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明細書 :繊維製品及び線量計

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-148601 (P2016-148601A)
公開日 平成28年8月18日(2016.8.18)
発明の名称または考案の名称 繊維製品及び線量計
国際特許分類 G01T   1/04        (2006.01)
G01T   1/02        (2006.01)
G01T   1/20        (2006.01)
D03D   1/00        (2006.01)
FI G01T 1/04
G01T 1/02 B
G01T 1/20 B
D03D 1/00 Z
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2015-025995 (P2015-025995)
出願日 平成27年2月13日(2015.2.13)
発明者または考案者 【氏名】木梨 憲司
【氏名】宮前 由里香
【氏名】岡部 貴広
【氏名】神保 和弥
出願人 【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】日本写真印刷株式会社
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2G188
4L048
Fターム 2G188AA08
2G188BB02
2G188BB04
2G188CC09
2G188KK02
4L048AA20
4L048CA00
4L048EB00
要約 【課題】線量計及びそれに使用される繊維製品を提供する。
【解決手段】X線又はγ線の照射により紫外線を放出する発光体、前記発光体が放出する紫外線により発色するフォトクロミック色素、前記色素により染色可能なポリマーを含む繊維製品。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
X線又はγ線の照射により紫外線を放出する発光体、前記発光体が放出する紫外線により発色するフォトクロミック色素、前記色素により染色可能なポリマーを含む繊維製品。
【請求項2】
前記フォトクロミック色素がスピロピラン色素、アゾベンゼン色素又はジアリールエテン色素である、請求項1に記載の繊維製品。
【請求項3】
前記フォトクロミック色素がスピロピラン色素である、請求項1に記載の繊維製品。
【請求項4】
前記発光体が、BaFCl:Eu、BaFBr:Eu、BaFI:Eu、BaSi2O5:Pb、YAlO3:Ce及びSrB4O7:Euからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維製品。
【請求項5】
前記ポリマーがポリエステルである請求項1~4のいずれか1項に記載の繊維製品。
【請求項6】
前記ポリマーがポリ乳酸である請求項1~4のいずれか1項に記載の繊維製品。
【請求項7】
紫外線吸収剤で繊維表面を被覆した請求項1~6のいずれか1項に記載の繊維製品。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の繊維製品を含む線量計。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は繊維製品及び線量計に関する。
【背景技術】
【0002】
福島の原発事故に伴い大量に発生した放射能を含むがれきの処理、除染作業、廃炉作業時における放射線被曝レベルをモニターする必要がある。
【0003】
非特許文献1は、放射線被曝レベルをモニターするためのフィルム線量計を開示しているが、フィルム線量計は衣服に取り付けて使用する必要があり、製品の仕様が限られていた。また、非特許文献1で使用される色素は、熱又は可視光により徐々に退色するので、瞬間的な放射線量はモニターできるが、一定期間における積算した放射線量はモニターできなかった。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Int. J. Photoenergy, Vol.2014, 2014, Article ID:236382
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、線量計及びそれに使用される繊維製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の繊維製品及び線量計を提供するものである。
項1. X線又はγ線の照射により紫外線を放出する発光体、前記発光体が放出する紫外線により発色するフォトクロミック色素、前記色素により染色可能なポリマーを含む繊維製品。
項2. 前記フォトクロミック色素がスピロピラン色素、アゾベンゼン色素又はジアリールエテン色素である、請求項1に記載の繊維製品。
項3. 前記フォトクロミック色素がスピロピラン色素である、請求項1に記載の繊維製品。
項4. 前記発光体が、BaFCl:Eu、BaFBr:Eu、BaFI:Eu、BaSi2O5:Pb、YAlO3:Ce及びSrB4O7:Euからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、項1~3のいずれか1項に記載の繊維製品。
項5. 前記ポリマーがポリエステルである項1~4のいずれか1項に記載の繊維製品。
項6. 前記ポリマーがポリ乳酸である項1~4のいずれか1項に記載の繊維製品。
項7. 紫外線吸収剤で繊維表面を被覆した項1~6のいずれか1項に記載の繊維製品。
項8. 項1~7のいずれか1項に記載の繊維製品を含む線量計。
【発明の効果】
【0007】
原発の廃炉作業は、最終処理まで70年近く時間がかかるという試算されている。本発明の繊維製品/線量計を廃炉処理の作業現場や作業服等に利用することで危険を視認することができ、深刻な事故を未然に防ぐことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】発光体の発光特性を示す。
【図2】発光体の発光特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の繊維製品は、X線又はγ線の照射により紫外線を放出する発光体、前記発光体が放出する紫外線により発色するフォトクロミック色素、前記フォトクロミック色素により染色可能なポリマーを含む。

【0010】
発光体は、X線又はγ線の照射により紫外線を放出するものであれば特に限定されない。放出する紫外線の波長は、300~400nm、好ましくは320~390nm、より好ましくは340~385nmである。このような発光体としては、BaF2:Eu、BaFCl:Eu、BaFBr:Eu、BaSi2O5:Pb、YAlO3:Ce、SrB4O7:Eu、BaF2などが挙げられ、これら発光体は単独で或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい発光体は、BaF2、BaF2:Eu、BaFCl:Euである。

【0011】
各種発光体の発光波長と発光強度を図1、2に示す。

【0012】
発光体の配合量は適宜決定されるが、繊維製品全量に対し1~40質量%が好ましく、さらに好ましくは20~30質量%である。

【0013】
前記発光体が放出する紫外線により発色するフォトクロミック色素としては、スピロピラン色素、アゾベンゼン色素、ジアリールエテン色素が挙げられ、吸光係数が高く、発色に優れたスピロピラン色素がより好ましい。

【0014】
スピロピラン色素の一例は、以下の式(I)、SP-formの化合物である:

【0015】
【化1】
JP2016148601A_000003t.gif

【0016】
(式中Rは、同一又は異なって、水素原子又は芳香環の置換基を示す。)
式(I)のスピロピラン色素は、300~400nmの紫外光を照射すると閉環型のSP-formから開環型のPMC-formに変換される。PMC-formは可視光又は熱により徐々に閉環型のSP-formに移行する。従って、本発明の繊維製品は、繰り返し線量計として使用できる。

【0017】
フォトクロミック色素の配合量は適宜決定されるが、繊維製品全量に対し0.05~5.0質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1~3.0質量%である。

【0018】
Rで表される芳香環の置換基としては、ハロゲン原子(F,Cl,Br,I)、CN、OH、C1-4アルキル(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル)、C1-4アルコキシ(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシ)、CF3、アセチルアミノ、アセチルなどが挙げられ、1つの芳香環における置換基の数は、1~3個、好ましくは1個又は2個である。

【0019】
Ra、Rbは、一方又は両方がニトロ基であり、一方がニトロ基の場合、他方は上記の芳香環の置換基を示す。一方がニトロ基の場合、Raがニトロ基であるのが好ましい。

【0020】
上記のスピロピラン色素は、公知であり、市販品を利用することもでき、公知文献の記載に準じて製造しても良い。

【0021】
本発明のフォトクロミック色素は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。

【0022】
前記フォトクロミック色素で染色可能なポリマーとしては、ポリエステル、ナイロン、アクリル、綿、絹、レーヨン、アセテート、ビニロンなどが挙げられ、ポリエステルが好ましい。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン或いはこれらの共重合体が好ましく、ポリ乳酸が最も好ましい。

【0023】
ポリマーの配合量は適宜決定されるが、繊維製品全量に対し60~99質量%が好ましく、さらに好ましくは70~80質量%である。

【0024】
繊維では紫外線吸収剤の耐光向上効果は限定的なものであり、実際には効く染料もあれば、かえって悪くなる場合もある。紫外線吸収剤は樹脂劣化防止のために開発されたものであり、樹脂それぞれの最大感応波長に合わせてそれを吸収し、熱エネルギーとして発散する働きを持つ化合物が必要になる。現在、市場で使われている主な紫外線吸収剤はベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン系の3種類がある。ベンゾトリアゾール系は現在主流となっている紫外線吸収剤であり、昇華堅牢度が若干低いため、着色しない範囲で置換基を付けたり、スルホン化やカチオン化を行い応用できる対象繊維を広めている。また繊維表面に非揮発性の溶解溶媒で薄層を作り、この紫外線吸収剤を均一に溶かし込み紫外線吸収層として内部の染料を守る方法が良い。

【0025】
本発明の繊維製品には、色素の色を安定化する材料を添加することができる。このような材料としては、シリカ又は酸発生剤(例えば過酸化ベンゾイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化ラウロイルなどの過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジハイドロクロライド、4,4'-アゾビス(4-シアノバレル酸)(ACVA)、2,2'-アゾビス(2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)ジハイドロクロライド、2,2'-アゾビス(2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)ジハイドロクロライド、2,2'-アゾビスイソブチルアミドジハイドレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシジイソブチレート、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミダイン)ジハイドロクロライド(AAPH)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、アゾベンゼンなどが挙げられる。

【0026】
シリカ又は酸発生剤の配合量は適宜決定されるが、繊維製品全量に対し0.0001~1.0質量%が好ましく、さらに好ましくは0.001~0.01質量%である。

【0027】
本発明の繊維製品は、蛍光体を粉砕してポリマーと混合し、溶融ペレットを作製し、得られたペレットを紡糸し、得られた糸をフォトクロミック色素溶液に浸漬して色素染色することにより製造することができる。

【0028】
フォトクロミック色素の溶媒としては、ポリマーが溶けないものであれば特に限定されず、例えば水、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、ジオキサン、ヘキサン、シクロヘキサン、アセトン、アセトニトリル、THF、DMSO、DMF、トルエン、キシレン、酢酸エチル、テトラクロロエチレン、クロロホルムおよびこれらの混合物などが挙げられる。

【0029】
本発明の繊維製品としては、織物、編物、不織布などが挙げられ、放射線量をモニターするために外側に身に付けるもの、例えば作業服、手袋、帽子、マスクなどが挙げられる。

【0030】
本発明の線量計において、放射線量はガラスバッチ(広範囲用環境タイプES型、千代田テクノル製)またはポケット線量計(ZP-145、パナソニック製)を用いてX線照射装置内の試料室に設置し、等間隔の時間測定を行い、時間と染料の検量線を作成し、同一の試料室に本発明の繊維製品を設置しX線照射を行い着色させ、検量線を用いて着色量と線量の関係を見積もることで測定することができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
製造例1
(1)発光体の粉砕
BaFCl:Eu(東京化成株式会社製)35gをダンシングミル(商品名、ALM90DM製造会社名日陶科学社)を用いて400rpmで1~6時間粉砕した。
(2)ペレットの作成
上記の発光体の粉砕物30gをポリエステル(PET)、ポリ乳酸、ナイロン、アクリル又はポリ乳酸70gと混合し、ペレタイザー(商品名、MPETC1製造会社名東洋精機製作所)を用いてペレット化した。
(3)紡糸
上記で得られたペレットを紡糸装置(商品名、RINGCONE TRACTION DRIVE MODEL RXM-90-G29A;製造会社名SHIMPO.INDUSTRIAL CO., LTD)を用いてダイス温度195℃の条件で紡糸し、610デニールの各繊維を得た。
(4)色素染色
得られた繊維100mgは、1’,3’,3’-トリメチル-6-ニトロスピロ[1(2H)-ベンゾピラン-2,2’-インドリン(スピロピラン色素、東京化成株式会社から購入)8.05mgをテトラクロロエチレン25ml中に含む溶液に120℃で1時間浸漬し、乾燥して色素染色された繊維を得た。
【実施例】
【0033】
その結果、ポリ乳酸が最も濃く色素染色され、ポリエステルも濃く色素染色された。染色の濃さは、次いでアクリル、ナイロンの順であった。
【実施例】
【0034】
実施例1
製造例1で得られた各種色素製品にX線照射装置(商品名、MX-Lab製造会社名Bruker社)を用いてX線を照射したところ、ポリ乳酸を含む複合繊維が最も強く発色し、次いでポリエステル、ナイロン、アクリルを含む複合繊維の順で色が発現した。
【実施例】
【0035】
試験例1
本発明で使用する発光体のX線発光特性を評価した。
【実施例】
【0036】
粉末X線回折装置Cu-Kα(商品名、MX-Lab製造会社名Bruker社)を線源に用い、全ての発光体サンプル(BaF2、BaF2:Eu、BaCl2、BaCl2:Eu、BaBr2、BaBr2:Eu、BaFCl、BaFCl:Eu、BaFBr、BaFBr:Eu、BaFI、BaFI:Eu、BaClBr、BaClBr:Eu、BaClI、BaClI:Eu、BaBrI、BaBrI:Eu、BaSi2O5:Pb、YAlO3:Ce、SrB4O7:Eu)を同じ条件で測定した。結果を図1,2に示す。
【実施例】
【0037】
発光強度はBaFCl:Euが最も強いが、BaSi2O5:PbとYAlO3:Ceの発光波長がクロミック反応に適した360nmに近いため、高効率化に期待できる
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、適切な材料を選択することで繊維状に加工することを可能にし、服飾も含めたあるゆる場面での線量計の利用が可能になる。
図面
【図1】
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【図2】
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