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明細書 :プロトン伝導体、プロトン伝導体の製造方法、及び燃料電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-116276 (P2014-116276A)
公開日 平成26年6月26日(2014.6.26)
発明の名称または考案の名称 プロトン伝導体、プロトン伝導体の製造方法、及び燃料電池
国際特許分類 H01M   8/02        (2006.01)
H01M   8/10        (2006.01)
H01B   1/12        (2006.01)
H01B   1/06        (2006.01)
FI H01M 8/02 M
H01M 8/02 P
H01M 8/10
H01B 1/12 Z
H01B 1/06 A
請求項の数または発明の数 14
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2013-039574 (P2013-039574)
出願日 平成25年2月28日(2013.2.28)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り
優先権出願番号 2012093175
2012250557
優先日 平成24年4月16日(2012.4.16)
平成24年11月14日(2012.11.14)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】板倉 智也
【氏名】伊藤 みほ
【氏名】北川 進
【氏名】堀毛 悟史
【氏名】梅山 大樹
【氏名】犬飼 宗弘
出願人 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000578、【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
審査請求 未請求
テーマコード 5G301
5H026
Fターム 5G301CA14
5G301CA27
5G301CD01
5H026AA06
5H026BB08
5H026CX05
5H026EE12
5H026EE15
5H026EE17
5H026EE18
5H026HH08
要約 【課題】高温下でも使用できるプロトン伝導体、その製造方法、及び燃料電池を提供すること。
【解決手段】金属イオン、オキソアニオン、及びプロトン配位性分子を含み、前記オキソアニオン及び/又は前記プロトン配位性分子が、前記金属イオンに配位して配位高分子を形成していることを特徴とするプロトン伝導体。前記オキソアニオンは、単量体であることが好ましい。前記オキソアニオンとしては、例えば、リン酸イオン、リン酸水素イオン、及びリン酸ニ水素イオンから成る群から選ばれる1種以上が挙げられる。前記プロトン配位性分子としては、例えば、イミダゾール、トリアゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、及びこれらの誘導体から成る群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
金属イオン、オキソアニオン、及びプロトン配位性分子を含み、
前記オキソアニオン及び/又は前記プロトン配位性分子が、前記金属イオンに配位して配位高分子を形成していることを特徴とするプロトン伝導体。
【請求項2】
前記オキソアニオンが単量体であることを特徴とする請求項1に記載のプロトン伝導体。
【請求項3】
前記オキソアニオンが、リン酸イオン、リン酸水素イオン、及びリン酸ニ水素イオンから成る群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロトン伝導体。
【請求項4】
前記プロトン配位性分子が、イミダゾール、トリアゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、及びこれらの誘導体から成る群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のプロトン伝導体。
【請求項5】
前記プロトン配位性分子が、一般式R-NH2で表される第一級アミン、一般式R1(R2)-NHで表される第二級アミン、一般式R1(R2)(R3)-Nで表される第三級アミン、炭素直鎖ジアミン、飽和環状アミン、及び飽和環状ジアミンから成る群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のプロトン伝導体。
(R、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、脂環式炭化水素基、及び複素環基のうちのいずれかを示す。)
【請求項6】
前記金属イオンが、コバルトイオン、銅イオン、亜鉛イオン、及びガリウムイオンから成る群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のプロトン伝導体。
【請求項7】
さらに、金属酸化物、有機ポリマー、及びアルカリ金属イオンから成る群から選ばれる1種以上である添加材料を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のプロトン伝導体。
【請求項8】
前記金属酸化物が、SiO2、TiO2、Al2O3、WO3、MoO3、ZrO2、及びV2O5から成る群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項7に記載のプロトン伝導体。
【請求項9】
前記有機ポリマーが酸性官能基を有することを特徴とする請求項7又は8に記載のプロトン伝導体。
【請求項10】
前記酸性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基、及びホスホン酸基のいずれかであることを特徴とする請求項9に記載のプロトン伝導体。
【請求項11】
前記アルカリ金属イオンが、Li、Na、K、Rb、及びCsから成る群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項7~10のいずれか1項に記載のプロトン伝導体。
【請求項12】
前記金属イオンを含む金属化合物、前記オキソアニオン、及び前記プロトン配位性分子を200℃以下の温度において混合することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のプロトン伝導体の製造方法。
【請求項13】
前記金属イオンを含む金属化合物、前記オキソアニオン、前記プロトン配位性分子、及び前記添加材料を200℃以下の温度において混合することを特徴とする請求項7~11のいずれか1項に記載のプロトン伝導体の製造方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のプロトン伝導体から成る電解質を有する燃料電池(7)。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、プロトン伝導体、プロトン伝導体の製造方法、及び燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、固体高分子型燃料電池システムの低コスト化、システムの簡素化の観点で、100℃以上の作動温度でかつ無加湿、あるいは低加湿な条件で作動する電解質材料が望まれている。一方、従来の固体高分子型燃料電池は、パーフルオロカーボンスルホン酸に代表されるような、水を媒介としてイオン伝導を行う電解質を備えている。そのため100℃以上、無加湿又は低加湿の作動条件では、十分なイオン伝導を発揮できない。
【0003】
高温においても電解質に含有する水分の蒸発を抑制できるものとして、ゾルゲル多孔質ガラス(特許文献1参照)、リン酸塩ハイドロゲル(特許文献2参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2002-097272号公報
【特許文献2】特開2003-217339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2記載の技術では、水分の蒸発を抑制するためには、飽和水蒸気圧に近い加湿が必要であり、低加湿条件ではイオン伝導率、安定性においてまだ十分ではない。上記のように、従来の電解質材料では、100℃以上で、かつ無加湿又は低加湿の作動条件において、良好なイオン伝導率と安定性が得られていないのが現状である。
【0006】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、100℃以上でかつ無加湿でも使用できるプロトン伝導体、その製造方法、及び燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプロトン伝導体は、金属イオン、オキソアニオン、及びプロトン配位性分子を含み、前記オキソアニオン及び/又は前記プロトン配位性分子が、前記金属イオンに配位して配位高分子を形成していることを特徴とする。
【0008】
オキソアニオンは単量体として金属イオンに配位することで、プロトン伝導体内に高いプロトン濃度を保持することができる。前記プロトン配位性分子は、金属との配位結合、もしくはオキソアニオンとの水素結合、クーロン結合相互作用をするため、100℃以上でも揮発せずに構造内に保持される。
【0009】
本発明のプロトン伝導体は、高温(例えば100℃以上)においても、高いイオン伝導率を有する。そのため、本発明のプロトン伝導体から成る電解質を備えた燃料電池は、高温下でも使用できる。
【0010】
また、本発明のプロトン伝導体は、イオン伝導において、水を媒介としない。そのため、本発明のプロトン伝導体から成る電解質を備えた燃料電池は、無加湿又は低加湿条件で使用でき、電解質の水分を管理するためのシステムが不要となる。
【0011】
さらに、本発明のプロトン伝導体は、イオン伝導において、液体(水以外も含む)を媒介としない。そのため、本発明のプロトン伝導体から成る電解質を備えた燃料電池では、液体の染み出しの問題、及び、染み出した液体が電極で反応することによる劣化や、混成電位により出力が低下してしまう問題が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】燃料電池の単セルの製造方法を表す説明図である。
【図2】燃料電池の単セルの構成を表す斜視図である。
【図3】実施例1についてのX線結晶構造解析の結果を表す説明図である。
【図4】実施例10についてのX線結晶構造解析の結果を表す説明図である。
【図5】実施例1、2、3、4についてのイオン伝導率の測定結果を表すグラフである。
【図6】実施例1、5、6、7についてのイオン伝導率の測定結果を表すグラフである。
【図7】実施例1についての31P-MAS-NMR測定結果を表すチャートである。
【図8】実施例1、18、及び参考例についてのイオン伝導率の測定結果を表すグラフである。
【図9】実施例1、18~20についてのイオン伝導率の測定結果を表すグラフである。
【図10】実施例1、18、21、22についてのイオン伝導率の測定結果を表すグラフである。
【図11】実施例1、18、23、24についてのイオン伝導率の測定結果を表すグラフである。
【図12】実施例1、25~29についてのイオン伝導率の測定結果を表すグラフである。
【図13】実施例1、30~34についてのイオン伝導率の測定結果を表すグラフである。
【図14】添加材料の1種である有機ポリマーを表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を説明する。本発明におけるオキソアニオンとしては、例えば、リン酸イオン、硫酸イオン等が挙げられるが、水素に対する化学的安定性から、リン酸イオンが好ましい。リン酸イオンは、プロトンが1つ配位したリン酸水素イオン、又はプロトンが2つ配位したリン酸二水素イオンの形態であってもよい。本発明におけるオキソアニオンは、例えば、縮合が起こっていない単量体の形態で金属イオンに配位しており、これによりプロトン濃度が高い状態で保持され、水分に対する安定性にも優れる。

【0014】
また、本発明におけるプロトン配位性分子は、分子内にプロトンを配位するための配位点を好ましくは2つ以上持った分子である。イオン伝導性の観点では、プロトンの配位と放出とのバランスに優れた配位点を持ったイミダゾール、トリアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズトリアゾール、及びこれらの誘導体が好ましい。ここで誘導体とは、化学構造の一部を他の原子又は原子団で置き換えたものを意味し、その具体例としては、イミダゾールに対して、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、ヒスタミン、ヒスチジン等が挙げられる。

【0015】
また、本発明におけるプロトン配位性分子としては、例えば、一般式R-NH2で表される第一級アミン、一般式R1(R2)-NHで表される第二級アミン、一般式R1(R2)(R3)-Nで表される第三級アミンが挙げられる。ここで、R、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、脂環式炭化水素基、及び複素環基のうちのいずれかである。

【0016】
このような第一級アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン等の低級アルキルアミン、アニリン、トルイジン等の芳香族アミンが挙げられる。
第二級アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン等のジ低級アルキルアミン、N-メチルアニリン、N-メチルトルイジン等の芳香族二級アミン等が挙げられる。

【0017】
第三級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のトリ低級アルキルアミンが挙げられる。また、本発明におけるプロトン配位性分子として、例えば、エチレンジアミン、そのN-低級アルキル誘導体(例えばテトラメチルエチレンジアミン)等の炭素直鎖ジアミンを挙げることができる。

【0018】
さらには、本発明におけるプロトン配位性分子として、ピロリジン、N-低級アルキルピロリジン(例えばN-メチルピロリジン)、ピペリジン、N-低級アルキルピペリジン(例えばN-メチルピペリジン)、モルホリン、N-低級アルキルモルホリン(例えばN-メチルモルホリン)等の飽和環状アミンを挙げることができる。

【0019】
またさらには、本発明におけるプロトン配位性分子として、ピペラジン、N-低級ジアルキルピペラジン(例えば、N、N-ジメチルピペラジン)、1、4-ジアザビシクロ [2.2.2]オクタン(別名:トリエチレンジアミン)等の飽和環状ジアミン等を挙げることができる。

【0020】
さらに本発明における金属イオンは、特に限定されるものではないが、前記オキソアニオン及び/又はプロトン配位性分子との配位結合の形成しやすさの観点から、高周期の遷移金属イオンや典型金属イオンが好ましい。中でも、コバルトイオン、銅イオン、亜鉛イオン、及びガリウムイオンが好ましい。

【0021】
本発明のプロトン伝導体は、金属イオン、オキソアニオン、及びプロトン配位性分子を含むが、これら構成要素が効率的に配位高分子を形成するためには、金属イオン1モルに対して、オキソアニオンで1~4モル、プロトン配位性分子で1~3モルの配合比率であることが望ましい。オキソアイニオン、プロトン配位性分子が1モルより少ないと配位高分子を形成しないことがあり、またオキソアニオンを4モルより多く配合した場合とプロトン配位性分子を3モルより多く配合した場合では、プロトン伝導体が固体状にならず、さらに非常に高い吸湿性を示し、形状安定性が著しく低下してしまうことがある。

【0022】
本発明のプロトン伝導体は、金属イオン源としての金属酸化物、オキソ酸、プロトン配位性分子を混合攪拌することで得られる。前記混合攪拌工程では、各原料を溶解又は均一に分散可能な溶媒を用いることができるが、製造コストの観点から無溶媒反応によって行うことが好ましい。また上記製造工程において、上記プロトン伝導体を200℃よりも高い温度で熱処理すると、含まれるリン酸イオンの縮合が起こることがあるため、200℃以下の温度で行うことが好ましい。

【0023】
本発明のプロトン伝導体は、金属イオン、オキソアニオン、及びプロトン配位性分子に加えて、添加材料を含んでいてもよい。この添加材料としては、例えば、金属酸化物、有機ポリマー、及びアルカリ金属イオンから成る群から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの添加材料を含む場合、プロトン伝導体の高温(例えば100℃以上)における性能を損なうことなく、低温(例えば100℃未満)におけるイオン伝導率が一層高くなる。

【0024】
添加材料の添加量は、金属イオン、オキソアニオン、及びプロトン配位性分子の合計重量を100重量部としたとき、1~20重量部の範囲が好ましく、添加材料が金属酸化物又は有機ポリマーである場合は、5~20重量部の範囲が好ましい。添加量がこの範囲内である場合、プロトン伝導体の高温(例えば100℃以上)における性能を損なうことなく、低温(例えば100℃未満)におけるイオン伝導率が一層高くなる。

【0025】
前記金属酸化物としては、例えば、SiO2、TiO2、Al2O3、WO3、MoO3、ZrO2、及びV2O5から成る群から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの金属酸化物を用いる場合、プロトン伝導体の高温(例えば100℃以上)における性能を損なうことなく、低温(例えば100℃未満)におけるイオン伝導率が一層高くなる。金属酸化物の粒子径は、5~500nmの範囲が好ましい。粒子径がこの範囲内である場合、プロトン伝導体の高温(例えば100℃以上)における性能を損なうことなく、低温(例えば100℃未満)におけるイオン伝導率が一層高くなる。なお、粒子径とは、金属酸化物の粒子を電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影し、得られた画像を画像解析する方法で得られる値である。

【0026】
前記有機ポリマーは、酸性官能基を有することが好ましい。酸性官能基を有する有機ポリマーを用いる場合、プロトン伝導体の高温(例えば100℃以上)における性能を損なうことなく、低温(例えば100℃未満)におけるイオン伝導率が一層高くなる。酸性官能基としては、例えば、カルボキシル基(-COOH)、スルホン酸基(-SO3H)、及びホスホン酸基(-PO32)のいずれかが挙げられる。有機ポリマーのpHは、4以下の範囲が好ましい。pHがこの範囲内である場合、プロトン伝導体の高温(例えば100℃以上)における性能を損なうことなく、低温(例えば100℃未満)におけるイオン伝導率が一層高くなる。

【0027】
前記有機ポリマーとしては、例えば、図14に示すポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルホスホン酸(PVPA)、ポリスチレンスルホン酸(PSSA)、デオキシリボ核酸(DNA)等が挙げられる。

【0028】
アルカリ金属イオンとしては、例えば、Li、Na、K、Rb、及びCsから成る群から選ばれる1種以上の金属イオンが挙げられる。これらのアルカリ金属イオンを用いる場合、プロトン伝導体のイオン伝導率が、低温(例えば100℃未満)、及び高温(例えば100℃以上)において一層高くなる。

【0029】
上記の添加剤を含む場合、本発明のプロトン伝導体は、例えば、金属イオン源としての金属酸化物、オキソ酸、プロトン配位性分子、及び添加剤を混合攪拌することで得られる。混合攪拌においては、全原料を一度に混合攪拌することが好ましい。

【0030】
前記混合攪拌工程では、各原料を溶解又は均一に分散可能な溶媒を用いることができるが、製造コストの観点から無溶媒反応によって行うことが好ましい。また上記製造工程において、上記プロトン伝導体を200℃よりも高い温度で熱処理すると、含まれるリン酸イオンの縮合が起こることがあるため、200℃以下の温度で行うことが好ましい。

【0031】
本発明の燃料電池は、上記プロトン伝導体を電解質として使用したものである。
(実施例1)
酸化亜鉛210mg、85%リン酸530μL、及びイミダゾール350mgを乳鉢に量り取り、大気雰囲気下、常温で15分間攪拌混合した。その後、80℃で15時間乾燥させて、白色粉末(プロトン伝導体)を得た。

【0032】
この粉末のX線結晶構造解析を行い、亜鉛イオンにリン酸イオンが配位した1次元の配位高分子とイミダゾールは上記配位高分子のリン酸イオンとプロトンを介して水素結合した結晶構造であることを確認した。X線結晶構造解析の結果を図3に示す。さらに31P-MAS-NMR測定を実施し、粉末中に縮合リン酸が存在しないことを確認した。

【0033】
上記のように製造したプロトン伝導体を、図1に示すような直径10mmの円柱形状に成形し、電解質1とした。そして、電解質1の両側から、直径9mmの板状の白金担持カーボン電極3、5を2000Kgの荷重をかけて圧着し、図2に示す燃料電池の単セル7を製造した。

【0034】
上記のように製造した単セル7に対して、交流インピーダンス測定を行い、イオン伝導率を算出した。測定は窒素ガス気流下で行い、0.1Hz~1MHzの周波数領域、電圧振幅は10mVの条件で行った。上記の測定の結果、イオン伝導率は150℃で1.6mS/cmであり、160℃で2mS/cmであった。

【0035】
続いて上記単セル7の各電極側に、水素ガス、空気ガスをそれぞれ100mL/分で流し、燃料電池を構成し、150℃における開回路電圧を測定すると0.90Vを得た。
また、プロトン伝導体に対し、粉末X線回折測定を行い、格子パラメータを測定した。粉末X線回折測定の条件は以下のとおりである。

【0036】
X線源:CuKα線
測定範囲:5°≦2θ≦40°
ステップ幅:0.04°
なお、実施例1におけるイオン伝導率及び格子パラメータの測定結果は後述する表2に示す。
(実施例2~17)
金属イオンの種類、プロトン配位性分子の種類、及び配合比率を種々に変え、表1に示す水準のプロトン伝導体および単セルを実施例1と同様にして作製した。これらについて、前記実施例1と同様に、X線結晶構造解析、イオン伝導率の測定、及び格子パラメータの測定を行った。イオン伝導率及び格子パラメータの測定結果を表2に示す。表2に示すイオン伝導率は、それぞれこの表に記載の温度(「測定温度」の欄)における値である。また、一部のプロトン伝導体のイオン伝導率を図5、6に示す。また、実施例6についてのX線結晶構造解析の結果を図4に示す。

【0037】
【表1】
JP2014116276A_000003t.gif

【0038】
【表2】
JP2014116276A_000004t.gif
(実施例1~17のプロトン伝導体が奏する効果)
(1)実施例1~17のプロトン伝導体は、上述したように、高温下においても、高いイオン伝導率を有する。そのため、実施例1~17のプロトン伝導体から成る電解質を備えた燃料電池は、高温(例えば100℃以上)の条件でも使用できる。そのことにより、燃料電池の温度を高温として、電極触媒の被毒抑制をすることができる。また、燃料電池の温度を高温とすることで、排熱効率を向上させることができる。

【0039】
(2)実施例1~17のプロトン伝導体は、イオン伝導において、水を媒介としない。そのため、実施例1~17のプロトン伝導体から成る電解質を備えた燃料電池は、無加湿又は低加湿条件で使用できる。また、電解質の水分を管理するシステムが不要となる。

【0040】
(3)実施例1~17のプロトン伝導体は固体状態であるため、実施例1~17のプロトン伝導体から成る電解質を備えた燃料電池では、液体の染み出しの問題、及び、染み出した液体が電極で反応することによる劣化や、混成電位により出力が低下してしまう問題が生じない。
(実施例18)
酸化亜鉛420mg、85%リン酸水溶液1.06mL、イミダゾール140mg、及び添加材料である酸化チタン粉末255mgを秤量し、メノウ乳鉢を用いて、大気雰囲気下、常温で15分撹拌混合した。その後、80℃で15時間乾燥させて、白色粉末(10wt%TiO2を含むプロトン伝導体)を得た。
(実施例19~34)
基本的には、前記実施例18と同様にして、添加材料を含むプロトン伝導体を製造した。ただし、前記実施例18とは、添加材料の種類、粒径、及び添加量のうちのいずれか1以上を変更した。実施例19~34の組成を表3に示す。

【0041】
【表3】
JP2014116276A_000005t.gif
なお、実施例25で用いているポリエチレングリコールの分子量は100000であり、実施例26で用いているポリアクリル酸の分子量は25000であり、実施例29で用いているDNAにおける塩基対の数は500~1000bpである。

【0042】
また、表3における「添加量(wt%)」は、金属イオン、オキソアニオン、及びプロトン配位性分子の合計重量に対する重量比を意味し、「粒子径(nm)」は、金属酸化物の粒子径を意味し、「pH」は、有機ポリマーのpHを意味する。
(参考例)
前記実施例18と同じ組成を有するが、添加材料を後から添加する方法で、プロトン伝導体を製造した。すなわち、酸化亜鉛420mg、85%リン酸水溶液1.06mL、及びイミダゾール140mgを秤量し、メノウ乳鉢を用いて、大気雰囲気下、常温で15分撹拌混合した。その後、80℃で15時間乾燥させて、白色粉末を得た。この白色粉末と、添加材料である酸化チタン粉末255mgとを混合して、参考例のプロトン伝導体を得た。

【0043】
実施例18~34、及び参考例のプロトン伝導体について、前記実施例1と同様に単セルを作製し、イオン伝導率を測定した。実施例1、18、及び参考例の測定結果を図8に示し、実施例1、18~20の測定結果を図9に示し、実施例1、18、21、22の測定結果を図10に示し、実施例1、18、23、24の測定結果を図11に示し、実施例1、25~29の測定結果を図12に示し、実施例1、30~34の測定結果を図13に示す。

【0044】
なお、図8において、「複合体(同時混合)」は実施例18を意味し、「複合体(単純混合)」は参考例を意味する。
また、図9において、「TiO2」は実施例18を意味し、「SiO2」は実施例19を意味し、「Ai23」は実施例20を意味する。

【0045】
また、図10において、「20nm」は実施例18を意味し、「400nm」は実施例21を意味し、「8nm」は実施例22を意味する。
また、図11において、「10wt%」は実施例18を意味し、「20wt%」は実施例23を意味し、「5wt%」は実施例24を意味する。

【0046】
また、図12において、「PSSA」は実施例28を意味し、「PVPA」は実施例27を意味し、「PAA」は実施例26を意味し、「DNA」は実施例29を意味し、「PEG」は実施例25を意味する。

【0047】
また、図13において、「Cs」は実施例30を意味し、「Rb」は実施例31を意味し、「K」は実施例32を意味し、「Na」は実施例33を意味し、「Li」は実施例34を意味する。

【0048】
図8~図13に示す測定結果から明らかなように、添加材料を添加することにより、プロトン伝導体の高温(例えば100℃以上)におけるイオン伝導率が一層向上した。
また、実施例18のプロトン伝導体は、参考例のプロトン伝導体と比較して、高温(例えば100℃以上)におけるイオン伝導率が一層高かった。

【0049】
尚、本発明は前記実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0050】
1・・・電解質、3、5・・・白金担持カーボン電極、7・・・燃料電池の単セル
図面
【図2】
0
【図7】
1
【図8】
2
【図9】
3
【図10】
4
【図11】
5
【図12】
6
【図13】
7
【図14】
8
【図1】
9
【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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