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明細書 :磁性材料及び磁性材料の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5681839号 (P5681839)
登録日 平成27年1月16日(2015.1.16)
発行日 平成27年3月11日(2015.3.11)
発明の名称または考案の名称 磁性材料及び磁性材料の製造方法
国際特許分類 H01F   1/04        (2006.01)
H01F   1/08        (2006.01)
H01F  41/02        (2006.01)
C22C  29/16        (2006.01)
C22C   1/05        (2006.01)
B22F   1/00        (2006.01)
B22F   3/24        (2006.01)
B22F   3/00        (2006.01)
FI H01F 1/04 Z
H01F 1/08 A
H01F 41/02 G
C22C 29/16 H
C22C 1/05 L
B22F 1/00 C
B22F 3/24 A
B22F 3/00 F
請求項の数または発明の数 8
全頁数 28
出願番号 特願2014-535840 (P2014-535840)
出願日 平成26年1月7日(2014.1.7)
国際出願番号 PCT/JP2014/050078
国際公開番号 WO2014/112406
国際公開日 平成26年7月24日(2014.7.24)
優先権出願番号 2013005507
優先日 平成25年1月16日(2013.1.16)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年7月24日(2014.7.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】杉本 諭
【氏名】磯谷 桂太
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100124291、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 悟
【識別番号】100161425、【弁理士】、【氏名又は名称】大森 鉄平
審査官 【審査官】池田 安希子
参考文献・文献 特開2012-140324(JP,A)
特開2009-249682(JP,A)
国際公開第2008/081647(WO,A1)
調査した分野 H01F 1/04
B22F 1/00
B22F 3/00
B22F 3/24
C22C 1/05
C22C 29/16
H01F 1/08
H01F 41/02
特許請求の範囲 【請求項1】
内部組織が相分離により少なくとも第1相及び第2相が析出している組織を有しており、前記第1相及び前記第2相の少なくとも一方はペロブスカイト構造をとる化合物を有し、前記第1相及び前記第2相がMn、Sn及びNを含み、
組成式(MnSn100-dで表され、
a+b+c=100、30≦a≦90、5≦b≦35、0≦c≦35、かつ、10≦dであり、
元素Xは、Co、Fe、Cr、Nb、Ga、Cu、V、Ni、Zr、Ti、Zn及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種である、磁性材料。
【請求項2】
Co、Fe、Cr、Nb、Ga、Cu、V、Ni、Zr、Ti、Zn及びAlのうち少なくとも1以上を構成元素として更に含む、請求項1に記載の磁性材料。
【請求項3】
前記第1相は少なくともMnN又はMnSnNを含む請求項1又は2に記載の磁性材料。
【請求項4】
前記第2相は少なくともβ—Mn又はα—Mnを含む請求項1~の何れか一項に記載の磁性材料。
【請求項5】
請求項1~の何れか一項に記載の磁性材料を製造する方法であって、
窒素を除く金属構成元素を溶解し合金化する溶解ステップと、
前記溶解ステップによって得られた合金を粉末化する粉末化ステップと、
前記粉末化ステップによって得られる粉末を窒素源が含有される雰囲気内で熱処理する熱処理ステップと、
を含む前記磁性材料の製造方法。
【請求項6】
前記粉末化ステップによって得られる粉末を圧縮成形する成形ステップをさらに含み、
前記熱処理ステップは、前記成形ステップによって得られる成形体を窒素源が含有される雰囲気内で熱処理する請求項に記載の前記磁性材料の製造方法。
【請求項7】
請求項1~の何れか一項に記載の磁性材料を製造する方法であって、
前記磁性材料を構成する元素を含む窒化物粉末又は金属粉末を混合する混合ステップと、
前記混合ステップによって混合された粉末を圧縮成形する成形ステップと、
前記成形ステップによって成形された成形体を窒素源が含有される雰囲気内で熱処理する熱処理ステップと、
を含む前記磁性材料の製造方法。
【請求項8】
前記熱処理ステップでは、磁場中で熱処理を行う請求項の何れか一項に記載の磁性材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性材料及び磁性材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遷移金属をベースとした合金系磁石が知られている(例えば、非特許文献1)。非特許文献1には、FeCo等の粒子を非磁性中に分散させることにより、形状磁気異方性に起因して40~80kA/m程度の保磁力が発現することが記載されている。また、形状磁気異方性に起因した保磁力を有する磁石として、Fe、Al、Ni、Co、Cu、Tiを基本とする多元系合金の磁石(アルニコ磁石)が記載されており、その保磁力は、40~130kA/m程度である。また、磁気異方性に起因して保磁力が発現する化合物としてBaO・6FeやSrO・6FeなどのM型フェライト化合物が記載されている。
【0003】
一方、希土類元素などの4f電子を有する元素、又は、Gaなどの半金属元素と、Fe、Co、Ni、Mnなどの遷移金属元素との化合物を利用した希土類磁石が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、希土類磁石は、一般的な永久磁石であるフェライト等に比べて保磁力等の磁気特性が優れていると記載されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2011-14600号公報
【0005】

【非特許文献1】佐川眞人編「永久磁石—材料科学と応用—」株式会社アグネ技術センター、2007年9月15日、p.170、p.174、p.194
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載される希土類磁石等、希土類元素を用いた磁性材料は、一般に耐蝕性が低いため、コーティングを施さなければならない。また、希土類元素などのレアメタルを材料として用いることはコスト高の原因となる。
【0007】
このため、本技術分野では、耐蝕性を損なうことなく磁気特性を向上させることができる磁性材料が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る磁性材料は、内部組織が相分離により少なくとも第1相及び第2相が析出している組織を有しており、第1相及び第2相の少なくとも一方はペロブスカイト構造をとる化合物を有し、第1相及び第2相がMn、Sn及びNを含み、組成式(MnSn100-dで表され、a+b+c=100、30≦a≦90、5≦b≦35、0≦c≦35、かつ、10≦dであり、元素Xは、Co、Fe、Cr、Nb、Ga、Cu、V、Ni、Zr、Ti、Zn及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種である
【0009】
この磁性材料によれば、内部組織が少なくとも第1相及び第2相に相分離し、第1相及び第2相がMn、Sn及びNを構成元素として含むように分離する。第1相及び第2相の少なくとも一方はペロブスカイト構造をとる化合物を有する。例えば、相分離により第1相が主にMnN(ペロブスカイト構造)又はMnSnN(ペロブスカイト構造)を含み、第2相が主にα—Mn又はβ—Mnを含むように2相に分離した場合には、保磁力を向上させた磁性材料を得ることができる。さらに、希土類元素を磁性材料に含むことなく保磁力を向上させることができるので、保磁力を向上させることと耐蝕性を有することを両立させることができる。よって、耐蝕性を損なうことなく保磁力等の磁気特性を向上させることができる。また、このような組成とすることで、耐蝕性を損なうことなく磁性材料の磁気特性をさらに向上させることができる。
【0010】
一実施形態では、Co、Fe、Cr、Nb、Ga、Cu、V、Ni、Zr、Ti、Zn及びAlのうち少なくとも1以上を構成元素として更に含んで構成されていてもよい。第1相に含まれるMnN又はMnSnNを構成する元素のうち少なくとも一部が、Co、Fe、Cr、Nb、Ga、Cu、V、Ni、Zr、Ti、Zn及びAlのうち少なくとも1以上の元素と置換される。これらの元素を含むことで、磁性材料の磁気特性をさらに向上させることができる。
【0012】
本発明の一側面に係る磁性材料の製造方法は、上述した磁性材料を製造する方法であって、窒素を除く金属構成元素を溶解し合金化する溶解ステップと、前記溶解ステップによって得られた合金を粉末化する粉末化ステップと、前記粉末化ステップによって得られる粉末を窒素源が含有される雰囲気内で熱処理する熱処理ステップと、を含む。
【0013】
この製造方法では、まず、溶解ステップにおいて、磁性材料を構成する元素のうちNを除く元素が溶解され、金属の合金が得られる。そして、粉末化ステップでは、溶解ステップで得られる金属の合金が粉末化される。さらに、熱処理ステップでは、粉末化ステップによって得られる合金の粉末が窒素源を含有する雰囲気内で熱処理され、焼結体となる。また、溶解ステップにおいて、Co、Fe、Cr、Nb、Ga、Cu、V、Ni、Zr、Ti、Zn及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素と、Mn及びSnとが一緒に溶解された場合には、MnN又はMnSnNを構成する元素のうち少なくとも一部が、Co、Fe、Cr、Nb、Ga、Cu、V、Ni、Zr、Ti、Zn及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素と置換された磁性材料が得られる。このように、磁気特性を向上させた磁性材料を製造することができる。さらに、希土類元素を磁性材料に含むことなく磁性材料を製造することができるので、保磁力を向上させることと耐蝕性を有することを両立させた磁性材料を製造することができる。よって、耐蝕性を損なうことなく保磁力等の磁気特性を向上させた磁性材料を製造することができる。
【0014】
一実施形態では、粉末化ステップによって得られる粉末を圧縮成形する成形ステップをさらに含み、熱処理ステップは、成形ステップによって得られる成形体を窒素源が含有される雰囲気内で熱処理してもよい。このように構成すると、粉末を圧縮成形されたバルク体の磁性材料を製造することができる。
【0015】
本発明の他の側面に係る磁性材料の製造方法は、上述した磁性材料を製造する方法であって、磁性材料を構成する元素を含む窒化物粉末又は金属粉末を混合する混合ステップと、混合ステップによって混合された粉末を圧縮成形する成形ステップと、成形ステップによって成形された成形体を窒素源が含有される雰囲気内で熱処理する熱処理ステップと、を含む。
【0016】
この製造方法では、まず、混合ステップにおいて、磁性材料を構成する窒化物粉末又は金属粉末が混合される。そして、成形ステップでは、混合された粉末が圧縮成形される。さらに、熱処理ステップでは、成形ステップによって圧縮成形された窒化物粉末又は金属粉末が、窒素源を含有した雰囲気内で熱処理される。このため、例えば、MnN又はMnSnNを含む焼結体を製造することができる。ここで、粉末状のMnは粉末状の窒化したMnであってもよい。また、Co、Fe、Cr、Nb、Ga、Cu、V、Ni、Zr、Ti、Zn及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含む粉末と、Mn及びSnの粉末とを一緒に熱処理する場合には、MnN又はMnSnNを構成する元素のうち少なくとも一部が、Co、Fe、Cr、Nb、Ga、Cu、V、Ni、Zr、Ti、Zn及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素と置換された焼結体を製造することが可能となる。このように、磁気特性を向上させた磁性材料を製造することができる。さらに、希土類元素を磁性材料に含むことなく磁性材料を製造することが可能となるので、保磁力を向上させることと耐蝕性を有することを両立させた磁性材料を製造することができる。よって、耐蝕性を損なうことなく保磁力等の磁気特性を向上させた磁性材料を製造することができる。
【0017】
一実施形態において、熱処理ステップでは、磁場中で熱処理を行ってもよい。このように構成すると、磁気異方性の高い磁性材料を製造することができる。さらに、磁化の向きを制御しつつ磁性材料を製造することができるため、保磁力等の磁気特性を向上させた磁性材料を製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の種々の側面及び実施形態によれば、耐蝕性を損なうことなく磁気特性を向上させることができる磁性材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】磁性材料の第1製造方法の流れを示すフローチャートである。
【図2】磁性材料の第2製造方法の流れを示すフローチャートである。
【図3】(A)は窒化処理前のMn85SnCo10のX線回析パターンの結果を示し、(B)は窒化処理後のMn85SnCo10のX線回析パターンの結果を示す図である。
【図4】窒化処理前のMn85SnCo10の反射電子像を示す図である。
【図5】窒化処理後のMn85SnCo10の反射電子像を示す図である。
【図6】(A)は窒化処理前のMn70Sn15Fe15のX線回析パターンの結果を示し、(B)は窒化処理後のMn70Fe15Sn15のX線回析パターンの結果を示す図である。
【図7】窒化処理前のMn70Sn15Fe15の反射電子像を示す図である。
【図8】窒化処理後のMn70Sn15Fe15の反射電子像を示す図である。
【図9】一実施形態における第1相の結晶構造を説明するための図である。
【図10】(A)は窒化処理前の磁性材料のX線回析パターンの結果を示し、(B)は窒化処理後の磁性材料のX線回析パターンの結果を示す図である。
【図11】窒化処理前の磁性材料の反射電子像を示す図である。
【図12】窒化処理後の磁性材料の反射電子像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の一実施形態について具体的に説明する。

【0021】
(磁性材料)
磁性材料はMn、Sn及びNを構成元素として含有し内部組織を構成している。磁性材料の内部組織は、少なくとも第1相及び第2相に相分離している。第1相及び第2相の少なくとも一方はペロブスカイト構造をとる化合物を有している。なお、本実施形態において、ペロブスカイト構造とは、歪んだペロブスカイト型及び逆ペロブスカイト型を含む。

【0022】
第1相及び第2相はMn、Sn及びNを含んでいる。磁性材料は相分離により、例えば、第1相が主にMnN又はMnSnNを含む相と、第2相が主にα—Mn又はβ—Mnを含む相とに分離する。すなわち、第1相が磁性相となっており、磁化の値は、第1相のMnN又はMnSnNが原因となり発現する。そして、このように2相が分離し、磁性相である第1相が第2相中に微細な組織として析出することにより保磁力が向上する。また、この磁性材料を構成する元素に希土類元素を含まないように構成することで、耐蝕性を有する磁性材料を得ることができる。

【0023】
ここで、図9を参照して、本実施形態における第1相の結晶構造について説明する。第1相は、ペロブスカイト構造1をとる化合物を有している。このような化合物は、例えば、MnNがあげられる。この場合、ペロブスカイト構造1は、理想的には、MnとNからなる立方晶の単位格子をしている。立方晶の各頂点には、Mn原子が配置している。立方晶の各面心には、Mn原子が配置している。立方晶の体心には、N原子が配置している。ペロブスカイト構造1において、MnNは、原子間の相互作用により容易に歪むため、結晶構造は容易に変化する。すなわち、MnNは、立方晶とは対称性が異なる結晶構造であってもよい。MnNは、結晶構造の一部が他の原子に置き換わった結晶構造であってもよい。

【0024】
さらに、磁性材料は、MnN又はMnNの一部がCo、Fe、Cr、Nb、Ga、Cu、V、Ni、Zr、Ti、Zn及びAlのうち少なくとも1以上の元素を含有していてもよい。この場合、第1相のMnN又はMnSnNを構成する元素のうち少なくとも一部が、Co、Fe、Cr、Nb、Ga、Cu、V、Ni、Zr、Ti、Zn及びAlのうち少なくとも1以上の元素と置換される。上記元素と置換した場合には、磁気特性に優れた元素を磁性材料内に含むことができるとともに、置換された元素によってMnN又はMnSnNの格子定数が変化して磁気特性に良好な影響を与える。このため、磁性材料の磁気特性を向上させることができる。保磁力の向上効果を得るためには、MnN又はMnSnNを構成する元素と置換する元素は、Co、Nb、Ga、Zr、Ti、Zn及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種としてもよい。また、飽和磁化の向上効果を得るためには、MnN又はMnSnNを構成する元素と置換する元素はFe、Cr、Cu、V及びNiからなる群より選ばれる少なくとも一種としてもよい。なお、上記の通り、Co、Fe、Cr、Nb、Ga、Cu、V、Ni、Zr、Ti、Zn及びAlのうち少なくとも1以上の元素により一部が置換されたMnN又はMnNは、ペロブスカイト構造をとる化合物である。

【0025】
また、組成式(MnSn100-dで表され、a+b+c=100、30≦a≦90、5≦b≦35、0≦c≦35、かつ、10≦dであり、元素Xは、Co、Fe、Cr、Nb、Ga、Cu、V、Ni、Zr、Ti、Zn及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。例えば、磁性材料を構成する各元素を構成割合は、所望の保磁力又は飽和磁化等の磁気特性に応じて適宜決定してよい。

【0026】
上記構成によれば、高保磁力材料として周知の希土類-遷移金属化合物、白金族-遷移金属化合物、Ga-遷移金属化合物より安価であり、合金系磁石及びM型フェライト化合物よりも保磁力が大きく、かつ、希土類磁石よりも耐蝕性を有する磁性材料とすることができる。

【0027】
また、磁性材料は、希土類元素を含まない元素で構成されてもよい。磁性材料が希土類元素を含まない場合であっても、本発明の作用、効果を奏することができる。

【0028】
(磁性材料の構造評価)
本実施形態において、磁性材料としてMn80Co10Sn10の構造を評価した。構造評価には、X線回折装置及び走査電子顕微鏡を用いた。図10の(A)は、窒化処理前の磁性材料におけるX線回析パターンである。図10の(B)は、窒化処理後の磁性材料におけるX線回析パターンである。

【0029】
図10の(A)に示すように、窒化処理前の磁性材料は、β—Mnを含有していることが確認された。また、図10の(B)に示すように、磁性材料は、900℃にて窒化処理を行うことにより、ペロブスカイト構造が出現することが確認された。このように、窒化処理後において、ペロブスカイト構造が出現することが確認された。

【0030】
図11は、窒化処理前の磁性材料の反射電子像であり、図12は、窒化処理後の磁性材料の反射電子像である。

【0031】
図11に示すように、窒化処理前の磁性材料は、ほぼ単相の組織になっていることが確認された。図10の(A)のX線回折パターンの結果から、窒化処理前の磁性材料はβ—Mnの単相であると考えられる。

【0032】
一方、図12に示すように、窒化処理後の磁性材料は、2相分離組織になっていることが確認された。図10の(B)のX線回折パターンの結果から、窒化処理後の磁性材料はペロブスカイト構造をとる化合物を有する相と、β—Mnとの2相分離組織であると考えられる。

【0033】
さらに図12に示す窒化処理後の磁性材料は、異なる組織の幅が2μm以下であった。このように、窒化処理後の磁性材料内の組織は微細化されていることが確認された。

【0034】
以上、図10から図12の結果により、ペロブスカイト構造を主に有する磁性相が析出することにより、磁性材料に磁化が発現することが確認された。そして、ペロブスカイト構造を主に有する相とβ—Mnを含有する相とに分離し、ペロブスカイト構造を主に有する磁性相が微細化されることによって保磁力及び飽和磁化等の磁気特性が向上したと考えられる。

【0035】
(磁性材料の第1製造方法)
以下、一実施形態に係る磁性材料の製造方法について説明する。図1を用いて、本実施形態における磁性材料の第1製造方法を示す。第1製造方法では磁性材料は、溶解ステップ、粉末化ステップ、成形ステップ及び熱処理ステップを経て製造される。各工程について、以下に説明する。尚、磁性材料の好適な製造方法は以下に限定されず、用いる材料や処理条件等は適宜変更することができる。

【0036】
溶解ステップS11では、磁性材料の原料を配合し、配合された磁性材料の原料をアーク溶解又は高周波溶解等によって金属合金を得る。磁性材料の原料としては、窒素を除く磁性材料を構成する元素(金属構成元素)のうちの1種又は2種以上を含む化合物が用いられる。例えば、Mn及びSnが用いられる。その他に、Fe、Co、Cr、Nb、Ga、Cu、V、Ni、Zr、Ti、Zn及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含んでもよい。例えば、MnSnを主成分とする磁性材料を製造する場合には、Mn及びSnのみを材料として選択すればよい。また、例えば、MnSnFeを主成分とする磁性材料を製造する場合には、Mn、Sn及びFeのみを材料として選択すればよい。このように、溶解ステップS11では、アーク溶解又は高周波溶解等により所望の組成になるように秤量して配合した材料を溶解する。尚、磁性材料の原料は、磁性材料を構成する元素を含む酸化物又は焼成により酸化物となる化合物(炭酸塩、水酸化物、硝酸塩等)であってもよい。また、必要に応じてその他の副成分の原料化合物(元素単体、酸化物等)を配合してもよい。

【0037】
粉末化ステップS12では、例えば、水アトマイズ法、又はガスアトマイズ法等を採用することができる。水アトマイズ法を用いた場合には、溶解ステップS11で得られる合金をるつぼで溶湯にし、るつぼ底部の小孔から流下させ、溶湯に高圧水を噴射し水冷して、凝固化及び粉末化する。あるいは、ガスアトマイズ法を用いた場合には、溶解ステップS11で得られる合金をるつぼで溶湯にし、るつぼ底部の小孔から流下させ、溶湯に高圧ガスを噴射し空冷して、凝固化及び粉末化する。ガスアトマイズ法で用いられるガスは、不活性ガスを用いてよく、例えばアルゴンガスとしてもよい。あるいは、不活性ガスの代わりに、窒素を含有したガスを用いてもよい。さらに、ガスアトマイズ法と水アトマイズ法とを組み合わせて用いてもよい。

【0038】
成形ステップS13では、粉末化ステップS12で得られた粉末(原料粉末)を圧縮成形する。成形の圧力は約5×10kg/m程度としてもよい。尚、成形ステップS13において、金型を用いて押下成形してもよい。金型は、押下方向に垂直な平面の断面形状が略多角形状又は略円形状であってもよい。さらに、押下方向に垂直な平面の断面形状の直径(φ)が8~14mm程度の略円形状であってもよい。

【0039】
熱処理ステップS14では、成形ステップS13で得られた成形体を窒素源が含有される雰囲気中で焼成(熱処理)して焼結体とする。窒素源としては、気体の窒素であってもよいし気体の窒素化合物(アンモニア等)であってもよい。焼成の温度は、例えば、窒素雰囲気中で行い、900~1250℃の温度範囲としてもよい。焼成の温度を保持する時間は10時間以下とすることができ、5時間以下としてもよい。さらに焼成の後、毎分0.5℃程度の温度勾配で300℃まで降温させることにより、焼成体を得ることができる。なお、焼成の温度を保持する時間並びに降温する時間及び温度勾配は、組成によって適宜変更してもよい。熱処理ステップS14において、窒化したMn及びSnの粉末は焼結し、MnN又はMnSnNを第一相に含む磁性材料となる。そして、Mn及びSnの粉末がCo、Fe、Cr、Nb、Ga、Cu、V、Ni、Zr、Ti、Zn及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含む場合には、MnN又はMnSnNを構成する元素のうち少なくとも一部が、Co、Fe、Cr、Nb、Ga、Cu、V、Ni、Zr、Ti、Zn及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素と置換された磁性材料が製造される。

【0040】
以上で図1の処理を終了する。尚、上述した粉末化ステップS12の処理は、粉砕法を採用してもよい。粉砕法を用いた場合、溶解ステップS11で得られる合金を、例えば、粗い粉末となるように粉砕(粗粉砕)した後、これを更に微細に粉砕する(微粉砕)といった、2段階の工程で行ってもよい。そして、好適な粉砕時間は粉砕方法によって適宜設定してもよく、例えば1~10時間程度としてもよい。さらに、製品形態がボンド磁石用粉末のように粉末形状として用いる場合には、成形ステップS13を省略してもよい。

【0041】
さらに、熱処理ステップS14では、磁場中で熱処理して焼成体を得てもよい。印加する磁場は500kA/m以上(例えば2000kA/m程度)の静磁場としてもよい。この場合、磁気異方性の高い窒化物の焼結体を得ることができる。さらに、磁化の向きを制御しつつ磁性材料を製造することができるため、より保磁力又は飽和磁化の値が大きい磁性材料を製造することができる。

【0042】
以上、第1製造方法によれば、原料を溶解して合金化し、得られた合金を粉末化し、この粉末を成形した後に窒化させることで、実施形態に係る磁性材料を製造することができる。

【0043】
(磁性材料の第2製造方法)
以下、磁性材料の第2製造方法について説明する。図2は、磁性材料の第2製造方法を示すフローチャートである。第2製造方法により磁性材料は、混合ステップ、成形ステップ及び熱処理ステップを経て製造される。各工程について以下に説明する。尚、磁性材料の好適な製造方法は以下に限定されず、用いる材料や処理条件等は適宜変更することができる。

【0044】
まず、混合ステップS21では、磁性材料の原料を配合して、原料の組成物を得る。磁性材料の原料としては、磁性材料を構成する元素のうちの1種又は2種以上を含む化合物が挙げられ、例えば、Mn及びSnである。さらに、Fe、Cr、Nb、Ga、Cu、V、Ni、Zr、Ti、Zn及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含んでもよい。また、磁性材料を構成する元素を含む窒化物粉末又は金属粉末を混合してもよい。

【0045】
そして、混合ステップS21では、各原料を、所望とする磁性材料の組成が得られるように秤量し混合する。各原料を混合した後、ボールミル等の粉砕機を用いて混粉砕処理する。このように、磁性材料を構成する窒化物粉末又は金属粉末は、混合ステップにより混合される。なお、この混合ステップS21において全ての原料を混合する必要はなく、一部は後述する成形ステップS22後に添加してもよい。

【0046】
次に、成形ステップS22では、混合ステップS21で得られた原料粉末を圧縮成形する。成形の圧力は約5×10kg/m程度としてもよい。尚、成形ステップにおいて、金型を用いて押下成形してもよい。金型は、押下方向に垂直な平面の断面形状が略多角形状又は略円形状であってもよい。さらに、押下方向に垂直な平面の断面形状が直径8~14mm程度の略円形状としてもよい。

【0047】
そして、熱処理ステップS23では、成形ステップS22で得られた成形体を窒素源が含有される雰囲気中で焼成(熱処理)して焼結体とする。窒素源としては、気体の窒素であってもよいし気体の窒素化合物(アンモニア等)であってもよい。焼成の温度は、例えば、窒素雰囲気中で行い、900~1250℃の温度範囲としてもよい。焼成の温度を保持する時間は10時間以下としてもよく、あるいは、5時間以下としてもよい。さらに焼成の後、毎分0.5℃程度の温度勾配で300℃まで降温させることにより、焼成体が得られる。熱処理ステップS23において、窒化したMn及びSnの粉末が、MnN又はMnSnNを含む焼結体となる。そして、Mn及びSnの粉末がCo、Fe、Cr、Nb、Ga、Cu、V、Ni、Zr、Ti、Zn及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含む場合には、MnN又はMnSnNを構成する元素のうち少なくとも一部が、Co、Fe、Cr、Nb、Ga、Cu、V、Ni、Zr、Ti、Zn及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素と置換された磁性材料が製造される。

【0048】
尚、熱処理ステップS23は、磁場中で熱処理して、焼成体を得てもよい。例えば、印加する磁場は500kA/m以上(例えば2000kA/m程度)の静磁場としてもよい。この場合、磁気異方性の高い窒化物の焼結体を得ることができる。さらに、磁化の向きを制御しつつ磁性材料を製造することができるため、より保磁力又は飽和磁化の値が大きい磁性材料を製造することができる。

【0049】
以上、第2製造方法によれば、混合された金属粉末を成形し窒化させることで、実施形態に係る磁性材料を製造することができる。

【0050】
上述したように、好適な実施形態に係る磁性材料及びその製造方法について説明したが、本実施形態により得られる磁性材料及びその製造方法は上述した形態に限定されるものではなく、変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。

【0051】
上記実施形態では、第1相がペロブスカイト構造をとる化合物を有する場合を説明したが、これに限定されない。例えば、第1相及び第2相がペロブスカイト構造をとる化合物を有していてもよい。このように構成された場合であっても、上記の作用、効果を奏することができる。
【実施例】
【0052】
以下、上記効果を説明すべく本発明者が実施した実施例及び比較例について述べる。
【実施例】
【0053】
[窒化処理の有無による磁気特性及び構造の変化:MnSn磁性材料及びMnSnCo磁性材料]
(実施例1:窒化処理有り)
第1製造方法に基づいて磁性材料を製造した。まず、磁性材料の主成分の原料として、純度が99.9%の5~20mmのチップ状の電解金属Mnと、粒径5~8mmのショット状のCoと、粒径2~4mmのショット状のSnを準備した。そして、これらの原料を組成式:Mn95-cSnCo(c=0、5、10、15、20、25、30、35、40、50)となるように電子天秤で秤量し、各組成の原料の合計が30gとした。秤量した各原料をアーク溶解により合金化した(溶解ステップ)。さらに、この合金を900℃で20時間、Ar雰囲気下で熱処理を行った。得られた合金塊を鉄鉢で砕き、その粉末をふるいで分級し500μm以上1mm以下の粉末を得た(粉末化ステップ)。得られた粉末を窒素雰囲気中、900℃で5時間熱処理後、0.5℃/minで300℃まで降温した(熱処理ステップ)。これにより、磁性材料(Mn95-cSnCo100-d(0<d)を製造した。
【実施例】
【0054】
(比較例1:窒化処理無し)
実施例1において窒化処理をする前(熱処理ステップの前)で処理を止めた点以外は、実施例1と同一の製造を行った。
(MnSn磁性材料及びMnSnCo磁性材料の磁気特性の評価)
【実施例】
【0055】
実施例1及び比較例1の磁性材料の磁気測定を行い、保磁力H、飽和磁化Jを得た。測定条件は最大印加磁場を1600kA/m(20kOe)とした。磁気特性は理研電子製VSMを用いて測定した。測定条件は最大印加磁場が1600kA/m(20kOe)、室温下で測定した。得られた結果をまとめて表1に示す。
【表1】
JP0005681839B2_000002t.gif
【実施例】
【0056】
表1に示すように、MnSn磁性材料(c=0)において、窒化処理後の磁性材料(実施例1)は、窒化処理前の磁性材料(比較例1)に比べて、飽和磁化J及び保磁力Hの値が上昇した。この結果により、MnSn磁性材料を窒化処理することによって、磁気特性を向上させることが可能であることが確認された。また、保磁力Hは160kA/m(2kOe)以上の値を示し、また飽和磁化Jは100mT(1000G)以上の値を示した。この結果により、MnSn磁性材料が、従来の合金系磁石よりも保磁力Hが大きい高保磁力材料であることが確認された。
【実施例】
【0057】
また、表1に示すように、MnSnCo磁性材料(0<c)において、窒化処理後の磁性材料(実施例1)は、窒化処理前の磁性材料(比較例1)に比べて、飽和磁化Jと、保磁力Hの値が上昇した。この結果により、MnSnCo磁性材料を窒化処理することによって、磁気特性を向上させることが可能であることが確認された。保磁力HはCoの組成比cが0<c≦35の範囲で160kA/m(2kOe)以上の値を示し、また飽和磁化Jは0<c≦35の範囲で100mT(1000G)以上の値を示した。この結果により、MnSnCo磁性材料が、従来の合金系磁石及びM型フェライトよりも保磁力Hが大きい高保磁力材料であることが確認された。
【実施例】
【0058】
さらに、表1に示すように、窒化処理後において、MnSn磁性材料(c=0)とMnSnCo磁性材料(0<c≦35)とを比較すると、Coを含有した場合には、Coを含有しない場合に比べて飽和磁化Jはあまり変化しないものの、保磁力Hが大きく向上した。このように、保磁力Hを向上させるためには、Coを適切に含有させることが有効であることが確認された。
【実施例】
【0059】
(MnSnCo磁性材料の構造評価)
c=10とした実施例1(Mn85SnCo10100-d(0<d)の構造とc=10とした比較例1(Mn85SnCo10)の構造を評価した。構造評価には、X線回折装置及び走査電子顕微鏡を用いた。図3の(A)は、窒化処理前(比較例1)の磁性材料におけるX線回析パターンである。図3の(B)は、窒化処理後(実施例1)の磁性材料におけるX線回析パターンである。
【実施例】
【0060】
図3の(A)に示すように、比較例1の磁性材料(Mn85SnCo10)は、β—Mnを含有していることが確認された。また、図3の(B)に示すように、実施例1の磁性材料((Mn85SnCo10100-d(0<d))は、MnN及びβ—Mnを含有していることが確認された。このように、窒化処理後において、フェリ磁性であるMnNが出現することが確認された。
【実施例】
【0061】
図4は、比較例1の磁性材料の反射電子像であり、図5は、実施例1の磁性材料の反射電子像である。図4に示すように、比較例1の磁性材料は、ほぼ単相の組織になっていることが確認された。図3の(A)のX線回折パターンの結果から、比較例1の磁性材料はβ—Mnの単相であると考えられる。一方、図5に示すように、窒化処理後である実施例1の磁性材料は、2相分離組織になっていることが確認された。図3の(B)のX線回折パターンの結果から、実施例1の磁性材料はMnN及びβ—Mnの2相分離組織であると考えられる。さらに図5に示す実施例1の磁性材料は、異なる組織の幅が2μm以下であった。このように、実施例1の磁性材料内の組織は微細化されていることが確認された。
【実施例】
【0062】
以上、図3~5の結果により、MnNを主に含有する相が析出することにより、磁性材料に磁化が発現することが確認された。そして、MnNを含有する相とβ—Mnを含有する相とに分離し、MnNを含有する磁性相が微細化されることによって保磁力及び飽和磁化等の磁気特性が向上したと考えられる。
(MnSn磁性材料及びMnSnCo磁性材料の窒素量評価)
【実施例】
【0063】
実施例1の磁性材料の窒素量を評価した。結果を表2に示す。
【表2】
JP0005681839B2_000003t.gif
【実施例】
【0064】
表1に示す磁気特性を向上させることができるCo組成範囲(0≦c≦35)における窒素量は、表2に示すように10at%以上であること、すなわち10≦dであることが確認された。
【実施例】
【0065】
[窒化処理の有無による磁気特性及び構造の変化:MnSnFe材料]
(実施例2:窒化処理あり)
第2製造方法に基づいて磁性材料を製造した。磁性材料の主成分の原料として、純度が99.9%のチップ状の電解金属Mnを準備し、原料をAr雰囲気中でディスクミルにて粉砕し、平均粒径約300μmのMn粉を得た。次に得られたMn粉をN雰囲気中、500℃下で5時間熱処理を行うことによりMnNを合成した。さらに得られたMnNをボールミルにて微粉砕し、平均粒径約5.5μmのMnN粉末を得た。一方、平均粒3μmのカルボニルFe粉をアンモニア雰囲気中、500℃下で4時間熱処理を行うことによりFeN粉末を得た。次に、Mn、Sn、Feの組成比がMn70Sn15Fe15となるように電子天秤で秤量を行った。計測した各粉末をボールミルに投入し、ヘプタン溶媒中で1時間混合・粉砕を行った(混合ステップ)。この粉末を吸引濾過し、大気中でよく乾燥させ、直径φ12mmの円柱形状の金型で約5×10kg/m程度の圧力でプレスを行い、成形体を得た(成形ステップ)。得られた成形体を窒素の雰囲気中、950℃下で5時間熱処理後、0.5℃/minで300℃まで降温し、プレス体の焼結を行った。
(熱処理ステップ)。これにより、磁性材料(Mn70Sn15Fe15100-d(0<d)を製造した。
【実施例】
【0066】
(比較例2:窒化処理無し)
実施例2において窒化処理をする前(熱処理ステップの前)で処理を止めた点以外は、実施例2と同一の製造を行った。
(MnSnFe磁性材料の磁気特性の評価)
【実施例】
【0067】
実施例2の磁性材料の磁気測定を行い、残留磁化B、保磁力H及び飽和磁化Jを得た。磁気特性は東英工業社製B-Hトレーサを用いて測定した。測定条件は、室温かつ最大印加磁場2000kA/m(25kOe)とした。得られた結果を表3に示す。
【表3】
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【実施例】
【0068】
表3に示すように、窒化処理前の磁性材料(比較例2)に比べて、窒化処理後の試料(実施例2)は飽和磁化J及び保磁力Hの値が上昇した。窒化後のMnSnFe磁性材料の残留磁化B、保磁力H及び飽和磁化Jの値は、表1のMnSnCo磁性材料とほぼ同様であり、何れも良好な磁気特性を有することが確認された。
【実施例】
【0069】
(MnSnFe磁性材料の構造評価)
実施例2(Mn70Sn15Fe15100-d(0<d)の構造と、比較例2(Mn70Sn15Fe15)の構造を評価した。構造評価には、X線回折装置及び走査電子顕微鏡を用いた。図6の(A)は、窒化処理前(比較例2)の磁性材料におけるX線回析パターンである。図6の(B)は、窒化処理後(実施例2)の磁性材料におけるX線回析パターンである。
【実施例】
【0070】
図6の(A)に示すように、比較例2の磁性材料(Mn70Sn15Fe15)は、β—Mnを含有していることが確認された。また、図6の(B)に示すように、実施例2の磁性材料((Mn70Sn15Fe15100-d(0<d))は、MnN及びβ—Mnを含有していることが確認された。このように、窒化処理後において、フェリ磁性であるMnNが出現することが確認された。
【実施例】
【0071】
図7は、比較例2の磁性材料の反射電子像であり、図8は、実施例2の磁性材料の反射電子像である。図7に示すように、比較例2の磁性材料は、ほぼ単相の組織になっていることが確認された。図6の(A)のX線回折パターンの結果から、比較例2の磁性材料はβ—Mnの単相であると考えられる。一方、図8に示すように、窒化処理後である実施例2の磁性材料は、2相分離組織になっていることが確認された。図6の(B)のX線回折パターンの結果から、実施例2の磁性材料はMnN及びβ—Mnの2相分離組織であると考えられる。さらに図8に示す実施例2の磁性材料は、異なる組織の幅が2μm以下であった。このように、実施例2の磁性材料内の組織は微細化されていることが確認された。
【実施例】
【0072】
以上、図6~8の結果により、MnNを主に含有する相が析出することにより、磁性材料に磁化が発現することが確認された。そして、MnNを含有する相とβ—Mnを含有する相とに分離し、MnNを含有する磁性相が微細化されることによって保磁力及び飽和磁化等の磁気特性が向上したと考えられる。
【実施例】
【0073】
[窒化処理後の磁気特性の詳細:MnSn磁性材料及びMnSnFe磁性材料]
(実施例3)
第1製造方法に基づいて磁性材料を製造した。まず、磁性材料の主成分の原料として、純度が99.9%の5~20mmのチップ状の電解金属Mnと、純度が99.7%のブロック状の電解Fe粉と、純度が99.8%の粒径2~4mmのショット状のSnを準備し、これらの原料を組成式:MnSnFe(0≦a≦100、0<b≦50、0≦c≦50)となるように電子天秤で秤量し、秤量した各原料をアーク溶解により合金化した(溶解ステップ)。得られた合金に対してアルゴンガスを用いたガスアトマイズを行うことにより粉末を得た(粉末化ステップ)。その粉末をふるいで分級し平均粒径が約100μmの粉末を得た後、得られた粉末を直径φ12mmの円柱形状の金型で約5×10kg/mの圧力で圧縮成形した(成形ステップ)。得られた成形体をアンモニア3vol%と窒素97vol%の混合雰囲気中で5時間熱処理後、0.5℃/minで300℃まで降温し、焼結体を得た(熱処理ステップ)。熱処理の温度はSnの含有量の違いによりで変化させ、Snの含有量が5at%の場合は1120℃、10at%の場合は1080℃、20at%の場合は1000℃、30at%の場合は980℃、40at%の場合は930℃、50at%の場合は900℃で行った。これにより、磁性材料(MnSnFe100-d(a+b+c=100、0<d)を製造した。
【実施例】
【0074】
(比較例3)
実施例3においてSnの含有量を0at%(b=0、熱処理温度1150℃)とした点以外は、実施例3と同一の製造を行った。
(磁性材料の磁気特性の評価)
【実施例】
【0075】
実施例3及び比較例3における磁性材料の磁気測定を行い、保磁力H、飽和磁化Jを得た。磁気特性は東英工業社製B-Hトレーサを用いて測定した。測定条件は最大印加磁場を2000kA/m(25kOe)とした。得られた結果をまとめて表4~表6に示す。
【表4】
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【実施例】
【0076】
表4は、各組成における保磁力Hの値(kA/m)である。表4に示すように、MnSn磁性材料(c=0)において、5≦b≦40の範囲で、160kA/m(2kOe)以上の大きな保磁力Hとなった。また、MnSnFe磁性材料(MnSnFe100-d(a+b+c=100、0<d)において、30≦a≦95、5≦b≦35かつ0<c≦35の範囲で、160kA/m(2kOe)以上の大きな保磁力となった。この結果により、MnSn磁性材料及びMnSnFe磁性材料が、従来の合金系磁石よりも保磁力が大きい高保磁力材料であることが確認された。

【実施例】
【0077】
表5は、各組成における飽和磁化Jの値(mT)である。表5に示すように、0≦b≦35かつ0≦c≦50の範囲で、100mT(1000G)以上の大きな飽和磁化Jとなった。また、表5に示すように、Feの含有量を増加させるに従って飽和磁化Jが向上した。このように、飽和磁化Jを向上させるためには、Feを含有させることが有効であることが確認された。表4、表5より、高い保磁力と高い飽和磁化の両方を兼ね備える組成範囲は5≦b≦35かつ0≦c≦35であることが明らかになった。
【表6】
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【実施例】
【0078】
表6は、Snが10at%(b=10)かつ各Fe組成cの組成(Mn90-CFeSn10(0≦c≦50))における窒化後の窒素量である。表5に示す保磁力が向上した組成範囲である0≦c≦35の範囲の窒素含有量は、表6に示すように10at%以上であること、すなわち10≦dであることが確認された。
【実施例】
【0079】
[磁場中窒化処理による磁気特性の変化]
(実施例4-1)
実施例2の製造方法において、300℃まで降温する処理を1600kA/mの静磁場中で行った点以外は、実施例2と同一の製造を行った。
【実施例】
【0080】
(実施例4-2)
実施例2と同一の製造を行った。
【実施例】
【0081】
(磁性材料の磁気特性の評価)
実施例4-1及び実施例4-2の磁性材料の磁気測定を行い、残留磁化B、保磁力H、飽和磁化Jを得た。磁気特性は東英工業社製B-Hトレーサを用いて測定した。測定条件は最大印加磁場を2000kA/m(25kOe)とした。得られた結果を表7に示す。
【表7】
JP0005681839B2_000007t.gif
【実施例】
【0082】
表7に示すように、磁場中で窒化処理をした磁性材料(実施例4-1)は、無磁場で窒化処理をした磁性材料(実施例4-2)に比べ、磁気特性が向上した。この結果により、磁場中で窒化・熱処理することによって磁気特性を向上させることが可能であることが確認された。
【実施例】
【0083】
[MnSnX磁性材料]
(実施例5-1)
第2製造方法に基づいて磁性材料を製造した。磁性材料の主成分の原料として、純度が99.9%のチップ状の電解金属Mnを準備し、原料をAr雰囲気中でディスクミルにて粉砕し、平均粒径約300μmのMn粉を得た。次に、ボールミルにより微粉砕を行い、平均粒径約5.5μmの粉末を得た。次に、得られたMn粉と、平均粒径63μmのSn粉と、平均粒径75μm以下の元素X(Cr、Nb、Ga、Cu、V、Ni、Zr、Ti、Zn又はAl)の粉末を電子天秤で元素比がMn80Sn1010になるように秤量し、これらの粉末をボールミルにて微粉砕し、ヘプタン液中で1時間混合・粉砕を行い、その後、吸引濾過し、よく乾燥させた(混合ステップ)。直径φ12mmの円柱形状の金型で約5×10kg/m程度の圧力でプレスを行い、成形体を得た(成形ステップ)。得られた成形体をアンモニア及び窒素の混合雰囲気中で、1050℃下で5時間熱処理後、0.5℃/minで300℃まで降温し、焼結させた(熱処理ステップ)。これにより、磁性材料(Mn80Sn1010100-d(0<d)を製造した。
【実施例】
【0084】
(実施例5-2)
実施例3における磁性材料(Mn80Sn10Fe10100-d(0<d)とした。
(磁性材料の磁気特性の評価)
【実施例】
【0085】
実施例5-1及び実施例5-2の磁性材料の磁気測定を行い、保磁力H、飽和磁化Jを得た。磁気特性は東英工業社製B-Hトレーサを用いて測定した。測定条件は最大印加磁場を2000kA/m(25kOe)とした。得られた結果を表8に示す。
【表8】
JP0005681839B2_000008t.gif
【実施例】
【0086】
表8の実施例5-1より、元素XがCr、Nb、Ga、Cu、V、Ni、Zr、Ti、Zn又はAlである場合には、保磁力Hは160kA/m(2kOe)以上の値を示し、また飽和磁化Jは100mT(1000G)以上の値を示した。さらに、実施例5-1と実施例5-2とを比較すると、元素XがNi、V、Cr又はCuである場合には、元素XがFeである場合と同程度の磁化向上効果があることが確認された。また、元素XとしてTi、Nb、Zr又はGaを原料に含むことにより、元素XがFeである場合に比べ大きな保磁力向上効果があることが確認された。
【実施例】
【0087】
[MnSnFe磁性材料へ他の元素を添加した場合における磁性材料の磁気特性の変化]
(実施例6-1)
第2製造方法に基づいて磁性材料を製造した。まず、磁性材料の主成分の原料として、純度が99.9%のチップ状の電解金属Mnを準備し、原料をAr雰囲気中でディスクミルにて粉砕し、平均粒径約300μmのMn粉を得た。次に、ボールミルにより微粉砕を行い、平均粒径約5.5μmの粉末を得た。次に、得られたMn粉と、平均粒径3μmのカルボニルFe粉と、平均粒径63μmのSn粉と、平均粒径75μm以下の元素X(Cr、Nb、Ga、Cu、V、Ni又はAl)の粉末を電子天秤で元素比がMn70Sn10Fe1010になるように秤量し、これらの粉末をボールミルにて微粉砕し、ヘプタン液中で1時間混合・粉砕を行い、その後、吸引濾過し、よく乾燥させた(混合ステップ)。直径φ12mmの円柱形状の金型で約5×10kg/m程度の圧力でプレスを行い、成形体を得た(成形ステップ)。得られた成形体をアンモニア及び窒素の混合雰囲気中で、1050℃下で5時間熱処理後、0.5℃/minで300℃まで降温し、焼結させた(熱処理ステップ)。これにより、磁性材料(Mn70Sn10Fe1010100-d(0<d)を製造した。
【実施例】
【0088】
(実施例6-2)
実施例3における磁性材料(Mn80Sn10Fe10100-d(0<d)とした。
【実施例】
【0089】
(磁性材料の磁気特定の評価)
実施例6-1及び実施例6-2の磁性材料の磁気測定を行い、残留磁化B、保磁力H、飽和磁化Jを得た。磁気特性は東英工業社製B-Hトレーサを用いて測定した。測定条件は最大印加磁場を2000kA/m(25kOe)とした。得られた結果を表9に示す。
【表9】
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【実施例】
【0090】
表9より、実施例6-1のFeとCr、Nb、Ga、Cu、V、Ni、Zr、Ti、Zn又はAlとの組み合わせの全てにおいて、飽和磁化は100mT(1000G)以上、保磁力は160kA/m(2kOe)以上であった。すなわち、元素Xが2以上の元素で構成された場合であっても優れた磁気特性を有することが確認された。さらに、FeにCr、Cu、Ni又はVを組み合わせることで、実施例6-2(Feのみ)に比べて飽和磁化を大きく増加させる効果があることが確認された。そして、FeにGa、Nb、Zr又はTiを組み合わせることで、実施例6-2(Feのみ)に比べて保磁力を大きく増加させる効果があることが確認された。このように、Feと組み合わせる元素を選択することにより、どのような磁気特性を向上させるかを制御することができることが確認された。よって、上記元素を適宜組み合わせることにより、所望の保磁力又は飽和磁化等の磁気特性を有する磁性材料が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0091】
磁性材料は、産業上、以下のような利用可能性を有している。例えば、永久磁石、磁気記録媒体、スピントロニクスなどの分野で利用することができる。また、磁性材料は高保磁力が要請される機器部品又は素子として用いることができる。
【符号の説明】
【0092】
1…ペロブスカイト構造。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図9】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図8】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11