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明細書 :ワイヤ状構造体、ワイヤ状構造体の製造方法、熱電変換素子、及びペルチェ素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5059695号 (P5059695)
公開番号 特開2009-302479 (P2009-302479A)
登録日 平成24年8月10日(2012.8.10)
発行日 平成24年10月24日(2012.10.24)
公開日 平成21年12月24日(2009.12.24)
発明の名称または考案の名称 ワイヤ状構造体、ワイヤ状構造体の製造方法、熱電変換素子、及びペルチェ素子
国際特許分類 H01L  35/24        (2006.01)
H01L  35/34        (2006.01)
H01L  35/14        (2006.01)
B82B   1/00        (2006.01)
B82B   3/00        (2006.01)
H02N  11/00        (2006.01)
FI H01L 35/24
H01L 35/34
H01L 35/14
B82B 1/00
B82B 3/00
H02N 11/00 A
請求項の数または発明の数 13
全頁数 13
出願番号 特願2008-158297 (P2008-158297)
出願日 平成20年6月17日(2008.6.17)
審査請求日 平成22年8月19日(2010.8.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】稲垣 孝治
【氏名】中條 善樹
個別代理人の代理人 【識別番号】110000578、【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
審査官 【審査官】羽鳥 友哉
参考文献・文献 特開2005-303300(JP,A)
特表2005-512931(JP,A)
国際公開第2005/123637(WO,A1)
調査した分野 H01L 35/14
H01L 35/24
H01L 35/34
B82B 1/00
B82B 3/00
H02N 11/00
特許請求の範囲 【請求項1】
(a)ビスマス原子と、
(b)電気双極子モーメントを有する陰イオンと、
(c)化学式1で表される有機化合物と、
を含むワイヤ状構造体。
【化1】
JP0005059695B2_000003t.gif
化学式1において、X1~X4は、それぞれ、O、S、Se、Teから成る群から選ばれる1種であり、R1~R4は、それぞれ、水素又は炭化水素である。
【請求項2】
(a)金属原子又は半金属原子と、
(b)電気双極子モーメントを有する陰イオンと、
(c)化学式1で表される有機化合物と、
を含み、
前記(a)及び前記(b)から成る塩と、前記(c)とを混合することにより製造されるワイヤ状構造体。
【化1】
JP0005059695B2_000004t.gif
化学式1において、X1~X4は、それぞれ、O、S、Se、Teから成る群から選ばれる1種であり、R1~R4は、それぞれ、水素又は炭化水素である。
【請求項3】
前記(b)は、含フッ素有機イオン、及びトリフルオロメタンスルホン酸イオンから成る群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のワイヤ状構造体。
【請求項4】
前記(c)は、含カルコゲン有機化合物、含硫黄有機化合物、及びチオフルバレン骨格を含む有機化合物から成る群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のワイヤ状構造体。
【請求項5】
(a)金属原子又は半金属原子と、
(b)電気双極子モーメントを有する陰イオンと、
(c)化学式1で表される有機化合物と、
を含むワイヤ状構造体の製造方法であって、
前記(a)及び前記(b)から成る塩と、前記(c)とを混合することを特徴とするイヤ状構造体の製造方法。
【化1】
JP0005059695B2_000005t.gif
化学式1において、X1~X4は、それぞれ、O、S、Se、Teから成る群から選ばれる1種であり、R1~R4は、それぞれ、水素又は炭化水素である。
【請求項6】
前記(b)は、含フッ素有機イオン、及びトリフルオロメタンスルホン酸イオンから成る群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項5に記載のワイヤ状構造体の製造方法。
【請求項7】
前記(c)は、含カルコゲン有機化合物、含硫黄有機化合物、及びチオフルバレン骨格を含む有機化合物から成る群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項5又は6に記載のワイヤ状構造体の製造方法。
【請求項8】
(a)金属原子又は半金属原子と、
(b)電気双極子モーメントを有する陰イオンと、
(c)化学式1で表される有機化合物と、
を含むワイヤ状構造体を用いた熱電変換素子。
【化1】
JP0005059695B2_000006t.gif
化学式1において、X1~X4は、それぞれ、O、S、Se、Teから成る群から選ばれる1種であり、R1~R4は、それぞれ、水素又は炭化水素である。
【請求項9】
前記(b)は、含フッ素有機イオン、及びトリフルオロメタンスルホン酸イオンから成る群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項8に記載の熱電変換素子。
【請求項10】
前記(c)は、含カルコゲン有機化合物、含硫黄有機化合物、及びチオフルバレン骨格を含む有機化合物から成る群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項8又は9に記載の熱電変換素子。
【請求項11】
(a)金属原子又は半金属原子と、
(b)電気双極子モーメントを有する陰イオンと、
(c)化学式1で表される有機化合物と、
を含むワイヤ状構造体を用いたペルチェ素子。
【化1】
JP0005059695B2_000007t.gif
化学式1において、X1~X4は、それぞれ、O、S、Se、Teから成る群から選ばれる1種であり、R1~R4は、それぞれ、水素又は炭化水素である。
【請求項12】
前記(b)は、含フッ素有機イオン、及びトリフルオロメタンスルホン酸イオンから成る群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項11に記載のペルチェ素子。
【請求項13】
前記(c)は、含カルコゲン有機化合物、含硫黄有機化合物、及びチオフルバレン骨格を含む有機化合物から成る群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項11又は12に記載のペルチェ素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、熱電変換素子やペルチェ素子等に適用できるワイヤ状構造体、その製造方法、熱電変換素子、及びペルチェ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ビスマス-テルル系材料に代表される従来の熱電変換材料は、バルク材料がほとんどであり、そのエネルギー変換効率は高々1%程度に過ぎない。期待されるアウトプットがそれほど大きくなく、且つ、騒音やメンテナンス頻度の少なさを重視するような製品(例えば、動力を用いない冷蔵機器や冷房機器の冷熱源)の場合には、このような熱電変換材料から成るペルチェ素子を用いる場合がある。
【0003】
しかし、車載用機器は高い冷熱、電力が要求されるため、エネルギー変換効率が低い従来の熱電変換材料を用いて車載用機器の熱電変換素子、更にはそれを用いた装置等を製造しようとすると、必然的に大型化してしまう。
【0004】
ところで、熱電変換材料の形態をワイヤ状構造体(ナノワイヤ)とすることで、図7に示すとおり、エネルギー変換効率が向上するとの報告がなされている(非特許文献1参照)。なお、図7におけるdwは、それぞれの形状における大きさ、即ち、バルク材の場合はその任意の一辺の寸法、量子井戸の場合は2次元シート状材料の厚み、ナノワイヤの場合はワイヤ一本の直径を意味する。
【0005】
熱電変換材料のワイヤ状構造体を製造する方法として、図8に示すように、内径が揃ったナノサイズの細孔を多数備えた多孔質アルミナの細孔中に、金属ビスマスの蒸気を真空下、毛細管現象を利用して注入し、細孔中でビスマスのワイヤ状構造体を形成する方法が開示されている(非特許文献2参照)。

【非特許文献1】Phys. Rev. B 1993, 47, 12727., Phys. Rev. B 1993, 47, 16631.
【非特許文献2】Phys. Rev. Lett. 2002, 88, 216801.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献2の技術では、細孔内を完全に貫通しているワイヤ状構造体の割合が少ない(欠陥が多い)ため、このワイヤ状構造体を用いて製造した熱電変換素子全体の電気抵抗が大きくなってしまう。
【0007】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、欠陥が少なく、熱電変換材料等として好適に使用できるワイヤ状構造体、その製造方法、熱電変換素子、及びペルチェ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のワイヤ状構造体は、(a)金属原子又は半金属原子と、(b)電気双極子モーメントを有する陰イオンと、(c)化学式1で表される有機化合物とを含む。化学式1は下記のものであり、化学式1において、X1~X4は、それぞれ、O、S、Se、Teから成る群から選ばれる1種であり、R1~R4は、それぞれ、水素又は炭化水素である。炭化水素は、鎖状であっても、環状であってもよい。
【0009】
【化1】
JP0005059695B2_000002t.gif

【0010】
本発明のワイヤ状構造体は、熱電変換材料として使用した場合、ワイヤ状の形態を有することにより、バルク状のものに比べて、エネルギー変換効率が高い(図7参照)。また、本発明のワイヤ状構造体は欠陥が少ないため、熱電変換材料として使用した場合、電気抵抗が小さい。よって、本発明のワイヤ状構造体を用いれば、優れた熱電変換素子を製造することができる。
【0011】
また、本発明のワイヤ状構造体は、その形態と、欠陥が少ないという特性を利用して、熱電変換材料以外の様々な用途にも用いることができる。
前記(a)としては、例えば、熱電変換材料として機能するものを広く用いることができ、例えば、ビスマス原子、シリコン原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、アンチモン原子、リン原子、アルミニウム原子、ガリウム原子等が挙げられる。
【0012】
前記(b)としては、例えば、含フッ素有機イオン、及びトリフルオロメタンスルホン酸イオンから成る群から選ばれる1種以上が挙げられる。また、前記(b)は、スルホン酸イオン、カルボン酸イオン、フェノラートイオンであってもよい。
【0013】
前記(c)としては、例えば、含カルコゲン有機化合物、含硫黄有機化合物、及びチオフルバレン骨格を含む有機化合物から成る群から選ばれる1種以上が挙げられる。特に、上記化学式1において、X1~X4がSであり、R1~R4が水素であるTTF(テトラチアフルバレン)が好ましい。
【0014】
本発明のワイヤ状構造体は、例えば、前記(a)((a)の陽イオン)及び前記(b)から成る塩と、前記(c)とを混合することにより製造することができる。この方法を用いることにより、欠陥の少ないワイヤ状構造体を得ることができる。
【0015】
本発明のワイヤ状構造体を用いて、熱電変換素子(例えばペルチェ素子)を製造することができる。この熱電変換素子は、上述したように優れた特性を有するワイヤ状構造体を用いているので、優れた熱電変換特性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
1.ワイヤ状構造体の製造
以下のようにして、ワイヤ状構造体を製造した。20mLシュレンクチューブ内にトリフルオロメタンスルホン酸ビスマス(III)69.4mgを入れ、シュレンクチューブ内を窒素で置換し、脱気・脱水アセトニトリル10.6mLを加え、室温で攪拌しながら、トリフルオロメタンスルホン酸ビスマス(III)を溶解させた。この溶液に窒素雰囲気下でTTF97.3mgを攪拌しながら加えると、溶液の色が瞬時に濃い茶色となった。この溶液を引き続き室温で72時間攪拌し、攪拌後の溶液を室温で乾燥させて、ワイヤ状構造体を得た。なお、図1に、上記の製造方法の概要を示す。
2.ワイヤ状構造体の評価
上記のようにして製造したワイヤ状構造体を、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて観察した。そのTEM写真を図2に示す。この図2から明らかなように、直径が約140nmのワイヤ状構造体が製造できていることが確認できた。
【0017】
また、製造したワイヤ状構造体の組成を、EDX(エネルギー分散型蛍光X線分析装置)を用いて分析した。その結果を図3に示す。図3から明らかなように、ワイヤ状構造体は、C、Bi、S、O、Clを含むことが確認できた。
【0018】
ワイヤ状構造体は、以下のようにして生成すると推測できる。すなわち、図4(a)に示すように、Bi原子1と、反応剤として機能するTTF3とが結合し、さらに、TTF3同士の相互作用によって、図4(b)及び図5に示すように、自己組織的にワイヤ状構造体5を形成すると推測できる。
【0019】
また、後述する比較例で示すように、ビスマス塩を構成する陰イオンが、電気双極子モーメントを有さない塩化物イオンである場合は、ワイヤ状構造体が全く形成されない。このことから、図5に示すように、陰イオン同士の静電的相互作用がワイヤ状構造体の安定化に寄与していると推測できる。
3.熱電変換素子の製造
上記のようにして製造したワイヤ状構造体5を用いて、図6に示す熱電変換素子7を製造した。熱電変換素子7は、一対の電極9、11と、それらを接続する複数のワイヤ状構造体5とから構成される。電極9、11は、例えば、負荷13を介して配線15により接続することができる。この場合、図6に示すように、電極9を加熱側とし、電極11を放熱側とすると、矢印で示す方向に電流が流れる(n型の場合)。
4.比較例
20mLシュレンクチューブ内に塩化ビスマス(III)31.6mgを入れ、シュレンクチューブ内を窒素で置換し、脱気・脱水アセトニトリル10mLを加え、室温で攪拌しながら、塩化ビスマス(III)を溶解させた。この溶液に窒素雰囲気下でTTF90.1mgを攪拌しながら加え、得られた溶液を引き続き室温で72時間攪拌した。攪拌後の溶液を室温で乾燥させたものをTEMで観察したが、ワイヤ状構造体は確認されなかった。
【0020】
この結果から、ビスマス塩を構成する陰イオンが、電気双極子モーメントを有さない塩化物イオンの場合は、ワイヤ状構造体が生成しないことが確認できた。
5.ワイヤ状構造体及び熱電変換素子が奏する効果
本実施形態で製造したワイヤ状構造体は、ワイヤ状の形態を有することにより、バルク状のものに比べて、エネルギー変換効率が高い(図7参照)。また、本実施形態で製造したワイヤ状構造体は、上述したように、自己組織的に形成されると考えられるため、欠陥が少なく、電気抵抗が小さい。よって、このワイヤ状構造体を用いて製造した熱電変換素子は、エネルギー変換効率が高い。
【0021】
尚、本発明は前記実施形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、ワイヤ状構造体を製造するための原料は他のものであってもよい。すなわち、ビスマス原子の代わりに、シリコン原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、アンチモン原子、リン原子、アルミニウム原子、ガリウム原子等を用いてもよいし、TTFの代わりに、上記化学式1で表される他の種々の物質を用いてもよいし、金属原子とともに塩を構成する陰イオンとして、電気双極子モーメントを有する他の種々の陰イオンを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ワイヤ状構造体を製造する方法を表す説明図である。
【図2】ワイヤ状構造体の形態を表すTEM写真である。
【図3】ワイヤ状構造体の組成を表すEDXチャートである。
【図4】ワイヤ状構造体が生成する過程を表す説明図である。
【図5】ワイヤ状構造体の構造を表す説明図である。
【図6】熱電変換素子の構成を表す説明図である。
【図7】熱電変換材料の形態とエネルギー変換効率との関係を表すグラフである。
【図8】ワイヤ状構造体を製造する従来の方法を表す説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1・・・Bi原子、3・・・TTF、5・・・ワイヤ状構造体、7・・・熱電変換素子、
9、11・・・電極、13・・・負荷、15・・・配線
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7