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明細書 :チタン合金および人工骨

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-086456 (P2015-086456A)
公開日 平成27年5月7日(2015.5.7)
発明の名称または考案の名称 チタン合金および人工骨
国際特許分類 C22C  14/00        (2006.01)
A61L  27/00        (2006.01)
A61F   2/28        (2006.01)
FI C22C 14/00 Z
A61L 27/00 L
A61F 2/28
請求項の数または発明の数 2
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2013-227906 (P2013-227906)
出願日 平成25年11月1日(2013.11.1)
発明者または考案者 【氏名】宮崎 修一
【氏名】金 熙榮
【氏名】菊地 和幸
【氏名】根来 直弥
出願人 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100137752、【弁理士】、【氏名又は名称】亀井 岳行
審査請求 未請求
テーマコード 4C081
4C097
Fターム 4C081AB02
4C081BB07
4C081BB08
4C081CG03
4C081CG06
4C081CG08
4C081DA01
4C097AA01
4C097BB01
4C097DD10
要約 【課題】低ヤング率で高強度のチタン合金を提供すること。
【解決手段】1at%以上15at%以下のニオブと、2at%以上5at%以下の鉄と、2at%以上12at%以下のアルミニウムと、残部のチタンと、不可避的不純物と、からなることを特徴とするチタン合金。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
1at%以上15at%以下のニオブと、
2at%以上5at%以下の鉄と、
2at%以上12at%以下のアルミニウムと、
残部のチタンと、
不可避的不純物と、
からなることを特徴とするチタン合金。
【請求項2】
請求項1に記載のチタン合金により構成されたことを特徴とする人工骨。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン合金および前記チタン合金が使用された人工骨に関し、特に、低ヤング率で高強度のチタン合金および人工骨に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン合金は、生体適合性がよい(生体に使用しても拒絶反応等がでにくい)ことが知られており、従来から生体材料として使用されてきた。特に、骨折の部位の治療等において、インプラント材としてチタン合金を使用する場合には、骨の特性(弾性率や強度)に近い材料を使用することが好ましい。骨の弾性率(ヤング率)は、10~40[GPa]程度であるため、ヤング率が50[GPa]以下の合金が望まれている。
【0003】
ヤング率が純チタンよりも低くしたチタン合金について、下記の特許文献1~10に記載の技術が公知である。
特許文献1としての特許第5143704号公報には、13~28atom%(at%)のNbと0.1~10at%のSnとを含有し、さらに、V,W,ZrおよびAlのうちのいずれか1種を0.1~5at%含有するTi-Nb-Sn系合金が記載されている。特許文献1のTi-Nb-Sn合金は、共振法で測定されたヤング率が、54.2GPa以上となっている。
【0004】
特許文献2としての特許第5005889号公報には、Ti-(25wt%-40wt%)Nb-(0-10wt%)Sn合金や、Ti-(10wt%-16wt%)V-(0-8wt%)Sn合金が記載されている。特許文献2のTi-Nb-Sn系のチタン合金では、共振法で測定されたヤング率が、89%冷間圧延後は50[GPa]未満となっているが、熱処理を行った後は50[GPa]を超えている。冷間圧延しただけで、熱処理をしないと、延性に乏しく均一伸びが非常に小さい問題がある。なお、Ti-V-Sn系のチタン合金では、共振法で測定されたヤング率は、59[GPa]以上となっている。
【0005】
特許文献3としての特開2005-113227号公報には、13~28atom%(at%)のNbと0.1~10at%のSnとを含有するチタン合金や、13~28atom%(at%)のNbと0.1~10at%のSnとに加え、V,Mo,W,ZrおよびAlのうちのいずれか1種または2種以上を0.1~5at%含有するTi-Nb-Sn系合金が記載されている。特許文献3の各合金は、共振法で測定されたヤング率が、50.4GPa以上となっている。
【0006】
特許文献4としての特許第4152050号公報には、25~50質量%(wt%)のTiと、25~60質量%のZrと、10~20質量%のNbと、5~40質量%のTaと、を含有し、Zr/Taが0.5~1.5であり、且つ、Nb/Taが0.125~1.5、引っ張り強度/ヤング率が0.016以上、ヤング率が70GPa以下のチタン合金が記載されている。特許文献4に記載のチタン合金では、インストロン引張り試験機を使用して測定されたヤング率が53.0[GPa]以上となっている。
【0007】
特許文献5としての特開2010-1503号公報には、10.5~25質量%(wt%)のNbと、0.1~8質量%のSnと、を含有し、0.1~8質量%のMoと、0.1~6.4質量%のCrと、0.1~4.7質量%のMnと、0.1~3.2質量%のFeと、を少なくとも1種類含有し、Mo、Cr、Mn、Feのモリブデン当量が2~8、且つ、(Nbの質量%/3.5)+(モリブデン当量)が9~11であるチタン合金が記載されている。特許文献5に記載のチタン合金では、共振法により測定されたヤング率は、67.1[GPa]以上となっている。
【0008】
特許文献6としての特許第3375083号公報には、30~60質量%(wt%)のVa族元素(V,Nb,Ta)と、を含有するチタン合金が記載されている。特許文献6に記載のチタン合金では、インストロン引張り試験機により測定された応力-歪み線図から、平均ヤング率を測定しており、平均ヤング率が46[GPa]以上となっている。なお、平均ヤング率に関しては、特許文献4の段落番号「0006」に記載されているように、一般のヤング率とは異なる指標であり、一般のヤング率に比べて、低い値となる。したがって、特許文献6に記載されたチタン合金における一般のヤング率は、甘めに見積もっても50[GPa]以下を実現しているとは考えにくい。
【0009】
特許文献7としての特開2004-353039号公報には、10~35質量%(wt%)のZrと、8~14質量%のCrと、を含有するチタン合金が記載されている。特許文献7に記載のチタン合金では、共振法により測定されたヤング率は、72[GPa]以上となっている。
【0010】
特許文献8としての特開2004-162171号公報には、0.3~3質量%(wt%)の酸素、窒素、炭素の1種類以上と、1.8質量%以下のAlと、を含有するチタン合金において、Mo、V、W、Nb、Ta、Fe、Cr、Ni、Co、Cuのモリブデン当量からAlの質量%を減算した値が3~11質量%であるチタン合金が記載されている。特許文献8に記載のチタン合金では、応力-歪み線図から導出されたヤング率は、50[GPa]以上となっている。
【0011】
特許文献9としての特開2010-216011号公報には、3.5~7.0質量%(wt%)のAlと、1.4~3.6質量%のFeと、2.0~10.0質量%のMoと、を含有し、モリブデン当量が6.0~14.0質量%であるチタン合金が記載されている。特許文献9に記載のチタン合金では、共振法により測定されたヤング率は、65[GPa]以上となっている。
【0012】
特許文献10としての特開2008-101234号公報には、12~30重量%(wt%)のNbと、12~30重量%のZrと、1~6重量%のAlと、1~8重量%のCrと、1~8重量%のSnと、を含有するチタン合金が記載されている。特許文献10に記載のチタン合金では、引張り試験機を使用してJISに基づいて測定されたヤング率は、80[GPa]以上となっている。
【先行技術文献】
【0013】

【特許文献1】特許第5143704号公報(「0026」)
【特許文献2】特許第5005889号公報(「0032」~「0042」、図2)
【特許文献3】特開2005-113227号公報(「0026」~「0027」)
【特許文献4】特許第4152050号公報(「0049」、「0053」)
【特許文献5】特開2010-1503号公報(「0028」~「0030」)
【特許文献6】特許第3375083号公報(「0114」~「0122」)
【特許文献7】特開2004-353039号公報(「0013」~「0015」)
【特許文献8】特開2004-162171号公報(「0045」~「0051」)
【特許文献9】特開2010-216011号公報(「0030」~「0032」)
【特許文献10】特開2008-101234号公報(「0037」、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
(従来技術の問題点)
前述のように、従来のチタン合金では、50[GPa]未満のものはほとんど存在せず、骨のヤング率に近い20~40[GPa]のチタン合金は得られていない。骨のインプラントとして、骨よりもヤング率の高い材料を使用した場合、荷重が骨にかからず、インプラントにかかってしまい、かえって骨が弱くなってしまう問題がある。
また、従来の低ヤング率チタン合金はZr、Taなど高価で重いレアメタルを多く含んでいる。
一方で、一般的に、合金では、ヤング率を低くすると、引っ張り強度も低下する傾向にあり、強度が低下すると、永久歪みが入り易く耐久性に乏しい。
【0015】
本発明は、低ヤング率で高強度のチタン合金を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明のチタン合金は、
1at%以上15at%以下のニオブと、
2at%以上5at%以下の鉄と、
2at%以上12at%以下のアルミニウムと、
残部のチタンと、
不可避的不純物と、
からなることを特徴とする。
【0017】
前記技術的課題を解決するために、請求項2に記載の発明の人工骨は、
請求項1に記載のチタン合金により構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1、2に記載の発明によれば、従来の構成に比べて、低ヤング率で高強度のチタン合金を提供することができる。また、鉄とアルミニウムを使用しており、レアメタルを使用する場合に比べて、原材料費を低減できると共に、融点を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1はアルミニウムの濃度を変化させた場合の合金の特性の変化を評価した結果であり、図1Aは横軸にアルミニウムの含有量を取り縦軸にヤング率を取ったグラフ、図1Bは横軸にアルミニウムの含有量を取り縦軸に最大応力を取ったグラフである。
【図2】図2はアルミニウムの濃度依存性を対比する説明図であり、合金5,17,19の応力-歪み曲線のグラフであって、横軸にひずみを取り、縦軸に応力を取ったグラフである。
【図3】図3は鉄の濃度を変化させた場合の合金の特性の変化を評価した結果であり、図3Aは横軸に鉄の含有量を取り縦軸にヤング率を取ったグラフ、図3Bは横軸に鉄の含有量を取り縦軸に最大応力を取ったグラフである。
【図4】図4は鉄の濃度依存性を対比する説明図であり、合金5,15,23の応力-歪み曲線のグラフであって、横軸にひずみを取り、縦軸に応力を取ったグラフである。
【図5】図5は既存の合金と実施例の合金との対比説明図であり、横軸にヤング率を取り縦軸に引っ張り強さを取ったグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に実施例を使用して、本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例である下記表1に示す合金組成の合金1~合金13および比較例としての合金14~合金24の試験片を作製して、実験を行った。実験に使用した試験片は、下記の方法(1)~(3)により作製された。
(1)各金属元素のat%を計測してアーク溶解法により溶融して合金インゴットを作製する。すなわち、合金1(Ti-13Nb-2Fe-4Al)は、13at%のNbと、2at%のFeと、4at%のAlと、残部(81at%)のTiの合金組成の合金であり、合金2(Ti-7Nb-3Fe-2Al)は7at%のNbと、3at%のFeと、2at%のAlと、残部(88at%)のTiの合金組成の合金である。
(2)作成された合金インゴットを冷間圧延機で80%~95%の圧延率で冷間圧延して、板材を作製する。
(3)板材から測定用の試験片を放電加工機により切り出す。ヤング率測定用の試験片は
長さ30mm、幅6mm、厚さ0.2mmである。引張試験の試験片はゲージ長20mm、幅1.5mm、厚さ0.2mmである。
(4)切り出した試験片に、アルゴン雰囲気で900℃、30分の熱処理を施す。
【実施例1】
【0022】
(合金特性の測定試験)
前記作製方法で作製された合金のヤング率は片持ち共振法により、最大強度は引張試験により測定した。冷間圧延機で80%の圧延が出来ず、試験片が得られなかった場合には、「-」で表記した。
また、95%冷間圧延が可能な場合は加工性が良好な「○」、95%冷間圧延が不能であったが90%冷間圧延が可能な場合は「△」、90%冷間圧延が不能な場合は「×」と評価した。
結果を表1に示す。
【実施例1】
【0023】
【表1】
JP2015086456A_000002t.gif
【実施例1】
【0024】
前記実験結果から、Nbが1~15at%、Feが2~5at%、Alが2~12at%の四元合金では、ヤング率が50[GPa]未満且つ、最大応力が600[MPa]以上であると共に、少なくとも90%冷間加工性が可能な良好な加工性を有することが確認された。特に、合金5~10、13は、ヤング率が30[GPa]台を実現しており、人間の骨のヤング率に近く、人工骨の材料として好適に使用可能である。
前記実験結果から、ニオブが添加されない場合、合金24に示すように、ヤング率や最大応力が測定できず、冷間加工性が非常に悪い問題がある。一方で、ニオブが16at%より多い場合、合金14に示すように、最大応力(強度)が低くなり、ヤング率が50[GPa]を超える問題がある。
【実施例1】
【0025】
図1はアルミニウムの濃度を変化させた場合の合金の特性の変化を評価した結果であり、図1Aは横軸にアルミニウムの含有量を取り縦軸にヤング率を取ったグラフ、図1Bは横軸にアルミニウムの含有量を取り縦軸に最大応力を取ったグラフである。
図2はアルミニウムの濃度依存性を対比する説明図であり、合金5,17,19の応力-歪み曲線のグラフであって、横軸にひずみを取り、縦軸に応力を取ったグラフである。
図1において、ニオブ(Nb)、鉄(Fe)の含有量を固定して、アルミニウム(Al)の含有量(濃度)を変化させた場合に、どのような特性の変化が起こるか確認をした。具体的には、合金3~10、17~19について、ヤング率と最大応力をグラフ状にプロットした。したがって、図1Aに示すように、さらに、アルミニウムが2at%未満の場合、合金17,18に示すように、ヤング率が高くなりすぎる問題がある。一方で、アルミニウムが、14at%以上になると、合金19(および合金20)に示すように、ヤング率が再び高くなり且つ加工性も悪化する問題がある。
図2に示すように、応力-歪み曲線の立ち上がりの角度が、ヤング率に相当するが、合金17,19は、角度が高い(=ヤング率が高い)が、合金5では、角度が低く(ヤング率が低く)なっている。
【実施例1】
【0026】
図3は鉄の濃度を変化させた場合の合金の特性の変化を評価した結果であり、図3Aは横軸に鉄の含有量を取り縦軸にヤング率を取ったグラフ、図3Bは横軸に鉄の含有量を取り縦軸に最大応力を取ったグラフである。
図4は鉄の濃度依存性を対比する説明図であり、合金5,15,23の応力-歪み曲線のグラフであって、横軸にひずみを取り、縦軸に応力を取ったグラフである。
図3において、ニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)の含有量を固定して、鉄(Fe)の含有量(濃度)を変化させた場合に、どのような特性の変化が起こるか確認をした。具体的には、合金2,5,11,12,15,16,21~23について、ヤング率と最大応力をグラフ状にプロットした。したがって、図3、図4からわかるように、鉄が2at%未満の場合、合金11に示すように、最大応力(強度)が低くなる問題がある。一方で、鉄が6at%以上の場合には、合金21~23に示すように、ヤング率が高くなりすぎる問題がある。
【実施例1】
【0027】
図5は既存の合金と実施例の合金との対比説明図であり、横軸にヤング率を取り縦軸に引っ張り強さを取ったグラフである。
よって、実施例の合金では、1at%以上5at%以下のニオブと、2at%以上5at%以下の鉄と、2at%以上12at%以下のアルミニウムと、を含有するチタン合金により、特許文献1~10に示す合金に比べて、ヤング率が50[GPa]未満、且つ、強度が600[MPa]以上であると共に、加工性がよい合金を提供することができる。
図5に示すように、一般の鉄系の合金やチタン合金、アルミ合金、マグネシウム合金では、ヤング率が高くなると強度が高くなり、ヤング率が低くなると強度が低くなる傾向がある。これらに対して、合金5に示すように実施例の合金では、50[GPa]未満の低ヤング率を実現しつつ、高強度のチタン合金を実現できる。したがって、低ヤング率、高強度で、加工性もよく、生体適合性の高いチタン合金を提供することができる。
【実施例1】
【0028】
また、実施例の合金では、Nbが15at%以下であると共に、FeとAlという比較的価格の安い元素を使用しているため、VやZr、Mo、Wのような、いわゆるレアメタルを使用する従来の合金に比べて、製造コストも低減することができる。
また、一般に、チタン合金では、Ti-Ni合金以外のチタン系の合金は、融点が高く、溶かして製造、加工等をするために、大がかりな施設が必要になる問題がある。これに対して、実施例の合金では、FeやAlが添加されているため、合金の融点が下がりやすい。したがって、高温にしなくても製造等が可能であり、製造コストも低減することが期待できる。
【実施例1】
【0029】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。
例えば、高い生体適合性を利用して、人工骨やインプラント、歯列矯正ワイヤ等の手術や治療等で使用される生体・医療部材に好適に利用可能であるが、これに限定されない。例えば、低ヤング率(高柔軟性)、高強度を利用して、眼鏡のフレームやゴルフクラブ、サスペンションやスプリング等の自動車、二輪車用部品、テントのポール等のレジャー用品等にも好適に適用可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4