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明細書 :ヒアルロニダーゼ阻害活性を有する新規化合物、その製造方法及び用途

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-089871 (P2015-089871A)
公開日 平成27年5月11日(2015.5.11)
発明の名称または考案の名称 ヒアルロニダーゼ阻害活性を有する新規化合物、その製造方法及び用途
国際特許分類 C07D 495/20        (2006.01)
A61K  31/37        (2006.01)
A61K   8/00        (2006.01)
A61K   8/49        (2006.01)
A61P  29/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A23L   1/30        (2006.01)
A23L   2/52        (2006.01)
C12N   9/99        (2006.01)
C12N   1/20        (2006.01)
C12P  17/16        (2006.01)
C12R   1/465       (2006.01)
FI C07D 495/20 CSP
A61K 31/37
A61K 8/00
A61K 8/49
A61P 29/00
A61P 43/00 111
A23L 1/30 Z
A23L 2/00 F
C12N 9/99
C12N 1/20 A
C12P 17/16
C12P 17/16
C12R 1:465
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2013-229184 (P2013-229184)
出願日 平成25年11月5日(2013.11.5)
発明者または考案者 【氏名】今田 千秋
【氏名】春成 円十朗
【氏名】五十嵐 康弘
出願人 【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
【識別番号】000236920
【氏名又は名称】富山県
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100188352、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 一弘
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
【識別番号】100150902、【弁理士】、【氏名又は名称】山内 正子
【識別番号】100177714、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 昌平
【識別番号】100141391、【弁理士】、【氏名又は名称】園元 修一
審査請求 未請求
テーマコード 4B017
4B018
4B064
4B065
4C071
4C083
4C086
Fターム 4B017LC03
4B017LK21
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4B017LP05
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4B064DA01
4B064DA10
4B064DA20
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4B065AC14
4B065BA22
4B065CA18
4B065CA41
4B065CA44
4B065CA50
4C071AA04
4C071AA08
4C071BB02
4C071BB07
4C071CC13
4C071EE04
4C071FF17
4C071HH05
4C071HH08
4C071HH09
4C071JJ01
4C071KK17
4C071LL01
4C071LL10
4C083AA031
4C083AC841
4C083CC01
4C083EE13
4C086BA19
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB11
4C086ZC20
要約 【課題】ヒアルロニダーゼ阻害活性を有する化合物、とその製造方法、及び、該化合物を有効成分とする医薬品、化粧品及び飲食品の提供。
【解決手段】ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する放線菌の菌株が生産する、式(I)の化合物。
JP2015089871A_000011t.gif
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
式(I)
【化1】
JP2015089871A_000010t.gif
で表される新規化合物HI0216、又はその製剤上許容される塩。
【請求項2】
請求項1に記載の式(1)で表される化合物HI0216を生産するストレプトマイセス属に属する菌を培養し、その培養物より化合物HI0216を採取することを特徴とするヒアルロニダーゼ阻害活性を有する新規化合物HI0216の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の式(1)で表される化合物HI0216を生産するストレプトマイセス属に属する菌が、ストレプトマイセス・sp.EH0216株(特許微生物寄託センター受託番号NITE P-01736)であることを特徴とする請求項2に記載のヒアルロニダーゼ阻害活性を有する新規化合物HI0216の製造方法。
【請求項4】
特許微生物寄託センターに、受託番号NITE P-01736として寄託され、請求項1に記載の式(1)で表される化合物HI0216を生産するストレプトマイセス・sp.EH0216株、又はその変異株。
【請求項5】
請求項1に記載の式(I)で表される化合物HI0216、又はその製剤上許容される塩を有効成分として含有するヒアルロニダーゼ活性阻害剤。
【請求項6】
請求項5に記載のヒアルロニダーゼ活性阻害剤を含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項7】
ヒアルロニダーゼ活性阻害剤を含有する医薬組成物が抗炎症剤であることを特徴とする請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
請求項5に記載のヒアルロニダーゼ活性阻害剤を含有することを特徴とする化粧品。
【請求項9】
請求項5に記載のヒアルロニダーゼ活性阻害剤を含有することを特徴とする飲食品。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物が生産するヒアルロニダーゼ阻害活性を有する新規化合物、該微生物を用いた新規化合物の製造方法、及び、該化合物を有効成分とするヒアルロニダーゼ阻害活性に基く用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、皮膚・関節液などの組織に多く存在するムコ多糖の一種であり、例えば、皮膚においては、細胞の保護・栄養の運搬・組織水分の保持・柔軟性の維持等に、また、関節液としては、組織構造・機能の維持及び潤滑性の保持等に重要な役割を果たしている。皮膚や関節等の生体中のヒアルロン酸量は、老化又は病的状態により減少し、それが皮膚の乾燥、弾力性の低下、シワの増加、肌荒れ、或いは関節の湿潤性悪化による関節痛等を引き起こすことが知られている。
【0003】
一方、ヒアルロニダーゼは、皮膚、血管、関節など生体中に広く分布する高分子多糖であるヒアルロン酸を分解する酵素である。皮膚のヒアルロン酸は細胞間隙に水を保持し、弾力性、柔軟性、保湿性を保つ役割をしているが、年齢をかさねるにつれて減少し、その結果、シワの形成や、かさつきなどの皮膚の老化をもたらす。そこで、ヒアルロン酸を分解するヒアルロニダーゼの活性を阻害し、生体内のヒアルロン酸の安定性を増大させ、ヒアルロン酸の持つ、細胞の保護や、組織構造・機能の維持及び潤滑性の保持等の機能の維持を図ることが試みられている。また、近年、ヒアルロニダーゼは、じんましん、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などのアレルギー反応の原因であるヒスタミンの遊離抑制活性とヒアルロニダーゼ阻害活性との相関が注目されている(Immunopharmacology, 2,p139-146, 1980.)。これは、ヒアルロニダーゼが炎症時に活性化されることにより、結合組織のマトリックスを破壊し、炎症系の組織への浸潤・血管の透過性を亢進する可能性があるからである。また、ヒアルロニダーゼがI型アレルギーにおける肥満細胞からのヒスタミンの遊離の過程に介在している可能性が高いからである。したがって、ヒアルロニダーゼは生体内での炎症反応の引き金になる酵素と考えられている。
【0004】
これらのヒアルロニダーゼの活性を阻害して、皮膚のヒアルロン酸の作用による弾力性、柔軟性、保湿性を保つ役割のために、ヒアルロニダーゼ阻害剤を化粧品として皮膚に塗布したり、或いは、アトピー性皮膚炎、花粉症、気管支喘息、食物アレルギー等のアレルギー性疾患の予防や改善効果のために、ヒアルロニダーゼ阻害剤を医薬品や、飲食品として摂取することにより、炎症反応、アレルギー反応を抑制する試みがなされている。
【0005】
従来より、ヒアルロニダーゼ阻害活性を有する成分としては、各種のものが知られている。該ヒアルロニダーゼ阻害活性を有する成分としては、植物等から抽出された数多くのものが開示されている。例えば、シャクヤク、オオレン、オオバク、ボタンピ、ゲンノショウコ、茶、クジン、シボタンツル、オドリコソウ、サルビア、西洋ネズ、ハマメリス及びバーチの抽出物が(特開平1-128933号公報)、香辛料またはハーブ、コーヒー豆、カカオ豆、クロレラ、きのこ類、バラ科の果実及びプロポリスの抽出物が(特開平3-209330号公報)、茶から抽出される茶ポリフェノール類の抽出物が(特開平6-9391号公報)、チンピ、キジツ及び羅漢果の抽出物が(特開平6-80576号公報)、ブナ科の植物であるウラジロガシ抽出物が(特開平6-239757号公報)、カシューナッツ殻油が(特開平6-329526号公報)、ウルシ科植物抽出物が(特開平7-10765号公報)、タマリンドの種皮が(特開平8-231347号公報)、緑藻類が(特開平9-67266号公報)、ブドウ種子及びブドウ搾汁粕の抽出物が(特開2000-26306号公報)、セイカズラが(特開2002-253830号公報)、ハマスゲ抽出物が(特開2003-137726号公報)、セイヨウシロヤナギ、ビワ、ライムが(特開2006-104098号公報)、アオギリ科ピンポンノキ属植物が(特開2007-45733号公報)、ヒマラヤユキノシタ属抽出物が、麹菌による大豆胚芽発酵物が(特開2012-12367号公報)、及び、ブドウの乳酸菌発酵物(特開2013-100243号公報)等がそれぞれ開示されている。
【0006】
また、ヒアルロニダーゼ阻害活性化合物が開示されており、該化合物としては、例えば、プロアントシアニジンA誘導体が(特開平11-246562号公報)、ポリイソプレニル化ベンゾフェノン誘導体が(特開2000-72665号公報)、アシルフロログルシノールが(特開2003-221333号公報)、ポリフェノール配糖体が(特開2003-327596号公報)、フラバン配糖体から誘導されたジヒドロカルコン化合物が(特開2004-43354号公報)、桂皮酸誘導体が(特開2007-161632号公報)、リグノフェノール誘導体が(特開2007-291034号公報)、ハロモナス属細菌から得られたD-ガラクトース、D-グルコン酸、及びD-マンノースからなる分子量150万~850万の多糖体が(特開2009-13240号公報)、コンドロイチン4-硫酸、コンドロイチン6-硫酸、ヒアルロン酸のそれぞれを構成する4糖又は6糖からなるオリゴ糖が(特開2011-68605号公報)、フキノール酸誘導体が(特開2011-213657号公報)、オオバコ科植物抽出水溶性多糖類サイリシウムシードガムの低分子化化合物が(特開2012-193134号公報)、イオタカラギーナン、カッパカラギーナンのようなカラギーナンが(特開2013-10700号公報)、及び、フェニルエタノイド配糖体が(WO2008/093678)開示されている。
【0007】
他方、ストレプトマイセス(Streptomyces)属や、アクチノプラネス(Actinoplanes)属等の微生物が生産し、化学合成も行われている抗生物質にルブロマイシン(Rubromycin)が知られている(Eur. J. Org. Chem., vol.2007, No. 23, p3801- 3814, 2007.)。ルブロマイシン類は、基本骨格として、下記式(II)で表される構造を有する。
【0008】
【化1】
JP2015089871A_000002t.gif

【0009】
上記基本骨格のルブロマイシンとしては、γ-ルブロマイシン、β-ルブロマイシン等が知られているが、γ-ルブロマイシンは、methyl(2R)-4’,9’, 10-trihydroxy -7’-methoxy -5’, 8’, 9-trioxo-spiro[3,4-dihydropyrano[4,3-g]chromene-2, 2’-3H-benzo[f]benzofuran ]-7-caruboxylate(CAS Number:27267-71-6)(上記式(II)において、R、R、R=H、R=-COOCH3)の構造を有する。β-ルブロマイシンは、上記γ-ルブロマイシンの構造において、5’,8’が、-OHに変換した構造を有する((CAS Number:27267-71-6)。これらのルブロマイシン類は、ヒトのテロメナーゼ阻害活性、及び、ヒト免疫不全ウイルス-1逆転写酵素阻害活性を有し、抗菌作用や、抗腫瘍作用を有する(Mol. Pharmacol. Vol. 38, No. 1, p20-25,1990.;Biochemistry, vol. 39, No. 20, p5995- 6002, 2000.;Angew. Chem. Int. Ed, vol. 48, No. 43, p7996-8000, 2009.)。 しかし、該ルブロマイシン類で、ヒアルロニダーゼ阻害活性を有するものは知られていない。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特開平1-128933号公報。
【特許文献2】特開平3-209330号公報。
【特許文献3】特開平6-9391号公報。
【特許文献4】特開平6-80576号公報。
【特許文献5】特開平6-239757号公報。
【特許文献6】特開平6-329526号公報。
【特許文献7】特開平7-10765号公報。
【特許文献8】特開平8-231347号公報。
【特許文献9】特開平9-67266号公報。
【特許文献10】特開平11-246562号公報。
【特許文献11】特開2000-26306号公報。
【特許文献12】特開2000-72665号公報。
【特許文献13】特開2002-253830号公報。
【特許文献14】特開2003-137726号公報。
【特許文献15】特開2003-221333号公報。
【特許文献16】特開2003-327596号公報。
【特許文献17】特開2004-43354号公報。
【特許文献18】特開2006-104098号公報。
【特許文献19】特開2007-45733号公報。
【特許文献20】特開2007-161632号公報。
【特許文献21】特開2007-291034号公報。
【特許文献22】特開2009-13240号公報。
【特許文献23】特開2011-68605号公報。
【特許文献24】特開2011-213657号公報。
【特許文献25】特開2012-12367号公報。
【特許文献26】特開2012-193134号公報。
【特許文献27】特開2013-100243号公報。
【特許文献28】特開2013-10700号公報。
【特許文献29】WO2008/093678。
【0011】

【非特許文献1】Immunopharmacology, 2,p139-146, 1980.
【非特許文献2】Eur. J. Org. Chem., vol.2007, No. 23, p3801- 3814, 2007.
【非特許文献3】Mol. Pharmacol. Vol. 38, No. 1, p20-25,1990.
【非特許文献4】Biochemistry, vol. 39, No. 20, p5995- 6002, 2000.
【非特許文献5】Angew. Chem. Int. Ed, vol. 48, No. 43, p7996-8000, 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、ヒアルロニダーゼ阻害活性を有する新規化合物、該化合物を製造する方法、及び、該化合物を有効成分とするヒアルロニダーゼ活性阻害剤及び該ヒアルロニダーゼ阻害剤の医薬品、化粧品及び飲食品への用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、天然に由来する新規生理活性物質等の探索を行う中で、東京湾外来ホヤ(海鞘)から分離したストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する放線菌の菌株から、ヒアルロニダーゼ阻害活性を有する新規化合物を、分離取得することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明で分離取得したヒアルロニダーゼ阻害活性を有する新規化合物は、次の式(I)で表される化合物HI0216で、抗生物質ルブロマイシン(Rubromycin)の基本骨格を有する。
【0015】
【化2】
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【0016】
本発明において、ホヤ(海鞘)から分離した化合物HI0216を生産するストレスマイセス(Streptomyces)属に属する放線菌の菌株は、ストレプトマイセス・sp.EH0216株で、特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、受託番号NITE P-01736として、寄託されている。
【0017】
すなわち、本発明は具体的には以下の発明よりなる。
[1]前記、式(I)で表される新規化合物HI0216、又はその製剤上許容される塩。
[2]上記[1]に記載の式(1)で表される化合物HI0216を生産するストレプトマイセス属に属する菌を培養し、その培養物より化合物HI0216を採取することを特徴とするヒアルロニダーゼ阻害活性を有する新規化合物HI0216の製造方法。
[3]上記[1]に記載の式(1)で表される化合物HI0216を生産するストレプトマイセス属に属する菌が、ストレプトマイセス・sp.EH0216株(特許微生物寄託センター受託番号NITE P-01736)であることを特徴とする上記[2]に記載のヒアルロニダーゼ阻害活性を有する新規化合物HI0216の製造方法。
[4]特許微生物寄託センターに、受託番号NITE P-01736として寄託され、上記[1]に記載の式(1)で表される化合物HI0216を生産するストレプトマイセス・sp.EH0216株、又はその変異株。
[5]上記[1]に記載の式(I)で表される化合物HI0216、又はその製剤上許容される塩を有効成分として含有するヒアルロニダーゼ活性阻害剤。
[6]上記[5]に記載のヒアルロニダーゼ活性阻害剤を含有することを特徴とする医薬組成物。
[7]ヒアルロニダーゼ活性阻害剤を含有する医薬組成物が抗炎症剤であることを特徴とする上記[6]に記載の医薬組成物。
[8]上記[5]に記載のヒアルロニダーゼ活性阻害剤を含有することを特徴とする化粧品。
[9]上記[5]に記載のヒアルロニダーゼ活性阻害剤を含有することを特徴とする飲食品。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、ヒアルロニダーゼ阻害活性を有する新規化合物、該化合物を製造する方法、及び、該化合物を有効成分とするヒアルロニダーゼ活性阻害剤及び該ヒアルロニダーゼ阻害剤の医薬、化粧品及び飲食品への用途を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の新規化合物HI0216の構造式を示す。
【図2】図2は、標識・モノメチル化した本発明の新規化合物HI0216の構造式を示す。
【図3】図3は、標識・モノメチル化した本発明の新規化合物HI0216の構造式を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の新規化合物HI0216は、前記式(I)で表される構造を有し、下記(表1)の物理化学的性状を有する。本発明の化合物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)にやや難溶、クロロホルム、酢酸エチルに難溶である。メタノールには殆ど溶けない。

【0021】
【表1】
JP2015089871A_000004t.gif

【0022】
本発明の化合物において、化合物HI0216の「製剤上許容される塩」としては、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤等の製剤化に際して、該製剤化に許容される塩、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、りん酸などの無機酸、或いは酢酸、プロピオン酸、酪酸、リンゴ酸などの有機酸との塩が挙げられる。

【0023】
本発明の化合物HI0216は、該化合物HI0216を生産するストレプトマイセス属に属する菌を培養し、その培養物より化合物HI0216を採取することによって製造することができる。該化合物HI0216の生産菌としては、ストレプトマイセス・sp.EH0216株(特許微生物寄託センター受託番号NITE P-01736)、及び該菌株の変異株を挙げることができる。該変異株は、公知の変異手段を用い、親株の化合物生産性を変えない範囲で、該親株の菌学的性質を変えることにより、取得することができる。本発明の化合物HI0216生産菌としては、ストレプトマイセス・sp.EH0216株(特許微生物寄託センター受託番号NITE P-01736)は、特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、該受託番号で寄託されており、第三者は、該特許微生物寄託センターから該菌株を入手することができる。

【0024】
本発明の化合物HI0216を製造するには、該化合物の生産菌であるストレプトマイセス属に属する菌を培養し、その培養物より該化合物HI0216を採取することによって製造することができる。

【0025】
該ストレプトマイセス属に属する菌の培養には、該菌株の培養に通常用いられる適当な炭素源及び窒素源を含む栄養培地を用いることができる。使用される培地としては、天然培地又は合成培地のいずれも用いることができる。例えば、炭素源としては、グルコース、フラクトース、シュクロース、糖蜜、でんぷん又はでんぷん加水分解物などの炭水化物或いはプロピオン酸などの有機酸類を用いることができる。一方、窒素源としては、通常ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、オートミール、小麦胚芽、カゼイン加水分解物、大豆粕又は大豆粕加水分解物を使用するが、アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム又はリン酸アンモニウムなどの無機窒素化合物、或いは、尿素又はアミノ酸などの有機窒素化合物も用いることができる。なおこれらの炭素源及び窒素源は、それぞれ併用して用いることができる。

【0026】
菌株の培養に際して、必要ある場合には、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム又はその他の無機塩類を培地に添加してもよい。また、培地が発泡する場合には、液体パラフィン、動物油、植物油、鉱物油又はシリコンなどを添加することができる。

【0027】
化合物HI0216生産菌の培養は、振盪培養又は深部通気撹拌培養などにより好気的条件下で行うことができる。培養温度は、化合物HI0216生産菌が目的物質を生産する範囲内で適宜変更することができるが、好ましくは、25~37℃の温度が採用される。培養時間は、通常1~14日間の期間を挙げることができる。

【0028】
化合物HI0216の製造において、培養液からの本発明の該化合物HI0216の採取及び精製には、その性状を利用した通常の分離手段、例えば溶剤抽出法、吸着剤を用いた吸脱着法、各種樹脂を用いたクロマトグラフ法及び沈殿法を適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、ストレプトマイセス・sp.EH0216株の培養液を、ろ過或いは遠心分離によって菌体を除去する。得られた培養液上清から、酢酸エチル(EtOAc)で抽出後、シリカゲル、LH-20及びODSなどのカラムで精製を行い。最後にHPLC或いはTLCによる精製を行い、該化合物HI0216を単離することができる。

【0029】
本発明の化合物HI0216は、ヒアルロニダーゼ阻害活性を有し、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤として用いることができる。該ヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、ヒアルロニダーゼ活性阻害の点において優れた効果を示し、これを経口摂取することにより、加齢等に伴う生体内のヒアルロン酸の減少を抑制でき、皮膚の老化や関節痛等の疾患を抑制することができ、また、皮膚用外用剤の形でも、適用することができる。更に、該ヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、抗アレルギー剤として使用することができ、例えば、アトピー性皮膚炎、花粉症、気管支喘息、食物アレルギー等の抗アレルギー剤として使用することができ、また、該ヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、抗炎症剤としても使用することができる。したがって、本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、該ヒアルロニダーゼ活性阻害剤を含有する医薬品、化粧品、或いは、飲食品の形で使用することができる。

【0030】
例えば、医薬品とする場合には、薬学的に許容される基材や担体と共に製剤化し、医薬組成物として提供することができる。医薬組成物の形態としては、丸剤、散剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、ゼリー剤、トローチ剤等の剤型が例示できる。本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤の投与方法は、一般的には、錠剤、丸剤、軟・硬カプセル剤、細粒剤、散剤、顆粒剤等の形態で経口投与することができ、水溶性製剤は、液剤として経口的に投与することができる。更に、皮膚用外用剤のような非経口投与を用いることもできる。該非経口剤としては、パップ剤、ローション剤、軟膏剤、チンキ剤、クリーム剤などの剤形で適用することができ、適宜、分散剤、懸濁剤、安定剤などを添加した状態で、パップ剤、ローション剤、軟膏剤、チンキ剤、クリーム剤などの剤形で適用することができる。

【0031】
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤を医薬組成物の形態として用いる場合は、製薬学上許容される投与担体を用いることができ、その種類及び組成は投与経路や投与方法によって適宜決定することができる。例えば、液状担体として水、アルコール、大豆油、ゴマ油などを用いることができる。固体担体として、マルトース、スクロースなどの糖類、リジンなどのアミノ酸類、シクロデキストリンなどの多糖類、ステアリン酸マグネシウムなどの有機酸塩類、ヒドロキシルプロピルセルロースなどのセルロース誘導体を用いることができる。

【0032】
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、化粧品に含有させて皮膚外用剤のような形で用いることができる。該皮膚外用剤の形態としては、例えば、乳液、石鹸、洗顔料、入浴剤、クリーム、乳液、化粧水、オーデコロン、ひげ剃り用クリーム、ひげ剃り用ローション、化粧油、日焼け・日焼け止めローション、おしろいパウダー、ファンデーション、香水、パック、爪クリーム、エナメル、エナメル除去液、眉墨、ほお紅、アイクリーム、アイシャドー、マスカラ、アイライナー、口紅、リップクリーム、シャンプー、リンス、染毛料、分散液、洗浄料等が挙げられる。上記形態の皮膚外用剤には、本発明によるヒアルロニダーゼ活性阻害剤の他に、そのヒアルロニダーゼ阻害作用を損なわない範囲で化粧品に配合される成分、油分、高級アルコール、脂肪酸、紫外線吸収剤、粉体、顔料、界面活性剤、多価アルコール・糖、高分子、生理活性成分、溶媒、酸化防止剤、香料、防腐剤等を配合することができる。

【0033】
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、飲食品に含有させて経口摂取することができる。この場合には、本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤を適宜の形状に製形して食するか、腸溶カプセルに包含して投与することができ、或いは、液体(例えば水)に適切な濃度になるように溶解し、混合、浸漬、塗布、噴霧等の方法で食品等に添加し、食することができる。
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤を含有させる飲食品としては、特に限定されるものではなく、ヒトが食することが可能なあらゆる食品類をあげることができる。

【0034】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0035】
[1.放線菌の探索と分離・同定]
【実施例1】
【0036】
<試薬等>
次の試薬を使用した:グルコース、可溶性デンプン、肉エキス、酵母エキス、NZ Amine、K2HPO4、MgSO4・7H2O、NaCl、(NH4)2SO4、CaCO3、寒天、FeSO4・7H2O、MnCl2・4H2O、ZnSO4・7H2O。
【実施例1】
【0037】
<菌の探索>
放線菌の分離には日本近海で採集した各種海洋生物を用いた。海洋生物から摘出した消化器官はホモジェナイザーにより液体状にし、表2、表3の培地に0.2g塗抹した。これを27℃にて2~4週間の培養後、出現したコロニーを単離して海洋生物由来放線菌約1,000株を得た。
【実施例1】
【0038】
【表2】
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【実施例1】
【0039】
【表3】
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【実施例1】
【0040】
<放線菌の同定>
得られた放線菌のうち、最も安定して強力なヒアルロニダーゼ阻害活性を示すものを生産菌として選定し、菌株の分類学的性状を放線菌の分類と同定(日本放線菌学会、2001)に従って決定した。色調は標準としてJIS色名帳(財団法人、日本規格協会、1993)を用いて決定した。本菌株の分類学的性状は以下の通りであった。
【実施例1】
【0041】
(1)形態学的性質:
光学顕微鏡下において、生育初期には白色の気菌糸(約0.5μm)が観察され、熟成に伴って灰-白色を呈するとともに隔壁が入り、胞子を着生する。
【実施例1】
【0042】
(2)培養性状:
培養性状の観察にはnutrient培地、ISP-2、oat meal培地 (ISP-3)、inorganic salts-starch培地 (ISP-4)、glycerol-asparagine培地 (ISP-5)、peptone yeast extract培地 (ISP-6)、tyrosine培地 (ISP-7)、sucrose-nitrate培地、glucose-asparagine培地及びskim milk培地、 yeast-starch培地の12種類を用いた。これらの各種寒天培地における供試菌株の生育状態、可溶性色素産生の有無、基底菌糸と気中菌糸の着生状態とその色調を肉眼的に観察した結果を表4に示す。
【実施例1】
【0043】
【表4】
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【実施例1】
【0044】
(3)生理生化学的性状:
供試菌株の生育温度範囲はyeast-starch agarに供試菌を塗抹し、4、10、15、20、27、37、44及び55℃の条件下で静置培養を行い、生育の有無から生育温度範囲を判定した。耐塩性試験は、NaCl濃度が0、1、2、3、4.5、6、7.5、9及び12% のISP-2培地を作製後、同様に培養して耐塩性を判定した。生育pH範囲は各種pH(3~12)に調整したISP-2液体培地を作製後、同様に培養して判定した。試験の結果を表5に示す。
【実施例1】
【0045】
【表5】
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【実施例1】
【0046】
(4)化学分類:
菌体の加水分解物を薄層クロマトグラフィー(TLC)によって分析した結果、L, L型のジアミノピメリン酸が検出されたことから、本菌株はStreptomyces属放線菌であると同定された。
【実施例1】
【0047】
(5)系統解析:
16S rRNAの塩基配列(1,429塩基対:DDBJ Accession No. AB840588)はStreptomyces misawanensis NBRC 13855と99.2%の相同性を示した。これより、本菌株はStreptomyces属放線菌であると同定された。
【実施例2】
【0048】
[2.得られた化合物の分離・同定]
【実施例2】
【0049】
(前培養)
前培養は、本菌株を100mLのV-22液体培地(可溶性デンプン1.0%、グルコース0.5%、NZケイス0.3%、酵母エキス0.2%、トリプトン0.5%、K2HPO4 0.1%、MgSO4・7H2O 0.05%、CaCO3 0.3%を含む)が入った500mLのK型フラスコに接種し、200rpm、30℃にて3日間、振とう培養した(振とう機:サンキ精機(株)RGS-200R)。次に、100mLの生産培地A-3M(グルコース0.5%、グリセロール2.0%、可溶性デンプン2.0%、ファーマメディア1.5%、酵母エキス0.3%、Diaion HP-20 1.0%を含む)の入った500mLのK型フラスコ10個に、前培養液を1mLずつ加え、200rpm、30℃にて7日間振とう培養した。目的化合物の炭素骨格を帰属するため、培養開始後46、72、96及び120時間経過時に[1,2-13]酢酸ナトリウムを添加することで化合物に取り込ませた。
【実施例2】
【0050】
(化合物の単離)
培養終了後、上記のフラスコから集めた1Lの培養液に、等量の酢酸エチルを加え、1時間ロータリーシェーカー(サンキ精機(株)製)で振盪した後に、5,000rpmで10分間遠心し(遠心機:HITACHI himac CR20、ロータ:HITACHI R12A、いずれも日立製作所(株)製)、有機相と水相とに分離した。次いで、得られた有機相をロータリーエバポレータ(N-1110,東京理化機械(株)製)を用いて減圧濃縮し、粗抽出物(450mg)を得た。この粗抽出物を、逆相ODSカラムクロマトグラフィー(ナカライテスク社製、Cosmosil 75C18-PREP)に供し、アセトニトリル:0.1%ギ酸(20:80~80:20)を用いてグラジエント溶出にて、分画した。
【実施例2】
【0051】
各画分について、以下の条件でHPLC分析を行った。
<HPLC>
装置:Agilent 1100
溶離液:アセトニトリル:0.1%ギ酸水溶液=15:85~85:15
流 速:1.0ml/min
検出波長:254nm
カラム:COSMOSIL AR-II 4.6phi×250mm
【実施例2】
【0052】
アセトニトリル:0.1%ギ酸=7:3の画分に、後述する化合物を確認した。このため、これらの画分を集めて減圧濃縮し、赤色粉末(46mg)を得た。得られた赤色粉末は少量のDMSOに溶解し、以下のHPLC条件にて赤色粉末を単離した(20mg)。
<HPLC-2>
装置:Agilent 1100
溶離液:アセトニトリル:0/1%ギ酸水溶液=15:85~85:15
流 速:4.0ml/min
検出波長:254nm
カラム:COSMOSIL AR-II 10phi×250mm
【実施例2】
【0053】
得られた赤色粉末(20mg)に等量のアセトンとアセトニトリル、ヨードメタンとジアビシクロウンデセン(DBU)を加え50℃で1時間反応させて化合物のメチル化物を得た。得られたメチル化物のうち、主要成分であるモノメチル化物を上記HPLC-2の条件により単離した(7.2mg)。
【実施例2】
【0054】
(化合物の構造決定)
得られたモノメチル化体・赤色粉末の構造決定を行った。構造決定のため、核磁気共鳴吸収(NMR)、紫外吸光(UV)分析、赤外吸収(IR)分析、質量分析(MS)、旋光度測定を行った。以下の機器を使用して分析を行い、UV及びIRスペクトルの結果と合わせて、構造決定を行った。
NMR: BRUKER ADVANCE 500(100, 500 MHz)
UV: HITACHI U-3210
IR: PerkinElmer Spectrum 100
MS: BRUKER microTOF focus(ESITOFMS)
旋光度: JASCO DIP-3000
【実施例2】
【0055】
(化合物の構造と物性)
化合物は、UV分析の結果、307nm、351nm、368nm及び506nmに吸収極大を示した。このスペクトルはルブロマイシン(rubromycin)類の抗生物質に特徴的なスペクトルであることから、本化合物はルブロマイシン様の構造を有することが推測された。IR分析では、1692cm-1にラクトン、1599cm-1にアミドに由来する吸収帯が観測された。また、質量分析では、ESITOFMSで[M + H]+ がm/z 604.1091に検出された。13C-NMR分析の結果、31個のシグナルが観測された。その内訳は、メチル基由来のシグナルが2個、メチレン基由来のシグナルが5個、メチン基由来のシグナルが3個、四級炭素由来のシグナルが21個観測された。標識・モノメチル化した化合物のNMRデータを下記表6に、構造式を図1,2及び3にそれぞれ示す。また、前記表1に、一般的な性状、分子量、紫外吸収、赤外吸収等のデータを示す。
【実施例2】
【0056】
【表6】
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【実施例3】
【0057】
[3.得られた化合物の生理活性(ヒアルロニダーゼ阻害活性)]
【実施例3】
【0058】
(阻害活性の測定)
得られた化合物のヒアルロニダーゼ阻害活性はFerrante(1956)の方法に準じて測定を行った。ヒアルロン酸は鶏冠由来のヒアルロン酸ナトリウム(Wako Co. Ltd、Japan)、ヒアルロニダーゼはウシ睾丸由来(Wako Co. Ltd、Japan)のものを用いた。これらを終濃度500μg/ml、50μg/mlとなるように酢酸バッファー(0.2mM酢酸、0.15mMNaCl、pH5.0)に溶解したものを用いた。DMSOに溶解した各種濃度の化合物20μlとヒアルロニダーゼ100μlを混合し、10分間プレインキュベーシュン後、ヒアルロン酸ナトリウム100μlを加えて、60分間インキュベーションした後、CTAB・NaOH溶液(2%CTAB、2.5%NaOH)を加えて酵素反応を停止させた。反応停止後30分間静置した後、分光光度計(Shimazu, UV-2000)にて400nmにて吸光度を測定した。酵素の阻害活性は次式により算出し、50%阻害値(IC50)を算出した。
阻害率(%)=(未反応のブランク-反応後のブランク)-(未反応のサンプル-反応後のサンプル)/(未反応のブランク-反応後のブランク)×100
【実施例3】
【0059】
(結果)
以上の結果から、本化合物のIC50値は14μMを示し、既知ヒアルロニダーゼ阻害化合物であるグリチルリチン(IC50=340μM)の約25倍の強度であった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、ヒアルロニダーゼ阻害活性を有する新規化合物、該化合物を製造する方法、及び、該化合物を有効成分とするヒアルロニダーゼ活性阻害剤及び該ヒアルロニダーゼ阻害剤の医薬品、化粧品及び飲食品への用途を提供する。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2