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明細書 :物質内包カーボンナノホーン複合体及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4702754号 (P4702754)
登録日 平成23年3月18日(2011.3.18)
発行日 平成23年6月15日(2011.6.15)
発明の名称または考案の名称 物質内包カーボンナノホーン複合体及びその製造方法
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
A61K  47/48        (2006.01)
FI C01B 31/02 101F
A61K 47/48
請求項の数または発明の数 9
全頁数 8
出願番号 特願2007-557900 (P2007-557900)
出願日 平成19年2月2日(2007.2.2)
国際出願番号 PCT/JP2007/052291
国際公開番号 WO2007/091663
国際公開日 平成19年8月16日(2007.8.16)
優先権出願番号 2006027935
優先日 平成18年2月6日(2006.2.6)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年12月24日(2009.12.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】弓削 亮太
【氏名】湯田坂 雅子
【氏名】飯島 澄男
【氏名】依光 英樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100077838、【弁理士】、【氏名又は名称】池田 憲保
【識別番号】100082924、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 修一
【識別番号】100129023、【弁理士】、【氏名又は名称】佐々木 敬
審査官 【審査官】岡田 隆介
参考文献・文献 特開2003-025297(JP,A)
特開2005-343885(JP,A)
調査した分野 C01B 31/00-31/36
WPI
JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
酸化処理により作製されたカーボンナノホーンの開孔部にポリアミン分子のキャップを設け、pH環境に応じて選択的に開閉するようにしたことを特徴とする物質内包カーボンナノホーン複合体。
【請求項2】
前記ポリアミン分子のアミノ基が、前記開孔部に存在する置換基であるカルボキシル基に吸着していることを特徴とする請求項1に記載の物質内包カーボンナノホーン複合体。
【請求項3】
内包物質は、金属、無機物及び有機物のいずれか1種または、2種類以上の混合物あるいは、これらの化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の物質内包カーボンナノホーン複合体。
【請求項4】
酸化開孔したカーボンナノホーンに溶液中で内包物質を取り込ませた後、前記内包物質が不溶あるいは溶解しにくい溶液中でポリアミン分子のキャップをつけることにより、前記キャップをつけるときに前記内包物質が前記カーボンナノホーンの内部から放出されないようにしたことを特徴とする物質内包カーボンナノホーン複合体の製造方法。
【請求項5】
酸化開孔したカーボンナノホーンをアミン類と反応させた後洗浄することにより、静電相互作用以外の不要な反応を予め終了させ、その後、前記カーボンナノホーンに内包物質を取り込ませるようにしたことを特徴とする請求項4に記載の物質内包カーボンナノホーン複合体の製造方法。
【請求項6】
ポリアミン分子のキャップが開いているときに前記カーボンナノホーンに取り込まれた内包物質が当該カーボンナノホーンの内部から周囲の環境に溶け出し徐放するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の物質内包カーボンナノホーン複合体、あるいは請求項4または5に記載された製造方法により製造された物質内包カーボンナノホーン複合体。
【請求項7】
請求項6に記載の物質内包カーボンナノホーン複合体を用いる物質放出制御方法において、周囲のpH環境を7未満にすることでポリミアン分子のキャップを開かせ、カーボンナノホーンに取り込まれた物質を周囲の環境に溶け出させ徐放することを特徴とする物質放出制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の物質放出制御方法において、周囲のpH環境を7以上にすることによって前記ポリアミン分子のキャップを閉じて、前記カーボンナノホーンに取り込まれた物質の周囲の環境への溶け出しを止めることを特徴とする物質放出制御方法。
【請求項9】
請求項1乃至3または6のいずれか一つに記載の物質内包カーボンナノホーン複合体、あるいは請求項4また5に記載の製造方法により製造された物質内包カーボンナノホーン複合体を含むことを特徴とするドラッグデリバリーシステム(DDS)薬剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、物質内包カーボンナノホーン複合体及びその製造方法と、物質内包カーボンナノホーン複合体を用いた物質放出制御方法及びドラッグデリバリーシステム薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な無機物質を薬物伝送システムにおける薬物の担体として活用することが検討されてきている。このような担体として、特にナノ粒子が注目されており、これまで多くの報告がされている。
このような状況において、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等のナノサイズの大きさを有するナノ炭素材に関する関心が高まり、これらのナノ炭素材を修飾して、ナノサイズ物質として特徴的な構造に由来する性質とともに、生体適合性や薬物特性等の機能をも発現させようとする試みがなされている。
例えば、日本国特許出願公開公報2005-343885号(特許文献1)には、カーボンナノホーンの特異な構造と性質に着目し、その内部に生理活性や薬理活性を有する機能性有機分子を導入担持させた新規な複合体とその製造方法に関する技術が開示されている。
また、Murakami等による「Molecular Pharmaceutics」,American Chemical Society,2004,Vol.1,No.6,p.399-405(非特許文献1)には、上記の薬物を内部に導入したカーボンナノホーン複合体が、徐放性を有することからドラッグデリバリーシステム(DDS)薬剤に応用できることが述べられている。
【発明の開示】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された発明や非特許文献1に報告された技術は、カーボンナノホーンの内部に薬剤などの様々な物質を内部に取り込み放出させることができるものの、取り込まれた物質の放出が自然放出であるため、体内において選択的に薬剤を放出させるドラッグデリバリーシステム(DDS)として実用化することは困難であるという問題点がある。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、従来の技術の問題点を解消し、内包物質の放出制御を可能としたカーボンナノホーン複合体を提供することを課題としている。
本発明は、上記の課題を解決するものとして、以下のことを特徴としている。
すなわち、本発明の第1の要旨は、物質内包カーボンナノホーン複合体において、酸化開孔により作製されたカーボンナノホーンの開孔部にポリアミン分子のキャップを設け、pH環境に応じて選択的に開閉するようにしたことを特徴とする。
また、本発明の第2の要旨は、上記第1の要旨に係る物質内包カーボンナノホーン複合体において、前記ポリアミン分子のアミノ基が、前記開孔部に存在する置換基であるカルボキシル基に吸着していることを特徴とする。
さらに、本発明の第3の要旨は、上記第1または2の物質内包カーボンナノホーン複合体において、内包物質が、金属、無機物及び有機物のいずれか1種または、2種類以上の混合物あるいは、これらの化合物であることを特徴とする。
また、本発明の第4の要旨は、物質内包カーボンナノホーンの製造方法において、酸化開孔したカーボンナノホーンに溶液中で内包物質を取り込ませた後、前記内包物質が不溶あるいは溶解しにくい溶液中でポリアミン分子のキャップをつけることにより、前記キャップをつけるときに前記内包物質が前記カーボンナノホーンの内部から放出されないようにしたことを特徴とする。
さらに、本発明の第5の要旨は、上記第4の要旨に係る物質内包カーボンナノホーン複合体の製造方法において、酸化開孔したカーボンナノホーンをアミン類と反応させた後洗浄することにより、静電相互作用以外の不要な反応を予め終了させ、その後、前記カーボンナノホーンに内包物質を取り込ませるようにしたことを特徴とする。
また、本発明の第6の要旨は、上記第1乃至3の要旨のいずれかに係る物質内包カーボンナノホーン複合体において、あるいは上記第4または5の要旨に係る製造方法により製造された物質内包カーボンナノホーン複合体において、ポリアミン分子のキャップが開いているときに前記カーボンナノホーンに取り込まれた内包物質が当該カーボンナノホーンの内部から周囲の環境に溶け出し徐放するようにしたことを特徴とする。
さらに、本発明の第7の要旨は、上記第6の要旨に係る物質内包カーボンナノホーン複合体を用いる物質放出制御方法において、pH7未満にすることでポリミアン分子のキャップを開かせ、カーボンナノホーンに取り込まれた物質を周囲の環境に溶け出させ徐放することを特徴とする。
また、本発明の第8の要旨は、上記第7の要旨に係る物質放出制御方法において、周囲のpH環境を7以上にすることによって前記ポリアミン分子のキャップを閉じて、前記カーボンナノホーンに取り込まれた物質の周囲の環境への溶け出しを止めることを特徴とする。
さらに、本発明の第9の要旨は、ドラッグデリバリーシステム(DDS)薬剤において、上記第1乃至3または6の要旨のいずれかに係る物質内包カーボンナノホーン複合体、あるいは上記第4または5の要旨のいずれかに係る製造方法により製造された物質内包カーボンナノホーン複合体を含むことを特徴とする。
発明の効果:
本発明によれば、カーボンナノホーンの表面に形成された開孔部に、ポリアミン分子のキャップを設けたことにより、開孔部がpH環境に的確に応答して選択的に開閉されるため、カーボンナノホーンの内部に取り込まれた物質の放出制御をpH環境により行うことができる。これによりDDS薬剤等への応用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1は、実施例1で作製されたC60内包カーボンナノホーンとスペルミンキャップをしたC60内包カーボンナノホーンのTGA測定から求められたC60/カーボンナノホーンの重量比及び可視・紫外吸収スペクトルから見積もったCFCOOH添加前後でのトルエン中でのC60の放出量を表す表である。
図2は、実施例2で作製されたCDDP内包カーボンナノホーンとTMTACTDキャップをしたCDDP内包カーボンナノホーンのTGA測定から求められたCDDP/カーボンナノホーンの重量比及び可視・紫外吸収スペクトルから見積もったCFCOOH添加前後での水溶液中でのCDDPの放出量を表す表である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
この出願の発明は、上記の通りの特徴を持つものであるが、以下に実施の形態について説明する。
出発物質として用いるカーボンナノホーンは、各々が2-5nmの直径を持つ凝集体であり、直径30-150nmのものが使用可能である。カーボンナノホーンには、酸化処理により開孔が形成されるが、その開孔のサイズは、酸化条件を制御することにより制御できる。たとえば、酸素中での酸化では、酸化処理温度を変えることにより、カーボンナノホーンの穴のサイズを制御でき、300から420℃で直径0.3から1nmの孔を開けることができる。また、酸などによる処理でもカーボンナノホーンに開孔を形成可能である。
酸化処理により開孔したカーボンナノホーンに物質を内包させる手段は、開孔されたカーボンナノホーンと内包物質とを液相において混合し、その溶媒を蒸発させることにより実現される。溶媒の蒸発は、不活性ガス中で行うのが効果的である。内包物質を取り込ませたカーボンナノホーンは、物質内包カーボンナノホーン複合体と呼ばれる。
カーボンナノホーンと内包物質とを液相において混合する際の液相溶媒は、適宜選択することができる。つまり、内包物質を溶解させるもの(溶媒)であれば、内包物質をカーボンナノホーンの内部に取り込ませることができる。
また、カーボンナノホーンの内部に取り込ませる内包物質は、溶媒に溶解されて溶液中に存在する物質であればどの様な物質でもよく、有機物、無機物及び金属のいずれか1種、または、2種以上の混合物や化合物等を用いることも可能である。
物質内包カーボンナノホーン複合体の開孔部には、キャップとしてアミノ基を有するポリアミン(分子)が設けられる。キャップとしてのポリアミンとしては、例えば、スペルミン(spermine)、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(hexamethyltriethylenetetramine)、1,4,8,11-テトラメチル(tetramethyl)-1,4,8,11-テトラアザサイクロテトラデカン(tetraazacyclotetradecane)などが適している。
上記に示した、開孔している物質内包カーボンナノホーン複合体へのキャップの付加は、内包物質が溶出しないあるいはしづらい溶液中で行われる。すなわち、ポリアミンを溶解させ易くかつ内包物質を溶解させ難い溶液中に、ポリアミンと物質内包カーボンナノホーン複合体とを入れて混合し、その混合溶液を十分に攪拌することにより行われる。このような方法でキャップの付加を行うことで、キャップの付加の際に、カーボンナノホーン内部から内包物質が放出されるのを防ぐことができる。この後、フィルターなどを使って混合溶液より物質内包カーボンナノホーン複合体を分離する。
分離された物質内包カーボンナノホーン複合体には、その開孔部にポリアミンがキャップとして吸着している。詳述すると、物質内包カーボンナノホーン複合体の開孔部には、置換基としてカルボキシル基が存在しており、このカルボキシル基にポリアミンのアミノ基が吸着している。
なお、酸化開孔したカーボンナノホーンを、内包物質を取り込ませる前に、予めアミン類と反応させ、その後酸などで洗浄することにより、静電相互作用以外での不要な反応を予め終了させるという前処理を行うことで、キャップの付加をより効果的に行うことができる。
物質内包カーボンナノホーン複合体に設けられたポリアミンキャップは、周囲のpH環境が酸性のとき(pH7未満、たとえばpH3~4のとき)開く(開孔部を開く)。その結果、カーボンナノホーンに内包された物質は、カーボンナノホーンの開孔部を通じて外部へ放出される。しかし、キャップがカーボンナノホーンから完全に脱離していなければ、放出途中で再び周囲のpHをあげること(たとえばpH7以上とすること)で、ポリアミンキャップを閉じて(開孔部を閉じて)内包物質の放出を止めることができる。
このように、本実施の形態に係る物質内包カーボンナノホーン複合体では、酸化開孔したカーボンナノホーンがpH環境で選択的に開閉するポリアミンキャップを有しているので、薬物等の内包物質の放出を制御できる(たとえば、徐放可能な)薬物伝送システム(DDS:Drug delivery system)等への応用が可能である。
実際、体内での生理的な環境がpH7.4であるのに対して、細胞の消化器官は、内部が酸性になっていることを考慮すると、周囲のpHが低くなった時に内部の有効成分を放出するようなナノホーンキャリアーのデザインが可能となる。
また、腫瘍局所において、個々のがん細胞にエンドサイトーシス経路で取り込まれた後に、リソソーム内の低pH環境(pH5)で応答させ、内部薬剤を選択的に放出させる等、ターゲッティング機能をもたせることもできる。
以下に実施例を示し、さらに詳しく本発明について例示説明する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。
【実施例1】
【0006】
(カーボンナノホーンの開孔処理)
カーボンナノホーンを、酸素ガス雰囲気下、570~580℃で10分間熱処理した。この時の、酸素の流量は、200ml/minとした。
(フラーレンのカーボンナノホーンへの導入)
得られた酸化開孔されたカーボンナノホーン(30mg)を、トルエン(40ml)中に分散させた。一方、酸化開孔したカーボンナノホーンに内包させる物質としてフラーレン(C60)を使用し、このC60(10mg)を、カーボンナノホーン/トルエン分散液に浸漬させ、十分攪拌した。その後、窒素雰囲気下で徐々にトルエン溶媒を蒸発させて乾燥させ、C60を内包したカーボンナノホーン複合体を作製した。得られたサンプルに対して、純酸素中で室温から1000℃までの範囲で熱重量分析(TGA)を行い、C60とカーボンナノホーンの燃焼温度の違いからC60の量を見積もった。
(ポリアミンキャップの作製)
60を内包したカーボンナノホーン複合体(20mg)とポリアミンの一種であるスペルミン(20mg)とを、C60をほとんど溶解させないTHF(テトラヒドロフラン)(15ml)中に分散させ、約24時間攪拌した。その後、フィルターを使ってろ過し、THF中に溶解しているスペルミンやカーボンナノホーンにしっかりと吸着していないスペルミンを取り除いた。フィルターに残ったスペルミンキャップをしたC60内包カーボンナノホーン複合体を、不活性ガス中で十分に乾燥させた。このサンプルに対し、ヘリウム雰囲気下で室温から600℃までの範囲で熱重量分析を行った。この条件では、C60もカーボンナノホーンも昇華及び分解がないので、スペルミンの吸着量が測定可能であり、その結果全重量の30%吸着していることが分かった。
(pH変化によるC60の選択的放出)
カーボンナノホーン複合体に内包されたC60の放出特性は、可視紫外吸収スペクトルによって、溶液中に溶け出したC60の吸収を測定し、得られたC60の吸収強度から溶液中のC60の濃度に変換することにより求めた。なお、この実験方法は、たとえば、J.Phys.Chem.B 109,17861(2005)に記載されている。
比較例として、トルエン溶液中にキャップをしていないC60内包カーボンナノホーン複合体を浸漬させた。するとC60内包カーボンナノホーン複合体内部からC60が急激に放出され、放出されたC60の量は、ほぼ2時間で、熱重量分析(TGA)で得られたC60内包量とほぼ等しくなり安定した(図1の「C60内包CNH」)。
それに対して、スペルミンキャップをつけたC60内包カーボンナノホーン複合体の場合は、トルエン溶液中に浸漬した後数分で、放出されたC60の量は、C60内包量の30%程度に達したが、その後ほとんど変化しなかった。しかしながら、トルエン溶液にトリフルオロ酢酸(CFCOOH)を徐々に添加し酸性度を上げるとC60の放出量が増加し、最終的にキャップのない場合と同じC60放出量になった(図1の「SPM C60内包CNH」)。このことから、溶液中の酸性度が増加することにより、選択的にスペルミンが脱離し、内部に残っているC60が放出したことが分かった。これは、スペルミンキャップが周囲の酸性度に応じて開閉するためと考えられる。
【実施例2】
【0007】
(カーボンナノホーンの開孔処理)
カーボンナノホーンを、酸素ガス雰囲気下、570~580℃で10分間熱処理した。この時の、酸素の流量は、200ml/minとした。
(シスプラチン(CDDP:抗癌剤)のカーボンナノホーンへの導入)
酸化開孔されたカーボンナノホーン(40mg)を、N,N-ジメチルホルムアミド(dimethylformamide)(DMF)(20ml)中に分散させた。それから酸化開孔したカーボンナノホーンに内包させるCDDPを、カーボンナノホーン/DMF分散液に浸漬させ、十分攪拌した後、窒素雰囲気下で徐々にDMF溶媒を蒸発させて乾燥させ、CDDPを内包したカーボンナノホーン複合体を作製した。得られたサンプルに対して、純酸素中で室温から1000℃までの範囲で熱重量分析(TGA)を行い、燃焼後の残留物量からCDDPの吸着量を見積もった。
(ポリアミンキャップの作製)
CDDPを内包したカーボンナノホーン複合体(20mg)とポリアミンの一種である1,4,8,11-テトラメチル(tetramethyl)-1,4,8,11-テトラアザサイクロテトラデカン(tetraazacyclotetradecane)(TMTACTD)(20mg)をCDDPをほとんど溶解させないヘキサン(15ml)中に分散させ、約24時間攪拌した。その後、フィルターを使ってろ過し、フィルターに残ったTMTACTDキャップをしたCDDP内包カーボンナノホーン複合体を、不活性ガス中で十分に乾燥させた。このサンプルに対し、酸素雰囲気下で室温から1000℃までの範囲で熱重量分析を行った。
(pH変化によるCDDPの選択的放出)
カーボンナノホーン複合体に内包されたCDDPの放出特性は、C60と同様に可視紫外吸収スペクトルによって、溶液中に溶け出したCDDPの吸収を測定し、測定結果を濃度に変換することにより求めた。
比較例としてpH7の生理食塩水中にキャップをしていないCDDP内包カーボンナノホーン複合体を浸漬させると、CDDPは徐々にカーボンナノホーン内部から放出され、約40時間で、飽和し、TGAで得られた内包量の7割に達した(図2の「CDDP内包CNH」)。
それに対して、TMTACTDでキャップをつけたCDDP内包カーボンナノホーンの場合、生理食塩水中に浸漬してから約50時間で、放出されたCDDPがCDDP内包量の30%程度に達し、その後飽和した。その後、CFCOOHを徐々に水溶液に添加し酸性度pH7からpH3程度にするとCDDPの放出量が増加するようになり、最終的にキャップのない場合とほぼ同じCDDP放出量になった(図2の「TMTATDCDDP内包CNH」表2)。この際、水溶液の酸性度をpH3にしてCDDP内包カーボンナノホーンからCDDPを一部放出させ、再びpH7に戻すとCDDPの放出速度が低下するのが確認された。
図面
【図1】
0
【図2】
1