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明細書 :シクロポリアリーレン化合物及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-001962 (P2017-001962A)
公開日 平成29年1月5日(2017.1.5)
発明の名称または考案の名称 シクロポリアリーレン化合物及びその製造方法
国際特許分類 C07C  13/28        (2006.01)
C07C   1/00        (2006.01)
C07C  43/192       (2006.01)
C07F   5/02        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 13/28 CSP
C07C 1/00
C07C 43/192
C07F 5/02 C
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 32
出願番号 特願2015-114127 (P2015-114127)
出願日 平成27年6月4日(2015.6.4)
発明者または考案者 【氏名】伊丹 健一郎
【氏名】瀬川 泰知
【氏名】八木 亜樹子
【氏名】岡田 圭秀
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4H006
4H039
4H048
Fターム 4H006AA01
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC24
4H006BA21
4H006BA25
4H006BA44
4H006BA48
4H039CA41
4H039CL25
4H048AA01
4H048AB84
4H048VA77
4H048VB10
要約 【課題】カーボンナノチューブのテンプレート化合として、[9]シクロナフチレン化合物以外の種々のシクロポリアリーレン化合物及びその製造方法の提供。
【解決手段】遷移金属化合物の存在下に、式(3)で示される化合物を反応させて得られるシクロポリアリーレン化合物。
JP2017001962A_000034t.gif
[Xはハロゲン原子;Yはハロゲン原子又はボロン酸若しくはそのエステル基;Rは各々独立にH、アルキル基又は水酸基の保護基;kは各々独立に0~2の整数;mは各々独立に1~3の整数;jは1又は2;nは2以上の整数]
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(1):
【化1】
JP2017001962A_000026t.gif
[式中、kは同じか又は異なり、それぞれ0~2の整数;mは同じか又は異なり、それぞれ1~3の整数;jは1又は2;nは2以上の整数である。]
で示されるシクロポリアリーレン化合物。
【請求項2】
前記一般式(1)において、nが2~4の整数である、請求項1に記載のシクロポリアリーレン化合物。
【請求項3】
一般式(1)において、全てのkが同一であり、全てのmが同一である、請求項1又は2に記載のシクロポリアリーレン化合物。
【請求項4】
一般式(2):
【化2】
JP2017001962A_000027t.gif
[式中、Rは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基又は水酸基の保護基;kは同じか又は異なり、それぞれ0~2の整数;mは同じか又は異なり、それぞれ1~3の整数;jは1又は2;nは2以上の整数である。]
で示される化合物。
【請求項5】
前記一般式(2)において、nが2~4の整数である、請求項4に記載のシクロポリアリーレン化合物。
【請求項6】
前記一般式(2)において、全てのRが同一であり、全てのkが同一であり、且つ、全てのmが同一である、請求項4又は5に記載の化合物。
【請求項7】
一般式(1):
【化3】
JP2017001962A_000028t.gif
[式中、kは同じか又は異なり、それぞれ0~2の整数;mは同じか又は異なり、それぞれ1~3の整数;jは1又は2;nは2以上の整数である。]
で表されるシクロポリアリーレン化合物の製造方法であって、
一般式(2):
【化4】
JP2017001962A_000029t.gif
[式中、Rは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基又は水酸基の保護基;kは同じか又は異なり、それぞれ0~2の整数;mは同じか又は異なり、それぞれ1~3の整数;jは1又は2;nは2以上の整数である。]
で示される化合物を芳香族化させる工程
を備える、製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法であって、
遷移金属化合物の存在下に、一般式(3):
【化5】
JP2017001962A_000030t.gif
[式中、Xはハロゲン原子;Yはハロゲン原子、又はボロン酸若しくはそのエステル基;R、k、m及びjは前記に同じである。]
で表される化合物を反応させて、一般式(2)で表される化合物を製造する工程
を備える、製造方法。
【請求項9】
一般式(2):
【化6】
JP2017001962A_000031t.gif
[式中、Rは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基又は水酸基の保護基;kは同じか又は異なり、それぞれ0~2の整数;mは同じか又は異なり、それぞれ1~3の整数;jは1又は2;nは2以上の整数である。]
で表される化合物の製造方法であって、
遷移金属化合物の存在下に、一般式(3):
【化7】
JP2017001962A_000032t.gif
[式中、Xはハロゲン原子;Yはハロゲン原子、又はボロン酸若しくはそのエステル基;R、k、m及びjは前記に同じである。]
で表される化合物を反応させる工程
を備える、製造方法。
【請求項10】
一般式(3):
【化8】
JP2017001962A_000033t.gif
[式中、Xはハロゲン原子;Yはハロゲン原子、又はボロン酸若しくはそのエステル基;R、k、m及びjは前記に同じである。]
で表される化合物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロポリアリーレン化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、高い導電性、高い機械的強度、優れた弾性、耐熱性、軽さ等の性質を有していることから、電子移動度の高い電子材料、高強度材料、小分子センサー、太陽電池の高効率光吸収剤等、様々な産業応用が期待される。
【0003】
このうち、カーボンナノチューブは、例えば、アーク放電法、レーザー・ファネス法及び化学気相成長法等で製造できることが知られている。しかし、これらの製造方法では、チューブの径や長さの制御が困難であり、様々な径と長さを有するカーボンナノチューブの混合物でしか得られず、単離も困難という問題がある。
【0004】
一方、カーボンナノチューブの合成方法が確立されれば、均一な径と長さを有するカーボンナノチューブを合成できることが期待されるものの、その合成技術は存在しない。カーボンナノチューブのテンプレート化合物となり得る化合物としては、カーボンナノリング(シクロパラフェニレン化合物、シクロポリアリーレン化合物等)、カーボンナノベルト等が期待されている。シクロパラフェニレン化合物、シクロポリアリーレン化合物等はカーボンナノベルトのテンプレート化合物となり得るとも期待されている。
【0005】
シクロパラフェニレン化合物の合成方法は種々報告されており(例えば、非特許文献1~3等)、種々のシクロパラフェニレン化合物を合成することが可能である。しかしながら、縮合多環式芳香族化合物を用いたシクロポリアリーレン化合物の合成方法としては、9個のナフチレン基が連なった[9]シクロナフチレン化合物については報告されている(例えば、非特許文献4等)ものの、種々のシクロポリアリーレン化合物の合成はできていないのが現状である。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc., 2008, 130, 17646
【非特許文献2】Angew. Chem. Int. Ed., 2009, 48, 6112
【非特許文献3】Angew. Chem. Int. Ed., 2010, 49, 10202
【非特許文献4】J. Am. Chem. Soc., 2012, 134, 2962
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、[9]シクロナフチレン化合物以外のシクロポリアリーレン化合物の合成方法が確立されれば、カーボンナノチューブ、カーボンナノベルト等の合成技術に近づくと考えた。
【0008】
そこで、本発明は、種々のシクロポリアリーレン化合物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を行った結果、入手容易な特定の材料を原料にして、数工程で目的化合物を簡便に合成できることを見出した。かかる知見に基づき、さらに研究を行った結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、以下の構成を包含する。
【0010】
項1.一般式(1):
【0011】
【化1】
JP2017001962A_000002t.gif

【0012】
[式中、kは同じか又は異なり、それぞれ0~2の整数;mは同じか又は異なり、それぞれ1~3の整数;jは1又は2;nは同一であり、いずれも2以上の整数である。]
で示されるシクロポリアリーレン化合物。
【0013】
項2.前記一般式(1)において、nが2~4の整数である、項1に記載のシクロポリアリーレン化合物。
【0014】
項3.一般式(1)において、全てのkが同一であり、且つ、全てのmが同一である、項1又は2に記載のシクロポリアリーレン化合物。
【0015】
項4.一般式(2):
【0016】
【化2】
JP2017001962A_000003t.gif

【0017】
[式中、Rは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基又は水酸基の保護基;kは同じか又は異なり、それぞれ0~2の整数;mは同じか又は異なり、それぞれ1~3の整数;jは1又は2;nは2以上の整数である。]
で示される化合物。
【0018】
項5.前記一般式(2)において、nが2~4の整数である、項4に記載のシクロポリアリーレン化合物。
【0019】
項6.前記一般式(2)において、全てのRが同一であり、全てのkが同一であり、全てのmが同一であり、且つ、全てのjが同一である、項4又は5に記載の化合物。
【0020】
項7.一般式(1):
【0021】
【化3】
JP2017001962A_000004t.gif

【0022】
[式中、kは同じか又は異なり、それぞれ0~2の整数;mは同じか又は異なり、それぞれ1~3の整数;jは1又は2;nは2以上の整数である。]
で表されるシクロポリアリーレン化合物の製造方法であって、
一般式(2):
【0023】
【化4】
JP2017001962A_000005t.gif

【0024】
[式中、Rは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基又は水酸基の保護基;kは同じか又は異なり、それぞれ0~2の整数;mは同じか又は異なり、それぞれ1~3の整数;jは1又は2;nは2以上の整数である。]
で示される化合物を芳香族化させる工程
を備える、製造方法。
【0025】
項8.項7に記載の製造方法であって、
遷移金属化合物の存在下に、一般式(3):
【0026】
【化5】
JP2017001962A_000006t.gif

【0027】
[式中、Xはハロゲン原子;Yはハロゲン原子、又はボロン酸若しくはそのエステル基;R、k、m及びjは前記に同じである。]
で表される化合物を反応させて、一般式(2)で表される化合物を製造する工程
を備える、製造方法。
【0028】
項9.一般式(2):
【0029】
【化6】
JP2017001962A_000007t.gif

【0030】
[式中、Rは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基又は水酸基の保護基;kは同じか又は異なり、それぞれ0~2の整数;mは同じか又は異なり、それぞれ1~3の整数;jは1又は2;nは2以上の整数である。]
で表される化合物の製造方法であって、
遷移金属化合物の存在下に、一般式(3):
【0031】
【化7】
JP2017001962A_000008t.gif

【0032】
[式中、Xはハロゲン原子;Yはハロゲン原子、又はボロン酸若しくはそのエステル基;R、k、m及びjは前記に同じである。]
で表される化合物を反応させる工程
を備える、製造方法。
【0033】
項10.一般式(3):
【0034】
【化8】
JP2017001962A_000009t.gif

【0035】
[式中、Xはハロゲン原子;Yはハロゲン原子、又はボロン酸若しくはそのエステル基;R、k、m及びjは前記に同じである。]
で表される化合物。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、種々のシクロポリアリーレン化合物を、入手容易な化合物を出発原料として短工程かつ好収率で製造することができる。
【0037】
まず、入手容易な化合物を出発物質として一般式(3)で示される化合物を得ることができる。この一般式(3)で示される化合物は選択的にシス配置の化合物が得られるため、当該化合物は屈曲したL字型の形状を有する。
【0038】
次いで、これを遷移金属化合物の存在下に反応(ホモカップリング反応)させて環化し、当該化合物の多量体(二量体、三量体、四量体等)に相当する一般式(2)で示される化合物(輪状化合物)を得ることができる。原料である一般式(3)で示される化合物がL字型形状を有しているため、上記環化反応が効率的に進行する。
【0039】
最後に、一般式(2)で示される化合物(輪状化合物)を還元的芳香族化反応に供して、一般式(1)で示される本発明のシクロポリアリーレン化合物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
1.シクロポリアリーレン化合物
本発明のシクロポリアリーレン化合物は、一般式(1):

【0041】
【化9】
JP2017001962A_000010t.gif

【0042】
[式中、kは同じか又は異なり、それぞれ0~2の整数;mは同じか又は異なり、それぞれ1~3の整数;jは1又は2;nは2以上の整数である。]
で示される化合物である。このシクロポリアリーレン化合物は、一般式(7):

【0043】
【化10】
JP2017001962A_000011t.gif

【0044】
[式中、k及びmは前記に同じである。]
で示される繰り返し単位が連なった輪状構造を有する化合物を意味する。一般式(1)で示される本発明のシクロポリアリーレン化合物は、前記一般式(7)を満たす単独の繰り返し単位のみから構成されるシクロポリアリーレン化合物であってもよいし、前記一般式(7)を満たす複数の繰り返し単位から構成されるシクロポリアリーレン化合物であってもよい。

【0045】
一般式(1)において、kは同じか又は異なり、それぞれ0~2の整数であり、合成の容易さ、収率等の観点から、好ましくは0又は1である。kはそれぞれ同一でも異なっていてもよいが、合成の容易さ、収率等の観点から、同一であることが好ましい。

【0046】
一般式(1)において、mは同じか又は異なり、それぞれ1~3の整数であり、合成の容易さ、収率等の観点から、好ましくは1又は2である。mはそれぞれ同一でも異なっていてもよいが、合成の容易さ、収率等の観点から、同一であることが好ましい。

【0047】
つまり、一般式(7)における縮合多環式芳香族炭化水素部位が、ナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ペンタセン等であることが好ましく、ナフタレン又はアントラセンであることが好ましい。

【0048】
一般式(1)において、jは1又は2である。後述する本発明の製造方法によれば、通常、全てのjが同一であるシクロポリアリーレン化合物を合成することができる。

【0049】
一般式(1)において、nは2以上の整数であり、合成の容易さ、収率等の観点から、好ましくは2~4の整数である。

【0050】
以上から、本発明のシクロポリアリーレン化合物は、一般式(7)で示される繰り返し単位を8個、10個、12個、15個、16個、又は20個有するシクロポリアリーレン化合物が好ましく、8個、10個、12個、15個、又は16個有するシクロポリアリーレン化合物がより好ましい。

【0051】
より好ましいシクロポリアリーレン化合物としては、全てのkが0、全てのmが1である以下の一般式(1A):

【0052】
【化11】
JP2017001962A_000012t.gif

【0053】
[式中、jは1又は2;nは2~4の整数である。]
で示されるシクロポリアリーレン化合物が挙げられる。具体的には、後述の実施例に示されるシクロポリアリーレン化合物が好ましい。

【0054】
2.シクロポリアリーレン化合物の製造方法
本発明の一般式(1)で示されるシクロポリアリーレン化合物は、例えば、反応式1:

【0055】
【化12】
JP2017001962A_000013t.gif

【0056】
[式中、Xはハロゲン原子;Yはハロゲン原子、又はボロン酸若しくはそのエステル基;Rは同じか又は異なり、それぞれアルキル基又は水酸基の保護基;Rは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基又は水酸基の保護基;k、m、j及びnは前記に同じである。]
で示される製造方法により製造することができる。

【0057】
Xで示されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、合成の容易さ、収率等の観点から、臭素原子、ヨウ素原子等が好ましい。

【0058】
Yで示されるハロゲン原子としても同様に、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、合成の容易さ、収率等の観点から、臭素原子、ヨウ素原子等が好ましい。

Yで示されるボロン酸若しくはそのエステル基としては、例えば、一般式(8):

【0059】
【化13】
JP2017001962A_000014t.gif

【0060】
[式中、Rは同じか又は異なり、それぞれ水素原子又はアルキル基;Rは互いに結合して隣接する-O-B-O-とともに環を形成してもよい。]
で示される基が好ましい。

【0061】
で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基等のC1-6アルキル基、特にC1-4アルキル基が挙げられる。

【0062】
このようなボロン酸若しくはそのエステル基としては、例えば、

【0063】
【化14】
JP2017001962A_000015t.gif

【0064】
[式中、R~Rは同じか又は異なり、それぞれアルキル基である。]
で示される基が挙げられる。

【0065】
~Rで示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基等のC1-6アルキル基、特にC1-4アルキル基が挙げられる。 Rで示されるアルキル基としては、合成の容易さ、収率等の観点から、例えば、C1~6アルキル基が好ましく、C1~4アルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。アルキル基としてC3以上のアルキル基を使用する場合、当該アルキル基は直鎖状又は分岐状のいずれでもよい。

【0066】
で示される水酸基の保護基としては、合成の容易さ、収率等の観点から、例えば、アルカノイル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル等のC1~4のアルカノイル基)、置換されていてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル基、p-メトキシベンジル基、p-ニトロベンジル基等)、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基等)、アルコキシアルキル基(例えば、メトキシメチル基等)、テトラヒドロピラニル(THP)基等が挙げられる。

【0067】
上記Rのなかでも、合成の容易さ、収率等の観点から、アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。

【0068】
なお、R及び水素原子(H)を併せてRと表記する場合もある。このRについても、Rと同様に、合成の容易さ、収率等の観点から、アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。

【0069】
化合物(4a)の合成:
一般式(4a)で示される化合物は、一般式(5)で表される化合物のハロゲン原子(X)の1つを金属試薬により金属に変換し(第1工程;ハロゲン-金属交換反応)、これにより得られた化合物と一般式(6)で表される化合物とを反応させる(第2工程)ことにより製造することができる。

【0070】
一般式(5)で示される化合物としては、例えば、1,4-ジハロナフタレン、1,4-ジハロアントラセン、9,10-ジハロアントラセン、1,4-ジハロナフタセン、5,12-ジハロナフタセン等が挙げられ、具体的には、1,4-ジブロモナフタレン、1,4-ジヨードナフタレン、1-ブロモ-4-ヨードナフタレン、1,4-ジブロモアントラセン、1,4-ジヨードアントラセン、1-ブロモ-4-ヨードアントラセン、9,10-ジブロモアントラセン、9,10-ジヨードアントラセン、9-ブロモ-10-ヨードアントラセン等が挙げられる。

【0071】
一般式(6)で示される化合物としては、例えば、1,4-ナフトキノン、1,4-アントラセンジオン、9,10-アントラセンジオン、1,4-ナフタセンジオン、5,12-ナフタセンジオン等が挙げられる。

【0072】
一般式(6)で表される化合物の使用量は、合成の容易さ、収率等の観点から、一般式(5)で表される化合物1モルに対し、通常0.1~0.6モルが好ましく、0.3~0.5モルがより好ましく、0.35~0.5モルがさらに好ましく、0.4~0.5モルが特に好ましい。

【0073】
一般式(5)で示される化合物のハロゲン原子(X)の1つを金属に変換する金属試薬としては、例えば、リチウム試薬、マグネシウム試薬等が挙げられる。

【0074】
リチウム試薬としては、例えば、金属リチウム、アルキルリチウム(例えば、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム等)、フェニルリチウム等が挙げられる。このようなリチウム試薬を用いてハロゲン原子がリチオ化することができる。なかでも、n-ブチルリチウムが好ましい。

【0075】
マグネシウム試薬としては、例えば、マグネシウム金属、アルキルマグネシウムハライド(例えば、イソプロピルマグネシウムクロリド、イソプロピルマグネシウムブロミド等)等が挙げられる。このようなマグネシウム試薬を用いてハロゲン原子をマグネシオ化することができる。なかでも、イソプロピルマグネシウムクロリドが好ましい。

【0076】
上記の金属試薬は市販されているか、或いは当業者が公知技術に基づき容易に調製することができる。

【0077】
金属試薬の使用量は、合成の容易さ、収率等の観点から、一般式(5)で表される化合物1モルに対し、通常1~1.5モルが好ましく、1~1.2モルがより好ましく、1~1.15モルがさらに好ましい。

【0078】
上記の金属試薬と共に、塩化セリウム、塩化リチウム、臭化マグネシウム、塩化銅等の金属塩を使用することができる。これにより、副反応を抑制したり、試薬の有機溶媒への溶解性を向上させたりして、反応を促進することができる。特に、上記金属試薬のうちリチウム試薬と共に金属塩を用いた場合にその効果が高い。

【0079】
金属塩を用いる場合の使用量は、合成の容易さ、収率等の観点から、一般式(5)で表される化合物1モルに対し、通常0.1~100モルが好ましく、0.5~20モルがより好ましい。

【0080】
反応は通常溶媒の存在下で実施することができ、第1工程及び第2工程ともに、用い得る溶媒として、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジグライム、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、t?ブチルメチルエーテル(TBME)等のエーテル;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。なかでも、エーテルが好ましく、ジエチルエーテルがより好ましい。反応は無水の条件で実施することが好ましい。また、第1工程及び第2工程で使用する溶媒は同一でも異なっていてもよい。

【0081】
反応は、第1工程及び第2工程ともに、通常、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン等)雰囲気下で行うことが好ましい。

【0082】
反応温度は、第1工程及び第2工程ともに、通常、-100℃~溶媒の沸点(溶媒がジエチルエーテルの場合は35℃)までの範囲から適宜選択できる。第1工程においてアルキルリチウムを用いた場合には、合成の容易さ、収率等の観点から、-100℃~0℃が好ましく、-80℃~-40℃程度がより好ましい。また、第1工程及び第2工程の反応温度は同一でも異なっていてもよい。

【0083】
反応時間は特に限定はなく、第1工程及び第2工程ともに、例えば、1分~24時間が例示される。

【0084】
反応終了後は、必要に応じて通常の濾過、濃縮、抽出等の単離手段に供し、必要に応じてカラムクロマトグラフィ、再結晶化等の通常の精製手段に供することにより、反応生成物を単離及び精製することができる。

【0085】
上記反応で得られる一般式(4a)で表される化合物は、通常、下記のシス体(4a-cis)及びトランス体(4a-trans)の立体配置の異なる異性体を与えるが、シス体が選択的に得られる。シス体は上記の単離及び精製手段で容易に得ることができる。

【0086】
得られた一般式(4a)で表される化合物:

【0087】
【化15】
JP2017001962A_000016t.gif

【0088】
[式中、X、k及びmは前記に同じ;太線は紙面手前側に、点線は紙面奥側に配置していることを示す。但し、いずれも相対配置である。]
は、混合物のまま次の反応に供することができ、必要に応じシス体を単離及び精製して次の反応に供することもできる。

【0089】
化合物(4b)の合成:
一般式(4b)で表される化合物は、一般式(4a)で表される化合物(特に、一般式(4a-cis)で表される化合物)の水酸基をアルキル化又は水酸基の保護基で保護することにより製造することができる。

【0090】
アルキル化反応は、通常、溶媒の存在下又は非存在下、必要に応じて塩基の存在下、アルキル化剤を反応させて実施することができる。

【0091】
塩基としては、例えば、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、水素化リチウム等のアルカリ金属ハイドライド;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、ピリジン等の含窒素有機化合物等が挙げられる。なかでも、アルカリ金属ハイドライドが好ましく、水素化ナトリウムがより好ましい。

【0092】
塩基の使用量は、合成の容易さ、収率等の観点から、一般式(4a)で表される化合物1モルに対し、2~50モル程度が好ましく、2~30モル程度がより好ましく、2~15モル程度がさらに好ましい。

【0093】
アルキル化剤としては、合成の容易さ、収率等の観点から、通常C1~6のアルキル化剤が好ましく、例えば、アルキルハライド(例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル等)、ジアルキル硫酸(例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等)、アルキルトリフラート、アルキルトシラート等が挙げられる。なかでも、アルキルハライドが好ましく、ヨウ化メチルがより好ましい。

【0094】
アルキル化剤の使用量は、合成の容易さ、収率等の観点から、一般式(4a)で表される化合物1モルに対し、通常2~50モル程度が好ましく、2~30モル程度がより好ましく、2~15モル程度がさらに好ましい。

【0095】
用い得る溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジグライム、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、t?ブチルメチルエーテル(TBME)等のエーテル;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチルピロリドン(NMP)等のアミド;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。なかでも、エーテルが好ましく、テトラヒドロフランがより好ましい。反応は無水の条件で行うことが好ましい。

【0096】
反応は、通常、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン等)雰囲気下で実施することが好ましい。

【0097】
反応温度は、通常、-50℃~溶媒の沸点の範囲から適宜選択できる。合成の容易さ、収率等の観点から、-10℃~50℃が好ましい。

【0098】
反応時間は特に限定はなく、例えば、1分~100時間が例示される。

【0099】
或いは、水酸基の保護基で保護する反応は、水酸基の保護基(例えば、アルカノイル基、置換されていてもよいアラルキル基、シリル基、アルコキシアルキル基、テトラヒドロピラニル基等)を導入し得る公知の保護反応を用いて行うことができる。

【0100】
反応終了後は、必要に応じて通常の濾過、濃縮、抽出等の単離手段に供し、必要に応じてカラムクロマトグラフィ、再結晶化等の通常の精製手段に供することにより、反応生成物を単離及び精製することができる。

【0101】
上記反応で得られる一般式(4b)で示される化合物は、一般式(4a)で表される化合物がシス体及びトランス体の混合物の場合は、シス体(4b-cis)及びトランス体(4b-trans)の立体配置の異なる異性体を与えるが、上記の単離手段でシス体のみを得ることができる。

【0102】
ここで、一般式(4a)で示される化合物と一般式(4b)で示される化合物を併せて、一般式(4)で示される化合物:

【0103】
【化16】
JP2017001962A_000017t.gif

【0104】
[式中、R、X、k及びmは前記に同じである。]
として表すことができる。一般式(4)で示される化合物は、共に次の反応に供することができる。

【0105】
化合物(3a)及び化合物(3b)の合成:
一般式(3a)で示される化合物は、パラジウム化合物の存在下、一般式(4a)で示される化合物と一般式(5)で示される化合物とを反応させることにより製造することができる。また、一般式(3b)で示される化合物は、パラジウム化合物の存在下、一般式(4b)で示される化合物と一般式(5)で示される化合物とを反応させることにより製造することができる。

【0106】
反応は、通常、パラジウム化合物の存在下、必要に応じて塩基及び溶媒の存在下又は非存在下、一般式(4a)で示される化合物又は一般式(4b)で示される化合物と一般式(5)で示される化合物とを反応させて行うことができる。

【0107】
一般式(5)で示される化合物の使用量は、jが1である化合物(3a)又はjが1である化合物(3b)を得ようとする場合は、合成の容易さ、収率等の観点から、一般式(4a)で示される化合物又は一般式(4b)で示される化合物1モルに対して、通常1~20モルが好ましく、2~10モルがより好ましい。また、jが2である化合物(3a)又はjが2である化合物(3b)を得ようとする場合は、合成の容易さ、収率等の観点から、一般式(4a)で示される化合物又は一般式(4b)で示される化合物1モルに対して、通常2~20モルが好ましく、3~10モルがより好ましい。

【0108】
パラジウム化合物としては、有機化合物(高分子化合物を含む)等の合成用触媒として公知のパラジウム化合物等が挙げられる。本発明においては、鈴木-宮浦カップリング反応に使用されるパラジウム触媒(パラジウム化合物)を用いることができる。具体的には、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh3)4)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(PdCl2(PPh3)2)、酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc)2)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)(Pd2(dba)3)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)クロロホルム錯体、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、ビス(トリtert-ブチルホスフィノ)パラジウム(0)、及び(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)ジクロロパラジウム(II)等が挙げられる。本工程では、合成の容易さ、収率等の観点から、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh3)4)が好ましい。

【0109】
パラジウム化合物の使用量は、合成の容易さ、収率等の観点から、一般式(4a)で示される化合物又は一般式(4b)で示される化合物1モルに対して、通常0.01~0.2モルが好ましく、0.02~0.1モルがより好ましい。

【0110】
本反応において、パラジウム化合物とともに、パラジウムに配位し得る配位子化合物を用いることも可能である。この配位子化合物としては、カルボン酸系、アミド系、ホスフィン系、オキシム系、スルホン酸系、1,3-ジケトン系、シッフ塩基系、オキサゾリン系、ジアミン系、一酸化炭素、カルベン系等の配位子化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。上記配位子化合物における配位原子は窒素原子、リン原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられ、これらの配位子化合物には配位原子を1箇所のみ有する単座配位子と2箇所以上を有する多座配位子とがある。また、一酸化炭素、カルベン系配位子化合物は、炭素原子を配位原子とする配位子化合物である。

【0111】
上記単座配位子としては、トリフェニルホスフィン、トリメトキシホスフィン、トリエチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、トリ(n-ブチル)ホスフィン、トリイソプロポキシホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ(o-トルイル)ホスフィン、トリメシチルホスフィン、トリフェノキシホスフィン、トリ(2-フリル)ホスフィン、ビス(p-スルホナートフェニル)フェニルホスフィンカリウム、ジ(tert-ブチル)メチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。

【0112】
上記多座配位子としては、2,2’-ビピリジル、4,4’-(tert-ブチル)ビピリジル、フェナントロリン、2,2’-ビピリミジル、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、2-アミノメチルピリジン、(NE)-N-(ピリジン-2-イルメチリデン)アニリン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,1’-ビス(tert-ブチル)フェロセン、ジフェニルホスフィノメタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,5--ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、1,2-ビス(ジペンタフルオロフェニルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1,3-(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン、1,2-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)プロパン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1,5-シクロオクタジエン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(BINAP)、2,2’-ジメチル-6,6’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル(BIPHEMP)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(PROPHOS)、2,3-O-イソプロピリデン-2,3-ジヒドロキシ-1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(DIOP)、3,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1-ベンジルピロリジン(DEGUPHOS)、1,2-ビス[(2-メトキシフェニル)フェニルホスフィノ]エタン(DIPAMP)、置換-1,2-ビスホスホラノベンゼン(DuPHOS)、5,6-ビス(ジフェニルホスフィノ)-2-ノルボルネン(NORPHOS)、N,N’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-N,N’-ビス(1-フェニルエチル)エチレンジアミン(PNNP)、2,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン(SKEWPHOS)、1-[1’,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチレンジアミン(BPPFA)、2,2’-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)-5,5’,6,6’,7,7’,8,8’-オクタヒドロ-1,1’-ビナフチル、((4,4’-ビ-1,3-ベンゾジオキソール)-5,5’-ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)(SEGPHOS)、2,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(CHIRAPHOS)、1-[2-(2置換ホスフィノ)フェロセニル]エチル-2置換ホスフィン(JOSIPHOS)等、及びこれらの混合物が挙げられる。上記BINAPとしては、BINAP(2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル)の誘導体も含まれ、上記BIPHEMPとしては、BIPHEMP(2,2’-ジメチル-6,6’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル)の誘導体も含まれる。上記配位子のうち、合成の容易さ、収率等の観点から、多座配位子が好ましく、2,2’-ビピリジル、4,4’-(tert-ブチル)ビピリジル等がより好ましく、2,2’-ビピリジルがさらに好ましい。

【0113】
配位子化合物を使用する場合、その使用量は、パラジウム化合物1モルに対して、通常、0.2~5モルが好ましく、0.5~2モルがより好ましい。

【0114】
塩基としては、例えば、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、水素化リチウム等のアルカリ金属ハイドライド;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、ピリジン等の含窒素有機化合物等が挙げられる。なかでも、合成の容易さ、収率等の観点から、アルカリ金属炭酸塩が好ましく、炭酸カリウムがより好ましい。

【0115】
塩基の使用量は、jが1である化合物(3a)又はjが1である化合物(3b)を得ようとする場合は、合成の容易さ、収率等の観点から、一般式(4a)で示される化合物又は一般式(4b)で示される化合物1モルに対して、通常1~10モルが好ましく、2~7モルがより好ましい。また、jが2である化合物(3a)又はjが2である化合物(3b)を得ようとする場合は、合成の容易さ、収率等の観点から、一般式(4a)で示される化合物又は一般式(4b)で示される化合物1モルに対し、2~10モル程度が好ましく、3~7モル程度がより好ましい。

【0116】
用い得る溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジグライム、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、t?ブチルメチルエーテル(TBME)等のエーテル;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチルピロリドン(NMP)等のアミド;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。なかでも、芳香族炭化水素が好ましく、トルエンがより好ましい。

【0117】
反応は、通常、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン等)雰囲気下で実施することが好ましい。

【0118】
反応温度は、通常、0℃~溶媒の沸点までの範囲から適宜選択できる。合成の容易さ、収率等の観点から、50~100℃が好ましい。

【0119】
反応時間は特に限定はなく、例えば、1~100時間が例示され、2~48時間が好ましい。

【0120】
反応終了後は、必要に応じて通常の濾過、濃縮、抽出等の単離手段に供し、必要に応じてカラムクロマトグラフィ、再結晶化等の通常の精製手段に供することにより、反応生成物を単離及び精製することができる。

【0121】
上記反応で得られる化合物は、一般式(4a)で示される化合物を原料に用いた場合は一般式(3a)で示される化合物が得られ、一般式(4b)で示される化合物を原料に用いた場合は一般式(3b)で示される化合物が得られる。一般式(3a)で示される化合物を得た場合は、この後、上記した方法にしたがってアルキル化又は水酸基の保護基で保護することにより一般式(3b)で示される化合物を得てもよい。

【0122】
上記反応で得られる一般式(3a)で示される化合物及び一般式(3b)で示される化合物は、一般式(4a)で示される化合物及び一般式(4b)で示される化合物がシス体及びトランス体の混合物の場合は、シス体(3a-cis)とトランス体(3a-trans)との立体配置の異なる異性体、又はシス体(3b-cis)とトランス体(3b-trans)との立体配置の異なる異性体を与えるが、上記の単離手段でシス体のみを得ることができる。

【0123】
シス体(3a-cis)及びシス体(3b-cis)は、分子が屈曲しておりL字型の構造を有しているため、後述するカップリング反応において効率的に輪状生成物を得ることができる。例えば、シス体(3a-cis)及びシス体(3b-cis)において、全てのkが0であり、全てのmが1である化合物の場合、1,4-ジヒドロナフタレン環の1位及び4位の2つの縮合芳香族基のなす角度は約70°となる。

【0124】
ここで、一般式(3a)で示される化合物と一般式(3b)で示される化合物を併せて、一般式(3)で示される化合物:

【0125】
【化17】
JP2017001962A_000018t.gif

【0126】
[式中、X、Y、R、k、m及びjは前記に同じである。]
として表すことができる。一般式(3)で示される化合物は、共に次の反応に供することができる。

【0127】
輪状化合物(2)の合成:
一般式(2)で示される輪状化合物は、通常、溶媒の存在下、遷移金属化合物の存在下、一般式(3)で表される化合物(好ましくはシス体(3b-cis))を反応(ホモカップリング反応)させて製造することができる。

【0128】
例えば、一般式(3)で示される化合物の両末端がX(ハロゲン原子)である場合、一般式(2)で示される輪状化合物は、溶媒の存在下、ニッケル化合物及び必要に応じて配位子化合物の存在下、一般式(3)で表される化合物(好ましくはシス体(3b-cis))を反応(ホモカップリング反応)させて製造することが好ましい。

【0129】
また、一般式(3)で示される化合物の片末端がX(ハロゲン原子)で片末端がY(ボロン酸若しくはそのエステル基)である場合、一般式(2)で示される輪状化合物は、溶媒の存在下、パラジウム化合物及び必要に応じて塩基の存在下、一般式(3)で表される化合物(好ましくはシス体(3b-cis))を反応(ホモカップリング反応;鈴木-宮浦カップリング反応)させて製造することが好ましい。

【0130】
遷移金属化合物としては、例えば、10族の遷移金属を含む化合物(ニッケル化合物、パラジウム化合物、白金化合物等)が挙げられ、合成の容易さ、収率等の観点から、ニッケル化合物、パラジウム化合物等が好ましい。

【0131】
パラジウム化合物としては、上記説明したパラジウム化合物を採用できる。本工程では、合成の容易さ、収率等の観点から、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh3)4)が好ましい。

【0132】
ニッケル化合物としては、0価のNi(0)又は2価のNi(II)の化合物(塩又は錯体)が好ましい。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。

【0133】
上記Ni(0)の化合物としては、例えば、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0)(Ni(cod)2)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジカルボニル、ニッケルカルボニル等が挙げられる。

【0134】
また、上記Ni(II)の化合物としては、例えば、酢酸ニッケル(II)、トリフルオロ酢酸ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、塩化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)、ニッケル(II)アセチルアセトナート、過塩素酸ニッケル(II)、クエン酸ニッケル(II)、シュウ酸ニッケル(II)、シクロヘキサン酪酸ニッケル(II)、安息香酸ニッケル(II)、ステアリン酸ニッケル(II)、ステアリン酸ニッケル(II)、スルファミンニッケル(II)、炭酸ニッケル(II)、チオシアン酸ニッケル(II)、トリフルオロメタンスルホン酸ニッケル(II)、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(II)、ビス(4-ジエチルアミノジチオベンジル)ニッケル(II)、シアン化ニッケル(II)、フッ化ニッケル(II)、ホウ化ニッケル(II)、ホウ酸ニッケル(II)、次亜リン酸ニッケル(II)、硫酸アンモニウムニッケル(II)、水酸化ニッケル(II)、シクロペンタジエニルニッケル(II)、及びこれらの水和物、並びにこれらの混合物等が挙げられる。

【0135】
0価のNi(0)、2価のNi(II)の化合物としては、合成の容易さ、収率等の観点から、0価のNi(0)の化合物が好ましく、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0)がより好ましい。

【0136】
0価のNi(0)、2価のNi(II)の化合物としては、上記の配位子化合物を事前に配位させた化合物を使用してもよい。

【0137】
遷移金属化合物の使用量は、ニッケル化合物を使用する場合、合成の容易さ、収率等の観点から、原料の一般式(3)で示される化合物1モルに対して、通常、1~20モルが好ましく、2~10モルがより好ましい。

【0138】
本反応において、遷移金属化合物(なかでもニッケル化合物、パラジウム化合物等、特にニッケル化合物)とともに、遷移金属化合物を構成する遷移金属(なかでもニッケル、パラジウム等、特にニッケル)に配位し得る配位子化合物を用いることができる。この配位子化合物としては、上記説明した配位子化合物を採用できる。本工程では、合成の容易さ、収率等の観点から、多座配位子が好ましく、2,2’-ビピリジル、4,4’-(tert-ブチル)ビピリジル等がより好ましく、2,2’-ビピリジルがさらに好ましい。

【0139】
配位子化合物を使用する場合、その使用量は、遷移金属化合物1モルに対して、通常、0.2~5モルが好ましく、0.5~2モルがより好ましい。

【0140】
塩基としては、例えば、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、水素化リチウム等のアルカリ金属ハイドライド;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、ピリジン等の含窒素有機化合物等が挙げられる。なかでも、合成の容易さ、収率等の観点から、アルカリ金属炭酸塩が好ましく、炭酸カリウムがより好ましい。

【0141】
塩基の使用量は、合成の容易さ、収率等の観点から、原料の一般式(3)で示される化合物1モルに対し、2~10モル程度が好ましく、3~7モル程度がより好ましい。

【0142】
用いる反応溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン(DME)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル;酢酸エチル、プロピオン酸エチル等のエステル;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチルピロリドン(NMP)等のアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル;ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。なかでも、遷移金属化合物としてパラジウム化合物を用いる場合は芳香族炭化水素が好ましく、トルエンがより好ましい。また、遷移金属化合物としてニッケル化合物を用いる場合はアミドが好ましく、ジメチルホルムアミド(DMF)がより好ましい。

【0143】
反応雰囲気は、特に限定されないが、不活性ガス雰囲気が好ましく、アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等とし得る。なお、空気雰囲気とすることもできる。

【0144】
反応温度は、通常、0℃~溶媒の沸点の範囲から適宜選択できる。合成の容易さ、収率等の観点から、50~100℃が好ましい。

【0145】
反応時間は特に限定はなく、例えば、1~100時間が例示され、合成の容易さ、収率等の観点から、2~72時間が好ましい。

【0146】
反応終了後は、必要に応じて通常の濾過、濃縮、抽出等の単離手段に供し、必要に応じてカラムクロマトグラフィ、再結晶化等の通常の精製手段に供することにより、反応生成物を単離及び精製することができる。

【0147】
本反応では、一般式(3)で表される化合物がL字型を有しているため、反応点であるハロゲン原子(X)又はボロン酸若しくはそのエステル基(Y)が分子間で近接し易くなり、ホモカップリング反応が効率よく進行して、容易に輪状化合物を得ることができる。その結果、一般式(3)で表される化合物の二量体、三量体、四量体等の多量体からなる輪状化合物を与えることができる。それぞれ、一般式(2)で表される化合物におけるn=2、3、4の輪状化合物に相当する。

【0148】
化合物(1)の合成:
一般式(1)で示されるシクロポリアリーレン化合物(本発明のシクロポリアリーレン化合物)は、一般式(2)で示される化合物を芳香族化させることにより得ることができる。通常、一般式(1)で示されるシクロポリアリーレン化合物は、還元剤及び溶媒の存在下、一般式(2)で表される化合物を還元(具体的には、還元的芳香族化)して製造することができる。

【0149】
還元剤としては、例えば、金属リチウム、金属ナトリウム、金属カリウム、金属マグネシウム、塩化スズ(II)等が挙げられる。なかでも、合成の容易さ、収率等の観点から、金属リチウムが好ましい。なお、還元剤の形状は、特に制限されず、粒状、薄片状、鱗片状等のいずれも採用し得るが、粒状が好ましい。

【0150】
還元剤の使用量は、一般式(2)で表される化合物に対して過剰量とすることが好ましい。具体的には、一般式(2)で表される化合物1質量部に対して、通常2~10質量部が好ましく、3~5質量部がより好ましい。

【0151】
用い得る溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジグライム、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、t?ブチルメチルエーテル(TBME)等のエーテル;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。なかでも、エーテルが好ましく、テトラヒドロフランがより好ましい。反応は無水の条件で実施することが好ましい。

【0152】
反応雰囲気は、特に限定されないが、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等とすることができる。尚、空気雰囲気とすることもできる。

【0153】
反応温度は、通常、-50℃~溶媒の沸点の範囲から適宜選択できる。合成の容易さ、収率等の観点から、0~50℃が好ましい。

【0154】
反応時間は特に限定はなく、例えば、1~48時間が例示され、合成の容易さ、収率等の観点から、2~24時間が好ましい。

【0155】
反応終了後は、必要に応じて通常の濾過、濃縮、抽出等の単離手段に供し、必要に応じてカラムクロマトグラフィ、再結晶化等の通常の精製手段に供することにより、反応生成物を単離及び精製することができる。

【0156】
一般式(1)で表されるシクロポリアリーレン化合物は、nが2以上のリング状となるが、nが奇数の場合には軸不斉(軸性キラリティー)を有する。

【0157】
本発明の製造方法を用いることにより、一般式(1)で表されるシクロポリアリーレン化合物(nが2以上)を簡便に合成することができる。

【0158】
得られた一般式(1)で表されるシクロポリアリーレン化合物は新規な化合物であり、非特許文献1~3に記載されるシクロパラフェニレン化合物と比較して有機溶媒への高い溶解度、狭いHOMO-LOMOギャップ等を有している。そのため、電子材料、発光材料等に好適に用いることができる。

【0159】
また、一般式(1)で表されるシクロポリアリーレン化合物は、均一な径を有するカーボンナノチューブ又はカーボンナノベルトを選択的に合成するための、安定な鋳型(template)又は足場(scaffold)として有用と考えられる。
【実施例】
【0160】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
【実施例】
【0161】
特に断りのない限り、全ての反応は、標準的な真空ライン技法を用いて、乾燥ガラス容器中で、アルゴン雰囲気下に行い、乾燥溶媒を含む全ての材料は、商業的供給業者から入手し、精製することなく用いた。全ての処理及び精製手順は、空気中で試薬グレードの溶媒を用いて行った。リサイクル分取ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)は、溶離液としてクロロホルムを用いてJAIGEL-2H/JAIGEL-2Hカラムを備えたJAI LC-92XX IIシリーズを用いて行った。薄層クロマトグラフィー(TLC)は、E. Merckシリカゲル60 F254プレコートプレート(0.25 mm)を用いて行った。クロマトグラムは、UVランプ(254 nm及び365 nm)で分析した。分取薄層クロマトグラフィー(PTLC)は、和光ゲル(登録商標)B5-Fシリカコートプレート(0.75 mm)を用いて行った。マススペクトルはJEOL JMS700(高速原子衝撃質量分析法、FAB-MS)及びBRUKER DALTONICS ultraflex III(MALDI-TOF-MS)から得た。核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、JEOL A-400(1H 400 MHz)分光計又はJEOL JNM-ECA-600(1H 600 MHz)分光計で記録した。1H NMRの化学シフトはCHCl3(δ7.26 ppm)及びCHDCl2(δ5.32 ppm)の相対的な百万分率(ppm)で表した。データは、化学シフト、多重度(s =シングレット、d =ダブレット、dd =ダブレットのダブレット、ddd =ダブレットのダブレットのダブレット、t =トリプレット、m=マルチプレット)、結合定数(Hz)、及び統合の順に報告する。
【実施例】
【0162】
合成例1:化合物1-Brの合成
【実施例】
【0163】
【化18】
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【実施例】
【0164】
[式中、Meはメチル基;以下同様である。]
化合物1-Brは、非特許文献4に記載の方法にしたがって合成した。
【実施例】
【0165】
合成例2:化合物1の合成
【実施例】
【0166】
【化19】
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【実施例】
【0167】
[式中、B(pin)はピナコレートボリル基;以下同様である。]
シュレンクチューブに撹拌子を入れ、合成例1で得た化合物1—Br(281 mg, 469μmol)、ビスピナコレートジボロン(B2pin2; 299 mg, 1.17 mmol)、(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)ジクロロパラジウム(II) (PdCl2(dppf); 10.1 mg, 14.1μmol)、Ag2O(275.6 mg, 2.81 mmol)、及び乾燥THF(5 mL)を添加した。得られた混合物を90℃で5時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応混合物をCHCl3(10 mL)で3回抽出し、合わせた有機相をNa2SO4で乾燥し、減圧下に濃縮した。粗生成物を分取リサイクルゲルパーミエーションクロマトグラフィー(CHCl3)で精製し、化合物1を無色固体として得た(209 mg, 64%)。
1H NMR (270 MHz, CDCl3) δ 1.42 (s, 24H), 3.26 (s, 6H), 6.70 (s, 2H), 7.35-7.47 (m, 6H), 7.57 (dd, J = 8 Hz, J = 7 Hz, 2H), 7.95 (d, J = 7 Hz, 2H), 8.60 (brs, 2H), 8.81 (dd, J = 8 Hz, J = 1 Hz, 2H)。
【実施例】
【0168】
合成例3:化合物V5の合成
【実施例】
【0169】
【化20】
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【実施例】
【0170】
[式中、Phはフェニル基;Etはエチル基;以下同様である。]
100 mLの丸底フラスコに撹拌子を入れ、合成例2で得た化合物1(462 mg, 0.72 mmol)、1,4-ジブロモナフタレン(化合物2; 1.19 g, 4.17 mmol)、及びトルエン(30.6 mL)を添加した。このフラスコに、K2CO3(487 mg, 3.52 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh3)4; 41.9 mg, 5 mol%)、水(15.3 mL)、及びエタノール(EtOH; 1.53 mL)を添加した。得られた混合物を90℃で21時間撹拌した。室温まで冷却した後、混合物を酢酸エチル(50 mL)で3回抽出し、Na2SO4で乾燥し、減圧下に濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=20: 1)で精製し、化合物V5を白色固体として得た(393 mg, 63%)。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 3.41 (s, 6H), 3.42 (s, 3H), 3.43 (s, 3H), 6.90-6.98 (m, 4H), 7.16-7.26 (m, 20H), 7.30-7.36 (m, 12H), 7.54-7.57 (m, 8H), 7.82-7.86 (m, 8H), 8.29-8.34 (m, 4H), 8.98-9.02 (m, 4H); LRMS (FAB) m/z calcd for C52H36Br2O2[M]+: 850.1, found: 849.7。
【実施例】
【0171】
合成例4:化合物V4の合成
【実施例】
【0172】
【化21】
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【実施例】
【0173】
50 mLの丸底フラスコに撹拌子を入れ、合成例2で得た化合物1(200 mg, 0.31 mmol)、1,4-ジブロモナフタレン(化合物2; 560 mg, 1.96 mmol)、及びトルエン(14 mL)を添加した。このフラスコに、K2CO3(225 mg, 1.63 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh3)4; 36.0 mg, 5 mol%)、水(6.8 mL)、及びエタノール(EtOH; 0.7 mL)を添加した。得られた混合物を90℃で21時間撹拌した。室温まで冷却した後、混合物を酢酸エチル(50 mL)で3回抽出し、Na2SO4で乾燥し、減圧下に濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=20: 1)で精製し、化合物V4を白色固体として得た(55.7 mg, 23%)。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 1.37-1.38 (s, 12H), 3.38 (s, 3H), 3.45 (s, 3H), 6.75-6.79(m, 1H), 6.94-7.00 (m, 1H), 7.11-7.15 (m, 1H), 7.22-7.43 (m, 7H), 7.43-7.63 (m, 7H), 7.79-7.81 (m, 1H), 7.84-7.89 (m, 2H), 8.32-8.36 (d, 1H), 8.75-8.81 (m, 2H) 9.01-9.04 (d, 1H); LRMS (FAB) m/z calcd for C48H42BBrO4[M]+: 772.2, found: 772.0。
【実施例】
【0174】
実施例1:[15]シクロナフチレン([15]CN)の合成
【実施例】
【0175】
【化22】
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【実施例】
【0176】
[式中、codは1,5-シクロオクタジエン;bpyはビピリジル;DMFはジメチルホルムアミド;THFはテトラヒドロフラン;以下同様である。]
4個のシュレンクテューブに撹拌子を入れ、合成例3で得た化合物V5(100 mg, 117μmol)、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0)(Ni(cod)2; 161.3 mg, 585μmol)、及び2,2’-ビピリジル(2,2’-bpy; 91.6 mg, 585μmol)を添加した。シリンジを介してセプタムを通して乾燥DMF(20 mL)を添加した後、オーブンドライしアルゴンバルーンを備えたコンデンサーによりセプタムを除去した。得られた混合物を90℃で60時間撹拌した。4個のシュレンクチューブの反応混合物を合わせた後、混合物にブライン(約100 mL)を添加した。混合物を酢酸エチル(100 mL)で3回抽出し、Na2SO4で乾燥し、減圧下に濃縮した。粗生成物を分取リサイクルゲルパーミエーションクロマトグラフィー(CHCl3)に供し、その後、PTLC(CH2Cl2/ヘキサン=2: 1)で精製し、輪状三量体を含む混合物(22.8 mg)を白色固体として得た。
【実施例】
【0177】
次に、30 mLのフラスコにガラスコートした撹拌子を入れ、真空下に乾燥し、室温まで冷却した後にアルゴンを充填した。グローブボックス中で、このフラスコに、上記工程で得た混合物(8.8 mg)、粒状リチウム(36.8 mg)、及び乾燥THF(3 mL)を添加した。反応混合物を室温で48時間撹拌した。粗生成物をヘキサンで希釈し、メタノールでクエンチした。反応混合物中の溶媒を蒸発させた後、短いシリカゲルパッド(CHCl3)に通し、減圧下に濃縮した。粗生成物をPTLC(CH2Cl2/ヘキサン=1: 1)で精製し、[15]CNを黄色固体として得た(0.4 mg, 総収率0.35%)。
1H NMR (600 MHz, CD2Cl2) δ 7.36-7.38 (s, 30H), 7.60-7.62 (s, 30H), 8.40-8.45 (s, 30H); HRMS (MALDI) m/z calcd for C150H90 [M]+:1890.7, found: 1890.0。
【実施例】
【0178】
実施例2:[10]シクロナフチレン([10]CN)の合成
【実施例】
【0179】
【化23】
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【実施例】
【0180】
4個のシュレンクテューブに撹拌子を入れ、合成例3で得た化合物V5(100 mg, 117μmol)、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0)(Ni(cod)2; 71.0 mg, 258μmol)、及び2,2’-ビピリジル(2,2’-bpy; 40.3 mg, 258μmol)を添加した。シリンジを介してセプタムを通して乾燥DMF(100 mL)を添加した後、オーブンドライしアルゴンバルーンを備えたコンデンサーによりセプタムを除去した。得られた混合物を90℃で60時間撹拌した。4個のシュレンクチューブの反応混合物を合わせた後、混合物にブライン(約100 mL)を添加した。混合物を酢酸エチル(100 mL)で3回抽出し、Na2SO4で乾燥し、減圧下に濃縮した。粗生成物を分取リサイクルゲルパーミエーションクロマトグラフィー(CHCl3)に供し、その後、PTLC(CH2Cl2/ヘキサン=2: 1)で精製し、輪状二量体を含む混合物(19 mg)を白色固体として得た。
【実施例】
【0181】
次に、30 mLのフラスコにガラスコートした撹拌子を入れ、真空下に乾燥し、室温まで冷却した後にアルゴンを充填した。グローブボックス中で、このフラスコに、上記工程で得た混合物(19 mg)、粒状リチウム(31 mg)、及び乾燥THF(3 mL)を添加した。反応混合物を室温で6時間撹拌した。粗生成物をヘキサンで希釈し、メタノールでクエンチした。反応混合物中の溶媒を蒸発させた後、短いシリカゲルパッド(CHCl3)に通し、減圧下に濃縮した。粗生成物をPTLC(CH2Cl2/ヘキサン=1: 1)で精製し、[10]CNを黄色固体として得た(0.28 mg, 総収率0.38%)。
1H NMR (600 MHz, CD2Cl2) δ 7.08 (s, 20H), 7.54-7.55 (dd, 20H), 8.44-8.46 (dd, 20H); HRMS (MALDI) m/z calcd for C100H60 [M]+:1260.5, found: 1260.5。
【実施例】
【0182】
実施例3:[8]シクロナフチレン([8]CN)、[12]シクロナフチレン([12]CN)、及び[16]シクロナフチレン([16]CN)の合成
【実施例】
【0183】
【化24】
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【実施例】
【0184】
50 mLの丸底フラスコに撹拌子を入れ、合成例4で得た化合物V4(250.8 mg, 0.32 mmol)、及びトルエン(13 mL)を添加した。このフラスコに、K2CO3(224 mg, 1.62 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh3)4; 44 mg, 12 mol%)、水(9 mL)、及びエタノール(EtOH; 1 mL)を添加した。得られた混合物を90℃で40.5時間撹拌した。室温まで冷却した後、混合物を酢酸エチル(50 mL)で3回抽出し、Na2SO4で乾燥し、減圧下に濃縮した。粗生成物を分取リサイクルゲルパーミエーションクロマトグラフィー(CHCl3)に供し、その後、PTLC(CH2Cl2/ヘキサン=2: 1)で精製し、輪状四量体を含む混合物(12 mg)を白色固体として得た。また、輪状三量体を含む混合物(22 mg)、輪状二量体を含む混合物(5.6 mg)も得た。
【実施例】
【0185】
次に、30 mLのフラスコにガラスコートした撹拌子を入れ、真空下に乾燥し、室温まで冷却した後にアルゴンを充填した。グローブボックス中で、このフラスコに、上記工程で得た輪状二量体を含む混合物、粒状リチウム(16 mg)、及び乾燥THF(3 mL)を添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌した。粗生成物をヘキサンで希釈し、メタノールでクエンチした。反応混合物中の溶媒を蒸発させた後、短いシリカゲルパッド(CHCl3)に通し、減圧下に濃縮した。粗生成物をPTLC(CH2Cl2/ヘキサン=1: 1)で精製し、[8]CNを得た(0.7 mg, 総収率0.41%)。
【実施例】
【0186】
また、上記工程で得た輪状二量体を含む混合物の代わりに上記工程で得た輪状三量体を含む混合物を使用すること以外は同様に処理を行い、[12]CNを得た(1.0 mg, 総収率0.58%)。さらに、上記工程で得た輪状二量体を含む混合物の代わりに上記工程で得た輪状四量体を含む混合物を使用すること以外は同様に処理を行い、[16]CNを得た(1.4 mg, 総収率0.81%)。
[8]CN:
1H NMR (600 MHz, CD2Cl2) δ 7.00 (s, 16H), 7.57-7.58 (dd, 16H), 8.50-8.52 (dd, 16H); HRMS (MALDI) m/z calcd for C80H48 [M]+:1008.4, found: 1008.3.
[12]CN:
1H NMR (600 MHz, CD2Cl2) δ 7.26 (s, 24H), 7.60-7.61 (dd, 24H), 8.46-8.47 (dd, 24H); HRMS (MALDI) m/z calcd for C120H72 [M]+:1512.6, found: 1512.6。
[16]CN
1H NMR (600 MHz, CD2Cl2) δ 7.40 (s, 32H), 7.59-7.61 (dd, 32H), 8.32-8.34 (dd, 32H); HRMS (MALDI) m/z calcd for C160H96 [M]+:2016.8, found: 2016.9。