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明細書 :過カルボン酸を含む溶液の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4776246号 (P4776246)
公開番号 特開2006-219379 (P2006-219379A)
登録日 平成23年7月8日(2011.7.8)
発行日 平成23年9月21日(2011.9.21)
公開日 平成18年8月24日(2006.8.24)
発明の名称または考案の名称 過カルボン酸を含む溶液の製造方法
国際特許分類 C07C 407/00        (2006.01)
C07C 409/26        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 407/00
C07C 409/26
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 5
全頁数 9
出願番号 特願2005-031431 (P2005-031431)
出願日 平成17年2月8日(2005.2.8)
審査請求日 平成19年12月20日(2007.12.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】夕部 邦夫
【氏名】前 一廣
個別代理人の代理人 【識別番号】100117891、【弁理士】、【氏名又は名称】永井 隆
審査官 【審査官】前田 憲彦
参考文献・文献 特開2004-043365(JP,A)
特開2000-186072(JP,A)
特開2004-121985(JP,A)
特開2004-305940(JP,A)
国際公開第2005/010055(WO,A1)
特表2006-523522(JP,A)
特表2001-521913(JP,A)
特表2001-521816(JP,A)
調査した分野 C07C 407/00
C07C 409/00
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
過酸化水素とカルボン酸アシル化剤を、酸触媒存在下に反応させ、過カルボン酸を含む溶液を連続的に製造する方法において、
過酸化水素を含む溶液及びカルボン酸アシル化剤を含む溶液を、内径の相当直径が1000~3000μmの微小流路を有する流通式マイクロ反応器に送液して前記微小流路内で酸触媒と接触させ、かつ、流通式マイクロ反応器内の温度が、60℃~100℃の範囲内にある一点の設定温度から±2℃の範囲内に制御されていることを特徴とする、過カルボン酸を含む溶液の製造方法。
【請求項2】
過酸化水素を含む溶液とカルボン酸アシル化剤を含む溶液との混合液が流通式マイクロ反応器を通過する滞留時間が、1~10分であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カルボン酸アシル化剤が、カルボン酸または無水カルボン酸であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
カルボン酸アシル化剤が、酢酸または無水酢酸であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の方法により連続的に過カルボン酸を製造し、それを有機合成用酸化剤として2-メチルナフタレンの液相酸化反応を行う方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
過カルボン酸を含む溶液は、漂白剤、殺菌剤、エポキシ化剤、有機合成用酸化剤、重合開始剤、などとして有用な薬液である。本発明は、過酸化水素をカルボン酸アシル化剤と反応させ、オンサイトで連続的に、過カルボン酸を含む溶液を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
過酸化水素を、カルボン酸や無水カルボン酸などのようなカルボン酸アシル化剤と反応させると、過カルボン酸が生成することは、古くから知られている。例えば、カルボン酸アシル化剤としてカルボン酸を用いた場合、カルボン酸および過酸化水素と過カルボン酸および水との平衡反応が進行し、過カルボン酸を含む平衡溶液が得られる。
【0003】
過カルボン酸は、高温や、物理的衝撃、金属イオンの混入などによって分解しやすい、不安定な物質である。過カルボン酸を含む溶液を取り扱う際には、その分解を抑えるために、高温や、物理的衝撃、金属イオンの混入などを避けるよう注意を払う必要がある。
【0004】
一般的に、安定剤を添加することで、貯蔵や輸送の際の安定性を確保する方法が用いられてきた。安定剤としては、金属イオンに対し封止作用を有するキレート剤などが用いられてきた。しかしながら、安定剤として高価なキレート剤等を使用することは、製造コスト面で好ましくない。また、これらの安定剤が、後に過カルボン酸を含む溶液を使用する際に、様々な悪影響を及ぼす可能性もある。例えば、過カルボン酸を含む溶液を有機合成用酸化剤として用いる場合などには、触媒金属種にキレート剤が配位して反応を抑制してしまう恐れがある。
【0005】
そのため、過カルボン酸を含む溶液を有機合成用酸化剤として用いる場合には、安定剤を添加しないで過カルボン酸を含む溶液を得、これを使用する方法が望まれる。
【0006】
以上の問題を回避するため、過カルボン酸を含む溶液を使用する場所において、過カルボン酸を含む溶液を製造する方法が提案されてきた。特許文献1には、半回分式反応器にて、酸触媒存在下で過酸化水素とカルボン酸とを反応させ、オンサイトで過カルボン酸を含む溶液を製造する方法が記載されている。しかしながら、反応は室温にて1~5時間かけて行われているため、生産性が悪い。また、これらの方法で連続的に過カルボン酸を含む溶液を製造することは困難である。
【0007】
特許文献2には、室温~50℃の反応温度で、強酸性イオン交換樹脂触媒を充填した固定床流通式反応器にて、過酸化水素とカルボン酸とを反応させ、オンサイトで過カルボン酸を含む溶液を製造する方法が記載されている。また、特許文献3には、40~60℃、加熱機構付きの流通式反応器にて、酸触媒存在下で過酸化水素とカルボン酸とを接触させ、連続的に過カルボン酸を含む溶液を製造する方法が記載されている。しかしながら、反応は比較的低温にて30~60分かけて行われている。また、過酸化水素の利用効率や反応器内の温度分布に関しては、特に記述されていない。
【0008】
目的の溶液の構成成分である過カルボン酸を含め、一般に、過酸化物が分解する際には、大きな発熱を伴う。反応熱により過酸化物の分解はさらに促進されるため、過酸化物を取り扱う反応においては常に、爆発や発火の危険性が潜んでいる。また、高温による過カルボン酸の分解を抑えるため、過酸化水素のカルボン酸アシル化反応は、従来の技術では比較的穏やかな反応条件下にて実施される。そのため、目的組成の過カルボン酸が得られるまでには、非常に長い時間が必要である。一般的には、反応を促進するために酸触媒を共存させることが多い。しかしながら、過酸化水素のカルボン酸アシル化反応において酸触媒を用いる場合には、酸触媒の溶解熱などに起因する発熱を伴う。さらに、カルボン酸アシル化剤として無水カルボン酸やハロゲン化アシルなどを用いた場合には、これらのアシル化剤の加水分解反応による発熱も伴う。したがって、過酸化水素とカルボン酸アシル化剤の反応を行う際には、精密な温度制御が必要である。また、一般に、低濃度の条件にて、一方の反応試剤を滴下するなどの操作を用いて実施することが多い。
【0009】

【特許文献1】ドイツ公開特許3638552号
【特許文献2】日本特許公報2854133号
【特許文献3】ドイツ公開特許4330465号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来技術における上記したような問題点を解決し、より安全に、かつ効率良く、オンサイトで連続的に過カルボン酸を含む溶液を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、流通式マイクロ反応器を用いることで、過酸化水素のカルボン酸アシル化反応における精密な温度制御を可能とした。さらには、意外にも、60℃以上の高温条件においても、高い過酸化水素利用効率が得られることを見出し、本発明を達成した。
【0012】
すなわち、本発明は、過酸化水素とカルボン酸アシル化剤を、酸触媒存在下に反応させ、過カルボン酸を含む溶液を連続的に製造する方法において、
過酸化水素を含む溶液及びカルボン酸アシル化剤を含む溶液を、内径の相当直径が1~10000μmの微小流路を有する流通式マイクロ反応器に送液して前記微小流路内で酸触媒と接触させることを特徴とする、過カルボン酸を含む溶液の製造方法である。微小流路内径の相当直径とは、流路を流体の進行方向に垂直な断面で切断した場合の流路内側の断面積S、断面周囲長Lにおいて、(4×S/L)で定義される値である。
【0013】
本発明において、流通式マイクロ反応器として、内径の相当直径が1~10000μmの微小流路を有する流通式反応器を用いる。好ましくは、内径の相当直径が20~3000μmの微小流路を有する流通式反応器を用いる。相当直径とは、流路を流体の進行方向に垂直な断面で切断した場合の断面積S、断面周囲長Lにおいて、(4×S/L)で定義される値である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、効率の良い熱交換が可能である。したがって、精密な温度制御が可能となり、反応操作の安定性ならびに安全性が高くなる。また、過熱による過酸化物の分解が抑制でき、過酸化水素の利用効率を向上できる。
【0015】
また、本発明によれば、従来の方法では困難であったような比較的高温の反応条件でも安全に反応を実施することができるため、反応が平衡に達するまでに要する時間を飛躍的に短縮できる。反応に要する滞留時間を短縮できることは、反応器の容積を小さくすることにもつながる。
【0016】
また、本発明によれば、安全を維持した上で、高濃度の反応物質を供給することが可能である。反応試剤の滴下などに要する時間はなくすことができる。反応物質の濃度に依存して、反応速度も向上できる。また、反応液が高濃度である場合には、反応液の量が少なくできる。
【0017】
また、本発明によれば、反応器の容積が小さく、オンサイトで取り扱う反応液の量を極めて少なくできる。これにより、万一、災害や事故が生じた際の危険性を、著しく低減できる。
【0018】
また、本発明によれば、オンサイトで過酢酸を含む溶液を製造することができるため、高価な安定剤が不要となる。したがって、安定剤の存在によって生じる、過カルボン酸を含む溶液を使用時の不具合が解消できる。また、生成した過カルボン酸を含む溶液を貯蔵する必要が無く、装置をコンパクトにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、酸触媒の存在下に、過酸化水素、および、カルボン酸アシル化剤を含む液を、流通式マイクロ反応器に連続的に供給して反応させることにより実施される。
【0020】
本発明において、用いられる流通式マイクロ反応器の微小流路の形状に制限はなく、流れ方向に垂直な断面の形状が円形であってもよいし、四角形であってもよい。また、本発明において、2以上の微小流路に分岐した構造を有する流通式マイクロ反応器を用いてもよいし、2以上の微小流路を合流した構造を有する流通式マイクロ反応器を用いてもよい。本発明において用いられる流通式マイクロ反応器の材質に特に制限はないが、反応溶液に対する耐食性のある材質が使用でき、フッ素樹脂、ステンレス鋼、などが例示される。
【0021】
本発明において、好ましくは、微小流路の上流に2以上の流入路および合流空間を有する流通式マイクロ反応器を用いる。この場合には、過酸化水素を含む液およびカルボン酸アシル化剤を含む液を、それぞれ別の流入路から導入することができる。流入路の形状、寸法、材質に特に制限はない。また、本発明において、その構成の一つとしてマイクロ静的混合器を有する流通式マイクロ反応器を用いても良い。マイクロ静的混合器とは、マイクロメートルスケール(1μm~10000μm)の微小空間を有する静止型混合器を意味する。
【0022】
本発明において、過酸化水素は溶液の状態で用いる。特に水溶液が好ましい。また過酸化水素を含む溶液に、過酸化水素以外の化合物が含まれていても良い。例えば、硫酸およびペルオキソ一硫酸が含まれていても良い。
【0023】
本発明において、カルボン酸アシル化剤としては、カルボン酸または無水カルボン酸を用いる。カルボン酸として、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等を用いることができ、好ましくは、ギ酸、酢酸、プロピオン酸が挙げられる。また、無水カルボン酸には、無水酢酸が例示される。さらに、カルボン酸アシル化剤に溶媒を加えても良いし、溶媒としてカルボン酸アシル化剤自体を使用して反応を行っても良い。
【0024】
本発明においては、カルボン酸アシル化反応に適用可能な酸触媒を用いる。酸触媒としては、硫酸、塩酸、リン酸、ホウ酸などの無機酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸、酸性イオン交換樹脂などの固体酸、などが使用される。均一系触媒を用いて液相均一系で反応を実施しても良いし、不均一系触媒を用いて固液相不均一系で反応を実施しても良い。好ましくは、酸触媒として硫酸を用いる。また、製造した過カルボン酸を使用する際に、鉱酸等の存在により不具合を生じる場合には、酸性イオン交換樹脂を用いるのが好ましい。
【0025】
(ア)均一系触媒を用いる場合には、
(アー1)微小流路の上流に2以上の流入路および合流空間を有する流通式マイクロ反応器を用い、過酸化水素およびカルボン酸アシル化剤を含む溶液と、酸触媒を含む溶液とを、微小流路内で混合しても良いし、
(アー2)微小流路の上流に2以上の流入路および合流空間を有する流通式マイクロ反応器を用い、事前に酸触媒を、過酸化水素を含む溶液、および/または、カルボン酸アシル化剤を含む溶液へ混合しておいて、両溶液を微小流路内で混合しても良いし、
(アー3)微小流路の上流に3以上の流入路および合流空間を有する流通式マイクロ反応器を用い、過酸化水素を含む溶液と、過カルボン酸アシル化剤を含む溶液と、酸触媒を含む溶液とを、逐次的におよび/または同時に混合しても良い。
特に(アー2)、(アー3)の方法が好ましい。
【0026】
(イ)不均一系触媒を用いる場合には、
(イー1)過酸化水素およびカルボン酸アシル化剤を含む溶液を、不均一系触媒を充填および/または担持した微小流路内に送液しても良いし、
(イー2)微小流路の上流に2以上の流入路および合流空間を有する流通式マイクロ反応器を用い、過酸化水素を含む溶液と、過カルボン酸アシル化剤を含む溶液とを混合した後、不均一系触媒を充填および/または担持した微小流路内に送液しても良い。
特に(イー2)の方法が好ましい。
【0027】
本発明において、(酸触媒を接触させるための)微小流路を温度制御可能な流通式マイクロ反応器を用いる。また、本発明において、2以上の流入路および合流空間を有する流通式マイクロ反応器を用いる場合には、流入路も温度制御することができる。温度の制御方法としては、流通式マイクロ反応器を温度制御されたオイルバス等の媒体槽中に浸けてもよいし、流通式マイクロ反応器に電気ヒーターや熱媒流路を取り付けてもよい。本発明において、流通式マイクロ反応器内流路の温度は、60℃~100℃、好ましくは、60℃~80℃の範囲内にある一点の設定温度から±2℃の範囲内に温度制御される。流通式マイクロ反応器は、好ましくは、温度制御された媒体中に浸漬される。これにより、流通式マイクロ反応器内の反応混合物の温度を前記設定温度から±2℃以内、特に±1℃以内の温度範囲内に制御する。反応温度が低すぎると、目的とするカルボン酸アシル化反応の反応速度が小さくなってしまう。
【0028】
本発明において、好ましくは、過酸化水素とカルボン酸アシル化剤との混合液が、流通式マイクロ反応器の微小流路内部で酸触媒と接触する滞留時間は1~10分に制御される。ここで、滞留時間とは、微小流路容積Vを、反応液体積流量の総和vで割った値V/vで表される、空間時間(平均滞留時間)を意味する。ただし、(ア)硫酸に例示されるような均一系触媒を用い、2以上の流入路および合流空間を有する流通式マイクロ反応器を用いる場合には、滞留時間として、合流後の空間時間(平均滞留時間)、すなわち、流通式マイクロ反応器の合流空間より下流側の微小流路容積をV’を、反応液体積流量の総和vで割った値V’/vを用いる。また、(イ)酸性イオン交換樹脂に例示されるような不均一系触媒を用いた場合には、滞留時間として、固体触媒層の空筒時間、すなわち、不均一系触媒を充填および/または担持した微小流路容積V”(固体触媒自体の体積も含む)を、反応液体積流量の総和vで割った値V”/vを用いる。
【0029】
本発明において、圧力条件には特に制限はないが、高温条件による溶液の気化を防ぐために、流通式マイクロ反応器の内部を高圧に保つこともできる。圧力の制御方法として、流通式マイクロ反応器の出口部分に背圧弁等を用いてもよい。
【実施例】
【0030】
次に、本発明を実施例によって、さらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。なお、過カルボン酸を含む溶液中の過酸化水素の含有量は、フェロインを指示薬とした硫酸第二セリウム標準液で滴定して求めた。過カルボン酸を含む溶液中の総過酸化物の含有量は、ヨードメトリー法により、希硫酸及びヨウ化カリウム共存下にチオ硫酸ナトリウム標準液で滴定して求めた。総過酸化物の含有量には、過カルボン酸、過酸化水素、ペルオキソ一硫酸などの含有量が含まれる。
【0031】
実施例1<(イー2)不均一系触媒を用いた、過酢酸平衡溶液の製造例>
流入路として2本のステンレス鋼SUS-316製チューブ(内径1000μm、長さ1m、円管形状)を、静的混合器(米国 ASI社製 Static Mixer,ミキシング容積250μL)の2つの入口に接続し、静的混合器の1つの出口には、微小反応流路として1本のステンレス鋼SUS-316製チューブ(内径2100μm、長さ0.15m)を接続し、流通式マイクロ反応器を作製した。前記ステンレス鋼製微小流路内には、触媒として強酸性イオン交換樹脂Amberlist15H(米国Rohm & Haas社製)を充填した。
【0032】
上述の流通式マイクロ反応器全体を、反応温度を70℃に設定したオイルバス(オイルバスの内部は充分に撹拌)に浸漬し、2台の高速液体クロマトグラフィー用送液ポンプ(島津製作所(株)製 LC-10Ai)を用いて、2本の流入路より、60%過酸化水素水溶液と氷酢酸とを送液し、上述の流通式マイクロ反応器に導入した。また、過酸化水素と酢酸のモル比を3:4とし、混合液の微小流路内滞留時間(固体触媒層の空筒時間)が2分となるように設定した。
【0033】
流通式マイクロ反応器の出口チューブから流出する反応混合液には、過酸化水素と酢酸との平衡反応により過酢酸が生成しており、特有の刺激臭があった。反応液の希釈水溶液をHPLC(フォトダイオードアレイ検出器)にて分析したところ、クロマトグラムにおける保持時間、および、UVスペクトルは、過酢酸の標準化合物における保持時間およびUVスペクトルと一致した。反応液の希釈水溶液を滴定分析し、反応混合液中に残存した過酸化水素の量(供給した過酸化水素のモル基準)は52.1%であった。反応混合液中の過酢酸の収率(供給した過酸化水素のモル基準)は、反応混合液中の総過酸化物の量(供給した過酸化水素のモル基準)から、過酸化水素の量を差し引いて求め、43.9%であった。固体触媒層と接触する滞留時間がわずか2分であるにもかかわらず、反応はほぼ平衡に達していた。
【0034】
また、総過酸化物収率(供給した過酸化水素のモル基準)、すなわち過酸化水素の利用効率は、96.0%であり、酸化剤の分解率は4.0%と低く抑えられていることがわかった。
【0035】
実施例2<(アー2)均一系触媒を用いた、過酢酸平衡溶液の製造例>
流入路として2本のステンレス鋼SUS-316製チューブ(内径1000μm、長さ1m、円管形状)をマイクロ静的混合器(ドイツ国 IMM社製 Single Mixer)の2つの入口に接続し、マイクロ静的混合器の1つの出口には、微小反応流路として1本のフッ素樹脂PTFE製チューブ(内径1000μm、長さ1m)を接続して、流通式マイクロ反応器を作製した。
上述の流通式マイクロ反応器全体を、反応温度を80℃に設定したオイルバス(オイルバスの内部は充分に撹拌)に浸漬し、2台のシリンジポンプ(米国 Harvard社製 Model 11-IW)を用いて、2本の流入路より、過酸化水素を含む溶液と氷酢酸とを送液し、上述の流通式マイクロ反応器に導入した。過酸化水素を含む溶液としては、60%過酸化水素水溶液と濃硫酸とを事前に混合したもの(混合前の過酸化水素と硫酸のモル比は3:1)を供給した。また、過酸化水素と酢酸のモル比を1:1とし、混合液の微小流路内滞留時間が3分となるように設定した。
【0036】
PTFE製チューブ内の液温を測定したところ、81.5℃であった。反応温度が、設定値±2℃以内の範囲に含まれていることがわかる。また、PTFE製チューブ内の流体の挙動を観察したところ、酸化剤の分解を示す気体の発生は全く認められなかった。
【0037】
流通式マイクロ反応器の出口チューブから流出する反応混合液には、過酸化水素と酢酸との平衡反応により過酢酸が生成しており、特有の刺激臭があった。反応液の希釈水溶液をHPLC(フォトダイオードアレイ検出器)にて分析したところ、クロマトグラムにおける保持時間、および、UVスペクトルは、過酢酸の標準化合物における保持時間およびUVスペクトルと一致した。反応液の希釈水溶液を滴定分析し、反応混合液中に残存した過酸化水素の量(供給した過酸化水素のモル基準)は36.1%であった。反応混合液中の総過酸化物の量(供給した過酸化水素のモル基準)は98.3%であり、酸化剤の分解率は1.7%と低く抑えられていることがわかった。滞留時間がわずか3分であるにもかかわらず、反応はほぼ平衡に達していた。また、反応後の希釈水溶液をHPLCにて定量分析した結果、反応混合液中の過酢酸の収率(供給した過酸化水素のモル基準)は56.5%であった。また、副生成物として、ペルオキソ一硫酸(カロ酸,H2SO5)が5.7%の収率(供給した過酸化水素のモル基準)で得られた。
【0038】
【表1】
JP0004776246B2_000002t.gif

【0039】
実施例3<過カルボン酸を含む溶液を用いた液相酸化反応の例>
実施例2に記載の流通式マイクロ反応器の出口チューブを、半回分式反応器(還流器付きのガラス製50mLナスフラスコ)の内部に挿入し、酸化反応装置を製作した。
上述の酸化反応装置を用いて、流通式マイクロ反応器の内部で連続的に製造した過カルボン酸を含む溶液を有機合成用酸化剤として使用し、半回分式反応器の内部で2—メチルナフタレンの液相酸化反応を実施した。流通式マイクロ反応器および半回分式反応器を、反応温度を80℃に設定したオイルバスに浸漬し、2台のシリンジポンプ(米国 Harvard社製 Model 11-IW)を用いて、2本の流入路より、過酸化水素を含む溶液と氷酢酸とを送液し、上述の流通式マイクロ反応器に導入した。過酸化水素を含む溶液としては、60%過酸化水素水溶液と濃硫酸とを事前に混合したもの(混合前の過酸化水素と硫酸のモル比は3:1)を供給した。また、過酸化水素と酢酸のモル比を1:1とし、流通式マイクロ反応器における混合後の滞留時間が3分となるように設定した。
【0040】
半回分式反応器の内部には、1.4gの2—メチルナフタレンおよび28gの氷酢酸を仕込んでおき、流通式マイクロ反応器の内部で生成した過カルボン酸を含む混合溶液を連続的に導入した。4.5gの混合溶液を導入した時点(混合溶液の導入開始から13.5分間)で、酸化剤の導入を停止した(流通式マイクロ反応器の出口チューブに取り付けた流路切換バルブを操作)。半回分式反応器内の酸化反応溶液は、酸化剤の導入を停止してから16.5分間熟成したのち、室温に冷却して反応を終了した(トータルの反応時間は30分間。流通式マイクロ反応器で混合前の過酸化水素:半回分式反応器に仕込んだ2—メチルナフタレン:トータルの酢酸のモル比=3:1:50)。
【0041】
反応を終了した後の半回分式反応器内の酸化反応溶液をHPLCを用いて分析した。残存した2-メチルナフタレンおよび生成した2-メチル-1,4-ナフトキノンを内部標準法にて定量した結果、2-メチルナフタレンの転化率は81.6%、2-メチル-1,4-ナフトキノンの収率は15.7%、2-メチル-1,4-ナフトキノンの選択率は19.2%であった。