【0014】
本発明のヨウ化物イオン除去剤は、基材上に、膜状にヨウ化物イオン除去剤層を形成できるので、基材の面積や形状に応じて、様々な面積や形状を有するヨウ化物イオン除去膜を形成することができる。例えば、基材の面積を大きくすれば大面積のヨウ化物イオン除去膜とすることができ、基材の形状を立体的にすれば立体的形状のヨウ化物イオン除去膜とすることができ、カーボンクロスやプラスチックフィルム等のフレキシブルな基材を用いれば、フレキシブルなヨウ化物イオン除去膜とすることができる。したがって、本発明のヨウ化物イオン除去剤は、処理する場所、処理液が収納された容器、処理装置等の形状に合わせた基材を用いて除去膜を形成することにより、処理する場所や容器等に応じて充填することができ、高密度に充填することができる。また、かかるヨウ化物イオン除去剤は、薄膜状とすることができるので、処理液に接する除去剤の面積を大きくすることができ、除去剤単位体積当たりのヨウ化物イオン除去量を大きくすることができ、さらに、上記のとおり、基材上に固定して用いることができるので、ヨウ化物イオン収着後の除去剤の回収が容易となる。本発明のヨウ化物イオン除去膜の膜厚は、特に限定されるものではないが、ヨウ化物イオンの収着効率の観点から、0.2~10μmが好ましく、0.5~3μmがより好ましい。本発明のヨウ化物イオン除去剤を用いて、液体中のヨウ化物イオンを除去するには、例えば、上記のとおり、かかる除去剤を基材上に膜状に固定し、この除去剤が固定された基材を、ヨウ化物イオンを含む処理液中に浸漬して、除去剤にヨウ化物イオンを収着させることにより、除去することができる。また、本発明のヨウ化物イオン除去膜を形成した基材を、処理液と接触する部位に配置して備えることにより、ヨウ化物イオン除去効果にすぐれたヨウ化物イオン除去装置とすることができる。さらに、本発明のヨウ化物イオン除去剤は、還元電位、例えば、1.0V(対銀/塩化銀電極)を印加することにより、マンガン酸化物の層間からカチオン性化合物とヨウ化物イオンを共に排出させることができる。

【0015】
本発明のヨウ化物イオン除去剤の製造方法は、特に限定されず、例えば、上述の導電性基材を、親水基及び疎水基を有するカチオン性化合物と2価のマンガンイオン(Mn2+イオン)とが存在する溶液に浸漬し、前記溶液中でMn2+イオンを電気化学的に酸化することにより、前記導電性基材上に、層状構造を有し該層間に前記カチオン性化合物を担持したマンガン酸化物を析出させることにより、製造することができる。カチオン性化合物とMn2+イオンが存在する前記溶液は、例えば、上述したカチオン性化合物の塩と、Mn2+イオン源とを水に溶解して調整することができ、Mn2+イオン源としては、硫酸マンガン、塩化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン等の無機酸の塩、蓚酸マンガンアンモニウム、蓚酸マンガンカリウム等の有機マンガン化合物などを挙げることができる。このように調製した溶液に、前記導電性基材と対極を浸漬し、導電性基材を陽極として電圧を印加し、溶液中のMn2+イオンを電気化学的に酸化することにより、導電性基材上に、層状構造を有するマンガン酸化物が膜状に形成され、マンガン酸化物の層間には、前記カチオン性化合物がインターカレートされる。本発明のヨウ化物イオン除去剤の場合、インターカレートされるカチオン性化合物が親水基及び疎水基を有しているため、一旦マンガン酸化物の層間に入り込み担持されたカチオン性親水基及び疎水基を有するカチオンは、容易に離脱せず、ヨウ化物イオンを含む処理液中の他の成分の影響を受けずに前記層間に安定し存在する。対極は、導電性物質であれば、特に限定されず、鉄、銅、ニッケル、白金、金等を挙げることができ、印加する電圧は、0.8~1.2V(対 銀/塩化銀電極)の範囲が好ましく、0.95~1.05V(対 銀/塩化銀電極)の範囲がより好ましい。また、カチオン性化合物の塩としては、例えば、カチオン界面活性剤を用いてもよい。
【実施例1】
【0016】
透明ガラス(ITO)電極を50mMヘキサデシルピリジニウムクロリド(HDPyCl)を含む2mM硫酸マンガン水溶液に浸漬し、+1.0V(対 銀/塩化銀)で電気分解した。通過電荷量は200mC/cmであった。このとき、Mn2++2HO→MnO+4H+2eなる反応が起こり、生成したMnOの負電荷を補償するために、HDPyが膜内に収容される。XRD測定の結果、この膜はHDPy/MnOの多層構造からなる。このようにしてITO電極上に被覆したHDPy/MnO薄膜を洗浄、真空乾燥した。このようにして得られたHDPy/MnO電極を、0.1mMヨウ化ナトリウム水溶液中に浸漬し、Iの紫外-可視吸光スペクトルの経時変化を測定した。測定した結果を図1(a)に示す。また、HDPy/MnO薄膜の厚みは、約1μmであった。
【実施例1】
【0017】
[比較例1]
透明ガラス(ITO)電極を50mM塩化カリウム(KCl)を含む2mM硫酸マンガン水溶液に浸漬し、+1.0V(対 銀/塩化銀)で電気分解した。通過電荷量は200mC/cmであった。このとき、Mn2++2HO→MnO+4H+2eなる反応が起こり、生成したMnOの負電荷を補償するために、Kが膜内に収容される。XRD測定の結果、この膜はK/MnOの多層構造からなる。このようにしてITO電極上に被覆したK/MnO薄膜を洗浄、真空乾燥した。このようにして得られたK/MnO電極を、0.1mMヨウ化ナトリウム水溶液中に浸漬し、Iの紫外-可視吸光スペクトルの経時変化を測定した。測定した結果を図1(b)に示す。また、K/MnO薄膜の厚みは、約1μmであった。
【実施例2】
【0018】
実施例1で得られたHDPy/MnO電極を、0.1mMNaIを含む水に48時間浸漬し、NaIの濃度変化から各濃度において膜に収着したIイオン量を計算により求めた。同様に、実施例1で得られたHDPy/MnO電極を、0.1mMNaIを含む10mMNaCl水溶液に48時間浸漬し、NaIの濃度変化から各濃度において膜に収着したIイオン量を計算により求めた。これらの結果から、HDPy/MnO薄膜の水中及びNaCl存在下でのIの収着等温線(室温)を作成した。得られたLangmuir型収着等温線を図2に示す。横軸が初期のNaI濃度、縦軸が各濃度における平衡(=飽和)収着量である。
【実施例3】
【0019】
実施例1で得られたHDPy/MnO電極を、0.1mMNaIを含む3.3mMNaSO水溶液に48時間浸漬し、NaIの濃度変化から各濃度において膜に収着したIイオン量を計算により求めた。この結果から、HDPy/MnO薄膜のNaSO存在下でのIの収着等温線(室温)を作成した。得られたLangmuir型収着等温線を図2に示す。横軸が初期のNaI濃度、縦軸が各濃度における平衡(=飽和)収着量である。
【実施例3】
【0020】
[比較例2]
比較例1で得られたK/MnO電極を、0.1mMNaIを含む水に48時間浸漬し、NaIの濃度変化から各濃度において膜に収着したIイオン量を計算により求め、K/MnO薄膜の水中でのIの収着等温線(室温)を実施例2と同様に作成した。得られたLangmuir型収着等温線を図2に示す。
【実施例3】
【0021】
実施例1から、本発明のヨウ化物イオン除去剤であるHDPy/MnO薄膜を用いると、時間の経過とともにヨウ化物イオン(I)由来の波長226nmの吸光度が減少し(図1(a))、液体中のヨウ化物イオンを除去する優れた効果を有することが示された。一方、比較例1においては、時間が経過しても波長226nmの吸光度は変化せず(図1(b))、アルカリ金属を層状マンガン酸化物中にインターカレートしてもヨウ化物イオンを除去することはできなかった。また、実施例2で得られた結果から(図2)、HDPy/MnO薄膜は、NaClやNaSOの存在下でも水中と比べてヨウ化物イオン(I)の平衡収着量が低下せず、本発明のヨウ化物イオン除去剤は、マンガン酸化物の層間に担持されたカチオン性化合物がナトリウムイオンとイオン交換されることなく、ナトリウムイオンの影響を受けず、また、塩化物イオンや硫酸イオンの影響を受けず、ヨウ化物イオンの選択性に優れることが示された。収着等温線のデータ(図2)から、Langmuirモデルにより、HDPy/MnO薄膜の最大収着キャパシティーを求めると、水中で256mg/g、NaSO水溶液中で222mg/g、NaCl水溶液中で213mg/gと高い収着能力を有することがわかった。一方、比較例2の結果から、アルカリ金属を層状マンガン酸化物中にインターカレートしても、平衡収着量は0であった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のヨウ化物イオン除去剤は、原子力発電所から排出される汚染水や、河川水、地下水、海水等に含まれる放射性ヨウ化物イオンの除去に好適に用いることができる。また、前記に限らず、化学合成、各種工業製品の製造工程、排水処理等において、ヨウ化物イオンが含まれる液体中からのヨウ化物イオンの除去のために用いることができる。
図面
【図2】
0
【図1】
1