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明細書 :電磁ホーン型電子スピン共鳴装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5434492号 (P5434492)
公開番号 特開2011-099814 (P2011-099814A)
登録日 平成25年12月20日(2013.12.20)
発行日 平成26年3月5日(2014.3.5)
公開日 平成23年5月19日(2011.5.19)
発明の名称または考案の名称 電磁ホーン型電子スピン共鳴装置
国際特許分類 G01N  24/10        (2006.01)
FI G01N 24/10 510D
G01N 24/10 510L
請求項の数または発明の数 3
全頁数 14
出願番号 特願2009-255965 (P2009-255965)
出願日 平成21年11月9日(2009.11.9)
審査請求日 平成24年10月25日(2012.10.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
発明者または考案者 【氏名】小林 正
【氏名】原 孝文
審査官 【審査官】藤田 都志行
参考文献・文献 特開平5-157821(JP,A)
特開2000-65910(JP,A)
小林 正、氏家 誠司、大賀 恭、長屋 智之,「マイクロ波反射方式電磁ホーン型ESR装置の開発・実用化」,大分大学VBL年報,2007年,No.8,p. 129-136
小林 正,「電子スピン共鳴(ESR)・電子スピン共鳴イメージング(ESRI)の動向と基礎・応用科学分野及び学際分野で,九州大学中央分析センターニュース,2007年 7月30日,Vol. 26, No. 3,p. 1-6
小林 正、他6名,「電磁ホーン型電子スピン共鳴(ESR)装置の開発とESR応用計測」,日本AEM学会誌,2009年 3月10日,Vol.17 , No. 1,p. 138-143
野手 翔太、秋田 純一、北川 章夫,「マイクロ電子スピン共鳴センサの基礎検討」,映像情報メディア学会技術報告,2007年 6月21日,Vol. 31, No. 28,p. 13-16
調査した分野 G01N 24/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
マイクロ波発信装置からのマイクロ波をマイクロ波導波管のメインアーム(01)を介して試料載置台(14)上の試料(14a)に放射する電磁ホーン(12)、
試料載置台(14)の周囲に設けた掃引磁場印加装置(230)(電磁石)と変調分光用の変調装置(200)、
電磁ホーン(12)から試料(14a)を介してのマイクロ波を再び試料(14a)を介して電磁ホーン(12)に反射するマイクロ波反射板(15)、
前記マイクロ波導波管のメインアーム(01)から分岐したリファレンスアーム(02)からの参照用の発信マイクロ波と、マイクロ波反射板から試料と電磁ホーン(12)とメインアーム(01)を介しての反射マイクロ波をミキサー(42)に導入して、試料中の不対電子のスピンが反転する磁気共鳴時にマイクロ波エネルギーを試料が吸収した際のマイクロ波パワーの極微量変化を検出し記録する差動増幅装置(43)・ロックイン増幅装置(44),記録装置(45)とからなる電磁ホーン型電子スピン共鳴装置において、
前記マイクロ波発振装置に、マイクロ波周波数を可変掃引するスイープオシレータ(37)とこのスイープオシレータ(37)からの周波数掃引マイクロ波を増幅する広帯域アンプ(36)を設けて掃引磁場印加装置(電磁石)の磁場を固定して周波数掃引マイクロ波を試料に照射し電子スピン共鳴(ESR)スペクトルを計測することを特徴とする電磁ホーン型電子スピン共鳴装置。
【請求項2】
マイクロ波発信装置からのマイクロ波をマイクロ波導波管のメインアーム(01)を介して試料載置台(14)上の試料(14a)に放射する電磁ホーン(12)、
試料載置台(14)の周囲に設けた掃引磁場印加装置(230)(電磁石)と変調分光用の変調装置(200)、
電磁ホーン(12)から試料(14a)を介してのマイクロ波を再び試料(14a)を介して電磁ホーン(12)に反射するマイクロ波反射板(15)、
前記マイクロ波導波管のメインアーム(01)から分岐したリファレンスアーム(02)からの参照用の発信マイクロ波と、マイクロ波反射板から試料と電磁ホーン(12)とメインアーム(01)を介しての反射マイクロ波をミキサー(42)に導入して、試料中の不対電子のスピンが反転する磁気共鳴時にマイクロ波エネルギーを試料が吸収した際のマイクロ波パワーの極微量変化を検出し記録する差動増幅装置(43)・ロックイン増幅装置(44),記録装置(45)とからなる電磁ホーン型電子スピン共鳴装置において、
前記電磁ホーンアンテナ装置の電磁ホーン(12)の表面(射出口)にマイクロ波放射凸面型放射レンズ(13)を設け、前記マイクロ波反射板(15)を凹面マイクロ波反射板(15a)にし、前記マイクロ波発振装置に、マイクロ波周波数を可変掃引するスイープオシレータ(37)とこのスイープオシレータ(37)からの周波数掃引マイクロ波を増幅する広帯域アンプ(36)を設けて掃引磁場印加装置(電磁石)の磁場を固定して周波数掃引マイクロ波を試料に照射し電子スピン共鳴(ESR)スペクトルを計測することを特徴とする電磁ホーン型電子スピン共鳴装置。
【請求項3】
マイクロ波発信装置からのマイクロ波をマイクロ波導波管のメインアーム(01)を介して試料載置台(14)上の試料(14a)に放射する電磁ホーン(12)、
試料載置台(14)の周囲に設けた掃引磁場印加装置(230)(電磁石)と変調分光用の変調装置(200)、
電磁ホーン(12)から試料(14a)を介してのマイクロ波を再び試料(14a)を介して電磁ホーン(12)に反射するマイクロ波反射板(15)、
前記マイクロ波導波管のメインアーム(01)から分岐したリファレンスアーム(02)からの参照用の発信マイクロ波と、マイクロ波反射板から試料と電磁ホーン(12)とメインアーム(01)を介しての反射マイクロ波をミキサー(42)に導入して、試料中の不対電子のスピンが反転する磁気共鳴時にマイクロ波エネルギーを試料が吸収した際のマイクロ波パワーの極微量変化を検出し記録する差動増幅装置(43)・ロックイン増幅装置(44),記録装置(45)とからなる電磁ホーン型電子スピン共鳴装置において、
前記マイクロ波発振装置に、マイクロ波周波数を可変掃引するスイープオシレータ(37)とこのスイープオシレータ(37)からの周波数掃引マイクロ波を増幅する広帯域アンプ(36)を設けて掃引磁場印加装置(電磁石)の磁場を固定して周波数掃引マイクロ波を試料に照射し電子スピン共鳴(ESR)スペクトルを計測し、
前記電磁ホーンアンテナ装置の電磁ホーンの表面(射出口)にマイクロ波放射凸面型放射レンズ(13)を設け、前記マイクロ波反射板(15)を凹面マイクロ波反射板(15a)にし、
前記前記マイクロ波凹面反射型のマイクロ波反射板(15)と試料載置台(14)に電磁ホーン方向への位置調節装置(RP1,RP2)を設け、
試料(14a)に放射する放射マイクロ波の出力を表示・記録する第一パワーモニター(22)とリファレンスアーム(02)のミキサー(42)直前でのマイクロ波の出力を表示・記録する第二パワーモニター(20)と凹面反射板(15a)から試料(14a)-電磁ホーン(12)-サーキュレーター(6)を介した後の反射マイクロ波の出力を表示・記録する第三パワーモニター(21)を設け、これらパワーモニターからのマイクロ波の出力測定値を導入して、第三パワーモニター(21)からのマイクロ波出力を、あるバランス用設定値になるように前記位置調節装置を調節して第二パワーモニター(20)からのマイクロ波出力にバランスさせる制御装置を設けたことを特徴とする電磁ホーン型電子スピン共鳴装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ホーン型ESR装置の感度/精度の改良、操作性とESR応用計測性を大幅に拡大(多目的性)した数GHzの広範囲周波数掃引方式の電磁ホーン型電子スピン共鳴装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、周波数掃引方式でなく、磁場掃引方式に限っての事例であるが、電磁ホーン型電子スピン共鳴装置の開発の先達は1983年大矢氏によるX-バンド電磁ホーン型ESRの開発事例と,1991年に相馬純吉・原秀元両氏によるK-バンド電磁ホーン型ESRの開発事例のみである。
これに基く特許は、下記の特許文献1から特許文献4にて紹介されている。また最近では、発明者らが開発し非特許文献1により次に紹介する電磁ホーン型電子スピン共鳴装置が紹介され注目されている。
非特許文献1では、共振器型ESRでは、ESR計測時に高いQ値の維持が必要な為,少量、小型で誘電ロスの小さい試料でしか測定できなかった。このため、誘電ロスの大きな試料(含水試料、生体試料),導電性試料,金属含有試料,大型試料のESR測定は困難または不可能であり,多くの制約があった。
この問題を解決するために,第1段階として、マイクロ波透過方式電磁ホーン型ESRの場合にはマイクロ波出力側と入力側の2つの電磁ホーン(アンテナ)間の空間を試料セルとして採用し,第2段階としては、マイクロ波反射方式電磁ホーン型ESRの場合には電磁ホーン(アンテナ)の開口部とマイクロ波反射板間の空間を試料セルとして採用し,マイクロ波定在波ではなくマイクロ波進行波を用い,共振器型ESRのもつ制約・困難を悉く改善したマイクロ波透過方式及び反射方式電磁ホーン型ESRを稼働させ,感度的にも球形または円筒形共振器の高Q値をもつ空洞共振器型ESRには及ばないものの、それに近づけるためにこの3年間で3桁ほど測定感度の改善を行い、初めて電磁ホーン型ESRとして実用のレベルにまで改良を行ってきた。
【0003】
<本発明者等が開発し発表した電磁ホーン型電子スピン共鳴装置>
電磁ホーン型電子スピン共鳴装置であるX-band反射方式電磁ホーン型ESR装置のマイクロ波立体回路のブロック線図を図3に示す。
図3において、このX-band反射方式電磁ホーン型ESR装置は、高周波域周波数のマイクロ波を発振するマイクロ波発振器001と、設定出力のマイクロ波mw0を減衰器ATT1とサーキュレータcirculatorを介して試料sampleに放射する電磁ホーンhornと、試料sampleへの磁場変調装置002と、試料sampleを介したマイクロ波mw1を再び試料sampleを介して電磁ホーンhornに反射するマイクロ波反射板003と、設定出力のマイクロ波mw0と電磁ホーンhornからの反射マイクロ波mw2を導入し、反射マイクロ波mw2と逆の位相を持ち強度の等しい逆反射マイクロ波をつくり反射マイクロ波を逆反射マイクロ波で打ち消しバランスさせ、ある磁場で電子スピンが│-1/2>状態から│1/2>状態に遷移する所謂磁気共鳴によるスピン反転時に試料がその分だけマイクロ波エネルギーを吸収した際のアンバランスによるマイクロ波の極微量変化を増幅してESRスペクトルとして記録するマイクロ波処理回路004とからなる。
マイクロ波処理回路004において、WG-N,WG-SMA:同軸導波管交換器、ATT2:減衰器 Magic tee:マジックティー、Phase shifter:位相器、AMP:プリアンプとロックインアンプを各々示す。図中、ATT3は減衰器である。
【0004】
この反射方式電磁ホーン型ESR装置の電磁ホーンは、例えば断面が方形の導波管であれば、開口端の開ロ面積が徐々に広くなるよう、底面が開放された角錐台の形状又は円錐台の形状のホーンを取り付けたものである。原理としては、導波管の内部を伝送された電磁波が、開ロ端反射することなく、空間に放射されるための最も単純な形と言える。電磁ホーンの長さは長ければ長いほど指向性は鋭くなる。角錐・円錐をホーンの形の基準とした場合、その頂角を中心角と呼ぶ。これは指向性を鋭くするための最適値がある。
一方マイクロ波反射板の反射面は平坦面が一般的で中には立体的形状が定かでないが側面から見て湾曲したものである。
このように、電磁ホーンのマイクロ波放射面は平坦面であり、マイクロ波反射板の反射面は平坦面かそれに類似のものであるため、何れもマイクロ波の収斂/集束が好ましくなく、ノイズが多く、感度も満足するものでなかった。

【特許文献1】特公平3-78945号公報(発信受信電磁ホーンに反射板を対向配置させたタイプの基本)
【特許文献2】特公平3-78591号公報(発信電磁ホーンと受信電磁ホーンタイプの基本)
【特許文献3】特公平3-78944号公報(発信電磁ホーンと受信電磁ホーンの交差対向配置の基本)
【特許文献4】特公平3-78946号公報(受信電磁ホーンと反射板が無く試料からの反射マイクロ波を検出するタイプ
【非特許文献1】「電磁ホーン型電子スピン共鳴(ESR)装置の開発とESR応用計測」小林正,桑田賢一・・・日本AEM学会誌Vol.17,No.1,2009年pp138-143
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電磁ホーンのマイクロ波放射面と、マイクロ波反射板の反射面を改良してマイクロ波の収斂/集束を良好に維持し、ノイズを激減させてESR測定感度を所望の感度(2,3桁向上)にするとともに、試料載置台に載せた試料のサイズ、質量、形状、成分、状態等に応じた試料載置台とマイクロ波反射板の相対位置関係を最適に調節してESR測定感度をより高めると共に操作性とESR応用計測性を大幅に拡大(多目的性)した数GHzの広範囲周波数掃引方式の電磁ホーン型電子スピン共鳴装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を満足する本発明の特徴とするところは、以下に記載の(1)~(3)のとおりである。
【0007】
(1)、マイクロ波発信装置からのマイクロ波をマイクロ波導波管のメインアーム(01)を介して試料載置台(14)上の試料(14a)に放射する電磁ホーン(12)、
試料載置台(14)の周囲に設けた掃引磁場印加装置(230)(電磁石)と変調分光用の変調装置(200)、
電磁ホーン(12)から試料(14a)を介してのマイクロ波を再び試料(14a)を介して電磁ホーン(12)に反射するマイクロ波反射板(15)、
前記マイクロ波導波管のメインアーム(01)から分岐したリファレンスアーム(02)からの参照用の発信マイクロ波と、マイクロ波反射板から試料と電磁ホーン(12)とメインアーム(01)を介しての反射マイクロ波をミキサー(42)に導入して、試料中の不対電子のスピンが反転する磁気共鳴時にマイクロ波エネルギーを試料が吸収した際のマイクロ波パワーの極微量変化を検出し記録する差動増幅装置(43)・ロックイン増幅装置(44),記録装置(45)とからなる電磁ホーン型電子スピン共鳴装置において、
前記マイクロ波発振装置に、マイクロ波周波数を可変掃引するスイープオシレータ(37)とこのスイープオシレータ(37)からの周波数掃引マイクロ波を増幅する広帯域アンプ(36)を設けて掃引磁場印加装置(電磁石)の磁場を固定して周波数掃引マイクロ波を試料に照射し電子スピン共鳴(ESR)スペクトルを計測することを特徴とする電磁ホーン型電子スピン共鳴装置。
【0008】
(2)、マイクロ波発信装置からのマイクロ波をマイクロ波導波管のメインアーム(01)を介して試料載置台(14)上の試料(14a)に放射する電磁ホーン(12)、
試料載置台(14)の周囲に設けた掃引磁場印加装置(230)(電磁石)と変調分光用の変調装置(200)、
電磁ホーン(12)から試料(14a)を介してのマイクロ波を再び試料(14a)を介して電磁ホーン(12)に反射するマイクロ波反射板(15)、
前記マイクロ波導波管のメインアーム(01)から分岐したリファレンスアーム(02)からの参照用の発信マイクロ波と、マイクロ波反射板から試料と電磁ホーン(12)とメインアーム(01)を介しての反射マイクロ波をミキサー(42)に導入して、試料中の不対電子のスピンが反転する磁気共鳴時にマイクロ波エネルギーを試料が吸収した際のマイクロ波パワーの極微量変化を検出し記録する差動増幅装置(43)・ロックイン増幅装置(44),記録装置(45)とからなる電磁ホーン型電子スピン共鳴装置において、
前記電磁ホーンアンテナ装置の電磁ホーン(12)の表面(射出口)にマイクロ波放射凸面型放射レンズ(13)を設け、前記マイクロ波反射板(15)を例えば放物凹面、球凹面、平面組み合わせ凹面、湾曲面組み合わせ凹面、楕円凹面等の凹面とした凹面マイクロ波反射板(15a)にし、前記マイクロ波発振装置に、マイクロ波周波数を可変掃引するスイープオシレータ(37)とこのスイープオシレータ(37)からの周波数掃引マイクロ波を増幅する広帯域アンプ(36)を設けて掃引磁場印加装置(電磁石)の磁場を固定して周波数掃引マイクロ波を試料に照射し電子スピン共鳴(ESR)スペクトルを計測することを特徴とする電磁ホーン型電子スピン共鳴装置。
【0009】
(3)、マイクロ波発信装置からのマイクロ波をマイクロ波導波管のメインアーム(01)を介して試料載置台(14)上の試料(14a)に放射する電磁ホーン(12)、
試料載置台(14)の周囲に設けた掃引磁場印加装置(230)(電磁石)と変調分光用の変調装置(200)、
電磁ホーン(12)から試料(14a)を介してのマイクロ波を再び試料(14a)を介して電磁ホーン(12)に反射するマイクロ波反射板(15)、
前記マイクロ波導波管のメインアーム(01)から分岐したリファレンスアーム(02)からの参照用の発信マイクロ波と、マイクロ波反射板から試料と電磁ホーン(12)とメインアーム(01)を介しての反射マイクロ波をミキサー(42)に導入して、試料中の不対電子のスピンが反転する磁気共鳴時にマイクロ波エネルギーを試料が吸収した際のマイクロ波パワーの極微量変化を検出し記録する差動増幅装置(43)・ロックイン増幅装置(44),記録装置(45)とからなる電磁ホーン型電子スピン共鳴装置において、
前記マイクロ波発振装置に、マイクロ波周波数を可変掃引するスイープオシレータ(37)とこのスイープオシレータ(37)からの周波数掃引マイクロ波を増幅する広帯域アンプ(36)を設けて掃引磁場印加装置(電磁石)の磁場を固定して周波数掃引マイクロ波を試料に照射し電子スピン共鳴(ESR)スペクトルを計測し、
前記電磁ホーンアンテナ装置の電磁ホーンの表面(射出口)にマイクロ波放射凸面型放射レンズ(13)を設け、前記マイクロ波反射板(15)を凹面マイクロ波反射板(15a)にし、
前記マイクロ波凹面反射型のマイクロ波反射板(15)と試料載置台(14)に電磁ホーン方向への位置調節装置(RP1,RP2)を設け、
試料(14a)に放射する放射マイクロ波の出力を表示・記録する第一パワーモニター(22)とリファレンスアーム(02)のミキサー(42)直前でのマイクロ波の出力を表示・記録する第二パワーモニター(20)と凹面反射板(15a)から試料(14a)-電磁ホーン(12)-サーキュレーター(6)を介した後の反射マイクロ波の出力を表示・記録する第三パワーモニター(21)を設け、これらパワーモニターからのマイクロ波の出力測定値を導入して、第三パワーモニター(21)からのマイクロ波出力を、あるバランス用設定値になるように前記位置調節装置を調節して第二パワーモニター(20)からのマイクロ波出力にバランスさせる制御装置を設けたことを特徴とする電磁ホーン型電子スピン共鳴装置。
【発明の効果】
【0010】
マイクロ波発振装置において、前記マイクロ波発振器はYIGスイープオシレータで8~12.4GHz周波数掃引して1W級の広帯域アンプでマイクロ波を増幅してこれを磁場変調(もしくは周波数変調)により大幅に測定感度を向上させたことによる作用効果は次のとおりである。
【0011】
本発明は、磁場掃引型ESRでないので、ゼーマン効果を起こすための静磁場印加用の均一固定磁場発生用の磁石をネオマックス等の希土類磁石を用いて軽量・小型化が可能で、安価に製造できると共に大型試料も測定可能な小型化均一磁場発生用固定磁石及び小型化磁場掃引仕様電磁石の採用を容易に可能とするものである。
このように従来型の共振器型ESRでは測定困難/不可能な大型試料の非破壊検査や大型生体試料等の含水性で誘電ロスの大きな試料でも、電磁ホーン型ESR装置では測定可能で、電磁ホーン型ESR応用計測法の道が大きく開けた。
今後、a,ダイヤモンドアンビルによる超高圧静水圧下でのESR計測(静水圧による結晶の構造相転移の研究等)、b,発明者がかって共振器型ESR用に開発した2電源Zupancic型MRIコイルとアンチ・ヘルムホルツコイルを設置した3次元電磁ホーン型ESRイメージング装置(ESR-CT装置)、c,電磁ホーン型cwESR装置のパルスESR装置化、d,走査型トンネル分光装置(STS)及び走査型トンネル顕微鏡(STM)との併用計測・相補的計測が可能となる。(HOMOとLUMOの境界のフェルミ(Fermi)面での電子状態の変化及びバンド構造の研究等に応用)等の高度なESR応用計測研究を可能とする。
【0012】
1.電磁ホーンの電磁ホーンの表面に凸面型放射レンズを設け、マイクロ波反射板を凹面マイクロ波反射板にすることにより、マイクロ波を収斂(集光)させてESR測定感度を高位に安定させる。凸面型放射レンズの表面にはテフロン(登録商標)を被覆することにより該ESR測定感度をより高位に安定させることができる。
【0013】
2.マイクロ波の凸面型放射レンズと凹面マイクロ波反射板との間の試料載置台と、凹面マイクロ波反射板とをマイクロ波進行方向に微調移動可能にして、その位置調節装置を設けると共にマイクロ波パワーモニターをマイクロ波立体回路の数ヶ所に設けてここからのマイクロ波出力をモニターしながら、測定感度が最高になる試料載置台上の試料位置とマイクロ波反射板の位置を最適の位置に自動或いは手動で調節設定する。
【0014】
3.磁場掃引仕様の場合でも、周波数掃引の場合でも、同一条件で繰り返し積算掃引を行い、S/N比を改善して、ひいては測定感度の向上ができるようにした作用効果。
磁場掃引の場合でのESRスペクトルの積算でも、今回の新規な周波数掃引の場合でのESRスペクトルの積算の場合でも同様にESRスペクトルの積算に成功した。周波数掃引方式電磁ホーン型ESR装置の場合に、実際にCaCO3(方解石)単結晶中の不純物Mn(II)イオンのESRスペクトルの場合で、固定磁場(磁束密度)335.30mTで、8.5GHzから10.5GHz間の50回の周波数掃引仕様ESR積算スペクトルの計測に成功した。その他、ESR用標準物質DPPH及び5ccのTEMPOL水溶液の周波数掃引方式ESRスペクトルの計測に成功した。
【0015】
4.ESRスペクトルの線幅が大きな不対電子センターの場合には、磁場変調コイルの出力を上げて高出力で磁場変調をかけてESR測定感度を大幅に改善できる作用効果。
大出力の磁場変調用増幅器を設置して、100kHzの交流電流を大幅増幅し、かつ当該増幅器にインピーダンス・マッチングした最適直径・巻き数の変調コイルを作製して、効率よく試料に大きな磁場変調をかけ、大幅にESR測定感度を改善できるようにした。
なおラジカルの一部には非常に線幅の小さなシャープなESRスペクトルを呈するものもあり、この場合は大きな磁場変調(オーバーモジュレーション)をかけるとESRスペクトルの線形の変形に加え、超微細構造(hfs)相互作用で複数本のESRスペクトルを持つ場合には、オーバーモジュレーションのためにスペクトル線数の減少等がおこる。この場合でも最初にESRスペクトルが存在するか、しないか(試料中に不対電子センターが存在するか、しないか)を確かめるのが重要で、変調磁場高出力下でESR測定を行い、不対電子センターの存在の有無を確かめる。その後に磁場変調コイルの出力を徐々に下げて、適正なESRスペクトルが得られるように調整する。また飽和現象を避けるために、マイクロ波出力値を減少調節することも正確なESRスペクトルを得るために重要である。
【0016】
5.磁場掃引の場合は電磁石のヨークやポールピースの磁気ヒステリシスのために高速磁場掃引ができないが、周波数掃引では高速周波数掃引が可能となり、ESR計測のスピードアップが可能となる作用効果。
【0017】
6.磁場掃引の場合のマイクロ波固定発振器のガン発振器、及び今回の磁場固定で周波数掃引の場合のマイクロ波掃引発振器のYIG周波数掃引発振器(スイープオシレータ)は数mW~数十mWの出力の発振器を大出力マイクロ波増幅器を用いて、最大1Wまで出力できる仕様にした作用効果。
この大出力のマイクロ波を用いて、誘電ロスの大きな水溶液試料やマイクロ波吸収材の炭素材料中の炭素ラジカル等のESR計測を可能にする。
注記:この場合にも試料によってはESRスペクトルのマイクロ波パワーが大きすぎると、│-1/2>電子状態と│1/2>電子状態間の飽和現象のために、逆にESRスペクトルが小さくなったり、場合によっては、見えなくなったりするので、その場合にはマイクロ波発振器の出力を下ろして計測する必要がある。(ESRスペクトルの過大マイクロ波パワーによる飽和効果の回避)
【0018】
7.これらを採用したことによる装置全体の総合作用効果
(1)、1から6の作用効果はESR計測に置ける感度の大幅な改善と、ESR計測のスピードアップをはかるものである。
(2)、 周波数掃引にしたことで、例えば強磁性共鳴(FMR)をおこす試料の場合には、後述する図2(1)と(2)に示すように、縦軸、横軸にそれぞれ磁場掃引ESRスペクトルと周波数掃引ESRスペクトルをプロットした2次元マップから新たな知見が得られる。図1に示す例のアンプ36ではスイープオシレータ37による周波数掃引とガン電源31からの磁場掃引が切り替え可能になっている。
(3)、現在のcw(連続波)でのマイクロ波周波数掃引仕様電磁ホーン型ESR装置のパルス電磁ホーン型ESR装置への移行。
【0019】
8.活用例など
(1) 以下は全て磁場掃引方式で、電磁ホーン型ESRを用いて計測を行った。
マンガン乾電池に抵抗をつなぎ、放電/消耗させながら電解質中の炭素ラジカルと途中から生成するマンガン2価イオンのESRスペクトルの時間依存性を2500分間15分毎に観測した。
(2) 生活排水中のCr(III)、Mn(II)イオンの検出。・・・環境科学への応用
(3) TEMPOLラジカルを含んだ水溶液40ccに、L-アスコルビン酸(ビタミンC)水溶液を混入させた直後からTEMPOLラジカルのESR強度の経時変化によるラジカル消去のin situ 実験。・・・生体中のラジカル消去の基礎実験
(4) DPPH溶液、TEMPOL水溶液、硫酸マンガン水溶液の溶解過程のESR計測。これら試料のESRスペクトルの濃度依存性。
(5)Mn(II)イオン添加強誘電体チタン酸バリウムセラミックスのMn(II)イオン、 Cu(II)イオン添加強誘電体硫酸グリシン単結晶のCu(II)イオン、重水一部置換の強誘電体亜リン酸グリシン単結晶にガンマー線を照射して生成した結晶内のPO32-ラジカルをESR不対電子プローブにして、これら強誘電体の誘電ロスの大きな状況であり共振器型ESRでは測定困難もしくは不可能な、強誘電キュリー温度及びその前後でのESRスペクトルの計測、及びESR計測と他の物性物理量である誘電率計測の同時計測の実施。
等のこれまでの共振器型ESR装置では測定困難もしくは測定不可能な極端試料及び極短測定条件下でのESR応用計測に多々成功している。

【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の電磁ホーン型電子スピン共鳴装置は、そのマイクロ波発振装置において、YIG(Yttrium Iron Garnet)スイープオシレータで8~12.4GHz掃引して1W級の広帯域アンプで増幅したマイクロ波を導入するサーキュレータを用いる(YIGスイープオシレータはHP社(現アジレント社)製として数百kHzから42GHzまでの非常に広範囲の周波数掃引が可能である、
今回の成功例は8GHZから12.4GHzでの周波数掃引方式ESRスペクトルの取得の成功例であったが、K-band及びQ-bandでのマイクロ波立体回路と、それに対応する均一固定磁場発生器のもとで、事実上L-band(1GHz帯)からQ-band(35GHz帯)迄の周波数掃引方式ESRスペクトルの取得が可能となる。とくに、Q-band帯域での周波数掃引方式電磁ホーン型ESR装置においては、マイクロ波の直線性が優れており、これらのL-bandからQ-band帯の内で最も測定感度の高い周波数掃引方式(及び磁場掃引方式も含めて)電磁ホーン型ESRがこのマイクロ波周波数掃引方式電磁ホーン型ESR装置で実現されることになる。
本発明の電磁ホーン型電子スピン共鳴装置の回路構成の各部位の技術的意義の説明とその具体例を図1に示す実施例1と共に詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1に示す本発明の電磁ホーン型電子スピン共鳴装置の一例であるX-band反射方式電磁ホーン型ESR装置のマイクロ波立体回路を以下に詳細に説明する。
図1に示す実施例1の電磁ホーン型電子スピン共鳴装置の基本構成は、
○マイクロ波を8GHzから12.4GHzまでYIGスイープオシレータ37で周波数掃引をし、これを最大1Wまでマイクロ波パワーを増幅させる増幅器を通したマイクロ波を発信するマイクロ波発振装置、
○マイクロ波発信装置からのマイクロ波をマイクロ波導波管のメインアーム(01)を介して試料載置台14上の試料14aに放射する電磁ホーン12、
試料載置台14の周囲に設けた掃引磁場印加装置230(電磁石)と変調分光用の変調装置200、
○電磁ホーン12から試料14aを介してのマイクロ波を再び試料14aを介して電磁ホーン12に反射するマイクロ波反射板15、
○前記マイクロ波導波管のメインアーム01から分岐したリファレンスアーム02からの参照用の発信マイクロ波と、マイクロ波反射板から試料と電磁ホーン12とメインアーム01を介しての反射マイクロ波をミキサー42に導入して、試料中の不対電子のスピンが反転する磁気共鳴時にマイクロ波エネルギーを試料が吸収した際のマイクロ波パワーの極微量変化を差動増幅装置43で検出しロックイン増幅装置44で増幅し記録装置45で記録するマイクロ波処理装置、
とからなる、
前記マイクロ波処理装置は、ミキサー42と差動増幅装置43とロックイン増幅装置44と記録装置45により、電磁ホーン12からの反射マイクロ波を導入しこれと逆の位相を持ち強度の等しい逆反射マイクロ波をつくり反射マイクロ波を逆反射マイクロ波で打ち消しバランスさせ、周波数掃引による電子スピンの磁気共鳴時に電子スピンの反転に必要なエネルギーが費やされ、その分試料がマイクロ波エネルギーを吸収した際のアンバランスによる反射マイクロ波の変化を高感度に増幅してESRスペクトルとして記録するのである。
【0022】
1.マイクロ波発振装置の構成と作用効果
マイクロ波発振装置は、周波数掃引仕様と磁場掃引仕様の双方機能を持たせたものであり、ガン発振器用電源31、ガン発振器32、単向管33、半固定式減衰器34、同軸導波管交換器35、アンプ電源36a付きのマイクロ波広帯域増幅器36、スペクトラムアナライザー37a付きのYIGスイープオシレータ37(8GHz~12.5GHzマイクロ波周波数掃引可能 HP社製)、マイクロ波を同軸ケーブル020からメインアーム導波管01に交換する同軸導波管交換器38からなる大出力も可能でガン発振器32による磁場掃引の際の周波数固定とスイープオシレータ37による周波数掃引が可能なマイクロ波発生部と、
同軸導波管交換器38に接続のメインアーム導波管01に介在させたアイソレータ1、周波数カウンター2付きの同軸導波管交換器3、方向性結合器4、アテネータ減衰器5、サ-キュレータ6、試料入射前マイクロ波パワーモニター計測端子部7a、試料からの反射マイクロ波パワーモニター計測端子部7bからなるマイクロ波導波管メインアーム部とからなる。
マイクロ波発生部は、進行波と後退波の混じったマイクロ波を単向管33で進行マイクロ波のみに選択し、単向管33からの進行マイクロ波を半固定式減衰器34と同軸導波管交換器35によりマイクロ波用同軸ケーブル010にもってきて、マイクロ波広帯域増幅器36に導入する、同様にマイクロ波広帯域増幅器36はYIGスイープオシレータ(8GHz~12.4GHzマイクロ波周波数掃引可能 HP社製)37からの数mWのマイクロ波を最大1Wまで広帯域増幅させて、同軸導波管交換器38を経て、メインアーム導波管01にマイクロ波を導入する。HP社製のYIGスイープオシレータ37からのマイクロ波はスペクトラムアナライザー37aでその周波数値がモニター確認され、ESRスペクトルの周波数掃引時の積算モニターとしても使用される。
次いで、マイクロ波導波管01に導入されたマイクロ波は、単向管(アイソレーター)1で進行マイクロ波のみに選択され、そのごく一部は同軸導波管交換器3を介して、周波数カウンター2に導入されて周波数をモニターする。
メインアーム導波管01は、方向性結合器4でリファレンスアーム導波管02を別に分岐する一方、マイクロ波パワー調整用の減衰器5をとおり、パワーを調整されてサーキュレーター6に入る。このマイクロ波はサーキュレーター6の特徴で、全てのマイクロ波が試料のある電磁ホーン側に導かれる。途中にあるパワーモニター用の計測端子7aでこのマイクロ波の出力値が検知され、第一パワーモニター22で測定される。一方、試料を介して電磁ホーンに戻ってきたマイクロ波はその出力値パワーモニター用の計測端子7bで検知され、パワーモニター23で測定される。
【0023】
2.電磁ホーンの構成と作用効果
電磁ホーン装置は、メインアーム導波管01に連結したスリースタブチューナー8、ツイスト導波管9、矩形円形導波管10、円形導波管11、電磁ホーン12、テフロン(登録商標)製のマイクロ波放射凸面型放射レンズ13からなる。
電磁ホーン装置は、サ-キュレータ6とパワーモニター用の計測端子7aを一部分岐させた残りのマイクロ波を、試料位置を仮想的位置に置ける働きのあるスリースタブチューナー8(通常使用時にはこれを全て抜いておいて無効化にしておく)に導入し、さらにマイク波振動面を90°回転するためにツイスト導波管9に導入し、続いて矩形円形導波管10で円形マイクロ波モードにし、円形導波管11の延長上の電磁ホーン12に導入しそのマイクロ波放射凸面型放射レンズ13からを試料14aを介して凹面マイクロ波反射板15aに向けて放射する。
これによりマイクロ波パワー計測端子7aでパワー計測されたマイクロ波はスリースタブチューナー8に入り、定在波モードのマイクロ波振動面をツイスト導波管9で90°回転された後、矩形から円形マイクロ波モードに矩形円形導波管10で交換されて、電磁ホーンアンテナ12にて定在波から球面進行波になり試料空間に放出される。これは測定感度を上げるためにテフロン(登録商標)製のマイクロ波放射凸面型放射レンズ13にて極力収斂させる。誘電ロスが大きくて透過性の悪い試料14aでは試料14aで直ちに反射され、マイクロ波の透過性のよい試料では、さらに後方の凹面マイクロ波反射板15aに達し、ここで凹面反射面の反射効果で、収斂反射されて再度試料14aに入り、試料14aを抜けてマイクロ波放射凸面型放射レンズ13を介して電磁ホーン12に戻り、マイクロ波パワー計測端子7bにてパワー計測された後にサーキュレーター6に入り、サーキュレーター6の下向き矢印の様に進行し同軸導波管交換器16、減衰器17、同軸導波管交換器18を介してミキサー(マジックティー)42部へと導かれる。

【0024】
3.変調装置の構成と作用効果
変調装置は、図1に200で示し、電磁ホーンアンテナ12、試料14a、凹面マイクロ波反射板15aの両側に位置して、100kHzのサイン波を大出力のアンプ221で増幅され、当該アンプ221にインピーダンス・マッチングさせた一対(2組)の多巻き変調コイル220に導入されて、電磁石230で発生させた磁場均一性のよい静磁場に100kHzの交流磁場を重畳させて、変調分光法にて3桁ほどの計測感度の改善を行っている。
【0025】
4.位置調節装置とその制御装置の構成と作用効果(信号処理内容)
マイクロ波放射凸面型放射レンズ13とマイクロ波凹面反射板15aの間に設けた試料載置台14と、凹面マイクロ波反射板15aには、各々 ラックピニオン式の位置調節機構RP1、RP2を設ける。
位置調節装置は、手動でもよいが、本例は、自動制御機構を採用してあり、その構成は、前記各々ラックピニオン式の位置調節機構RP1、RP2とそのピニオン駆動用ステッピングモータM1、M2とそのGP-IB制御器Co1,Co2からなり、その制御装置は、GP-IB制御器Co1,Co2の統括制御装置Co並びに、統括制御装置Coに連結した第一パワーモニター22、第二パワーモニター20、第三パワーモニター21とからなる。この4台のパワーモニターはGPIB仕様(もしくはラボビューでのUSB仕様)でマイクロ波出力値を自動計測する。
<統括制御装置Coによる位置調節装置の自動制御>
統括制御装置Coは、次の(1)~(6)を順次おこなう。
(1)、GP-IB制御器Co3により、第一パワーモニター22と連動している減衰器5に設置されたステッピングモーター(図示せず)をまわし、メインアーム導波管01へのマイクロ波出力値を所定値に設定する。(例えば300mW)
(2)、GP-IB制御器Co2により、ステッピングモーターM2を駆動させて、凹面マイクロ波反射板15aを一番後方まで移動させ、同時にマイクロ波吸収板を試料14aと凹面マイクロ波反射板15a間に挿入する。
(3)、次に第三パワーモニター21の読みが最大になるように、GP-IB制御器Co2によりモーターM2を回して凹面マイクロ波反射板15aを試料14aに近づける。
(4)、第三パワーモニター21からのマイクロ波出力値が、あるバランス用設定値になるようにGP-IB制御器Co1によりM1モーターを回して設定する。
(5)、試料14aから反射してサーキュレーター6に導かれた反射マイクロ波を導入した第三パワーモニター21の値が、第二パワーモニター20からのマイクロ波出力値とバランスするようにGP-IB制御器Co4により第二マイクロ波モニター20の直前の同軸用の減衰器40のステッピングモーター(図示せず)を回して調整する。
(6)、この状態で差動増幅器43を通過後の一部の検出電流値が最小になるように、GP-IB制御器Co5によりリレファレンスアーム導波管02に設置の位相器41のステッピングモーター(図示せず)を回して調整する。
(7)、XYレコーダー45(XY記録装置もしくはディジタルオシロ)では、横軸に掃引周波数を入力し、縦軸に磁場変調(周波数変調)で得たESR強度信号100を入力することで、周波数掃引方式ESRスペクトルを得る。
図2の(1)、(2)にその1例のグラフを紹介し表1にhν=gβH(h:プランク定数、ν:周波数、g:ゼーマン相互作用g定数、β:ボーア磁子、H:磁場(磁束密度))の式から得た共鳴磁場の実測値と共鳴周波数の計算値を示す。
図2の(1)は、横軸にマイクロ波周波数を、縦軸にESR強度を示すX-band近辺での周波数掃引の明確なESRスペクトルを示す。磁場を335.30mTに固定して、YIGスイープオシレータ37で8.5~10.5GHzの2GHzもの広範囲の周波数掃引をして得たものである。測定材料は方解石(CaCO3)単結晶中の不純物イオンMn(II)イオンのA~Fの6本のhfs(超微細構造)を示す許容遷移ESRスペクトルを示す。中央の1本のESRスペクトルはESR用標準物質DPPH粉末からのスペクトルである。記号を付していない他のESRスペクトルはMn(II)イオンの禁制遷移ESRスペクトルである。
図2の(2)は、横軸に磁場(磁束密度)Hを、縦軸にESR強度をとったK-band磁場掃引のESRスペクトルである。
図2の(1)と(2)共に電磁ホーン型ESR装置で測定を行った。測定材料はCaCO3:Mn(II)単結晶でA~Fの6本のhfsを示すESRスペクトルと小さな禁制遷移ESRスペクトルが観測されている。測定磁場はNMR(核磁気共鳴)磁場測定器で校正された値である。
【0026】
【表1】
JP0005434492B2_000002t.gif

【0027】
5.温度可変装置と単結晶用ゴニオメーターと誘電率計測装置とこれらの同時計測手段についてその構成と作用効果。
(1)、温度可変装置は下記の3種類の温度可変を行っている。
1)、アルミブロックに穴をあけ、ヒーターと制御用熱電対と試料測温用熱電対を挿入して、PID制御で温度可変をする。室温から200℃まで
温度可変を行えた。
2)、合成石英でジュワー瓶を作製し、ジュワー瓶内に銅製の縦長の試料載置台を設置して、試料載置台最高部に試料を設置し、試料の直ぐ下に、無誘導巻きのマンガニン線ヒーターを設置し、冷媒(液体窒素又はアルコールとドライアイスの混合物等)を、ヒーター部より下部に満たして、
PID制御で-196℃から+70℃までの温度可変を行う。
当該装置では、試料載置台部分に試料回転装置を設け、1軸試料回転仕様の温度可変装置にしている。
3)、L字型アルミブロックに縦横高さ方向の一筆書きの溶液通路を設け、測温用の熱電対穴も設けて、クーリング・サーキュレーターからの
不凍液を流しこれまでのところ試料設置部で-15℃から+60℃までの温度可変と、シリコーンオイルに切り替えて室温から+130℃までの温度可変を行っている。
(2)、単結晶用ゴニオメーター
1)、円筒形プラスチック容器を2枚重ね、外部を試料載置台に固定して、
角度目盛りをつけた内部円筒型プラスチック容器に軽量紙粘土で単結晶試料等を固定して、外部容器内で回転させる1軸回転機構付き試料回転装置。試料回転軸は鉛直線に平行。
2)、試料設置部をマコール(登録商標)、軟質テフロン(登録商標)、もしくはデルリン(登録商標)製の容器状に作製した試料載置台に軽量紙粘土で試料を固定して、試料載置台14のアルミの立板に設置し、後方の目盛りのついた大型ダイヤルで角度を読みながら回転させる1軸回転機構付き試料回転装置。
3)、発明者が過去に共振器型ESR装置用に開発した5種類の2軸ゴニオメーターを仕様の小変更とゴニオメーターを大型化し、一部のギヤーや
回転装置をテフロン(登録商標)から金属(アルミもしくは真鍮)に変更した2軸ゴニオメーター。(室温計測用、温度可変計測用、ステッピングモーターを用いた自動計測用2軸ゴニオメーター)
これには発明者が1985年に開発したウルフネットと2軸ゴニオメータを用いたスピンハミルトニアンテンソルの主軸の直接探索法が応用できる。
4)、発明者が過去に共振器型ESR装置用に開発した3軸ゴニオメーターを仕様の小変更とゴニオメーターを大型化し、一部のギヤーや 回転装置をテフロン(登録商標)から金属(アルミもしくは真鍮)に変更した3軸ゴニオメーター。単結晶中のある不対電子センターのあるサイトのみの定量状態分析法に利用できる。
(3)、誘電率計測とESRスペクトルの同時計測装置
(1)の1)の温度可変装置に試料の一部に帯状の電極を施して、一部分をコンデンサー仕様にした試料を設置して、温度をPID制御でステップ・スキャンで変化させて各測定温度で固定させてESR計測と誘電率計測を行うもので、ESRと他の物性量との同時計測として、Cu(II)イオンを添加させた強誘電体硫酸三グリシン単結晶試料のキュリー点とその前後の強誘電相と常誘電相で同時計測に成功している。
(4)、熱容量(比熱)とESRスペクトルの同時測定
1)、(3)と同様に熱容量(比熱)とESRスペクトルの同時測定
2)、リン青銅バネにストレインゲージを貼り付けた簡易型熱膨張計とESR計測の同時測定
3)、熱伝導率とESRスペクトルとの同時測定装置
4)、電気伝導率とESRスペクトルとの同時測定装置
5)、除震機構を設けてその中に設置したSTS(走査型トンネル電流分光)装置を設け、トンネル電流とESRスペクトルの同時計測・クロス計測を介してフェルミ準位での電子状態の研究。
6)、発明者が過去に共振器用ESR装置で開発した1軸性応力(圧力と張力)印加装置を電磁ホーン型ESRに改造して設置する。
7)、ダイヤモンドアンビル装置を設置して超高圧静水圧を印加して
その高圧下でのESRスペクトル観測
8)、発明者が過去に開発した2電流電源用多巻きZupancic型コイルと
アンチヘルムホルツコイルを用いた3次元MRIコイルを設置して、
ESRイメージング(ESR-CT)仕様にする。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明装置は、前述の優れた効果を呈する。このため以下に紹介の各種分野に適用でき、この種産業に多大な貢献をするものである。
1.物理学・化学の基礎科学分野での各種固相、液相、気相物質の基礎研究
2.医学での臨床検査室での血液・生体組織の迅速検査
3.医薬学分野でのレドックス関連の加齢現象及び難治疾患(癌・糖尿病・虚血・高血圧・アルツハイマー等)の機作解明と新薬の開発。
4.環境科学分野での水処理・水質検査、ジーゼル等の粉塵検査。
5.MRIコイルを用いたESRイメージング、さらにはESR-STM (走査型トンネル顕微鏡)装置開発と選択された高分解能ESRイメージング像の獲得。
6.アラニン及びアラニンイメージングプレートを用いた放射線線量3次元計測システムの構築。試料の非破壊ESR年代測定法への応用。
7.他の診断機器(X線コンピュータトモグラフィー、超音波画像診断等、PET等)との同時/連続検査診断が可能となる。

【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】電磁ホーン型電子スピン共鳴装置の一例である周波数掃引方式及び磁場掃引方式の双方を兼ねたX-band反射方式電磁ホーン型ESR装置のマイクロ波立体回路のブロック線図である。
【図2】電磁ホーン型ESRで得たCaCO3:Mn(II)イオン単結晶中のMn(II)イオンのX-band周波数掃引ESRスペクトル(1)と、K-band磁場掃引ESRスペクトル(2)を示すグラフであり、図中のA~FはESR遷移で対応するスペクトルである。
【図3】従来のK-band反射方式電磁ホーン型ESR装置のマイクロ波立体回路のブロック線図である。
【符号の説明】
【0030】
図1において
1:アイソレータ
37a:スペクトラムアナライザー
4:方向性結合器
5:減衰器(メインアーム)
6:サ-キュレータ
8:スリースタブチューナー
9:ツイスト導波管
10:矩形円形変換導波管
11:円形導波管
12:電磁ホーン
13:マイクロ波放射凸面型レンズ
14a:試料
14:試料載置台
15:マイクロ波凹面反射板
RP1、:試料載置台の位置調節機構(ラックピニオン式)
RP2:凹面反射型の反射板の位置調節機構(ラックピニオン式)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2