TOP > 国内特許検索 > ポリマー分解用組成物及びポリマー分解方法 > 明細書

明細書 :ポリマー分解用組成物及びポリマー分解方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-198331 (P2014-198331A)
公開日 平成26年10月23日(2014.10.23)
発明の名称または考案の名称 ポリマー分解用組成物及びポリマー分解方法
国際特許分類 B01J  35/02        (2006.01)
B01J  31/38        (2006.01)
C08L 101/00        (2006.01)
C08K   5/103       (2006.01)
C08K   3/22        (2006.01)
C08L  71/00        (2006.01)
C08K   9/04        (2006.01)
C08L  23/02        (2006.01)
C08L  25/06        (2006.01)
C08L  67/06        (2006.01)
C08F   8/50        (2006.01)
C08F  10/02        (2006.01)
C08F  10/06        (2006.01)
C08F  12/08        (2006.01)
C08J   3/28        (2006.01)
C08J  11/16        (2006.01)
C08J  11/26        (2006.01)
FI B01J 35/02 ZABJ
B01J 31/38 M
C08L 101/00
C08K 5/103
C08K 3/22
C08L 71/00
C08K 9/04
C08L 23/02
C08L 25/06
C08L 67/06
C08F 8/50
C08F 10/02
C08F 10/06
C08F 12/08
C08J 3/28
C08J 11/16
C08J 11/26
請求項の数または発明の数 18
出願形態 OL
全頁数 21
出願番号 特願2014-043201 (P2014-043201)
出願日 平成26年3月5日(2014.3.5)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り (1)掲載年月日:平成25年2月28日 掲載アドレス:・http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/app.39101/abstract ・http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/app.39101/full ・http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/app.39101/pdf (2)開催年月日:平成26年2月14日 集会名:平成25年度卒業論文発表会
優先権出願番号 2013048316
優先日 平成25年3月11日(2013.3.11)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】中谷 久之
【氏名】宮崎 健輔
出願人 【識別番号】504238806
【氏名又は名称】国立大学法人北見工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100081271、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 芳春
【識別番号】100162189、【弁理士】、【氏名又は名称】堀越 真弓
審査請求 未請求
テーマコード 4F070
4F401
4G169
4J002
4J100
Fターム 4F070AA08
4F070AC15
4F070AC43
4F070BA08
4F070BB08
4F070HA02
4F070HB14
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA11
4F401AA22
4F401AC10
4F401CA04
4F401CA67
4F401CA75
4F401EA21
4F401EA62
4F401EA63
4F401EA77
4F401EA90
4G169AA02
4G169AA03
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BA22A
4G169BA22B
4G169BA27B
4G169BA48A
4G169BC31B
4G169BE01B
4G169BE02A
4G169BE02B
4G169BE03A
4G169BE03B
4G169BE05B
4G169BE07A
4G169BE08A
4G169BE08B
4G169BE09A
4G169BE09B
4G169BE13A
4G169BE13B
4G169BE37A
4G169BE37B
4G169BE38A
4G169BE38B
4G169BE39A
4G169BE39B
4G169BE43A
4G169BE43B
4G169CA10
4G169CA11
4G169DA03
4G169EA01X
4G169EA01Y
4G169EA08
4G169EB15X
4G169EB15Y
4G169EC22Y
4G169EC27
4G169HA01
4G169HA02
4G169HA13
4G169HB01
4G169HB02
4G169HC02
4G169HC26
4G169HD03
4G169HD10
4G169HE20
4J002BB001
4J002BB031
4J002BB121
4J002BC031
4J002CH002
4J002DE136
4J002EH077
4J002EU008
4J002FB086
4J002FB266
4J100AA02P
4J100AA03P
4J100AB02P
4J100CA31
4J100HA51
4J100HB36
4J100HC13
4J100HC33
4J100HC63
要約 【課題】既存の樹脂成形体に添加することにより、樹脂成形体を構成するポリマーを有効かつ容易に分解することができるポリマー分解用組成物及びポリマー分解方法を提供する。
【解決手段】ポリマー分解用組成物は、光触媒活性を有する金属化合物を備えた触媒剤と、不飽和脂肪酸誘導体とを含有する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
光触媒活性を有する金属化合物を備えた触媒剤と、不飽和脂肪酸誘導体とを含有することを特徴とするポリマー分解用組成物。
【請求項2】
前記不飽和脂肪酸誘導体が多価不飽和脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1に記載のポリマー分解用組成物。
【請求項3】
前記多価不飽和脂肪酸エステルがリノール酸メチル又はリノレン酸メチルであることを特徴とする請求項2に記載のポリマー分解用組成物。
【請求項4】
前記触媒剤は前記金属化合物とポリエーテルを含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のポリマー分解用組成物。
【請求項5】
前記触媒剤は、さらにフタロシアニン系化合物を含有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のポリマー分解用組成物。
【請求項6】
前記フタロシアニン系化合物は、前記金属化合物に吸着されていることを特徴とする請求項5に記載のポリマー分解用組成物。
【請求項7】
前記金属化合物が酸化チタンであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のポリマー分解用組成物。
【請求項8】
前記金属化合物は、前記ポリエーテルで被覆されてなることを特徴とする請求項4から7のいずれか1項に記載のポリマー分解用組成物。
【請求項9】
ポリマーに添加することで該ポリマーを分解するためのポリマー分解用組成物であって、前記ポリマーがアルケンを重合してなるポリマー又は不飽和ポリエステルであることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のポリマー分解用組成物。
【請求項10】
前記ポリマーがポリスチレン、ポリエチレン又はポリプロピレンであることを特徴とする請求項9に記載のポリマー分解用組成物。
【請求項11】
前記触媒剤と、前記不飽和脂肪酸誘導体とを含有する溶液又は懸濁液であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のポリマー分解用組成物。
【請求項12】
ポリマーを構成素材とするポリマー成形体に対して、光触媒活性を有する金属化合物を備えた触媒剤と不飽和脂肪酸誘導体とを添加して前記ポリマー成形体を分解することを特徴とするポリマー分解方法。
【請求項13】
前記添加は、ポリマー成形体の表面に対して、前記触媒剤と前記不飽和脂肪酸誘導体とを含有する溶液又は懸濁液であるポリマー分解用組成物を塗布するか、又は、前記ポリマー成形体を前記ポリマー分解用組成物に浸漬することにより行うことを特徴とする請求項12に記載のポリマー分解方法。
【請求項14】
前記不飽和脂肪酸誘導体として多価不飽和脂肪酸エステルを用いることを特徴とする請求項12又は13に記載のポリマー分解方法。
【請求項15】
前記多価不飽和脂肪酸エステルがリノール酸メチル又はリノレン酸メチルであることを特徴とする請求項14に記載のポリマー分解方法。
【請求項16】
前記ポリマーがアルケンを重合してなるポリマー又は不飽和ポリエステルであることを特徴とする請求項12から15のいずれか1項に記載のポリマー分解方法。
【請求項17】
前記ポリマーがポリスチレン、ポリエチレン又はポリプロピレンであることを特徴とする請求項12から16のいずれか1項に記載のポリマー分解方法。
【請求項18】
前記ポリマー成形体として厚さが0.01~0.1mmのポリマー成形体を用いることを特徴とする請求項12から17のいずれか1項に記載のポリマー分解方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーを分解するために用いる組成物及びポリマーの分解方法に関する。より具体的には、ポリスチレンやポリプロピレン等を光触媒の作用により分解する際に用いる組成物及びポリマーの分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機化合物を重合させてなるポリマーのうち、アルケンを重合させたポリマーの成形体が広く用いられている。アルケンを重合させたポリマーのうちポリスチレンやポリプロピレン等は、特に使い捨ての梱包材や食器等に用いられる。これらのポリマーは、自然分解(生分解)や薬剤による分解が難しいので、廃棄する際には主に焼却により処理されている。しかし、これらのポリマーの焼却にはダイオキシン等の有害物質の発生のおそれ、焼却によるエネルギーの消費や二酸化炭素の発生、設備やエネルギーのコストなどの問題が生ずる。そのため、これらのポリマーを穏やかな条件で処理するための技術が求められている。
【0003】
特許文献1には、生分解性樹脂と光触媒機能を有する微粉末酸化チタンとからなる生分解性樹脂組成物が開示されている。生分解性樹脂としてはポリ乳酸または乳酸とその他のヒドロキシカルボン酸のコポリマーが例示されている。この技術は、微生物による生分解性樹脂の分解と、微粉末酸化チタンの光触媒作用による分解とを併用することで、自然環境下で優れた分解性を示す生分解性樹脂組成物を得ようとするものである。
【0004】
特許文献2には、熱可塑性樹脂からなる樹脂成形体に表面保護層が積層されて形成された樹脂積層体において、この表面保護層は樹脂成形体から分離可能であり、樹脂成形体には光触媒活性を有する金属酸化物が含有されていることが開示されている。樹脂成型体としてはポリオレフィン及びポリスチレン等が例示され、光触媒活性を有する金属酸化物としては酸化チタン等が例示されている。この樹脂成型体の用途としては、建築材や家具等の表面に配置される化粧材が例示されている。この樹脂積層体は、廃棄又はリサイクルする際には表面保護層を分離し、天日などに暴露することで、光触媒活性により樹脂成形体の自然分解を促進しようとするものである。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2004-99739号公報
【特許文献2】特許第4715303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の生分解性樹脂組成物によれば、この樹脂組成物からなる樹脂成型体のみが分解される。そのため、樹脂成形体の分解を行うには、既存の樹脂成形体に替えて、新たにこの生分解性樹脂組成物からなる樹脂成形体を製造する必要があるが、そのためのコストと手間を要する。さらに、この生分解性樹脂組成物はポリ乳酸または乳酸とその他のヒドロキシカルボン酸のコポリマーを用いるため、従来のポリスチレンやポリプロピレン等よりも製造コストが高騰するという問題もある。
【0007】
特許文献2の樹脂積層体によれば、光触媒による分解でポリマーの分解を促進することができるが、上述の特許文献1の場合と同様に、この樹脂積層体からなる樹脂成形体のみが生分解可能である。そのため、樹脂成形体の分解を行うには、既存の樹脂成形体に替えて、新たにこの樹脂積層体からなる樹脂成形体を製造する必要があり、コストと手間を要する。また、この樹脂積層体の構造、すなわち、表面保護層と樹脂成形体とが組み合わされ、樹脂成形体に金属酸化物が分散されている構造は、食器や梱包材等の用途に用いる場合には強度や成形のしやすさに問題が生じる。特に、使い捨ての梱包材や食器等に用いるにはコストが高いという問題がある。
【0008】
本願発明者らは、これらの問題の解決のために研究を進め、既存のポリスチレンやポリプロピレン等で成形された樹脂成形体を分解する技術を得るべく研究を行った。すなわち、特許文献1~2に開示されたような特定の樹脂材料で形成されたもの以外も分解することができれば、分解できる対象が著しく広がり、樹脂成形体の製造コストの高騰や用途が限定される問題も解決することができる。そのため、分解の対象である樹脂成形体に添加することによって、その樹脂成形体を構成するポリマーを分解することができる組成物を得ることを目的として研究を進めていった。
【0009】
本発明は以上のような背景に基づいてなされたものであり、その目的は、既存の樹脂成形体に添加することにより、樹脂成形体を構成するポリマーを有効かつ容易に分解することができるポリマー分解用組成物及びポリマー分解方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のポリマー分解用組成物は、光触媒活性を有する金属化合物を備えた触媒剤と、不飽和脂肪酸誘導体とを含有する。
【0011】
光触媒活性を有する金属化合物を備えた触媒剤をポリマーに添加することにより、この触媒剤のうちの金属化合物が、光触媒活性によりポリマーを分解する作用を有する。ところが、この光触媒活性によるポリマーの分解においては、いったん分解されたポリマーの分解産物どうしが架橋する反応が起こり、分解が進行しない。また、架橋したポリマーが触媒剤のポリマー内部への拡散を阻害する。それゆえ、単に触媒剤をポリマーに添加したのみでは、ポリマー分解は有効に進行しない。ここで、本発明の組成物に含まれる不飽和脂肪酸誘導体は、ポリマーの架橋反応を抑制する作用を有する。そのため、光触媒によって分解されたポリマーの分解産物どうしが再架橋することなく、分解が進行する。また、ポリマー内部への組成物の浸透も確実に行われるため、分解が効率よく進行する。したがって、既存の樹脂成形体に対し、触媒剤と不飽和脂肪酸誘導体とを含有する本発明のポリマー分解用組成物を添加することで、ポリマーの分解を有効かつ容易に行うことができる。
【0012】
本発明のポリマー分解用組成物の不飽和脂肪酸誘導体は、多価不飽和脂肪酸エステルであることが好ましい。不飽和脂肪酸エステルは天然の油脂成分や工業的に得られる油脂成分に多く含まれるので、供給が容易である。また、不飽和結合を2つ以上有する多価不飽和脂肪酸エステルを選択することにより、分解力の高いポリマー分解用組成物が得られる。
【0013】
また、多価不飽和脂肪酸エステルは、リノール酸メチル又はリノレン酸メチルであることが好ましい。リノール酸メチル又はリノレン酸メチルは植物油や動物性油脂等の天然油脂成分に豊富に含まれ、安全性が高く供給が容易である。
【0014】
さらに、本発明のポリマー分解用組成物の触媒剤は、金属化合物とポリエーテルとを含有することが好ましい。触媒剤の金属化合物は、光触媒活性によってポリエーテルを分解し、ラジカル、酸及びアルデヒド化合物等の分解成分を生成する。この酸やアルデヒド等の分解成分が分解対象のポリマーを劣化させ、ポリマーの分解を促進させる。
【0015】
本発明のポリマー分解用組成物の触媒剤は、さらにフタロシアニン系化合物を含有することが好ましい。触媒剤にフタロシアニン系化合物を含有させることにより、紫外光だけでなく可視光をも吸収して光触媒反応を生じさせることができる。それゆえ、太陽光又は通常の蛍光灯ランプ、LEDランプ等の光を利用してポリマーを分解させることができる。
【0016】
また、このフタロシアニン系化合物は、金属化合物に吸着されていることが好ましい。光触媒活性を有する金属化合物に、可視光を吸収するフタロシアニン系化合物を吸着させることにより、吸収した可視光を用いて光触媒反応を効率よく生じさせ、ポリマーをより効率的に分解させることができる。
【0017】
また、本発明のポリマー分解用組成物の金属化合物は、酸化チタンであることが好ましい。酸化チタンは高い光触媒活性を有し、供給も容易である。
【0018】
また、この金属化合物は、ポリエーテルに被覆されてなることも好ましい。触媒剤を金属化合物がポリエーテルに包まれたカプセル状とすることで、ポリマー分解用組成物の取扱いが容易となる。また、金属化合物を全体として被覆しているポリエーテルが金属化合物の光触媒活性で分解され、ポリエーテルの分解物が周囲に放出されることにより、分解をさらに促進させる。
【0019】
本発明のポリマー分解用組成物は、ポリマーに添加することでポリマーを分解するためのポリマー分解用組成物であって、ポリマーがアルケンを重合してなるポリマー又は不飽和ポリエステルであることも好ましい。アルケンを重合してなるポリマー又は不飽和ポリエステルは、触媒剤による分解の促進と、不飽和脂肪酸誘導体によるポリマー架橋の阻害により、有効に分解される。
【0020】
さらに、ポリマーがポリスチレン、ポリエチレン又はポリプロピレンであることが好ましい。これらのポリマーは触媒剤による分解の促進と、不飽和脂肪酸誘導体による架橋の阻害を受けやすい。また、これらのポリマーは特に広く使用されているポリマーである。
【0021】
ポリマー分解用組成物が、触媒剤と不飽和脂肪酸誘導体とを含有する溶液又は懸濁液であることも好ましい。これらの成分を含有する液状とすることで、ポリマーに溶液又は懸濁液を塗布する、ポリマーを溶液又は懸濁液に浸漬させるといった手段により容易にポリマー分解用組成物を添加することができ、また容易にポリマーを分解しやすい状態にすることができる。
【0022】
本発明のポリマー分解方法は、ポリマーを構成素材とするポリマー成形体に対して、光触媒活性を有する金属化合物を備えた触媒剤と不飽和脂肪酸誘導体とを添加してポリマー成形体を分解する。
【0023】
ポリマー成形体に光触媒活性を有する金属化合物を備えた触媒剤と、不飽和脂肪酸誘導体とを添加することにより、不飽和脂肪酸誘導体がポリマーの分解産物どうしの再架橋を阻害し、効率のよいポリマーの分解が行われる。そのため、光触媒によって分解されたポリマーの分解産物どうしが再架橋することなく、分解が進行する。また、ポリマー内部への触媒剤の浸透も確実に行われるため、分解が効率よく進行する。したがって、既存の樹脂成形体に対し、触媒剤と不飽和脂肪酸誘導体とを添加することで、ポリマーの分解を有効かつ容易に行うことができる。
【0024】
本発明のポリマー分解方法において、添加は、ポリマー成形体の表面に対して、触媒剤と不飽和脂肪酸誘導体とを含有する溶液又は懸濁液であるポリマー分解用組成物を塗布するか、又はポリマー成形体をポリマー分解用組成物に浸漬することにより行うことが好ましい。これにより、容易にポリマーを分解することができる。
【0025】
また、不飽和脂肪酸誘導体として多価不飽和脂肪酸エステルを用いることが好ましい。さらに、多価不飽和脂肪酸エステルとして、リノール酸メチル又はリノレン酸メチルを用いることが好ましい。
【0026】
本発明のポリマー分解方法は、ポリマーとしてアルケンを重合してなるポリマー又は不飽和ポリエステルを用いることが好ましい。さらに、ポリマーとしてポリスチレン、ポリエチレン又はポリプロピレンを用いることが好ましい。
【0027】
さらに、本発明のポリマー分解方法は、ポリマー成形体として厚さが0.01~0.1mmのポリマー成形体を用いることが好ましい。本発明のポリマー分解用組成物を構成する触媒剤及び不飽和脂肪酸誘導体がポリマー成形体の内部に浸透し、拡散しやすいため、効率よく分解が行われる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、不飽和脂肪酸誘導体がポリマーの分解産物どうしの再架橋を阻害するため、分解効率に優れたポリマー分解用組成物及びポリマー分解方法が提供される。また、不飽和脂肪酸誘導体として多価不飽和脂肪酸エステルを選択することにより、安全性が高く、分解効率に優れるポリマー分解用組成物が得られる。さらに、触媒剤にフタロシアニン系化合物を含有させることにより、紫外光だけでなく可視光をも吸収して光触媒反応を生じさせることができるポリマー分解用組成物が得られる。そのため、太陽光又は通常の蛍光灯ランプ、LEDランプ等の安全な光を利用してポリマーを分解させることができる。さらに、本発明のポリマー分解用組成物は、既存の樹脂成形体に添加することによって樹脂成形体を構成するポリマーを分解するものであるため、汎用性が広く、樹脂成形体の分解の需要が発生した際には、新たに生分解性樹脂組成物からなる樹脂成形体と交換する必要等もないため、コストや手間もかからない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】触媒剤によるポリスチレンの分解及び、不飽和脂肪酸誘導体によるポリスチレン分解産物の架橋反応の阻害の反応経路を示す図である。
【図2】本発明の実施例に用いた分解対象ポリマーであるポリスチレンのGPC分離ピークを示すグラフである。
【図3】実施例4における、リノール酸メチルを含有しない比較試験用組成物を添加したポリスチレンからなる分解用サンプルの黄変度を示すグラフである。
【図4】実施例5における各分解用サンプルの分子量分布を示す微分分子量分布曲線のグラフである。
【図5】実施例5における各分解用サンプルの分子量分布を示す積分分子量分布曲線のグラフである。
【図6】実施例6における各分解用サンプルの紫外線照射時間による分子量の変化を示すグラフである。
【図7】実施例7における本発明のポリマー分解用組成物が塗布された分解用サンプル及びポリマー分解用組成物の紫外線照射時間による重量減少度を示すグラフである。
【図8】実施例8における本発明のポリマー分解用組成物を塗布した分解用サンプルの紫外線照射前及び紫外線照射4時間後の外観を示す写真である。
【図9】実施例9におけるリノール酸メチル及び本発明のポリマー分解用組成物が塗布された分解用サンプルのNMRスペクトルを示すグラフである。
【図10】実施例10におけるポリマー成形体の厚みによる分解挙動を示すグラフである。
【図11】実施例13における本発明の可視光吸収型ポリマー分解用組成物を添加した分解用サンプルの分子量分布を示すグラフである。
【図12】実施例14における可視光吸収型ポリマー分解用組成物が塗布された分解用サンプル及び可視光吸収型ポリマー分解用組成物の可視光照射時間による重量減少度を示すグラフである。
【図13】実施例15における、可視光吸収型ポリマー分解用組成物が塗布された分解用サンプルの可視光照射時間による赤外吸収スペクトルのチャートである。
【図14】実施例16におけるリノール酸メチルを含む可視光吸収型ポリマー分解用組成物が塗布された分解用サンプルのNMRスペクトルを示すグラフである。
【図15】実施例17における可視光吸収型ポリマー分解用組成物が塗布された分解用サンプル及び無添加の分解用サンプルの熱分解ガスクロマトグラフィーのチャートである。
【図16】(a)実施例17におけるリノール酸メチルの質量スペクトルのチャート及び(b)リノール酸メチルの酸化反応経路を示す図である。
【図17】実施例18における本発明の可視光吸収型ポリマー分解用組成物を添加した分解用サンプル及び無添加の分解用サンプルの分子量分布を可視光照射時間毎に示すグラフである。
【図18】実施例19及び実施例20で用いた不飽和脂肪酸エステルの構造式を示す図である。
【図19】実施例19における不飽和脂肪酸誘導体の種類及びポリマー成形体の厚みによる分解挙動を示すグラフである。
【図20】実施例20における不飽和脂肪酸誘導体の種類及び可視光照射時間による分解挙動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明のポリマー分解用組成物は、光触媒活性を有する金属化合物を備えた触媒剤と、不飽和脂肪酸誘導体とを含有する。

【0031】
本発明のポリマー分解用組成物により分解されるポリマーとしては、特に限定されないが、自然分解されにくく、分解処理が期待される物質である観点から、アルケンを重合してなるポリマー又は不飽和ポリエステルが好ましい。ここで、アルケンは炭素が結合し二重結合を有する化合物を指す。また、アルケンにはアルケンの誘導体も含まれるものとする。アルケンを重合してなるポリマーとしては、ポリスチレン、ポリプロピレン又はポリエチレン等があり、これらのポリマーは本発明の組成物により有効に分解され得る。

【0032】
他方、不飽和ポリエステルは、不飽和基を有するポリエステルである。例えば、不飽和二塩基酸と2価アルコールを重縮合させたポリエステルがある。特に、二塩基酸に無水マレイン酸、無水フマル酸又は無水イタコン酸等、2価アルコールにエチレングリコール、ジエチレングリコール又はプロピレングリコール等を用い、加熱重縮合させたものが用いられる。不飽和ポリエステルは、ビニル基を持ったモノマーと共重合して樹脂を形成して用いられることがあり、本実施形態の不飽和ポリエステルはこの共重合体を含むものとする。このモノマーにはスチレン等が用いられる。なお、一般に不飽和ポリエステルは単にポリエステルと呼ばれることがある。

【0033】
本発明のポリマー分解用組成物により分解される対象のプラスチック樹脂としては、具体的には、ポリスチレン、ポリプロピレン又はポリエチレンが好ましく、特にポリスチレンが好ましい。

【0034】
次に、本発明のポリマー分解用組成物に含まれる触媒剤について説明する。触媒剤は、上述したポリマーの分解の反応を促進し、触媒や酵素に類似した働きを持つ化合物を含んでいる。この触媒剤は光触媒活性を有する金属化合物を備えている。光触媒活性を有する金属化合物としては、従来から知られているものが適宜使用できる。本実施形態においては、安全性が高く入手しやすい観点から、チタン(Ti)が酸化した酸化チタン(TiO)が用いられ、特にアナターゼ型又はルチル型の酸化チタンが好適に用いられる。この他に、窒化チタン(TiN)、タングステン(W)、亜鉛(Zn)、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)又はコバルト(Co)などの金属、これらの金属酸化物及びこれらの混合物を使用することができ、これら金属等を複合させたものも用いることができる。

【0035】
さらに、この触媒剤には、ポリエーテルが含まれることが好ましい。ポリエーテルが触媒剤に含まれることにより、金属化合物がポリエーテルをも分解するように作用するところ、ポリエーテルが分解された結果生じる酸やアルデヒド等の分解成分が分解対象のポリマーに作用し、ポリマーの分解を促進させる。ポリエーテルとしては、特に限定されないが、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられ、ポリエチレンオキシドが特に好適に用いられる。

【0036】
さらに、触媒剤に関し、金属化合物及びポリエーテルを含有する態様は適宜選択でき、例えば金属化合物及びポリエーテルを複合素材とする構造や、ポリエーテルに金属化合物を分散させる等の構造をとることができる。また、ポリエーテルと金属加工物とをミキサーや撹拌機で撹拌すること等により、金属加工物をポリエーテルで被覆し、いわゆるカプセル構造とすることも可能である。マイクロカプセル構造の例としては、金属化合物の好ましい粒子径はおよそ0.025μm~5μmであるので、ポリエーテルで被覆された触媒剤全体の粒子径を1μm~20μmとすることができる。これにより、取り扱いが容易な触媒剤が得られる。

【0037】
触媒剤には、さらにフタロシアニン系化合物を含有させることができる。これにより、紫外光だけでなく可視光をも吸収して光触媒反応を生じさせることができる。フタロシアニン系化合物は可視光領域の光を吸収することができ、光触媒活性を有する金属化合物に対する光増感剤として機能する。そのため、フタロシアニン系化合物を配合することにより、金属化合物の光触媒活性が高まり、太陽光又は通常の蛍光灯ランプ、LEDランプ等の安全性の高い光を利用してポリマーを分解することができる。このフタロシアニン系化合物は、光触媒活性を有する金属化合物に吸着させておくことが好ましい。フタロシアニン系化合物で金属化合物を修飾することにより、可視光吸収により得られたエネルギーをフタロシアニン系化合物から金属化合物がすみやかに受け取り、光触媒反応を可視光下でも効率よく生じさせ、ポリマーを効率的に分解させることができる。フタロシアニン系化合物としては、可視光を吸収し、光増感作用を有する種々のフタロシアニン色素が用いられるが、金属フタロシアニンが好適に用いられ、特に銅フタロシアニンが好適に用いられる。

【0038】
次に、本発明のポリマー分解用組成物に含まれる不飽和脂肪酸誘導体について説明する。この不飽和脂肪酸誘導体は、ポリマーの架橋反応を抑制する作用を有する。不飽和脂肪酸誘導体における脂肪酸については、炭素鎖が長いものが安定し、原料を供給しやすい観点から、目安として炭素数が6以上の脂肪酸を用いるのが望ましい。不飽和脂肪酸とは、炭素鎖に二重結合を持つ脂肪酸であり、本発明で用いられる不飽和脂肪酸としては、モノ不飽和脂肪酸として、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸又はネルボン酸が挙げられ、ジ不飽和脂肪酸として、リノール酸、エイコサジエン酸又はドコサジエン酸等が挙げられ、トリ不飽和脂肪酸として、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸又はエイコサトリエン酸が挙げられ、テトラ不飽和脂肪酸として、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸又はアドレン酸が挙げられ、ペンタ不飽和脂肪酸として、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸又はテトラコサペンタエン酸等が挙げられ、ヘキサ不飽和脂肪酸として、ドコサヘキサエン酸又はニシン酸等が挙げられる。このうち、ポリマーの架橋反応を抑制する作用が高く、ポリマーの分解活性を高められる観点から、多価不飽和脂肪酸の誘導体を用いることが好ましい。

【0039】
本発明で用いられる不飽和脂肪酸誘導体は、不飽和脂肪酸又はその一部が置換されたものであるが、安定性が高く供給が容易な観点から、メチルエステルやエチルエステル等の低級アルコールによるエステルが好ましい。本発明においては、不飽和脂肪酸誘導体として、入手が容易であり、安全性も高い観点から、オレイン酸メチル、α-リノレン酸メチル、γ-リノレン酸メチル又はリノール酸メチルが好適に用いられ、特に不飽和結合の数の多いα-リノレン酸メチル、γ-リノレン酸メチル又はリノール酸メチルが特に好適に用いられる。これら不飽和脂肪酸誘導体は、複数の種類を混合して用いてもよい。これらの不飽和脂肪酸誘導体は、動植物を由来とする天然の油脂又は石油等を由来とする油脂に豊富に含まれており、これらを本発明の組成物のために用いることができる。

【0040】
ポリマー分解用組成物は、触媒剤及び不飽和脂肪酸誘導体を一定容量比でポリマーに添加できるよう、水、アルコール類又はその他の液体等が加えられ、溶液又は懸濁液の形態であることが好ましい。本発明のポリマー分解用組成物を構成する上述の成分の配合割合としては、金属化合物は0.001~0.5重量%、ポリエーテルは0.1~10重量%、フタロシアニン系化合物は0.001~0.5重量%、不飽和脂肪酸誘導体は10~200重量%前後が配合される。

【0041】
次に、このポリマー分解用組成物を用いたポリマー分解方法について説明する。まず分解対象となる、ポリマーを構成素材とするポリマー成形体を準備する工程について説明する。分解対象とするポリマー成形体は、形態を問わず使用できるが、分解を効率よく行う観点から、微細に裁断したポリマー成形体、又は薄膜状としたポリマー成形体を用いることが好ましい。このように表面積が大きいことでポリマー分解用組成物が表面に触れやすく分解しやすい。特に限定されないが、具体的には、厚さ0.01~0.2mmの薄膜状であることが好ましく、厚さ0.01~0.1mmの充分に薄いものが特に望ましい。目安として厚さが0.1mmに満たないと質量あたりの表面積が大きくポリマー分解用組成物がポリマー成形体内部に浸透しやすく、分解反応が効率よく行われる。

【0042】
次いで、準備したポリマー成形体にポリマー分解用組成物を添加する工程について説明する。ポリマー分解用組成物の添加は、ポリマー分解用組成物がポリマー成形体の表面に十分に接触するように行われる。具体的には、ポリマー分解用組成物をポリマー成形体の表面に塗布すること、又はポリマー分解用組成物にポリマー成形体を浸漬させる等の手段を適宜用いることができる。ポリマー分解用組成物とポリマー成形体の量の比は、特に限定されず、ポリマー分解用組成物の溶液にポリマー成形体の表面が覆われるよう適宜選択できる。後述する実施例ではフィルム状のポリマー成形体の薄膜の表面にポリマー分解用組成物を塗布することによって添加している。

【0043】
次いで、ポリマー分解用組成物を添加したポリマー成形体に対して光を照射する。このポリマーを可視光線から紫外線にかけての光が存在する環境下に置いてもよい。日光(特に直射日光)を照射するか、人工的に紫外線を照射することにより、高い効率で短時間でポリマー分解を行うことができる。また、ポリマー分解用組成物中にフタロシアニン系化合物を含有させた場合には、触媒剤が可視光線を効率よく吸収することができるため、可視光線下においても効率に分解処理を行うことができる。

【0044】
図1を参照しつつ、本発明のポリマー分解用組成物による分解機構を説明する。図1では、分解対象のポリマーとしてポリスチレンが例示されている。このポリスチレンからなる成形体にポリマー分解用組成物を添加し、光を照射すると、触媒剤に含まれる金属化合物が光触媒活性によりポリスチレンを分解する。このとき、図1に示すように、不飽和脂肪酸誘導体の非存在下では、分解により生じた分解産物(I)及び(II)は、再び結合(III)して架橋反応を起こすため、ポリマー分解が進行しない。このように、光触媒化合物に紫外線等を照射するとラジカル等の反応活性種が生成し、ポリマー分子鎖の切断、架橋又は不飽和結合等を生じさせる。ポリマーは反応活性種の作用により架橋が生じるものと、分子鎖の切断が生じるものに分類されるが、ポリスチレンやポリエチレンは架橋が生じやすい。しかしながら、本発明の組成物に含まれる不飽和脂肪酸誘導体、すなわち、図1ではリノール酸メチル(ML)の存在下では、上述したポリマーの架橋反応が阻害され、ポリスチレンの分解反応が進行する。これは、リノール酸メチル等の不飽和脂肪酸誘導体が安定したラジカル共鳴構造を形成することから、この共鳴安定化したリノール酸メチルが分解したポリスチレン鎖の開裂部に選択的に付加し、分解産物どうしの再架橋を阻害するためであると考えられる。

【0045】
さらに、本発明のポリマー分解用組成物の触媒剤にポリエーテルが含まれている場合には、触媒剤に含まれる金属化合物が、光触媒活性によりポリエーテルを分解する。ポリエーテルが分解すると酸とアルデヒドが生産されるところ、ポリマー成形体の表面から、生産された酸やアルデヒド及び金属化合物が成形体内部に浸透、拡散し、ポリマー成形体の分解を促進する。その後、分解されたポリマー、例えばポリスチレンはより短い鎖のスチレン重合体やスチレンとなって水溶液中に分散する。さらに分子量の小さいアルケンに分解された成分は蒸発する。

【0046】
本発明のポリマー分解用組成物及びポリマー分解方法では、樹脂成形体の燃焼等による処理に比すると、光触媒反応を用いるため高価な設備や試薬等を要さない。また、分解の過程で有害物質も発生することはない。そして、従来、ポリマーの微生物による生分解に比すると、分解率を制御しやすく、分解率を測定することも可能である。
【実施例】
【0047】
[実施例1]
1.分解用サンプルの調整
ポリスチレン(シグマ-アルドリッチ社製品)は、図2に示すようにGPC(ゲル分離クロマトグラフィー)における分離ピークで主に分子量3.6×10のメジャーピークを示すものを用いた。なお、以下の実施例についても、分解用サンプルについて分子量10前後のピークを含む領域を低分子量領域、分子量10~10のピークを含む領域を高分子量領域とする。このポリスチレンを180℃、40MPaで5分間圧縮成形し、サイズが縦50mm・横50mmで、厚みが0.05mm又は0.1mmの異なる2種類の分解用サンプルを得た。
【実施例】
【0048】
[実施例2]
2.ポリマー分解用組成物の調整
10mgの酸化チタン(TiO、和光純薬工業株式会社製品、アナターゼ型、直径:約5μm)と、500mgのポリエチレンオキシド(PEO、和光純薬工業株式会社製品、平均分子量:5×10)を、25mLのリノール酸メチル(ML、和光純薬工業株式会社製品)と25mLの水を混合した溶液に加え、溶液状のポリマー分解用組成物を得た。他方、不飽和脂肪酸誘導体であるリノール酸メチルを含有しない対照比較用として、10mgの酸化チタンと500mgのポリエチレンオキシドを50mLの水に加え、溶液状の比較試験用組成物を得た。
【実施例】
【0049】
[実施例3]
3.ポリマー分解用組成物の添加及び紫外光照射
ペトリ皿上で、この実施例2で作成したポリマー分解用組成物を、実施例1で作成した厚みの異なる2種類のポリスチレンの分解用サンプルに塗布した。塗布量は、厚み0.05mmの分解用サンプルに対しては0.05g、厚み0.1mmの分解用サンプルに対しては0.1gとした(実施例3)。他方、比較例として、ポリマー分解用組成物を塗布しないもの(比較例1)、リノール酸メチルを含有しない比較試験用組成物を塗布したもの(比較例2)も作成した。このペトリ皿より50cmの距離から、水銀蒸気ランプ(東芝H-400P、200cd/cm)で400Wの紫外線(UV)を一定時間照射した。照射の間、ペトリ皿及び周囲の温度は30℃に維持した。
【実施例】
【0050】
[実施例4]
4.黄変度
実施例3における比較例2と同様に、リノール酸メチルを含有しない比較試験用組成物を実施例1で作成したポリスチレンの分解用サンプル(厚み0.05mm)に塗布した。この分解用サンプルに対し、実施例3と同様の条件で、紫外線照射を50時間行った。分解用サンプルの黄変度(ΔYI)をカラーメーター(日本電色工業株式会社製品、品番:ZE2000)を用い、ASTM D1925(JIS K7103)に従って測定した結果を図3に示す。図3の横軸は紫外線照射時間(h)、縦軸は黄変度(ΔYI)である。紫外線照射を開始してから24時間に亘り、黄変度(ΔYI)が大きく増大してゆくことがわかる。ΔYIは炭素-炭素二重結合による架橋に伴って増加する。それゆえ、この結果より、酸化チタンやポリエーテルを備える触媒剤が含まれる組成物を添加したとしても、当該組成物中にリノール酸メチル等の不飽和脂肪酸が含まれない場合には、架橋反応が起こり、光触媒によるポリマー分解が阻害されることが示された。
【実施例】
【0051】
[実施例5]
5.GPC測定による分解の確認
実施例3及び比較例1~2で各組成物が添加された厚み0.05mmの各分解用サンプルについて紫外線照射を4時間行い、5mLのクロロホルムにそれぞれ溶解させた。得られた溶液をゲル浸透クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製品、プロミネンスGPCシステム)で測定し、各分解用サンプルの分子量を決定した。GPCはクロロホルムを溶媒として行い、40℃で行った。測定結果を図4及び図5に示す。
【実施例】
【0052】
図4各図は微分分子量分布曲線であり、横軸は分子量を示す。図4(a)は比較例1、すなわち、ポリマー分解用組成物を塗布しないもの、図4(b)は比較例2、すなわち、リノール酸メチルを含有しない比較試験用組成物を塗布したものであり、図4(c)は実施例3、すなわち、本発明に係るポリマー分解用組成物を塗布したものの結果を示す。図4の結果から、図4(c)では未処理の分解前のポリスチレンを示す分子量10~10のピークが減少し、分子量10前後のピークが大きく増加しているため、ポリスチレンの低分子への分解が起こったことを示している。図4(b)では分子量10前後の低分子量ピークの増加は少なく、図4(a)ではほとんど増加していない。これらの結果から、本発明のポリマー分解用組成物及びそれを用いたポリマー分解方法によりポリスチレンの分解を有効に行うことができることが示された。
【実施例】
【0053】
図5各図は積分分子量分布曲線であり、横軸は分子量を、縦軸は濃度分率(%)を示す。図5(a)はポリマー分解用組成物を塗布しないもの、図5(b)はリノール酸メチルを含有しない比較試験用組成物を塗布したものであり、図5(c)は本発明に係るポリマー分解用組成物を塗布したものの曲線である。これら図5の結果より、ポリスチレンからなる分解用サンプルに関し、分子量10,000未満へのポリマー分解が確認された濃度分率は、反応前の元の分解用サンプルについては2.5%(図5各図の破線参照)、ポリマー分解用組成物を塗布しない比較例1については2.0%(図5(a)参照)、リノール酸メチルを含有しない比較試験用組成物を塗布した比較例2については4.5%(図5(b)参照)、本発明に係るポリマー分解用組成物を塗布した実施例3については15.1%(図5(c)参照)であった。これより、本発明のポリマー分解用組成物によりポリスチレンの分解が有効に行われ、十分な量が分解されていることが示された。
【実施例】
【0054】
[実施例6]
6.照射時間による分解の進行
実施例3及び比較例1~2で各組成物が添加された厚さ0.05mmの各分解用サンプルについて、紫外線照射を0~12時間に亘って行い、実施例5と同様の方法で各分解用サンプルの分子量を決定した。図6にその高分子領域における分子量測定結果を示す。図6(a)は重量平均分子量(Mw)、図6(b)は数平均分子量(Mn)を示すグラフであり、横軸は紫外線照射時間、縦軸は分子量を示している。各グラフにおける各分解用サンプルの分子量の変移は、△印;ポリマー分解用組成物を塗布しないもの(比較例1)、□印;リノール酸メチルを含有しない比較試験用組成物を塗布したもの(比較例2)、○印;本発明に係るポリマー分解用組成物を塗布したもの(実施例3)で表わしている。比較例1、2では紫外線照射後4時間まで分子量が増加し、その後いったん減少するものの、紫外線照射8時間後からまた増加している。この分子量の上昇はポリスチレンの架橋によるものであり、ポリスチレンの分解が阻害されていることがわかる。これに対して、実施例3(○印)では照射時間に応じて分子量の減少が進み、ポリスチレンの架橋が起こらずに分解が有効に進行していることが示された。
【実施例】
【0055】
[実施例7]
7.重量減少度の測定
実施例3における本発明のポリマー分解用組成物が塗布された分解用サンプルの紫外線照射時間ごとの重量減少度を測定した。図7にその結果を示す。グラフの横軸は紫外線照射時間(h)、縦軸は重量減少(%)を示している。グラフ中の「▲:光分解 TiO/PEO/ML塗布」はポリマー分解用組成物の塗布分の重量減少値、「●:光分解 ポリスチレンTiO/PEO/ML塗布」はポリマー分解用組成物を塗布したポリスチレンの重量減少値を表わし、「○:理論値」は、100×[1-(1+0.1×(1-X/100))/1.1]、X=ポリマー分解用組成物の塗布分の重量減少値、で計算した値である。紫外線照射によって、塗布されたポリマー分解用組成物に含まれるポリエチレンオキシドは光分解され、ラジカル種、酸及びアルデヒド化合物が生成する。これら生成物はポリスチレンの光分解を促進させる。図7のグラフをみると、▲印で示されるポリマー分解用組成物の塗布分の重量は紫外線照射4時間で約84%の減少が起こり、ほとんどはポリスチレンの表面から蒸発したか、分解されたものと考えられる。他方、●印で示されるポリスチレンの重量減少は、紫外線照射4時間の時点で17.6%、8時間の時点で18.8%及び12時間の時点で19.7%となっており、理論値の9.9%(紫外線照射4時間)、10.7%(紫外線照射8時間)、11.7%(紫外線照射12時間)より値が大きい。そのため、紫外線照射が行われている間中、ポリスチレン表面に残留するポリマー分解用組成物の光分解生成物がポリマー内部に浸透する等して、ポリスチレンの分解を促進させるように作用していると考えられる。
【実施例】
【0056】
[実施例8]
8.分解時の外観
図8は、実施例3における本発明のポリマー分解用組成物が塗布された分解用サンプルの紫外線照射なし(図8(a))及び紫外線照射4時間後(図8(b))の外観を示す写真である。図8(b)に示す本発明のポリマー分解用組成物を塗布して4時間紫外線にあてたサンプルは、図8(a)のコントロールサンプルに比べて、ポリフィルム表面に白色の部分ができ、ポリマーの変質化が起こっていることが確認できる。この白色化は、ポリスチレンの分解に伴い、図1に示すMLグラフト反応が生じたことによるものと考えられる。
【実施例】
【0057】
[実施例9]
9.NMRスペクトル
実施例3における本発明のポリマー分解用組成物が塗布された分解用サンプルについて、紫外線を48時間照射した後のH-NMRスペクトルを測定した。NMRスペクトル測定装置はJEOL EX-400スペクトロメータを用い、測定は20℃条件下、クロロホルム中で行った。結果を図9に示す。図9(a)はリノール酸メチルのみの比較スペクトル、図9(b)は本発明のポリマー分解用組成物が塗布された分解用サンプルのスペクトルを示すチャートである。図9(b)に示す、本発明のポリマー分解用組成物が塗布されたポリスチレンのスペクトルでは、リノール酸メチル由来の共鳴がいくつか含まれているが、ビニル位(δ5.5-5.2ppm)及びアリル位(δ2.8-2.6及び2.1-1.9ppm)のプロトンの3つのスペクトルが観察されなかった。この炭素二重結合基の消失は、組成物中のリノール酸メチルが酸化されたことによるものであり、これにより、ポリスチレンの架橋反応をブロックする機能が失われることが考えられる。本発明におけるポリマー分解は、リノール酸メチル等の炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸誘導体成分が重要な役割を担っていることがわかった。
【実施例】
【0058】
[実施例10]
10.ポリマー成形体の厚みによる分解挙動
実施例3で本発明のポリマー分解用組成物が添加された厚さ0.05mm及び厚さ0.1mmの各分解用サンプルについて、紫外線照射を0~12時間行い、実施例5と同様の方法で各分解用サンプルの分子量を決定した。図10にその結果を示す。図10(a)は高分子領域における重量平均分子量(Mw)、図10(b)は高分子領域における数平均分子量(Mn)、図10(c)は、低分子領域における分画分率(%)を示すグラフであり、いずれも横軸は紫外線照射時間を示している。各グラフにおける各分解用サンプルの分子量の変移については、○印;分解用サンプルの厚さ0.05mm、●印;分解用のサンプルの厚さ0.1mmで表わしている。厚さ0.1mmのサンプルは、厚さ0.05mmのサンプルよりも分子量の減少が遅くなっており、紫外線照射4時間までをみると、やや分子量が増加している。これは、おそらく、リノール酸メチルの量が不足したために、ポリマーの架橋反応が生じたためと考えられる。図10(c)の低分子領域での結果をみると、厚さ0.1mmのサンプルと、厚さ0.05mmのサンプルとの分解には大きな違いがみられ、特に紫外線照射4時間までにおいては、厚さ0.05mmのサンプルは低分子領域の画分量が著しく増加し、分解が顕著に進行することが示された。この結果より、リノール酸メチル由来のラジカルの拡散は、ポリマー成形体の厚みに影響を受ける可能性が示唆された。それゆえ、分解対象とするポリマー成形体の厚みを大きくする場合には、組成物中に配合する不飽和脂肪酸の量を増やすことが好ましいと考えられる。
【実施例】
【0059】
[実施例11]
11.可視光吸収型ポリマー分解用組成物の調整
200mgの酸化チタン(TiO、和光純薬工業株式会社製品、アナターゼ型、直径:約5μm)を50mLのエタノール溶液に入れ、撹拌して混合液を作成した。他方、14mgの銅フタロシアニン(シグマ-アルドリッチ社製品)を100mLのエタノール溶液に入れ、撹拌して混合液を作成した。銅フタロシアニン/エタノール混合液に酸化チタン/エタノール混合液を加え、遮光した状態で3時間撹拌した。この液について遠心分離を5分間行い、上澄み層の除去を行った。この操作を3回繰り返し、固形物を回収した。エバポレーターにて固形物の水分を除去し、真空乾燥機にて乾燥させ、銅フタロシアニンを吸着させた酸化チタンを得た。次に、60℃に加温した49gのエタノール溶液に500mgのポリエチレンオキシド(PEO、和光純薬工業株式会社製品、平均分子量:3~5×10)を添加し、3時間撹拌した。ポリエチレンオキシド/エタノール混合液に前述の銅フタロシアニンで修飾された酸化チタンを加え、超音波振動を加えたのち、1時間撹拌して放置し、可視光吸収型ポリマー分解用組成物を構成する触媒剤を得た。他方、不飽和脂肪酸エステルとして、リノール酸メチル(ML、和光純薬工業株式会社製品)、リノレン酸メチル(MLen、東京化成工業株式会社製品)及びオレイン酸メチル(MO、和光純薬工業株式会社製品)を準備した。上述で得られた触媒剤(PEO/TiO/CuPcエタノール混合液)10mLに対し、不飽和脂肪酸エステルを5mL混合し、可視光吸収型ポリマー分解用組成物を得た。
【実施例】
【0060】
[実施例12]
12.可視光吸収型ポリマー分解用組成物の添加及び可視光照射
ペトリ皿上で、この実施例11で作成した可視光吸収型ポリマー分解用組成物を、実施例1で作成した縦50mm・横50mm、厚さ0.05mmのポリスチレンからなる分解用サンプルに0.375mL塗布した。具体的には、触媒剤が0.25mL、不飽和脂肪酸エステルが0.125mL塗布された状態となっている。塗布後、分解用サンプルを遮光し、ドラフト内で分解用サンプルを3時間乾燥させた。このペトリ皿より50cmの距離から、LED白色ランプ(株式会社ヤザワコーポレーション製品、25ワット)を用い、可視光を一定時間照射した。光照射後、サンプル表面に付着した油分をメタノールで洗浄した。
【実施例】
【0061】
[実施例13]
13.GPC測定による分解の確認
実施例12における可視光吸収型ポリマー分解用組成物が添加された分解用サンプル及び、実施例3におけるポリマー分解用組成物が添加された厚さ0.05mmの分解用サンプルについて可視光照射を24時間行い、5mLのクロロホルムにそれぞれ溶解させた。なお、不飽和脂肪酸エステルとしては、リノール酸メチルを用いた。得られた溶液をゲル浸透クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製品、プロミネンスGPCシステム)で測定し、各分解用サンプルの分子量を決定した。GPCはクロロホルムを溶媒として行い、40℃で行った。測定結果を図11に示す。
【実施例】
【0062】
図11(a)は微分分子量分布曲線であり、横軸は分子量を示す。また、図11(b)は積分分子量分布曲線であり、横軸は分子量を、縦軸は分画濃度(%)を示す。各グラフの実線は実施例12の可視光吸収型ポリマー分解用組成物が塗布された分解用サンプルのデータを示し、破線は実施例3のポリマー分解用組成物が塗布された分解用サンプルのデータを示している。図11の結果から、可視光吸収型ポリマー分解用組成物のサンプルは、実施例3のポリマー分解用組成物のサンプルよりも低分子領域の分子量が増加しており、可視光環境下においてポリマー分解が効率よく行われたことが確認された。よって、本発明のポリマー分解用組成物を構成する触媒剤に関し、さらに銅フタロシアニンを含有させたことで、可視光下においても、効率の良いポリスチレンの分解が行われるということがわかった。
【実施例】
【0063】
[実施例14]
14.重量減少度の測定
実施例12における可視光吸収型ポリマー分解用組成物が添加された分解用サンプルの可視光照射時間ごとの重量減少度を測定した。なお、不飽和脂肪酸エステルとしては、リノール酸メチルを用いた。図12にその結果を示す。グラフの横軸は可視光照射時間、縦軸は重量変化(%)を示している。グラフ中の実線(○印)は可視光吸収型ポリマー分解用組成物が塗布されたポリスチレンサンプルの重量変化を示しており、破線(□印)は可視光吸収型ポリマー分解用組成物の塗布分の重量変化を示している。塗布された可視光吸収型ポリマー分解用組成物に含まれる銅フタロシアニンが可視光を効率よく吸収し、酸化チタンにそのエネルギーを伝えることにより、紫外線でなく可視光の照射であっても、ポリマーの光分解は効率よく行われたものと考えられる。図12のグラフをみると、○印で示される可視光吸収型ポリマー分解用組成物を添加したサンプルは、可視光照射4時間で約10%もの重量減少を示した。
【実施例】
【0064】
[実施例15]
15.赤外吸収スペクトル
実施例12で可視光吸収型ポリマー分解用組成物が添加された分解用サンプルについて、可視光照射24時間、48時間及び180時間のサンプルの赤外吸収スペクトルを測定した。測定は、IR測定装置(日本分光株式会社製品、Jasco FT-IR 660 plus)を用いて行った。なお、不飽和脂肪酸エステルとしては、リノール酸メチルを用いた。結果を図13に示す。横軸は波長(cm-1)、縦軸は吸光度を示している。図13のチャートによれば、ポリスチレンが分解されて生じるメチルケトンを示す波長1713cm-1にピークが現れており、ポリスチレンが確実に分解されていることが証明された。
【実施例】
【0065】
[実施例16]
16.NMRスペクトル
実施例12で可視光吸収型ポリマー分解用組成物が添加された分解用サンプルについて、可視光を48時間照射したもののH-NMRスペクトルを測定した。なお、不飽和脂肪酸誘導体としては、リノール酸メチルを用いた。NMRスペクトル測定装置はJEOL EX-400スペクトロメータを用い、測定は20℃条件下、クロロホルム中で行った。結果を図14に示す。図14に示す、本発明の可視光吸収型ポリマー分解用組成物が塗布されたポリスチレンによるスペクトルでは、リノール酸メチル由来の共鳴が複数含まれているが、ビニル位(δ5.5-5.2ppm)及びアリル位(δ2.8-2.6及び2.1-1.9ppm)のプロトンの3つのスペクトル(図14に示すリノール酸メチルに付された炭素e、f及びgに相当する)が観察されなかった。この炭素二重結合基の消失は、リノール酸メチルが酸化されたことによるものであり、これにより、ポリスチレンの架橋反応をブロックする機能が失われることが考えられる。本発明における可視光吸収型ポリマー分解においても、リノール酸メチル等の炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸エステルが重要な役割を担っていることがわかった。
【実施例】
【0066】
[実施例17]
17.熱分解ガスクロマトグラフィー分析
実施例12で可視光吸収型ポリマー分解用組成物が添加された分解用サンプルについて、可視光を180時間照射したもの及び未処理の分解用サンプルについて、熱分解ガスクロマトグラフィー分析を行った。なお、不飽和脂肪酸エステルとしては、リノール酸メチルを用いた。結果を図15に示す。図15はガスクロマトグラフィーのチャートを示しており、横軸は保持時間(min)、縦軸は検出電圧を示している。図15に示されるように、本発明の可視光吸収型ポリマー分解用組成物が塗布され、光分解されたサンプルについては、保持時間が2.3分付近に新たなピークが確認された。このピークはヘキサナールであった。このヘキサナールは、リノール酸メチルが酸化されることにより生成すると考えられる。そこで、リノール酸メチルの質量スペクトルを測定したところ、図16(a)に示すように、m/z29、44、56、71の位置にフラグメントイオンのピークが強く表れた。これらのフラグメントイオンは、図16(b)に示すリノール酸メチルの酸化反応経路において、β-切断の結果生じたヘキサナール及びヘキサナール断片を示しているものと考えられる。このように、本発明の光分解機構においては、不飽和脂肪酸エステルの酸化反応、特に二重結合の切断等が、光触媒により分解されたポリスチレン分解物の再架橋の阻害に寄与しているものと考えられる。
【実施例】
【0067】
[実施例18]
18.照射時間による分解の進行
実施例12で可視光吸収型ポリマー分解用組成物が添加された分解用サンプルについて、可視光を24時間、48時間及び180時間照射したもの及び未処理の分解用サンプルについて、実施例13と同様の方法で各分解用サンプルの分子量を決定した。なお、不飽和脂肪酸誘導体としては、リノール酸メチルを用いた。図17に重量平均分子量(Mw)の測定結果を示す。各グラフの実線は可視光吸収型ポリマー分解用組成物が塗布された分解用サンプルのデータを示し、破線は未処理の分解サンプルそのもののデータを示している。図17に24時間照射したもの、48時間照射したもの、そして180時間照射したものの結果が示されている。グラフの曲線より、光照射24時間後には低分子領域に大きなピークが現れることがわかった。これはポリマーが顕著に分解された結果生じるものと考えられる。また、高分子領域に存在するメインピークは、時間の経過とともに全体的に低分子側に移動していることから、徐々にポリマーが分解されて低分子量化しているものと考えられる。しかしながら、低分子領域に生じたピークは時間が経過するにつれて小さくなっているため、ポリマーの再架橋を阻害する不飽和脂肪酸エステルが徐々に消費され、欠乏している可能性が考えられた。
【実施例】
【0068】
[実施例19]
19.不飽和脂肪酸エステルの種類とポリマー成形体の厚みによる分解挙動
以下実施例において、不飽和脂肪酸誘導体として、図18に示すML;リノール酸メチル(2価)、MO;オレイン酸メチル(1価)及びMLEN;リノレン酸メチル(3価)を用いて、厚みの異なるポリマー成形体に対する分解実験を行った。実施例1に記載の方法に従い、縦50mm・横50mm、厚さ50μm、100μm及び200μmのポリスチレンからなる3種類の厚みの分解用サンプルを作成した。作成した各分解用サンプルに実施例11で作成した可視光吸収型ポリマー分解用組成物を0.375mL塗布した。具体的には、触媒剤が0.25mL、不飽和脂肪酸エステルが0.125mL塗布された状態となっている。この不飽和脂肪酸誘導体としては、リノール酸メチル、オレイン酸メチル及びリノレン酸メチルを1つずつ選択した。塗布後、分解用サンプルを遮光し、ドラフト内で分解用サンプルを3時間乾燥させた後可視光を4時間照射した。光照射後、サンプル表面に付着した油分をメタノールで洗浄し、実施例5と同様の方法で各分解用サンプルの分子量を決定した。図19にその結果を示す。図19の縦軸は低分子領域における分画分率(%)を示し、横軸はフィルムの厚みを示している。ポリマー成形体の厚みが50μmの場合、不飽和脂肪酸誘導体としてリノレン酸メチルを用いたサンプルが最も低分子量の割合が多くみられることから、分解活性が高いことがわかった。他方、ポリマー成形体の厚みが100μm、200μmの場合については、各分解用サンプルの分解性に大きな差はみられなかった。
【実施例】
【0069】
[実施例20]
20.不飽和脂肪酸エステルの種類と光照射時間による分解挙動
縦50mm・横50mm、厚さ100μmのポリスチレンからなる分解用サンプルを作成した。作成した各分解用サンプルに実施例11で作成した可視光吸収型ポリマー分解用組成物を0.375mL塗布した。具体的には、触媒剤が0.25mL、不飽和脂肪酸エステルが0.125mL塗布された状態となっている。この不飽和脂肪酸誘導体としては、リノール酸メチル、オレイン酸メチル及びリノレン酸メチルを1つずつ選択した。塗布後、分解用サンプルを遮光し、ドラフト内で分解用サンプルを3時間乾燥させた後、可視光を4時間、8時間、12時間及び24時間照射した。光照射後、サンプル表面に付着した油分をメタノールで洗浄し、実施例5と同様の方法で各分解用サンプルの分子量を決定した。図20にその結果を示す。図20の縦軸は低分子領域における分画分率(%)を示し、横軸は光照射時間(h)を示している。リノール酸メチル、リノレン酸メチルを塗布したサンプルに関しては、光照射時間の経過に伴い、ほぼ一定の割合で低分子量の割合が増加していた。他方、オレイン酸メチルを塗布したサンプルに関しては光照射12時間~24時間にかけて低分子量の割合が約2倍に増加した。この結果より、オレイン酸メチルは他の不飽和脂肪酸エステルと比べてポリマー内部への浸透が遅く、ポリマー分解に時間がかかることが考えられる。これらの結果より、ポリマー内部への浸透性に関してはリノール酸メチルとリノレン酸メチルはほぼ同じであり、分解速度においても優れた効果を示した。また、分解力に関しては、図19に示すようにポリスチレンを最も低分子量化させたリノレン酸メチルが一番高く、次いでリノール酸メチル、オレイン酸メチルの順であることがわかった。それぞれの構造を確認すると、二重結合を有する数が多い順番にポリスチレンを分解する力が高いということがわかった。
【実施例】
【0070】
以上述べた実施形態及び実施例は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は樹脂素材の廃棄物の処理に役立つため、工業をはじめ樹脂が用いられる産業に応用できるほか、処理に要するエネルギーや環境への影響の問題の解決にも寄与するものである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19