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明細書 :無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5761809号 (P5761809)
公開番号 特開2013-207383 (P2013-207383A)
登録日 平成27年6月19日(2015.6.19)
発行日 平成27年8月12日(2015.8.12)
公開日 平成25年10月7日(2013.10.7)
発明の名称または考案の名称 無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法
国際特許分類 H04W  84/12        (2009.01)
H04W  74/08        (2009.01)
H04W  16/26        (2009.01)
FI H04W 84/12
H04W 74/08
H04W 16/26
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2012-071849 (P2012-071849)
出願日 平成24年3月27日(2012.3.27)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 特許法第30条第1項適用、電子情報通信学会技術研究報告 第111巻第295号(2011年11月10日) 電子情報通信学会発行 第7~12ページに発表
審査請求日 平成26年3月3日(2014.3.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】大槻 暢朗
【氏名】杉山 隆利
【氏名】守倉 正博
【氏名】中戸 裕基
個別代理人の代理人 【識別番号】110001634、【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
審査官 【審査官】古市 徹
参考文献・文献 特開2013-162423(JP,A)
特開2013-207384(JP,A)
特開2006-303802(JP,A)
特開2006-246002(JP,A)
国際公開第2005/067213(WO,A1)
調査した分野 H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
特許請求の範囲 【請求項1】
アクセスポイントと、複数の端末を含み、前記複数の端末のうち、いずれかの端末が中継局として動作する無線通信システムであって、
前記アクセスポイントは、
前記複数の端末の各々を、前記中継局として動作する端末を含む第1の仮想グループと、前記中継局として動作する端末を含まない1つ以上の第2の仮想グループに分割するために、前記第1の仮想グループまたは1つ以上の第2の仮想グループそれぞれに属する端末識別情報と、該端末識別情報を持つ前記端末の送信期間及び受信期間を特定する情報とを関係付けた仮想グループ設定情報を含む制御パケットをブロードキャストする制御パケット送信手段を備え、
前記端末は、
前記制御パケットを受信する制御パケット受信手段と、
自己の端末識別情報と一致する前記制御パケットに含まれる前記端末識別情報に関係付けられた前記送信期間において、前記アクセスポイントにデータを送信し、前記受信期間において、前記アクセスポイントから送信されたデータを受信する通信手段とを備え、
前記制御パケット送信手段は、前記第1の仮想グループに属する前記端末の前記送信期間及び受信期間を、前記1つ以上の第2の仮想グループに属する前記端末の送信期間及び受信期間より長く設定することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記通信手段は、前記送信期間外であっても前記送信期間中に開始した送信が完了していない場合は前記送信期間中の送信を最後まで継続することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
アクセスポイントと、複数の端末を含み、前記複数の端末のうち、いずれかの端末が中継局として動作する無線通信システムにおけるアクセスポイントとして動作する無線通信装置であって、
前記複数の端末の各々を、前記中継局として動作する端末を含む第1の仮想グループと、前記中継局として動作する端末を含まない1つ以上の第2の仮想グループに分割するために、前記第1の仮想グループまたは1つ以上の第2の仮想グループそれぞれに属する端末識別情報と、該端末識別情報を持つ前記端末の送信期間及び受信期間を特定する情報とを関係付けた仮想グループ設定情報を含む制御パケットをブロードキャストする制御パケット送信手段を備え、
前記制御パケット送信手段は、前記第1の仮想グループに属する前記端末の前記送信期間及び受信期間を、前記1つ以上の第2の仮想グループに属する前記端末の送信期間及び受信期間より長く設定することを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
アクセスポイントと、複数の端末を含み、前記複数の端末のうち、いずれかの端末が中継局として動作する無線通信システムが行う無線通信方法であって、
前記アクセスポイントが、前記複数の端末の各々を、前記中継局として動作する端末を含む第1の仮想グループと、前記中継局として動作する端末を含まない1つ以上の第2の仮想グループに分割するために、前記第1の仮想グループまたは1つ以上の第2の仮想グループそれぞれに属する端末識別情報と、該端末識別情報を持つ前記端末の送信期間及び受信期間を特定する情報とを関係付けた仮想グループ設定情報を含む制御パケットをブロードキャストする制御パケット送信ステップと、
前記端末が、前記制御パケットを受信する制御パケット受信ステップと、
前記端末が、自己の端末識別情報と一致する前記制御パケットに含まれる前記端末識別情報に関係付けられた送信期間において、前記アクセスポイントにデータを送信し、前記受信期間において、前記アクセスポイントから送信されたデータを受信する通信ステップとを有し、
前記制御パケット送信ステップでは、前記第1の仮想グループに属する前記端末の前記送信期間及び受信期間を、前記1つ以上の第2の仮想グループに属する前記端末の送信期間及び受信期間より長く設定することを特徴とする無線通信方法。
【請求項5】
前記通信ステップでは、前記送信期間外であっても前記送信期間中に開始した送信が完了していない場合は前記送信期間中の送信を最後まで継続することを特徴とする請求項4に記載の無線通信方法。
【請求項6】
アクセスポイントと、複数の端末を含み、前記複数の端末のうち、いずれかの端末が中継局として動作する無線通信システムにおけるアクセスポイントとして動作する無線通信装置が行う無線通信方法であって、
前記複数の端末の各々を、前記中継局として動作する端末を含む第1の仮想グループと、前記中継局として動作する端末を含まない1つ以上の第2の仮想グループに分割するために、前記第1の仮想グループまたは1つ以上の第2の仮想グループそれぞれに属する端末識別情報と、該端末識別情報を持つ前記端末の送信期間及び受信期間を特定する情報とを関係付けた仮想グループ設定情報を含む制御パケットをブロードキャストする制御パケット送信ステップを備え、
前記制御パケット送信ステップでは、前記第1の仮想グループに属する前記端末の前記送信期間及び受信期間を、前記1つ以上の第2の仮想グループに属する前記端末の送信期間及び受信期間より長く設定することを特徴とする無線通信方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LAN(Local Area Network)等の無線通信システムにおいてパケットの衝突回避を行う無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線LANによるアクセスは、無線LAN端末がアクセスポイント(Access Point;AP)と直接通信する1ホップ(インフラストラクチャ・モード)が主に用いられている。しかし、電波が壁や床などで反射して通信品質が不安定になる場所や障害物により電波の届かない場所があり、広い範囲で安定した通信を行うためにはアクセスポイントからの信号を安定して受信できる場所に中継局(Relay Station;RS)を導入することが有効である。
【0003】
しかし、中継局を導入することで伝送回数が増加するため、スループットの低下や遅延時間の増大が問題となる。この問題に対して、無線LAN端末及び中継局のMAC(Media Access Control)層とネットワーク層の中間層にネットワークコーディング(Network Coding;NC)方式を実装し、それらの無線LAN端末並びに中継局でマルチホップネットワークを構成することで、システムスループットを向上させる取り組みがなされている。このとき、無線LANシステムにおいてアクセスポイントの近くにありアクセスポイントと安定して通信できる状態にある無線LAN端末は、中継局を介することなく直接アクセスポイントと通信を行なわれる。このようなホップ数の異なる無線LAN端末の混在するNC方式を用いた無線LANシステムが存在する。
【0004】
無線LANの特性を大きく劣化させる要因の一つに無線局の同時送信による衝突が挙げられる。IEEE802.11規格ではCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance;搬送波感知多重アクセス/衝突回避方式)による自律分散制御が行われている。CSMA/CAではそれぞれの無線LAN端末がキャリアセンスにより他の無線LAN端末の送信状況を把握し、送信タイミングを自律的に制御し送信タイミングをずらすことで、衝突確率を減少させている。
【0005】
しかしながら、無線LANで用いられるCSMA/CAプロトコルでは、無線局の導入等により無線局数が増加すると、バックオフアルゴリズムにより同じバックオフ時間を設ける局が複数存在する確率が高くなり、無線局の同時送信による衝突の確率が増加しシステムのスループット特性劣化の要因となる。この影響を少なくするためには、バックオフアルゴリズムにより競合する無線局数を減らすことが有効である。すなわち、無線局を仮想的にグループ化し、仮想グループごとに通信時間を割り当てることで、同時に競合する無線局数を減らすことができる(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
非特許文献1では、チャネルをアイドル区間とビジー区間の対からなる仮想グループに区切り、無線LAN端末が自律的に仮想グループサイクル数および競合に参加する仮想グループを決定するDCF/VG(Distributed Coordination Function with Virtual Group)方式が提案されている。ここでは、端末において衝突確率を計測し、理論的にスループットを最大化する衝突確率と随時比較しながら仮想グループ内でのSTA数(端末数)を調整する。アイドル区間とビジー区間の対を一つの仮想グループとし、連続するいくつかの仮想グループのうち一つの仮想グループでのみ競合が許可される。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】S.M. Kim, Y.J. Cho, “Performance Evaluation of IEEE 802.11 Distributed Coordination Function with Virtual Group," IEICE Trans. Commun., vol.E88-B, no.12, pp.4625-4635, Dec. 2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の方式は、全ての無線局が同等の送信権で良いという前提であれば利用可能であるが、特定の無線局に高い送信権を与える必要がある場合には利用できない。例えば、上述した中継局を導入し、高い送信権を与える必要がある中継局を利用する無線LAN端末と利用しない無線LAN端末とが混在する環境においては、利用できないという問題がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、中継動作に伴う伝送効率の低下を抑え、伝送容量の不公平が生じないようにする無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、アクセスポイントと、複数の端末を含み、前記複数の端末のうち、いずれかの端末が中継局として動作する無線通信システムであって、前記アクセスポイントは、前記複数の端末の各々を、前記中継局として動作する端末を含む第1の仮想グループと、前記中継局として動作する端末を含まない1つ以上の第2の仮想グループに分割するために、前記第1の仮想グループまたは1つ以上の第2の仮想グループそれぞれに属する端末識別情報と、該端末識別情報を持つ前記端末の通信期間を特定する情報とを関係付けた仮想グループ設定情報を含む制御パケットをブロードキャストする制御パケット送信手段を備え、前記端末は、前記制御パケットを受信する制御パケット受信手段と、自己の端末識別情報と一致する前記制御パケットに含まれる前記端末識別情報に関係付けられた前記通信期間において、前記アクセスポイントとの間で通信を行う通信手段とを備え、前記制御パケット送信手段は、前記第1の仮想グループに属する前記端末の前記通信期間を、前記1つ以上の第2の仮想グループに属する前記端末の通信期間より長く設定することを特徴とする。
【0011】
本発明は、前記通信手段が、前記通信期間外であっても前記通信期間中に開始した通信が完了していない場合は前記通信期間中の通信を最後まで継続することを特徴とする。
【0012】
本発明は、アクセスポイントと、複数の端末を含み、前記複数の端末のうち、いずれかの端末が中継局として動作する無線通信システムにおけるアクセスポイントとして動作する無線通信装置であって、前記複数の端末の各々を、前記中継局として動作する端末を含む第1の仮想グループと、前記中継局として動作する端末を含まない1つ以上の第2の仮想グループに分割するために、前記第1の仮想グループまたは1つ以上の第2の仮想グループそれぞれに属する端末識別情報と、該端末識別情報を持つ前記端末の通信期間を特定する情報とを関係付けた仮想グループ設定情報を含む制御パケットをブロードキャストする制御パケット送信手段を備え、前記制御パケット送信手段は、前記第1の仮想グループに属する前記端末の前記通信期間を、前記1つ以上の第2の仮想グループに属する前記端末の通信期間より長く設定することを特徴とする。
【0013】
本発明は、アクセスポイントと、複数の端末を含み、前記複数の端末のうち、いずれかの端末が中継局として動作する無線通信システムが行う無線通信方法であって、前記アクセスポイントが、前記複数の端末の各々を、前記中継局として動作する端末を含む第1の仮想グループと、前記中継局として動作する端末を含まない1つ以上の第2の仮想グループに分割するために、前記第1の仮想グループまたは1つ以上の第2の仮想グループそれぞれに属する端末識別情報と、該端末識別情報を持つ前記端末の通信期間を特定する情報とを関係付けた仮想グループ設定情報を含む制御パケットをブロードキャストする制御パケット送信ステップと、前記端末が、前記制御パケットを受信する制御パケット受信ステップと、前記端末が、自己の端末識別情報と一致する前記制御パケットに含まれる前記端末識別情報に関係付けられた前記通信期間において、前記アクセスポイントとの間で通信を行う通信ステップとを有し、前記制御パケット送信ステップでは、前記第1の仮想グループに属する前記端末の前記通信期間を、前記1つ以上の第2の仮想グループに属する前記端末の通信期間より長く設定することを特徴とする。
【0014】
本発明は、前記通信ステップでは、前記通信期間外であっても前記通信期間中に開始した通信が完了していない場合は前記通信期間中の通信を最後まで継続することを特徴とする。
【0015】
本発明は、アクセスポイントと、複数の端末を含み、前記複数の端末のうち、いずれかの端末が中継局として動作する無線通信システムにおけるアクセスポイントとして動作する無線通信装置が行う無線通信方法であって、前記複数の端末の各々を、前記中継局として動作する端末を含む第1の仮想グループと、前記中継局として動作する端末を含まない1つ以上の第2の仮想グループに分割するために、前記第1の仮想グループまたは1つ以上の第2の仮想グループそれぞれに属する端末識別情報と、該端末識別情報を持つ前記端末の通信期間を特定する情報とを関係付けた仮想グループ設定情報を含む制御パケットをブロードキャストする制御パケット送信ステップを備え、前記制御パケット送信ステップでは、前記第1の仮想グループに属する前記端末の前記通信期間を、前記1つ以上の第2の仮想グループに属する前記端末の通信期間より長く設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、中継局を含む仮想グループに対して、中継動作に伴う伝送効率の低下を抑え、伝送容量の不公平が生じないようにすることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態による無線LANシステムの構成を示す図である。 である。
【図2】当該無線LANシステムが用いている周波数チャネルにおける時間割当て構成を示す図である。
【図3】仮想グループ化する際に、図1に示すアクセスポイントAPが各端末に送信する制御パケットのフォーマットを示す説明図である。
【図4】各端末が送信を許可された期間を超えて送信を行うことを防ぐための条件を示す図である。
【図5】各端末が送信を許可された期間を超えて送信を行うことを防ぐための条件を示す図である。
【図6】各端末が送信を許可された期間を超えて送信を行うことを防ぐための条件を示す図である。
【図7】第1の仮想グループ(仮想グループX)が中継局を介してアクセスポイントと接続され、第2の仮想グループ(仮想グループY)が直接アクセスポイントと接続されている場合の構成を示す図である。
【図8】アクセスポイント(AP)と中継局(RS)を仮想グループX、3台の端末(STA)を仮想グループY、他の3台の端末(STA)を仮想グループZと3つの仮想グループに分割した場合の構成を示す図である。
【図9】単方向保証スループット特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態による無線LANシステムを説明する。図1は同実施形態による無線LANシステムの構成を示す図である。無線LANシステムは、アクセスポイントAPと、アクセスポイントAPに接続する15台の無線LAN端末(以下、単に端末と称する)STA1~STA15とによって構成する。各端末は、仮想グループを構成している。図1に示す例では、4つの仮想グループVG1~VG4に仮想グループ化した例を示している。仮想グループVG1には、端末STA1と端末STA2が属する。仮想グループVG2には、端末STA3と端末STA4が属する。仮想グループVG3には、端末STA5、端末STA6、端末STA7、端末STA8、端末STA9、端末STA10、端末STA11が属する。仮想グループVG4には、端末STA12、端末STA13、端末STA14、端末STA15が属する。

【0019】
図2は、当該無線LANシステムにおいて使用している周波数チャネルの時間割当て構成を示す図である。時間割当て構成は、図2に示すように、アクセスポイントAP及び4つの仮想グループ(図2においては2つの仮想グループを例示している)それぞれに対応する送信区間と受信区間が設けられ、それぞれの仮想グループに属する端末は、対応する送信区間においてデータを送信し、対応する受信区間においてデータを受信する。

【0020】
図3は、仮想グループ化する際に、図1に示すアクセスポイントAPが各端末に送信する制御パケットのフォーマットを示す図である。制御パケットは、「ヘッダ」、「VG数」、「VG周期」、複数の「VG設定内容」のフィールドを有している。VG数は、LAN内で設定する仮想グループの数であり、図1に示す例は、「4」となる。VG周期は、全ての仮想グループの送受信期間が終了する期間長である。VG設定内容は、さらに、「VGアドレス」、「送信開始時間」、「送信終了時間」、「受信開始時間」、「受信終了時間」のフィールドを有している。VGアドレスは、仮想グループを一意に特定するためのアドレスである。送信開始時間、送信終了時間は、対で対象の仮想グループの送信期間を定めた時間である。受信開始時間、受信終了時間は、対で対象の仮想グループの受信期間を定める時間である。VG設定内容は、仮想グループの数と同数のフィールド有し、図1に示す例では、4つのVG設定内容が連なることになる。

【0021】
次に、図1に示す無線LANシステムの動作を説明する。まず、アクセスポイントAPは、仮想グループ化のための制御パケットをブロードキャストする。この制御パケット(図3参照)を受信した各端末は、その内容に従い自身の送信期間、受信期間を決定するために、自局のVGアドレスと一致する部分の送受信期間を読み取り、自局の動作を決定する。これにより、仮想グループ周期内の自局の送信期間においては通常通りCSMA/CAによるパケット送信が許可されることになる。

【0022】
受信期間においてはパケット送信は禁止されるが、端末は、自局宛てのパケットが送信される可能性があるため受信モードに入る。それ以外の期間は自局に関係のない通信が行われる期間であるため、スリープモードに入っても良い。

【0023】
また、各端末が送信を許可された期間を超えて送信を行うことを防ぐため、以下の(1)~(3)の条件を設ける。これにより他の仮想グループの送信期間への干渉を無くすことができる。図4~図6は、各端末が送信を許可された期間を超えて送信を行うことを防ぐための条件を示す図である。

【0024】
(1)パケット送信開始のタイミングで、パケット長+SIFS長+ACK長(送信時間長)が送信期間内に収まる場合は送信を開始し、収まらない場合は送信を中止しスリープモードに移行する(図4参照)。隠れ端末の問題がなく、システムスループット向上を優先したい場合は、送信時間長が送信期間内に収まらない場合においても、送信権を送信期間内に獲得すれば送信を開始してもよい。
(2)バックオフ中に送信期間が終了した場合、バックオフカウンタを保持し、次の期間が自身の受信期間であれば受信モードに移行し、そうでなければスリープモードに移行する(図5参照)。
(3)IFS開始のタイミングで送信期間を超過する場合、次の期間が自身の受信期間であれば受信モードに移行し、そうでなければスリープモードに移行する(図6参照)。

【0025】
図1に示す無線LANシステムでは、各仮想グループを構成する端末に応じて各仮想グループの送信区間および受信区間を制御することにある。すなわち、中継局を含む仮想グループと、中継局を含まない仮想グループがあるとき、中継局を含む仮想グループは、中継動作に伴う伝送効率の低下が生じるため、他方の仮想グループと同等の送受信区間長を割り当てたとすると、中継局が含まれるグループに所属する端末は、中継局が含まれないグループに所属する端末と比べて伝送容量が不足し、不公平が生じる。したがって、かかる伝送容量の不公平が生じないように仮想グループごとの送信区間および受信区間を制御する。

【0026】
次に、具体例を挙げてアクセス制御動作を説明する。図7は、第1の仮想グループ(仮想グループX)が中継局(RS)を介してアクセスポイントと接続され、第2の仮想グループ(仮想グループY)が直接アクセスポイントと接続されている場合の構成を示す図である。図1に示す端末STA1~STA15のいずれかが中継局(RS)として動作する。これらの仮想グループが定められた周期で交互に通信を行う。仮想グループXにおいて、複数台の端末(STA)がある場合、アクセスポイント(AP)と中継局(RS)に高い送信権を与える必要がある。ここではAIFSN(フレーム送信間隔)パラメータを制御する方式を用いるとし、アクセスポイント(AP)、中継局(RS)、端末(STA)において以下のようにAIFSNを設定する。

【0027】
中継局(RS)にNC方式を適用しているため、アクセスポイント(AP)と中継局(RS)のAIFSNは(1)式のように同一の値とする。
AIFSNAP=AIFSNRS≦AIFSNSTA ・・・(1)

【0028】
仮想グループYにおいても同様に、複数台の端末(STA)がある場合、アクセスポイント(AP)に高い送信権を与える必要があり、アクセスポイント(AP)、端末(STA)において(2)式のようにAIFSNを設定する。
AIFSNAP≦AIFSNSTA’ ・・・(2)

【0029】
なお、仮想グループX、Y両方においてアクセスポイント(AP)は最も高い送信権を要するため、たとえば、上式におけるAIFSNAPはAIFSNの最小値である2とする。さらに仮想グループ化した場合、システム全体を最適化するには各仮想グループの通信時間に最適な時間幅を割り当てる必要がある。ここでは、仮想グループX、Yそれぞれの通信時間(割り当て時間)をTX、TYとする。仮想グループXは中継局(RS)を介する2ホップ通信のため、仮想グループX、Yで同等のスループットを得るためにはTX>TYとする必要がある。中継局(RS)にNC方式を用いている場合はTX=(3/2)×TYとする。

【0030】
次に、他の仮想グループ化の例について説明する。図8は、アクセスポイント(AP)と接続する中継局(RS)を仮想グループX、複数台(図8においては3台のみ図示)の端末(STA)を仮想グループY、他の複数台(図8においては3台のみ図示)の端末(STA)を仮想グループZと3つの仮想グループに分割した場合の構成を示す図である。このように仮想グループ化した場合の特徴として、仮想グループY、Zには端末(STA)のみが属しているため、これらの仮想グループ内では送信権の制御が必要ないことである。従って、端末(STA)には仮想グループ化の機能だけを付加すれば良い。

【0031】
一方で、仮想グループXにおいてアクセスポイント(AP)は仮想グループY、Z両方の仮想グループ宛てのパケットを送信する必要があるため、中継局(RS)よりも高い送信権を要する。従ってAIFSN制御により送信権の制御を行い、アクセスポイント(AP)、中継局(RS)において(3)式のようにAIFSNを設定する。
AIFSNAP<AIFSNRS ・・・(3)

【0032】
2つの仮想グループ分割の場合と同様に、システムを最適化するためには、仮想グループX、Y、Zそれぞれの通信時間(割り当て時間)をTX、TY、TZとすると、これらのTX、TY、TZを適切に設定する必要がある。図8に示す例では、仮想グループY、Zには同数の端末(STA)が属するのでTY=TZである。一方で、アクセスポイント(AP)と中継局(RS)は送信期間内に仮想グループY、Zに属する全ての端末(STA)宛てのパケットを送信する必要があるため、TX>TY=TZとする。

【0033】
このように、各端末が競合し送信を許される期間が記された制御パケットをアクセスポイント(図1に示すアクセスポイントAP)が送信することにより、端末を仮想的にグループ化し、端末が制御パケットの内容を読み取って指定された時間内で競合に参加するようにした。これにより、各端末が所属する仮想グループはアクセスポイントによって管理され、グループ内ではCSMA/CAによる自律分散制御が行われることになる。この方式を用いた場合、高い送信権を必要とする無線局(例えば、中継局)を含むグループに対して長い通信期間を設定することにより高い送信権を与えることができるとともに、端末は自局に関係のない通信が行われている期間はスリープモードにすることができるため、低消費電力化が可能である。

【0034】
次に、前述した仮想グループを用いたアクセス制御を行った際の効果を計算機シミュレーションにより検証した結果について説明する。従来のAIFSN制御方式とNC方式を用いたホップ数の混在する無線LANシステムにおいて、単方向保証スループット特性の改善を図るため、前述した仮想グループを用いたアクセス制御を適用した。図9は単方向保証スループット特性を示す図である。ここで、単方向保証スループットとは、各端末における上りと下りのスループットを比較し、最小のスループット値のことを示す。仮想グループを用いたアクセス制御方式を適用することにより、3つの仮想グループに分割した場合において、各グループに属する端末数が20台の時にAIFSN制御のみを適用した場合と比べて20.3%単方向保証スループットを向上することが可能であることが明らかになった。

【0035】
以上説明したように、従来の無線LANにおいては、CSMA/CAに基づく自律分散的なアクセス制御により、多数の端末が同時にアクセスしようとすると衝突が生じ、効率的にデータ伝送ができないという問題がある。これに対して、仮想グループごとに送信権を競合することによって、衝突の確率を低減する技術がある(例えば、非特許文献1)。

【0036】
しかし、この技術では、全ての端末が同等に送信権を取得することが前提となっており、たとえば中継局のように他の端末と同等に扱えない端末がある場合に、適用できない問題がある。

【0037】
これに対して、本実施形態では、各仮想グループを構成する端末に応じて各仮想グループの送信区間および受信区間を制御するようにした。すなわち、中継局を含む仮想グループと、中継局を含まない仮想グループがあるとき、中継局を含む仮想グループに対して長い期間の送信区間及び受信区間を割り当てるように仮想グループごとの送信区間および受信区間を制御する。これにより、中継局を含む仮想グループに対しても、中継動作に伴う伝送効率の低下を回避し、伝送容量の不公平が生じないようにすることができる。

【0038】
なお、図1におけるアクセスポイントAP、端末STA1~STA15の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりアクセス制御処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。

【0039】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。

【0040】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明してきたが、上記実施の形態は本発明の例示に過ぎず、本発明が上記実施の形態に限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の技術思想及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素の追加、省略、置換、その他の変更を行っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
無線LANにおいて衝突回避を行うことが不可欠な用途に適用できる。
【符号の説明】
【0042】
AP・・・アクセスポイント、STA1~STA15・・・無線LAN端末、VG1~VG4・・・仮想グループ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8