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明細書 :変異型植物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-089368 (P2015-089368A)
公開日 平成27年5月11日(2015.5.11)
発明の名称または考案の名称 変異型植物
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
A01H   5/00        (2006.01)
A01H   5/10        (2006.01)
A23L   1/212       (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
A01H 5/00 A
A01H 5/10
A23L 1/212 A
請求項の数または発明の数 16
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2013-231495 (P2013-231495)
出願日 平成25年11月7日(2013.11.7)
発明者または考案者 【氏名】江面 浩
【氏名】有泉 亨
【氏名】篠崎 良仁
【氏名】金原 淳司
【氏名】草野 都
【氏名】福島 敦史
【氏名】斉藤 和季
出願人 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】独立行政法人理化学研究所
個別代理人の代理人 【識別番号】100100549、【弁理士】、【氏名又は名称】川口 嘉之
【識別番号】100126505、【弁理士】、【氏名又は名称】佐貫 伸一
【識別番号】100131392、【弁理士】、【氏名又は名称】丹羽 武司
審査請求 未請求
テーマコード 2B030
4B016
4B024
Fターム 2B030AA02
2B030AB02
2B030AD04
2B030AD07
2B030CA08
2B030CA14
2B030CB02
4B016LG05
4B016LG11
4B024AA08
4B024DA01
4B024GA25
要約 【課題】草勢が強化され、さらに耐暑性が付与されたトマトなどの植物を提供する。
【解決手段】Dellaタンパク質のアミノ酸配列において、567位のロイシンに相当するロイシンが他のアミノ酸、好ましくはフェニルアラニンに置換された変異型Dellaタンパク質を保有することで、草丈が高くなるだけでなく、茎が太くなり、耐暑性を有したウリ科又はナス科の植物で、特にトマト等の植物。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
Dellaタンパク質のアミノ酸配列において、配列番号2の567位のロイシンに相当するロイシンが他のアミノ酸に置換された変異型Dellaタンパク質を有する、変異型植物。
【請求項2】
前記変異型Dellaタンパク質が、配列番号2または配列番号2と90%以上同一性を有するアミノ酸配列において567位のロイシンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の変異型植物。
【請求項3】
他のアミノ酸がフェニルアラニンである、請求項1または2に記載の変異型植物。
【請求項4】
ウリ科またはナス科の植物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の変異型植物。
【請求項5】
トマトである、請求項1~3のいずれか一項に記載の変異型植物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の変異型植物から得られる種子。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の変異型植物を原料に使用して食品に加工する工程を含む、加工食品の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の種子を栽培することを含む、変異型植物の製造方法。
【請求項9】
配列番号2または配列番号2と90%以上同一性を有するアミノ酸配列において567位のロイシンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列を有し、植物で保持させたときに、野生株と比べて、草丈が高くなり、かつ、茎を太くさせる機能を有するタンパク質、をコードする変異型Della遺伝子。
【請求項10】
他のアミノ酸がフェニルアラニンである、請求項9に記載の変異型Della遺伝子。
【請求項11】
請求項9または10に記載の変異型Della遺伝子を含む組換えベクター。
【請求項12】
請求項9または10に記載の変異型Della遺伝子を植物細胞に導入して形質転換を行い、得られた形質転換植物細胞から植物体を育成することを含む、変異型植物の製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の組換えベクターを用いて変異型Della遺伝子が導入される、請求項12に記載の変異型植物の製造方法。
【請求項14】
前記植物がウリ科またはナス科の植物である、請求項12または13に記載の変異型植物の製造方法。
【請求項15】
前記植物がトマトである、請求項12または13に記載の変異型植物の製造方法。
【請求項16】
請求項1~3のいずれか一項に記載の変異型Dellaタンパク質を植物において産生させる工程を含む、植物の草丈を野生型と比べて高くし、植物の茎を野生型と比べて太くする方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、草勢が強化され、かつ耐暑性に優れた変異型植物に関する。
【背景技術】
【0002】
トマトは世界中で食されており、またビタミンやミネラル、リコピンなどを豊富に含むことからその栄養価も非常に高い。
しかしながら、その栽培適正において、どんな場所でも十分な栽培が見込めるわけではなく、新鮮な果実の提供が難しい地域も存在する。例えば、気温が高い地域での栽培においては、暑さに起因する植物体の萎れがトマトの成長にとって大きな問題となっている。
この問題を解決する育種面の方法として、耐暑性に優れた形質を有するトマトを生み出すことがあげられる。その重要な形質の一つとして植物体の草勢強化、つまり、草丈が高く、茎が太いことが挙げられる。
【0003】
トマトにおいて植物の生長を停止させる働きを持つDellaタンパク質のアミノ酸配列の302番目のバリンがグルタミン酸に置換されることで植物体の草丈が高くなることが知られている(非特許文献1)。しかしながら、Dellaタンパク質の他の領域に変異が入ることでイネの植物体の草丈が低くなる、または草丈が高くなるとの報告もあり、単純にDella遺伝子に変異を有することが、草勢強化の十分要件ではない(非特許文献2,3)。
【0004】
一方、植物の耐暑性において、植物自体を支える茎の太さも重要な役割を担っており、暑さによる萎れに対して茎が太いことは有用な形質である。トマトにおいて、遺伝子変異と形質発現の関係について様々な報告がなされているが、茎を太くする形質発現に関する変異は知られていない。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Esther Carrera et al., Plant Physiol. 2012 Nov;160(3):1581-96.
【非特許文献2】Ko Hirano et al., Plant Cell. 2010 Aug;22(8):2680-96.
【非特許文献3】Akira Ikeda et al., Plant Cell. 2001 May;13(5):999-1010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1における変異では、植物体は草丈が高くなるが、茎は細くなる傾向にあり、暑さに起因する植物体の萎れに対して脆弱であると考えられる。したがって、暑い地域でのトマト栽培において、茎が太い形質を有するトマトが求められている。
本発明は、草丈が高くなるだけでなく、さらに茎を太くすることにより、耐暑性を有したトマトなどの植物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、Dellaタンパク質のアミノ酸配列において配列番号2の567位のロイシンに相当するロイシンが他のアミノ酸に置換された変異型Dellaタンパク質を保有させることで、草丈が高くなるだけでなく、茎を太くさせ、耐暑性が付与された植物体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下を提供する。
[1]Dellaタンパク質のアミノ酸配列において、配列番号2の567位のロイシンに相当
するロイシンが他のアミノ酸に置換された変異型Dellaタンパク質を有する、変異型植物。
[2]前記変異型Dellaタンパク質が、配列番号2または配列番号2と90%以上同一性を有するアミノ酸配列において567位のロイシンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列を有する、[1]に記載の変異型植物。
[3]他のアミノ酸がフェニルアラニンである、[1]または[2]に記載の変異型植物。
[4]ウリ科またはナス科の植物である、[1]~[3]のいずれかに記載の変異型植物。
[5]トマトである、[1]~[3]のいずれかに記載の変異型植物。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の変異型植物から得られる種子。
[7] [1]~[5]のいずれかに記載の変異型植物を原料に使用して食品に加工する工程を含む、加工食品の製造方法。
[8] [6]に記載の種子を栽培することを含む、変異型植物の製造方法。
[9]配列番号2または配列番号2と90%以上同一性を有するアミノ酸配列において567位のロイシンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列を有し、植物で保持させたときに、野生株と比べて草丈が高くなり、かつ、茎を太くさせる機能を有するタンパク質、をコードする、変異型Della遺伝子。
[10]他のアミノ酸がフェニルアラニンである、[9]に記載の変異型Della遺伝子。
[11] [9]または[10]に記載の変異型Della遺伝子を含む組換えベクター。
[12] [9]または[10]に記載の変異型Della遺伝子を植物細胞に導入して形質転換を行い、得られた形質転換植物細胞から植物体を育成することを含む、変異型植物の製造方法。
[13] [11]に記載の組換えベクターを用いて変異型Della遺伝子が導入される、[12]に記載の変異型植物の製造方法。
[14]前記植物がウリ科またはナス科の植物である、[12]または[13]に記載の変異型植物の製造方法。
[15]前記植物がトマトである、[12]または[13]に記載の変異型植物の製造方法。
[16][1]~[3]のいずれかに記載の変異型Dellaタンパク質を植物において産生させる工程を含む、植物の草丈を野生型と比べて高くし、植物の茎を野生型と比べて太くする方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、草勢強化だけでなく、さらに耐暑性が付与された植物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】変異型トマト(本発明の新規変異体と公知の変異体procera)および野生型トマト(MT-J、MT-B)の植物体の写真。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の変異型植物は、Dellaタンパク質のアミノ酸配列において、配列番号2の567位のロイシンに相当するロイシンが他のアミノ酸に置換された変異型Dellaタンパク質を有する変異型植物である。本発明の変異型植物は、当該変異型Dellaタンパク質を有することにより、野生株と比べて草丈が高くなり、かつ、茎が太くなるという利点を有する。ここで、本発明の変異型植物の草丈は野生株の1.2倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましい。また、本発明の変異型植物の茎の太さは野生株の1.2倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましい。本発明の植物はさらに単為結果性も示すことが好ましい。
ここで、植物の種類としては、ウリ科植物またはナス科植物が好ましい。ナス科植物としてはトマト、ナス、バレイショが挙げられ、好ましいナス科植物はトマトである。ウリ科植物としてはマクワウリ、キュウリ、メロン、スイカが挙げられる。

【0012】
トマトとしては、リコペルシコン・エスキュレントゥム(Lycopersicon esculentum)(別名ソラナム・リコペルシカム(Solanum lycopersicum))、リコペルシコン・セラシフォルメ(Lycopersicon cerasiforme)、リコペルシコン・ピムピネリフォリウム(Lycopersicon pimpinellifolium)、リコペルシコン・チーズマニイ(Lycopersicon cheesmanii)、リコペルシコン・パルビフロルム(Lycopersicon parviflorum)、リコペルシコン・クミエレウスキィ(Lycopersicon chmielewskii)、リコペルシコン・ヒルストゥム(Lycopersicon hirsutum)、リコペルシコン・ペンネリィ(Lycopersicon pennellii)、リコペルシコン・ペルビアヌム(Lycopersicon peruvianum)、リコペルシコン・チレンセ(Lycopersicon chilense)およびソラヌム・リコペルシコイデス(Solanum lycopersicoides)などが挙げられるが、好ましくはリコペルシコン・エスキュレントゥムである。

【0013】
Dellaタンパク質は核に存在する、ジベレリンシグナルの負の調節因子である(Plant Cell Physiol (2010) 51 (11): 1854-1868.)。
例えば、トマト(リコペルシコン・エスキュレントゥム)のDellaタンパク質としては、配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。
また、キュウリ(Cucumis sativus)のDellaタンパク質としては、配列番号4または配列番号6のアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。

【0014】
本発明の変異型Dellaタンパク質は、配列番号2の567位のロイシンに相当するロイシンが他のアミノ酸置換されたものである。
ここで、他のアミノ酸として好ましくは芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン)であり、より好ましくはフェニルアラニンである。

【0015】
また、上記アミノ酸置換を有し、植物で保持させたときに、野生株と比べて草丈が高くなり、かつ、茎を太くさせるという機能を有するものであれば、上記置換アミノ酸以外の位置において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むものであってもよい。ここで、「1若しくは数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なるが、1~20個が好ましく、1~10個がより好ましく、1~5個が特に好ましい。
また、本発明の変異型Dellaタンパク質は、上記のアミノ酸置換を有し、植物で保持させたときに、野生株と比べて草丈が高くなり、かつ、茎を太くさせるという機能を有するものであれば、配列番号2のアミノ酸配列と全体として一定以上の同一性、すなわち、90%以上、好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するものであってもよい。

【0016】
なお、本発明において、配列番号2の567位のロイシンとは、配列番号2に示すトマト野生型Dellaタンパク質のアミノ酸配列における位置である。567位より前のアミノ酸の欠失、挿入または付加によって位置が前後することがある。例えば、N末端部に1つのアミノ酸残基が挿入されれば本来567位のロイシンは568位となるが、このような場合、567位のロイシンに相当するロイシンと呼ぶ。

【0017】
例えば、キュウリDellaタンパク質の場合、配列番号2とのアラインメントによってわかるように、配列番号4に示すアミノ酸配列における588位のロイシンまたは配列番号6に示すアミノ酸配列における570位のロイシンが、配列番号2の567位のロイシンに相当するロイシンであり、このロイシンがフェニルアラニンなどの他のアミノ酸に置換される。
なお、キュウリ変異型Dellaタンパク質は、当該変異を有し、植物で保持させたときに、野生株と比べて草丈が高くなり、かつ、茎を太くさせるという機能を有するものであれば、配列番号4または配列番号6のアミノ酸配列と全体として一定以上の同一性、すなわち、90%以上、好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するも
のであってもよい。

【0018】
上記のような変異型Dellaタンパク質をコードする遺伝子は、例えば、野生型Dellaタンパク質をコードするDNAに、同DNAによってコードされるDellaタンパク質に上記アミノ酸置換が生じるような変異を導入することによって取得することができる。変異は、部位特異的変異法等によって計画的に導入することができる。まず、野生型Dellaタンパク質をコードするDNAとしては、例えば、配列番号1に示す塩基配列を有するトマト由来の野生型DellaタンパクをコードするDNAや配列番号3または5に示す塩基配列を有するキュウリ由来の野生型Dellaタンパク質をコードするDNAを用いることができる。これらのDNAは、例えば配列番号1、3または5に基づいてオリゴヌクレオチドを作製し、それを用いたPCR法又はハイブリダイゼーションによって取得することができる。
配列番号2の567位のロイシンに相当するロイシンをフェニルアラニンに置換する変異としてはロイシンのコドンをフェニルアラニンにするものであれば特に制限されないが、例えば、配列番号1に示すトマト野生型Dellaタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列において1699位のCがTになる変異が例示される。さらに、配列番号3に示すキュウリ野生型Dellaタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列において1764位のGがTまたはCになる変異や、配列番号5に示すキュウリ野生型Dellaタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列において1708位のCがTになる変異が例示される。

【0019】
また、変異型Dellaタンパク質をコードする遺伝子は、当該変異を有し、植物で保持させたときに、野生株と比べて草丈が高くなり、かつ、茎を太くさせるという機能を有する変異型Dellaタンパク質をコードするものであれば、配列番号1の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであってもよい。ここで、「ストリンジェントな条件」とは、通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、0.1×SSC,0.1%SDS、好ましくは、68℃、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度、温度で、1回より好ましくは2~3回洗浄する条件が挙げられる。

【0020】
上記のような変異型Della遺伝子は、従来知られている変異処理によっても取得され得る。変異処理としては、野生型Della遺伝子をヒドロキシルアミン等でインビトロ処理する方法、及び野生型Della遺伝子を保持する植物を、紫外線照射またはN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)もしくは亜硝酸もしくはEMS(エチルメタンスルホネート)等の通常変異処理に用いられている変異剤によって処理する方法が挙げられる。変異処理後、Della遺伝子の配列を解析し、変異(アミノ酸置換)を有することを確認すればよい。

【0021】
本発明の変異型植物は、上記変異を天然に有するものでもよいし、変異処理によって上記変異を有するようになったものでもよいし、さらには、変異型Della遺伝子配列の人為的導入により、例えば、変異型配列によるゲノム配列の置換、または変異型配列の過剰発現により得ることがきる。

【0022】
形質転換によって、変異型Della遺伝子を有する植物体を得るには、上記変異型Della遺伝子(DNA)を含む組換えベクターを用いることが好ましい。
変異型Della遺伝子を導入するベクターには、植物細胞において機能する適当なプロモーター及び好ましくはターミネーター等を含むことが好ましい。例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、イネのアクチンプロモーターやElongation factor 1βプロモーター、トウモロコシのユビキチンプロモーターなどを挙げることができるが、これらに限定されない。

【0023】
組換えベクターを用いて、トマトなどの植物の形質転換を行うには、アグロバクテリウム法、エレクトロポレーション法、ポリエチレングリコール法、リポソーム法、パーティ
クルガン法など、植物の形質転換の方法として公知の種々の方法を用いることができる。

【0024】
アグロバクテリウム法を行う際は、アグロバクテリウムのTiプラスミドやRiプラスミド由来のT-DNA(transfer DNA)を含むバイナリーベクターまたは中間ベクターを用いることができる(Nucl. Acids Res. 12(22):8711-8721 (1984), Plasmid, 7, 15-29 (1982))。使用するベクターは、ハイグロマイシン耐性やカナマイシン耐性等の選抜マーカーが搭載されていてもよい。通常トマトの形質転換に用いられるベクターとしては、例えば、CaMV35Sプロモーター、NOSターミネーターを持つ「pBI121」などを用いることができる。

【0025】
形質転換を行う際に使用する材料としては、トマトなどの植物のプロトプラスト、培養細胞、カルス、根、茎、葉、種子等の組織を用いることができる。
プロトプラストを用いる場合には、これを組換えベクターを保持するアグロバクテリウムと共存培養したり、スフェロプラスト化したアグロバクテリウムと融合したりすることによって形質転換することができる。培養細胞を用いる場合は、組換えベクターを保持するアグロバクテリウムと共存培養することによって形質転換することができる。また、組織を用いる場合には、葉の切片を組換えベクターを保持するアグロバクテリウム懸濁液に一定時間浸漬してアグロバクテリウムを組織に感染させ、共存培養することによって形質転換することができる。
このようにして形質転換した細胞、カルス、組織から公知の組織培養法により植物体を再生することができる。

【0026】
このようにして得られた植物が変異型Della遺伝子を保有していることは、遺伝子の配列解析やプローブを用いたハイブリダイゼーションなどの方法で確認することができる。

【0027】
なお、本発明にいう植物には、植物体全体、器官、組織、カルス、培養細胞の全てが含まれる。

【0028】
本発明の変異型植物は、一旦、変異を有する植物体が得られれば、その種子から得られる植物体でもよいし、それらの子孫や他の株との交配によって得られる植物でもよい。すなわち、一旦、変異を有する植物体が得られれば、上記変異を有し、草丈が野生株より高く、茎が野生株より太く耐暑性が向上したという性質を有する限り、その植物体の後代植物や、それらを片親にして交配した植物やその後代植物、さらに、それらの細胞や組織を培養することにより得られた植物も含まれる。植物には2倍体や4倍体などの倍数体も含まれる。

【0029】
また、本発明は、草丈が野生株よりも高く、茎が野生株より太く耐暑性が向上した性質を有する、本発明のトマトなどの変異型植物から得られた種子を栽培することを含む、トマトなどの変異型植物の製造方法を提供する。

【0030】
また、本発明は、草丈が野生株よりも高く、茎が野生株より太く耐暑性が向上した性質を有するトマトなどの変異型植物を原料とする加工食品の製造方法を提供する。このような加工品としては、例えばトマトなどの植物の果実の加熱品、搾汁液及び抽出物、さらにはこれらを含む飲食品、食品添加物等が挙げられる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の態様に限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
変異体の取得
トマト野生株(マイクロトム野生株 MT-J)の種子(M0)を、1.0%濃度のEMS(エチルメタ
ンスルホネート)で処理した。具体的には、3000粒のマイクロトム野生株種子(M0)を滅菌水で8時間、常温で吸水させた後に、100mlの1.0%EMS溶液に浸して16時間撹拌しながらEMS処理を行なった。EMS溶液から変異誘発したM1種子を取り出し、100mlの滅菌水で撹拌しながら4時間洗浄した。この洗浄を3回繰り返した後に、M1種子を数日間風乾させた。
風乾したM1種子約2000粒を播種し、発芽した幼苗を温室内で育成した。育成した約2000のM1個体より、それぞれM2種子を得た。同じM1個体より得たM2種子を、それぞれ10粒ずつ同様に播種してM2個体を育成した。
育成されたM2個体の中から単為結果を示す系統を単離し、変異体E2753と名付けた。
この変異体E2753について、種々の遺伝子の配列を解析した結果、Dellaタンパク質をコードする遺伝子において、Dellaタンパク質の567位のロイシンがフェニルアラニンに置換される変異(配列番号1の塩基配列において1699位のCがTになる変異)を有することが分かった。
【実施例】
【0033】
<単為結果性の評価>
マイクロトム(MT)-J、マイクロトム(MT)-B、本発明の変異体および公知の変異体について、種子から栽培し、単為結果性を着果数/除雄花数の基準で評価した。
結果を表1に示す。これにより、本発明の変異体は、公知の変異体と同等の単為結果性を示すことが分かった。
【表1】
JP2015089368A_000003t.gif
【実施例】
【0034】
次に、マイクロトム(MT)-J、マイクロトム(MT)-B、本発明の変異体および公知の変異体について、種子から栽培し、30日後に、草丈(=花までの高さ)および茎の太さを調べた。
結果を図1および表2に示す。
【表2】
JP2015089368A_000004t.gif
【実施例】
【0035】
以上より、Dellaタンパク質の567位のロイシンがフェニルアラニンに置換される変異を有する変異体は、野生株より草丈が高く、茎の太さが太いことが分かった。茎の太さが太
いという性質は、公知の変異体とは異なり、L567F変異は極めて有用な変異であることが分かった。
図面
【図1】
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