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明細書 :エルボークラッチ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-029335 (P2017-029335A)
公開日 平成29年2月9日(2017.2.9)
発明の名称または考案の名称 エルボークラッチ
国際特許分類 A61H   3/02        (2006.01)
A45B   1/04        (2006.01)
FI A61H 3/02 A
A45B 1/04 Z
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 29
出願番号 特願2015-151530 (P2015-151530)
出願日 平成27年7月31日(2015.7.31)
発明者または考案者 【氏名】谷口 公友
出願人 【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
個別代理人の代理人 【識別番号】100146020、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 善光
【識別番号】100062328、【弁理士】、【氏名又は名称】古田 剛啓
審査請求 未請求
テーマコード 3B104
4C046
Fターム 3B104AA03
4C046AA23
4C046BB08
4C046CC01
4C046DD33
4C046DD34
要約 【課題】歩行時に、使用者の手に掛かる負担を大幅に軽減することができ、患足にかかる負担を大幅に軽減させることができ、歩行時に操作しやすく、かつ異常な外力が加わったときに傷害発生を未然に防ぐエルボークラッチを提供することを課題とする。
【解決手段】杖として使用されるエルボークラッチであって、棒状に形成された脚部と、該脚部の上方に配設され前方へ突出させたハンドグリップと、該ハンドグリップの上方に延設された腕部と、腕部に付設されたカフ部とを備え、前記カフ部は、開口部を後方へ設けた略U字形状で、側面視で前記略U字形状部が使用者の上腕骨の骨幹部域の範囲に位置する形態を有する上部カフ部を設けたエルボークラッチにより課題解決できた。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
杖として使用されるエルボークラッチであって、棒状に形成された脚部と、該脚部の上方に配設され前方へ突出させたハンドグリップと、該ハンドグリップの上方に延設された腕部と、腕部に付設されたカフ部とを備え、前記カフ部は、開口部を後方へ設けた略U字形状で、側面視で前記略U字形状部が使用者の上腕骨の骨幹部域の範囲に位置する形態を有する上部カフ部を設けたことを特徴とするエルボークラッチ。
【請求項2】
前記カフ部が、前記上部カフ部の下方に、前腕の尺骨側が接し、開口部を橈骨側に前方へ設けた略U字形状の形態を有する下部カフ部を有することを特徴とする請求項1に記載のエルボークラッチ。
【請求項3】
前記カフ部を構成する、上部カフ部と下部カフ部とが、使用者の肘の左右側の両側又は片側に接する上下カフ接続部で連結されていることを特徴とする請求項2に記載のエルボークラッチ。
【請求項4】
前記カフ部と前記腕部とが、本体と本体から離脱可能な離脱部分とを備え、離脱部分が本体に対して仮固定が可能で、本体と離脱部分の間に所定値以上の力がかかったときに、離脱部分が本体から離脱するようにされている離脱機構7により、接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のエルボークラッチ。
【請求項5】
前記カフ部を前記腕部に接続するにおいて、前記腕部に対する前記カフ部の傾斜方向及び傾斜角度を調整可能とするカフ部姿勢調整機構を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のエルボークラッチ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行時に障害のある脚に負担をかけることが困難な人が補助用に使用する杖であるエルボークラッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
歩行時の補助杖としては、従来品として、ロフストランドクラッチがある。ロフストランドクラッチは、主に、棒状をなす脚部と、脚部の上端に前方方向に突設されたハンドグリップと、脚部から上方に延設された、前方(歩行進行方向であってこの場合は橈骨側)が開口されたカフを有する腕部にてなる。そして該カフは肘から手首にかけての前腕に対し前腕の尺骨側に沿うようすなわち前腕の背面側(尺骨側)と前腕側面に当接する形態となっている。使用する場合肘を伸ばして主にハンドグリップで体重を支えるため手首に対する負荷が大きい。
【0003】
他の従来品として、カナディアンクラッチがある。カナディアンクラッチは、主に、棒状をなす脚部と、脚部の上端に前方方向に突設されたハンドグリップと、脚部から上方に延設された、前方(歩行進行方向であってこの場合は上腕二頭筋側)が開口されたカフを有する腕部にてなる。そして該カフは肘及び又は上腕に対し上腕の背面側(上腕三頭筋側)と側面側に当接する形態となっている。すなわちカナディアンクラッチはロフストランドクラッチに対し、カフの位置が上腕に当接する位置にあることが主として相違する。ただし両者共に、カフは前方方向に開口されている点で共通する。カナディアンクラッチも使用する場合肘を伸ばして、但し上腕の上腕三頭筋側がカフで支えられているのでロフストランドクラッチよりも、上腕三頭筋が弱くとも使えるが、主にハンドグリップで体重を支えるため手首に対する負荷が大きい。
【0004】
他の従来品として、スマートクラッチがある。主に、棒状をなす脚部と、前腕の尺骨側に当接するカフと、カフから斜めに突設したハンドグリップと、当該カフが前記脚部に回動自在でかつ使用者の所望の角度に固定して接続することができる回動接続具部にてなる。ただし、カフは前腕の前方(歩行進行方向であってこの場合は橈骨側)に開口を有する。脚部は尺骨の軸心方向に対し適宜な角度を傾けて取り付けられる。前腕を振り下ろす様にする動作にて体重を支えるが、ハンドグリップ及びカフで前腕の尺骨側で面積広く力が分散されるため手首への負荷は比較的小さい。しかし前腕を振りおろすためには肩や上腕三頭筋に負担がかかるため、筋力が十分な者に使用が限られる。更に後述するように、歩行時に次の一歩を踏み出すときに、杖を前方の地面に突き当てるときの操作が極めてやりにくいという問題がある。
【0005】
特許文献1には、握り手と、該握り手の端部に設けた連結部の下方に前記握り手に対して実質的に直角に連結された支柱と、前記連結部内に設けた軸受機構を介してその一端が握り手に対して回動可能に取り付けられ且つその他端に前腕支持部材が設けられている前腕支持部を含んで構成され、前記軸受機構に前記前腕支持部の握り手に対する傾斜角を複数の所定角度で係止する係止機構が設けられ、前記握り手に前記係止機構を開放する係止解放手段が設けられている前腕支持杖が開示されている。前記前腕支持部材の取付はロフストランドクラッチの構造に類似している。
【0006】
特許文献2には、下肢障害者であって、かつ手指手首の関節が屈曲拘縮した障害者のための補助杖において、杖杆の上端の水平な支承台より前方イに向かって伸縮及び回動可能な支持杆を設け、該支持杆と把手との間に連設せしめる2個以上の継手は、両内側端面に放射状の係止歯を刻設して?合する一対の菊座がその中心軸線方向に弛緩可能なねじにより螺着されていて、前記支持杆先端にその軸線と軸線が直交方向となるように継手の一方の菊座を設け、該一方の菊座に螺合する他方の菊座はこれに一体的に連結される次の継手の一方の菊座とが相互に直交方向の軸線となるように配設された補助杖が開示されている。前記支承台の取付はスマートクラッチの構造に類似している。
【0007】
特許文献3には、シャフト外周に嵌合する弾性筒体と、該筒体の筒壁の一部に、筒軸方向に亘って開口形成されたスリットと、該スリットに近接して筒体外周に一体形成された吊り紐取付部と、該吊り紐取付部に固定されるループ状の吊り紐とを備えた歩行補助用ポールのストラップが開示されている。
【0008】
特許文献4には、直立した棒状に伸長して形成された杖柱と、杖柱の上方に具備された握り柄と、握り柄の上方に配置されパイプ状もしくは開口部10を前方イ即ち進行方向に向けたハーフパイプ状に直立方向に短く伸びて形成された前腕保持具と、前腕保持具が後方ロへ押圧されると杖柱に対してその軸芯を含む進行方向面内で後退移動可能に連結する連結手段と、押圧が解除されると元位置に復するよう付勢する付勢手段とを備えた杖が開示されている。前記前腕保持具の取付はロフストランドクラッチの構造に類似している。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開昭60-190962号公報
【特許文献2】特開昭53-073894号公報
【特許文献3】実用新案登録第3076344号公報
【特許文献4】特開2005-152592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
歩行補助具は、患足に体重が掛からないようにするため、患足に掛かる荷重の一部を負担する目的で使用する。ハンドグリップのみで荷重を支えきれない握力がない者や、リウマチ患者のように関節そのものに荷重を掛けられない者にとっては、ハンドグリップ以外にも荷重を受ける機能が必要である。T字杖では、安定が得られない上記のような患者の場合には、ロフストランドクラッチ、カナディアンクラッチ、並びに、特許文献1及び4に記載の歩行補助具が使用されるが、ハンドグリップの近傍に上肢の荷重時の動揺を制御するためのカフなどを設置し、杖を使用時に手首に生じる内外方向の回転力(トルク)を抑制し手首に掛かる負荷を軽減する役割を担っている。しかし、この方法では手首にかかる荷重を十分減らすことが出来ない為、使用者は手首に掛かる大きな負担を常に受けなければならない。このため、快適に長時間の安定した歩行を実現することが出来ていないという問題があった。
【0011】
また、歩行中、突然の転倒などで、ハンドグリップを掴んだ手と、前腕支持部材や前腕保持具等のカフ部、又はストラップなどに挿入させた前腕や上腕とに異常な外力が加わったときに、カフの開口部から腕が円滑に抜ければよいが、開口の角度と抜く方向が一致しない場合には前腕や上腕が腕部から瞬時に離脱できない場合があり、手首、前腕又は上腕の骨折や打撲などの障害を生じやすいという問題があった。ロフストランドクラッチ、カナディアンクラッチ、スマートクラッチは共にカフの前方が開口しているが、これはクラッチ(杖)を容易に腕に装着できるために設けられているが、転倒時等におけるリスクマネジメントとしては必ずしも十分ではない場合がある。
【0012】
スマートクラッチ又は特許文献2に記載の発明は、障害のある患足から略水平的な板材上に載せた手や手首へ荷重移動できるが、前述のように肩や上腕三頭筋等の筋力の強い者でないと扱いにくい上に、以下詳細に述べるが、歩行時の次の一歩を踏み出すときに、スマートクラッチや特許文献2に記載の発明の杖を前方の地面に突き当てるときの操作が極めてやりにくいという問題があった。
【0013】
それは歩行時の杖の操作性の問題であるが、歩行時に、手を自然に真っ直ぐに伸ばして手の方向と略同一方向線上に脚部の先端がある形態であると、次に荷重をかけようと思った狙いの地面の位置に杖の先端を移動させるのが自然に無意識にできる楽な動きであるが、スマートクラッチ又は特許文献2に記載の発明は、脚部の上端が前腕の略中央部に位置するため、手を自然に真っ直ぐに伸ばして手の方向と略同一方向線上に脚部の先端が位置しない形態であることから、次に荷重をかけようと思った狙いの地面の位置に杖の先端を移動させるために意識して杖の先端を見ながら歩行しなければならないため、極めて杖の操作が難しく歩行するのに非常に疲れるという問題であって、運動神経のよいアスリートであれば克服できる場合があるが、特に運動神経がそれほどでもなく体力的にめぐまれない通常の障害者には杖を操作しづらい。
【0014】
更に、歩行時などで、脚部や、前腕を挿入した部材に異常な外力が加わったときに、挿入した前腕が該部材から瞬時に離脱できない構造であるので、手首又は前腕の骨折や打撲などの障害を生じやすいという問題があった。
【0015】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、筋力や運動能力に優れてはいない通常の障害者、一時障害者又は半永久障害者等が、通常の日常行動に使用して、手首にかかる負担が小さく長時間の安定した歩行を実現でき、歩行時に操作しやすいエルボークラッチを提供すること、更には、異常な外力が加わったときにも傷害発生を起こしにくいエルボークラッチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明における「前方」、「後方」とは、エルボークラッチの使用時の使用者からみた前後方向(進行方向)における前方又は後方を意味する。
【0017】
請求項1に記載のエルボークラッチ1は、杖として使用されるエルボークラッチ1であって、棒状に形成された脚部4と、該脚部4の上方に配設され前方イへ突出させたハンドグリップ6と、該ハンドグリップ6の上方に延設された腕部5と、腕部5に付設されたカフ部2とを備え、前記カフ部2は、開口部10を後方ロへ設けた略U字形状で、側面視で前記略U字形状部が使用者の上腕骨の骨幹部域の範囲に位置する形態を有する上部カフ部11を設けたことを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載のエルボークラッチ1は、請求項1において、前記カフ部2が、前記上部カフ11の下方に、前腕の尺骨側が接し、開口部10を橈骨側に前方イへ設けた略U字形状の形態を有する下部カフ部13を有することを特徴とする。
【0019】
請求項3に記載のエルボークラッチ1は、請求項2に記載の発明において、前記カフ部2を構成する、上部カフ部11と下部カフ部13とが、使用者の肘23の左右側の両側又は片側に接する上下カフ接続部12で連結されていることを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載のエルボークラッチ1は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記カフ部2と前記腕部5とが、本体と本体から離脱可能な離脱部分とを備え、離脱部分が本体に対して仮固定が可能で、本体と離脱部分の間に所定値以上の力がかかったときに、離脱部分が本体から離脱するようにされている離脱機構7により、接続されていることを特徴とする。
【0021】
請求項5に記載のエルボークラッチ1は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、前記カフ部2を前記腕部5に接続するにおいて、前記腕部5に対する前記カフ部2の傾斜方向及び傾斜角度を調整可能とするカフ部姿勢調整機構8を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載のエルボークラッチ1は、上腕22の上腕二頭筋側に接する上部カフ部11を有するため、腕に掛る荷重が、手首グリップ以外に、分散してエルボークラッチ1に伝達される。特に歩行時に上半身が前傾しエルボークラッチ1を把持する腕が肩よりも肘が後方になる姿勢をとる場合に上部カフ部11に荷重が大きく分散される。したがって、ハンドグリップ6を握る手にかかる荷重を軽減させることができて、握力が弱い人でも楽に歩行することができ、手首にかかる荷重を軽減できるため長時間の使用にも楽に歩行することができるという効果を奏する。
【0023】
このため、従来の考えと全く異なり、本発明のエルボークラッチ1は、カフ部2がハンドグリップ6の役割の一部をも有する。つまり、本発明のエルボークラッチ1は、荷重を受けることを主目的にした従来のハンドグリップ6のようなものは存在せず、本発明のエルボークラッチ1のハンドグリップ6は手を添える部分はあるが、荷重を受けることが最大の目的ではなくなる。エルボークラッチ1の位置方向、操作が主機能になる。上部カフ部11により上腕22部分で荷重を受けることができるので、使用時に手関節からの荷重負荷はハンドグリップ6に殆ど掛かることがない。このように上腕22部分で荷重を受けるということは、筋力が低下した患者だけでなく、歩行補助具を必要とする全ての者に対するユニバーサルデザインであるといえるという効果を奏する。
【0024】
本発明のエルボークラッチ1を使用すると、手を自然に真っ直ぐに伸ばして手の方向と略同一方向線上に脚部4の先端がある形態であるので、運動神経が特に優れているでもなく、筋力が特に優れているでもない通常の障害者にとっても、歩行時にエルボークラッチ1を操作しやすいという効果を奏する。
【0025】
このことを杖の操作性に関して上肢の関節自由度をもとに説明する。因みに身体の位置や運動について、関節運動時の位置関係を表すには、各関節の0°肢位の状態での三次元立体に対し左右に分けた面を矢状面、前後に分けた面を前額面、上下に分けた面を水平面と呼び、関節の位置及び称呼はこの状態から起こる軸と面で規定される。矢状面上の動きは屈曲・伸展、前額面上の運動は内転・外転となる。手関節ではその方向により橈骨方向を橈屈、尺骨方向へは尺屈と呼び、また動作の別方向の場合に掌屈・背屈というように用いられる。
【0026】
人間の肩関節は3自由度、肘関節は1自由度、手関節は3自由度の三次元的な動きすることが出来る。杖先を操作する脚部が前腕の略中央部に位置するスマートクラッチ又は特許文献2に記載の発明では、手関節の3自由度を影響させることが出来ない為、その自由度は4自由度である。これに対して本発明であるエルボークラッチ1は肩関節に近い上肢、肘関節及び手関節を使用でき、上肢は冗長自由度を持つため、様々な動きを実現することが出来る。よって、歩行中にハンドグリップにより杖先を操作する際、その自由度は7自由度を用いることができ、自由度が多い場合、各関節には十分な余裕があり微調整などが行え、安定した歩行が行われ、高い操作性を保持できるという効果を奏する。この自由度の差が杖の操作性の違いであり、自由度が多いことが、本発明のエルボークラッチ1の特徴の一つである。
【0027】
請求項2に記載のエルボークラッチ1によれば、カフ部2には上腕22の上腕二頭筋側に接する上部カフ部11と前腕24の尺骨側に接する下部カフ部13とを有する。前腕24にあてがう下部カフ部13が上腕22にあてがう上部カフ部11の肘の下方向に固定されあるいは一体に成形されているため、腕に掛る荷重が、手首グリップ以外に、上部カフ部11及び下部カフ部13を介して、分散してエルボークラッチ1に伝達される。又上部カフ部11の上腕に対する上下位置がずれることなく上部カフ部11が上腕22の一定高さ位置に維持できるという効果を有する。特に前傾姿勢をとる場合に上腕22から上部カフ部11に荷重が分散される場合に、上部カフ部11は後方成分を有する反力を受けるが、下部カフ部13が前腕24の後ろ側の尺骨側にあてがわれているため、前腕24にて前方向を受け、前後方向に安定する。更に下部カフ部13は、従来のロフストランドクラッチと同様の荷重分散効果を有する。更に、杖の操作が上腕22と前腕24を一体として扱えるので、一層高い操作性を有することができる。
【0028】
請求項3に記載のエルボークラッチ1は上部カフ部11と下部カフ部13とが、使用者の肘23の左右側の両側又は片側に接する上下カフ接続部12で連結されているので、側面視で使用者の肘23の前方後方ともに開口がされているため、肘23を曲げることが自由にできるため、例えば、手をハンドグリップ6から外して肘23で屈曲させた状態にして、券売機からの切符の購入などの何かの作業をすることが容易にできるという効果を奏する。
【0029】
請求項4に記載の発明は、転倒時等のためのリスクマネジメントを企図したものであり、一定以上の荷重を受けた際に、カフ部2と腕部5とをから離脱させる離脱機構7を設けたので、例えば、使用者が転倒した際にカフ部2を腕部5から瞬時に離脱させることができる。これにより、腕に取り付けた杖が離れずに、関節に異常な方向の力が加わる等により使用者が腕を痛めてしまうといった事態を防止することができる。
【0030】
請求項5に記載の発明は、前記カフ部2を前記腕部5に接続するにおいて、前記腕部5に対する前記カフ部2の傾斜方向及び傾斜角度を調整可能とするカフ部姿勢調整機構8を備えているので、エルボークラッチ1の形態を使用者の肘角などの体格に容易に合わせることができるので使用者の自然な上肢の角度の時に、好みの位置に杖先を設定することが出来る。更にエルボークラッチ1を上肢に沿わせることができ、使い勝手よく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るエルボークラッチの実施形態を示す左側面図である。
【図2】図1に示すエルボークラッチの上部拡大図である。
【図3】図1に示すエルボークラッチのカフ部を示すもので、(a)は左側面図、(b)は右側面図である。
【図4】図1に示すエルボークラッチのカフ部を示すもので、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【図5】図3に示すカフ部において、(a)は上部カフ部のA-A断面、(b)は上下カフ接続部のB-B断面図、(c)は下部カフ部のC-C断面図である。
【図6】エルボークラッチの離脱機構の事例の一つを示す図で、(a)は第二離脱部材と第二離脱部材が係合している状態を示す水平方向の断面図で、(b)は離脱した第一離脱部材の平面図で、(c)は離脱した第二離脱部材の平面図である。
【図7】図6に示した離脱機構の正面図である。
【図8】図6に示した離脱機構にカフ部を取り付けた水平方向の断面図である。
【図9】離脱機構とカフ部姿勢調整機構との連結状態を示す説明図である。
【図10】離脱機構に被傾動部材を固設させた形態を示す説明図である。
【図11】離脱機構と連結させた状態におけるカフ部姿勢調整機構の垂直方向断面図である。
【図12】図11におけるD-D線断面図である。
【図13】図11に示すカフ部姿勢調整機構の突部側から見た説明図である。
【図14】カフ部姿勢調整機構で離脱機構を傾斜させた説明図である。
【図15】本発明のエルボークラッチを使用して、エルボークラッチと患足とを前方に移動させる状態である歩行姿勢a時の説明図である。
【図16】本発明のエルボークラッチを使用して、健足を前方に移動させる状態である歩行姿勢b時の説明図である。
【図17】本発明のエルボークラッチを使用して、健足を前方に移動させて患足とすれ違う状態である歩行姿勢c時の説明図である。
【図18】本発明のエルボークラッチを使用して、健足を患足より前方に移動させた状態である歩行姿勢d時の説明図である。
【図19】本発明のエルボークラッチを使用して、健足を前方に着地させたときの状態である歩行姿勢e時の説明図である。
【図20】一歩歩行する間におけるエルボークラッチの傾斜状況を示す説明図である。
【図21】図18に示す歩行の経過における荷重分散を示す説明図である。
【図22】従来品と本発明品との効果を比較する、歩行経過時間における杖にかかる総荷重変化を示す図である。
【図23】従来品と本発明品との効果を比較する、歩数とハンドグリップにかかる荷重による圧迫個所と非圧迫個所の分布状況を示す図で、(a)は従来品使用の場合、(b)は本発明品のエルボークラッチ使用の場合である。
【図24】図23における荷重による圧迫個所ピクセル数と非圧迫個所ピクセル数とを集計しグラフ化した図で、(a)は従来品使用の場合、(b)は本発明品のエルボークラッチ使用の場合である。
【図25】従来品のロフストランドクラッチを示す図である。
【図26】圧力測定フィルムの層を説明する説明図である。
【図27】本発明のエルボークラッチで離脱機構及びカフ部姿勢調整機構を付加させていない実施例2の形体を示す6面図であって、(a)が正面図、(b)が背面図、(c)が右側面図、(d)が左側面図、(e)が平面図、(f)が底面図である。
【図28】参考のため、本発明のエルボークラッチで離脱機構及びカフ部姿勢調整機構を付加させていない実施例2の形体を示す6面図である。
【図29】図面代用写真であって、実施例1の、離脱機構及びカフ部姿勢調整機構を付加させたエルボークラッチの上部の写真で、(a)が正面視、(b)が背面視、(c)が右側面視、(d)が左側面視の写真である。
【図30】実施例1のエルボークラッチのカフ部を上面(肩方向)から見た拡大写真である。
【図31】実施例1のエルボークラッチの下部カフ部の側面に腕部が離脱機構及びカフ部姿勢調整機構を介して接続されている部分の拡大写真である。
【図32】エルボークラッチにおける、カフ部、ハンドグリップ、杖先の三次元的相対位置関係についての肘の生理的外反の説明図で、(a)が肘角の説明図で、(b)が把持するときの正面視の説明図で、(c)が把持するときの側面視の説明図である。
【図33】エルボークラッチにおける、カフ部、ハンドグリップ、杖先の三次元的相対位置関係の説明図で、(a)が正面視の説明図で、(b)が右側面視の説明図である。
【図34】エルボークラッチにおける、カフ部、ハンドグリップ、杖先の三次元的相対位置関係の説明図で、(a)が上部カフ部の説明図で、(b)が下部カフ部の説明図で、(c)がカフ部の説明図である。
【図35】エルボークラッチのカフ部と脚部との相対位置関係の微調整の説明図で、(a)が内転と外転の説明図で、(b)が屈曲と伸展の説明図である。
【発明を実施するための形態】【実施例1】
【0032】
本発明に係るエルボークラッチ1の実施形態を、図1乃至図21に示す。エルボークラッチ1は、図1に示すように、基本的な構成要素として、脚部4と腕部5と、ハンドグリップ6と、カフ部2とを備える。脚部4と腕部5を合わせた部分を以下便宜的にシャフト3という。脚部4は通常直線状であるが、必ずしも直線状である必要はなく歩行補助に適する範囲で適当に曲がっていてもよい。
【実施例1】
【0033】
シャフト3は、金属などの剛性の高い材料で形成された外見棒状であり実態は軽量化のため筒体が好ましい。ハンドグリップ6から下方の脚部4と、ハンドグリップ6から上方の腕部5に分かれている。脚部4には、図27(a)に示すように長さ調整部14が設けられていることが好ましい。長さ調節部14とは例えば脚部4の筒中に内筒を入れて二重筒とし内筒を出し入れして脚部4全体の長さを調節し、ネジ又はピン等で所望の長さに固定するものをいう。また脚部4の下の先端部には石突き9が付いていることが好ましい。シャフト3の脚部5の長さは、成人が使用する場合、脚部5の先を外側前方イ15cmのところに置いたときに肘関節が30度の屈曲したときの長さに設定するのが好ましい。この30度が最も力を出しやすい角度と一般的にいわれている。これにより、エルボークラッチ1を使用しているときには、肘関節はほとんど屈曲している状態になるが、肘関節が屈曲している方が地面からの衝撃の軽減や、エルボークラッチ1への荷重時に力を入れやすい等の効果がある。
【実施例1】
【0034】
また、シャフト3の腕部5は、脚部4に対して後方ロに傾斜させており、通常、腕部5は脚部4から「く」の字状に脚部4と腕部5のなす角が0~数十度曲がっており、脚部4の軸と腕部5の軸とは1平面上にあるが、本実施例の場合、腕部5の脚部4に対する傾斜角であるサポート角は約10度である。腕部5を傾斜させることによって、使用者の前腕24が腕部5に沿いやすくなり使用者はエルボークラッチ1を操作しやすくなる。
【実施例1】
【0035】
ハンドグリップ6は、前記シャフト3の脚部4の上端であって腕部5との境目に前方イ側に突出する状態で固定されている。ハンドグリップ6は金属などの硬質材料の表面を樹脂などの軟質材料で覆い、握り心地の良い構成することが好ましい。
【実施例1】
【0036】
次に、カフ部2は、ハンドグリップ6の上方であってシャフト3の腕部5の上方で前方イ側に付設されている。
【実施例1】
【0037】
発明者は、一般的に杖の使用時に肘23が屈曲して上腕22部分が前傾していることに着目し、従来の杖の場合には患足20にかかる荷重を杖側に移動させるとすべてハンドグリップ6を握る手にかかっていたが、この手にかかる荷重を上腕22に分散させるという発想から本発明に至った。
【実施例1】
【0038】
該カフ部2には、開口部10を後方ロへ設けられ(上腕22の上腕三頭筋側が開口されて)、略水平断面が略U字形体で、側面視で前記略U字形体部の内壁面が使用者の上腕骨の骨幹部域の上腕二頭筋側、上腕二頭筋とは、腕を曲げたときによく浮き出る力こぶと呼ばれる部分であるが、この筋腹に接する部分を有する上部カフ部11が設けられている。
【実施例1】
【0039】
ここで、断面が略U字形体とは、軸方向に垂直な断面が略U字形体であって、U字の上方に相当する開口側から上腕22又は前腕24が容易に抜けうる開口幅を有し、U字の底部に相当する底部は開口側と反対側の上腕22又は前腕24の外周をできるだけ隙間なく包み込んで接触し、U字の左右に相当する側部は上腕22又は前腕24をしっかり保持できるようにできるだけ隙間なくされた、上腕22又は前腕24の断面外周に沿う形体であって、かつ、骨軸方向に長さを有する形状物をいう。したがって、U字形状の文字通り開口側の両側の内側面は平行であるものに限られず、開口部10に向けてやや狭くなる傾斜を有するもの、逆にやや広くなる傾斜を有するものも含まれる。換言すればU字形状とは、上腕22又は前腕24を囲繞する断面外周に沿う形体から、上腕22又は前腕24を出し入れする一方向に設けた開口部10を取り除いた形体である。上部カフ部11の上縁は肘より上の上腕骨の骨幹部に至っている必要があり、いわゆる力こぶの頂点以上の上側(肩側)で脇までの間にあることが好ましい。
【実施例1】
【0040】
上部カフ部11は、図15乃至図19に示すように、肘23から上方の上腕22の前側に当接させるようになっており、前述のように腕を曲げたときによく浮き出る力こぶと呼ばれる上腕二頭筋側の筋腹側に当接させるようにする。上部カフ部11は、図4(a)、(b)、図5(a)に示すように開口部10を後方ロへ設けた略水平断面が略U字形体であるので、歩行時に上部カフ部11の左右方向の側面がしっかりと上部カフ部11の前側を上腕二頭筋側に当接させることができる。これにより、歩行時、特に上半身が前傾し、肩より肘23が後ろにある場合に、上腕二頭筋側が上部カフ部11の内面(U字断面底部)を押すことで、後述する作用により手首にかかる負荷が軽減される。上部カフ部11は後方ロを開口させているので、腕をカフ部2に挿入しやすく、異常な外力が加わったときにも上腕22を上部カフ部11から抜きやすい。
【実施例1】
【0041】
また、本発明のエルボークラッチ1は、カフ部2の位置が従来品のロフストランドクラッチ60のカフ部の位置に比べて高い上腕22部分にあるため、体重心の動揺をより効率的に抑制することが出来る。つまり、動揺性に対する安定感に寄与している。そのため、使用者にとっての内外側方向への動揺を抑えることが出来る。このことにより、体重心は内外側方向へ動揺することなく、より安定した直進性を持った歩行を獲得することが出来る。
【実施例1】
【0042】
そして、カフ部2には、図2乃至図4、図15乃至図19に示すように、前記上部カフ部11の下方に、前腕24の尺骨側が接し、開口部10を橈骨側に前方イへ設けた略U字形状の形態を有する下部カフ部13が設けられている。下部カフ部13は、図5(c)に示すように開口部10を前方イへ設けた軸方向に垂直な断面が略U字形体を有する。
【実施例1】
【0043】
下部カフ部13は、前腕24の後方ロを支持する形態であり、かつ前腕24の内外両側を覆っているため、前額面に垂直な方向の前腕24の回転運動に対するトルクを効率よく受けることが出来る。このことにより離脱機構7に対して効率的に力を伝達することができる。下部カフ部13は、開口部10を前方イへ設けた略U字形体を有するので使用者が転倒時等に骨折などの被害に遭わないように、腕をシャフト3の腕部5から容易に離脱させることができる。下部カフ部13の下縁の位置は限られないが、肘23と手首の間であって、肘23から肘23と手首の間の距離の二分の一から三分の一程度が好ましい。短いと、上部カフ部11の位置ずれ防止効果が十分でなく、また、前腕24に負荷を分散する効果も発揮しがたい。長すぎるとエルボークラッチ1の操作がしにくくなる。
【実施例1】
【0044】
更に、下部カフ部13は、上部カフ部11に対する荷重のカウンターとして作用している。つまり、上部カフ部11に掛かる荷重は、上下カフ接続部12を介して下部カフ部13によって腕部5へと伝達されることから、下部カフ部13は、腕部5への力の伝達効率に寄与している。
【実施例1】
【0045】
さらに、カフ部2には、図2乃至図4、図15乃至図19に示すように、上部カフ部11と下部カフ部13とを連結する、使用者の肘23の左右側の両側又は片側に接する上下カフ接続部12を設ける。上下カフ接続部12は、上部カフ部11の下方で下部カフ部13の上方に、側面視で使用者の肘23の周部に、図5(b)に示すように開口部10を前後方向イ、ロに設け、使用者の肘23の左右側の両側又は片側に、前記上部カフ部11の略側面形状を前記上部カフ部11下端から下方に延設させた形体を有する。
【実施例1】
【0046】
上下カフ接続部12は、後方ロが開口した上部カフ部12と、前方イが開口した下部カフ部13とを接続させて上部カフ部11をしっかりと支持する。上下カフ接続部12は、少なくとも前後方向イ、ロを開口させているので、腕を上部カフ部11から下部カフ部13に挿入しやすく、異常な外力が加わったときに上腕22及び前腕24をカフ部2から抜きやすい。上部カフ部11と下部カフ部13とが、使用者の肘23の左右側の両側又は片側に接する上下カフ接続部12で連結されていると、側面視で使用者の肘23の前方イ、後方ロともに開口がされているため、肘23を曲げることが自由にできるため、例えば、手をハンドグリップ6から外して肘23で屈曲させた状態にして、自販機からの物品の購入や券売機からの切符の購入などの作業をすることが容易にできる。
【実施例1】
【0047】
カフ部2は、上方から下方に向けて、上部カフ部11、上下カフ接続部12、下部カフ部13からなる構成を備えることが好ましい。相互に接続固定されてもよいが、一体的に製造されることが、強度や、接続面がなく平滑になる等のためより好ましい。カフ部2は、上腕22のみならず、肘23、前腕24に接する部分においても使用者の腕にできるだけ隙間なく沿うような対応した形状に形成することが好ましい。このためには使用者の上腕22から前腕24にかけてギブス包帯を巻いて型をとり、その型から石膏モデルを作成し、さらに当該石膏モデルをもとに作製した鋳型にアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の高分子材料を流し込んで形成したり、FRPやc-FRP等の複合材により積層して硬化させ形成することができる。また寸法は個人よって異なるため、カフ部2は採寸して腕の形状にできるだけ合わせたものが好ましいが、大凡L、M、S等のサイズの既製品のカフを用い、カフ部2と上腕22、前腕24との間に、適宜な厚さのクッション材等をかませて使用してもよい。このことは、怪我の直後から本発明であるエルボークラッチ1を使用する場合等において、腕に合わせたカフが迅速入手不可能な場合等に有用である。
【実施例1】
【0048】
前記シャフト3の脚部4の長さは、前腕24と上腕22とは肘関節30度屈曲の肢位で調整されるため、シャフト3の腕部5の長手方向に対して、前方イに約30度傾斜させている。このことにより、肘関節には自然な姿勢を保持することが出来る。また、シャフト3の腕部5は脚部4の長手方向に対して後方ロに約10度の傾斜をさせている。
【実施例1】
【0049】
次に、シャフト3の腕部5とカフ部2とを連結させる機構について説明する。連結させるに当たって、安全に離脱するための離脱機構7や使い勝手をよくするための角度等を調整するカフ部姿勢調整機構8が用いられることが好ましい。
【実施例1】
【0050】
離脱機構7について説明する。離脱機構7は、カフ部2と腕部5とを接続しているが、前記カフ部2と前記腕部5との間のねじれ方向の荷重が所定値を上回った場合等の異常時に、カフ部2と腕部5とを緊急的に分離する機構である。離脱機構7とは、一の物体と他の物体とを接合するために用いられ、異常な力がかかった場合に一の物体と他の物体とを瞬時に破損することなく分離できる接合構造の1種であって、離脱機構7は本体と本体から離脱可能な離脱部分とを備え、離脱部分が本体に仮嵌合する等により仮固定されており、本体と離脱部分の間に所定値以上の力がかかったときに、離脱部分が本体から離脱するようにされているものをいう。所定値以上の力は特定方向からの力のみに限定することもできる。
【実施例1】
【0051】
離脱機構7の例として、自転車のペダル用ビンディングである、株式会社シマノの製品:SPD-SL ペダル 型番:PD-5800と同じく株式会社シマノの製品:SPD-SLクリート 型番:SM-SH10を組み合わせたものを転用して用いた。使用時には自転車に取り付けたペダル中の凹部に、使用者の靴裏に取り付けたクリートを、靴を踏み込むことによりクリートの凸部を嵌合させて靴とペダルを一体化して固定し、効率よくペダルを回転できるようになっており、非常時等には足首を回転させてクリートをペダルからはずすことにより、足をペダルから離せるようになっているものである。
【実施例1】
【0052】
ハンドグリップ6より上方かつ斜め後方ロに前記脚部4を延長させて屈曲させた部分である腕部5の上部と、及び前記下部カフ部13の略U字形体の後側との間の連結部分に、離脱機構7を設置する。離脱機構7としては前記腕部5と前記下部カフ部13との間に加わるねじれ方向の荷重、すなわち腕部5と下部カフ部13との締結面が相互に回転する方向にかかる荷重、が所定値を上回ったときに、前記腕部5から前記下部カフ部13を離脱させる機構が挙げられる。その他腕の前後方向にかかる荷重が腕部5と下部カフ部13との締結面に及ぼす荷重については、通常締結面にかかる荷重方向であるので転倒や衝突等の衝撃時には体重の数倍以上の荷重がかかれば離脱するようにされていることが好ましい。
【実施例1】
【0053】
離脱機構7は、エルボークラッチ1を使用中に、例えば、腕部5と下部カフ部13との間に加わるねじれ方向の荷重が所定値を上回ったときに、カフ部2を腕部5から離脱させるものであって、スプリング等の弾性体によって付勢力を有する係止手段によって2つの部材を連結させておき、所定以上の荷重が加わったときに係止手段の付勢力に打ち勝って係止手段が緩み又は開放し2つの部材が離脱する構造であることが好ましい。
【実施例1】
【0054】
例えば、図6乃至図9、図面代用写真図31に示すように、カフ部姿勢調整機構8の直上に設けた第一離脱部材41と、カフ部2の後面に設けた第二離脱部材42とで構成され、第一離脱部材41と第二離脱部材42とで嵌合させて使用する。本例では第一離脱部材41が本体に相当し、第二離脱部材42が離脱部分に相当する。因みに第一離脱部材41には前述のペダルを、第二離脱部材42には前述のクリートを用いた。クリートは平面状の固定面を有しており、下部カフの後壁面の体側側にクリートをねじを用いて取り付けた。したがってカフ部2から離脱機構7を介して腕部5には体側側の位置から荷重がかかることになる。
【実施例1】
【0055】
第一離脱部材41はその一端側に孔部41aを有し、他端側に顎形状でバネ等の弾性体で押さえ方向に付勢力を有する第一突起部41bを備える。第二離脱部材42は、第一離脱部材41の孔部41aに嵌入して係止する孔係止部42aと、第一突起部41bに係合して押さえ込まれる第二突起部42bを有する。
【実施例1】
【0056】
そして、図9に示すように、使用者の腕の方向である、腕部5の長手方向やカフ部2の長手方向に対して、第一離脱部材41の孔部41aと第一突起部41bを結ぶ方向や、第二離脱部材42の孔係止部42aと第二突起部42bとを結ぶ方向を垂直方向に取り付ける。そして、腕部5と下部カフ部13との間に加わるねじれ方向の荷重が、第一突起部41bの第二突起部42bを抑える付勢力を上回ったときに、第一離脱部材41と第二離脱部材42とが離脱する。なお、腕部5等に対する離脱機構7の取付方向はいずれの方向でもよい。
【実施例1】
【0057】
また、本発明にかかるエルボークラッチ1が、カフ部2が離脱機構7により着脱可能に設けられている場合には、離脱機構7の本体と離脱可能な離脱部分の互換的共通化を行えば、既製品としてのL、M、Sサイズのカフあるいは、個人に合わせて作成したカフのカフ部2に接続された本体又は、離脱部を一体として、交換が可能となるため、使用者の必要に応じてカフ部2の交換が容易である。
【実施例1】
【0058】
下部カフ部13の後壁面の体側側に腕部5との接合のため離脱機構7を配設すれば、歩行時に離脱機構7が嵩張らず、周囲への本エルボークラッチ1の接触などを防止する効果を奏し、歩行時に身体に離脱機構7が接触しにくく邪魔になりにくい。また、杖を使用した歩行時のバランスを崩すと離脱機構7にねじれトルクが発生する。使用者にとってバランスを崩しやすい方向は、左右方向と前後方向であることから、ねじれトルクを正確に作動させるために離脱機構7を左右方向と前後方向の両方に反応するような位置に配置する必要がある。側壁面は、前後方向のトルクに正確に反応し、後壁面は、左右方向のトルクに正確に反応する。このことから、本発明であるエルボークラッチ1は、水平面上の側壁面と後壁面との遷移位置に配置すれば両方向のねじれトルクに反応しやすく、体側側に腕部5との接合のため離脱機構7を配設すれば、歩行時に身体に離脱機構7が接触しにくく邪魔になりにくいため、図8(b)のように身体方向ハの側壁面方向寄りに設置することが良い。図8(b)において、平面視で離脱機構7の前後方向に対する取付角度である角度φは0度~45度である。好ましくは、上記のねじれトルクに対する反応のし易さ及び省スペース化のため10度~45度であり、より好ましくは20度~45度である。
【実施例1】
【0059】
次に、カフ部姿勢調整機構8の説明に入る前にそもそも本発明のエルボークラッチ1の各部品のあるべき三次元配置につき説明する。
【実施例1】
【0060】
従来のロフストランドクラッチ60は、カフ部61とハンドグリップ61と杖先15は使用者がハンドグリップ61を握った状態で一直線上にあった。しかし、人間の肘関節は生理的な外反を有しており、手関節の部分と上腕部分は一直線上ではない。このため、手関節の背屈でハンドグリップ部分とカフ部分の位置関係を調整しないとカフ部分が片当たりの状態となり、しっかりとした安定感を得ることが出来ない。このことから、手関節の背屈無しでは使用者の意図する位置に杖先15を置くことが出来ない。
【実施例1】
【0061】
これに対し本発明のエルボークラッチ1は、使用者が自然な肘23の角度で手首を背屈することなく、杖先15を突きたいと思う位置に突くための角度のものであることが好ましい。さらに荷重を手首から分散し、身体に無理なく使用でき、杖先15の指定操作が容易で、バランスを崩したとき等の非常時においても安全であるような全体の構造になっているべきである。このためには、エルボークラッチ1の各部品の三次元的配置が適切であることが必要十分条件である。このような理想的に配置された形状のものであれば、カフ部姿勢調整機構8は必ずしも必要とはしない。以下カフ部姿勢調整機構8による調整を要せずとも各部品の三次元的配置が適切であるクラッチを実施例2として説明する。
【実施例2】
【0062】
エルボークラッチ1の各部品の三次元的配置が適切であるとは、カフ部2、ハンドグリップ6、杖先15の三次元的相対的位置関係が以下のように配置されていることであり、使用者の肘角などの体格に角度設定を合わせることで使用者の上肢の関節が自然な肢位でも手関節背屈をさせなくとも使用者が意図する場所に杖先を配置できることであり、使用者の腕の形状に合わせたカフ部2の形状を有することである。
【実施例2】
【0063】
人間の肘は、図32(a)に示すように、腕を降ろして手のひらを正面に向けると肘から先が身体から離れるという生理的な外反を伴っている構造であるため上腕骨長軸(図32(a)において直線で示す。)と前腕骨長軸(図32(a)において点線で示す。)は、直線的な関係ではない。上腕骨長軸と前腕骨長軸とのなす角度を肘角と言い成人男性で約10度である。この肘角の角度αは、小児や女性では大きく約15度である。
【実施例2】
【0064】
そのため、従来のロフストランドクラッチ60のようなハンドグリップ61を握る際、前腕部分は図32(b)のように、前腕部分の回内により中間位をとる。この場合も、上腕骨長軸(図32(b)において直線で示す。)と前腕骨長軸(図32(b)において点線で示す。)に同様な角度βが生じる。
【実施例2】
【0065】
更に、従来のロフストランドクラッチ60のようなハンドグリップ61を握る際、矢状面も同様に上腕骨長軸(図32(c)において直線で示す。)と前腕骨長軸(図32(c)において点線で示す。)に角度γが生じている。
【実施例2】
【0066】
これらの角度α、β、γを考慮しない場合、上腕部より掛かる荷重がハンドグリップ6部分においてモーメントの発生原因となり、それにより不安定感が生じる。これは、ハンドグリップ6を握る手関節への負担につながると考えられる。
【実施例2】
【0067】
したがって、前記角度α、β、γを考慮した、単純な、すなわち離脱機構7、カフ部姿勢調整機構8を含まずに、脚部4、ハンドグリップ6、腕部5、上部カフ部11と下部カフ部13が一体となったカフ部2を備えるエルボークラッチ1の全体像を、図27(a)乃至(f)及び図28に示す。図27(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は右側面図、(d)は左側面図、(e)は平面図、(f)は底面図を示している。図28は、本発明のエルボークラッチ1の全体の形態を6面図に表したものである。
【実施例2】
【0068】
なお、本実施例2において脚部4には長さ調整部14が設けられている。エルボークラッチ1が使用者に対しその体格等に合わせたカスタムメイドであれば長さ調整部14は必要ないが、エルボークラッチ1がレディーメイドであれば、極く簡易な操作で体格等に合わせた調整ができ便利なため、長さ調整部14が設けられている。本例の長さ調節部14は脚部4の筒中に内筒を入れて二重筒とし内筒を出し入れして脚部4全体の長さを調節し、輪状のネジで所望の長さに固定するものである。また脚部4の下の先端部には石突き9が付いている
【実施例2】
【0069】
エルボークラッチ1の正面図を表した図33(a)に示すように、前額面に平行な平面における脚部4に対する上部カフ部11のなす角度を角度θ1とする。角度θ1及び角度θ2は、投射された平面における角度を示す。角度θ1は、上腕骨長軸と杖先を前額面において適切な関係にするためのものであって、角度範囲は0度~10度であり、より好ましくは3度~7度である。
【実施例2】
【0070】
次に、前額面における脚部4に対する下部カフ部13のなす角度をθ2とする。この角度θ2は、前腕骨長軸の向きをハンドグリップ6に向けさせるためのものであって、角度範囲は0度~10度であり、より好ましくは3度~5度である。
【実施例2】
【0071】
次に、エルボークラッチ1の右側面図を表した図33(b)に示すように、矢状面に平行な平面における脚部4に対する上部カフ部11のなす角度を角度θ3とする。角度θ3乃至角度θ5は、投射された平面における角度を示す。この角度θ3は、使用中のカフ部2への荷重応答性を良くするためのものであり、角度範囲25度~35度であり、より好ましくは28度~32度である。
【実施例2】
【0072】
次に、矢状面に平行な平面における脚部4に対する下部カフ部13のなす角度を角度θ4とする。この角度θ4は、上部カフ部11に掛かる荷重に対するカウンターとしての役割を果たすため効率よく荷重を受けるためのものであって、角度範囲は20度~30度であり、より好ましくは23度~28度である。
【実施例2】
【0073】
次に、矢状面に平行な平面における脚部4に対する腕部5のなす角度をθ5とする。この角度θ5は、上腕骨長軸の向きを杖先15の方向に矢状面において合わせるためのものであり、角度θ5は10度前後が好ましい。
【実施例2】
【0074】
以上のように、本発明のエルボークラッチ1は、手関節に負荷が掛からないよう中間位を維持するため上記のような角度特徴を持ったカフ形状を有している。又より安定した歩行を獲得する為に、カフ部2、ハンドグリップ6、杖先15の三次元的相対的位置関係を角度、回旋によって調整し理想的な配置を実現するものである。
【実施例2】
【0075】
次に、カフ部2とハンドグリップ6との角度について説明する。エルボークラッチ1の平面図の図34(a)に示すように、上部カフ部11の底面(上腕二頭筋側)の中心で上部カフ部11の上腕方向に沿う直線と、脚部4の軸心とハンドグリップ6の軸心でなる平面とのなす角の脚部4軸心から軸心と垂直な水平面に投射した角度を角度θ6とする。この角度θ6は、ハンドグリップ6の握りやすさと、手関節の安静肢位へ合わせるために、上部カフ部11に対してハンドグリップ6を回内方向へ傾けた回内角度をさす。このときの回内角度範囲は角度0度~10度が好ましく、本実施例では5度にした。
【実施例2】
【0076】
次に、図34(b)に示すように、下部カフ部13の底面(尺骨側)の中心で下部カフ部13の前腕24方向に沿う直線と、脚部4の軸心とハンドグリップ6の軸心でなる平面とのなす角の脚部4軸心から軸心と垂直な水平面に投射した角度を角度θ7とする。この角度θ7は、ハンドグリップ6の握りやすさと、手関節の安静肢位へ合わせるために、下部カフ部13に対してハンドグリップ6を回内方向へ傾けた回内角度をさす。このときの回内角度範囲は角度0度~10度が好ましく、本実施例では5度にした。
【実施例2】
【0077】
次に、図34(c)に示すように、カフ部2の内径の中心とハンドグリップ6軸中心との距離を距離L1とする。この距離L1は、手関節を中間位でハンドグリップ6を握る為に必要であり、距離30mm程度までの範囲が好ましい。
【実施例2】
【0078】
エルボークラッチ1のカフ部2の脚部4やハンドグリップ6等に対する三次元的配置は、使用者の体格、歩行姿勢、筋力その他使用時の運動能力に合わせた微調整ができることがより好ましい。
【実施例2】
【0079】
そのため、本実施例1におけるような直線状の脚部4に対し脚部4の軸と腕部5の軸が一平面内にありハンドグリップ6がその軸も同一平面内にやや上向きに形成されており、腕部5の上部に離脱機構7を介して下部カフ部13が接続されるようなシンプルな構成においては、上記三次元的配置を行うためには、少なくとも、カフ部姿勢調整機構8が腕部5の上部にあって離脱機構7と接続され、カフ部姿勢調整機構8は離脱機構7を介して接続する下部カフ部13に対し、腕部5の軸方向に対する前後左右の傾斜角度及び腕部5の軸方向に対する回旋方向の角度を調整しかつ固定できることが好ましい。
【実施例2】
【0080】
次に、カフ部姿勢調整機構8について以下詳細に説明する。カフ部姿勢調整機構8は、カフ部2を腕部5に接続するにおいて、前記腕部5に対する前記カフ部2の回旋方向の角度及び傾斜角度を調整可能に固定するものである。
【実施例2】
【0081】
カフ部姿勢調整機構8としては、義足の構成部品であるオットーボック・ジャパン株式会社の製品「チューブクランプアダプター 型番:4R69」を転用して用いた。義足の構成部品は切断された足を収納する「ソケット」、関節の役割を担う「継手」、足の役割を担う「足部」から成り立っている。これらの部品を適切な位置関係に繋ぎあわせるために、長さ調整用のチューブと、角度と向きを調整する為のクランプを用いる。クランプの調整機構によりチューブの傾斜角度を前額面及び矢状面で行うことが出来、チューブとの接合部は回旋することもできる。この結果足部の前後左右方向の傾斜角度と、つま先の開き角度、すなわち矢状面に対する角度を調整することができるようにされている。
【実施例2】
【0082】
図2に示すようにカフ部2は離脱機構7にて腕部5の先端に取り付けられたカフ部姿勢調整機構8に接続されている。以下に述べる様にカフ部姿勢調整機構8により腕部5側の離脱機構7を前記腕部5に対して傾斜させることで、前記カフ部2の腕部5に対する傾斜方向及び傾斜角度を調整可能とする。更に本実施例1のカフ部姿勢調整機構8では、前記腕部5側の離脱機構7を前記腕部5に対する水平方向の向きや上下方向の位置を可変させて、前記カフ部2の水平方向の向きや上下方向の位置も調整可能としている。
【実施例2】
【0083】
カフ部姿勢調整機構8は、図10乃至図13に示すように、筒状のシャフト3の腕部5の上方から嵌め込み、内壁が腕部5の筒状の外周壁に摺設可能状態にでき着脱自在に嵌合する第一調整部材51と、離脱機構7の第一離脱部材41の下面から垂設された被傾動部材48とを備える。第一調整部材51はその略下半部を伸縮回転域52とし、その側面に縦スリット52bを形成すると共に、側面に突設した突部52cにボルト52aを挿通し、略上半部は前記被傾動部材48の傾動調整域55とする。
【実施例2】
【0084】
当該ボルト52aを緩めることによってスリット52bを開放状態とし、筒状の腕部5に対して第一調整部材51を回動可能状態にし、これによりハンドグリップ6の向きに対するカフ部2の向きを使用者の体格や症状に合わせて調整することができる。また、スリット52bを開放状態にしたときに、筒状の腕部5に対して第一調整部材51を摺動させることができ、これにより、ハンドグリップ6の高さに対するカフ部2の高さを使用者の体格や症状に合わせて調整することができる。第一調整部材51をシャフト3の腕部5に対して摺動および回動させた後、ボルト52aを締めることによってスリット52bを狭め、腕部5に第一調整部材51を固定し、これにより、ハンドグリップ6の高さや向きに対してカフ部2の高さや向きが使用者に合わせた状態で固定される。
【実施例2】
【0085】
次に、腕部5側の離脱機構7を前記腕部5に対して傾斜させて、前記カフ部2の傾斜方向及び傾斜角度を調整可能とする機構について説明する。図11に示すように、第一調整部材51の上部は受け部53とし、その上面に円弧凹面53aを形成し、その下位の側面に等間隔で4本のネジ53bを螺入させている。
【実施例2】
【0086】
離脱機構7の第一離脱部材41の下面から垂設された被傾動部材48は、その上半部を円弧凸面を有する円弧部48bとしている。円弧部48bの外周面は円弧凹面53aと摺接する。被傾動部材48の下半部は、同一形態である四つの縦面を有し、それぞれの縦面が台形状であって下方に向けて同じ末広がり状に傾斜した角柱部48aを形成する。当該角柱部48aは第一調整部材51の上部から受け部53側に挿入し、角柱部48aの4面それぞれが対応するネジ53bの先端部にそれぞれ押圧され押し込みされることにより、該ネジ53bごとの押し込み量によって、被傾動部材48の第一調整部材51に対する傾斜方向、及び、傾斜角度を変更することができ、これにより、シャフト3の腕部5の長手方向に対するカフ部2の傾斜方向を、前後方向だけでなく全方向に調整設定することができ、また傾斜角度も任意の角度に調整設定することができる。
【実施例2】
【0087】
このため、カフ部2の傾斜方向と傾斜角度を変更できることから、脚部4先端とカフ部2の三次元的な相対的位置関係を的確に適合させ、カフ部2からの力を効率的に床面に伝えられ歩行が安定する。調整の傾斜角度は数度であっても調整部分から脚部先端までの約1mの距離においては十分な変化量を得ることが出来ため、調整部品の小型化が容易である。さらに、第一調整部材51でカフ部2の高さや向きも使用者に合わせて調整が可能であることから、体格や使い勝手にあわせることができる。
【実施例2】
【0088】
カフ部姿勢調整機構8の事例を説明したが、カフ部を傾動でき、カフ部の回動及び/又は摺動可能な機構であればいずれの機構でもよい。また腕部5からカフ部2に接続する順序は本実施形態では腕部5-カフ部姿勢調整機構8-離脱機構7-カフ部2であるが、離脱と、角度調整機能が損なわれないような取り付けができるのであれば、腕部5-離脱機構7-カフ部姿勢調整機構8-カフ部2の順であってもよい。
【実施例2】
【0089】
本実施の形態では腕部5-カフ部姿勢調整機構8-離脱機構7-カフ部2の順で接続されている。本実施例1における、三次元的各部分の位置関係を参考的に示すため、図面代用写真を図29(a)~(d)、図30に示す。この場合カフ部姿勢調整機構8-離脱機構7を有するため、前記角度θ1~θ7は、角度θ1は7度、角度θ2は5度、角度θ3は30度、角度θ4は25度、角度θ5は10度であり、角度θ6は5度、角度θ7は5度であった。距離L1は25mmである。このように本実施例1のエルボークラッチ1は、手関節に負荷が掛からないよう中間位を維持するため上記のような角度特徴を持ったカフ形状を有している。
【実施例2】
【0090】
次に、腕部5の先端に調整機構が備わった場合における使い勝手を向上させるための微調整の仕方である。正面視のエルボークラッチ1を表した図35(a)に示すように、ハンドグリップ6とカフ部2の前額面上での内外転の調整ができる。点線Tの位置を中央の位置とすると、図35(a)の右側の図が内転の微調整をした図を示し、図35(a)の左側の図が外転の微調整をした図を示している。
【実施例2】
【0091】
また、ハンドグリップ6とカフ部2の矢状面上での屈曲伸展の調整ができる。点線Uの位置を中央の位置とすると、図35(b)の右側の図が伸展の微調整をした図を示し、図35(b)の左側の図が屈曲の微調整をした図を示している。このように、前額面上での内外転の調整及び矢状面上での屈曲伸展の調整ができることにより、上腕とカフの適合を適切に行うことが出来る。
【実施例2】
【0092】
次に、実施例1のエルボークラッチ1の使用方法を説明する。本実施形態に係るエルボークラッチ1は、次のようにして使用することができる。図6、図9乃至図11を参照して説明する。まず、カフ部姿勢調整機構8を操作することによって、ハンドグリップ6の高さに対してカフ部2の高さ調整、ハンドグリップ6の向きに対してカフ部2の向き調整、シャフト3の腕部5に長手方向に対してカフ部2の傾斜角度や傾斜向きの調整を、使用者の体格等に合わせて実施する。また、必要に応じて、離脱機構7の第一離脱部材41と第二離脱部材42とが正しく係合されているかを確認する。高さの調整については、脚部4や腕部5に設けられた長さ調整機構で行ってもよい。脚部4や腕部5が二重筒にされ孔が間隔をあけて設けられ内外筒の相互位置をずらして、孔にピン止めするようなものが例示される。
【実施例2】
【0093】
次に、本発明のエルボークラッチ1の使用方法として二足歩行の例を説明する。使用者は健足21側の腕をカフ部2に挿入し、手でハンドグリップ6を握って歩行を開始する。まず、図15に示すように、シャフト3の脚部4の先端部を当該使用者の前方イの地面に持っていき、カフ部2を後方ロにした傾斜状態のエルボークラッチ1の先端部を前方イの地面に突き当てる。このとき前記先端部を使用者から遠く離れた地点にすると、使用者はエルボークラッチ1側に荷重を移動させるので脚部4の先端が地面上を滑り転倒の危険があることから、使用者に近い地点に脚部4の先端部を突き当てるようにする。使用者に近い地点に脚部4の先端部を突き当てるためには、エルボークラッチ1の脚部4の傾斜角度は脚部4の先端の地面の接地点における垂直線に対して約20度以下がよい。
【実施例2】
【0094】
次に、歩行の一歩を、図15乃至図19に示す歩行姿勢の変化に従って説明する。使用者は、健足21に荷重を残しながら、患足20とエルボークラッチ1の脚部4の先端を前方イに移動し始め、脚部4の先端を地面に突き当てた後はエルボークラッチ1に荷重を掛けながら患足20を前方イに踏み出して、図15の歩行姿勢aに達する。このときのカフ部の姿勢30は地面又は床面に対して垂直である。
【実施例2】
【0095】
次に、図16の歩行姿勢bに示すように、患足20への荷重を減少させてエルボークラッチ1に荷重をさらにかけながら、健足21を前方イに移動させる。図16の歩行姿勢bに示すフ部の姿勢30は地面又は床面に対して前方イに10度傾斜させた状態である。
【実施例2】
【0096】
次に、図17の歩行姿勢cに示すように、エルボークラッチ1に荷重をさらにかけながら、健足21を患足20と交差又はすれ違いさえて前方イに移動させる。図17の歩行姿勢cに示すフ部の姿勢30は地面又は床面に対して前方イに20度傾斜させた状態である。この姿勢の近傍におけるエルボークラッチ1に係る荷重が最大値に達する。
【実施例2】
【0097】
次に、図18の歩行姿勢dに示すように、エルボークラッチ1に荷重をさらにかけながら、健足21を前方イに移動させて地面又は床面等に着地させようとしている段階である。図18の歩行姿勢dに示すフ部の姿勢30は地面又は床面に対して前方イに30度傾斜させた状態である。
【実施例2】
【0098】
次に、図19の歩行姿勢eに示すように、エルボークラッチ1に荷重をさらにかけながら、健足21を前方イに移動させて地面又は床面等に着地させた段階である。図19の歩行姿勢eに示すフ部の姿勢30は地面又は床面に対して前方イに40度傾斜させた状態である。この歩行姿勢eで一歩が完了する。
【実施例2】
【0099】
本発明であるエルボークラッチ1は、肩関節に近い上肢、肘関節及び手関節を使用することから、松葉杖と同様の使用をすることができ、二足歩行の例に限らずに三足歩行についても有効に使用することができる。また、本発明であるエルボークラッチ1は、肩関節に近い上肢、肘関節及び手関節を使用することから、松葉杖と同様の使用をすることができ、また、従来品のロフストランドクラッチ60等と比べ手首への負担を少なく体重をエルボークラッチ1にかけることができるため、片腕で使用するだけでなく、両腕で使用する場面でも有効に使用することができる。
【実施例2】
【0100】
上記の歩行における荷重の係るメカニズムについて説明する。まず、図25に示すような従来品のロフストランドクラッチ60は、前腕24の尺骨側に接しかつ前方イに開口部10を備えたカフ部62を備えているだけであり、カフ部62自体に免荷の機能を有するが僅かにとどまるため、肩関節からの荷重F2の殆どがハンドグリップ61にかかる。
【実施例2】
【0101】
本発明であるエルボークラッチ1は、上腕22の前部の、上腕二頭筋側をカフ部2が沿うように覆われるため、歩行中の前傾姿勢時における、荷重が上腕の上腕二頭筋側からカフ部2の内面を押しつける力として作用し、カフ部2に掛った力は、カフ部2が直接的または間接的に腕部5に接続されているため、最終的に脚部4に伝達される。したがって上腕22からカフ部2に掛る力の分だけ、手首に掛る力が減免されることになる。
【実施例2】
【0102】
図21に模式的に示す。上部カフ部11は前方向イに壁面を形成し、上下カフ接続部12は前後方向イ、ロに開口部10を形成し、下部カフ部13は前方に開口部10を形成しており、下部カフ部13が離脱機構7、カフ部姿勢調整機構8を介して腕部5に接続されている。したがって上腕22に掛る力F2のうちカフ部2の内面を押し付ける力F1はカフ部2が剛体に近いため、離脱機構7、カフ部姿勢調整機構8を介して腕部に伝えられる。よって肩関節からの荷重F2のうちF1相当分が軽減され残りがハンドグリップ6にかかる。カフ部2の軸線が鉛直方向となす角度をθとすると、この角度θは、歩行時の姿勢の変化に応じて変動する。
【実施例2】
【0103】
例えば、エルボークラッチ1の脚部4と腕部5のなす角度は10度、腕部5とカフ部姿勢30とのなす角度は30度とし共に一定とする。次にエルボークラッチ1を用いた健足21と患足20における2足歩行の例を示す。
【実施例2】
【0104】
一歩の歩行をするときのエルボークラッチ1の傾きをみると、例えば、図15の歩行姿勢aに示すようにエルボークラッチ1が床面に接地する際の角度を後方ロに20度傾斜し、図19の歩行姿勢eに示すように歩行の一歩が完了し次の一歩に連続して入るときの床面から離床する際の角度を前方イに20度傾斜するものとする。この場合の図15の歩行姿勢aから図19の歩行姿勢eの間におけるエルボークラッチ1の各部位の傾きを表1に示す。また、図20に、歩行姿勢a~eの間における前記エルボークラッチ1の傾きの変化を示す。
【実施例2】
【0105】
【表1】
JP2017029335A_000003t.gif
【実施例2】
【0106】
表1及び図20から、エルボークラッチ1での歩行中の角度θは0度~40度となり、脚部5の先端部である杖先を中心とした40度の回転運動を成している。そして、カフ部2は歩行時は前傾姿勢の状態で使用されることが多いことが示されている。またこの時、エルボークラッチ1への荷重が顕著に掛かっているのは、歩行動作が、健足21が患足20とすれ違うときである歩行姿勢b~dの間である。歩行姿勢eでは健足21が体重を支えているためエルボークラッチ1にかかる荷重は小さくなる。
【実施例2】
【0107】
本発明のエルボークラッチ1のカフ部2の特徴の一つは、側面視で前記略U字形状部が使用者の上腕骨の骨幹部域の範囲に位置する形態を有するため、少なくとも上腕骨の骨幹部域で荷重を受け止める機能と、上腕22をカフ部2に定置させる機能とを有する上部カフ部11を備えていることである。上半身の荷重が上腕の上腕二頭筋側に接する上部カフを押し付ける方向に掛ることにより、ハンドグリップ6を握る手首への負担を軽減させることができ、使用者を肩関節近傍という高い位置で支持できるため、エルボークラッチ1の取り扱い操作が楽にでき、歩行時の安定感が増す。
【実施例2】
【0108】
次に、本発明者らは本発明に係るエルボークラッチ1を使用すると、荷重をハンドグリップ6とカフ部2に分散させることが可能であるので、エルボークラッチ1にかかる荷重の比較を本発明品と従来品とで行った。このため実験は、図25に示すような、カフ部が前腕を支持し、かつカフ部の前方に開口部を備える従来品のロフストランドクラッチ60との比較において、シャフト3の先端から地面にかかる荷重を測定した。
【実施例2】
【0109】
荷重の測定には、計測器として、任天堂製の Wii Balance Board(登録商標)RVL-021を用いた。サンプリング周波数は50Hz。計測器より得た荷重データから、荷重値と床反力作用点軌跡の評価を行った。使用者は同一被験者であり、被験者が手首に負担を掛けない限度で使用状態が維持できる範囲で実施した。シャフト3およびハンドグリップ6の形態は同じで、カフ部の形態が異なるのみである。その結果を、表2および図22のグラフに示す。被験者の体重は73kgであった。
【実施例2】
【0110】
【表2】
JP2017029335A_000004t.gif
【実施例2】
【0111】
また、図22は、エルボークラッチ1又はロフストランドクラッチ60の杖と患足20をほぼ同時に前方イに移動開始して杖に荷重をかけた瞬間を歩行経過時間0%とし、図15の歩行姿勢aに示すように杖と患足20を着地させて、次に図16の歩行姿勢bに示すように杖にさらに荷重をかけながら健足21を前方イに移動開始し、図19の歩行姿勢eに示すように健足21を地面に着地し一歩の歩行が完了した瞬間を歩行経過時間100%として、時間経過ごとの杖の先端にかかる荷重の変化を示している。杖に最大荷重がかかるときは、図17の歩行姿勢cに示すように健足21が患足20と交差又はすれ違うときである。
【実施例2】
【0112】
表2及び図22から、従来品のロフストランドクラッチ60の荷重値の平均は152Nであった。一方、本発明のエルボークラッチ1の平均荷重値は187Nであり、従来品より35N大きく、従来品より約1.23倍大きくなる結果が得られた。このことは、肩関節からの荷重を上部カフ部11で担うことができるため、従来品より多くの荷重を杖にかけることができ患足20への負担を軽減できることを示している。
【実施例2】
【0113】
また、杖の先端の床反力作用点の総軌跡長を比較すると、従来品のロフストランドクラッチ60の総軌跡長は5.77cmであった。本発明のエルボークラッチ1の総軌跡長は5.32cmであり、従来品より0.45cm短く、有意な値が有られた(P値:有意水準5%)。総軌跡長が従来品を使用した時より短いことから、杖の動揺が少なく体重の移動がスムースに行えていることを示している。
【実施例2】
【0114】
また、本発明者らは、本発明に係るエルボークラッチ1と従来品であるロフストランドクラッチ60の、使用者の手首に係る荷重の比較実験を実施した。この実験は、上記の実験と同様の本発明に係るエルボークラッチ1と、従来品としてカフ部2が前腕24を支持するロフストランドクラッチ60を使用し、同一の被験者に800歩、歩行してもらうことによって行った。
【実施例2】
【0115】
また、この実験では、図26に示すように、ハンドグリップ6にかかる荷重F4により加圧すると赤く発色する圧力測定フィルム35(富士フィルム製プレシート(超低圧用)で測定可能圧力帯が0.5~2.5MPaのもの)をハンドグリップ6に巻き付けて行った。該圧力測定フィルムは、荷重がかかる側から表面側のフィルム35a、発色剤層35b、顕色剤層35c及び裏面側のフィルム35dからなり、発色剤層35bのマイクロカプセルが圧力によって破壊され、その中の発色剤が顕色剤に吸着され、化学反応で赤く発色するものである。すなわち約5.1kg/cm2以上の圧力を受けたマイクロカプセル部分が赤色に発色するものと思われる。
【実施例2】
【0116】
そして、変色した状況を図23に示し、表3に変色部分である圧迫箇所36と変色していない部分である非圧迫箇所37のピクセル数をカウントした結果を示し、図24に表3に記載した圧迫箇所36と非圧迫箇所37のピクセル数の割合を円グラフに示す。
【実施例2】
【0117】
【表3】
JP2017029335A_000005t.gif
【実施例2】
【0118】
表3、図23及び図24から、全域中ピクセル数に対する圧迫個所のピクセル数の比率が、従来品は32.8%であるのに対して本発明品は4.1%と約1/8に激減していることが示された。本発明に係るエルボークラッチ1は、従来品と比較して、圧迫箇所が少なく、非圧迫箇所が多いことが明らかに示されている。すなわち、従来品のハンドグリップには大きな荷重がかかっているが、本発明のエルボークラッチ1のハンドグリップ6には荷重が減少されていることが明確に示され、使用者の手首への負担が大幅に軽減されている。
【実施例2】
【0119】
以上のように、本発明のエルボークラッチ1は、スマートクラッチのような運動能力や筋力に優れていないと扱いにくいという杖先設定等の操作上の困難性がなく、通常の運動能力や筋力を有する者にとっても扱いが容易であり、ロフストランドクラッチよりも手首の負担が軽減できる。
【符号の説明】
【0120】
1 エルボークラッチ
2 カフ部
3 シャフト
4 脚部
5 腕部
6 ハンドグリップ
7 離脱機構
8 カフ部姿勢調整機構
9 石突き
10 開口部
11 上部カフ部
12 上下カフ接続部
13 下部カフ部
14 長さ調整部
15 杖先
20 患足
21 健足
22 上腕
23 肘
24 前腕
30 カフ部の姿勢
35 圧力測定フィルム
36 圧迫箇所
37 非圧迫個所
41 第一離脱部材
41a 孔部
41b 第一突起部
42 第二離脱部材
42a 孔係止部
42b 第二突起部
48 被傾動部材
48a 角柱部
48b 円弧部
51 第一調整部材
52 伸縮回転部域
52a ボルト
52b スリット
52c 突部
53 受け部
53a 円弧凹面
53b ネジ
55 傾動調整域
60 従来品のロフストランドクラッチ
61 ハンドグリップ
62 カフ部
F1 垂直方向の荷重
F2 第一分力
F3 第二分力
イ 前方
ロ 後方
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図24】
22
【図25】
23
【図26】
24
【図27】
25
【図28】
26
【図32】
27
【図33】
28
【図34】
29
【図35】
30
【図23】
31
【図29】
32
【図30】
33
【図31】
34