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明細書 :廃棄物からのメタンガス製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-185123 (P2016-185123A)
公開日 平成28年10月27日(2016.10.27)
発明の名称または考案の名称 廃棄物からのメタンガス製造方法
国際特許分類 C12P   5/02        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
C12M   1/107       (2006.01)
B09B   3/00        (2006.01)
C02F  11/04        (2006.01)
FI C12P 5/02
C12M 1/00 D
C12M 1/107
B09B 3/00 ZABC
C02F 11/04 A
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2015-067470 (P2015-067470)
出願日 平成27年3月27日(2015.3.27)
発明者または考案者 【氏名】古崎 康哲
【氏名】石川 宗孝
【氏名】田中 量也
出願人 【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
【識別番号】100152319、【弁理士】、【氏名又は名称】曽我 亜紀
審査請求 未請求
テーマコード 4B029
4B064
4D004
4D059
Fターム 4B029AA01
4B029BB01
4B029BB07
4B029BB16
4B029CC01
4B029DB19
4B064AB03
4B064CA01
4B064CA06
4B064CA21
4B064CB07
4B064CC12
4B064CD23
4B064DA16
4D004AA03
4D004AA04
4D004AC04
4D004BA03
4D004CA17
4D004CA20
4D004CC07
4D059AA01
4D059AA03
4D059AA07
4D059BA13
4D059BA24
4D059BA26
要約 【課題】本発明は、廃棄物から高濃度のメタンガスを製造する、簡便かつ安価な方法を提供することを課題とする。
【解決手段】以下の工程1)から3)を含む、炭水化物を含む廃棄物からメタンガスを製造する方法および、当該メタンガス製造方法のためのメタンガス製造装置による。
1)廃棄物と糖化酵素とを混合して糖化反応を行う、糖化工程。
2)工程1)にて得られた固液混合物と酵母とを混合して嫌気性発酵を行う、嫌気性発酵工程。
3)工程2)にて得られた嫌気性発酵液と嫌気性微生物とを混合してメタン発酵を行う、メタン発酵工程。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の工程1)から3)を含む、炭水化物を含む廃棄物からメタンガスを製造する方法:
1)廃棄物と糖化酵素とを混合して糖化反応を行う、糖化工程;
2)工程1)にて得られた固液混合物と酵母とを混合して嫌気性発酵を行う、嫌気性発酵工程;
3)工程2)にて得られた嫌気性発酵液と嫌気性微生物とを混合してメタン発酵を行う、メタン発酵工程。
【請求項2】
工程2)の嫌気性発酵によりエタノールが生成され、工程3)において、嫌気性発酵液に含まれたエタノールがメタン発酵の基質となる、請求項1に記載のメタンガスを製造する方法。
【請求項3】
工程1)の糖化反応により、炭水化物に含まれる多糖類が、酵母による嫌気性発酵の基質となる糖類に分解されて、固液混合物に含まれる、請求項1または2に記載のメタンガスを製造する方法。
【請求項4】
工程1)の糖化反応を行う糖化槽と、工程2)の嫌気性発酵を行う酵母反応槽と、工程3)のメタン発酵を行うメタン発酵槽とを含む、請求項1~3のいずれか1に記載のメタンガスを製造する方法のためのメタンガス製造装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、炭水化物を含む廃棄物からメタンガスを製造する方法、および、当該メタンガスを製造する方法のためのメタンガス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生ごみを初めとし、食品系廃棄物、し尿、下水汚泥、家畜糞尿などの廃棄物をバイオマス資源としてエネルギーに変換して効率的に利用することが注目されている。廃棄物をエネルギーに転換する技術の一つとして、メタン発酵の導入が進んでいる。20年ほど前から、生ごみ等の食品系廃棄物や家畜糞尿を基質として用いたメタン発酵の技術開発が盛んになり、実用化が進み、導入事例も増えつつある。メタン発酵とは嫌気性微生物の働きによって、嫌気条件下で有機物を分解する生物化学反応であり、分解生成物として主にメタンと二酸化炭素からなるバイオガスが発生する(非特許文献1)。バイオマスから生成されるメタンガスは燃料として熱や発電に利用することができ、カーボンニュートラルな燃料として大気中の二酸化炭素を増大させないことから、注目されている。
【0003】
廃棄物の種類にもよるが、メタン発酵技術により廃棄物中の有機物の90 w/w%以上が分解され、廃棄物の有効活用が可能である。また含水率が高い廃棄物は焼却や堆肥化に不適であることからも、メタンガス発酵技術の適用が有効である。さらに廃棄物を好気的に分解する場合と比べて、メタン発酵はエネルギーの使用量が小さくて済み、得られたメタンガスを熱利用できるという利点がある。廃棄物処理とエネルギー有効利用の両方の観点から、今後さらに廃棄物のメタン発酵技術の重要性が高まると考えられる。
【0004】
しかしながら従来のメタン発酵技術では、得られるバイオガス中のメタンガス濃度が低く、二酸化炭素が約50 v/v%含まれてしまう。このためバイオガスの容積当たりのカロリーが低く、熱利用設備を効率的に運用できないという問題がある。バイオガス中のメタンと二酸化炭素濃度の比率は、基質中の炭素、水素、酸素組成により化学量論的に決定されてしまう。バイオガス中のメタン純度を高めるためには、二酸化炭素を除去する設備が必要となり、設備コストが高くなる。生成されたバイオガス自体のメタン濃度を高めることができれば、熱利用設備を効率的に運用することができ、メタン発酵導入コスト削減に貢献することができる。
【0005】
パルプ製造の際に生じる排液を用いて、バイオエタノールとメタンガスを製造する方法が報告されている(特許文献1および特許文献2)。これらの方法では、生成したエタノールを除去するため、メタンガスの実質的な生成量が減少してしまうとともに、バイオガス中のメタンガス濃度は従来と同様、低いままである。また、エタノールを基質としたメタン発酵方法についての開示がある(特許文献3)。メタン発酵では、中間生成物の揮発性有機酸(以下「VFA」と称する)が非電離VFAとして存在し、メタン発酵を阻害することが知られている。特許文献3は、pHを5.8~6.5に調整して発酵を行うことにより、非電離VFAを低減させることを開示する。しかしながら特許文献3には、廃棄物を利用して高濃度のメタンガスを製造することについては開示されていない。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2014-166172号公報
【特許文献2】特開2014-147313号公報
【特許文献3】特開平9-108700号公報
【0007】

【非特許文献1】野池達也ほか:メタン発酵,技報堂出版,p.34(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、廃棄物から高濃度のメタンガスを製造し得る方法およびメタンガス製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、廃棄物中の炭水化物に着目し、廃棄物について予め糖化反応および酵母を用いた嫌気性発酵を行った後、メタン発酵を行うことにより、高濃度のメタンガスを簡便かつ安価に製造し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は以下からなる。
1.以下の工程1)から3)を含む、炭水化物を含む廃棄物からメタンガスを製造する方法:
1)廃棄物と糖化酵素とを混合して糖化反応を行う、糖化工程;
2)工程1)にて得られた固液混合物と酵母とを混合して嫌気性発酵を行う、嫌気性発酵工程;
3)工程2)にて得られた嫌気性発酵液と嫌気性微生物とを混合してメタン発酵を行う、メタン発酵工程。
2.工程2)の嫌気性発酵によりエタノールが生成され、工程3)において、嫌気性発酵液に含まれたエタノールがメタン発酵の基質となる、前項1に記載のメタンガスを製造する方法。
3.工程1)の糖化反応により、炭水化物に含まれる多糖類が、酵母による嫌気性発酵の基質となる糖類に分解されて、固液混合物に含まれる、前項1または2に記載のメタンガスを製造する方法。
4.工程1)の糖化反応を行う糖化槽と、工程2)の嫌気性発酵を行う酵母反応槽と、工程3)のメタン発酵を行うメタン発酵槽とを含む、前項1~3のいずれか1に記載のメタンガスを製造する方法のためのメタンガス製造装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法によれば、廃棄物中の炭水化物を糖化処理および酵母を用いた嫌気性発酵をした後に、メタン発酵を行うことから、生成するバイオガス中のメタン濃度を高めることができる。従来の方法では、廃棄物の炭水化物から生成するバイオガス中のメタン濃度は50v/v%程度と低いものであった。本発明によれば、廃棄物から得られるバイオガス全体のメタン濃度が従来のメタンガス発酵技術に比べて10v/v%以上も上昇することから、バイオガスの容積当たりの熱量を向上させることができる。また本発明によれば、メタン発生量を減ずることなくバイオガス中のメタンガス濃度の増大を可能とする。さらに本発明のメタンガス製造方法を行う製造装置は、二酸化炭素除去装置を必要としないことから、装置自体を小型化し、安価に製造することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のメタンガス製造方法のフローを示す図である。
【図2】本発明の方法により模擬厨芥からメタンガスを製造した場合の、バイオガス発生量の経時変化を示す図である。(実施例1)
【図3】本発明の方法により模擬厨芥からメタンガスを製造した場合の、バイオガス中メタン濃度を示す図である。(実施例1)
【図4】本発明の方法により模擬厨芥からメタンガスを製造した場合の、VFAの経時変化を示す図である。投入条件は、5g-TS/0.8Lである。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、以下の工程1)から3)を含む、炭水化物を含む廃棄物からメタンガスを製造する方法に関する。本発明のメタンガス製造方法のフローを図1に示す。
1)廃棄物と糖化酵素とを混合して糖化反応を行う、糖化工程。
2)工程1)にて得られた固液混合物と酵母とを混合して嫌気性発酵を行う、嫌気性発酵工程。
3)工程2)にて得られた嫌気性発酵液と嫌気性微生物とを混合してメタン発酵を行う、メタン発酵工程。
本発明は、廃棄物を工程1)糖化工程と工程2)嫌気性発酵工程により前処理をし、その後工程3)メタン発酵工程を行うことを特徴とするものである。また工程1)および工程2)は同時に行ってもよいし、別個に行ってもよい。

【0014】
本発明において廃棄物は有機廃棄物であり、炭水化物を含むものである。廃棄物には、食品系廃棄物(生ごみ、厨芥、食品加工残渣等)、家畜糞尿を含む畜産廃棄物、し尿、下水汚泥等が含まれるが、食品系廃棄物であることが好ましい。食品系廃棄物の発生源としては、食品製造工場、食品小売業、飲食店、家庭などが挙げられる。廃棄物は、炭水化物の含有量が高いものが好適であり、例えば、米飯類、パン類、うどんやスパゲッティ等の麺類、イモやトウモロコシ等の野菜類等の食品系廃棄物が挙げられる。炭水化物は「日本食品標準成分表2010」(公表年:平成22年(2010年))に規定されるもののうち、食物繊維を除いた成分であり、糖質を指す。炭水化物には、単糖や、単糖を構成成分とするデンプン等の多糖類等が含まれる。炭水化物に含まれる多糖類は、そのままでは酵母によるエタノール発酵の基質とならないものであり、工程1)の糖化工程により、酵母による嫌気性発酵(エタノール発酵)可能な糖類に分解される。酵母による嫌気性発酵(エタノール発酵)可能な糖類は、グルコース、ソルボース、ガラクトース等の六炭糖を含む単糖に加えて、マルトース等の二糖を含む。

【0015】
食品系廃棄物等の廃棄物は、液体と固形物とを含有するものである。廃棄物はそのまま、1)糖化工程に用いてもよいが、廃棄物を予め処理した投入基質を1)糖化工程に用いることが好ましい。投入基質は、固形物量(Total Solids:TS)を調整したものであり、TSが3w/v%~25 w/v%、好ましくは5w/v%~15w/v%である。あるいは、投入基質は、揮発性固形物量(Volatile Solids:VS)が1w/v%~30 w/v%、好ましくは5w/v%~20w/v%である。VSでは灰分を除いた固形物量を特定することができる。TSが3w/v%~25 w/v%またはVSが1w/v%~30 w/v%である場合は、投入基質が適度に分散し、反応が効率よく進むため好ましい。投入基質のVS/TSは0.7以上、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上である。VS/TSが0.7以上である場合は、十分な量の炭水化物が投入基質内に存在しており、灰分等の他の成分が工程1)~工程3)の反応の妨げとならないため、好ましい。本発明のメタン発酵においては、投入基質の炭水化物の含有量が高いものが好ましい。投入基質のTS当たりの炭水化物の比率は、30w/w%以上が好ましく、より好ましくは40 w/w %以上、さらに好ましくは50 w/w %以上である。TS当たりの炭水化物の比率が30w/w%以上である場合は、メタン発酵に十分量の基質が提供されることとなり、効率よくメタンガスを産生することができるため好ましい。ここでTSとVSは、「下水試験方法 上巻 2012年版」(発行:公益社団法人日本下水道協会、発行年:平成24年11月30日)の「第5編汚泥・ガス試験 第1章一般汚泥試験 第6節蒸発残留物及び含水率(固形分及び水分)」p.715-716および「同 第7節 強熱減量」p.716に記載の方法により測定することができる。炭水化物量は、工程1)と同様に糖化酵素により糖化処理を行った後、グルコース量を測定することにより算出できる。グルコース量の測定は、オキシダーゼ法(和光純薬工業 グルコーステスターC-IIテスト)で行うことができる。以後本願明細書において「廃棄物」は、「投入基質」に言い換えることができる。

【0016】
工程1)においては、糖化槽中で、廃棄物と糖化酵素とが混合され、糖化反応が行われる。糖化酵素は、廃棄物中に含まれる炭水化物のうち、多糖類を酵母による嫌気性発酵可能な糖類(例えば、グルコース)にまで加水分解し得る酵素であれば、特に限定されない。糖化酵素としては、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ等が例示される。これらを単独で、あるいは組み合わせて用いることができる。これら酵素としては、精製した酵素剤のみならずこれらの酵素を含有する菌体培養液を用いてもよい。また市販の酵素を用いてもよい。

【0017】
工程1)において、廃棄物と糖化酵素との混合割合を含む糖化処理の反応条件は、廃棄物中に含まれる炭水化物中の多糖類が酵母による嫌気性発酵可能な糖類にまで加水分解されるものであればよく、自体公知の手段を用いることができる。糖化処理により、炭水化物の85w/w%以上、好ましくは90 w/w%以上が酵母による嫌気性発酵可能な糖類に加水分解されることが好適である。例えば、TS濃度10w/v%程度に調整したスラリー状の投入基質に、酵素Spirizyme Fuel(ノボザイムズ社製)を、基質1L当たり5000U(7.5 mL)添加し、撹拌しながら50℃で2時間反応させることにより、炭水化物の95w/w%以上をグルコースに変換することができる。

【0018】
工程2)においては、酵母反応槽中で、工程1)により糖化処理して得られた固液混合物(以下「糖化液」とも称する)と酵母とが混合され、嫌気性発酵(エタノール発酵)による嫌気分解(エタノール化)が行われる。酵母は酸素がない条件下で、グルコース等の糖類を用いて、アルコール発酵する代表的な生物であり、醸造やパン等の食品生産、バイオエタノールの生産等に広く使用されている。本発明において使用する酵母としては、エタノールに耐性のある酵母であれば特に制限されないが、従来用いられている醸造用酵母を使用することが好ましい。具体的には、Saccharomyces cerevisiaeのほか、遺伝子工学で大腸菌(E.coli)にエタノール発酵能を持たせた株、Z.mobilisや、C.glutamicum及びその変異株を例示することができる。

【0019】
工程2)において、糖化液と酵母との混合割合を含む嫌気分解の反応条件は、糖化液中に含まれる糖類がエタノール化されるものであればよく、自体公知のエタノール発酵手段を用いることができる。エタノール発酵において、糖類の85w/w%以上(好ましくは90w/w%以上)がエタノール化されることが好適である。例えば、グルコース濃度60g/Lの糖化液に、糖化液1L当たり、酵母Alcotec 48 Turbo Yeast(Alcotec社製)20gを添加し、26℃で約24時間反応させることにより、糖化液中の酵母による嫌気性発酵可能な糖類が全てエタノール化され、約30g/Lのエタノールを生成することができる。

【0020】
工程3)においては、メタン発酵槽中で、工程2)により得られた反応液(嫌気性発酵液)と嫌気性微生物とが混合され、メタン発酵が行われる。工程3)においては、嫌気性発酵液に含まれるエタノールが、メタン発酵の基質となる。工程2)においては、エタノールの生成と同時に、二酸化炭素が発生し、気体として気相へ放出される。エタノールは気相にではなく、嫌気性発酵液中に含まれる。工程2)の嫌気性発酵後の酵母反応槽内には、エタノールを含む嫌気性発酵液と二酸化炭素を含む気相が存在することとなる。工程3)においては、気相を除く嫌気性発酵液(固液混合物)を用いてメタン発酵を行う。

【0021】
メタン発酵においては、エタノールはまず酸発酵により酢酸と水素に分解される。その後酢酸と水素の各々が、酢酸経路および水素経路により、メタンと二酸化炭素に変換される。これらの反応により、工程3)においては、メタンと二酸化炭素を含むバイオガスが生成される。本発明により得られるバイオガスは、糖化反応および嫌気性発酵を経ずに廃棄物をメタン発酵させて得られるバイオガスと比べて、メタンガスを高濃度で含むものである。バイオガス中のメタンと二酸化炭素濃度の比率は、基質中の炭素、水素、酸素組成により化学量論的に決定されることから、工程2)で二酸化炭素を放出した分、工程3)で放出される二酸化炭素の量が減ることにより、メタンガスの濃度が高まったものと考えられる。

【0022】
工程3)において用いられる嫌気性微生物は、エタノールからメタンを生成可能な微生物であれば、特に限定されない。嫌気性微生物としては、酸生成菌やメタン細菌などの嫌気性微生物群を用いることができ、本発明の目的を達成し得るものであれば、特に限定されない。例えば、対象となる食品系廃棄物等の廃棄物をメタン発酵させて培養した微生物であれば、工程1)および工程2)により処理した後の嫌気性発酵液を問題なくメタン発酵させることができる。嫌気性微生物としては、具体的には、メタノール分解菌(Methanosarcina)や酢酸分解菌(Methanosaeta)などが挙げられる。本発明において嫌気性微生物は、単離された微生物を用いても良いが、従来メタン発酵に用いられているような、嫌気性微生物を含む汚泥、例えばグラニュール汚泥と呼ばれる自己集塊化ペレットを用いることもできる。

【0023】
工程3)において、嫌気性発酵液と嫌気性微生物との混合割合を含むメタン発酵の反応条件は、嫌気性発酵液に含まれるエタノールが、メタンに変換され得るものであればよく、自体公知の手段を用いることができる。例えば、メタン発酵は常温、中温(35℃前後)、高温(55℃前後)のいずれでも処理可能である。

【0024】
炭水化物を基質とするメタン発酵では、炭水化物の分解により乳酸やプロピオン酸等のVFAが生成する。VFAの濃度が高くなることにより、嫌気性微生物の活性が阻害される。例えば、VFAが1000mg/L程度に達した場合は、嫌気性微生物の活性が阻害されると考えられている。本発明のエタノールを基質としたメタン発酵では、VFAとして乳酸等は生成されず、酢酸が生成するだけであり、さらに酢酸はメタンガスに変換される。よって、本発明によればVFAによるメタン発酵の阻害を最小限に抑えることができる。本発明のメタン発酵においては、酢酸濃度を制御するために、メタン発酵槽中のエタノール濃度を適宜調整すればよい。

【0025】
本発明は、本発明のメタンガス製造方法のためのメタンガス製造装置にも及ぶ。メタンガス製造装置においては、工程3)のメタン発酵槽の前段に、工程1)糖化工程のための糖化槽、工程2)酵母による嫌気性発酵のための酵母反応槽を設置する。

【0026】
糖化槽および酵母反応槽は、温度調節が可能で攪拌機を有することが好ましい。糖化槽および酵母反応槽は、糖化酵素や酵母の投入装置を有することが望ましい。各槽における投入基質の水理学的滞留時間は特に制限されないが、例えば糖化槽で2時間程度、酵母反応槽で24時間程度である。糖化槽、酵母反応槽、メタン発酵槽は、回分式、連続式のどちらでも可能である。上記の工程1)糖化反応および工程2)嫌気性発酵は、1槽で行うことも可能であり、糖化槽および酵母反応槽は同一であってもよい。糖化酵素は短時間で失活する場合、随時投入を行えばよい。酵母は投入基質と分離して返送してもよいし、担体の形で槽内に保持することにより、投入量を少なくすることができる。

【0027】
メタン発酵槽は、嫌気性発酵液の投入装置を有しているものであれば、従来のメタンガス製造装置に用いられているものを使用可能である。具体的には本発明のメタン発酵槽は、温度調節が可能で攪拌機を有することが好ましい。嫌気性発酵液の投入は連続式または半連続式にて行われることが好ましい。また、水理学的滞留時間は10~50日程度であればよい。嫌気性微生物は槽内の反応液中に懸濁、または担体に保持された状態であり、基質との接触が十分に行われるように撹拌が行われることが好ましい。
【実施例】
【0028】
以下に本発明の代表例を実施例により説明するが、本発明の技術範囲は実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
廃棄物として模擬厨芥を用いて、本発明のメタンガスの製造方法を行った。
模擬厨芥の組成は、湿重量で米飯52 w/w %、にんじん15 w/w %、キャベツ15 w/w %、鶏もも肉10 w/w %、にぼし8 w/w %とした。
【実施例】
【0030】
(1)糖化処理
模擬厨芥の固形物量(Total Solids:TS)を10w/v%にしてスラリー状(汚泥)の投入基質を調製した。本実施例における投入基質のVS/TSは、0.97であり、TS当たりの炭水化物量は、43w/w%であった。VSとTSは上述の「下水試験方法 上巻 2012年版」に記載の方法により測定した。糖化槽に当該投入基質を投入し、当該投入基質1L当たり糖化酵素Spirizyme Fuel(ノボザイムズ社製)を5000U(7.5 mL)添加した。撹拌しながら50℃で2時間反応させて、糖化処理を行った。その結果、グルコース濃度が約70g/Lの糖化液が得られた。なお、グルコース濃度はオキシダーゼ法(和光純薬工業 グルコーステスターC-IIテスト)より測定した。糖化処理により投入基質に含まれる炭水化物の95w/w%以上が低分子化されて、グルコースに変換されたことがわかった。
【実施例】
【0031】
(2)エタノール発酵
上記糖化処理にて得られた糖化液を用いて、酵母反応槽において、酵母による嫌気分解(エタノール化)を行った。グルコース濃度60g/Lの糖化液1L当たりに、酵母Alcotec 48 Turbo Yeast(Alcotec社製)を20g添加して、26℃で約24時間反応させて、嫌気分解を行った。その結果、エタノール濃度が約30g/Lの嫌気性発酵液が得られた。なお、エタノール濃度は、ガスクロマトグラフ法(FID、島津製作所GC14B)により測定した。嫌気分解により、糖化液に含まれたグルコースが全て分解されたことがわかった。
【実施例】
【0032】
(3)メタン発酵
上記エタノール発酵にて得られた嫌気性発酵液を10、20、40mL回収した。回収した嫌気性発酵液を、800mLのメタン発酵汚泥(下水処理場の中温嫌気性消化施設から譲受した汚泥を、模擬厨芥で長期間培養したもの)が入ったガラス容器に投入し、酸素が入らないよう密閉し、35℃で撹拌を行った。各投入条件について、固形物量を換算すると、1.25、2.5、5g-TS/0.8Lであった。メタン発酵は中温(35~37℃)にて行った。
【実施例】
【0033】
メタン発酵により発生したバイオガス発生量の経時変化を、図2に示す。バイオガスには、メタンガスが含まれる。なお、バイオガスおよびメタンガスの濃度は、ガスクロマトグラフ法(FID、島津製作所GC14B)により測定した。各投入条件において、糖化処理およびエタノール発酵後に、メタン発酵を行った系(糖化・酵母処理系)では、模擬厨芥を糖化処理およびエタノール発酵に供さずにそのままメタン発酵槽へ投入した系(対照系)と較べて、同量以上のバイオガスが発生することがわかった。
【実施例】
【0034】
各投入条件において発生したバイオガス中のメタン濃度を測定した結果を、図3に示す。糖化・酵母処理系では対照系よりもメタン濃度が約10v/v%以上高くなることがわかった。
【実施例】
【0035】
投入条件5g-TS/0.8LにおけるVFA濃度の経時変化を、図4に示す。糖化・酵母処理系および対照系のいずれにおいても、実験開始直後からVFAが生成された。なお、VFA濃度は、イオンクロマトグラフ法(島津製作所CDD-6A)により測定した。
対照系では乳酸、酢酸、プロピオン酸が生成され、合計2000mg/Lを超えた。投入条件5g-TS/0.8Lでは、他の投入条件よりも実験開始直後のバイオガス発生量が少なかったが(図2)、これはVFAによる嫌気性微生物への阻害が起こったことが原因と考えられる。
一方、糖化・酵母処理系では酢酸、プロピオン酸が生成され、合わせて約1000mg/Lとなったが、対照系と較べて速やかに減少した。また乳酸の生成は見られなかった。このため対照系よりもVFA阻害を受けにくく、その結果バイオガスの発生も対照系より早かったと考えられる。糖化・酵母処理系では炭水化物はほとんどがエタノールに変換されており、その結果、エタノールより分子量の大きい乳酸の生成を抑えることができたものと考えられる。
以上のことから、糖化・酵母処理系ではVFA阻害を受けにくいことが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上説明したとおり、本発明ではバイオガス中のメタン濃度を高くすることができる。本発明の方法であれば、メタンガス製造装置に二酸化炭素除去などの精製関連装置を設置する必要がなく、小型化できる。これにより、種々の施設においてメタンガス製造装置の導入を推進できることとなる。また、得られるバイオガス中のメタン濃度を上昇させることにより、バイオガスの容積当たりのカロリーが高くなる。よって、メタンガスの精製を行わずに得られたバイオガスをそのまま用いたとしても、発電機やボイラの熱効率を高めることができる。本発明の製造方法および製造装置は、炭水化物を多く含む食品系廃棄物等の廃棄物を対象としたメタン発酵施設において、有利に用いられうる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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