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明細書 :基板上へのナノ粒子の配列方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-103609 (P2015-103609A)
公開日 平成27年6月4日(2015.6.4)
発明の名称または考案の名称 基板上へのナノ粒子の配列方法
国際特許分類 H01L  29/06        (2006.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
H01L  35/14        (2006.01)
H01L  35/24        (2006.01)
H01L  35/34        (2006.01)
H01L  51/42        (2006.01)
FI H01L 29/06 601N
B82Y 40/00
H01L 35/14
H01L 35/24
H01L 35/34
H01L 31/04 D
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 23
出願番号 特願2013-241968 (P2013-241968)
出願日 平成25年11月22日(2013.11.22)
発明者または考案者 【氏名】浦岡 行治
【氏名】上沼 睦典
出願人 【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100156845、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 威一郎
【識別番号】100124431、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 順也
【識別番号】100124039、【弁理士】、【氏名又は名称】立花 顕治
【識別番号】100112896、【弁理士】、【氏名又は名称】松井 宏記
【識別番号】100174160、【弁理士】、【氏名又は名称】水谷 馨也
審査請求 未請求
要約 【課題】種々の基板上において、ナノ粒子を所望の間隔、かつ、略等間隔に配列させる方法を提供する。
【解決手段】ポリペプチドにより構成されたシェル部と、無機ナノ粒子により構成されたコア部とを有するコアシェル粒子であり、シェル部にポリマ鎖が結合しているポリマー鎖が結合したナノ粒子を含むナノ粒子溶液を、基板上に塗布し、隣接するナノ粒子の中心間距離が12~100nmの範囲にて、ナノ粒子が略等間隔で基板上に配列される塗布工程を備える、基板上へのナノ粒子の配列方法。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
ポリマー鎖が結合したナノ粒子を含むナノ粒子溶液を、基板上に塗布する塗布工程を備える、基板上へのナノ粒子の配列方法。
【請求項2】
隣接する前記ナノ粒子の中心間距離が12~100nmの範囲において、前記ナノ粒子が略等間隔で基板上に配列される、請求項1に記載の配列方法。
【請求項3】
前記ポリマー鎖が、ポリアルキレングリコール鎖を有する、請求項1または2に記載の配列方法。
【請求項4】
前記ポリマー鎖の最大長さが4nm以上である、請求項1~3のいずれかに記載の配列方法。
【請求項5】
前記ナノ粒子は、ポリペプチドにより構成されたシェル部と、無機ナノ粒子により構成されたコア部とを有するコアシェル粒子であり、前記シェル部に前記ポリマー鎖が結合している、請求項1~4のいずれかに記載の配列方法。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、球殻状タンパク質である、請求項1~5のいずれかに記載の配列方法。
【請求項7】
前記コアシェル粒子がフェリチンである、請求項1~6のいずれかに記載の配列方法。
【請求項8】
前記塗布工程の後、前記基板上のナノ粒子溶液から溶媒を除去する乾燥工程をさらに備える、請求項1~7のいずれかに記載の配列方法。
【請求項9】
前記塗布工程の後、前記基板上の前記ポリマー鎖が結合したナノ粒子から前記ポリマー鎖を除去する除去工程をさらに備える、請求項1~8のいずれかに記載の配列方法。
【請求項10】
ポリマー鎖が結合したナノ粒子が表面上に配列された基板であって、
隣接する前記ナノ粒子の中心間距離が12~100nmの範囲において、前記ナノ粒子が略等間隔で基板上に配列されている、基板。
【請求項11】
ポリマー鎖が結合したナノ粒子を含むナノ粒子溶液を基板上に塗布した後、前記ポリマー鎖を除去することにより得られたナノ粒子が、表面上に配列された基板であって、
隣接する前記ナノ粒子の中心間距離が12~100nmの範囲において、前記ナノ粒子が略等間隔で基板上に配列されている、基板。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上へのナノ粒子の配列方法、及びナノ粒子が表面上に配列された基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属などを含むナノ粒子を表面上に配列した基板を、ナノデバイスに用いることが検討されている。このような基板を用いることにより、従来の3次元的なバルク状半導体とは異なる物性や機能が発揮されると考えられており、特に、熱電変換素子、太陽電池、ディスプレイ、メモリ、薄膜トランジスタ、LSIなどの半導体分野のナノデバイスへの応用が期待されている。ナノ粒子を表面上に配列した基板をこれらの分野へ応用する場合には、基板上におけるナノ粒子の配列を高い位置精度で行う必要がある。
【0003】
ナノ粒子を高い位置精度で基板上に配列させる方法として、例えば特許文献1には、ナノ粒子としてフェリチンなどの金属内包タンパク質を用い、表面に絶縁層を有する基板表面上に、金属内包タンパク質のピッチで金属酸化物を二次元的に配列させる方法が開示されている。特許文献1に開示された方法においては、具体的には、金属内包タンパク質を含む水溶液中でポリペプチド膜などに金属内包タンパク質を付着させ、これを基板の上にのせた後、タンパク質を焼成により除去することにより、金属酸化物が、金属内包タンパク質のピッチで二次元的に配置された基板が得られる。
【0004】
フェリチンの大きさは、ナノメートルオーダーで揃っていることから、特許文献1に開示された方法によれば、金属酸化物は非常に高い位置精度で等間隔に二次元配列される。しかしながら、この方法では、金属内包タンパク質のピッチでしかナノ粒子を配列させることができないという問題がある。
【0005】
また、特許文献2には、フェリチンがpH7付近の溶媒中においてマイナスの電荷を表面に有していること、及びSiO2基板表面がマイナスの電荷を有していることを利用した、SiO2基板上へのフェリチンの配列方法が開示されている。特許文献2に開示された方法においては、具体的には、SiO2基板の表面にフェリチンとは反対のプラス電荷を有する膜(例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES))等を電子リソグラフィーなどの方法によりパターニングし、静電相互作用を利用して、この膜上のみにフェリチンを選択的に吸着・配置する方法が開示されている。
【0006】
特許文献2に開示された方法によれば、SiO2基板上にパターン形成された膜上のみに、ナノ粒子であるフェリチンを高い位置精度で配置することができる。しかしながら、この方法では、ナノ粒子、基板、及びパターン形成された膜の静電相互作用を利用する必要があるため、ナノ粒子、基板、膜の種類が限定されるという問題がある。また、ナノ粒子の位置精度は、パターン形成された膜の形状精度に依存するため、基板上には、ナノ粒子と反対の電荷を有し、かつ、非常に高精度でパターン化された膜を形成する必要がある。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開平11-45990号公報
【特許文献2】特開2011-176041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、種々の基板上において、ナノ粒子を所望の間隔、かつ、略等間隔に配列させる方法を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ポリマー鎖が結合したナノ粒子を含むナノ粒子溶液を、基板上に塗布することにより、種々の基板上において、ナノ粒子を所望の間隔、かつ、略等間隔に配列させ得ることを見出した。すなわち、ポリマー鎖が結合したナノ粒子では、隣接するナノ粒子は当該ポリマー鎖の立体障害によって互いに近づける距離が制限される。この距離は、ポリマー鎖の分子量(ポリマー鎖の長さ)が大きくなるほど大きくなるため、隣接するナノ粒子間の中心間距離はポリマー鎖の分子量に依存することになる。従って、ナノ粒子に結合したポリマー鎖の分子量を制御することによって、隣接するナノ粒子の中心間距離を制御することが可能となり、基板上において、ナノ粒子を所望の間隔で、略等間隔に配列させ得ることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて更に研究を重ねた結果、完成されたものである。即ち、本発明は以下に掲げる態様の発明を提供する。
【0010】
項1. ポリマー鎖が結合したナノ粒子を含むナノ粒子溶液を、基板上に塗布する塗布工程を備える、基板上へのナノ粒子の配列方法。
項2. 隣接する前記ナノ粒子の中心間距離が12~100nmの範囲において、前記ナノ粒子が略等間隔で基板上に配列される、項1に記載の配列方法。
項3. 前記ポリマー鎖が、ポリアルキレングリコール鎖を有する、項1または2に記載の配列方法。
項4. 前記ポリマー鎖の最大長さが4nm以上である、項1~3のいずれかに記載の配列方法。
項5. 前記ナノ粒子は、ポリペプチドにより構成されたシェル部と、無機ナノ粒子により構成されたコア部とを有するコアシェル粒子であり、前記シェル部に前記ポリマー鎖が結合している、項1~4のいずれかに記載の配列方法。
項6. 前記ポリペプチドが、球殻状タンパク質である、項1~5のいずれかに記載の配列方法。
項7. 前記コアシェル粒子がフェリチンである、請求項1~6のいずれかに記載の配列方法。
項8. 前記塗布工程の後、前記基板上のナノ粒子溶液から溶媒を除去する乾燥工程をさらに備える、項1~7のいずれかに記載の配列方法。
項9. 前記塗布工程の後、前記基板上の前記ポリマー鎖が結合したナノ粒子から前記ポリマー鎖を除去する除去工程をさらに備える、項1~8のいずれかに記載の配列方法。
項10. ポリマー鎖が結合したナノ粒子が表面上に配列された基板であって、
隣接する前記ナノ粒子の中心間距離が12~100nmの範囲において、前記ナノ粒子が略等間隔で基板上に配列されている、基板。
項11. ポリマー鎖が結合したナノ粒子を含むナノ粒子溶液を基板上に塗布した後、前記ポリマー鎖を除去することにより得られたナノ粒子が、表面上に配列された基板であって、
隣接する前記ナノ粒子の中心間距離が12~100nmの範囲において、前記ナノ粒子が略等間隔で基板上に配列されている、基板。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、種々の基板上において、ナノ粒子を所望の間隔、かつ、略等間隔に基板上に配列させる方法を提供することができる。また、本発明によれば、隣接するナノ粒子の中心間距離が12~100nmの範囲において、ナノ粒子が略等間隔で基板上に配列されている基板を提供することができる。さらに、本発明によれば、隣接するナノ粒子の中心間距離が12~100nmの範囲において、前記のポリマー鎖が除去されたナノ粒子が略等間隔で基板上に配列されている基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明における基板上へのナノ粒子の配列方法を説明するための模式図である。
【図2】本発明における基板上へのナノ粒子の配列方法を説明するための模式図である。
【図3】本発明における基板上へのナノ粒子の配列方法を説明するための模式図である。
【図4】本発明における基板上へのナノ粒子の配列方法を説明するための模式図である。
【図5】実施例1~4のナノ粒子について、動的光散乱法を用いて得られた粒径と質量%との関係を示すグラフである。
【図6】実施例1~4のナノ粒子について、動的光散乱法を用いて得られた粒径とPEG鎖の分子量との関係を示すグラフである。
【図7】実施例1において、PEG鎖が結合したフェリハイドライド内包フェリチンが配列されたSi基板表面のSEM像である。
【図8】実施例2において、PEG鎖が結合したフェリハイドライド内包フェリチンが配列されたSi基板表面のSEM像である。
【図9】実施例3において、PEG鎖が結合したフェリハイドライド内包フェリチンが配列されたSi基板表面のSEM像である。
【図10】実施例4において、PEG鎖が結合したフェリハイドライド内包フェリチンが配列されたSi基板表面のSEM像である。
【図11】実施例5において、PEG鎖が結合したフェリハイドライド内包フェリチンが配列されたTa基板表面のSEM像である。
【図12】実施例6において、PEG鎖が結合したフェリハイドライド内包フェリチンが配列されたPt基板表面のSEM像である。
【図13】実施例7において、PEG鎖が結合したフェリハイドライド内包フェリチンが配列されたCr基板表面のSEM像である。
【図14】実施例8において、PEG鎖が結合したフェリハイドライド内包フェリチンが配列されたMo基板表面のSEM像である。
【図15】実施例1~4において得られたSi基板上に配列されたフェリチンにおける動径分布関数g(r)と距離(nm)との関係を示すグラフである。
【図16】実施例1~4において得られたSi基板上に配列されたフェリチンにおけるPEG鎖の分子量と隣接するフェリチンの中心間距離(nm)との関係を示すグラフである。
【図17】実施例3において得られたSi基板表面において、PEG鎖が結合したフェリハイドライド内包フェリチンからタンパク質及びPEG鎖を除去した後におけるSi基板表面のSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の基板上へのナノ粒子の配列方法は、ポリマー鎖が結合したナノ粒子を含むナノ粒子溶液を、基板上に塗布する塗布工程を備えることを特徴とする。すなわち、本発明の配列方法においては、例えば図1の模式図に示されるように、ポリマー鎖が結合した複数のナノ粒子10は、ナノ粒子1に結合した当該ポリマー鎖が位置し得る領域2の立体障害によって、隣接するナノ粒子1が互いに近づける距離(隣接するナノ粒子間の中心間距離D1)が制限されている。この距離D1は、ポリマー鎖の長さ(分子量)が大きくなるほど長くなるため、隣接するナノ粒子1間の中心間距離D1はポリマー鎖の長さ(分子量)に依存することになる。例えば、図3の模式図に示されるように、図1の場合よりもポリマー鎖の長さ(分子量)が大きくなると、ナノ粒子1に結合した当該ポリマー鎖が位置し得る領域2も大きくなり、ナノ粒子1の中心間距離D2も大きくなる。このように、本発明においては、ナノ粒子に結合したポリマー鎖の長さ(分子量)を制御することによって、隣接するナノ粒子の中心間距離を制御することが可能となり、基板上において、ナノ粒子を所望の間隔、かつ、略等間隔に配列させることができる。さらに、例えば図2または図4の模式図に示すように、それぞれ、図1または図3で示されたナノ粒子1からポリマー鎖を除去した場合にも、隣接するナノ粒子1間の中心間距離D1及びD2は保持されており、ポリマー鎖を除去したナノ粒子を所望の間隔で、略等間隔に配列させることができる。以下、本発明の基板上へのナノ粒子の配列方法、及びナノ粒子が基板上に配列された基板について詳述する。

【0014】
本発明において、ナノ粒子とは、ナノメートルオーダー(例えば、直径が1~100nm程度)の大きさの粒子をいう。ナノ粒子としては、後述のポリマー鎖を結合できるものであれば特に制限されず、例えば、有機ナノ粒子、無機ナノ粒子、有機・無機複合ナノ粒子などが挙げられる。ナノ粒子は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。

【0015】
有機ナノ粒子を構成する素材としては、樹脂、ポリペプチド、核酸、脂質、多糖類などが挙げられる。樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。

【0016】
無機ナノ粒子を構成する素材としては、金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、ガラスなどが挙げられる。金属としては、特に制限されず、例えば、Fe、Co、Mn、Ni、Al、Ca、Mg、Zn、Ti、Ir、Hf、Cr、Be、Ga、U、Pb、V、Cu、In、Si、Ta、Pt、Pd、Au、Ag、Ba、Cd、Bi、Sb、Mo、Teまたはこれらの少なくとも1種の金属を含む合金などが挙げられ、好ましくはFe、Co、Ni、Auなどが挙げられる。また、金属酸化物としては、これらの金属の酸化物が挙げられ、好ましくはFe、Co、Ni、Taなど酸化物が挙げられる。金属水酸化物としては、これらの金属の水酸化物が挙げられ、好ましくはFe、Co、Ni、Ta、Mn、Al、Ca、Mg、Zn、Ti、Baなどの水酸化物が挙げられる。金属硫化物としては、これらの金属の硫化物が挙げられ、好ましくはFe、Co、Ni、Au、Pt、Cu、Cd、Ag、Pd、Zn、Mn、Bi、Ir、Sb、Mo、Teなどの硫化物が挙げられる。

【0017】
有機・無機複合ナノ粒子としては、上記の有機ナノ粒子を構成する素材と上記の無機ナノ粒子を構成する素材との複合体が挙げられる。有機・無機複合ナノ粒子としては、好ましくは、ポリペプチドにより構成されたシェル部と、無機ナノ粒子により構成されたコア部とを有するコアシェル粒子が挙げられる。ポリペプチドは、その種類ごとに特定の構造を有するため、シェル部とコア部も種類ごとに特定のサイズとなる。バイオテクノロジーでは、「DNA」という設計図をもとに分子レベルでの生成物(アミノ酸残基)の制御が可能であるため、そのさまざまなアミノ酸残基からなる全てのポリペプチドは、自己集合能によってサイズ分散が実質的にないポリペプチドを形成することができる。このため、有機・無機複合ナノ粒子としてこのようなコアシェル粒子を用いることにより、ナノ粒子のサイズを極めて精密に制御することが可能となる。コアシェル粒子の粒径としては、例えば1~100nm程度、好ましくは2~20nm程度が挙げられる。コアシェル粒子において、コア部の直径としては特に制限されず、例えば0.1~99nm程度、好ましくは1~10nm程度が挙げられる。また、シェル部の厚みとしては、例えば1~99.9nm程度、好ましくは1~90nm程度が挙げられる。なお、コアシェル粒子の粒径は、透過型電子顕微鏡観察により測定される値である。

【0018】
コアシェル粒子のシェル部を構成するポリペプチドとしては、特に制限されないが、例えば、コアとなる無機ナノ粒子を内包できるかご状タンパク質が挙げられ、具体的には、球殻状タンパク質が挙げられる。球殻状タンパク質としては、例えば、フェリチン様タンパク質などが挙げられる。ここで、フェリチンタンパク質とは、フェリチンを構成する球状のタンパク質であり、内部空間に金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物などの無機ナノ粒子を内包することができる。フェリチン様タンパク質には、このフェリチンタンパク質の他、アミノ酸配列やサブユニットの数などの点でフェリチンタンパク質とは非共通部分があるが、内部空間に無機ナノ粒子を内包できる機能を有するタンパク質が含まれる。なお、フェリチンとは、生体内で鉄を貯蔵するタンパク質として知られており、タンパク質のサブユニットが24個であり、フェリチンタンパク質の内部空間には酸化鉄が内包されている。内部空間に酸化鉄などの無機ナノ粒子が含まれていないフェリチンは、一般に、アポフェリチンなどと称される。フェリチンタンパク質の由来は、特に制限されず、例えば人、馬などの哺乳動物由来、大豆などの植物由来、大腸菌などの微生物由来などが挙げられる。また、フェリチンタンパク質のサブユニットは、L鎖(軽鎖)又はH鎖(重鎖)のいずれか一方で構成されていても、またこれらの双方で構成されていてもよいが、好ましくはL鎖が挙げられる。また、フェリチン様タンパク質には、リステリア菌に由来するリステリアフェリチンタンパク質も含まれる。リステリアフェリチンタンパク質とは、リステリアフェリチンを構成する球状のタンパク質であり、フェリチンタンパク質と同様、内部空間に金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物などの無機ナノ粒子を内包することができる。リステリアフェリチンタンパク質は、タンパク質のサブユニットが上記フェリチンタンパク質の半数の12個である。

【0019】
これらの球殻状タンパク質のサブユニットは、上記のような無機ナノ粒子を内包できることを限度として、1または数個若しくは複数個のアミノ酸残基が置換、欠失、付加、または挿入された変異体であってもよい。なお、変異体は、公知の遺伝子工学的手法を使用することによって作製することができる。

【0020】
コアシェル粒子のコア部を構成する無機ナノ粒子としては、上記の金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物などが挙げられる。このようなフェリチンは、公知の方法により合成することができ、例えば、K. Iwahori, K. Yoshizawa, M. Muraoka, I. Yamashita, Inorg. Chem., 44, 6393 (2005)に記載された大腸菌を用いた遺伝子組み換え技術を用いることにより合成することができる。また、リステリアフェリチンでは、例えば、K. Iwahori, T. Enomoto, H. Furusho, A. Miura, K. Nishio,Y. Mishima, I. Yamashita, Chem. Mater. 2007, 19, 3105-3111に記載された大腸菌を用いた遺伝子組み換え技術を用いることにより合成することができる。

【0021】
本発明において基板上に配列させるナノ粒子としては、フェリチンが特に好ましい。フェリチンの直径は約13nmであり、中心の空孔は約7nmである。この空孔には、通常約2000個の鉄原子が内包され、コア部を形成している。このように、特定のサイズを有するフェリチンをナノ粒子として用い、かつ、当該フェリチンの表面に後述するような方法でポリマー鎖を結合することにより、種々の基板上において、特定サイズのナノ粒子を所望の間隔、略等間隔、及び高い位置精度で配列させることができる。

【0022】
さらに、フェリチンのコア部は、基板上に配列させるナノ粒子の種類に応じて、上記文献などに記載された公知の遺伝子組み換え技術により種々の金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物などに置換することが可能である。また、フェリチンのコア部の密度を制御することにより、コア部を形成する金属の量の制御も可能であるため、コア部のサイズも制御することができる。また、フェリチンのシェル部を構成するタンパク質は、UV/オゾン熱処理などによって、分解・除去しやすいという特徴を有する。したがって、フェリチンのタンパク質を除去することにより、コア部にある無機ナノ粒子のみをナノ粒子として基板上に配列させることができる。なお、UV/オゾン熱処理は、UV/オゾン処理装置を用いて100~120℃程度で10~40分間程度処理することより行うことができる。

【0023】
このように、フェリチンをナノ粒子として用いることにより、基板上において、所望のサイズの無理ナノ粒子を、所望の間隔で、略等間隔に配列させることができる。なお、フェリチンのコア部は、一般に金属酸化物などにより構成されているが、フェリチンを基板上に配列し、シェル部を構成するタンパク質を除去して、金属酸化物のナノ粒子が配列された基板を得た後、この基板に対して水素ガス、窒素ガスなど還元力のあるガスを用いて熱処理を行うことにより、基板上に配列された金属酸化物を還元して、金属などの導体または半導体などが配列された基板に容易に変換することができる。

【0024】
本発明において、ナノ粒子に結合されたポリマー鎖としては、特に制限されないが、分子量や長さが調整しやすく、ナノ粒子を所望の間隔で略等間隔に配列させることが容易であることから、ポリアルキレングリコール鎖であることが好ましい。ポリアルキレングリコール鎖の具体例としては、好ましくはポリエチレングリコール鎖、ポリプロピレングリコール鎖、ポリブチレングリコール鎖などが挙げられ、より好ましくはポリエチレングリコールが挙げられる。ナノ粒子をより高精度で等間隔に配置する観点からは、ポリアルキレングリコール鎖の分子量分布はできるだけ小さいことが望ましい。ポリアルキレングリコール鎖は、分子量分布を制御しやすいため、この観点からも、ポリアルキレングリコール鎖を用いることが好ましい。ポリマー鎖の分子量としては、隣接するナノ粒子間に設ける所望の中心間距離に応じて適宜設定することができ、例えば、5百~50万程度、好ましくは1千~25万程度、より好ましくは1千~5万程度が挙げられる。なお、ポリマー鎖の分子量は、GPCを用いて測定される重量平均分子量とすることができる。

【0025】
ナノ粒子に結合されたポリマー鎖の最大長さとしては、隣接するナノ粒子間に設ける所望の中心間距離に応じて適宜設定することができ、例えば、4nm以上、好ましくは5~30nm程度である。

【0026】
ナノ粒子を略等間隔で配列させるためには、ポリマー鎖によって形成される他のナノ粒子などが近づくことができない領域の範囲が、各ナノ粒子においてほぼ揃っている必要がある。このような観点からは、ナノ粒子に結合されたポリマー鎖の種類は、1種類であることが好ましい。

【0027】
ナノ粒子とポリマー鎖との結合は、ナノ粒子とポリマー鎖とを直接結合させてもよいし、リンカーとなる基を介して結合させてもよい。

【0028】
例えば、ナノ粒子が有機ナノ粒子である場合には、当該有機ナノ粒子の表面に位置する官能基と、ポリマー鎖の官能基とを反応させることにより、ポリマー鎖が結合したナノ粒子が得られる。また、ナノ粒子が金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、ガラスなどの無機ナノ粒子により構成されている場合には、リンカーとしてシランカップリング剤や後述のPEG修飾剤などを用いることにより、リンカーを介してナノ粒子とポリマー鎖とを結合することができる。例えば、シランカップリング剤などを用いることにより、ナノ粒子の表面にある水酸基などと、ポリマー鎖の官能基とを結合することができる。また、有機・無機複合ナノ粒子の場合にも、これらの何れかの方法を用いることによって、ポリマー鎖が結合したナノ粒子が得られる。

【0029】
例えば、ナノ粒子が、ポリペプチドにより構成されたシェル部と、無機ナノ粒子により構成されたコア部とを有する上記のコアシェル粒子である場合、ポリペプチドは、その種類に応じた官能基(例えばアミノ基、スルフヒドリル基、カルボキシル基、水酸基など)を有しているため、この官能基とポリマー鎖の官能基とを結合させることにより、ナノ粒子とポリマー鎖を結合することができる。以下に、ポリマー鎖が結合したナノ粒子の調製方法の具体例として、ポリマー鎖としてポリエチレングリコール(PEG)鎖を用い、ナノ粒子としてフェリチンを用いた場合について説明する。

【0030】
フェリチンは、シェル部を構成するポリペプチドにアミノ基を有する。従って、例えば、アミノ基と反応する公知のPEG修飾剤を用いることによって、フェリチン粒子のシェル部にポリマー鎖を結合させることができる。例えば、アミノ基と反応する置換基を有するPEG修飾剤としては、PEG鎖の末端にスクシンイミド基(NHS)、ニトロ基、またはアルデヒド基などが導入されたものが挙げられる。なお、スルフヒドリル基と反応する置換基を有するPEG修飾剤としては、PEG鎖の末端にスクシンイミド基(NHS)、スルフヒドリル基、またはマレイミド基などが導入されたものが挙げられる。また、水酸基と反応する置換基を有するPEG修飾剤としては、PEG鎖の末端にスクシンイミド基(NHS)が導入されたものなどが挙げられる。カルボキシル基と反応する置換基を有するPEG修飾剤としては、PEG鎖の末端にアミノ基が導入されたものなどが挙げられる。マレイミド基と反応する置換基を有するPEG修飾剤としては、PEG鎖の末端にスルフヒドリル基が導入されたものなどが挙げられる。よって、例えば、表面にアミノ基、スルフヒドリル基、水酸基、カルボキシル基、マレイミド基などの官能基を有するナノ粒子には、以上のようなPEG修飾剤を用いてPEG鎖を導入することができる。なお、これらのPEG修飾剤においては、一般に、片末端はメトキシ化などがなされている。これらの置換基を有するPEG修飾剤としては、種々の分子量を有するものが、市販品として入手可能である。

【0031】
フェリチンとPEG修飾剤との結合は、フェリチンとPEG修飾剤とをバッファーなどを含む水溶液中で混合することにより行うことができる。このとき、フェリチンに対してPEG修飾剤を過剰に加え、フェリチンへのPEG修飾剤の結合を進行しやすくすることが好ましい。なお、反応しなかったPEG修飾剤は、透析、カラムなどにより分離することができる。コア部に無機ナノ粒子を含むフェリチンの代わりに、コア部が空のアポフェリチンを用い、アポフェリチンとPEG修飾剤とを結合させたのち、上記のような方法により、コア部に無機ナノ粒子を導入してもよい。

【0032】
ポリマー鎖が結合したナノ粒子の粒径としては、好ましくは6nm以上、より好ましくは6~50nm程度、さらに好ましくは15~30nm程度である。本発明において、ポリマー鎖が結合したナノ粒子の粒径は、動的光散乱法を用いて測定されたメジアン径である。

【0033】
本発明において、ポリマー鎖が結合したナノ粒子を含むナノ粒子溶液は、ポリマー鎖が結合したナノ粒子と溶媒を含む。溶媒としては、ポリマー鎖が結合したナノ粒子を均一に分散できれば特に制限されないが、例えば、水、アルコールなどが挙げられる。溶媒には、pHなどを調製するために、バッファーなどを配合してもよい。

【0034】
ナノ粒子溶液中におけるポリマー鎖が結合したナノ粒子の濃度としては、ナノ粒子溶液を基板上に塗布し、溶媒を除去した場合に、基板上においてポリマー鎖が結合したナノ粒子が密に配置され、隣接するナノ粒子が略等間隔で配列される程度の濃度であれば特に制限されない。ナノ粒子溶液中におけるポリマー鎖が結合したナノ粒子の濃度としては、ポリマー鎖の分子量などによっても異なるが、好ましくは0.01mg/mL以上、好ましくは0.01~0.1mg/mL程度が挙げられる。

【0035】
本発明の配列方法においては、上記のナノ粒子溶液を、基板上に塗布する塗布工程を含む。基板上にナノ粒子溶液を塗布する前に、基板の表面を洗浄することが好ましい。基板の洗浄は、例えば、基板の表面をUV/オゾン処理装置を用いて100~120℃程度で10~40分間程度処理することより行うことができ、この処理により、基板上の有機物の除去と親水化を同時に行うことができる。

【0036】
ポリマー鎖が結合したナノ粒子は、以上の塗布工程により、好ましくは隣接するナノ粒子の中心間距離が12~100nmの範囲、より好ましくは30~60nmの範囲において、略等間隔で基板上に配列される。基板上のナノ粒子溶液中の溶媒は、乾燥工程を行うことにより除去することができる。溶媒の除去方法としては、特に制限されず、自然乾燥させてもよいし、加熱や送風により乾燥を早めてもよい。さらに、基板が薄い場合などには、スピンドライ法により乾燥させてもよい。なお、本発明において、基板上における隣接するナノ粒子の中心間距離は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて基板の表面の800nm×1000nmの範囲について画像情報を取得し、当該画像情報を処理することにより得た動径分布関数g(r)から求めることができる。具体的には、まず、上記の画像情報(SEM像)を取得した後、画像処理において、当該SEM像のコントラストを調整し、ナノ粒子の中心座標をプログラムにより算出する。プログラムにより認識できなかったナノ粒子については、手作業で座標を算出する。すべてのナノ粒子座標を算出した後、ナノ粒子の2点間距離をすべての組み合わせにおいて計算する。その後、ナノ粒子の中心間距離(2点間距離)がr以上r+dr未満の頻度をr=0nmからr=150nmまで計算することで動径分布関数g(r)が得られる。

【0037】
塗布工程の後、必要に応じて、基板上のポリマー鎖が結合したナノ粒子から当該ポリマー鎖を除去する除去工程を行ってもよい。ポリマー鎖が結合したナノ粒子からポリマー鎖を除去し、基板上にナノ粒子を残すことにより、基板上にナノ粒子のみが配列された基板が得られる。このとき、ナノ粒子間の中心間距離は、実質的に変化せずに保持される。ポリマー鎖が結合したナノ粒子からポリマー鎖を除去する方法としては、例えば、ポリマー鎖が結合したナノ粒子が配列された基板の表面をUV/オゾン熱処理する方法、ポリマー鎖が結合したナノ粒子が配列された基板を焼成する方法、ポリマー鎖とナノ粒子との結合を化学的に切断する方法などが挙げられる。UV/オゾン熱処理する場合、例えば、上述のPEG鎖であれば、UV/オゾン処理装置を用いて100~120℃程度で10~40分間程度処理することにより、ポリマー鎖を除去することができる。また、焼成する場合、焼成温度は、ポリマー鎖が熱により分解し、基板上から除去される温度であれば特に制限されず、例えば、400~500℃程度が挙げられる。なお、後述の通り、ポリマー鎖の除去は、必要に応じて行えばよいが、例えば、本発明のナノ粒子が配列された基板が半導体などの分野に使用される場合には、ポリマー鎖が不純物となり得るので、ポリマー鎖を除去する工程を備えていることが好ましい。

【0038】
さらに、本発明の配列方法において、ナノ粒子としてフェリチンなどの上記のコアシェル粒子を用いる場合、上記のUV/オゾン熱処理または焼成によって、ポリマー鎖と共にシェル部を構成するポリペプチドも除去され、コア部を構成する無機ナノ粒子のみが配列した基板を得ることができる。このような処理によってポリペプチドをコア部から除去することにより、シェル部に結合していたポリマー鎖も同時にコア部から除去することができる。なお、後述の通り、シェル部の除去は、必要に応じて行えばよいが、例えば、本発明のナノ粒子が配列された基板が半導体などの分野に使用される場合には、シェル部を構成するポリペプチドが不純物となり得るので、シェル部を除去する工程を備えていることが好ましい。

【0039】
ナノ粒子溶液を塗布する基板を構成する素材としては、特に制限されず、樹脂、金属、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、ガラスなどが挙げられる。樹脂としては、特に制限されず、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。また、金属としては、特に制限されず、Si、Au、Cu、Pt、Zn、Fe、Ta、Bi、Te、Ga、またはこれらの少なくとも1種の金属を含む合金などが挙げられる。金属酸化物としては、これらの金属の酸化物が挙げられる。これらの中でも、本発明の配列方法を半導体用途に適用する場合、基板としては、Si基板、SiO2基板、SiC基板、GaN基板などが好ましい。

【0040】
本発明の基板上へのナノ粒子の配列方法によれば、上記のような種々の基板上において、ナノ粒子を所望の間隔、かつ、略等間隔に配列させることができる。従って、本発明の配列方法は、例えば、熱電変換素子、太陽電池、ディスプレイ、メモリ、薄膜トランジスタ、LSIなどの半導体分野などのナノデバイスに好適に適用することができる。特に、本発明において、ナノ粒子としてフェリチンなどのコアシェル粒子を用いた場合には、ナノ粒子のサイズと配置位置とを極めて精密に制御することができるため、本発明の配列方法は、上記のようなナノデバイスにおいて、特に好適に適用することができる。また、本発明の配列方法よって、例えば金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物などの無機ナノ粒子のみを基板上に配列させることにより、当該金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物などからなるコアを量子ドットとして用いた半導体装置(ナノデバイス)が得られる。

【0041】
本発明の基板上へのナノ粒子の配列方法によって、ポリマー鎖が結合したナノ粒子が表面上に配列された基板が得られる。このような基板においては、隣接するナノ粒子の中心間距離が12~100nmの範囲、好ましくは30~60nmの範囲において、ポリマー鎖が結合したナノ粒子が所望の間隔かつ略等間隔で基板上に配列されている。また、上記の通り、ポリマー鎖が結合したナノ粒子を含むナノ粒子溶液を基板上に塗布した後、前記ポリマー鎖を除去することにより、ポリマー鎖が結合していないナノ粒子が表面上に配列された基板も得られる。このような基板においては、隣接するナノ粒子の中心間距離が12~100nmの範囲、好ましくは30~60nmの範囲において、ポリマー鎖が結合していないナノ粒子が所望の間隔かつ略等間隔で基板上に配列されている。従って、これらの基板は、上記のようなナノデバイスに好適に適用することができる。特に、上記のフェリチンなどのコアシェル粒子を用いた場合には、ナノ粒子のサイズと配置位置とを極めて精密に制御することができるため、本発明の基板は、これらのナノデバイスにおいて、特に好適に使用することができる。さらに、ポリマー鎖やシェル部は上記のような方法により容易に除去することができるため、金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物などの無機ナノ粒子のみを基板上に配列させた基板をナノデバイスに適用することもできる。例えば、金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物などの無機ナノ粒子のみを基板上に配列させた基板は、当該金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物などからなるコアを量子ドットとして用いた半導体装置(ナノデバイス)に好適に使用することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を挙げて、本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0043】
(実施例1~4)
<PEG鎖が結合したフェリチンの調製>
まず、以下の操作により、アポフェリチンの表面にPEG修飾剤を結合させた。PEG修飾剤として、PEGの分子量が2千のMeO-PEG-NHS(NOF CORPORATION製のSUNBRIGHT ME-020CS)を用いた。また、アポフェリチンとして、遺伝子工学的手法により作製されたLサブユニットのみからなるフェリチンである公知のFer8を用いた。まず、PEG修飾剤を100mMのリン酸カリウムバッファー(pH=8.2)に溶解させた。MeO-PEG-NHSは、フェリチンサブユニット1つに対して600等量とした。ここに、100mMのリン酸バッファー(pH=8.2)に溶解させたアポフェリチンを混合し、フェリチンの終濃度を0.2mg/mLに調整した反応液を得た。次に、この反応溶液を4℃、遮光条件下で60時間反応させた。反応終了後、反応溶液を透析チューブに移し、100mMのHEPES-NaOH(pH=7.0)による透析を行い、過剰に加えたPEG修飾剤の除去を行い、表面がPEG修飾されたアポフェリチンを得た。
【実施例】
【0044】
次に、以下の操作により、表面がPEG修飾されたアポフェリチンの内部にコアを形成した。この操作では、PEG修飾したアポフェリチンの内部にフェリハイドライドを導入し、フェリチン-鉄複合体を生成する。まず、100mMのHEPES-NaOH(pH=7.0)溶液を10分間O2バブリングした。ここに、PEG修飾したアポフェリチンを加えてアポフェリチン溶液とした。一方、硫酸アンモニウム鉄(II)六水和物(AIS)を超純水に溶解させ50mMの硫酸アンモニウム鉄(II)溶液を作製した。次に、氷上で上記のアポフェリチン溶液に上記の硫酸アンモニウム鉄(II)溶液を滴下し、終Feイオン濃度を5mMに調整した。滴下終了後、生成されたバルクを遠心分離によって沈殿させ、上清を回収し、溶液を冷蔵庫に移して、18時間反応させた。反応終了後、反応溶液を遠心分離しバルクを沈殿させ、上清を回収し、限外濾過膜にて濃縮した。密度勾配遠心法によって、コアの入っているPEG修飾Fer8とコアの入っていないPEG修飾Fer8とを分離した。このとき、緩衝溶液50mM Tris-HCl(pH=8.0)を用いた。また、透析(10mMのCH3CO2NH4、pH=8.0)によって、スクロースの除去及びバッファー置換を行った。以上の操作により、PEG鎖が結合したフェリチン(フェリハイドライド(5Fe23・9H2O)内包)を得た。
【実施例】
【0045】
なお、PEG修飾剤として、実施例2ではPEGの分子量が5千のMeO-PEG-NHS(NOF CORPORATION製のSUNBRIGHT ME-050CS)、実施例3ではPEGの分子量が1万のMeO-PEG-NHS(NOF CORPORATION製のSUNBRIGHT ME-100CS)、及び実施例4ではPEGの分子量が2万のMeO-PEG-NHS(NOF CORPORATION製のSUNBRIGHT ME-200CS)、を用いた。これらのPEG修飾剤は、下記一般式で表される構造を有している。
【実施例】
【0046】
【化1】
JP2015103609A_000003t.gif
【実施例】
【0047】
<PEG鎖が結合したフェリチンのサイズ評価>
動的光散乱法を用いて、実施例1~4で得られた4種類のPEG鎖が結合したアポフェリチン、及びPEG鎖を結合していないアポフェリチンについて、それぞれ粒径(メジアン径)を測定した。その結果、PEG鎖を結合していないフェリチンの粒径は12.7nm、分子量2千のPEG鎖を結合したフェリチンの粒径は17.0nm、分子量5千のPEG鎖を結合したフェリチンの粒径は24.6nm、分子量1万のPEG鎖を結合したフェリチンの粒径は35.8nm、分子量2万のPEG鎖を結合したフェリチンの粒径は45.2nmであった。動的光散乱法を用いて得られた粒径と質量%との関係を図5に示す。また、粒径とPEG鎖の分子量との関係を図6に示す。なお、図5~10、15において、PEG2kとは、PEG鎖の分子量が2千であることを意味する。また、PEG5k、PEG10k、及びPEG10kは、それぞれ、PEG鎖の分子量が5千、1万、2万であることを意味する。
【実施例】
【0048】
<PEG鎖が結合したフェリチンのSi基板への配置>
上記で得られた分子量の異なる4種類のPEG鎖が結合したフェリハイドライド内包フェリチンを、それぞれ以下の操作によりSi基板上に配置した。まず、Si基板の表面をUV/オゾン処理装置(SAMCO社製のUV-1)を用いて115℃で10分間処理し、Si基板上の有機物の除去と親水化を行った。次に、Si基板を超純水中に浸漬した後、スピンコーターのサンプルステージにのせ、5000rpmで60秒間回転させて、Si基板に付着した超純水を除去した。その後、直ちにフェリハイドライド内包フェリチン溶液をSi基板上に滴下し、3分間静置した。フェリチン溶液の滴下量は、Si基板の1cm×1cmの範囲に20μLとした。次に、500rpmで2秒間の条件、つづいて1000rpmで30秒間の条件、さらに5000rpmで30秒間の条件でSi基板を回転させてスピンドライを行った。走査電子顕微鏡(SEM)を用い、実施例1~4において、PEG鎖が結合したフェリハイドライド内包フェリチンが配列されたSi基板表面のSEM像を取得した。これらのSEM像をそれぞれ図7~10に示す。図7~10のSEM像から、Si基板上にフェリハイドライドがほぼ等間隔で配列されていることが分かる。また、図7~10を比較すると、PEG鎖の分子量に応じて、Si基板上に異なる間隔でフェリハイドライドがほぼ等間隔で配列されていることが分かる。
【実施例】
【0049】
(実施例5)
<PEG鎖が結合したフェリチンのTa基板への配置>
実施例3で得られた分子量が1万のPEG鎖が結合したフェリハイドライド内包フェリチンを、以下の操作によりTa基板上に配置した。まず、Ta基板の表面をUV/オゾン処理装置(SAMCO社製のUV-1)を用いて115℃で30分間処理し、Ta基板上の有機物の除去と親水化を行った。次に、Ta基板を超純水中に浸漬した後、スピンコーターのサンプルステージにのせ、5000rpmで60秒間回転させて、Ta基板に付着した超純水を除去した。その後、直ちにフェリハイドライド内包フェリチン溶液をTa基板上に滴下し、3分間静置した。フェリチン溶液の滴下量は、Ta基板の1cm×1cmの範囲に20μLとした。次に、360rpmで30秒間の条件、つづいて1000rpmで60秒間の条件、さらに5000rpmで30秒間の条件でTa基板を回転させてスピンドライを行った。走査電子顕微鏡(SEM)を用い、実施例5において、分子量が1万のPEG鎖が結合したフェリハイドライド内包フェリチンが配列されたTa基板表面のSEM像を図11に示す。図11のSEM像から、Ta基板上にフェリハイドライドがほぼ等間隔で配列されていることが分かる。
【実施例】
【0050】
(実施例6)
<PEG鎖が結合したフェリチンのPt基板への配置>
Ta基板の代わりにPt基板を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、分子量が1万のPEG鎖が結合したフェリハイドライド内包フェリチンを、Pt基板上に配置した。走査電子顕微鏡(SEM)を用い、実施例6において、分子量が1万のPEG鎖が結合したフェリハイドライド内包フェリチンが配列されたPt基板表面のSEM像を図12に示す。図12のSEM像から、Pt基板上にフェリハイドライドがほぼ等間隔で配列されていることが分かる。
【実施例】
【0051】
(実施例7)
<PEG鎖が結合したフェリチンのCr基板への配置>
Ta基板の代わりにCr基板を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、分子量が1万のPEG鎖が結合したフェリハイドライド内包フェリチンを、Cr基板上に配置した。走査電子顕微鏡(SEM)を用い、実施例7において、分子量が1万のPEG鎖が結合したフェリハイドライド内包フェリチンが配列されたCr基板表面のSEM像を図13に示す。図13のSEM像から、Cr基板上にフェリハイドライドがほぼ等間隔で配列されていることが分かる。
【実施例】
【0052】
(実施例8)
<PEG鎖が結合したフェリチンのMo基板への配置>
Ta基板の代わりにMo基板を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、分子量が1万のPEG鎖が結合したフェリハイドライド内包フェリチンを、Mo基板上に配置した。走査電子顕微鏡(SEM)を用い、実施例8において、分子量が1万のPEG鎖が結合したフェリハイドライド内包フェリチンが配列されたMo基板表面のSEM像を図14に示す。図14のSEM像から、Mo基板上にフェリハイドライドがほぼ等間隔で配列されていることが分かる。
【実施例】
【0053】
<Si基板上に配置されたフェリチンの中心間距離の測定>
実施例1~4において得られたSi基板上に配列されたフェリチンにつき、上記のSEM像の800nm×1000nmの範囲について画像処理を行い、動径分布関数g(r)と距離との関係を求めた。具体的には、まず、上記のSEM像を取得した後、画像処理において、当該SEM像のコントラストを調整し、ナノ粒子の中心座標をプログラムにより算出する。プログラムにより認識できなかったナノ粒子については、手作業で座標を算出する。すべてのナノ粒子座標を算出した後、ナノ粒子の2点間距離をすべての組み合わせにおいて計算する。その後、ナノ粒子の中心間距離(2点間距離)がr以上r+dr未満の頻度をr=0nmからr=150nmまで計算することで動径分布関数g(r)が得られる。結果を図15に示す。なお、図15に示される結果は、dr=1で計算して求めた。図15に示されるグラフから、分子量2千のPEG鎖をポリマー鎖に有する実施例1のフェリチンでは、距離約30nmにピークがあり、隣接するフェリチンの中心間距離(SD)が約30nmであることが分かる。同様に、実施例2~4のフェリチン(分子量5千のPEG鎖、分子量1万のPEG鎖、分子量2万のPEG鎖)では、それぞれ、距離約34nm、39nm、53nmにピークがあり、隣接するフェリチンの中心間距離(SD)がそれぞれ、約34nm、39nm、53nmであることが分かる。PEG鎖の分子量と隣接するフェリチンの中心間距離との関係を示すグラフを図16に示す。
【実施例】
【0054】
<Si基板上に配列されたPEG鎖が結合したフェリチンからのタンパク質及びPEG鎖 の除去>
実施例3で得られた、分子量1万のPEG鎖が結合したフェリハイドライド内包フェリチンが配列されたSi基板表面を、UV/オゾン処理装置(SAMCO社製のUV-1)を用いて、ステージ温度115度の設定で40分間UV/オゾン熱処理を行い、フェリハライドを内包しているフェチリンから、タンパク質及びPEG鎖を除去した。次に、走査電子顕微鏡(SEM)を用い、UV/オゾン熱処理後のSi基板表面のSEM像を取得した。このSEM像を図17に示す。図17のSEM像から、タンパク質及びPEG鎖を除去した後においても、Si基板上にフェリハイドライドがほぼ等間隔で配列されていることが分かる。

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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