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明細書 :品質評価装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-138804 (P2016-138804A)
公開日 平成28年8月4日(2016.8.4)
発明の名称または考案の名称 品質評価装置
国際特許分類 G01N  29/12        (2006.01)
G01N  29/04        (2006.01)
FI G01N 29/12
G01N 29/04
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2015-013640 (P2015-013640)
出願日 平成27年1月27日(2015.1.27)
発明者または考案者 【氏名】櫻井 直樹
【氏名】山本 良一
出願人 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001427、【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2G047
Fターム 2G047AA12
2G047AD07
2G047BA03
2G047BA04
2G047BC04
2G047CA03
2G047EA10
2G047EA14
2G047GD02
2G047GF05
2G047GF11
2G047GG08
2G047GG29
2G047GG33
要約 【課題】簡素な構成で農作物等の高精度な品質評価ができる品質評価装置を実現する。
【解決手段】共振周波数に基づいて対象物Sの品質を評価する品質評価装置1である。加振部10によって振動が加えられている対象物Sに向けて超音波を連続的に発信する発信部20と、対象物Sによって反射される超音波を連続的に受信する受信部30と、受信部30が受信する超音波に基づいて、対象物Sの振動を計測する振動計測部40とを備える。振動計測部40が、受信部30が受信する超音波を検波し、その超音波の位相変化に基づいて対象物Sの振動を計測する。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
共振周波数に基づいて対象物の品質を評価する品質評価装置であって、
周波数を次第に増加させながら前記対象物に振動を加える加振部と、
前記加振部によって振動が加えられている前記対象物に向けて、当該対象物から離れた位置で超音波を連続的に発信する発信部と、
前記対象物によって反射される超音波を、当該対象物から離れた位置で連続的に受信する受信部と、
前記受信部が受信する超音波に基づいて、前記対象物の振動を計測する振動計測部と、
を備え、
前記振動計測部が、前記受信部が受信する超音波を検波し、当該超音波の位相変化に基づいて前記対象物の振動を計測する品質評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載の品質評価装置において、
前記発信部によって発信される超音波の周波数が、20~400KHzである品質評価装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の品質評価装置において、
前記振動計測部が、
位相弁別器を有し、
発信された超音波の信号を前記発信部から取得して、当該信号と前記受信部が受信する超音波の信号とを比較することにより、前記位相変化を導出する品質評価装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の品質評価装置において、
前記振動計測部が、
周波数弁別器を有し、
前記受信部が受信する超音波の信号を演算処理することにより、前記位相変化を導出する品質評価装置。
【請求項5】
請求項4に記載の品質評価装置において、
前記周波数弁別器は、周波数を弁別するアナログ回路を有し、
前記アナログ回路が、
入力端子と出力端子との間に並列に接続されている第1線路及び第2線路と、
前記第1線路に、前記入力端子側から順に配置されている第1コンデンサ、第2コンデンサ、第1ダイオード、及び第1抵抗と、
前記第2線路に、前記入力端子側から順に配置されている第1コイル、第3コンデンサ、第2ダイオード、及び第2抵抗と、
前記第1線路における前記第2コンデンサと前記第1ダイオードとの間の部位と、前記第2線路における前記第3コンデンサと前記第2ダイオードとの間の部位とに架設され、第2コイルが配置されている第3線路と、
前記第1線路における前記第1ダイオードと前記第1抵抗との間の部位と、前記第2線路における前記第2ダイオードと前記第2抵抗との間の部位とに架設されるとともに、第4コンデンサ及び第5コンデンサが直列に配置され、これらの間の部位が接地されている第4線路と、
前記第1線路における前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとの間の部位に一端が接続され、他端が接地されている第3コイルと、
前記第2線路における前記第1コイルと前記第3コンデンサとの間の部位に一端が接続され、他端が接地されている第6コンデンサと、
を有している品質評価装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一つに記載の品質評価装置において、
前記対象物が農作物又は樹木である品質評価装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、果物や樹木の品質評価などに好適な品質評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
果物や樹木等のサンプルに所定の周波数帯の振動を加え、その時のサンプルの振動を測定することによって、サンプル固有の共振周波数を求め、その共振周波数からサンプルの硬度や熟度、腐朽などを評価する様々な品質評価装置が提案されている(例えば、特許文献1~3)。
【0003】
このような品質評価装置には、サンプルに接触してその振動を測定する接触型の装置と、サンプルに接触せずにその振動を測定する非接触型の装置とがある。前者の装置は、測定精度や測定効率などの面で難があるため、後者の装置の方がこの種の振動測定に適している。
【0004】
後者の装置としては、レーザー光を用いるタイプ(特許文献1)や、電波(マイクロ波)を用いるタイプ(特許文献2)などが提案されている。特許文献1の装置では、いわゆるレーザードップラー法を用いて振動を測定しており、特許文献2の装置では、発信電波及び反射電波をアンテナで受信し、これら電波を検波して得られる位相情報から振動を測定している。
【0005】
品質評価装置ではないが、超音波を用いる振動測定方法も存在する(特許文献4)。特許文献4には、超音波パルスを用いて、原子炉の圧力容器内の構造物の振動を測定する技術が開示されている。
【0006】
具体的には、圧力容器内に向けて散発的に超音波パルス信号を出力し、構造物で反射されるこれら超音波パルス信号を検出する。構造物が振動している場合、超音波パルス信号の検出時間は、その振動の振幅に比例して変動することから、超音波パルス信号の伝播時間の変化分を一定の間隔で測定し、これら振幅の変化から振動を測定している。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開平9-236587号公報
【特許文献2】特開2009-216625号公報
【特許文献3】特開2009-276063号公報
【特許文献4】特開平11-125688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のレーザー光による振動測定は、信号の演算処理などが複雑で、装置コストが高くつくうえに、対象物の不規則な動きによって誤差が生じ易い。また、対象物の表面に反射テープを貼り、その反射テープにレーザー光の焦点を合わせなければならないなど、測定操作が煩わしい不利もある。
【0009】
特許文献2の電波による振動測定は、電波が横波なうえに波長が数cmと長いため、小さなサンプルは測定できないという欠点がある。
【0010】
それに対し、特許文献4のような超音波による振動測定は、超音波が縦波であるため、サンプルの大きさの影響を受けない点で有利である。
【0011】
しかし、特許文献4の方法は、数μ秒レベルの間隔で超音波パルス信号の出力と検出とを繰り返し、これら信号をそれぞれ演算処理する必要があるため、処理負担が大きく、装置コストが高くつく。
【0012】
そこで本発明の目的は、簡素な構成で高精度な品質評価ができる品質評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、共振周波数に基づいて対象物の品質を評価する品質評価装置に係わる。
【0014】
前記品質評価装置は、周波数を次第に増加させながら前記対象物に振動を加える加振部と、前記加振部によって振動が加えられている前記対象物に向けて、当該対象物から離れた位置で超音波を連続的に発信する発信部と、前記対象物によって反射される超音波を、当該対象物から離れた位置で連続的に受信する受信部と、前記受信部が受信する超音波に基づいて、前記対象物の振動を計測する振動計測部と、を備える。
【0015】
そして、前記振動計測部が、前記受信部が受信する超音波を検波し、当該超音波の位相変化に基づいて前記対象物の振動を計測する。
【0016】
すなわち、この品質評価装置によれば、非接触で振動測定ができるので、対象物の振動そのものを測定することができ、高精度な振動測定ができる。超音波を連続的に受発信し、振動計測部で、連続的に発信される超音波をそのままの状態で検波し、その超音波の位相変化に基づいて対象物の振動を計測するので、簡素な構成で実現でき、部材コストを抑制できる。
【0017】
前記発信部によって発信される超音波の周波数は、20~400KHzにするのが好ましい。
【0018】
発信される超音波の周波数が20KHz以上であれば、測定される振動の周波数から離れているため、測定精度の低下が抑制できる。そして、発信される超音波の周波数が400KHz以下であれば、空気中を伝播する超音波の減衰を抑制できるため、低出力で高精度な測定ができる。
【0019】
例えば、前記振動計測部が、位相弁別器を有するようにし、発信された超音波の信号を前記発信部から取得して、当該信号と前記受信部が受信する超音波の信号とを比較することにより、前記位相変化を導出するようにすることができる。
【0020】
そうすれば、電波の分野で一般に用いられている位相弁別器を用いて位相変化を導出できるので、簡素な構成で振動計測が行え、部材コストを抑制できる。
【0021】
また、前記振動計測部が、周波数弁別器を有するようにし、前記受信部が受信する超音波の信号を演算処理することにより、前記位相変化を導出するようにしてもよい。
【0022】
この場合でも、電波の分野で一般に用いられている周波数弁別器を用いて位相変化を導出できるので、簡素な構成で振動計測が行え、部材コストを抑制できる。
【0023】
特にこの場合、前記周波数弁別器が、周波数を弁別する特定のアナログ回路を有するようにするのが好ましい。
【0024】
具体的には、前記アナログ回路が、入力端子と出力端子との間に並列に接続されている第1線路及び第2線路と、前記第1線路に、前記入力端子側から順に配置されている第1コンデンサ、第2コンデンサ、第1ダイオード、及び第1抵抗と、前記第2線路に、前記入力端子側から順に配置されている第1コイル、第3コンデンサ、第2ダイオード、及び第2抵抗と、前記第1線路における前記第2コンデンサと前記第1ダイオードとの間の部位と、前記第2線路における前記第3コンデンサと前記第2ダイオードとの間の部位とに架設され、第2コイルが配置されている第3線路と、前記第1線路における前記第1ダイオードと前記第1抵抗との間の部位と、前記第2線路における前記第2ダイオードと前記第2抵抗との間の部位とに架設されるとともに、第4コンデンサ及び第5コンデンサが直列に配置され、これらの間の部位が接地されている第4線路と、前記第1線路における前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとの間の部位に一端が接続され、他端が接地されている第3コイルと、前記第2線路における前記第1コイルと前記第3コンデンサとの間の部位に一端が接続され、他端が接地されている第6コンデンサと、を有しているようにする。
【0025】
検波対象が低周波数の超音波であるため、電波用の既存回路では様々な不具合があるが、このアナログ回路を用いれば、汎用の電子部品を用いた簡素な構成で、周波数の弁別が問題無くできるようになる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の品質評価装置によれば、簡素な構成で高精度な品質評価ができる品質評価装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態の品質評価装置を示す概略図である。
【図2】(a),(b)は、振動測定の原理を説明ための図である。
【図3】振動計測部を簡略化して表したブロック図である。
【図4】第2実施形態の品質評価装置での図3に相当する図である。
【図5】アナログ回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。

【0029】
(第1実施形態)
図1に、本実施形態の品質評価装置1を示す。この品質評価装置1は、キウイやアボガド、メロン、スイカ等の農作物や、樹木などを主な対象物Sとしており、硬度や熟度、腐朽などの品質を、破壊しないで評価できるようになっている。従って、この品質評価装置1によれば、例えば、農作物の出荷時期の適切な判断が可能になり、食べ頃の判定などが可能になる。

【0030】
品質評価装置1では、対象物Sに所定の周波数帯で振動を加えて、その対象物Sの振動を測定する。具体的には、振動を加えた周波数帯での対象物Sの振動波形を測定する。その測定結果から対象物Sの共振周波数が求められ、その共振周波数に基づいて対象物Sの硬度や熟度、腐朽などの客観的な品質評価が行われる。

【0031】
品質評価装置1には、加振部10、発信部20、受信部30、振動計測部40、品質評価部50などが設けられている。

【0032】
加振部10には、対象物Sを載置するサンプル台11が設置されている。加振部10は、0Hz~10kHzなど、少なくとも100Hzを含む範囲で、連続的に周波数を増加させながら、サンプル台11に載置した対象物Sを振動させる機能を有している(スイープ加振機能)。

【0033】
発信部20は、セラミック振動子や超音波スピーカーなどからなり、例えば、40KHzなど、20KHz~400KHzの低周波数帯に含まれる所定の周波数の超音波を発信する。

【0034】
受信部30は、超音波を受信するセラミック振動子や超音波マイクなどからなる。発信部20及び受信部30は、昇降可能な状態で、サンプル台11の上方に配置されており、測定時には、サンプル台11に載置された対象物Sから離れた位置に固定される。

【0035】
測定時には、発信部20は、加振部10によって振動が加えられている対象物Sに向けて超音波(発信波)を連続的に発信し、受信部30は、対象物Sに当たって反射される超音波(受信波)を連続的に受信する。

【0036】
振動計測部40は、受信波に基づいて対象物Sの振動を計測し、その振動を電圧値として出力する(詳細は後述)。

【0037】
品質評価部50は、振動計測部40が出力する電圧値に基づいて、対象物Sの振動波形をモニターに表示する。その振動波形のピークから共振周波数が特定され、これら共振周波数から対象物Sの品質評価が行われる。

【0038】
例えば、第2共振周波数(周波数の低い側から2番目に生じる共振周波数)を特定すれば、対象物Sの硬度と相関のある指標(硬度指標)が得られる。

【0039】
詳しくは、対象物Sに振動を加えて、その周波数を徐々に大きくしていくと、対象物Sが共振して特定の周波数で振幅のピークが生じる。そのようなピークは異なった周波数で複数発生し、そのうち、周波数の低い側から2番目のピークの周波数が第2共振周波数である。

【0040】
硬度指標は、次の式(1)によって算出される。

【0041】
式(1):m2/3×f22(m:対象物Sの重量、f2:第2共振周波数)
この硬度指標を比較することで、対象物Sの硬度を評価することができる。

【0042】
(超音波による振動測定の原理)
この品質評価装置1では、低周波数の超音波を用いることにより、非接触で振動測定が行われる。そして、その振動測定が、汎用の電子部品を用いた簡素な構成で行えるように、構成が工夫されている。

【0043】
図2を用いて、その振動測定の原理を説明する。図2の(a)に示すように、発信部20から対象物Sまでの距離をLsとし、対象物Sから受信部30までの距離をLrとする。発信部20からは、cos(ω・t)に比例した振幅の超音波が連続して発信されるものとする(ω:超音波の角速度)。

【0044】
発信部20で発信された超音波(発信波)は、途中で対象物Sに当たって反射され、往復距離L(Ls+Lr)を経由して受信部30で受信される。超音波の音速をσとすると、超音波が発信部20で発信されてから受信部30に達するまでの時間はL/σとなり、位相はω・L/σ遅れた状態となる。そして、受信部30で受信される超音波(受信波)の強度は、cos(ω・t+θ-ω・L/σ)に比例する(θ:初期位相を示す定数)。

【0045】
従って、発信波を標準にして、受信波を位相検波すると、受信波と発信波との間の位相差{(ω・t+θ)-(ω・t+θ-ω・L/σ)}、すなわちω・L/σに比例した信号を得ることができる。

【0046】
図2の(b)に示すように、対象物Sが振動すると、それに伴って超音波の往復距離が増減する。この増減は、位相差の変化(位相変化)として検出される。

【0047】
振動により、対象物Sの位置がcos(α・t)に比例して変化し(α:対象物Sの振動の角速度)、対象物Sが振動していない時の超音波の往復距離をLとすると、超音波の往復距離は、L+C・cos(α・t)のように変化する(C:対象物Sの振動の振幅)。

【0048】
このとき、超音波の往復による位相変化は、ω・{L+C・cos(α・t)}/σとなる。この位相変化の値のうち、ω、σ、及びLは定数であることから、位相が変化する部分は、ω・C・cos(α・t)/σとなり、対象物Sの振動C・cos(α・t)に比例した値となる。従って、位相変化を検出すれば、対象物Sの振動を計測することができる。

【0049】
そこで、この品質評価装置1では、振動計測部40が、受信波を検波し、その受信波の位相変化に基づいて対象物Sの振動を計測するように構成されている。

【0050】
(振動計測部)
図3に、振動計測部40に関するブロック図を示す。本実施形態の振動計測部40は、増幅器41、振幅制限器42、位相弁別器43、ローパスフィルタ44などで構成されている。

【0051】
増幅器41は、受信波の信号を増幅する装置である。受信波の信号の強度が充分であれば、増幅器41は省略してもよい。

【0052】
振幅制限器42は、受信波の信号の振幅を一定に制限する装置である。振幅制限器42も必須ではなく、仕様に応じて省略できる。

【0053】
位相弁別器43は、電波の分野では一般に用いられている検波器であり、公知の位相弁別回路を有している。位相弁別器43は、発信部20に備えられている発信器21から発信波の信号(位相標準PS)を取得し、増幅器41及び振幅制限器42で調整された受信波の信号を、その位相標準PSと比較することにより、対象物Sの振動に相当する位相変化を導出する。

【0054】
振動計測部40は、その位相変化を電圧値(位相電圧)として、品質評価部50に出力する。

【0055】
ローパスフィルタ44は、位相電圧から不要な高周波数帯の信号を除去する装置である。ローパスフィルタ44は必須ではなく、仕様に応じて省略できる。

【0056】
(第2実施形態)
位相変化は、周波数弁別器46を用いても導出できる。本実施形態の品質評価装置1では、位相弁別器43に代えて周波数弁別器46及び積分回路47が用いられている。なお、その他の構成は、第1実施形態と同じである。

【0057】
図4に、本実施形態の振動計測部40の構成を示す。本実施形態の振動計測部40は、増幅器41、振幅制限器42、周波数弁別器46、積分回路47、ローパスフィルタ44などで構成されている。

【0058】
周波数弁別器46は、位相弁別器43と同様に、電波の分野で一般に用いられている検波器であり、公知の周波数弁別回路を有している。積分回路47は、周波数弁別器46で得られる信号を積分して位相変化を導出する装置である。

【0059】
周波数は位相が進行する速度であることから、位相が変化している場合、周波数は、その値の微分に比例して変化する。従って、位相標準PSを取得しなくても、周波数弁別器46で得られる信号を積分回路47で積分処理することにより、位相変化を導出することができる。

【0060】
これについて具体的に説明する。発信波がcos(ω・t+θ)に比例した振幅の超音波とする(ω:超音波の角速度、θ:初期位相を示す定数)。超音波の角速度ω(周波数の2π倍)は、d(ω・t+θ)/dtである。

【0061】
受信波は、A・cos{ω・t+θ+B・φ(t)}と表され(A:受信波の振幅、B:振動による位相の振幅、φ:位相変化を表す関数)、受信波の位相変化は、B・φ(t)となる。

【0062】
このとき、位相変化が受信波の角速度に及ぼす効果は、ω・t+θ+B・φ(t)を時間で微分して得ることができる(角速度は位相の微分)。

【0063】
その効果含んだ受信波を周波数弁別器46で検波すると、角速度の遷移分であるB・dφ(t)/dtに比例したβ・dφ(t)/dt(β:比例定数)が得られる。その信号(β・dφ(t)/dt)を積分回路47で積分することで、β・φ(t)+D(D:積分定数)が得られる。この値からDを除くことで、位相変化に比例した値β・φ(t)を導出することができる。

【0064】
振動計測部40は、このような演算処理を経て導出される位相変化を電圧値(位相電圧)として、品質評価部50に出力する。

【0065】
(アナログ回路)
周波数弁別器46には、周波数を弁別するアナログ回路が備えられている。一般的な回路としては、フォスターシーリー回路や比検波回路などがある。

【0066】
これら回路には、中間に端子をもつコイルで構成されている複同調回路が備えられている。電波の分野では、MHzレベルの周波数が一般的であるため、通常の巻数のコイルを用いることができるが、この品質評価装置1では、KHzレベルの低周波数の超音波を検波対象としている。そのため、膨大な巻数のコイルが必要になり、特注しなければ入手できないという不利がある。

【0067】
しかも、KHzレベルでは、同調回路の調整に大容量の可変コンデンサが必要となる難点がある。

【0068】
そこで、この品質評価装置1では、回路構成を工夫することにより、既存の回路と代替可能な新たなアナログ回路60を作製した。このアナログ回路60によれば、汎用されている可変コイルが使用でき、同調回路の調整も容易であり、汎用の電子部品だけを用いて構成できる。

【0069】
図5に、そのアナログ回路60を示す。

【0070】
アナログ回路60は、第1~第4の線路61~64、第1~第6のコンデンサC1~C6、第1及び第2のダイオードD1,D2、第1及び第2の抵抗R1,R2、第1~第3のコイルL1~L3などで構成されている。第1~第3のコイルL1~L3は、通常の簡単な構成であり、これら電子部品には汎用品が利用できる。

【0071】
第1線路61及び第2線路62は、入力端子66と出力端子67との間に並列に接続されている。

【0072】
第1線路61には、入力端子66の側から順に第1コンデンサC1、第2コンデンサC2、第1ダイオードD1、及び第1抵抗R1が直列に配置されている。第2線路62には、入力端子66の側から順に第1コイルL1、第3コンデンサC3、第2ダイオードD2、及び第2抵抗R2が直列に配置されている。

【0073】
そして、第1線路61における第2コンデンサC2と第1ダイオードD1との間の部位と、第2線路62における第3コンデンサC3と第2ダイオードD2との間の部位とには、第3線路63が架設されていて、その第3線路63に第2コイルL2が配置されている。

【0074】
また、第1線路61における第1ダイオードD1と第1抵抗R1との間の部位と、第2線路62における第2ダイオードD2と第2抵抗R2との間の部位とには、第4線路64が架設されている。第4線路64には、第4コンデンサC4及び第5コンデンサC5が直列に配置されていて、これらC4,C5の間の部位が接地されている。

【0075】
第3コイルL3は、第1線路61における第1コンデンサC1と第2コンデンサC2との間の部位に一端が接続されていて、他端が接地されている。第6コンデンサC6は、第2線路62における第1コイルL1と第3コンデンサC3との間の部位に一端が接続されていて、他端が接地されている。

【0076】
第1コンデンサC1及び第1コイルL1は、発信波の周波数にほぼ同調されており、インピーダンスが小さく、同調回路としてはその値は無視できる。

【0077】
第2コンデンサC2、第3コンデンサC3、及び第2コイルL2の部分は、第3コイルL3及び第6コンデンサC6が無ければ、同調回路とみなすことができる。

【0078】
このアナログ回路60では、その部分に、第3コイルL3及び第6コンデンサC6を配置することで、周波数の変動により、位相の進んだ成分(進角成分)及び遅れた成分(遅角成分)を作り出す。これら進角成分及び遅角成分は、第1コンデンサC1及び第3コイルL3、第1コイルL1及び第6コンデンサC6で得ることができる。

【0079】
周波数の変化に伴って位相が変化するので、入力信号にこれら進角成分及び遅角成分が加わった信号は、周波数の変化の差に応じて振幅が変化する。従って、その信号を整流し、周波数の変化を振幅の変化として取得する。

【0080】
周波数弁別器46に、このアナログ回路60を用いることにより、検波対象が低周波数の超音波であっても、汎用の電子部品を用いた簡素な構成で周波数の弁別ができるようになる。
【符号の説明】
【0081】
1 品質評価装置
10 加振部
20 発信部
30 受信部
40 振動計測部
41 増幅器
42 振幅制限器
43 位相弁別器
44 ローパスフィルタ
46 周波数弁別器
47 積分回路
50 品質評価部
60 アナログ回路
PS 位相標準
S 対象物
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4