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明細書 :心疾患予防治療剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5596317号 (P5596317)
公開番号 特開2011-037798 (P2011-037798A)
登録日 平成26年8月15日(2014.8.15)
発行日 平成26年9月24日(2014.9.24)
公開日 平成23年2月24日(2011.2.24)
発明の名称または考案の名称 心疾患予防治療剤
国際特許分類 A61K  31/352       (2006.01)
A61P   9/00        (2006.01)
A61P   9/04        (2006.01)
C07D 311/30        (2006.01)
FI A61K 31/352
A61P 9/00
A61P 9/04
C07D 311/30
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願2009-188814 (P2009-188814)
出願日 平成21年8月18日(2009.8.18)
審査請求日 平成24年8月17日(2012.8.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】507219686
【氏名又は名称】静岡県公立大学法人
【識別番号】509128719
【氏名又は名称】長谷川 浩二
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】507186687
【氏名又は名称】株式会社セラバリューズ
発明者または考案者 【氏名】森本 達也
【氏名】長谷川 浩二
【氏名】村上 明
【氏名】福田 宏之
【氏名】高橋 健治
個別代理人の代理人 【識別番号】110000084、【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
【識別番号】100068700、【弁理士】、【氏名又は名称】有賀 三幸
【識別番号】100077562、【弁理士】、【氏名又は名称】高野 登志雄
【識別番号】100096736、【弁理士】、【氏名又は名称】中嶋 俊夫
【識別番号】100117156、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 正樹
【識別番号】100111028、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 博人
審査官 【審査官】六笠 紀子
参考文献・文献 特表2008-546845(JP,A)
特表2008-513350(JP,A)
特表2008-513349(JP,A)
特開2009-137948(JP,A)
特開2004-083417(JP,A)
医学のあゆみ,2007年,Vol.223,No.13,p.1224-1230
応用薬理,2009年 8月18日,Vol.77,No.1/2,p.56,P-19-1
European Journal of Pharmacology,2009年 3月,Vol.615,p.55-60
調査した分野 A61K 31/33-33/44
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPI
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
ノビレチンを有効成分とする心筋細胞肥大を伴う心不全(心臓血管疾患を原因とする心不全を除く)治療剤(飲食品を除く)
【請求項2】
ノビレチンの投与量が、0.1~1000mg/日である請求項1記載の治療剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、心不全に代表される心疾患予防治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
心不全は増加しつつある虚血性心疾患・心筋梗塞、高血圧性心疾患をはじめ、あらゆる心臓病(心疾患)の最終像であり、この問題を解決することは社会的、臨床的に極めて重要である。このうち、虚血性心疾患は、冠動脈硬化症が主な原因とされ、高コレステロール血症、高血圧症等の危険因子を防止すること等を目的とする種々の薬物療法が開発されている。
【0003】
しかしながら、虚血性心疾患などで一度心筋細胞が脱落すると、心筋細胞はほとんど再生することがないため、残存心筋細胞に負荷がかかる。残存心筋細胞は肥大にて対応するが、これも限界のある代償機構で、最終的には心不全へと移行する。かかる心不全に関しては、虚血性心疾患に比べて病態も複雑であり、強心剤、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体拮抗剤、血管拡張剤等が用いられるが、十分な効果は得られていないのが現状である。例えばACE阻害剤やアンジオテンシン受容体拮抗剤によるラット心筋梗塞後の心収縮能の改善は3割程度である(非特許文献1)。
また、心不全の発症、進展には上記のように心筋細胞肥大が重要な役割を果していることが知られている(非特許文献2)。
【0004】
一方、ノビレチンは、漢方で使われる陳皮(ちんぴ)を始め、柑橘類の果皮に含まれるポリメトキシフラボノイドである。陳皮は、血圧降下作用もあり、漢方では芳香性健胃、鎮咳薬として、食欲不振、嘔吐、疼痛などに対して用いられる。
ノビレチンは、様々な生理作用を有しており、がんに対しては、発がん抑制、がん細胞増殖抑制作用を持つ。シクロオキシゲナーゼ(COX)抑制やプロスタグランジン(PG)抑制作用を持ち、抗炎症作用を有する。さらには、記憶障害改善作用や脳コリン作動性神経の変性抑制など、脳神経系に対する作用を持つ。また、PPAR活性化作用なども知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】国際公開2006/077912号パンフレット
【0006】

【非特許文献1】Liu YH, Yang XP, Sharov VG, Nass O, Sabbah HN, Peterson E, Carretero OA. J Clin Invest., 99, 1926-1935 (1997)
【非特許文献2】Kannel WB, Castelli WP, Gordon T. Cholesterol in the prediction of atherosclerotic disease. New perspectives based on the Framingham study. Ann Intern Med. 90,85-91 (1979)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、心不全の発症、進展を防止できる新たな心疾患予防治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は、種々の植物由来の成分を対象として、心筋細胞肥大抑制作用を有する物質を探索したところ、意外にもノビレチンが強い心筋細胞肥大抑制作用を有し、また、肥大反応遺伝子であるエンドセリン-1(ET-1)の転写活性の亢進も有意に抑制することから、新たな心疾患予防治療剤として有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、ノビレチンを有効成分とする心疾患予防治療剤、特に心不全予防治療剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の心疾患予防治療剤は、柑橘類から得られる成分であり、安全性が高いことが知られている。
これまでの心不全に対する薬物療法は ACE阻害薬など、いくつかの限られた薬剤の有効性が確認され臨床現場で使用されているものの、心不全の根本的解決までには至っていない。安価で安全性が確認されたノビレチンを用いた心不全治療が臨床応用されれば、医療費の削減と共に心不全の根本的な治療法が確立されることが期待され、死亡原因の上位に位置する心臓病死の減少、心臓病患者のQOLの向上にも貢献することができると考える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】フェニレフリンによる心筋細胞の肥大に対するノビレチンの効果を示す図である。
【図2】フェニレフリンによる心筋細胞の肥大に対するノビレチンの効果を示す図である。
【図3】フェニレフリンによるエンドセリン-1の転写活性の亢進に対するノビレチンの効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の心疾患予防治療剤の有効成分はノビレチンである。ノビレチンは、陳皮、温州ミカン、シークァーサーに代表される柑橘類に含まれていることが知られているポリメトキシフラボノイドであり、下記の構造を有する。

【0013】
【化1】
JP0005596317B2_000002t.gif

【0014】
ノビレチンは、油性成分であることから、柑橘類から有機溶媒で抽出することができる。また、柑橘類から搾汁してオイル成分を得、当該オイル成分から、蒸留、クロマトグラフィー等で分離することができる。

【0015】
ノビレチンは、上記のように柑橘類から分離して用いることができるが、ノビレチンを含有する柑橘オイルをそのまま用いることもできる。

【0016】
後記実施例に示すように、ノビレチンは、フェニレフリンによる心筋細胞の肥大を顕著に抑制する作用、及びフェニレフリンによるエンドセリン-1の転写活性の亢進を有意に抑制する。従って、ノビレチンは、心不全の発症、進展に重要な役割をすることが知られている心筋細胞の肥大を抑制し、新たな心疾患予防治療剤、特に心不全予防治療剤として有用である。適応となる心不全としては、うっ血性心不全、すなわち、急性心不全、慢性心不全、心筋梗塞後の心不全等が挙げられる。

【0017】
本発明の心疾患予防治療剤は、医薬品だけでなく、医薬部外品、特定保健用食品、機能性食品(経口サプリメント、健康食品、栄養補助食品、病院食、療養食など)として用いることができる。

【0018】
本発明の医薬は、ノビレチンに、必要に応じて薬学的担体を配合し、各種の投与形態とすることができ、該形態としては、例えば、経口剤、注射剤、坐剤、軟膏剤、貼付剤等が挙げられるが、経口剤が好ましい。経口剤としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤等が挙げられる。

【0019】
薬学的担体は、製剤素材として慣用の各種有機或いは無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤;液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等として配合される。また、必要に応じて防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、安定化剤等の製剤添加物を用いることもできる。

【0020】
経口用固形製剤を調製する場合は、ノビレチンに賦形剤、必要に応じて、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤等を加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。

【0021】
経口用液体製剤を調製する場合は、ノビレチンに矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯臭剤等を加えて常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を製造することができる。

【0022】
注射剤を調製する場合は、ノビレチンにpH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下、筋肉内及び静脈内用注射剤を製造することができる。

【0023】
坐剤を調製する場合は、ノビレチンに当業界において公知の製剤用担体、例えば、ポリエチレングリコール、ラノリン、カカオ脂、脂肪酸トリグリセリド等を、さらに必要に応じてTween80(登録商標)のような界面活性剤等を加えた後、常法により製造することができる。

【0024】
軟膏剤を調製する場合は、ノビレチンに通常使用される基剤、安定剤、湿潤剤、保存剤等が必要に応じて配合され、常法により混合、製剤化される。

【0025】
貼付剤を調製する場合は、通常の支持体に前記軟膏、クリーム、ゲル、ペースト等を常法により塗布すればよい。

【0026】
前記の医薬品や機能性食品中に配合されるべきノビレチンの量は、これを適用すべき患者の症状により、或いはその剤形等により一定ではないが、一般に投与単位形態あたり、経口剤では約0.05~1000mg、注射剤では約0.01~500mg、坐剤では約1~1000mg程度である。
また、前記投与形態を有する医薬の1日あたりの投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり一概には決定できないが、通常成人(体重60kg)1日あたり約0.05~5000mg程度であり、0.1~1000mgが好ましく、これを1日1回又は2~3回程度に分けて投与するのが好ましい。
【実施例】
【0027】
以下に参考例、実施例を示し、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0028】
参考例
新鮮な温州ミカン(10kg)を搾汁機で処理することによりコールドプレスオイル(150mL)を得る。これをロータリーエバポレーターで、80℃下、減圧濃縮すると主成分であるd-リモネンが90%以上除去できる。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Wako-gel C-200など)にかけ、酢酸エチル/n-ヘキサン系の溶出溶媒で分画し、さらに薄層クロマトグラフィー(酢酸エチル:n-ヘキサン=1:1)、逆相系HPLC(70%メタノール/水)で精製すると、純度98%以上のノビレチンが約80mg得られる。
【実施例】
【0029】
実施例1
(1)方法
ラット初代新生仔培養心筋細胞に対して、フェニレフリン刺激によって心筋細胞肥大を誘導する系にノビレチンを投与し、その効果を検討した。刺激48時間後、心筋細胞をb-MHCに対する抗体で免疫染色し、サルコメア構造の観察と細胞面積の測定、さらには、トランジェントトランスフェクションを行い、エンドセリン-1(ET-1)プロモーター活性を測定した。
(2)結果
細胞面積ならびに、肥大反応遺伝子であるエンドセリン-1(ET-1)の転写活性をルシフェラーゼ活性にて測定した結果を示す。図1~3から明らかなように、フェニレフリンによる心筋細胞肥大をノビレチンが抑制した。さらに、肥大反応遺伝子であるエンドセリン-1(ET-1)の転写活性の亢進をノビレチンが有意に抑制した。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図1】
2