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明細書 :ガンのリンパ節転移抑制剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5713306号 (P5713306)
登録日 平成27年3月20日(2015.3.20)
発行日 平成27年5月7日(2015.5.7)
発明の名称または考案の名称 ガンのリンパ節転移抑制剤
国際特許分類 A61K  38/00        (2006.01)
A61P  35/04        (2006.01)
FI A61K 37/02 ZNA
A61P 35/04
請求項の数または発明の数 4
全頁数 17
出願番号 特願2014-551441 (P2014-551441)
出願日 平成26年1月28日(2014.1.28)
国際出願番号 PCT/JP2014/051797
国際公開番号 WO2014/119556
国際公開日 平成26年8月7日(2014.8.7)
優先権出願番号 2013015008
優先日 平成25年1月30日(2013.1.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年10月20日(2014.10.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
発明者または考案者 【氏名】本山 悟
【氏名】佐々木 智彦
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000774、【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
審査官 【審査官】安藤 公祐
参考文献・文献 特表平07-505905(JP,A)
国際公開第2010/137671(WO,A1)
John J. Kresl, et al.,Inhibition of mouse mammary adenocarcinoma (EMT6) growth and metastases in mice by a modified form o,Tumour Biol,1999年,20(2),72-87
調査した分野 A61K 38/00
A61P 35/00
A61P 35/04
C12N 15/09
C07K 14/47
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
リンパ節転移のない又は少ないガン患者に対して投与するための、C反応性タンパク質を有効成分として含む、固形ガンのリンパ節転移抑制剤。
【請求項2】
配列表の配列番号3に示される塩基配列で示されるヒトC反応性タンパク質遺伝子の部分配列の第422番目の塩基の遺伝子型がT/Tタイプであると判定されたヒトに投与するための、請求項1に記載のリンパ節転移抑制剤。
【請求項3】
前記ガン患者は、0個、1個、2個、又は3個のリンパ節転移を有する、請求項1又は2に記載のリンパ節転移抑制剤。
【請求項4】
配列表の配列番号3に示される塩基配列で示されるヒトC反応性タンパク質遺伝子の部分配列の第422番目の塩基を含む領域を増幅するためのプライマーと、RFLPにより該第422番目の塩基における遺伝子型を判定するための制限酵素と、請求項1~3のいずれかに記載のリンパ節転移抑制剤を含む、固形ガンのリンパ節転移を抑制するためのキット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本願発明はガンのリンパ節転移抑制剤に関する。さらに詳しくは、固形ガンのリンパ節転移抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ガンの転移とは、ガン細胞が発生した場所(以下、原発巣と示す場合がある)から離れて、血管やリンパ管を経由して、リンパ節や肝臓、肺等の他の臓器に移動して定着し、そこで再び増殖して腫瘍(転移性腫瘍)を形成することをいう。ガンによる死亡原因はほとんどこの転移によるといわれている。
【0003】
ガンの進展様式として、血行性転移、リンパ行性転移(以下、リンパ節転移と示す場合がある)および播種性転移の3種類がある。
血行性転移とは、原発巣の近くにある毛細血管や静脈にガン細胞が侵入し、血流を介して肝臓、肺、脳、骨等の臓器、いわば血液の流れが豊富な部位に到達し、そこで増殖することをいう。この場合、血流に乗ってガン細胞が全身に広がるため、手術や放射線などの局所治療は行われず、化学療法(抗ガン剤治療)が主な治療法となる。
リンパ節転移とは、ガン細胞がリンパ液の流れに入り込み、リンパ管を通して全身に存在するリンパ節に到達し、そこで増殖することをいう。リンパ節転移は、原発巣に近いリンパ節から起こり、徐々に遠いリンパ節に広がるのが一般的である。従って、転移が原発巣に近いリンパ節のみに起きた場合であれば、原発巣とその周囲のリンパ節を切除する手術(リンパ節郭清)、または同部位に対する放射線治療で治癒する可能性が高い。しかし、原発から遠いリンパ節まで転移が広がっている場合には、臓器転移と同様にすでに全身にガン細胞が広がっているため、化学療法(抗ガン剤治療)が主な治療方法となる。
播種性転移とは、ヒトの体内における胸腔および腹腔という空間を形成する胸膜、腹膜および胸腔内、腹腔内臓器表面に、ガン細胞があたかも種を播いたように播種性に転移性腫瘍を形成することをいう。
このように3つのガンの転移様式は大きく異なり、その機序はもちろんの事、促進因子、抑制因子も異なる。このためこれらを制御する抗ガン治療はそれぞれの転移様式をターゲットとして開発され、実施されている。
【0004】
ガンの進行度は、主に国際対ガン連合(UICC)が提案しているTMN分類によってI-IVに分類される。この分類は、次の3つの要素から判断される。
T:Tumor、即ち腫瘍(固まり)について、腫瘍なし(固まりを作っていない)のT0レベルから、ガンの大きさと浸潤の深さの程度によって、T1~T4のいずれかのレベルに判断される。このT1~T4のレベルは臓器ごとに決まっている。
N:Lymph nodes、即ちリンパ節について、“リンパ節転移なし”のN0のレベルから、リンパ節転移の程度によって、N1~N4のいずれのレベルか判断される。
このN1~N4のレベルは臓器ごとに決まっているが、一般にリンパ節転移の数が増すほど、遠くのリンパ節に転移があるほどNナンバーが大きくなる。
M:Metastasis、即ち遠隔転移について、“遠隔転移なし”のM0と、“遠隔転移あり”のM1の2種類で判断される。この判断はいずれの臓器においても同様である。
なお、M1と判断された場合、ガンの進行度はすべてIV期となる。遠隔臓器転移があればガンは全身にすでに広がっていることとなり、化学療法(抗ガン剤治療)が主な治療方法となるが、根治する事はほとんどない。
一方、M0と判断された場合では、NのレベルによってI-IV期に分類される。例えば、リンパ節転移がN1レベルと判断された場合には、ガンは原発巣や原発巣に近いリンパ節少数個にとどまっており、その部位を手術や放射線で局所治療することで多くは治癒できる。
【0005】
ガンの進行度の分類に示されるように、ガンの転移のうちリンパ節転移は特に重要であり、患者の予後を大きく左右する。
実際、本発明者らが食道表在ガン(早期のガン)患者におけるリンパ節転移の有無と5年生存率との関連を調べたところ、リンパ節転移のない早期のガン患者では5年生存率が92%であったのに対し、1個のリンパ節転移を有する患者では67%、2個のリンパ節転移を有する患者でも64%と、リンパ節転移が1個あるだけで5年生存率が急激に低下することが確認された。また、進行ガンの患者においても、リンパ節転移がなければ5年生存率は86%であり、1個のリンパ節転移を有する食道表在ガンの患者よりも高いことが確認された。
従って、ガンの診断を受けた患者において、リンパ節転移を抑制することができれば、ガンの完治率を高めることも可能になる。
【0006】
ガンのリンパ節転移に対し、これを治療することを特徴とする剤として、細菌の菌体成分を有効成分とする、単独療法用の癌免疫療法剤が開発されている(特許文献1)。
しかし、この癌免疫療法剤は、血中IFN-γおよびCD28強陽性のリンパ球群の増加を指標とする免疫応答能を有する患者のみを対象とするものである。また、単独療法でないと効果が得られないため、化学療法(抗ガン剤治療)、放射線治療等の強力な抗ガン効果を持つ治療法と併用することができない。
【0007】
本発明者らは、化学療法(抗ガン剤治療)、放射線治療等と併用することが可能なリンパ節転移抑制剤を得るにあたり、C反応性タンパク質(C-reactive protein;CRP(以下、CRPと示す場合がある))に着目した。
C反応性タンパク質は急性あるいは慢性炎症の際に肝臓で産生されるタンパク質であり、各種固形ガンの進展等に関与することが報告されている。
例えば、Modified form C反応性タンパク質が乳癌の肺転移抑制作用を示すことが報告されている(非特許文献1)。また、リポゾーム封入C反応性タンパク質が悪性線維性肉腫の肺転移抑制作用を示すこと(非特許文献2)、大腸癌の肝転移抑制作用を示すこと(非特許文献3)も報告されている。
しかしこれらの既報告はいずれも血行性転移に関するものであり、C反応性タンパク質のリンパ節転移への効果は知られていなかった(非特許文献1-3、特許文献2-5)。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開平10-306029号公報
【特許文献2】特表平7-505905号公報
【特許文献3】特開昭63-66128号公報
【特許文献4】米国特許第5,283,238号公報
【特許文献5】米国特許第5,783,179号公報
【0009】

【非特許文献1】Kresl JJ. et al., Tumor Biol., 1999, Vol.20, No.2, pp.72-87
【非特許文献2】Deodhar SD et al., Cancer Res., 1982, Vol.42, No.12, pp.5084-5088
【非特許文献3】Thombre PS and Deodhar SD, Cancer Immunol. Immunother., 1984, Vol.16, No.3, pp.145-150
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来公知のガンのリンパ節転移抑制剤は、特許文献1に見られるように、血中IFN-γおよびCD28強陽性のリンパ球群の増加を指標とする免疫応答能を有する患者のみを対象とするものや、化学療法(抗ガン剤治療)、放射線治療等と併用することができないものであった。
しかし、ガンのリンパ節転移は患者の予後に大きく影響することから、リンパ節転移が起きる前に、ガンと診断された段階で迅速に対処することが重要となる。従って、他の抗ガン治療予定に影響を及ぼす事なく、診断された直後に投与する事ができ、また、従来の抗ガン治療である化学療法(抗ガン剤治療)、放射線治療等とも併用できるガンのリンパ節転移抑制剤が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、C反応性タンパク質が、ガンのリンパ節転移抑制剤の有効成分となり得ることを見出した。
本発明のリンパ節転移抑制剤は、C反応性タンパク質遺伝子の一塩基多型によって、リンパ節転移のリスクが高いと判定されたヒトに投与するためのリンパ節転移抑制剤とすることができ、この判定のための試薬等と組み合わせてキットとすることもできる。
【0012】
本発明は、以下のリンパ節転移抑制剤等を提供する。
[1]C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤。
[2]リンパ節転移のないガン患者に対して投与するための、上記[1]に記載のリンパ節転移抑制剤。
[3]リンパ節転移の少ないガン患者に対して投与するための、上記[1]に記載のリンパ節転移抑制剤。
[4]ガンが固形ガンである上記[1]~[3]のいずれかに記載のリンパ節転移抑制剤。
[5]配列表の配列番号3に示される塩基配列で示されるヒトC反応性タンパク質遺伝子の部分配列の第422番目の塩基の遺伝子型がT/Tタイプであると判定されたヒトに投与するための、上記[1]~[4]のいずれかに記載のリンパ節転移抑制剤。
[6]配列表の配列番号3に示される塩基配列で示されるヒトC反応性タンパク質遺伝子の部分配列の第422番目の塩基を含む領域を増幅するためのプライマーと、RFLPにより該第422番目の塩基における遺伝子型を判定するための制限酵素と、上記[1]~[5]のいずれかに記載のリンパ節転移抑制剤を含むキット。
[7]リンパ節転移のない又は少ないガン患者に対してC反応性タンパク質を投与する工程を含む、ガンのリンパ節転移を抑制する方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のガンのリンパ節転移抑制剤は、リンパ節転移のない、または比較的少ないガンと診断された固形ガン患者や比較的進行しているガンで、抗ガン剤、放射線等の治療法を行っている患者等の幅広い患者に適用することができる。
本発明のガンのリンパ節転移抑制剤は、他の治療法と併用できることから、ガンを切除する手術を受ける患者において、手術までの待機時間に投与することでリンパ節転移を抑制することができ、手術による治療成績をより向上させることができる。
また、本発明のリンパ節転移抑制剤を投与することで、リンパ節転移が起こりにくい環境を維持しながら、化学療法(抗ガン剤治療)や放射線治療等を行うことにより、非手術治療においても治療成績向上させることが可能となる。
そして、本発明のリンパ節転移抑制剤を、C反応性タンパク質の遺伝子型に基づいて、リンパ節転移が引き起こされやすいと判断された患者に対し、積極的に適用することで効果的にガン治療を行うことも可能となる。
非特許文献1、2、及び3は、CRPがガンの血行性転移による遠隔臓器転移を抑制することを教示する。非特許文献1、2、及び3を読んだ当業者は、CRPをガンの血行性転移による遠隔臓器転移のないガン患者に対して投与することを動機づけられるかもしれない。より具体的には、非特許文献1、2、及び3を読んだ当業者は、CRPをUICCのTNM分類においてM0のガンを伴うと診断された任意のガン患者に対して投与することを動機づけられるかもしれない。
しかし、本研究の結果は、CRPがガンのリンパ行性転移(リンパ節転移)を抑制することを示し、リンパ節転移のないガン患者またはリンパ節転移が少ないガン患者に対してCRPを投与することにより特に良好な予後が期待できることを示す。更に、本研究の知見に基づき、リンパ節転移のリスクが大きくかつリンパ節転移を抑制することによって良好な予後が期待できるガン患者に対してCRPを投与することにより、不要な治療を回避し、患者のクオリティーオブライフを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】NR-S1M細胞を注射した後、マウスは組み換えマウスC反応性タンパク質(以下、r-CRPと示す場合がある)(10μg/mL, 1μg)を3日ごとに頸部皮下に注射された。棒グラフは血清中のCRP濃度のmeans±SDを示す。写真Aは、腫瘍細胞の移植後7日目に検出された腫瘍形成(矢印部分)を示す。写真Bは、腫瘍細胞を移植から5週間経過後の腫瘍(矢印)および左そ径部における腫大したリンパ節(サークル部分)を示す。
【図2】A:腫瘍細胞の移植後5週間の腫瘍の容積を示す。容積は次の式により計算された。腫瘍の容積(cm3)=長さ(cm)×幅(cm)2×1/2、コントロール:n=20、CRP:n=10。B:腫瘍細胞の移植後5週間のリンパ節の容積を示す。容積は次の式により計算された。リンパ節の容積(cm3)=長さ(cm)×幅(cm)2×1/2、コントロール:n=20、CRP:n=10
【図3】マウスモノクローナル抗パンサイトケラチン(AE1/AE3)抗体によって免疫染色されたそ径部リンパ節へのリンパ節転移の検出。転移した腫瘍細胞は褐色に染色された。AおよびBは、リンパ節への転移がなく、CおよびDはリンパ節への転移があった。AおよびCのスケールバーは500μmであり、BおよびDのスケールバーは50μmである。Dにおいて、リンパ節の近くのリンパ管にも腫瘍細胞が観察された。
【図4】リンパ節転移範囲の定量化。棒グラフは、リンパ節あたりのマウスモノクローナル抗パンサイトケラチン(AE1/AE3)抗体陽性エリアのmeans±SDを示す(コントロール:n=20、CRP:n=10)。
【図5】リンパ管を茶色に染色した。A:コントロールマウスの腫瘍、B:CRPマウスの腫瘍。スケールバーは50μm。
【図6】A.リンパ脈管新生(Lymphangiogenesis)の定量化。腫瘍部位あたりのLYVE-1抗体陽性エリアの評価(コントロール:n=20、CRP:n=10)。B.ウェスタンブロットによって示されるコントロールマウスおよびCRPマウスにおけるLYVE-1の発現。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の「ガンのリンパ節転移抑制剤」とは、ガン細胞がリンパ管を通って原発巣に近いリンパ節や遠いリンパ節に移動することや、この移動によってリンパ節にガン細胞が生着し、また、リンパ節中でガン細胞が増殖することにより、リンパ節等の組織のガン置換が起こることを抑制することをいう。
本発明の「ガンのリンパ節転移抑制剤」は、C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤であればよく、C反応性タンパク質のみからなる剤であっても、C反応性タンパク質とその他の薬学的に許容される成分を含む剤であってもよい。
このような本発明の「ガン転移抑制剤」は、早期のガンと診断された患者や、進行ガンと診断され、抗ガン剤や放射線等による治療が必要となる患者に投与することができる。
従って、一実施態様において、本発明は、リンパ節転移のないガン患者に対して投与するための、C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤に関する。
本明細書において、リンパ節転移のないガン患者とは、当該ガンに関してリンパ節転移を経験したことのない患者を意味し、当該ガンに関してリンパ節転移を経験したのちにリンパ節郭清を行った患者を意味しない。しかし、「リンパ節転移のないガン患者」という用語には、別個の独立したガンに関してリンパ節転移を経験したのちに当該別個の独立したガンを完治したガン患者を含む。より具体的には、「リンパ節転移のないガン患者」という用語は、UICCのTNM分類においてT1N0M0のガンを伴うと診断されるべきガン患者、T2N0M0のガンを伴うと診断されるべきガン患者、及びT3N0M0のガンを伴うと診断されるべきガン患者を意味する。しかし、「リンパ節転移のないガン患者」という用語は、T4N0M0のガンを伴うと診断されるべきガン患者を含まない。
従って、一実施態様において、本発明は、治療対象のガンに関してリンパ節転移を経験したことのないガン患者に対して投与するための、C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤に関する。
より具体的には、一実施態様において、本発明は、UICCのTNM分類においてT1N0M0のガンを伴うと診断されたガン患者に対して投与するための、C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤に関する。
別の実施態様において、本発明は、UICCのTNM分類においてT2N0M0のガンを伴うと診断されたガン患者に対して投与するための、C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤に関する。
別の実施態様において、本発明は、UICCのTNM分類においてT3N0M0のガンを伴うと診断されたガン患者に対して投与するための、C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤に関する。
一実施態様において、本発明は、リンパ節転移の少ないガン患者に対して投与するための、C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤に関する。本明細書において、「リンパ節転移の少ない」とは、リンパ節転移が1個、リンパ節転移が2個、又はリンパ節転移が3個であることを意味し、好ましくはリンパ節転移が1個であることを意味する。
具体的には、一実施態様において、本発明は、UICCのTNM分類においてT1N1M0のガンを伴うと診断されたガン患者に対して投与するための、C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤に関する。
別の実施態様において、本発明は、UICCのTNM分類においてT2N1M0のガンを伴うと診断されたガン患者に対して投与するための、C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤に関する。
別の実施態様において、本発明は、UICCのTNM分類においてT3N1M0のガンを伴うと診断されたガン患者に対して投与するための、C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤に関する。
一実施態様において、本発明は、早期ガンと診断されたガン患者に対して投与するための、C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤に関する。
具体的には、一実施態様において、本発明は、UICCのTNM分類において第1期のガンを伴うと診断されたガン患者に対して投与するための、C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤に関する。
別の実施態様において、本発明は、UICCのTNM分類において第2期のガンを伴うと診断されたガン患者に対して投与するための、C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤に関する。
UICCのTNM分類は定期的に改定されるが、基本的には最新の版に従うべきである。ただし、異なる版のTNM分類により本件発明の技術的範囲に何らかの疑義が生じる場合には、第7版(TNM Classification of Malignant Tumours, 7th Edition, Leslie H. Sobin (Editor), Mary K. Gospodarowicz (Editor), Christian Wittekind (Editor) ISBN: 978-1-4443-3241-4, November 2009, Wiley-Blackwell)を基準とする。
また、ガンの原発巣やその周辺組織、ガンの転移部位等を切除する手術を受ける患者において、手術までの待機時間に投与することもできる。また、手術後の患者にも予防的に投与してもよい。

【0016】
本発明の「ガンのリンパ節転移抑制剤」の有効成分となる「C反応性タンパク質」は、配列表配列番号1に示されるCRP遺伝子の全塩基配列から翻訳されるタンパク質や、配列表配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質であって、ガンのリンパ節転移を抑制できるタンパク質のことをいい、天然に由来するものでも、遺伝子工学技術により発現された組換えタンパク質に由来するものでもよい。
また、天然のCRPは5量体として存在するが、本発明のガンのリンパ節転移抑制活性を体内において示すものであれば、5量体に限らず、単量体その他の存在様式も本発明の「C反応性タンパク質」に含まれる。
また、ガンのリンパ節転移を抑制することが可能なタンパク質であれば、配列表配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸残基を追加、削除または置換したもの、および科学的或いは酵素的修飾を加えたもの等のタンパク質も、本発明の「C反応性タンパク質」に含まれる。
さらに、ガンのリンパ節転移を抑制することが可能なタンパク質であれば、配列表配列番号1に示されるCRP遺伝子の全塩基配列から翻訳されるタンパク質の一部や、配列表配列番号2に示されるアミノ酸配列の一部を有するタンパク質等も本発明の「C反応性タンパク質」に含まれる。
天然のCRPの調製としては、ヒト、ネズミ、ウシ、ブタなどに由来する血液、腹水、組織抽出液などのCRPが存在することが知られている生物材料を使用することができる。
また、組換えCRPの調製としては、CRPタンパク質をコードする遺伝子を発現ベクターに組み込んだものを使用して宿主細胞を形質転換し、当該宿主細胞によって前記遺伝子を発現させることによってCRPタンパク質を得ることができる(特開2000-14388号公報参照)。
一実施態様において、本発明に使用されるC反応性タンパク質は、単離又は精製されたC反応性タンパク質である。

【0017】
本発明の「リンパ節転移抑制剤」が適用できるガンの種類は特に限定されないが、固形ガンにはすべて適用可能である。具体的には原発部位が食道、肺、乳腺、頭頸部、胃、大腸、胆道、膵、子宮、卵巣、膀胱、腎、尿路上皮、前立腺のガンに適用可能である。
本発明者らは、CRPが腫瘍のリンパ脈管新生を抑制することによりガンのリンパ節転移を抑制することを見出した。従って、CRPをリンパ行性転移のリスクが大きいと予想されるガンを伴うガン患者に対して投与することにより、より大きな効果を期待することができる。リンパ行性転移は、肉腫と比較して癌種で多くみられる転移の方式である。
従って、一実施態様において、本発明は、治療対象のガンに関してリンパ節転移を経験したことのない肉腫ではないガンを伴うガン患者に対して投与するための、C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤に関する。
別の実施態様において、本発明は、UICCのTNM分類においてT1N0M0の肉腫ではないガンを伴うと診断されたガン患者に対して投与するための、C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤に関する。
別の実施態様において、本発明は、UICCのTNM分類においてT2N0M0の肉腫ではないガンを伴うと診断されたガン患者に対して投与するための、C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤に関する。
別の実施態様において、本発明は、UICCのTNM分類においてT3N0M0の肉腫ではないガンを伴うと診断されたガン患者に対して投与するための、C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤に関する。 一実施態様において、本発明は、リンパ節転移の少ない肉腫ではないガンを伴うガン患者に対して投与するための、C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤に関する。本明細書において、「リンパ節転移の少ない」とは、リンパ節転移が1個、リンパ節転移が2個、又はリンパ節転移が3個であることを意味し、好ましくはリンパ節転移が1個であることを意味する。
別の実施態様において、本発明は、UICCのTNM分類においてT1N1M0の肉腫ではないガンを伴うと診断されたガン患者に対して投与するための、C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤に関する。
別の実施態様において、本発明は、UICCのTNM分類においてT2N1M0の肉腫ではないガンを伴うと診断されたガン患者に対して投与するための、C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤に関する。
別の実施態様において、本発明は、UICCのTNM分類においてT3N1M0の肉腫ではないガンを伴うと診断されたガン患者に対して投与するための、C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤に関する。

【0018】
本発明の「リンパ節転移抑制剤」は、リンパ節転移のリスクの判定により、リンパ節転移のリスクが高いと判定されたヒトに投与するための「リンパ節転移抑制剤」も含まれる。
リンパ節転移のリスクの判定には、周知の判定方法を使用してもよい。例えば、本発明者らの発明である「ガンのリンパ節転移またはそのリスクを判定する方法及びそのための迅速判定キット」等を使用することもできる(特開2011-152153号公報、特許第4756288号)。
この判定方法では、C反応性タンパク質に対応するCRP遺伝子における、特定の箇所の遺伝子型を同定することで、ガン患者等におけるリンパ節転移のリスクの高低を判定することができる。

【0019】
遺伝子型の同定には、遺伝子型の検出が可能な周知の種々の方法を使用でき、特に限定されるものではない。例えば、PCR(polymerase chain reaction)法を利用したPCR-RFLP(restriction fragment length polymorphism:制限酵素断片長多型)法、PCR-SSCP(single strand conformation polymorphism:単鎖高次構造多型)法(Orita, M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 86, 2766-2770 (1989)等)、PCR-SSO(specific sequence oligonucleotide:特異的配列オリゴヌクレオチド)法、PCR-SSO法とドットハイブリダイゼーション法を組み合わせたASO(allele specific oligonucleotide:アレル特異的オリゴヌクレオチド)ハイブリダイゼーション法(Saiki, Nature,324,163-166 (1986)等)、またはTaq-Man-PCR法(Livak, KJ.,k,Genet Anal., 14, 143 (1999), Morris, T. et al., J. Clin. Microbiol., 34, 2933 (1996))、Invader法(Lyamichev et al., Nat Biotechnol, 17,292 (1999))、プライマー伸長法を用いたMALDI-TOF/MS(matrix)法(Haff LA, Smirnov IP Genome Res, 7, 378 (1997))、RCA(rolling cicle amplification)法(Lizardi PM et al., Nat Genet 19, 225 (1998))、DNAチップまたはマイクロアレイを用いた方法(Wang DG et al., Science 280,1077 (1998)等)、プライマー伸長法、サザンブロットハイブリダイゼーション法、ドットハイブリダイゼーション法(Southern, E., J. Mol. Biol. 98, 503-517 (1975))等、公知の解析方法を用いることができる。さらに、当該配列部分を直接シークエンスすることにより解析してもよい。尚、これらの方法は、任意に組み合わせて用いることもできる。

【0020】
ガン患者等から採取した被験DNAが少量の場合には、PCR法を利用したPCR-RFLP法等により同定することが検出感度ないし精度の面から好ましい。また、PCR法またはPCR法に準じた遺伝子増幅方法により被験DNAを予め増幅した後、上記いずれかの同定方法を適用することもできる。
一方、多数の被験DNAについて同定する場合には、特にDNAチップやマイクロアレイを用いた方法、Invader法、TaqMan-PCR法、プライマー伸長法を用いたMALDI-TOF/MS(matrix)法またはRCA法を用いることが好ましい。

【0021】
被験DNAが少量の場合には好適な方法は、当業者に周知の方法で患者からDNA試料を調製し、次いで、調製したDNA試料を制限酵素により切断し、次いで、DNA断片をその大きさに応じて分離を行い、次いで、検出されたDNA断片の大きさを対照と比較する方法である。一般的には、まず、患者からDNA試料を調製し、次いで、CRP遺伝子を含むDNAを増幅する。さらに、増幅したDNAを制限酵素により切断する。次いで、DNA断片をその大きさに応じて分離し、検出されたDNA断片の大きさを対照と比較する。

【0022】
このような方法のうち、PCR-RFLP法では、制限酵素の認識部位に変異が存在する場合、あるいは制限酵素処理によって生じるDNA断片内に塩基挿入または欠失がある場合、制限酵素処理後に生じる断片の大きさが対照と比較して変化する。この変異を含む部分をPCR法によって増幅し、それぞれの制限酵素で処理することによって、これらの変異を電気泳動後のバンドの移動度の差として検出することができる。あるいは、患者からDNA試料(ゲノム(染色体)DNAが使用できる)を調製し、制限酵素によって処理し、電気泳動した後、標的核酸とハイブリダイズし得るプローブDNAを用いてサザンブロッティングを行うことにより、多型(変異)の有無を検出することができる。用いられる制限酵素は、それぞれの変異に応じて適宜選択することができる。この方法では、ゲノムDNA以外にも患者から調製したRNAを逆転写酵素でcDNAに変換し、これをそのまま制限酵素で切断した後、サザンブロッティングを行うことも可能である。また、このcDNAを鋳型としてPCRでCRP遺伝子を含むDNAを増幅し、それを制限酵素で切断した後、移動度の差を調べることも可能である。

【0023】
同定の対象となる遺伝子多型のひとつとして、配列表の配列番号3に示される塩基配列で示されるヒトC反応性タンパク質遺伝子の部分配列の第422番目の塩基(Yで示される塩基)が挙げられる。
この塩基の型が、C/C(ワイルド)、C/T(ヘテロ)、T/T(ホモ)のいずれのタイプであるかを調べ、この遺伝子型がT/Tタイプであると同定された場合に、リンパ節転移のリスクが高いと判定される。
従って、一実施態様において、本発明は、配列表の配列番号3に示される塩基配列で示されるヒトC反応性タンパク質遺伝子の部分配列の第422番目の塩基の遺伝子型がT/Tタイプであると判定されたリンパ節転移のないガン患者に対して投与するための、C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤に関する。
即ち、一実施態様において、本発明は、ガン患者において配列表の配列番号3に示される塩基配列で示されるヒトC反応性タンパク質遺伝子の部分配列の第422番目の塩基の遺伝子型を決定する工程、及び前記工程において前記遺伝子型がT/Tタイプであると判定されたリンパ節転移のないガン患者に対してC反応性タンパク質を投与する工程を含む、ガンのリンパ節転移を抑制する方法に関する。
別の実施態様において、本発明は、配列表の配列番号3に示される塩基配列で示されるヒトC反応性タンパク質遺伝子の部分配列の第422番目の塩基の遺伝子型がT/Tタイプであると判定されたリンパ節転移の少ないガン患者に対して投与するための、C反応性タンパク質を有効成分として含む、ガンのリンパ節転移抑制剤に関する。
即ち、別の実施態様において、本発明は、ガン患者において配列表の配列番号3に示される塩基配列で示されるヒトC反応性タンパク質遺伝子の部分配列の第422番目の塩基の遺伝子型を決定する工程、及び前記工程において前記遺伝子型がT/Tタイプであると判定されたリンパ節転移の少ないガン患者に対してC反応性タンパク質を投与する工程を含む、ガンのリンパ節転移を抑制する方法に関する。
別の実施態様において、本発明は、ガン患者において配列表の配列番号3に示される塩基配列で示されるヒトC反応性タンパク質遺伝子の部分配列の第422番目の塩基の遺伝子型を決定する工程、当該ガン患者においてリンパ節転移の個数を決定する工程、及び前記工程において前記遺伝子型がT/Tタイプであると判定され、かつ、リンパ節転移がないと診断されたガン患者に対してC反応性タンパク質を投与する工程を含む、ガンのリンパ節転移を抑制する方法に関する。
別の実施態様において、本発明は、ガン患者において配列表の配列番号3に示される塩基配列で示されるヒトC反応性タンパク質遺伝子の部分配列の第422番目の塩基の遺伝子型を決定する工程、当該ガン患者においてリンパ節転移の個数を決定する工程、及び前記工程において前記遺伝子型がT/Tタイプであると判定され、かつ、リンパ節転移が少ないと診断されたガン患者に対してC反応性タンパク質を投与する工程を含む、ガンのリンパ節転移を抑制する方法に関する。
別の実施態様において、本発明は、ガン患者からゲノムDNAを含む生物学的試料を取得する工程、当該ガン患者において配列表の配列番号3に示される塩基配列で示されるヒトC反応性タンパク質遺伝子の部分配列の第422番目の塩基の遺伝子型を決定する工程、当該ガン患者においてリンパ節転移の個数を決定する工程、及び前記工程において前記遺伝子型がT/Tタイプであると判定され、かつ、リンパ節転移がないと診断されたガン患者に対してC反応性タンパク質を投与する工程を含む、ガンのリンパ節転移を抑制する方法に関する。
別の実施態様において、本発明は、ガン患者からゲノムDNAを含む生物学的試料を取得する工程、当該ガン患者において配列表の配列番号3に示される塩基配列で示されるヒトC反応性タンパク質遺伝子の部分配列の第422番目の塩基の遺伝子型を決定する工程、当該ガン患者においてリンパ節転移の個数を決定する工程、及び前記工程において前記遺伝子型がT/Tタイプであると判定され、かつ、リンパ節転移が少ないと診断されたガン患者に対してC反応性タンパク質を投与する工程を含む、ガンのリンパ節転移を抑制する方法に関する。

【0024】
この同定のためのプライマーには、CRP遺伝子を含むDNAを増幅し得るものがすべて含まれる。プライマーの塩基長としては10塩基以上が好ましく、15塩基以上がさらに好ましい。また、各プライマーは、単一のオリゴヌクレオチドであってもよく、複数のオリゴヌクレオチドの混合物であってもよい。
PCRにおけるプライマーの例としてForwardプライマー:5,-CTT ATA GAC CTG GGC AGT-3,(配列番号4)、Reverseプライマー:5,-GGA GTG AGA CAT CTT CTT G-3,(配列番号5)が挙げられる。また、制限酵素としてBst4CIが挙げられる。PCRにおけるプライマー以外の材料や条件、制限酵素の適用、電気泳動や検出等は慣用の方法と同様でよい。

【0025】
本発明の「リンパ節転移抑制剤」はさらに、リンパ節転移のリスクを判定するための試薬等と組み合わせて、キットとして提供することもできる。
このようなキットとして、例えば、本発明の「リンパ節転移抑制剤」に、配列表の配列番号3に示される塩基配列で表されるヒトC反応性タンパク質遺伝子の部分配列の第422番目の塩基を含む領域を増幅するためのプライマーと、RFLPにより該第422番目の塩基における遺伝子型を判定するための制限酵素等を組み合わせ、これらを含むキットとすることもできる。
キットの形態として、これらのプライマーや、遺伝子型を同定するために必要な試薬類は、予めパッケージングしてキット化することができる。具体的には、本発明のプライマーあるいはループプライマーとして必要な各種のオリゴヌクレオチド、核酸合成の基質となる4種類のdNTP(dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP)、鎖置換活性を有する上記の鋳型依存性核酸合成酵素、酵素反応に好適な条件を与える緩衝液、補助因子としての塩類(マグネシウム塩またはマンガン塩等)、酵素や鋳型を安定化する保護剤、さらに制限酵素、および必要に応じて反応生成物の検出に必要な試薬類がキットとして提供される。また、標的核酸とハイブリダイズし得るプローブDNAを構成試薬としてキット化してもよい。

【0026】
本明細書の各用語は、通常使用されている意味を有するが、「ガンのリンパ節転移抑制剤」において、「リンパ節」とは「リンパ節」および「リンパ管」を総称して用いる場合や「リンパ組織」を意味する場合が含まれる。
また「リンパ節転移の判定」とは、リンパ節におけるガン細胞の存在の有無を判定すること、「リンパ節転移のリスクの判定」とは、ある個体がガンを罹患した場合に、原発巣からリンパ節にガン細胞が転移する可能性の有無・高低を判定することが含まれる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
[実験材料および実験方法]
腫瘍細胞
マウスの扁平上皮ガンの株化細胞であるNR-S1M細胞を腫瘍細胞として使用した。
NR-S1M細胞は、C3H/Heマウス系統において自然に生じ、リンパ節へ高頻度で転移する。この細胞を、加熱により不活性化したウシ胎児の血清(GIBCO)10%、抗生物質(ペニシリン、ストレポトマイシン、アムフォテリシン;GIBCO)を加えたRPMI-1640培養液(Sigma-Aldrich, Saint Louis, MO)中で、37℃、炭酸ガス5%空気95%の雰囲気下で培養した。
【実施例】
【0029】
リンパ節転移の動物モデル
C3H/HeNマウス(6-8週齢)を日本クレア株式会社から得た。動物実験は秋田大学大学院の動物倫理委員会規定に則って行った。
27ゲージのシリンジを使用して、NR-S1M細胞(5x106個)をエーテル麻酔したC3H/HeNマウスの背中および尾の近くに皮下注射した。
CRPグループのマウス(n=10)には同時に、100μLのPBSに10μg/mLの組み換えマウスCRP(r-CRP、R&D Systems)を加えたものを、首に近い背中に皮下注射で投与した(1μg CRP/100μL PBS)。コントロールグループのマウス(n=20)には、100μLのPBSを同様に投与した。2つのグループにはそれぞれr-CRPまたはPBSを、5週にわたって3日ごとに、全12回投与した。
5週間経過後、マウスから腫瘍とそ径部のリンパ節を抽出した。分析のためいずれの腫瘍についても2つの組織サンプルに分割し、1つは-80℃で凍結保存し、もう1つは10%のパラホルムアルデヒドに固定した。リンパ節はいずれも10%のパラホルムアルデヒドに固定した。
【実施例】
【0030】
マウスの血清CRP濃度
マウスの血清CRP濃度は、マウスCreative Protein Detection Kit ELISA(Helica biosystmes)により、このキットのプロトコルに従って測定した。
【実施例】
【0031】
リンパ節転移の評価
固定したリンパ節を4μm厚の切片に切り、これらの切片をキシレンおよびエタノール中に入れ脱パラフィンした後、1mmol/LのEDTAを含む10mmol/Lのトリス緩衝液(pH9)中に入れ、5分間マイクロ波(750W)を照射した。
その後、該切片を3%H2O2中で15分間インキュベートして内因性のペルオキシダーゼをブロックした後、10%ヤギ血清(ニチレイ)中で30分間インキュベートして非特異的結合部位をブロックした。
これを一次抗体であるマウスモノクローナル抗パンサイトケラチン(AE1/AE3)抗体(1:200希釈、sc-81714, Santa Cruz Biotechnology)とともに、60分間インキュベートした。その後、ブロッキング緩衝液で10分間インキュベートし、さらにペルオキシダーゼ標識抗マウス抗体(MAX-PO(M))(Histofine Mousestain Kit)とともに10分間インキュベートした。
ジアミノベンジジン(ニチレイ)を発色用の試薬とし、5分間反応させた。すべての反応は室温で行い、マウスモノクローナル抗パンサイトケラチン(AE1/AE3)抗体に陽性のリンパ節を転移陽性と定義した。
各リンパ節部位におけるマウスモノクローナル抗パンサイトケラチン(AE1/AE3)抗体に陽性のエリアを40倍率で検査した。マウスモノクローナル抗パンサイトケラチン(AE1/AE3)抗体で染色されたすべてのリンパ節切片についてデジタル画像で検査し、マウスモノクローナル抗パンサイトケラチン(AE1/AE3)抗体に陽性のエリア(全リンパ節エリアのパーセンテージ)についてはImageJソフトウェア(NIH:National Institute of Health)で計算した。
【実施例】
【0032】
移植した腫瘍のリンパ脈管新生(Lymphangiogenesis)の評価
腫瘍切片(4μm)を、まずウサギのポリクロナールanti-lymphatic vessel endothelial hysluronan receptor-1 (LYVE-1)抗体(1:200希釈、ab14917、Abcam)(以下、LYVE-1抗体と示す場合がある)とともに60分間インキュベートした後、ペルオキシダーゼ標識抗ウサギ抗体(MAX-PO(R))(Histofine Simple Stain Mouse、 ニチレイ)とともに10分間インキュベートした。免疫組織化学(Immunohistochemistry)については上記と同様に行った。
リンパ脈管新生(Lymphangiogenesis)は光顕微鏡下200倍率で、腫瘍組織中のLYVE-1抗体に陽性のリンパ管を評価した。
LYVE-1抗体で染色されたすべての腫瘍のデジタル画像を撮り、LYVE-1抗体に陽性のエリア(全組織面積に対するパーセンテージ)を、ImageJソフトウェアを使用して計算した。
【実施例】
【0033】
凍結した腫瘍サンプルについてはTissueLyser II(Quiagen)により、Qproteome Mammalian Protein Prep Kit (Quiagen)のプロトコルに従って分解した。
分解した試料のタンパク質含有量を標準的なBCAアッセイを使用して測定定量し、10μgのタンパク質を12.5%SDS-PAGEで泳動し、PVDF膜(Atto)に転写した。0.1%Tween 20(TBS-T)を含むTrisで緩衝した3%のスキムミルクにより、PVDF膜を60分間、室温でブロックし、5分間TBS-Tで3回洗浄した。
その後、このPVDF膜をウサギポリクロナール抗LYVE-1抗体(1:5000希釈、sc-2004、Santa Cruz Biotechnology)とともに、さらに60分間、室温でインキュベートし、5分間TBS-Tで3回洗浄した。
このPVDF膜を高性能化学蛍光試薬(sc-2048、Santa Cruz Biotechnology)にさらし、放射線写真撮影露光の後現像した。
【実施例】
【0034】
遠隔転移の評価
NR-S1M細胞を接種して、5週間経過後のマウス(n=3)について、イソフルラン麻酔下でスキャンした。遠い器官への転移はインビボマイクロX線CTシステム(R_mCT2、Rigaku)を使用して評価した。
【実施例】
【0035】
統計的分析
CRPグループとコントロールグループの転移率の相違は、Fisherのexact testを使用して行った。該2つのグループ間での、リンパ節転移とLYVE-1抗体陽性エリアの相違はWilcoxon signed-rank testを使用して行った。統計学的分析はJMP 9(SAS Institute)を使用して行った。P<0.05の場合に相違に有意性があるものとした。【0036】
[結果]
マウスにおける血清CRP濃度
組み換えマウスCRPの皮下注射後6日で、血清CRP濃度は5.77±1.26ng/mLに増加した。その後、12日後には血清CRP濃度は8.51±3.60ng/mLまで、18日後には9.91±4.30ng/mLまで、徐々に増加し続けた(図1)。
【実施例】
【0037】
リンパ節転移
CRPグループおよびコントロールグループにおける全てのマウスにおいて、NR-S1M細胞を移植してから7日後に、腫瘍形成が認められた。腫瘍細胞を移植してから5週間経過後も、2つのグループ間で腫瘍の大きさに有意な相違はなかった(コントロールグループで3.51±2.47cm3、CRPグループで2.47±1.41cm3、P=0.301;図2、A)。リンパ節腫大はマウスの外観からは探知できないが、切開後皮下で腫大したそ径部リンパ腺を発見し、摘出した。
摘出したリンパ節の平均数は、コントロールグループで1匹当たり1.35±0.49個で、CRPグループでは1.5±0.53個(P=0.452)であった。CRPグループのマウスにおけるリンパ節の大きさはコントロールグループのマウスに比べて明らかに小さかった(1.55±1.54mm3対5.80±8.36mm3、P=0.0437;図2、B)。
CTスキャンでどのマウスも臓器への転移は示さなかったことを確認した。
そ径部への転移はコントロールグループのマウスでは70%(14/20)で、CRPグループのマウスでは30%(3/10)であった(表1、図3)。さらに、転移エリアのパーセンテージはコントロールグループでは29.2±34.6%であったが、CRPグループでは10.1±24.2%であった(P=0.0411;図4)。したがってCRPの投与はリンパ節転移を抑制することが示唆された。
【実施例】
【0038】
【表1】
JP0005713306B2_000002t.gif
【実施例】
【0039】
リンパ脈管新生(Lymphangiogenesis)
図5のA、Bで示されるように、腫瘍はLYVE-1抗体で染色された。1つの腫瘍部位あたりの、LYVE-1に陽性のエリアは、コントロールグループのマウスにおいては0.073±0.076%で、CRPグループのマウスでは0.025±0.025%であった。
LYVE-1抗体に陽性のエリアがCRPマウスの腫瘍では明らかに小さい(P=0.0488、図6、A)ことから、CRPが腫瘍のリンパ脈管新生(Lymphangiogenesis)を抑制することが示唆された。
Westernブロッティング分析(図6、B)においても、CRPグループのマウスの腫瘍中に存在するLYVE-1タンパク質の全濃度が、コントロールグループのマウスの腫瘍中の濃度より低いことが示され、免疫染色を用いたLYVE-1タンパク質解析結果と矛盾しないことが確認できた。
【実施例】
【0040】
従って、これらの結果から、C反応性タンパク質がガンのリンパ節転移抑制剤の有効成分となり得ることが予測された。さらに、C反応性タンパク質遺伝子の一塩基多型を同定し、リンパ節転移のリスクを判定した上で、リンパ節転移リスクの高い患者に使用することで、効果的な治療を行うことが可能になると示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のガンのリンパ節転移抑制剤は、化学療法(抗ガン剤治療)、放射線治療等と併用し得る剤として提供することができる。
さらに、C反応性タンパク質の遺伝子型に基づいてリンパ節転移リスクを予測する方法に使用する試薬等と組み合わせ、効果的にガン治療を行うことが可能なキットとして提供することもできる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3A】
2
【図3B】
3
【図3C】
4
【図3D】
5
【図4】
6
【図5A】
7
【図5B】
8
【図6A】
9
【図6B】
10