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明細書 :金属板製造装置及び金属板の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-187825 (P2016-187825A)
公開日 平成28年11月4日(2016.11.4)
発明の名称または考案の名称 金属板製造装置及び金属板の製造方法
国際特許分類 B22D  11/06        (2006.01)
B22D  11/00        (2006.01)
B22D  11/18        (2006.01)
B22D  11/128       (2006.01)
B22D  19/00        (2006.01)
B22D  19/16        (2006.01)
B22D  21/04        (2006.01)
B22D  25/02        (2006.01)
FI B22D 11/06 330A
B22D 11/00 D
B22D 11/18 Z
B22D 11/128 350A
B22D 19/00 X
B22D 19/16 B
B22D 21/04
B22D 25/02 A
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2015-069182 (P2015-069182)
出願日 平成27年3月30日(2015.3.30)
発明者または考案者 【氏名】羽賀 俊雄
出願人 【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
個別代理人の代理人 【識別番号】110001438、【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4E004
Fターム 4E004DA00
4E004DA12
4E004MB06
4E004NA05
4E004NB07
4E004NC09
4E004QA13
要約 【課題】ロールを用いた連続鋳造によってクラッド金属板を製造する金属板製造装置及び金属板の製造方法において、表面が幅方向に平坦な金属板を、省工程で、安価に、製造できる金属板製造装置、金属板の製造方法、及び、これによって製造された金属板を提供する。
【解決手段】冷却能を有し走行するコンベア手段20と、前記コンベア手段上に形成され、第1金属溶湯80を貯めるための第1プール30と、前記コンベア手段上に形成され、前記第1プールよりも前記コンベア手段の走行方向前方に設けられた第2金属溶湯90を貯めるための第2プール50と、を具え、前記第2プールは、前記コンベア手段の走行方向前方に位置する第2プレート60を有し、第2プレートは、少なくとも一定の厚さ以下の溶湯状態の前記第2金属の通過を許容する通過部、又は、付勢制御若しくは位置制御により第2金属の流量を所定量得る手段を有する。
【選択図】図7
特許請求の範囲 【請求項1】
冷却能を有し走行するコンベア手段と、
前記コンベア手段上に形成され、第1金属溶湯を貯めるための第1プールと、
前記コンベア手段上に形成され、前記第1プールよりも前記コンベア手段の走行方向前方に設けられた第2金属溶湯を貯めるための第2プールと、
を具え、
前記第1プールは、前記コンベア手段の表面と、前記コンベア手段の走行方向前方に位置する第1プレートと、前記第1プレートの走行方向後方に位置する後部材と、両サイド部材と、で囲まれており、
前記コンベア手段は、前記第1プール内の第1金属溶湯を冷却して前記コンベア手段の表面に半凝固状態又は凝固状態の第1金属層を形成しながら第1金属層を伴って走行するようになっており、
前記第1プレートは、先端部を有し、第1プレート先端部と前記コンベア手段の表面との間の距離が変わり得るように可動に設けられており、前記コンベア手段の走行に伴って移動する前記第1金属の凝固状態層及び/又は半凝固状態層は通過するが溶湯は通過しないように、前記第1プレート先端部が一定の力で面的に常時当接するように付勢されており、
前記第2プールは、前記第1プール内で前記コンベア手段上に形成された第1金属の凝固状態層及び/又は半凝固状態層表面と、前記コンベア手段の走行方向前方に位置する第2プレートと、前記コンベア手段の走行方向後方に位置する前記第1プレートと、両サイド部材と、で囲まれており、前記第2プール内で、前記コンベア手段上に形成された前記第1金属の凝固状態層及び/又は半凝固状態層表面の上に、前記第2プール内の第2金属が積層され凝固状態、半凝固状態乃至溶湯状態の第2金属層を形成しながら前記コンベア手段の走行により移動するようになっており、
前記第2プレートは、少なくとも一定の厚さ以下の溶湯状態の前記第2金属の通過を許容するようにされており、第2プレート先端に脚部と通過部を有する形状のプレートの場合は、通過部の高さにより前記第2金属の流量を調節し、第2プレートの先端に脚部を有しない形状のプレートの場合は、第2プレート先端を一定の高さに保つ付勢力により前記第2金属の流量を調節、又は、第2プレート先端の高さ位置により前記第2金属の流量を調節する、所定の通過量を得る手段を有し、
前記第2プレートを通過した後の溶湯が前記走行手段の側面に流れることを防止する手段を有する、
ことを特徴とする複層の金属板を製造する金属板製造装置。
【請求項2】
前記第2プレートよりも前記コンベア手段の走行方向前方には、前記コンベア手段と対向し、前記第2金属の未凝固表面に接し均す均し手段が設けられている、
請求項1に記載の複層の金属板を製造する金属板製造装置。
【請求項3】
前記コンベア手段は、外周断面が円形の第1ロールであって、
前記均し手段は、前記第1ロールの回転軸と平行な回転軸を有し、前記第1ロールと反対方向に回転し冷却能を有する、第2ロールである、
請求項2に記載の複層の金属板を製造する金属板製造装置。
【請求項4】
前記均し手段は、前記第2金属の表面に当接するよう付勢されている第3プレートである、
請求項2に記載の複層の金属板を製造する金属板製造装置。
【請求項5】
前記第1金属及び前記第2金属が、マグネシウム合金、又は、前記第1金属及び前記第2金属が、アルミニウム合金である、
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の複層の金属板を製造する金属板製造装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載の金属板製造装置を用いて金属板を製造する方法であって、
前記第1プール及び前記第2プールに夫々前記第1金属溶湯、前記第2金属溶湯を注湯し、
前記コンベア手段を走行させて、
前記第1プール内の前記第1金属溶湯を前記コンベア手段によって冷却して、前記コンベア手段の表面に凝固状態層及び/又は半凝固状態層を有する第1金属層を形成し、前記第1金属層を前記第1プレートの先端部を通過させて前記第2プールに侵入させ、
前記第2プール内にて、前記第1金属層の上に少なくとも一定厚差以下の凝固状態、半凝固状態乃至溶融状態の前記第2金属層を形成しながら前記第2プレートの前記間隔保持手段を通過させることで、前記第1金属層の上に少なくとも溶融状態の第2金属を形成するようにした、
ことを特徴とする複数の金属板を製造する金属板製造方法。
【請求項7】
マグネシウム又はマグネシウム合金の金属層の上に、マグネシウム又はマグネシウム合金の金属層が形成されたクラッド金属板であって、前記両金属層は、共に鋳造組織を有する、
ことを特徴とするクラッド金属板。
【請求項8】
前記金属層は、急冷によって形成された微細化組織を有する、
請求項7に記載のクラッド金属板。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールの如きコンベア手段を用いた連続鋳造によって、金属板、特にクラッド金属板を製造する、特に高速かつ急冷鋳造による金属板製造装置、金属板の製造方法及び製造された金属板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
同種又は異種の金属どうしを積層してなる所謂クラッド金属板が知られている。たとえば、自動車業界等において、車両の軽量化などを図るために、アルミニウムクラッド金属板を使用することが提案されている。
【0003】
一方で、マグネシウムは、アルミニウムに比べて軽量であり、電磁シールド性能等にもすぐれるため、種々の用途への適用が期待されている。
【0004】
クラッド金属板の製造方法として、双ロール式連続鋳造法が提案されている。たとえば、特許文献1では、一対の双ロールの各々の表面に融点の異なるアルミニウム合金溶湯を供給し、各ロール表面にて各合金溶湯の凝固を開始させると共に、双ロールのキス点近傍においてこれら合金どうしを積層一体化させている。
【0005】
しかしながら、双ロール式連続鋳造法によるクラッド金属板の製造は、接合時にロールへの抜熱量が多く、温度が低くなりすぎて上手く接合しない場合がある。
【0006】
そこで、これら方法よりも温度制御を容易とし、安価にクラッド金属板を製造する方法として、特許文献2に示すような単ロール法を提案している。
【0007】
特許文献2は、ロールを用いた連続鋳造によって、金属板を製造する金属板製造装置であって、冷却能を有するロールと、金属溶湯を貯めるためのプールとを具える。プールには、ロールの回転方向前方に位置し、先端部とロールの表面との間の距離が変わり得るように可動に設けられたスクレイパーを有している。ロールを回転すると、プール内の金属溶湯が冷却されつつロール表面に半凝固状態乃至凝固状態でプールから引き出される。引き出される金属には、スクレイパーの先端部が一定の力で面的に押し付けられているから、ロールにて冷却されて凝固状態となった金属層の表面に形成される溶湯又は半凝固状態の金属は、スクレイパーの先端部によって掻き取られ、略一定厚さの金属層を得ることができる。
【0008】
上記特許文献2において、図5乃至図8に示されているように、ロールの回転方向に第1金属溶湯と第2金属溶湯の注湯されたプールと、スクレイパーを2段に設け、手前側の第1プールから第1スクレイパーを通過した第1金属層を第2プールに侵入させる。そして、第1金属層の上に第2プールの金属溶湯を当接させ、第1金属層の上に形成された第2金属層の半凝固状態の固相率の低い部分を第2スクレイパーで掻き取ることで、第1金属層の上に第2金属層が形成されたクラッド金属板を製造している。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2008-142763号公報
【特許文献2】特開2011-206835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1では、図1乃至図3の双ロール方式の場合は、金属板が鉛直方向に落下するため、搬送方向を途中で水平方向に変更する必要があり、品質上好ましくない。また、装置高さも必要となる。図4乃至図8の双ロール方式の場合は、仕切り板とタンディッシュの一部が仕切り板となっているため、位置制御が複雑となり、安定した成形が困難である。
【0011】
特許文献2では、第1金属と第2金属は、凝固温度範囲が実質的に等しい材料を用いる必要がある。なぜなら、第1金属の凝固温度が、第2金属の凝固温度よりも高いと、第1金属層を第2プール中に侵入させたときに、第1金属上で第2金属が凝固せず、又、半凝固状態となったとしても固相率が低く、後段側の第2スクレイパーによって第2金属が殆んど削がれてしまうためである。
【0012】
また、特許文献2では、半凝固状態においても金属の材料の違いにより、固相率が高くとも流動抵抗が低い金属材料では、スクレイパーで掻き取られてしまい、スクレイパーの後ろに堆積し、凝固してしまうため、安定した連続的な鋳造ができない。
【0013】
クラッド板の製造においては、半凝固状態の固相率の低い第2金属を第2スクレイパーで掻き取っているから、第2金属層には、ロールの回転方向である長手方向に、筋状の掻き傷が残ることがあり、幅方向の平坦性に劣る。これは、第2スクレイパーの先端部に固相率が高い半凝固状態の第2金属が玉状となって付着してしまうため金属板表面に掻き傷がつくことや、第2スクレイパーの先端部の断熱性を高めるために先端部に装着された断熱材の凹凸が転写されてしまうことが原因と考えられる。
【0014】
一定厚さのクラッド金属板を得るには、金属溶湯の温度、ロールの温度、ロールの回転速度、さらには、第2スクレイパーの押し付け強さの調整等の生産条件の制御が必要となるが、これら種々の条件を調整することは困難であった。
【0015】
また、従来、マグネシウム合金からなるクラッド金属板は、予め第1金属板と第2金属板を熱間圧延で作製した後、これら両金属板を熱間圧延により接合している。熱間圧延の工程には、高額の製造装置が必要となり、金属板の製造コストも高くなっていた。さらに、マグネシウム合金は酸化し易いため、第1金属板、第2金属板の表面に酸化膜が形成される。そして、この酸化膜が、両金属板の接合面に残存することで接合性が低下し、両金属板を剥離し難く一体化することは困難であった。さらに、アルミニウムを9%以上含むマグネシウム合金(例えばAZ91)の場合は、硬いため熱間圧延が困難であった。同様にマグネシウムを4%以上含むアルミニウム合金(例えばA5182)も、硬いため熱間圧延が困難であり、表面の酸化のためクラッド化が困難であった。
【0016】
従って、特にマグネシウム又はアルミニウム含有量が高いマグネシウム合金を第1金属板、第2金属板とし、これらの接合性が良好なクラッド金属板の提供や、これを製造する金属板製造装置、製造方法の開発が強く望まれている。
【0017】
本発明の目的は、圧延のような工程を要せず、溶湯からロールを用いた連続鋳造によって金属板、特にマグネシウム合金、さらにはアルミニウム含有量が高いマグネシウム合金のクラッド金属板を製造する金属板製造装置及び金属板、特にクラッド金属の製造方法において、上記した諸問題を解消することを目的とし、省工程で、安価に、簡易な装置で製造できる金属板製造装置、金属板の製造方法、及び、これによって製造された金属板を提供することである。さらに生産性の観点から、鋳造速度が10m/分~120m/分、且つ、冷却速度が100℃/秒~2000℃/秒の高速急冷鋳造で高い生産性を有する製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。さらには、本発明は、表面が幅方向の平坦性をも兼ね具えた金属板の製造装置、金属板の製造方法、及び、これによって製造された金属板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る金属板製造装置は、
冷却能を有し走行するコンベア手段と、
前記コンベア手段上に形成され、第1金属溶湯を貯めるための第1プールと、
前記コンベア手段上に形成され、前記第1プールよりも前記コンベア手段の走行方向前方に設けられた第2金属溶湯を貯めるための第2プールと、
を具え、
前記第1プールは、前記コンベア手段の表面と、前記コンベア手段の走行方向前方に位置する第1プレートと、前記第1プレートの走行方向後方に位置する後部材と、両サイド部材と、で囲まれており、
前記コンベア手段は、前記第1プール内の第1金属溶湯を冷却して前記コンベア手段の表面に半凝固状態又は凝固状態の第1金属層を形成しながら第1金属層を伴って走行するようになっており、
前記第1プレートは、先端部を有し、第1プレート先端部と前記コンベア手段の表面との間の距離が変わり得るように可動に設けられており、前記コンベア手段の走行に伴って移動する前記第1金属の凝固状態層及び/又は半凝固状態層は通過するが溶湯は通過しないように、前記第1プレート先端部が一定の力で面的に常時当接するように付勢されており、
前記第2プールは、前記第1プール内で前記コンベア手段上に形成された第1金属の凝固状態層及び/又は半凝固状態層表面と、前記コンベア手段の走行方向前方に位置する第2プレートと、前記コンベア手段の走行方向後方に位置する前記第1プレートと、両サイド部材と、で囲まれており、前記第2プール内で、前記コンベア手段上に形成された前記第1金属の凝固状態層及び/又は半凝固状態層表面の上に、前記第2プール内の第2金属が積層され凝固状態、半凝固状態乃至溶湯状態の第2金属層を形成しながら前記コンベア手段の走行により移動するようになっており、
前記第2プレートは、少なくとも一定の厚さ以下の溶湯状態の前記第2金属の通過を許容するようにされており、第2プレート先端に脚部と通過部を有する形状のプレートの場合は、通過部の高さにより前記第2金属の流量を調節し、第2プレートの先端に脚部を有しない形状のプレートの場合は、第2プレート先端を一定の高さに保つ付勢力により前記第2金属の流量を調節、又は、第2プレート先端の高さ位置により前記第2金属の流量を調節する、所定の通過量を得る手段を有し、
前記第2プレートを通過した後の溶湯が前記走行手段の側面に流れることを防止する手段を有する。
【0019】
前記第2プレートよりも前記コンベア手段の走行方向前方には、前記コンベア手段と対向し、前記第2金属の未凝固表面に接し均す均し手段を設けることができる。
【0020】
前記コンベア手段は、外周断面が円形の第1ロールであって、
前記均し手段は、前記第1ロールの回転軸と平行な回転軸を有し、前記第1ロールと反対方向に回転し冷却能を有する、第2ロールとすることができる。
【0021】
前記均し手段は、前記第2金属の表面に当接するよう付勢されている第3プレートとすることができる。
【0022】
前記第1金属及び前記第2金属は、マグネシウム合金、又は、前記第1金属及び前記第2金属は、アルミニウム合金とすることができる。
【0023】
また、本発明に係る金属板の製造方法は、
上記金属板製造装置を用いて金属板を製造する方法であって、
前記第1プール及び前記第2プールに夫々前記第1金属溶湯、前記第2金属溶湯を注湯し、
前記コンベア手段を走行させて、
前記第1プール内の前記第1金属溶湯を前記コンベア手段によって冷却して、前記コンベア手段の表面に凝固状態層及び/又は半凝固状態層を有する第1金属層を形成し、前記第1金属層を前記第1プレートの先端部を通過させて前記第2プールに侵入させ、
前記第2プール内にて、前記第1金属層の上に少なくとも一定厚差以下の凝固状態、半凝固状態乃至溶融状態の前記第2金属層を形成しながら前記第2プレートの前記間隔保持手段を通過させることで、前記第1金属層の上に少なくとも溶融状態の第2金属を形成するようにした。
【0024】
本発明のクラッド金属板は、
マグネシウム又はマグネシウム合金の金属層の上に、マグネシウム又はマグネシウム合金の金属層が形成されたクラッド金属板であって、前記両金属層は、共に鋳造組織を有する。
【0025】
前記金属層は、急冷によって形成された微細化組織を有する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の金属板製造装置及び金属板の製造方法によれば、圧延などの工程を要せず、省工程で、安価、簡易な装置で複層の金属板の製造が可能となる。
本発明の金属板製造装置及び金属板の製造方法によれば、第1プレートを通過した第1金属層の上に、少なくとも溶融状態の第2金属を含む第2金属層が積層された状態で第2プレートを通過する。溶融状態の第2金属は、第2プレートの通過量保持手段を通過する際に掻き傷の如き傷が生じない。従って、製造された金属板は、第2金属層の表面を幅方向に平坦にできる。
【0027】
また、第2プレートを通過した後、溶融状態の第2金属層の表面を均し手段によって滑らかにすることで、得られた金属板は、厚さが一定で、表面を幅方向に平坦且つ平滑なものとすることが出来る。また、第2金属が完全に凝固する前に表面を均すことで、均し手段の押し付け圧力も低くて済む。
【0028】
本発明の金属板製造装置及び金属板の製造方法は、とくに、第1金属及び第2金属がマグネシウム合金であるクラッド金属板の製造に好適である。マグネシウム合金は、易酸化金属であるが、第1プールにて第1金属層が形成された後、第1金属層は表面が酸化雰囲気に触れることなく第2プールに侵入し、第2金属層が形成されるから、第1金属層と第2金属層との間に酸素が入ることはないので、第1金属層と第2金属層の良好な接合状態を維持できる。
なお、第1金属及び第2金属がアルミニウム又はアルミニウム合金でも好適に利用ができる。
【0029】
本発明の製造装置や製造方法により製造されたクラッド金属板は、高速冷却すれば、微細化された鋳造組織を有し高延性を具備できる。
【0030】
また、本発明のマグネシウム又はマグネシウム合金のクラッド金属板は、共に鋳造組織を有する、圧延なしに製造された、接合されたクラッド材である。高速急冷鋳造法によれば微細化組織を有する為、高延性を具備できる。本発明のクラッド金属板によれば、熱間圧延で製造されたクラッド金属板に比べて、金属層間に酸化膜の介在や酸素の混入が防がれるため、金属層どうしの高い接合性を具備できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る金属板製造装置を示す断面概略図である。
【図2】図2は、図1の矢印II方向からの矢視部分図である。
【図3】図3は、図1の線III-IIIの矢視断面図である。
【図4】図4は、図1の線IV-IVの矢視断面図である。
【図5】図5は、第1プレートの先端部の異なる実施形態を示す断面図である。
【図6】図6は、第2プレートの先端部の斜視図である。
【図7】図7は、第1実施形態の金属板製造装置により金属板を製造している状態を示す断面概略図である。
【図8】図8は、図7の丸囲み部Aの拡大断面図である。
【図9】図9は、図7の線B-Bに沿って切断した金属層を説明する断面図である。
【図10】図10は、図7の線C-Cに沿って切断した金属板を説明する断面図であって、均し手段を通過後の図である。
【図11】図11は、本発明の第3実施形態に係る金属板製造装置を示す断面概略図である。第2プレートを固定した金属板製造装置を示している。
【図12】図12は、第2プレートの先端部の異なる実施形態を示す斜視図である。
【図13】図13は、サイド部材をコンベア手段に鍔状に設けた実施形態を示す斜視図である。
【図14】図14は、図7の丸囲み部Dの拡大図であって、均しロールの前にプレートを設けた図である。
【図15】図15は、本発明の第2実施形態に係る金属板製造装置を示す断面概略図であって、均し手段なしの金属板製造装置を示している。
【図16】図16は、本発明の第3実施形態に係る金属板製造装置を示す断面概略図であって、均し手段として第3プレートを採用した金属板製造装置を示している。
【図17】図17は、第1実施例に係るクラッド金属板の断面写真である。
【図18】図18は、第1実施例に係るクラッド金属板の断面にエッチング処理を施して撮影した第2金属層表面近傍の顕微鏡写真である。
【図19】図19は、第2実施例に係るクラッド金属板の断面写真である。
【図20】図20は、第2実施例に係るクラッド金属板の断面にエッチング処理を施して撮影した第2金属層表面近傍の顕微鏡写真である。
【図21】図21は、第2実施例に係るクラッド金属板の初端の写真である。
【図22】図22は、第2実施例に係るクラッド金属板を折り曲げて破断させた端面を示す写真である。
【図23】図23は、第3実施例に係るクラッド金属板の断面写真である。
【図24】図24は、第3実施例に係るクラッド金属板の断面にエッチング処理を施して撮影した第2金属層表面近傍の顕微鏡写真である。
【図25】図25は、金属板の幅方向の平坦性を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態に係る金属板製造装置10について図面を参照しながら説明を行なう。

【0033】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態に係る金属板製造装置10の実施形態を示す断面概略図である。金属板製造装置10は、同種又は異種の2種類の金属溶湯から単層の金属板を製造するための装置であり、単ロール法を採用している。

【0034】
図1に示すように、金属板製造装置10は、コンベアロール20の如きコンベア手段と、夫々に金属溶湯を貯める第1プール30及び第2プール50を具えている。

【0035】
コンベア手段は、本実施形態では、コンベアロール20として示される単ロールである。コンベア手段は、金属溶湯の送出機能と冷却機能を具備していれば、ロール形状、ベルト形状等であってもよい。コンベア手段としてロール形状を採用することで製造装置を簡易に構成することができる。

【0036】
コンベアロール20の金属溶湯の送出機能は、コンベアロール20を回転駆動可能に構成することで実現できる。たとえば、送出機能は、コンベアロール20を金属溶湯を送出可能となるように図1の矢印R1方向に回転(走行)可能に配置し、コンベアロール20の軸をモータ等により回転させればよい。

【0037】
また、コンベアロール20は、その表面22に接触した金属溶湯を冷却するための冷却機能を有している。その冷却機能は、冷却水がコンベアロール20の内部を循環することにより冷却機能を発揮する「水冷式」を例示できるが、他の機構を採用してもかまわない。また、コンベアロール20の外部に冷却機構を備えていれば、コンベアロール20の内部に冷却機構を有していなくてもよい。

【0038】
上述した送出機能と冷却機能を具備するコンベアロール20は、その表面22に接触する第1プール30及び第2プール50内の金属溶湯80,90(図7参照)を冷却しながら回転する。

【0039】
第1プール30は、図1に示すように、第1金属溶湯を貯めることができるように、コンベアロール20の表面22と、コンベアロール20の回転(走行)方向(矢印R1方向)前方に位置する第1プレート40と、コンベアロール20の回転方向後方に位置する後部材32と、両サイド部材34とで囲まれている。

【0040】
後部材32は、図1及び図2に示すように、第1プール30からコンベアロール20の後方側への第1金属溶湯の漏れを防ぐ部材である。後部材32は、製作が安価で設置が簡単なため、本実施形態ではプレートで構成されているが、第1プール30の後壁を構成できるならば、他の部材でもよい。後部材32の先端縁は、第1プール30内に貯められた第1金属溶湯が後方へ漏れるのを防止できる距離まで、コンベアロール20の表面22に近接している。後部材32の先端縁は、コンベアロール20の回転を許容する限りにおいて、コンベアロール20の表面22に当接してもよいが、回転するコンベアロール20との摩擦によって互いに摩耗しないようにするには、コンベアロール20の表面22に当接していない方が好ましい。

【0041】
両サイド部材34,34は、図1乃至図4に示すように、第1プール30や第2プール50からコンベアロール20の側方への第1金属溶湯、第2金属溶湯の漏れを防ぐ部材である。サイド部材34の内面は、第1プール30内及び第2プール50内に貯めた第1金属溶湯及び第2金属溶湯、第2プレート60を通過した第2金属溶湯がコンベアロール20の両側に漏れるのを防止できる距離まで、コンベアロール20の側面に近接している。なお、両サイド部材34は、本実施形態ではプレートで構成されているが、第1プール30及び第2プール50の両側壁を構成し、さらには、第2プレート60を通過した第2金属溶湯がコンベアロール20の両側に漏れる防止できるならば、他の部材でもよい。

【0042】
第1プレート40は、図1及び図3に示すように、第1プール30の前壁を構成すると共に、次に説明する第2プール50の後壁を構成するように、プレートを加工して設けられている。第1プレート40は、図1及び図3では、先端が折れ曲がった形態を有しているが、断面が直線状又は円弧状の形態を有していてもよい。第1プレート40の先端部42は、図1に示すように、コンベアロール20の表面22との間の距離H1が変わり得るように可動に設けることができる。具体的には、第1プレート40は、基端部にて水平軸43を回転軸として(矢印Y方向)に回動自在に支持されており、これにより、距離H1が可変となっている。また、第1プレート40は、距離H1が小さくなる方向(矢印Y1方向)に回動するように、常時付勢制御されている。第1プレート40の基端部には、紐44aを介して所定重量の錘44が連結されており、第1プレート40は、錘44によって、矢印Y1方向に回動するように、常時、一定の力で引っ張られている。これにより、第1プレート40の先端部42は、コンベアロール20の表面22に向かって、常時、一定の力で付勢されている。この押し付け力は、第1プレート40の先端部42とコンベアロール20の表面22との間を通過する第1金属層の表面に強く当接して、第1金属層の表面に付着した未凝固又は半凝固状態の第1金属を掻き出し、第2プール50に未凝固又は半凝固状態の第1金属が流出することを防ぐ。なお、未凝固又は半凝固状態の第1金属が第2プール50へ流出することを防止しているのは、第2プール50内の第2金属溶湯の成分変化や汚染を防止するためである。

【0043】
第1プレート40の先端部42には、図5に示すように断熱材46を貼り付けることができる。断熱材46として、アルミナファイバーの如き不織布(たとえば、商品名「イソウール」(登録商標))を例示できる。より詳細には、図5(a)、(b)は、先端部42を包むように断熱材46を貼り付けた例であり、図5(c)、(d)は、第1プレート40の先端部42が露出するように断熱材46を貼り付けた例である。先端部42を包むように断熱材46を貼り付けると、第1金属が第2プール50に流出することを防ぐ効果が高まり、先端部42を露出するように断熱材46を貼り付けつけると、第1金属層の表面に断熱材の凸凹が転写されてしまうことを防ぎ、幅方向の平坦性が高まる効果がある。

【0044】
第1プレート40の材質としては限定されないが、少なくとも先端部42は、金属、セラミックス、窒化ケイ素、ボロンナイトライド、SiC、アルミナ、ジルコニアなどがある。

【0045】
第2プール50は、図1に示すように、第2金属溶湯を貯めることができるように、コンベアロール20の表面22と、コンベアロール20の回転(走行)方向(矢印R1方向)前方に位置する第2プレート60と、コンベアロール20の回転方向後方に位置する前述の第1プレート40と、両サイド部材34,34とで囲まれている。

【0046】
第2プール50の前壁を構成する第2プレート60は、図1、図4及び図6に示すように、プレートを加工して設けられている。第2プレート60は、図1では、断面が、折れ曲がった形態を有しているが、断面が直線状又は円弧状の形態を有していてもよい。

【0047】
第2プレート60の材質としては限定されないが、少なくとも先端部42は、金属、セラミックス、窒化ケイ素、ボロンナイトライド、SiC、アルミナ、ジルコニアなどがある。

【0048】
第2プレート60の先端部62は、図1に示す如く、コンベアロール20の表面22との間の距離H2が変わり得るように可動に設けられている。具体的には、第2プレート60は、基端部にて水平軸63を回転軸として(矢印Y方向)に回動自在に支持されており、これにより、距離H2が可変となっている。また、第2プレート60は、距離H2が小さくなる方向(矢印Y1方向)に回動するように、常時付勢制御されている。付勢制御のための間隔保持手段として、第2プレート60の基端部には、紐64aを介して所定重量の錘64が連結されており、第2プレート60は、錘64によって、矢印Y1方向に回動するように、常時、一定の力で引っ張られている。これにより、第2プレート60の先端部62は、コンベアロール20の表面22に向かって、常時、一定の力で付勢されている。

【0049】
第2プレート60の先端部62には当接部が設けられており、当接部には第2金属溶湯90の表面と接する当接面65が設けられている。

【0050】
第2プレート60に付勢される力は当接面65より第2金属溶湯90に対する押し付け力として作用する。この押し付け力は、後述するとおり、第2金属溶湯90が所定厚さの溶湯状態で第2プレート60の当接面65を通過するよう設定される。すなわち、第1プレート40と第2プレート60の押し付け力を比べると、第2プレート60の押し付け力は、第1プレート40の押し付け力よりも小さくなるよう設定されている。

【0051】
第2プレート60の押し付け力を上記のとおり設定することで、当接面65から一定の押し付け力で第2金属溶湯90を押さえ、当接面65が沈み込まない一定の反力を受けて、当接面65の高さを遊動させて保つことができる。

【0052】
なお、図6に示すように、第2プレート60には、断熱材66を貼り付けることが望ましい。これにより、第2金属溶湯90に対する保温効果を高めることができると共に、第2プレート60に溶湯が付着して凝固してしまうことを抑えることができる。たとえば、断熱材66はアルミナファイバーの如き不織布(たとえば、商品名「イソウール」(登録商標))を例示できる。特に、断熱材66は、第2プレート60の第2プール50側に配置することで、更に第2プレート60と第2金属溶湯間の反応を防ぐこともできる。

【0053】
また、コンベアロール20には、図1に示すように、第2プレート60よりもコンベアロール20の回転方向前方にてコンベアロール20と対向し、第2プレート60を通過した第2金属溶湯90を均す機能を有する均し手段が配置されている。図示では、均し手段は、均しロール70であって、この均し手段で第2金属溶湯90を未硬化の状態で均すことにより、押しつぶされた第2金属溶湯90を第1金属層83、又は、凝固、半凝固状態の第2金属層93と一体化させる機能を有する。

【0054】
また、均し手段である均しロール70により、製造されるクラッド金属板100は、表面が幅方向に平坦化され、その厚さを調整することができる。望ましくは、均しロール70に水冷等の冷却機能を有することで、第2金属溶湯90を急冷して凝固させることができる。このように、第2金属が溶湯又は半凝固の柔らかい状態で、均しロール70を当てることにより、金属板表面100を平坦化することができる。特許文献2の方法では、溶湯又は半凝固状態の第2金属はスクレイパーで掻き取られる為、未凝固の層が無く、均すことができない。

【0055】
上記構成の金属板製造装置10を用いた金属板の製造方法について、図7乃至図10を参照しながら説明する。

【0056】
まず、金属板製造装置10を起動するとコンベアロール20が回転を開始するとともに、冷却機能が作動する。次に第1プール30及び第2プール50に夫々第1金属溶湯80、第2金属溶湯90を注湯する。

【0057】
第1金属溶湯80及び第2金属溶湯90として、同種又は異種の合金組成を有する金属の溶湯を採用できる。なお、望ましい第1金属溶湯80及び第2金属溶湯90の組合せについては後述する。

【0058】
まず第1プール30に着目すると、コンベアロール20が、所定速度で回転し、その表面22に接触している第1プール30内の第1金属溶湯80が冷却を受け、徐々に凝固しながら厚くなり、凝固状態の第1金属層83を形成する。後部材32の下端縁からスクレイパープレート40の先端部42までの円周距離L1(図7)は、第1金属溶湯80が凝固して、第1プレート40の先端部42とコンベアロール20の表面22との間の距離H1(図1参照)の高さに相当する第1金属層83を形成するよう設定されている。そして、コンベアロール20の走行により、第1金属層83が、第1プレート40の先端部42とコンベアロール20の表面22との間を通過する。第1プレート40は、錘44による付勢力によって第1金属層83に押し付けられているから、第1プレート40を通過する際に、第1金属層83上に形成された未凝固又は半凝固状態の第1金属溶湯80は、第1プレート40の先端部42と当接することで掻き取られる。

【0059】
そして、凝固状態の第1金属層83が、第1プレート40を通過して第2プール50に侵入する。第2プール50には第2金属溶湯90が注湯されているから、第2プール50に侵入した第1金属層83は、第2金属溶湯90と接する。このとき、第1金属層83の表面は、酸化雰囲気に曝されることなく第2プール50に侵入するから、第1金属層83の表面が酸化されてしまうことはない。

【0060】
第1金属層83は、コンベアロール20の表面22から冷却を受け続けるため、冷却を受けた第1金属層83の表面に当接する第2金属溶湯90は、漸次半凝固状態又は凝固状態で第1金属層83の表面に付着していく。この付着した凝固状態又は半凝固状態の第2金属を第2金属凝固層91と称する。第2金属凝固層91と第1金属層83との当接面で剥離し難く一体化する。なお、この第2金属凝固層91は、第2プレート60の先端部62を通過する状態において、当該先端部62には届かない厚さとなるように形成されるよう、第2プレート60の先端部62とコンベアロール20の表面22との距離H2(図1及び図8参照)及び押し付け力が設定されている。

【0061】
なお、本実施形態では、第2プレート60は、錘64によって図1の矢印Y1方向に回動するように、常時、一定の力で引っ張られているから、たとえ、第2金属凝固層91が厚く形成されてしまったとしても、第2プレート60を通過可能である。

【0062】
一方、第2金属凝固層91の上には、第2プール50内で、図7及び図8に示すように、第2金属が溶湯状態のまま載っている。そして、溶湯状態の第2金属は、第2金属凝固層91の表面と第2プレート60の先端部62の間から溶湯状態で流出通過する。第2金属凝固層91と共に第2プレート60を通過する第2金属溶湯を、第2金属溶湯層92と称する。

【0063】
図9は、第2プレート60の先端部62を通過した金属の断面図である。図に示すように、金属は、第1金属層83の上に第2金属凝固層91、さらにその上に溶湯状態の第2金属溶湯層92が形成されていることがわかる。

【0064】
この状態で、コンベアロール20からさらに冷却を受けながら、図7に示す均しロール70によって、第2金属溶湯層92が未凝固の状態で均されつつ冷却を受けることで、押しつぶされた第2金属溶湯層92が凝固し、図9に示すように、第2金属凝固層91と一体化されて第2金属層93となる。これにより、第1金属層83と第2金属層93が一体化したクラッド金属板100が得られる。

【0065】
得られたクラッド金属板100は、後述する実施例にて説明するとおり、第1金属層83と第2金属層93との間が酸化されることなく一体化されており、第1金属層83と第2金属層93は共に鋳造組織を有する。冷却機能を有する均しロール70を作用した場合には、均しロール70により第2金属層93の表面が幅方向に平坦且つ平滑で有ることが観察される。

【0066】
鋳造速度が10m/分~120m/分で、冷却速度が100℃/秒~2000℃/秒の高速急冷鋳造を行なえば第1金属層83及び第2金属層93が微細化された鋳造組織となり高延性を具備するクラッド金属板100となる。

【0067】
なお、製造されたクラッド金属板100について、第2金属層93は、第1金属層83側と第2金属層93の表面側から凝固した組織が異なることが観察できるため、第1金属層83と第2金属層93を判別することができる。

【0068】
以下、本発明の金属板製造装置10の異なる実施形態について説明する。これら実施形態は、上述した実施形態と組み合わせることができる。また、以下の実施形態どうしを組み合わせることも勿論できる。なお、上記実施形態と同じ部材については同じ符号を付し、説明を適宜省略する。

【0069】
図11は、第2プレート60を位置制御、たとえば固定した実施形態である。第2プレート60は、先端部62がコンベアロール20の表面に対し一定高さ(間隔H2)を保持するように金属板製造装置10に固定されている。これにより、第2プレート60を通過する金属の高さを一定にすることができる利点がある。

【0070】
図12は、第2プレート60の異なる実施形態を示している。図12の第2プレート60は先端部62の両側の脚部68、68間にコンベアロール20の表面から離れる方向に高さH3分凹んだ通過部67を有する。通過部67を形成することで、第2プレート60は、脚部68,68の先端が凝固状態の第1金属層83又は第2金属凝固層91の形状に倣って揺動する。その結果、通過部67には、第2金属溶湯のみが通過することとなり、一定厚さの第2金属溶湯層92を流出させることができる。

【0071】
通過部67の高さH3を適正に設定することにより通過する溶湯量が定まる。この為、過当な第2金属溶湯90の流出も防ぐことができ、製造条件の制御設定も容易とすることができる。

【0072】
なお、図12の第2プレート60を用いた場合、脚部68,68でわずかに掻き取られた第1金属が、第2プール50に混入することも考えられる。第1金属層と第2金属層の成分が異なり、第1金属成分が第2プールに混入することを防止したい場合は、脚部を使用せずにロール面に対して第2プレートの先端とロール面の距離を一定に保つH2の高さを制御する方法を用いれば良い。

【0073】
図13は、両サイド部材34,34の異なる実施形態であり、コンベアロール20の両端に鍔状に両サイド部材34を一体に取り付けたものである。

【0074】
また、均し手段である均しロール70の手前に、図7の丸囲み部Aの拡大図14に示すように、プレート98を設け、第2金属層の未凝固部分の均しロール70と接触する流量をさらに調整し第2金属層の厚みを調整するようにしてもよい。均しロール70の手前で、均しロール70と接触する未凝固の第2金属の流量を調整することで、第2金属層の厚みをより正確に調整することが可能となる。なお、図14を参照すると、均しロール70の表面に当接した第2金属溶湯90は、均しロール70から冷却を受けて均しロール70上に薄い凝固層を形成する。

【0075】
図15は、均し手段なしの金属板製造装置10の実施形態である。均し手段なしとすることで、製造されるクラッド金属板100の表面には凹凸が生ずることになるが、溶湯状態の第2金属溶湯層92は流動性を有するため、微細な凹凸は消失する。製造されたクラッド金属板100には、必要に応じて熱間又は冷間で別工程となる圧延加工を施せばよい。

【0076】
図16は、均し手段の異なる実施形態である。図示の均し手段は、板状の均しプレート72であって、先端が第2プレート60を通過した第2金属溶湯層92と当接可能な高さに位置している。必要に応じて、均しプレート72には冷却機能を具備させることができる。

【0077】
続いて、本発明に適用可能な金属溶湯について説明する。本発明に適用可能な金属溶湯及びその組合せとして、上述したとおり同種又は異種の金属を例示できる。採用される金属として、マグネシウム系の金属、アルミニウム系の金属、銅系の金属などを例示することができる。なお、第1金属と第2金属は、凝固温度範囲が実質的に等しい材料、又は、第2金属の凝固温度が、第1金属の凝固温度以下の材料を採用することが好適である。

【0078】
より具体的には、マグネシウム系の金属として、マグネシウムやマグネシウム合金、AZ系合金、AM系合金、ZK系合金、マグネシウム基をマトリックスとする複合材料を例示できる。

【0079】
また、アルミニウム系の金属として、アルミニウム、アルミニウム合金、Al-Si系合金、Si量が7%以上のAl合金、Al-Cu系合金、Al-Mg系合金、JIS1000系乃至8000系Al合金、その他実用的なAl合金などのアルミニウム合金、Al-SiC(Al合金にSiCのセラミック粉末を含む)などのアルミニウム基をマトリックスとする複合材料を例示できる。

【0080】
銅系の金属として、銅、真鍮などの銅合金を例示でき、その他亜鉛、亜鉛合金、鉛、鉛合金、鉄合金、鋳鉄などが好適である。

【0081】
特に、本発明は、マグネシウム、マグネシウム合金を金属溶湯とするクラッド金属板の製造に好適である。その理由として、マグネシウムやマグネシウム合金は、非常に酸化されやすい金属であり、熱間圧延によって2枚のマグネシウム又はマグネシウム合金金属板を接合した場合、金属板どうしの接合面に酸化膜が介在又は酸素が混入し、その接合部分にて脆化が生じ、第1金属層と第2金属層との接合状態が劣化するためである。また、この種クラッド金属板は加工組織となる。

【0082】
本発明のマグネシウム又はマグネシウム合金のクラッド金属板は、急速冷却(急冷凝固)すれば、第1金属層83及び第2金属層93が微細化された組織となり高延性を具備するクラッド金属板となることはもちろん、金属層間の接合面に酸素が混入しないため金属層どうしの接合強度を可及的に高めることができる。
【実施例】
【0083】
第1実施例乃至第4実施例のクラッド金属板を図1に示す金属板製造装置10を使用して製造した。金属板製造装置10の詳細は以下のとおりである。
【実施例】
【0084】
[コンベアロール20(冷却ロール)]
・ロール材質…銅合金
・ロール直径…1000mm
・ロール幅…100mm
・ロールの回転速度(周速)…30m/分
・ロールの冷却方式…循環水による水冷
【実施例】
【0085】
[第1プレート40]
・形態…図1に示したような折り曲げ形態を有したもの
・材質…鋼板
・先端部42の幅…100mm
・コンベアロール20の表面22と第1プレート40の先端との注湯開始前距離H1…1mm
【実施例】
【0086】
・第1プール30と第2プール50側の両面を断熱材66であるイソルール(登録商標)(2mm厚)で覆い、更にBN(窒化ホウ素)スプレーしたもので覆ったもの
・第1プレート40の押し付け荷重(付勢力):10kg
(第1プレート40の先端で、バネ秤を用い実測し、10kgになるように錘44を調整した。
【実施例】
【0087】
[第2プレート60]
・形態…図1に示すような折り曲げ形態を有したもの
・材質…鋼板
・先端部62の幅…100mm
・コンベアロール20の表面22と第2プレート60の先端との注湯開始前距離H2…4mm
・第2プール50側を断熱材66であるイソルール(登録商標)(2mm厚)で覆い、更にBN(窒化ホウ素)スプレーしたもので覆ったもの
・第2プレート60の押し付け荷重(付勢力):5kg
(第2プレート60の先端で、バネ秤を用い実測し、5kgになるように錘64を調整した。
【実施例】
【0088】
[サイド部材34]
・形状…長方形の板材
・使用形態…溶湯が漏れず、第1プレート及び第2プレートが可動なようにわずかな隙間を空けて取り付けられている。
・材質…鋼板。第1プール30及び第2プール50側を断熱材であるイソルール(登録商標)(2mm厚)で覆い、更にBN(窒化ホウ素)スプレーしたもので覆ったもの
【実施例】
【0089】
[均しロール70]
・均しロール材質…銅
・均しロール直径…300mm
・均しロール幅…100mm
・単位幅当たりの均しロールの押し付け荷重で付勢力一定で押しつける(図1のF1)…10kN(0.1kN/mm)
・均しロールの回転速度(周速)…30m/分
・ロールの冷却方式…水冷方式
・コンベアロール20の表面22と均しロールとの注湯開始前の距離…2mm
【実施例】
【0090】
上記構成の金属板製造装置10について、第1実施例乃至第4実施例では、下記の第1金属と第2金属の組合せでクラッド金属板を製造した。
【実施例】
【0091】
[第1実施例]
第1金属溶湯80:材料…AM60、固相線温度…540℃、液相線温度…615℃
第2金属溶湯90:材料…AZ91、固相線温度…470℃、液相線温度…595℃
【実施例】
【0092】
[第2実施例]
第1金属溶湯80:材料…AM60、固相線温度…540℃、液相線温度…615℃
第2金属溶湯90:材料…AZ121、固相線温度…433℃、液相線温度…585℃
【実施例】
【0093】
[第3実施例]
第1金属溶湯80:材料…AC7A(Al-Mg合金)、固相線温度…570℃、液相線温度…635℃
第2金属溶湯90:材料…AC4C(Al-Si-Mg合金)、固相線温度…555℃、液相線温度…610℃
【実施例】
【0094】
[第4実施例]
第1金属溶湯80:材料…3003(Al-Mg合金)、固相線温度…643℃、液相線温度…655℃
第2金属溶湯90:材料…AC7A(Al-Mg合金)、固相線温度…570℃、液相線温度…635℃
【実施例】
【0095】
上記により製造されたクラッド金属板100について、夫々エッチングを施し、断面の写真を撮影した。第1実施例については図17、第2実施例は図19、第3実施例は図23に示している(第4実施例については図面なし)。
【実施例】
【0096】
各図を参照すると、何れも第1金属層83と第2金属層93が良好に接合され、第2金属層93側の表面に凹凸がほとんどない滑らかな表面を有していることがわかる。
【実施例】
【0097】
また、何れのクラッド金属板100も、第1金属層83及び第2金属層93は、高速急冷鋳造により微細化組織が形成されていた。第2金属層においても、第1~第3実施例の第2金属層の顕微鏡写真(図18、図20、図24)から微細化組織が形成されていることがわかる。
【実施例】
【0098】
第1金属層83及び第2金属層93が微細化された鋳造組織である為、高延性を具備するクラッド金属板となっている。
【実施例】
【0099】
各々のクラッド金属板100を、総圧下量50%で圧延した結果を表1に示す。1枚の金属板と同様に割れてしまい圧延ができなかった「×」、割れや剥離を起こさずに圧延ができた「〇」とした。
【実施例】
【0100】
【表1】
JP2016187825A_000003t.gif
【実施例】
【0101】
表1を参照すると、第1実施例乃至第4実施例で製造したクラッド金属板全てにおいて、割れや剥離を起こさず熱間圧延ができた。特に第3実施例及び第4実施例の金属板では、冷間圧延した場合でも、割れや剥離を起こすことなく圧延できた。また、表1の結果から、各々のクラッド金属板100が、高延性を具備していることがわかる。
【実施例】
【0102】
第1実施例の第2金属層93の表面近傍写真をさらに詳細に観察するために、第2金属層93の表面近傍の顕微鏡写真を撮影した。撮影された写真を図18に示す。図を参照すると、第2金属層93は、急冷凝固の微細化組織となっており、表面の結晶粒が、途切れることなく成長しており、また、結晶粒の直径の1/2以上の深さの凹凸が形成されていない滑らかな表面となっていることがわかる。
【実施例】
【0103】
第2実施例についても第2金属層93の表面近傍の顕微鏡写真図20を参照すると、第2金属層93の表面に、均しロール70によって表面は結晶粒の直径の1/2以上の深さの凹凸が形成されていない滑らかな表面となっていることがわかる。
【実施例】
【0104】
第2実施例について、クラッド金属板製造直後の初端を、図21に示すように写真撮影した。図21を参照すると、第1金属層83であるAM60のマグネシウム合金の単板が製造されている。そして、その第1金属層83の表面上に第2金属層93が形成されている。これは、第1金属層83が凝固状態の板状となった状態で、第2金属層93が積層されている。なお、本発明において、第1プール30のみの構成とすることで、第1金属層83からなる単板を製造できる。
【実施例】
【0105】
第1金属層83と第2金属層93の接合状態を調べるために、第2実施例で得られたクラッド金属板100が破断するまで繰り返し折り曲げた。その結果、図22に示すように、その破断面において、第1金属層83と第2金属層93は、剥離することなく良好な接合状態(図中矢印で示す)を維持できていることがわかる。このように、第1金属層83と第2金属層93の接合強度を高めることができたことで、二次加工性にすぐれるクラッド金属板100を提供できることがわかる。第1実施例、第3実施例、第4実施例も同様であった。
【実施例】
【0106】
第3実施例において、第2金属層AC4Cの組織をDAS(デンドライトアームスペーシング)法で測定した。第3実施例のクラッド金属板100の第2金属部(AC4C)の断面を拡大した写真が図24となる。図24のDASから、冷却速度が約200℃/秒又はそれ以上で急冷された組織を有することがわかる。
【実施例】
【0107】
第1実施例、第2実施例、第4実施例においても、第1金属及び第2金属の凝固潜熱、熱伝導率、板厚からも、第3実施例と同等の冷却速度となることは明らかである。このことは、第1実施例、第2実施例の第2金属層の顕微鏡写真(図18、図20)の微細化組織からもわかる。
また、コンベアロール20により近い第1金属層の冷却速度は、当然、第2金属層の冷却速度より大きい。
【実施例】
【0108】
図25は、均しロール70による平坦性の向上効果を示す写真である。図25(a)は、第3実施例において、均しロール70を用いることなく鋳造したクラッド金属板100の写真、図25(b)は、第3実施例において、均しロール70を用いて鋳造したクラッド金属板100の写真である。何れの写真も、図示左右方向がクラッド金属板100の幅方向に相当する。図25を参照すると、均しロール70を用いていないクラッド金属板100は、長手方向に延びる微細な凹凸が形成されているのに対し、均しロール70を採用したクラッド金属板100は、凹凸がほとんど観察されず、幅方向の平坦性が可及的に向上し、且つ平滑であることがわかる。
【実施例】
【0109】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0110】
10 金属板製造装置
20 コンベアロール(コンベア手段)
30 第1プール
40 第1プレート
50 第2プール
60 第2プレート
70 均しロール(均し手段)
80 第1金属溶湯
83 第1金属層
90 第2金属溶湯
91 第2金属凝固層
92 第2金属溶湯層
93 第2金属層
100 クラッド金属板
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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