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明細書 :自己ゲル化核酸

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成26年7月28日(2014.7.28)
発明の名称または考案の名称 自己ゲル化核酸
国際特許分類 A61K  47/30        (2006.01)
A61K  39/39        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
A61K  31/7088      (2006.01)
A61P  37/04        (2006.01)
FI A61K 47/30 ZNA
A61K 39/39
C12N 15/00 A
A61K 31/7088
A61P 37/04
国際予備審査の請求
全頁数 74
出願番号 特願2013-511034 (P2013-511034)
国際出願番号 PCT/JP2012/060613
国際公開番号 WO2012/144560
国際出願日 平成24年4月19日(2012.4.19)
国際公開日 平成24年10月26日(2012.10.26)
優先権出願番号 2011093082
優先日 平成23年4月19日(2011.4.19)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , MD , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IS , JP , KE , KG , KM , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US , UZ , VC , VN
発明者または考案者 【氏名】西川 元也
【氏名】高橋 有己
【氏名】高倉 喜信
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100081422、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 光雄
【識別番号】100084146、【弁理士】、【氏名又は名称】山崎 宏
【識別番号】100122301、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 憲史
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4C076
4C085
4C086
Fターム 4B024AA01
4B024BA80
4B024CA01
4B024CA11
4B024GA11
4B024HA20
4C076AA09
4C076EE30
4C076FF31
4C076FF70
4C076GG50
4C085AA38
4C085EE06
4C085FF18
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA06
4C086MA28
4C086NA05
4C086ZB09
要約 本願発明は、実質的に核酸のみから構成されるハイドロゲルを調製する方法を提供することを課題とする。
本願発明は、一部が互いに相補的な、核酸、核酸誘導体、修飾型核酸、核酸と相補的に結合する化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される2本以上の核酸モノマーから構成され、一本の核酸モノマーが、接着性突出末端を構成する部分、1本以上の別の核酸モノマーと二重鎖を形成し得る相補的塩基配列部、を含み、かつ、核酸連結酵素を含有しない、核酸連結酵素を用いることなく核酸ゲルを作成するための核酸ゾル状組成物およびそれを用いて作成される核酸ゲルを提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
一部が互いに相補的な、核酸、核酸誘導体、修飾型核酸、核酸と相補的に結合する化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される2本以上の核酸モノマーから構成され、一本の核酸モノマーが、接着性突出末端を構成する部分、1本以上の別の核酸モノマーと二重鎖を形成し得る相補的塩基配列部、を含み、かつ、核酸連結酵素を含有しない、核酸連結酵素を用いることなく核酸ゲルを作成するための核酸ゾル状組成物。
【請求項2】
生体内でゲルを作成するための、請求項1に記載のゾル状組成物。
【請求項3】
核酸モノマーが、相補的塩基配列部において相補的に結合し、かつ、接着性突出末端が生理的条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的である配列構造からなる、請求項1または2に記載のゾル状組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかの核酸ゾル状組成物の核酸濃度および/または塩濃度を高めることにより、核酸連結酵素を用いることなく核酸ゲルを作成する方法。
【請求項5】
請求項1に記載の第1の核酸モノマーを含む、核酸連結酵素を含有しない、第1のゾル状組成物;および
請求項1に記載の第2の核酸モノマーを含む、核酸連結酵素を含有しない、第2のゾル状組成物;
を別々に含む、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成するためのキットであって、
該第1の核酸モノマー中の接着性突出末端が第1の配列を含み、
該第2の核酸モノマー中の接着性突出末端が第2の配列を含み、かつ、
該第1の配列と該第2の配列が互いに生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的である、核酸連結酵素を用いることなく核酸ゲルを作成するためのキット。
【請求項6】
請求項5に記載のキットにおける、第1のゾル状組成物と第2のゾル状組成物とを混合することにより、ゲルを形成させることを含む、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成する方法。
【請求項7】
請求項1に記載の核酸モノマーを含み、核酸連結酵素を含有しない、第1のゾル状組成物;および
両末端に接着性一本鎖からなる突出末端を有する二本鎖核酸を含有し、核酸連結酵素を含有しない第2のゾル状組成物;
を別々に含む、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成するためのキットであって、
該第1の核酸モノマー中の接着性突出末端が第1の配列を含み、
該二本鎖核酸の両末端の突出末端が第2の配列を含み、かつ、
該第1の配列と該第2の配列が互いに生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的である、核酸連結酵素を用いることなく核酸ゲルを作成するためのキット。
【請求項8】
請求項7に記載のキットにおける、第1のゾル状組成物と第2のゾル状組成物とを混合することにより、ゲルを形成させることを含む、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成する方法。
【請求項9】
請求項4、6および8のいずれかに記載の方法により作成された、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲル。
【請求項10】
請求項4、6および8のいずれかに記載の方法において、ゲルの形成前にゲルに封入させるべき内封物質をゾル状組成物に添加することを含む、内封物質を封入し、かつ、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成する方法。
【請求項11】
内封物質が、低分子化合物、タンパク質、および細胞から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項10または11記載の方法により作成された、内封物質を含有し、かつ、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲル。
【請求項13】
核酸モノマーが、CpGモチーフを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の核酸ゾル状組成物、方法、キット、または核酸ゲル。
【請求項14】
核酸モノマーの種類数が、3~8である、請求項1~13のいずれか1項に記載の核酸ゾル状組成物、方法、キット、または核酸ゲル。
【請求項15】
核酸モノマーがCpGモチーフを含むことを特徴とする、免疫アジュバントを作成するための、請求項1~3のいずれか1項に記載のゾル状組成物。
【請求項16】
請求項9または12に記載の核酸ゲルを含む、免疫アジュバントであって、核酸モノマーがCpGモチーフを含むことを特徴とする免疫アジュバント。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、自己ゲル化核酸に関する。具体的には、本発明は、リガーゼなどの核酸連結酵素を用いることなく、実質的に核酸のみからなるハイドロゲルを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸、特に、DNAを用いてゲルを作製する試みは既に報告されている(非特許文献1)。非特許文献1に開示の方法では、DNAモノマーの末端をDNAリガーゼを用いて共有結合させている。より詳細には、非特許文献1では、末端に相補的配列を有する各DNA鎖を合成し、T4リガーゼを用いて、X型DNA、Y型DNA、T型DNAを作製したこと、およびこれらDNAを用いてハイドロゲルを作製したことが報告されている。しかし、非特許文献1に開示のDNAを用いて作製されたゲルには、ゲル化に用いる酵素(DNAリガーゼ)が残存することから、安全性及び抗原性が問題となる。
【0003】
また、非特許文献1に開示の方法では、ゲル化に酵素反応が必要であるため、生体へゲルを投与する際には、あらかじめ生体外でゲルを作製し、得られたゲルの形状で投与しなければならず、投与上、これは大きな制限となる。さらに、引用文献1に開示のゲル化反応は、酵素を用いた反応であることから、比較的大きな物質をゲルの中に封入するには、ゲル化、すなわちライゲーション反応時に封入物質を加える必要があるが、これは封入物質の機能を損なう危険性が高い。また、リガーゼを用いて調製したゲルでは、十分な高さの粘弾性が得られなかった。
【0004】
この他にも、DNAを構成要素とするハイドロゲルを作成する試みは多く為されており、化学的架橋や熱・pH依存性のものなど多くの報告がある(非特許文献2、3および特許文献1)。
【0005】
例えば、非特許文献2では、サケ精巣から抽出したDNAを、化学的に(エチレングリコールジグリシジルエーテルの使用により)架橋したのち、1M NaOHとTEMEDを添加し、2時間ほど熱(50℃)を加えてゲルを作成したことを報告している。しかし、かかる方法では、核酸に加えて生体への安全性が懸念される有機化合物を用いるため生体への投与にはその安全性が懸念される。さらに、ゲル化には加熱が必要であるため、変性しやすい物質を含有させることは出来ない。
【0006】
また、非特許文献3は、pH依存性のY型DNA作製に関する。かかる方法は、pH変化に依存した、DNA分子の状態の変化を利用している。この方法では、DNA溶液にHClを添加し酸性にすることでゲル化させることができ、いったんゲル化したものもNaOHを添加することで溶液の状態に戻すことができる。しかし、ゲル状態を維持するためには、環境を酸性に維持しなくてはならず、ゲルが周囲の環境に対して不安定であるという問題がある。
【0007】
特許文献1は、化学反応や重合反応を伴わず、人の体温(37℃)付近で十分な強度のハイドロゲルが生理的条件下で簡便、迅速に得られる合成ハイドロゲルを提供する方法を開示している。しかし、該方法で得られるゲルは、多糖類などの水溶性高分子と核酸を混合させてつくられたハイドロゲルであり、温度依存的にゲル-ゾル転移が可能であるが、多糖類などを多量に含むため、核酸からなるハイドロゲルとは言い難い。
【0008】
一方、ゼラチンや合成ポリマーなどを利用して様々なハイドロゲル製剤が開発されている。これらで調製されるゲルの場合も投与前にゲル化しており、投与後にゲル化するシステムは少ない。注射可能なゲルも報告されているが、これは注射針を通過するサブミクロン~ミクロンサイズのゲルである。従って、注射等による投与の場合には、微細化したゲルが用いられ、その場合には徐放化などのゲル特性は大幅に損なわれる。
【0009】
また、温度によるゾル-ゲル転移を利用したハイドロゲルが複数報告されている(特許文献2など)。しかしながら、用いられる化合物は一部化学修飾が利用されており、核酸などの純粋な天然素材からなるゲルではない。
【0010】
なお、CpG DNAをアジュバントとする試みは多くなされている。コレステロール修飾やチオエート化による活性化能の増強も報告されている。しかしながら、こうした場合には、アジュバント(CpG DNA)と抗原とは同時に投与されても、生体内での挙動は別々になることが懸念される。また、チオエート型DNAの場合には、高いタンパク結合性による組織障害が問題である。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】特開2002-18270号公報
【特許文献2】特開2005-239860号公報
【0012】

【非特許文献1】Nat. Mater. 5: 797-801, 2006
【非特許文献2】J Phys Chem B. 2007 Sep 20;111(37):10886-96
【非特許文献3】Angew Chem Int Ed Engl. 2009;48(41):7660-3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ハイドロゲルなどの生理活性物質を徐放化するコントロールドリリースシステムは、持続的な治療効果や副作用の軽減を得るのに有効である。本発明の目的は、DNAやRNAといった核酸モノマーを基本単位として、種々の構造の核酸単位を調製し、これをDNAリガーゼなどの酵素を用いることなく繋げることで、実質的に核酸のみから構成され、かつ、リガーゼを用いたゲルと比べて粘弾性の高いハイドロゲルを調製する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、塩濃度と核酸濃度・核酸単位における突出末端の塩基数を調節することにより、実質的に核酸のみからなる粘弾性の高いハイドロゲルを提供することができることを見いだした。即ち、本発明により、リガーゼなどの酵素を用いることなく、実質的に核酸のみからなる粘弾性の高いハイドロゲルを調製する方法が提供される。
【0015】
従来の方法では、末端にリン酸基を結合したオリゴヌクレオチドをDNAリガーゼで結合する方法がとられていた。これに対し、本発明の方法では、突出末端の塩基数や塩濃度、核酸濃度などを調製することで、酵素反応なくハイドロゲルを調製することを可能にした。本発明の方法によると、酵素を使用しないことに加えて、熱やpH変化などを利用しないことから、ゾル状態で投与することが可能であり、投与後生体内でゲル化させることができる。また、複数の種類の核酸モノマーを設計することで、混合によりゲル化するシステムが構築可能である。この場合、ゲル化には酵素や熱等を不要とすることから、化学的・物理的に不安定な物質の内包も可能である。
【0016】
即ち、本発明は、第一の態様において、以下を提供する:
(1-1):一部が互いに相補的な、核酸、核酸誘導体、修飾型核酸、核酸と相補的に結合する化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される2本以上の核酸モノマーから構成され、一本の核酸モノマーが、接着性突出末端を構成する部分、1本以上の別の核酸モノマーと二重鎖を形成し得る相補的塩基配列部、を含み、かつ、核酸連結酵素を含有しない、核酸連結酵素を用いることなく核酸ゲルを作成するための核酸ゾル状組成物。
【0017】
(1-2):生体内でゲルを作成するための、(1-1)に記載のゾル状組成物。
【0018】
(1-3):核酸モノマーが、相補的塩基配列部において相補的に結合し、かつ、接着性突出末端が生理的条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的である配列構造からなる(1-1)または(1-2)記載のゾル状組成物。
【0019】
(1-4):上記(1-1)~(1-3)いずれかの核酸ゾル状組成物の核酸濃度および/または塩濃度を高めることにより、核酸連結酵素を用いることなく核酸ゲルを作成する方法。
【0020】
(1-5):上記(1-1)に記載の第1の核酸モノマーを含む、核酸連結酵素を含有しない、第1のゾル状組成物;および
(1-1)に記載の第2の核酸モノマーを含む、核酸連結酵素を含有しない、第2のゾル状組成物;
を別々に含む、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成するためのキットであって、
該第1の核酸モノマー中の接着性突出末端が第1の配列を含み、
該第2の核酸モノマー中の接着性突出末端が第2の配列を含み、かつ、
該第1の配列と該第2の配列が互いに生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的である、核酸連結酵素を用いることなく核酸ゲルを作成するためのキット。
【0021】
(1-6):上記(1-5)に記載のキットにおける、第1のゾル状組成物と第2のゾル状組成物とを混合することにより、ゲルを形成させることを含む、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成する方法。
【0022】
(1-7):上記(1-1)に記載の核酸モノマーを含む、核酸連結酵素を含有しない、第1のゾル状組成物;および
両末端に接着性一本鎖からなる突出末端を有する二本鎖核酸を含有し、核酸連結酵素を含有しない第2のゾル状組成物;
を別々に含む、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成するためのキットであって、
該第1の核酸モノマー中の接着性突出末端が第1の配列を含み、
該二本鎖核酸の両末端の突出末端が第2の配列を含み、かつ、
該第1の配列と該第2の配列が互いに生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的である、核酸連結酵素を用いることなく核酸ゲルを作成するためのキット。
【0023】
(1-8):上記(1-7)に記載のキットにおける、第1のゾル状組成物と第2のゾル状組成物とを混合することにより、ゲルを形成させることを含む、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成する方法。
【0024】
(1-9):上記(1-4)、(1-6)および(1-8)に記載のいずれかの方法により作成された核酸連結酵素を含有しない核酸ゲル。
【0025】
(1-10):上記(1-4)、(1-6)および(1-8)に記載のいずれかの方法において、ゲルの形成前にゲルに封入させるべき内封物質をゾル状組成物に添加することを含む、内封物質を封入し、かつ、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成する方法。
【0026】
(1-11):内封物質が、低分子化合物、タンパク質、および細胞から選択される、(1-10)に記載の方法。
【0027】
(1-12):上記(1-10)または(1-11)記載の方法により作成された、内封物質を含有し、かつ、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲル。
【0028】
また、本発明は、以下を提供することもできる:
(1-13):核酸モノマーが、相補的塩基配列部において相補的に結合し、かつ、接着性突出末端が回文配列構造を含む(1-1)または(1-2)記載のゾル状組成物。
【0029】
本発明は、さらに第二の態様において、以下を提供することもできる:
【0030】
(2-1):接着性突出末端部と相補的塩基配列部よりなる2以上のオリゴヌクレオチドの混合物を、組成物中に核酸濃度0.3mM+1.6/x(突出末端部塩基数)mM以下にて含有し、核酸連結酵素を含有せず、塩濃度がNaCl濃度に換算して80mM/x(突出末端部塩基数)以下である、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成するためのゾル状組成物:
[ここで、
接着性突出末端部は、4~12ヌクレオチド長であって、少なくとも1つの別のオリゴヌクレオチドにおける接着性突出末端部と生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的となる一本鎖核酸部分であり、
別のオリゴヌクレオチドと相補的に結合する相補的塩基配列部は、8~45ヌクレオチド長であって、別のオリゴヌクレオチドにおける相補的塩基配列部と生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的である]。
【0031】
(2-2):生体内でゲルを作成するための、(2-1)に記載のゾル状組成物。
【0032】
(2-3):接着性突出末端が回文配列構造を含む(2-1)記載のゾル状組成物。
【0033】
(2-4):上記(2-3)に記載のゾル状組成物中の、核酸濃度を3.2/x(突出末端部塩基数)mM以上、塩濃度をNaCl濃度に換算して640mM/x(突出末端部塩基数)-60mM以上にそれぞれ上昇させることにより、ゲルを形成させることを含む、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成する方法。
【0034】
(2-5):上記(2-1)に記載のオリゴヌクレオチドの混合物を含有し、核酸連結酵素を含有しない第1のゾル状組成物;および
(2-1)に記載のオリゴヌクレオチドの混合物を含有し、核酸連結酵素を含有しない第2のゾル状組成物;
を別々に含む、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成するためのキットであって、
該第1のオリゴヌクレオチドの接着性突出末端部が第1の配列を含み、
該第2のオリゴヌクレオチドの接着性突出末端部が第2の配列を含み、かつ、
該第1の配列と該第2の配列が互いに生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的である、キット。
【0035】
(2-6):上記(2-5)に記載のキットにおける、第1のゾル状組成物と第2のゾル状組成物とを、核酸濃度が3.2/x(突出末端部塩基数)mM以上、塩濃度がNaCl濃度に換算して640mM/x(突出末端部塩基数)-60mM以上となる条件下で混合することにより、ゲルを形成させることを含む、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成する方法。
【0036】
(2-7):上記(2-1)に記載のオリゴヌクレオチドの混合物を含有し、核酸連結酵素を含有しない第1のゾル状組成物;および
両端に接着性の一本鎖からなる突出末端部を有し、その間に二本鎖からなる相補的塩基配列部を有する核酸を含有し、核酸連結酵素を含有しない第2のゾル状組成物;
[第2のゾル状組成物において、
突出末端部は、4~12ヌクレオチド長であって、該第1のゾル状組成物中のオリゴヌクレオチドにおける接着性突出末端部と生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的となる一本鎖核酸部分であり、
相補的塩基配列部は、8~45ヌクレオチド長であって、第1のゾル状組成物中のオリゴヌクレオチドにおける相補的塩基配列部と生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的である二本鎖核酸部分である]
を別々に含む、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成するためのキットであって、
該第1のゾル状組成物中のオリゴヌクレオチドの接着性突出末端部が第1の配列を含み、
該二本鎖からなる相補的塩基配列部の両端の突出末端部が第2の配列を含み、かつ、
該第1の配列と該第2の配列が互いに生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的である、キット。
【0037】
(2-8):上記(2-7)に記載のキットにおける、第1のゾル状組成物と第2のゾル状組成物とを、核酸濃度が3.2/x(突出末端部塩基数)mM以上、塩濃度がNaCl濃度に換算して640mM/x(突出末端部塩基数)-60mM以上となる条件下で混合することにより、ゲルを形成させることを含む、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成する方法。
【0038】
(2-9):上記(2-4)、(2-6)および(2-8)に記載のいずれかの方法により作成された核酸連結酵素を含有しない核酸ゲル。
【0039】
(2-10):上記(2-4)、(2-6)および(2-8)に記載のいずれかの方法において、ゲルの形成前にゲルに封入させるべき内封物質をゾル状組成物に添加することを含む、内封物質を封入し、かつ、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成する方法。
【0040】
(2-11):内封物質が、低分子化合物、タンパク質、および細胞から選択される、(2-10)に記載の方法。
【0041】
(2-12):上記(2-10)または(2-11)記載の方法により作成された、内封物質を含有し、かつ、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲル。
【0042】
(3-1):核酸モノマーが、CpGモチーフを含む、(1-12)および(2-12)のいずれか1に記載の核酸ゾル状組成物、方法、キット、または核酸ゲル。
【0043】
(3-2):核酸モノマーの種類数が、3~8である、(1-12)、(2-12)および(3-1)のいずれか1に記載の核酸ゾル状組成物、方法、キット、または核酸ゲル。
【0044】
(3-3):核酸モノマーがCpGモチーフを含むことを特徴とする、免疫アジュバントを作成するための、(1-1)~(1-3)、および(2-1)~(2-3)のいずれか1に記載のゾル状組成物。
【0045】
(3-4):(1-9)、(1-12)、(2-9)、および(2-12)のいずれか1に記載の核酸ゲルを含む、免疫アジュバントであって、核酸モノマーがCpGモチーフを含むことを特徴とする免疫アジュバント。
【発明の効果】
【0046】
本発明によると、リガーゼ等の核酸連結酵素を添加せず、塩濃度・核酸濃度や突出末端の塩基数を調節することにより、種々の配列の核酸をゲル化させることができるため、添加物含有量の少ないハイドロゲルを作成することができる。また、本発明においては、ゲル作成に安全性の懸念される有機化合物を使用する必要がない。さらにリガーゼ等の酵素の使用による安全性・抗原性の問題も克服される。また、リガーゼを使用する従来の方法によっては、粘弾性の優れた核酸ゲルを調製することは困難であったが、本発明の方法によれば、優れた粘弾性を示す核酸ゲルを調製することができることが見いだされた。
【0047】
さらに、DNAやRNAは、ヒトをはじめ哺乳類細胞に発現するToll-like receptor(TLR)のリガンドにもなりうること、ハイドロゲルのような微粒子はTLRを発現する免疫担当細胞に取り込まれやすいことから、核酸を元に形成される本発明のシステムは生理活性物質の徐放化に加えて、免疫担当細胞を効率よく活性化する免疫アジュバントとしても機能する。さらに本発明によると、アジュバントと抗原の生体内での挙動が別々になるといった問題も克服できる。また、本発明の方法のゲル化によれば、例えば、CpGモチーフの使用により、生体内に導入した場合に高い細胞の免疫刺激性を示す核酸調製物を得ることができる。しかも、本発明によると、副作用の少ない免疫アジュバントを調製することができる。
【0048】
一般に、ゲル製剤は投与に際して切開などが必要となることが問題とされるが、本発明のシステムではゾル状態で投与後、体内でのゲル化も可能である。これにより、注射や噴霧、滴下、塗布による投与も可能である。また、微細化ゲルとは異なり、ゾル状態で投与後、体内でゲル化することから、徐放化などのゲル特性が損なわれるおそれもない。また、本発明のゲルは、チキソトロピー性を有し、シリンジを通して投与されても体内で再度ゲル化することから、徐放化などのゲル特性が損なわれない。
【0049】
また核酸濃度や塩濃度の変化によりゲル化が進み、ゲル化には加熱等が不要であるので、熱や化学反応に弱い物質、例えば抗原タンパク質や細胞の内封も可能であり、不安定な物質を内封させた場合も変性の可能性が少ない。したがって比較的大きな物質をゲルの中に封入しても封入物質の機能を損なう危険が少ない。さらに本発明によるゲルは周囲環境に対しても安定である。
【0050】
さらにアンチセンスDNAやsiRNA、CpG DNAなどの核酸医薬を構造中に組み込むことも可能である。免疫活性化に関しては、適当な塩基配列を選択することで免疫を活性化しないシステムも構築可能である。ゲルの強度は、核酸単位の構造、突出末端数により制御可能であり、核酸濃度、塩濃度、突出末端塩基数を調節することでゲル化が制御できる。これらの調節により、ゲル内部の構造、ゲル強度、内封物質の放出速度も制御することができる。また、核酸単位の末端の一部に種々の機能性分子を挿入可能であり、これにより物性をより大きく変動させることができる。各種修飾核酸も利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明によるオリゴヌクレオチドからハイドロゲルが形成される推定模式図である。
【図2】本発明により形成されたハイドロゲルの概観を示す写真である。
【図3】本発明により形成されたハイドロゲルの走査型電子顕微鏡像である。
【図4】二種類の核酸単位を形成しうる核酸モノマーの群の混合によるゲルの形成の推定模式図である。
【図5】内封物質が内包されたハイドロゲルの形成のプロトコールおよびかかるゲルの走査型電子顕微鏡像である。
【図6】オリゴヌクレオチドから作成されたY型単位およびY型単位を連結して作製されたデンドリマー様DNAの模式図およびそれらのTNF-α放出活性および細胞による取り込みを示すグラフである。
【図7】本発明のゾル状組成物を投与した後、生体内でゲルが形成されたことを示す写真である。
【図8-1】ゾル状組成物を投与した後、生体内でゲルが形成されたことを示す写真および生体内で形成されたゲルの走査型電子顕微鏡像である。
【図8-2】シリンジ内、およびシリンジからの押し出し後のDNA溶液またはDNAハイドロゲルの写真(A)、これらを皮内投与した部位の写真(C)、ならびにシリンジ通過前(B左)およびシリンジ通過後(B右)のハイドロゲルの粘弾性を示すグラフ(B)である。
【図9】CpGモチーフを含むかまたは含まない、免疫学的に活性または免疫学的に不活性のオリゴヌクレオチドの配列およびそれらを用いて得られたゲルの樹状細胞の刺激活性を示す写真である。
【図10】種々の配列のオリゴヌクレオチドの例を示す。
【図11】二種類のTetrapodnaの混合によるゲルの形成の推定模式図と混合により形成されたハイドロゲルの概観を示す写真である。
【図12】Tetrapodnaと二本鎖DNA(dsDNA)の混合によるゲルの形成の推定模式図と混合により形成されたハイドロゲルの概観を示す写真である。
【図13】デコイDNAおよびsiRNAを含むTetrapodnaの設計図である。
【図14】免疫学的に活性のTetrapodnaによるOVAでの刺激による免疫応答の増強を示すプロトコールおよびグラフである。
【図15】本発明のゲルの推定立体構造である。
【図16】種々の核酸単位を用いて得られたゲルの内部構造の違いを示す走査型電子顕微鏡像である。
【図17】DNA濃度、接着性突出末端の長さおよび塩濃度によるゲルの特性の制御を示すグラフである。
【図18】Tetrapodnaの突出末端の性質および塩濃度によるゲルからの内封物質の放出特性の制御を示すグラフである。
【図19】コレステロール修飾オリゴヌクレオチドを用いたゲルの細胞取り込みおよび組織移行性の増大を示す模式図、グラフおよび写真である。
【図20】生体外でゾル状の溶液をマウスの鼻腔内に投与した結果、ゲルとなったことを示す写真である。
【図21】DNAハイドロゲルにGFP標識骨髄由来細胞(BMDC)が組み込まれていることを示す蛍光顕微鏡画像である。
【図22】リガーゼを用いて調製したDNAハイドロゲルと、リガーゼを用いずに調製したDNAハイドロゲルとをゲル粘弾性について対比したグラフである。
【図23】3~12のpodを有するpolypodna調製物についてのPAGE分析の結果を示す写真である。
【図24】DNA調製物のCDスペクトルを示すグラフである。
【図25】マウス血清におけるpolypodna調製物の分解を示す写真(AおよびB)およびグラフ(CおよびD)である。
【図26】マウスに注入した32P-DNAハイドロゲルの注入部位または排出リンパ節における検出量の経時変化を示すグラフである。
【図27】マウス血清におけるDNAハイドロゲルの経時的分解(左上図)、DXRを内包するDNAハイドロゲルからのDXR放出の経時変化(左下図)、およびDXRを内包するCpGDNAハイドロゲルの腫瘍増殖抑制効果を示すグラフ(右図)である。
【図28】CpGDNAハイドロゲルによるIL-6放出誘導効果を示すグラフである。
【図29】CpGを含有するpolypodna調製物によるTNF-α(A)およびIL-6(B)放出誘導を示すグラフである。
【図30】CpGを含有するpolypodna調製物によるTNF-α放出誘導を示すグラフである。
【図31】CpGを含有するpolypodna調製物の細胞内への取り込みを示すグラフである。
【図32】polypodna調製物によるIL-6放出の活性化がTLR9依存的に行われることを示すグラフである。
【図33】polypodna調製物の細胞内への取り込みが、単球によって行われることを示すグラフである。
【図34】CpGを含有するDNAハイドロゲルが持続的に強力にIL-6mRNA発現を誘導することを示すグラフである。
【図35】OVAを内包するCpGDNAハイドロゲルが、適応免疫反応を強く誘導することを示すグラフである。
【図36】注入部位における免疫細胞の浸潤(左図)、および脾腫重量(右図)を各種のアジュバントで対比する写真およびグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
1.定義
特許請求の範囲において、「体温」とは37℃を意味し、「生理条件下」とは塩濃度がNaCl濃度に換算して150mMである条件下をいう。
本明細書および特許請求の範囲において、「核酸モノマー」とは、核酸、核酸誘導体、修飾型核酸、核酸と相補的に結合する化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択され、以下に定義する「核酸単位」を形成しうる化合物をいう。具体的には、一本の「核酸モノマー」は、接着性突出末端を構成する部分(下記模式図におけるx部分)および別の核酸モノマーと二重鎖を形成し得る相補的塩基配列部(下記模式図におけるy部分)を含む。

【0053】
本明細書および特許請求の範囲において、「核酸単位」とは、上記核酸モノマーを含む水溶液における核酸モノマー濃度および塩濃度を一定濃度以上に上昇させた場合に形成されるハイドロゲル(以下単にゲルともいう)を構成する推定構造単位であり、以下の模式図に示す構造(n=2~12)を有するものをいう。ただし、本発明により得られるゲルの内部構造は実際に確認したものではなく、おそらく形成されたゲル内で各核酸モノマーが以下の構造をとる核酸単位の形成を介してゲルとなっていると推測されるものである。なお、「核酸単位」を便宜上、下記模式図により平面的に示しているが、実際は図10の下部に示すような複雑な立体構造をとっていると推測される。これら「核酸単位」がそれを構成する核酸モノマー中の接着性突出末端の互いの相補性により連結し、図15に示すような複雑な高次構造を有するゲルが形成されると推定される。
[核酸単位の模式図]
【化1】
JP2012144560A1_000003t.gif
n=2
【化2】
JP2012144560A1_000004t.gif

【0054】
上記模式図中、xは、1つの核酸単位を他の核酸単位とその相補性により連結させる「接着性突出末端」を構成する部分であり、yは、1つの核酸単位を構成する核酸モノマーと他の核酸モノマーとの二重鎖の形成を可能とする「相補的塩基配列部」である。以下、単に「接着性突出末端」をx、「相補的塩基配列部」をyと称することもある。

【0055】
本明細書および特許請求の範囲において、ゲルにおける形成が推定される「核酸単位」またはゾルにおける「核酸単位を形成しうる核酸モノマーの集合体」を「xxxpodna」と称することがある。xxx部分には、上記核酸単位中のnの数を表す用語、例えば、tri、tetra、hepta、hexa等が入る。即ち上記模式図においてn=3の場合の核酸単位または核酸単位を形成しうる核酸モノマーの集合体を「tripodna」と称し、同様に、n=4の場合、それを「tetrapodna」と称することとする。また、「xxxpodna(a-b-b)」という用語において、aは上記模式図におけるx部分を形成するオリゴヌクレオチドの塩基数を表し、bは上記y部分を形成するオリゴヌクレオチドの塩基数を表す。ただし、n=2の場合は、例外的に「二本鎖核酸」または「ds」や「dsDNA」といったように表記する。

【0056】
本明細書および特許請求の範囲において「相補性」あるいは「相補的」なる用語を%付きの数値として表す場合、同じ長さの2本の核酸モノマーを構成する部分、例えば、2本のxや2本のyを比較した場合に、互いに塩基対を形成する塩基数/全塩基数x100で与えられる数値を意味する。

【0057】
2.発明の概要
本発明を以下、上記模式図を利用して簡単に説明する。
(A)1種の核酸単位からのゲルの形成
上記に定義した1種の核酸単位からなるゲルについてまず説明する。
1種の核酸単位からゲルが形成される場合、核酸単位は以下の模式図で表されるものから選択される1種である。
【化3】
JP2012144560A1_000005t.gif
上記模式図においてnの範囲は3~12であり、好ましくは3~8であり、さらに好ましくは3~6である。nの値が小さすぎても大きすぎてもゲルが形成されにくい傾向がある。

【0058】
本発明によると、上記核酸単位を構成しうる核酸モノマーを含む水溶液は、低塩濃度かつ低核酸濃度では、ゾルとして存在するが、一定の高塩濃度と高核酸濃度の組合せの条件下では、核酸モノマーを構成するy部分が互いにその相補性により二本鎖を形成することにより、上記推定構造をとる核酸単位が形成され、かつ、1つの核酸単位中の核酸モノマーを構成するx部分が別の核酸単位中の核酸モノマーを構成するx部分とそれらの相補性により二本鎖を形成することにより、多数の核酸単位が連結し、ゲルが形成される。このメカニズムを図1に、ゲルの推定内部構造を図15に示す。

【0059】
(B)2種以上の核酸単位からのゲルの形成
次に上記に定義した2種以上の核酸単位からなるゲルについて説明する。
2種以上の核酸単位からゲルが形成される場合、核酸単位は以下の模式図で表されるものから選択される2種以上であるが、ただし、少なくとも1種はn=2ではない(nが3~12の)核酸単位である。
【化4】
JP2012144560A1_000006t.gif
n=2
【化5】
JP2012144560A1_000007t.gif
即ち、上記模式図においてnの範囲は2~12であり、好ましくは2~8であり、さらに好ましくは2~6である。1種の核酸単位のnが2の場合は、少なくとも別の種の核酸単位のnは3~12であり、好ましくは3~8であり、さらに好ましくは3~6である。

【0060】
これら2種以上の核酸単位を構成しうる核酸モノマーを含む水溶液は、低塩濃度かつ低核酸濃度では、ゾルとして存在する。また、2種以上の核酸単位において、1種の核酸単位のxと別の種の核酸単位のxは相補的である必要があるが、それ自体と相補的(自己相補的、例えば、回文配列)である必要はない。2種以上の核酸単位のx部分が自己相補的ではない場合、これら核酸単位を1種含む水溶液は、高塩濃度、高核酸濃度下においてもゲルを形成することはなく、常にゾルとして存在する。一方、これら核酸単位を2種含む水溶液は、低塩濃度かつ低核酸濃度では、ゾルとして存在するが、一定の高塩濃度と高核酸濃度の組合せの条件下では、核酸モノマーを構成するy部分が互いにその相補性により二本鎖を形成することにより、上記推定構造をとる核酸単位が形成され、かつ、1つの核酸単位中の核酸モノマーを構成するx部分が別の核酸単位中の核酸モノマーを構成するx部分とそれらの相補性により二本鎖を形成することにより、多数の核酸単位が連結し、ゲルが形成される。

【0061】
したがって、2種以上の核酸単位を構成しうる核酸モノマーを、それぞれ1種の核酸単位を構成しうる核酸モノマーを含む別々の水溶液として提供した場合、それらは単独では塩濃度、核酸濃度に拘わらずゾル状である。しかし、それらを一定の高塩濃度と高核酸濃度の組合せとなるような条件下で混合すると、ゲルが形成される。即ち、それぞれの核酸単位を構成しうる核酸モノマーを高濃度で含み、かつ高塩濃度である水溶液は、単独ではゾルであるが、互いに混合するのみで、ゲルを形成することができる。この混合によるゲルの形成のメカニズムを図4、図11および図12に示す。

【0062】
3.発明の詳細な説明
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は特許請求の範囲により限定されるものであり、上記の発明の概要および以下の発明の詳細な説明の具体的な記載に限定されるわけではない。

【0063】
・接着性突出末端(模式図におけるx)について
本発明において、ゲルを形成するために必要なxの長さは、塩基数として4塩基以上、好ましくは6塩基以上、さらに好ましくは8塩基以上である。上限は特に限定されないが、例えば、12塩基以下であるのが好ましい。好適なxの長さは、nの数にも依存するが、好ましくは4~12塩基、さらに好ましくは8~12塩基である。xの長さが長い方がゲルが形成されやすい傾向があるが、xの長さが短い方がゲルの内部構造がより微細(密)になる傾向がある。

【0064】
xの配列としては、特に限定されないが、上記(A)に記載のように、1種の核酸単位からゲルを作製する場合は、例えば、xはそれ自体と相補的(自己相補的)であることができ、かかるxの配列としては回文配列が挙げられる。上記(B)に記載のように、2種以上の核酸単位からゲルを作製する場合は、xは少なくとも1種の他の核酸単位を形成しうる核酸モノマー中のxと相補的である必要がある。両方の場合において、相補性の程度は、生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的であればよい。x同士の相補性は、数値で表すと、例えば、90%以上相補的であるのが好ましく、95%以上相補的であるのがより好ましく、100%相補的(回文配列)であるのが最も好ましい。核酸モノマー中の接着性突出末端は、1種の核酸単位を構成しうる全ての種類の核酸モノマーの間で、同一であってもよい。また、核酸モノマー中の接着性突出末端は、全て同一の回文配列構造からなることもある。ある核酸単位を構成するための核酸モノマー中の接着性突出末端は、別の核酸単位を構成するための全部または一部の核酸モノマー中の接着性突出末端と相補的であることがある。また、核酸モノマー中の接着性突出末端は、その核酸モノマーとともに同一の核酸単位を構成するための別の全部または一部の核酸モノマー中の接着性突出末端と相補的でないことがある。

【0065】
・相補的塩基配列部(模式図におけるy)について
本発明において、ゲルを形成するために必要なyの長さは、nの数にも依存するが、塩基数として8塩基以上、好ましくは14塩基以上、さらに好ましくは18塩基以上である。yの長さの上限は特に限定されないが、例えば、nが3の場合、yの長さは8塩基以上、45塩基以下であるのが好ましい。yの長さの上限としては、例えば、45塩基以下、好ましくは30塩基以下、より好ましくは20塩基以下である。nの数が増えるとゲルの形成に必要なyの長さが長くなる傾向があるが、yの長さが短い方がゲルの内部構造がより微細(密)になる傾向がある。

【0066】
yの配列としては、特に限定されないが、上記模式図における核酸単位を形成できるように、1つの核酸モノマー中のyの配列は、それが構成する核酸単位の構成要素である別の核酸モノマー中のyの配列と相補的である必要がある。相補性の程度は、生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的であればよい。同一の核酸単位中で二本鎖を形成する2つのy同士の相補性は、nの数にも依存するが、数値で表すと、例えば、85%以上相補的であるのが好ましく、90%以上相補的であるのがより好ましく、95%以上相補的であるのがさらに好ましく、100%相補的であるのが最も好ましい。例えば、nの数が6の場合、y同士の相補性は89%であればゲルを形成することができることが確認されている。

【0067】
核酸単位を形成するn本の腕(2つのyの二本鎖からなる)の配列は、互いに異なる配列であるのが好ましい。例えば、nが4の場合、核酸モノマーの配列は、x-a-b(この場合、a、bはそれぞれyである)、x-c-d、x-e-f、x-g-hと表すことができるが、完全な核酸単位を形成するには、bとc、dとe、fとg、およびhとaがそれぞれ相補的である必要がある。例えば、生体内でゲルを形成させる場合は、それらの相補性は、生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖を形成する程度にそれぞれ相補的である必要がある。それ以外の配列間(例えば、bとe)の相補性が高い場合、均一な核酸単位が形成されないおそれがある。ただし、ゲルの形成段階は条件を厳密に設定可能であり、(例えば、温度を非常にゆっくりと低下させることが考えられる)、n本の腕の配列が類似であってもかまわない。

【0068】
1つの核酸モノマー中の2つのyの配列は、他の核酸モノマーとの相補性や1本の核酸モノマーから形成されうるヘアピン構造の安定性を予め予測し、適宜設計すればよい。即ち、ヘアピン構造や目的以外の核酸モノマー中の配列との結合に関与する自由エネルギーが、目的の腕(二本鎖)の形成に関与する自由エネルギーよりも大きくなるようにするとよい。即ち、ゲル形成条件下で核酸モノマーが、ばらばらにあるいは推定核酸単位以外の構造形態にて存在するよりも、核酸単位を形成した方がエネルギー的に安定になるようにyの配列を適宜設計するとよい。

【0069】
・核酸モノマーの機能を考慮した配列・修飾について
本発明の核酸モノマーは、形成されるゲルに要求される機能に応じて、種々の核酸配列を有していてもよいし、修飾核酸を含んでいたものでも、核酸以外の修飾基を付加したものであってもよい。例えば、DNAからなる核酸モノマーに、CpGモチーフを含めることにより、得られるゲルの免疫活性を高めることができる。なお、「CpGモチーフ」は、ヒトの場合の最適配列はGTCGTT、齧歯類(マウス、ラット)ではGACGTTとされている。マウスの議論では一般化したプリン-プリン-C-G-ピリミジン-ピリミジンを使う場合もあるが、これはヒトの最適化配列には合わない。さらにこれ以外にも多数のCpGモチーフが免疫活性化を示すことが報告されている。また、配列中のCpGモチーフの数と免疫活性の間には正の相関があると報告されている。なお、本明細書中において、CpGモチーフは、単にCpGと略称されることがある。

【0070】
あるいは、DNA配列以外に、RNA配列を利用することもできる。例えば、機能的核酸として知られているsiRNAを含むゲルも作成できる。また、修飾核酸を核酸モノマーに含めてもよい。かかる修飾核酸としては、2’-O-メチル修飾、ホスホロチオエート修飾、モルフォリノ核酸、LNA、PNAなど、これまでに開発された誘導体・アナログのいずれもゲルの調製に利用することができる。天然型の核酸のみを使ってもよいし、安定性の観点から修飾核酸を使うことも可能である。

【0071】
さらに、修飾核酸以外に、コレステロールあるいはその他脂質等の修飾基を核酸モノマーに直接付加してもよい。例えば、コレステロールを核酸モノマーに付加することにより、得られるゲルの目的組織(例えば、皮膚投与の場合、皮膚組織)への移行性や細胞による取り込み率を上昇させることができる。

【0072】
・内封物質を含むゲルの形成について
本発明による核酸からなるゲルには、種々の物質を内包させることができる。内包させる物質の例としては、ドキソルビシン、ダウノマイシン等のDNAインターカレーター、インスリン等のペプチドおよびペプチド医薬品、卵白アルブミン、スギ抗原等のタンパク質抗原、成長因子、サイトカイン等のタンパク質およびタンパク質医薬品、細胞、および遺伝子改変細胞などが挙げられるが、特に限定されない。内包のメカニズムは、詳細には明らかではないが、核酸単位間の結合が起こる際にその間に存在する内封物質がゲル内に閉じこめられると考えられる。したがって、まずゾルを調製し、内封物質を添加し、例えば、塩濃度や核酸濃度を上昇させることによって、内封物質を内包したゲルを作成することができる。また、内封物質の添加量は特に限定されず、ゲルと同程度の重量であっても内包させることができる。

【0073】
なお、本発明のゲルのサイズは特に限定されず、基本的に上限はない。例えば、0.5mMのDNAで500μlのゲルを作製したとすると、0.5×10-3(mol/l)×500×10-6(l)×6×1023(molecule/mol)=1.5×1017といった数値になるが、厳密なサイズは不明である。

【0074】
・ゲル化に関与する因子について
上記のように、ゲルを形成しうる本発明のゾル状態の組成物は、塩濃度を上昇させたり、核酸濃度を上昇させたりすることによってゲル化する傾向にある。温度については、高温ではゲルよりもゾル化する傾向があり、低温ではゲル化する傾向がある。また、ゲルを形成する核酸モノマーの配列や接着性突出末端の長さによってもゲル化は制御できる。例えば、生体内でゲルを形成させたい場合は、ゲルを形成する核酸モノマーのそれぞれの二本鎖及び接着性突出末端のTmが生体温度(37℃程度)よりも高くなるよう配列を設計すればよい。

【0075】
塩としては、実施例では一価のカチオンであるナトリウムイオンを用いているが、これに限定されず、マグネシウムイオンやカルシウムイオンなどの二価のカチオンも利用でき、二価のカチオンの方が一価のカチオンと比較して低濃度で、核酸をゲル化させることができる。

【0076】
本発明の組成物は、核酸連結酵素を含まないことを必須とし、組成物に含まれる成分としては、水の他には、核酸モノマー、塩類(上記一価または二価のカチオンやそのカウンターアニオン)、緩衝剤、上記内封物質などが挙げられるが、本発明の目的を阻害しない限り、他の成分を含めてもかまわない。

【0077】
・生体内でのゲル形成について
本発明の組成物はゾル状態で投与して生体内でゲルを形成させることができる。投与態様としては、皮膚投与、注射、鼻腔内投与等が挙げられるがこれらに限定されない。皮膚表面に投与した場合は、皮膚上でゲル化が起こり、注射の場合は、注射部位に応じて、皮下、皮内、筋肉内、腹腔内等でゲル化が起こり、鼻腔内投与の場合は、鼻腔にてゲル化が起こる。

【0078】
上記(A)のように、1種の核酸単位から生体内でゲルを形成させる場合、生体内投与用の本発明のゾル状組成物は、投与前にゲル化しないように、低塩濃度、低核酸濃度に維持することが好ましい。低塩濃度、低核酸濃度の本発明のゾル状組成物を投与する場合、生体塩濃度(NaCl濃度に換算しておよそ150mM)と比較して塩濃度が低いため、投与後生体内で水分の吸収及び塩分の分泌が起きることによる核酸濃度増大、塩濃度増大がゲル化を駆動する。

【0079】
上記(B)のように、2種以上の核酸単位から生体内でゲルを形成させる場合、上記のように、低塩濃度、低核酸濃度に維持した2種以上のゾル状組成物を投与してもよいが、1種ずつ別の核酸単位を形成しうるモノマーを含むそれぞれのゾル状組成物は、単独では高塩濃度、高核酸濃度でもゲル化しないため、高塩濃度、高核酸濃度のゾル状組成物として投与してもよい。低塩濃度、低核酸濃度の2種以上のゾル状組成物を用いる場合は、同時に投与しても別々に投与しても、生体内で高塩濃度、高核酸濃度となるためにゲルが形成される。しかし、高塩濃度、高核酸濃度の2種以上のゾル状組成物を用いる場合は、混合するだけでゲル化してしまうため、別々に投与して生体内で初めて混合されゲル化するようにすることが好ましい。

【0080】
・ゲル状態での投与について
また本発明のゲルは、チキソトロピー性を有するので、ゲル状態で投与してもよい。本発明のゲルは、シリンジを通した後も通過前のゲルと同等の粘弾性を有するので、注射での投与が可能である。

【0081】
・核酸単位を構成する核酸モノマーの数について
核酸単位を形成させるための核酸モノマーの数は、核酸モノマー中の塩基数、ゲルの形成に用いる塩の種類、塩濃度、pHおよび他の緩衝剤に依存する。CpGモチーフ等の免疫刺激性の核酸を含む場合、核酸モノマーの塩基数が多いほど免疫刺激性が高くなる。また、免疫刺激性を有するモチーフを含む核酸モノマーについて、同一の核酸量および同一のモチーフ量からなる核酸単位どうしで比較すると、核酸単位を構成する核酸モノマーの数が多いほど免疫刺激性が高い。しかし、核酸モノマーの数を多くする場合には、生理的な条件において、核酸単位の形成が十分に起こらない可能性がある。非生理的な条件は、核酸単位を用いたゲルの薬理的用途には適さない。また、塩基数が多い核酸モノマーは、コストが高く、精製も困難である。さらに、核酸単位を構成する核酸モノマーの数が増えた場合には、核酸ゲル中の核酸末端の数が増えるため、エキソヌクレアーゼによる分解を受けやすくなり、血清中での安定性が低くなる。したがって、CpGモチーフ等の免疫刺激性を有するモチーフを用いる場合、免疫刺激性を増大させるためには、核酸単位を構成する核酸モノマーの数は、3~12、さらに4~8、特に6~8が適当である。

【0082】
・本発明のゲル化による免疫刺激性の向上
後述の実施例に示すとおり、CpGモチーフ等の免疫刺激性を有する要素を含有する核酸モノマーは、一本鎖の状態で用いた場合よりも、核酸単位(polypodna)の状態または核酸ゲルの状態で用いた場合に、免疫応答の活性化の程度が高くなる(図28、図34、図35)。このように、本発明の方法のゲル化によれば、生体内に導入した場合に高い細胞の免疫刺激性を示す核酸調製物を得ることができる。

【0083】
4.各発明についての詳細
以上、好適な実施態様に言及して本発明の作用機構を含めて説明したが、上記の発明の概要および詳細な説明の具体的な記載により限定されるわけではない。

【0084】
本発明は、(1-1)および(2-1)、即ち、以下を提供することができる:
・一部が互いに相補的な、核酸、核酸誘導体、修飾型核酸、核酸と相補的に結合する化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される2本以上の核酸モノマーから構成され、一本の核酸モノマーが、接着性突出末端を構成する部分、1本以上の別の核酸モノマーと二重鎖を形成し得る相補的塩基配列部、を含み、かつ、核酸連結酵素を含有しない、核酸連結酵素を用いることなく核酸ゲルを作成するための核酸ゾル状組成物、および、
・接着性突出末端部と相補的塩基配列部よりなる2以上のオリゴヌクレオチドの混合物を、組成物中に核酸濃度0.3mM+1.6/x(突出末端部塩基数)mM以下にて含有し、核酸連結酵素を含有せず、塩濃度がNaCl濃度に換算して80mM/x(突出末端部塩基数)以下である、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成するためのゾル状組成物:
[ここで、
接着性突出末端部は、4~12ヌクレオチド長であって、少なくとも1つの別のオリゴヌクレオチドにおける接着性突出末端部と生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的となる一本鎖核酸部分であり、
別のオリゴヌクレオチドと相補的に結合する相補的塩基配列部は、8~45ヌクレオチド長であって、別のオリゴヌクレオチドにおける相補的塩基配列部と生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的である]。

【0085】
(1-1)および(2-1)に係る発明は、本発明の核酸連結酵素を含有しないことを特徴とする、核酸連結酵素を用いずに核酸ゲルを作成するための核酸ゾル状組成物に関する。

【0086】
(1-1)において、「核酸モノマー」、「相補的」なる用語は先に定義した通りである。核酸モノマーは、「接着性突出末端」と「相補的塩基配列部」から構成される。また、好ましくは(2-1)におけるように、「核酸モノマー」は、いわゆる「オリゴヌクレオチド」である。

【0087】
(1-1)および(2-1)の両方において、「接着性突出末端」は、上記詳細な説明において模式図を用いて説明したxに相当する部分であり、ある「核酸モノマー」が、2本以上集合して、推定される、ある「核酸単位」を形成した場合、核酸単位中、一本鎖部分として残る部分であって、別の「核酸単位」を形成する核酸モノマーの核酸単位中で一本鎖部分として残る同様の部分と、互いに相補性を有することにより、特定条件下で二本鎖を形成することができる部分をいう。

【0088】
(1-1)および(2-1)の両方において、「相補的塩基配列部」は、上記詳細な説明において模式図を用いて説明したy(yが2つ分)に相当する部分であり、ある「核酸モノマー」が、2本以上集合して、推定される、ある「核酸単位」を形成した場合に核酸単位中で同じ核酸単位を構成する別の核酸モノマー中の同様の部分と、互いに相補性を有することにより、特定条件下で二本鎖を形成する部分である。

【0089】
(1-1)において、「核酸モノマー」は、核酸、核酸誘導体、修飾型核酸、核酸と相補的に結合する化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される。核酸とは天然に存在するDNAまたはRNAまたはそれらの混合物を意味する。好ましくは(2-1)におけるように、核酸モノマーはオリゴヌクレオチドである。核酸誘導体とは、天然に存在するDNAまたはRNAまたはそれらの混合物に対して、修飾基を付加することにより得られる誘導体である。修飾基としては特に限定されないが、脂質、例えば、コレステロール等が挙げられる。修飾型核酸とは、天然に存在するDNAまたはRNAまたはそれらの混合物に対して当業者に知られている改変を、糖部分、塩基部分またはリン酸結合部分のいずれか1つ以上に施したものである。修飾型核酸としては特に限定されないが、2’-O-メチル修飾、ホスホロチオエート修飾、モルフォリノ核酸、LNAなどが挙げられる。また、核酸と相補的に結合する化合物とは、DNAやRNAといった核酸分子と非共有結合により、その構造特性に起因して結合できる化合物であり、例えば、PNAが挙げられる。

【0090】
(1-1)および(2-1)のゾル状組成物は、それぞれ「核酸モノマー」および「オリゴヌクレオチド」の2種以上を混合物として含む。上記(A)に記載のように、1種の核酸単位からゲルを形成するためのゾル状組成物においては、「核酸モノマー」および「オリゴヌクレオチド」の種類は上記(A)のnについて説明した通り、3~12、好ましくは3~8、より好ましくは3~6である。上記(B)に記載のように、2種以上の核酸単位からゲルを形成するためのゾル状組成物においては、「核酸モノマー」および「オリゴヌクレオチド」の種類は上記(B)のnについて説明した通り、2~12、好ましくは2~8、より好ましくは2~6である。

【0091】
(1-1)および(2-1)のゾル状組成物に含まれる「核酸モノマー」および「オリゴヌクレオチド」の「接着性突出末端」および「相補的塩基配列部」の構造、即ち、長さおよび配列、互いの相補性等は、特に限定されないが、好ましくは上記詳細な説明のxおよびyについての説明の記載の通りである。

【0092】
(2-1)のゾル状組成物は、(1-1)のゾル状組成物をさらに限定したものであり、2以上のオリゴヌクレオチドの混合物を、組成物中に核酸濃度0.3mM+1.6/x(突出末端部塩基数)mM以下にて含有し、塩濃度がNaCl濃度に換算して80mM/x(突出末端部塩基数)以下であることを特徴とする。ここで使用する「x」は、オリゴヌクレオチドの突出末端部を形成する塩基数を意味する。塩濃度について、「NaCl濃度に換算して80mM/x以下」とは、組成物中の塩が1価のカチオンであれば80mM/x以下のことをいうが、2価のカチオンであれば、その2分の1の濃度のことをいう。

【0093】
(2-1)のゾル状組成物はさらに、オリゴヌクレオチドの接着性突出末端部の長さが、4~12ヌクレオチド長であり、接着性突出末端部の配列が、少なくとも1つの別のオリゴヌクレオチドにおける接着性突出末端部と生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的となることを特徴とする。また、(2-1)のゾル状組成物はさらに、オリゴヌクレオチドの相補的塩基配列部の長さが、8~45ヌクレオチド長であり、相補的塩基配列部の配列が、別のオリゴヌクレオチドにおける相補的塩基配列部と生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的であることを特徴とする。ここで、生理条件下とは、37℃、塩濃度がNaCl濃度に換算して150mMの条件をいう。

【0094】
(1-1)においては、(2-1)におけるように塩濃度および核酸濃度を限定していないが、それを構成する核酸モノマーの性質に応じて、室温でゲルを形成しない程度の低塩濃度および低核酸濃度であることにより、ゾルとして存在するものである。

【0095】
本発明は、(1-2)および(2-2)、即ち、以下を提供することができる:
・生体内でゲルを作成するための、(1-1)に記載のゾル状組成物、および、
・生体内でゲルを作成するための、(2-1)に記載のゾル状組成物。

【0096】
(1-2)および(2-2)の発明は、(1-1)および(2-1)のゾル状組成物の用途を「生体内でのゲルの作成」に限定したものであり、具体的には、組成物を構成するそれぞれ「核酸モノマー」および「オリゴヌクレオチド」が、生理条件下、即ち、37℃および塩濃度150mMの条件下でゲル化するような特徴を具備しているものをいう。

【0097】
本発明は、(1-3)および(2-3)、即ち、以下を提供することができる:
・核酸モノマーが、相補的塩基配列部において相補的に結合し、かつ、接着性突出末端が生理的条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的である配列構造からなる(1-1)または(1-2)記載のゾル状組成物、および、
・接着性突出末端部が回文配列構造を含む(2-1)記載のゾル状組成物。

【0098】
(2-3)の発明においては、核酸モノマーおよびオリゴヌクレオチドを構成する接着性突出末端部は、すべて同一の回文配列構造であってもよい。(1-3)の発明は、(1-1)または(1-2)の発明において、核酸モノマーが、相補的塩基配列部において相補的に結合することを特徴とする。ここで、相補的に結合する、とは、核酸単位を形成しうる、核酸モノマー中の相補的塩基配列部が、同じ核酸単位を形成しうる別の核酸モノマー中の相補的塩基配列部と、少なくとも85%相補的、好ましくは90%以上相補的、より好ましくは95%以上相補的、特に好ましくは100%相補的であることを指す。

【0099】
本発明は、(1-4)および(2-4)、即ち、以下を提供することができる:
・上記(1-1)~(1-3)いずれかの核酸ゾル状組成物の核酸濃度および/または塩濃度を高めることにより、核酸連結酵素を用いることなく核酸ゲルを作成する方法、および、
・上記(2-3)に記載のゾル状組成物中の、核酸濃度を3.2/x(突出末端部塩基数)mM以上、塩濃度をNaCl濃度に換算して640mM/x(突出末端部塩基数)-60mM以上にそれぞれ上昇させることにより、ゲルを形成させることを含む、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成する方法。

【0100】
(1-4)および(2-4)はいずれも本発明の核酸ゾル状組成物の核酸濃度および/または塩濃度を高めることにより、核酸連結酵素を用いることなく核酸ゲルを作成する方法に関する。本発明は、核酸ゲルの作成において核酸連結酵素を用いないことを特徴とする。即ち、(1-4)および(2-4)の発明は、本発明の上記ゾル状組成物の核酸濃度および/または塩濃度を高めるだけで、ゲルを形成する方法である。

【0101】
(1-4)においては、ゲルを形成するための核酸濃度および/または塩濃度は特に限定されず、ゾル状組成物を構成する核酸モノマーの性質に応じて、適宜当業者が選択することができる。(2-4)のゲルの作成方法は、上記(2-3)に記載のゾル状組成物中の、核酸濃度を3.2/x(突出末端部塩基数)mM以上、塩濃度をNaCl濃度に換算して640mM/x(突出末端部塩基数)-60mM以上にそれぞれ上昇させることを含む。ここで「x」および「NaCl濃度に換算」とは(2-1)の発明について説明した通りである。

【0102】
本発明は、(1-5)および(2-5)、即ち、以下を提供することができる:
・上記(1-1)に記載の第1の核酸モノマーを含む、核酸連結酵素を含有しない、第1のゾル状組成物;および
(1-1)に記載の第2の核酸モノマーを含む、核酸連結酵素を含有しない、第2のゾル状組成物;
を別々に含む、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成するためのキットであって、
該第1の核酸モノマー中の接着性突出末端が第1の配列を含み、
該第2の核酸モノマー中の接着性突出末端が第2の配列を含み、かつ、
該第1の配列と該第2の配列が互いに生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的である、核酸連結酵素を用いることなく核酸ゲルを作成するためのキット、および、
・上記(2-1)に記載のオリゴヌクレオチドの混合物を含有し、核酸連結酵素を含有しない第1のゾル状組成物;および
(2-1)に記載のオリゴヌクレオチドの混合物を含有し、核酸連結酵素を含有しない第2のゾル状組成物;
を別々に含む、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成するためのキットであって、
該第1のオリゴヌクレオチドの接着性突出末端部が第1の配列を含み、
該第2のオリゴヌクレオチドの接着性突出末端部が第2の配列を含み、かつ、
該第1の配列と該第2の配列が互いに生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的である、キット。

【0103】
(1-5)および(2-5)は、上記(B)の2種以上の核酸単位からゲルを形成させるためのゾル状組成物に関する。

【0104】
具体的には、(1-5)の発明は、互いに異なる(1-1)に規定した第1のゾル状組成物および第2のゾル状組成物(これらはそれぞれ互いに異なる第1および第2の核酸モノマーを含み、核酸連結酵素を含有しない)を別々に含む、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成するためのキットである。さらに(1-5)の発明において、該第1の核酸モノマー中の接着性突出末端が第1の配列を含み、該第2の核酸モノマー中の接着性突出末端が第2の配列を含む。ここで、該第1の配列と該第2の配列は、互いに生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的であることを特徴とする。なお、該第1の配列と該第2の配列の相補性の程度の定義における、「生理条件下」とは37℃、NaCl濃度150mMの条件をいう。相補性のパーセンテージは、該第1の配列と該第2の配列、即ち、接着性突出末端の長さに応じて異なるが、好ましくは90%以上相補的であり、さらに好ましくは95%以上相補的であり、特に好ましくは100%相補的である。

【0105】
また、(2-5)の発明は、(1-5)の発明をさらに限定するものであり、その限定の特徴は(2-1)におけるものと同じである。

【0106】
本発明は、(1-6)および(2-6)、即ち、以下を提供することができる:
・上記(1-5)に記載のキットにおける、第1のゾル状組成物と第2のゾル状組成物とを混合することにより、ゲルを形成させることを含む、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成する方法、および、
・上記(2-5)に記載のキットにおける、第1のゾル状組成物と第2のゾル状組成物とを、核酸濃度が3.2/x(突出末端部塩基数)mM以上、塩濃度がNaCl濃度に換算して640mM/x(突出末端部塩基数)-60mM以上となる条件下で混合することにより、ゲルを形成させることを含む、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成する方法。

【0107】
(1-6)および(2-6)の発明は、それぞれ(1-5)および(2-5)の第1のゾル状組成物と第2のゾル状組成物とを混合することを含む、核酸ゲルの作成方法である。(1-6)の発明においては、ゲルを形成するための核酸濃度および/または塩濃度は特に限定されず、2種類のゾル状組成物を構成する核酸モノマーの性質に応じて、適宜当業者が選択することができる。(2-6)のゲルの作成方法は、上記(2-5)に記載のキットにおける、第1のゾル状組成物と第2のゾル状組成物とを、核酸濃度が3.2/x(突出末端部塩基数)mM以上、塩濃度がNaCl濃度に換算して640mM/x(突出末端部塩基数)-60mM以上となる条件下で混合することにより、ゲルを形成させることを含む。ここで「x」および「NaCl濃度に換算」とは(2-1)の発明について説明した通りである。

【0108】
なお、(1-6)および(2-6)の方法のメカニズムを模式的に示したのは図11であるが、この模式図に示す態様に限定されるわけではない。

【0109】
本発明は、(1-7)および(2-7)、即ち、以下を提供することができる:
・上記(1-1)に記載の核酸モノマーを含む、核酸連結酵素を含有しない、第1のゾル状組成物;および
両末端に接着性一本鎖からなる突出末端を有する二本鎖核酸を含有し、核酸連結酵素を含有しない第2のゾル状組成物;
を別々に含む、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成するためのキットであって、
該第1の核酸モノマー中の接着性突出末端が第1の配列を含み、
該二本鎖核酸の両末端の突出末端が第2の配列を含み、かつ、
該第1の配列と該第2の配列が互いに生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的である、核酸連結酵素を用いることなく核酸ゲルを作成するためのキット、および、
・上記(2-1)に記載のオリゴヌクレオチドの混合物を含有し、核酸連結酵素を含有しない第1のゾル状組成物;および
両端に接着性の一本鎖からなる突出末端部を有し、その間に二本鎖からなる相補的塩基配列部を有する核酸を含有し、核酸連結酵素を含有しない第2のゾル状組成物;
[第2のゾル状組成物において、
突出末端部は、4~12ヌクレオチド長であって、該第1のゾル状組成物中のオリゴヌクレオチドにおける接着性突出末端部と生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的となる一本鎖核酸部分であり、
相補的塩基配列部は、8~45ヌクレオチド長であって、第1のゾル状組成物中のオリゴヌクレオチドにおける相補的塩基配列部と生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的である二本鎖核酸部分である]
を別々に含む、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成するためのキットであって、
該第1のゾル状組成物中のオリゴヌクレオチドの接着性突出末端部が第1の配列を含み、
該二本鎖からなる相補的塩基配列部の両端の突出末端部が第2の配列を含み、かつ、
該第1の配列と該第2の配列が互いに生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的である、キット。

【0110】
(1-7)の発明は、(1-5)の発明における「第2のゾル状組成物」に含まれる「第2の核酸モノマー」を「両末端に接着性一本鎖からなる突出末端を有する二本鎖核酸」に変更したものである他は、(1-5)の発明と同様である。即ち、(1-5)の発明の「核酸モノマー」が形成しうる「核酸単位」を上記模式図においてnが2である場合の、「両末端に接着性一本鎖からなる突出末端を有する二本鎖核酸」に変更したものである。

【0111】
(2-7)の発明は、(2-5)の発明における「第2のゾル状組成物」に含まれる「第2のオリゴヌクレオチド」を「両端に接着性の一本鎖からなる突出末端部を有し、その間に二本鎖からなる相補的塩基配列部を有する核酸」に変更したものである他は、(2-5)の発明と同様である。即ち、(2-5)の発明の「オリゴヌクレオチド」が形成しうる「核酸単位」を上記模式図においてnが2である場合の、「両端に接着性の一本鎖からなる突出末端部を有し、その間に二本鎖からなる相補的塩基配列部を有する核酸」に変更したものである。さらに(2-7)の発明は、第2のゾル状組成物の特徴において、「突出末端部」を、「4~12ヌクレオチド長であって、第1のゾル状組成物中のオリゴヌクレオチドにおける接着性突出末端部と生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的となる一本鎖核酸部分であり」と限定し、かつ、「相補的塩基配列部」を、8~45ヌクレオチド長であって、第1のゾル状組成物中のオリゴヌクレオチドにおける相補的塩基配列部と生理条件下で体温以上の融解温度を示す二本鎖配列を形成する程度に相補的である二本鎖核酸部分である」ものに限定したものである。

【0112】
本発明は、(1-8)および(2-8)、即ち、以下を提供することができる:
・上記(1-7)に記載のキットにおける、第1のゾル状組成物と第2のゾル状組成物とを混合することにより、ゲルを形成させることを含む、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成する方法、および、
・上記(2-7)に記載のキットにおける、第1のゾル状組成物と第2のゾル状組成物とを、核酸濃度が3.2/x(突出末端部塩基数)mM以上、塩濃度がNaCl濃度に換算して640mM/x(突出末端部塩基数)-60mM以上となる条件下で混合することにより、ゲルを形成させることを含む、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成する方法。

【0113】
(1-8)および(2-8)の発明は、それぞれ(1-7)および(2-7)の第1のゾル状組成物と第2のゾル状組成物とを混合することを含む、核酸ゲルの作成方法である。(1-8)の発明においては、ゲルを形成するための核酸濃度および/または塩濃度は特に限定されず、2種類のゾル状組成物を構成する核酸モノマーおよび二本鎖核酸の性質に応じて、適宜当業者が選択することができる。(2-8)のゲルの作成方法は、上記(2-7)に記載のキットにおける、第1のゾル状組成物と第2のゾル状組成物とを、核酸濃度が3.2/x(突出末端部塩基数)mM以上、塩濃度がNaCl濃度に換算して640mM/x(突出末端部塩基数)-60mM以上となる条件下で混合することにより、ゲルを形成させることを含む。ここで「x」および「NaCl濃度に換算」とは(2-1)の発明について説明した通りである。

【0114】
なお、(1-8)および(2-8)の方法のメカニズムを模式的に示したのは図12であるが、この模式図に示す態様に限定されるわけではない。

【0115】
本発明はさらに、(1-9)および(2-9)、即ち、以下を提供することができる:
・上記(1-4)、(1-6)および(1-8)に記載のいずれかの方法により作成された核酸連結酵素を含有しない核酸ゲル、および、
・上記(2-4)、(2-6)および(2-8)に記載のいずれかの方法により作成された核酸連結酵素を含有しない核酸ゲル。

【0116】
(1-9)および(2-9)の発明による核酸ゲルは、核酸連結酵素を含有しないことを特徴とする。

【0117】
本発明は、(1-10)および(2-10)、即ち、以下を提供することができる:
・上記(1-4)、(1-6)および(1-8)に記載のいずれかの方法において、ゲルの形成前にゲルに封入させるべき内封物質をゾル状組成物に添加することを含む、内封物質を封入し、かつ、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成する方法、および、
・上記(2-4)、(2-6)および(2-8)に記載のいずれかの方法において、ゲルの形成前にゲルに封入させるべき内封物質をゾル状組成物に添加することを含む、内封物質を封入し、かつ、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルを作成する方法。

【0118】
(1-10)および(2-10)の発明は、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルであって、さらに内封物質を内包する核酸ゲルの作成方法に関する。かかる方法は、(1-4)、(1-6)および(1-8)ないし(2-4)、(2-6)および(2-8)の核酸ゲルの作成方法において、さらに、ゲルの形成前にゲルに封入させるべき内封物質をゾル状組成物に添加することを含む。内封物質としては、ゲルに内包させたい核酸連結酵素以外の物質であれば特に限定されず、例えば、ドキソルビシン、ダウノマイシン等のDNAインターカレーター、インスリン等のペプチドおよびペプチド医薬品、卵白アルブミン、スギ抗原等のタンパク質抗原、成長因子、サイトカイン等のタンパク質およびタンパク質医薬品、細胞、および遺伝子改変細胞などが挙げられるが、特に限定されない。

【0119】
(1-10)および(2-10)の発明によると、まずゾルを調製し、内封物質を添加し、例えば、塩濃度や核酸濃度を上昇させることによって、内封物質を内包したゲルを作成することができる。また、内封物質の添加量は特に限定されず、ゲルと同程度の重量であっても内包させることができる。

【0120】
本発明は、(1-11)および(2-11)、即ち、以下を提供することができる:
・内封物質が、低分子化合物、タンパク質、および細胞から選択される、(1-10)に記載の方法、および、
・内封物質が、低分子化合物、タンパク質、および細胞から選択される、(2-10)に記載の方法。

【0121】
(1-11)および(2-11)の発明は、それぞれ(1-10)および(2-10)の発明における、内封物質を低分子化合物、タンパク質、および細胞に限定するものであるが、但し、タンパク質は核酸連結酵素ではない。低分子化合物、タンパク質、および細胞の例は上記の通りである。

【0122】
本発明は、(1-12)および(2-12)、即ち、以下を提供することができる:
・上記(1-10)または(1-11)記載の方法により作成された、内封物質を含有し、かつ、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲル、および、
・上記(2-10)または(2-11)記載の方法により作成された、内封物質を含有し、かつ、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲル。

【0123】
(1-12)および(2-12)の発明は、(1-10)、(1-11)、(2-10)または(2-11)の方法により作成された内封物質を含有し、かつ、核酸連結酵素を含有しない核酸ゲルに関する。かかる核酸ゲルはゲルの複雑な微細構造の中に所望の内封物質を内包したものであり、例えば、生体内で、内封物質を徐々に放出することを可能とするものである。

【0124】
本発明は、(1-13)、即ち、以下を提供することができる:
・核酸モノマーが、相補的塩基配列部において相補的に結合し、かつ、接着性突出末端が回文配列構造を含む(1-1)または(1-2)記載のゾル状組成物。

【0125】
本発明は、(3-1)~(3-4)、即ち、以下を提供することができる:
(3-1):核酸モノマーが、CpGモチーフを含む、(1-1)~(1-12)および(2-1)~(2-12)のいずれか1に記載の核酸ゾル状組成物、方法、キット、または核酸ゲル。
(3-2):核酸モノマーの種類数が、3~8である、(1-1)~(1-12)、(2-1)~(2-12)、および(3-1)のいずれか1に記載の核酸ゾル状組成物、方法、キット、または核酸ゲル。
(3-3):核酸モノマーがCpGモチーフを含むことを特徴とする、免疫アジュバントを作成するための、(1-1)~(1-3)、および(2-1)~(2-3)のいずれか1に記載のゾル状組成物。
(3-4):(1-9)、(1-12)、(2-9)、および(2-12)のいずれか1に記載の核酸ゲルを含む、免疫アジュバントであって、核酸モノマーがCpGモチーフを含むことを特徴とする免疫アジュバント。
【実施例】
【0126】
以下、本発明を実施例および図面を用いて詳細に説明するが、これら実施例および図面は本発明の範囲を限定する意図ではない。
【実施例】
【0127】
材料および方法
化学物質
RPMI1640 培地は、日水製薬 (Nissui Pharmaceutical Co., Ltd., Tokyo, Japan)から得た。胎児ウシ血清 (FBS)は、Equitech-Bio, Inc (Kerrville, TX, USA)から得た。Opti-MEM(Opti-modified Eagle’s 培地)は、Invitrogen (Carlsbad, CA, USA)から購入した。20-bp DNAラダーは、タカラバイオ株式会社(Takara Bio Inc. Otsu, Japan)から購入した。その他のすべての試薬・物質は利用可能な最高等級のものであり、さらに精製せずに用いた。
【実施例】
【0128】
オリゴデオキシヌクレオチド(ODNとも称する)
ホスホジエステルオリゴデオキシヌクレオチド (ODN) はIntegrated DNA Technologies, Inc. (Coralville, IA, USA)から購入した。ODNの配列を表1に列挙する。表1において、各ODNは「Xpodna-Y-Z」と命名した。ここで、Xは、トリ(tri(3))、テトラ(tetra(4))、ペンタ(penta(5))、ヘキサ(hexa(6))またはオクタ(octa(8))を表し、Yは、各Xpodnaの番号付けを表し(1、2等)、Zは各Xpodnaを構成するODNの番号付けを表す。細胞取り込み研究については、5’-末端をAlexa Fluor 488で標識したODNをJBioS (Saitama, Japan)から購入し、蛍光標識Polypodnaの調製に用いた。
【実施例】
【0129】
ODNの溶液(polypodnaとも称する)の調製
各ODNを5 mM 塩化ナトリウム(NaCl)を含有するTEバッファー (10 mM Tris-HCl, 1 mM エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA), pH 8)に溶解した。混合物を次いで、サーマルサイクラーを用いて95℃で5分、65℃で2分、62℃で1分インキュベートし、そしてゆっくりと4℃まで冷却した。生成物を12 % ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により室温で (約22-25℃)、200 Vにて45分間泳動して分析した。
【実施例】
【0130】
ゲルの形成とゲル強度の評価
ODNの溶液(polypodna)に、NaCl 溶液を最終Na+濃度が5-150 mMとなるように添加した。ゲルの形成とゲル強度をゲル強度分析器(ゲル強度計、中山電機、大阪)において測定した。
【実施例】
【0131】
DNA ハイドロゲルの走査型電子顕微鏡による観察
DNA ハイドロゲルの内部構造を観察するために、それらを2%グルタルアルデヒドを用いて室温で一晩固定し、徐々に上昇する濃度のエタノールを用いて脱水し、そしてエタノールをブチルアルコールに置換し、凍結乾燥した。乾燥した材料をナイフで破断し、DNA ハイドロゲルの内部構造を電界放射型走査電子顕微鏡 (FE-SEM: S4700, HITACHI, Japan)を用いて観察した。
【実施例】
【0132】
表1:実施例において使用したオリゴヌクレオチドの名称・配列
【表1-1】
JP2012144560A1_000008t.gif
【表1-2】
JP2012144560A1_000009t.gif

【表1-3】
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【表1-4】
JP2012144560A1_000011t.gif

【表1-5】
JP2012144560A1_000012t.gif

【表1-6】
JP2012144560A1_000013t.gif

【表1-7】
JP2012144560A1_000014t.gif
【表1-8】
JP2012144560A1_000015t.gif
【表1-9】
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【実施例】
【0133】
表中、各ODNの名称であるXXXpodnay-Z(ここで、XXXは、Tri、Tetra、Pentaなどであり、yおよびZは、数字である)は、その配列がXXXpodnayを作るためのODNであることを意味する。例えば、Tripodna30は、Tripodna30-1、Tripodna30-2、およびTripodna30-3を用いて作られる。
【実施例】
【0134】
[実施例1]
(1-1)DNAからなるハイドロゲルの作成
室温、5mM~150mM塩化ナトリウム濃度(150mMは、ほぼ生理的濃度)、DNAリガーゼ不含の条件下で、ハイドロゲルになる構造(核酸モノマーおよび推定核酸単位)を明らかにした。この際、核酸単位を構成しうると考えられる核酸モノマーの数を増加することにより、より温和な条件(低塩濃度)でゲル化することも見出した。簡便のため、核酸単位を構成しうる核酸モノマー数に応じて、形成が推定される核酸単位をxxxpodna(xxxpod-like structure forming nucleic acid、xxxには、核酸単位を構成しうる核酸モノマーの数に応じてtri(3)、tetra(4)等が入る)と表記する。下記表2において、xxxpodnaは推定核酸単位、xxx-Y-Nはそれぞれ、その上に標記する核酸単位(xxxpodna)の構成要素となりうる核酸モノマーであり、Yの標記が相異なると、相異なる核酸単位を形成しうることを表し、Nは、各推定核酸単位を構成する核酸モノマーの番号付けを示す。
【実施例】
【0135】
表2:実施例1-1において使用したオリゴヌクレオチドの名称・配列
【表2-1】
JP2012144560A1_000017t.gif
【表2-2】
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【表2-3】
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【表2-4】
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【実施例】
【0136】
これら核酸モノマーを用いた以上の検討から、接着性突出末端が4塩基以上、核酸単位を構成するオリゴヌクレオチド数が3以上の場合に、塩基配列に関係なくハイドロゲルが作製可能であることを見出した。図1に、4本の核酸モノマー(オリゴヌクレオチド)が、推定される核酸単位Tetrapodnaを介してDNAハイドロゲルを形成する推定模式図を示し、図2には、tetrapodnaを用いた場合の形成されたハイドロゲルの概観を示す。また図3には、走査型電子顕微鏡で観察したゲルの内部構造を示す。図3において右側は左側の拡大図であり、網目構造のゲルが形成していることがわかる。なお、本実施例においては、xxxpodnaを構成する核酸モノマーの接着性突出末端はいずれも回文配列であり、1種類の核酸単位が互いに回文配列を介して接着していると推定される。
【実施例】
【0137】
(1-2)複数の核酸単位を利用した核酸ハイドロゲル
上記(1-1)とは異なり、それ自身とは接着しない(即ち回文配列ではない)接着性突出末端を有する核酸モノマーを用いることで、ゲル化を制御することが可能である。例えば、下記のtetrapodna(G)とtetrapodna(H)を混合することで、ハイドロゲルが調製可能であった。また、tetrapodna(H)に代えて、2本鎖DNA(dsDNA)でも同様のゲルが調製できた。図4に示す模式図において、上側は、2種類の回文配列ではない互いに相補的な接着性突出末端を有するTetrapodonaを用いたハイドロゲルの形成を示すのに対し(以下のTetrapodona(G)とtetrapodna (H)の混合に対応)、下側は、回文配列ではない接着性突出末端を有するTetrapodna(A)と、当該接着性突出末端に相補的な接着性突出末端を有するdsDNAを用いたハイドロゲルの形成を示す(以下のTetrapodna(G)とdsDNAとの混合に対応)。使用した核酸モノマーを表3に示す。
【実施例】
【0138】
表3:実施例1-2において使用したオリゴヌクレオチドの名称・配列
【表3】
JP2012144560A1_000021t.gif
【実施例】
【0139】
[実施例2-1]
抗原タンパク質や細胞を内包するハイドロゲルの調製
実施例1により、核酸モノマーを利用した核酸ハイドロゲルの調製が可能となったので、これを利用して、抗原タンパク質や細胞を内包するハイドロゲルの調製を試みた。具体的には、表1に記載のTetrapodna(4-18-18)(配列番号2、4、5、6)をDNA濃度0.5mM、NaCl濃度5mMとなるような水溶液を調製し、そこに目的の内封物質(ドキソルビシン、卵白アルブミン、またはRAW264.7細胞)を加え、NaCl濃度を150mMまで上昇させた。その結果、抗原タンパク質や細胞を内包するハイドロゲルの調製が可能となった。図5に得られた内封物質を内包するハイドロゲルの走査型電子顕微鏡写真を示す。
【実施例】
【0140】
[実施例2-2]
生存細胞のDNAハイドロゲルへの組み込み
サイトメガロウイルス/ニワトリβ-アクチンプロモーターで制御下で強化緑色蛍光タンパク質(eGFP)を発現するeGFPトランスジェニックマウス(5週齢)を日本エスエルシー株式会社(静岡、日本)から購入した。ペントバルビタールを用いた麻酔によってマウスを屠殺し、大腿骨および脛骨から全ての結合組織を除去した。26ゲージ針を用いて、10%加熱不活性化ウシ胎児血清を含有するRPMIで大腿骨および脛骨を洗い流して、骨髄細胞を単離した。40μm細胞ろ過器(BD Falcon、Franklin Lakes、NJ、USA)を通して細胞混合物をろ過し、その後、0.1%塩化アンモニウムの低浸透圧溶液中、室温で5分間インキュベーションして、混入した赤血球を溶解させた。残存細胞を、450×gで10分間、遠心分離機にかけ、ペレットに回収された細胞を骨髄由来細胞(BMDC)として用いた。96ウェルプレート中のそれぞれのウェルに、1×10細胞/ウェルの密度でGFP-BMDCを添加した。
次に、表1中のODN(Hexapodna(8-16-16)-2-01~06、およびHexapodna(8-16-16)-3-01~06)を用いて、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)中でDNAハイドロゲルを調製した。
そして、350μg/ウェルの最終濃度で、GFP-BMDC-含有ウェルにDNAサンプルを添加した。ハイドロゲルのための2セットのhexapodnaを、ウェル中で混合した。蛍光顕微鏡Biozero(キーエンス、大阪、日本)を用いて蛍光画像を得た。
x-z切片の画像を、図21に示す。図21中、棒および矢印は、hexapodna溶液(上の図)またはDNAハイドロゲル(下の図)の高さを表す。図21に示されるように、細胞は、ハイドロゲル中に組み込まれていた。
【実施例】
【0141】
[実施例3]
ゲル化による核酸の免疫細胞活性化能の増強可能性
CpGモチーフを含むTripodna(配列番号1、2、3)を用いて、図6に示すように、まずアニーリングにより推定Tripodna構造であるY型DNAを作成し(Ys)、次いで、それをさらに4単位アニーリングさせてG1、さらに10単位アニーリングさせてG2の推定構造を有するデンドリマー様DNAを得た。これらを用いて、TNF-α放出刺激能および細胞への取り込み率を調べた。結果を図6に示す。高分子量化することにより、TNF-α放出活性および細胞取り込み率の両方が格段に向上することが理解できる。
【実施例】
【0142】
[実施例4-1]
実施例1で作成したハイドロゲルは、条件を適当に調節することで、ゾル状態で調製することができる。従って、生体への注射での投与が可能である。図7に示すように、末端に非接着性突出末端を有するコントロールのTetrapodnaおよび、本発明による末端に接着性突出末端を有するTetrapodna(4-18-18)(配列番号2、4、5、6)の総DNA濃度2mM、NaCl濃度5mMのゾル状溶液を作成し、それぞれマウスの背中左側および右側の皮下に注射により投与した。結果は、図7および図8-1に示すように、コントロールのTetrapodnaでは生体内でゲルが形成されなかったのに対し、本発明によるTetrapodnaを用いた場合、ゾル状の低塩濃度水溶液からの水分の吸収によるDNA濃度の上昇および生体内の塩濃度への塩濃度の上昇により、投与後、生体内でゲル化することが確認された。これにより、本発明によるハイドロゲルはゾル状態で調製して生体内に投与するだけで、生体内でゲルを形成することが確認された。図8-1には、生体内で形成されたゲルの走査型電子顕微鏡写真も示す。
【実施例】
【0143】
[実施例4-2]
(4-2-1)シリンジ通過後のDNAハイドロゲルの様子
DNA(hexapodna)およびDNAハイドロゲルの作製には、それぞれ表1の配列のうちの下記のODNを用いた。
DNA (hexapodna): hexapodna (8-16-16)-2-01~06, hexapodna (8-16-16)-4-01~06;
DNAハイドロゲル: hexapodna (8-16-16)-2-01~06, hexapodna (8-16-16)-3-01~06;
Hexapodna (8-16-16)-2-01~06、hexapodna (8-16-16)-3-01~06、hexapodna (8-16-16)-4-01~06を95℃まで加熱後、徐々に冷却することで、それぞれhexapodna-2、hexapodna-3、hexapodna-4を調製し、ヨウ化プロピジウム(PI)でDNAを染色した。このとき、ODNは1.5M NaClを含むTEバッファー(10mM Tris-HCl、1mM EDTA、pH8)で溶解し、各ODNの終濃度が0.5mMとなるように調製した。29G針付きシリンジに、hexapodna-2溶液を吸い取り、次いでhexapodna-4(DNA)またはhexapodna-3(DNAハイドロゲル)を吸い、シリンジ内で撹拌した。ゲル化の有無を目視により確認後、DNA溶液またはDNAハイドロゲルをシリンジから押しだした。
図8-2Aに、シリンジ内、および押し出し後のDNA溶液およびDNAハイドロゲルの様子の写真を示す。図8-2Aに示されるように、DNAハイドロゲルは、シリンジからの押し出し後も、ゲル状態であった。
(4-2-2)ゲル粘弾性の測定
ゲル粘弾性測定器(株式会社中山電機製)にゲルの入ったチューブをセットした。測定棒をゲルの上端まで降下させ、その後、測定棒を500μm降下させたときの荷重値を経時的に測定した。測定には、(4-2-1)においてチューブ内で作製したDNAハイドロゲルと、シリンジ内で形成後シリンジから押し出したDNAハイドロゲルを用いた。
粘弾性の結果を図8-2Bに示す。図8-2Bに示されるように、シリンジを通したゲルは、通過前のゲルと同程度の粘弾性を有していた。
(4-2-3)シリンジを通したマウス皮内への投与
(4-2-1)と同様の方法で、PI標識DNA(hexapodna)またはDNAハイドロゲルを29G針付シリンジ内で調製した。ICRマウスをイソフルランで麻酔し、背部を除毛後、皮内に各サンプルを注射投与した。投与3時間後にマウスを屠殺し、背部皮膚を剥がし、投与部位の様子を観察した。
投与3時間後の投与部位の写真を図8-2Cに示す。図8-2Cに示されるように、本発明のハイドロゲルは、シリンジを通した投与後、体内でゲル状態であった。
(4-2-1)~(4-2-3)の結果から、本発明のハイドロゲルは、チキソトロピー性を有し、ゲル状態でシリンジを通して注射投与しても体内で再度ゲル化するため、ゲル状態でシリンジを通して注射投与できることが明らかになった。
【実施例】
【0144】
[実施例5]
種々の配列の核酸(DNAのみならずRNAも含む)を用いたハイドロゲルの作成
(5-1)免疫学的に活性のゲルおよび免疫学的に不活性なゲルの作成
図9に示すように、CpGモチーフを含まないTetrapodna(4-18-18)(配列番号14、15、16、17)およびCpGモチーフを含むTetrapodna(4-18-18)(配列番号2、4、5、6)(図9中、CpGモチーフの存在を下線で示す)を用いて上記のようにしてゲルを作成した。作成したゲルをマウス樹状細胞DC2.4と接触させたところ、CpGモチーフを含まないTetrapodnaにより作成されたゲルは、図9の右側の写真から明らかなようにマウス樹状細胞を免疫学的に刺激せず、CpGモチーフを含むTetrapodnaにより作成されたゲルは、図9の中央の写真から明らかなように、マウス樹状細胞を免疫学的に顕著に刺激した。このことから、本発明の核酸モノマーの配列を制御することにより、具体的にはCpGモチーフを含めることにより、免疫学的に活性のゲルを作成することができることが判明した。また、同様にCpGモチーフを含めないことにより、免疫学的に不活性のゲルを作成することができることも判明した。
【実施例】
【0145】
(5-2)種々の配列を有するxxxpodnaを用いたゲルの調製例
図10に示すように、末端に回文配列である4塩基から12塩基の長さの接着性突出末端を含む、Tripodna(4-18-18)(配列番号1、2、3)、Tetrapodna(4-18-18)(配列番号2、4、5、6)、Tetrapodna(6-17-17)(配列番号18、19、20、21)、Tetrapodna(8-16-16)(配列番号22、23、24、25)、Tetrapodna(10-15-15)(配列番号26、27、28、29)、Tetrapodna(12-14-14)(配列番号30、31、32、33)、Pentapodna(4-18-18)(配列番号2、3、4、7、8)、Hexapodna(4-18-18)(配列番号2、3、4、7、9、10)を用いてゲルを調製することができることを確認した。図10の下の図は、それぞれTripodna、Tetrapodna、Pentapodna、Hexapodnaのゲル中での推定構造である。
【実施例】
【0146】
(5-3)
図11に示すように、末端に回文配列ではない、12塩基の長さの接着性突出末端を含むTetrapodna(A) (12-14-14)(配列番号34、35、36、37)を総DNA濃度2mMにて、NaClを濃度150mMにて含む水溶液と、Tetrapodna(A) の接着性突出末端と相補的な12塩基の長さの接着性突出末端を含むTetrapodna(B) (12-14-14)(配列番号38、39、40、41)を総DNA濃度2mMにて、NaClを濃度150mMにて含む水溶液を調製した。これらTetrapodna(A)およびTetrapodna(B)は、DNA濃度および塩濃度を上昇させても、単独ではゲルを形成することができないが、それぞれの水溶液を混合して最終DNA濃度2mMおよびNaCl濃度150mMとした場合、ゲルが形成された。図11の右下に示すように、Tetrapodna(A) およびTetrapodna(B)はそれぞれ単独ではゲルを形成せず、これらを単に混合することによってゲルを形成することができた。
【実施例】
【0147】
(5-4)
図12に示すように、末端に回文配列ではない、12塩基の長さの接着性突出末端を含むTetrapodna(A) (12-14-14)(配列番号34、35、36、37)を総DNA濃度2mMにて、NaClを濃度150mMにて含む水溶液と、Tetrapodna(A)の接着性突出末端と相補的な12塩基の長さの接着性突出末端を含むdsDNA(12-14)(配列番号42および43)を総DNA濃度1mMにて、NaClを濃度150mMにて含む水溶液を調製した。これらTetrapodna(A)およびdsDNAは、DNA濃度および塩濃度を上昇させても、単独ではゲルを形成することができないが、それぞれの水溶液を単に混合して最終DNA濃度1.5mMおよびNaCl濃度150mMとした場合、ゲルが形成された。図12の右下に示すように、Tetrapodna(A) およびdsDNAはそれぞれ単独ではゲルを形成せず、これらを単に混合することによってゲルを形成することができた。
【実施例】
【0148】
(5-5)
図13に示すように、本発明のxxxpodna、例えばtetrapodnaにデコイDNAや、siRNAを含めることにより、核酸医薬としての機能をゲル内部あるいは末端部位に有する核酸からなるハイドロゲルも作成可能である。このように、DNA、RNAをはじめ種々の核酸配列を利用することにより、本発明のゲルの機能を改変することができる。
【実施例】
【0149】
[実施例6]
免疫学的に活性なゲルに卵白アルブミン(OVA)を内包させたゲルを用いた免疫応答の増強
図14に示すように、コントロールとしてOVA100μgを含むゾル状水溶液(OVA濃度2.5μg/μl、NaCl濃度5mM)、または、OVA100μgに加えて、本発明のTetrapodna(4-18-18)(配列番号2、4、5、6)を100μg含むゾル状水溶液DNA(OVA濃度2.5μg/μl、NaCl濃度5mM、総DNA濃度2mM)をそれぞれマウスに注射し(0d免疫)、免疫14日目に脾臓を摘出し、得られた脾細胞をOVAで刺激してIFN-γの産生を測定した。図14の右側に示すように、コントロールのOVAのみ投与したマウスからの脾細胞と比較して、本発明のTetrapodnaをOVAと共に投与したマウスからの脾細胞では、IFN-γの産生量が格段に上昇していた。これにより、本発明のTetrapodnaから形成されるゲルの免疫応答の増強効果が示された。
【実施例】
【0150】
[実施例7]
ゲルの内部構造の調節
図15に、本発明の核酸単位、Tripodna、Tetrapodna、PentapodnaおよびHexapodnaを形成しうる核酸モノマーから得られるゲル内部の推定立体構造を示す。図15から理解されるように、核酸単位を構成しうる核酸モノマーの数が多いほど、即ち、TripodnaよりもHexapodnaの方が、より複雑なゲルの内部構造をとると推定される。また、接着性突出末端の長さによってもゲルの構造が調整できる。
【実施例】
【0151】
図16に、Tripodna(4-18-18)(配列番号1、2、3)(接着性突出末端の長さが4塩基)をDNA濃度1.5mMで含むゲルの内部構造、Tetrapodna(4-18-18) (配列番号2、4、5、6)(接着性突出末端の長さが4塩基)をDNA濃度0.5mMで含むゲルの内部構造、Hexapodna(4-18-18) (配列番号2、3、4、7、9、10)(接着性突出末端の長さが4塩基)をDNA濃度0.5mMで含むゲルの内部構造、およびTetrapodna(12-14-14) (配列番号30、31、32、33)(接着性突出末端の長さが12塩基)をDNA濃度0.5mMで含むゲルの内部構造の走査型電子顕微鏡写真を示す。写真から理解されるように、TripodnaよりもTetrapodna、それよりもHexapodnaを用いて得られたゲルの方がゲルの内部構造が微細であった。また、同じTetrapodnaを用いた場合、接着性突出末端の長さが長いものを用いて得られたゲルの方が、ゲルの内部構造が微細であった。
【実施例】
【0152】
[実施例8]
ゲルの内部構造の調節によるゲル強度の調節
(8-1)DNA濃度の調節
Tetrapodna(12-14-14)(配列番号30、31、32、33)を、DNA濃度として0.1mM、0.25mM、または0.5mM含む水溶液の、NaCl濃度を150mMとすることによりゲルを形成させ、時間の経過と共に残存するゲルのパーセンテージを測定した。結果を図17の左上のグラフに示す。横軸は時間の経過を示す。低濃度のDNA(0.1mM)では25%程度しかゲルとならず、DNA濃度を0.25mMに上昇させることにより最初のゲルのパーセンテージは上昇したが、時間の経過と共に残存するゲルのパーセンテージは低下した。一方、高濃度のDNA(0.5mM)では、最初のゲルのパーセンテージがほぼ100%であり、時間と共にわずかにゲルのパーセンテージが低下したのみであった。これにより、塩濃度が一定の場合、DNA濃度が高いほど、ゾルではなくゲルとして存在しやすい傾向があることが判明した。
【実施例】
【0153】
(8-2)接着性突出末端の長さの調節
様々な接着性突出末端の長さ(4、6、8、10または12塩基)を有するTetrapodna(それぞれ、配列番号2、4、5、6、配列番号18、19、20、21、配列番号22、23、24、25、配列番号26、27、28、29、配列番号30、31、32、33)を用いて一定DNA濃度(0.5mM)および一定NaCl濃度(150mM)の条件でゲルを形成させ、時間の経過と共に残存するゲルのパーセンテージを測定した。結果を図17の左下のグラフに示す。横軸は時間の経過を示す。接着性突出末端の長さが短い(4塩基)場合、時間の経過と共にゲルがゾル化し、12時間経過後では残存ゲルのパーセンテージがほぼ50%となった。一方、接着性突出末端の長さが長い(6、8、10または12塩基)場合、最初のゲルのパーセンテージがほぼ100%であり、時間と共にわずかに残存ゲルのパーセンテージが低下したのみであった。これにより、DNA濃度、塩濃度が一定の場合、接着性突出末端の長さが長いほど、ゾルではなくゲルとして存在しやすい傾向があることが判明した。
【実施例】
【0154】
(8-3)塩濃度の調節-1
Tetrapodna(12-14-14)(配列番号30、31、32、33)を、DNA濃度として0.5mM含む水溶液の、NaCl濃度を様々に変えることにより(5mM、50mM、100mMまたは150mM)、ゲルを形成させ、時間の経過と共に残存するゲルのパーセンテージを測定した。結果を図17の右上のグラフに示す。横軸は時間の経過を示す。低塩濃度(5mM)では、約6時間経過すると形成されたゲルのほとんどがゾル化し、塩濃度を50mMに上昇させると、ゾル化の傾向は弱まり、より穏やかにゲルからゾルへと変化した(12時間経過にて約40%)。一方、高塩濃度(100mMまたは150mM)では、最初のゲルのパーセンテージがほぼ100%であり、時間と共にわずかに残存ゲルのパーセンテージが低下したのみであった。これにより、DNA濃度が一定の場合、塩濃度が高いほど、ゾルではなくゲルとして存在しやすい傾向があることが判明した。
【実施例】
【0155】
(8-4)塩濃度の調節-2
Tetrapodna(12-14-14)(配列番号30、31、32、33)の代わりに、Tetrapodna(4-18-18) (配列番号2、4、5、6)を用いることの他は、(8-3)と同様にして時間の経過と共に残存するゲルのパーセンテージを測定した。結果を図17の右下のグラフに示す。横軸は時間の経過を示す。(8-3)と同様に、DNA濃度が一定の場合、塩濃度が高いほど、ゾルではなくゲルとして存在しやすい傾向があることが判明した。また、(8-3)ではTetrapodna(12-14-14)(接着性突出末端の長さが12塩基)に対して(8-4)では、Tetrapodna(4-18-18) (接着性突出末端の長さが4塩基)を用いたが、これらを比較すると、DNA濃度および塩濃度が同じ場合、接着性突出末端の長さが長いほど、ゾルではなくゲルとして存在しやすい傾向があることが判明した。
【実施例】
【0156】
これらにより、他の条件を一定にした場合、DNA濃度が高く、塩濃度が高く、接着性突出末端の長さが長いほど、ゾルではなくゲルとして存在しやすい傾向があることが判明した。即ち、DNA濃度、塩濃度、および接着性突出末端の長さを適宜調節することにより、ゲルの内部構造、ゲル化の程度、およびゲル強度を制御することができることが判明した。
【実施例】
【0157】
[実施例9]
ゲルの内部構造、ゲル化の程度およびゲル強度の制御による、ゲルの内封化合物の放出速度の制御
Tetrapodnaの突出末端の性質と塩濃度の制御により、ゲルの内封化合物の放出速度がどのように変化するかを調べた。具体的には、接着性突出末端を有するTetrapodna(4-18-18)(配列番号2、4、5、6)およびコントロールとして非接着性突出末端を有するTetrapodna(4-18-18)(配列番号58、59、60、61)を用いた。これらTetrapodnaを0.5mMのDNA濃度となるように調製した水溶液のNaCl濃度を、5mMまたは150mMに調整した。NaCl濃度を上昇させる際に、内封物質として卵白アルブミン(OVA、濃度2.5μg/μl)を加え、ゲル化させた後、時間の経過とともにゲルから放出されるOVAのパーセンテージを測定した。結果を図18のグラフに示す。コントロールの非接着性突出末端を有するTetrapodnaでは、ほとんどゲル化がみられず、最初からOVAがほぼ100%放出された。一方、NaCl濃度5mMで接着性突出末端を有するTetrapodnaを用いて作成されたゲルからは急速にOVAが放出され短時間ですべてのOVAが放出された。それに対してNaCl濃度150mMで接着性突出末端を有するTetrapodnaを用いて作成されたゲルからは、OVAが緩やかに放出され、24時間で約60%のOVAが放出された。
【実施例】
【0158】
このことから、突出末端の性質と塩濃度を適宜制御することにより、ゲルの内部構造、ゲル化の程度およびゲル強度が調節でき、その結果、内封物質の放出速度を制御できることが判明した。また、生体中の塩濃度(150mM)では、内封物質が徐々に放出されたことから、本発明のゲルを生体内で形成させることにより、薬剤の放出制御(徐放性の達成)が可能となることが示された。
【実施例】
【0159】
[実施例10]
修飾基を有する核酸の利用
修飾基を有する核酸の利用可能性を調べるために、コレステロールにより修飾されたDNAを用いたTetrapodnaを調製した。図19に示すように、コレステロール修飾された核酸モノマーを含み、かつ、核酸中にCpGモチーフを含むTetrapodna(配列番号2、4、5、6:図19中Chol-CpG DNAと示す)またはコレステロール修飾されていない同様のTetrapodna(配列番号2、4、5、6:図19中、CpG DNAと示す)を含む溶液を、アトピー性皮膚炎モデルマウスに塗布した。また、RAW264.7細胞によるそれぞれのTetrapodnaの取り込みを測定した。図19の右下に示すように、コレステロール修飾を有するTetrapodnaは、コレステロール修飾を有さないコントロールのTetrapodnaと比較して、組織移行性が増大しており、マウスの皮膚の炎症がよりよく抑制された。また、図19の左下のグラフに示すように、コレステロール修飾を有するTetrapodnaは、コレステロール修飾を有さないコントロールのTetrapodnaと比較してより良好にRAW264.7細胞に取り込まれた。
【実施例】
【0160】
このことにより、コレステロールなどの修飾基を有する核酸モノマーの使用により、ゲルの特性を改変・向上させることができることが判明した。
【実施例】
【0161】
[実施例11]
ゾルの鼻腔内投与によるゲルの形成
Tetrapodna(A)(12-14-14)(配列番号34、35、36、37)を総DNA濃度として2mM、NaClを150mMを含むゾル状水溶液と、Tetrapodna(B)(12-14-14) (配列番号38、39、40、41)を総DNA濃度として2mM、NaClを150mM含むゾル状水溶液をマウスの鼻腔内へ同時に投与した。結果を図20に示す。鼻腔内に投与することにより、塩濃度が上昇し、ゾル状水溶液がゲル化し、鼻腔内にゲルが良好に付着することが判明した。
【実施例】
【0162】
[実施例12]
ゲルを形成する塩濃度および核酸濃度条件の検討
以上により、ゲルを形成するか否かには、DNA濃度、塩濃度および接着性突出末端の長さ(塩基数として以下、Xと表す)が重要な因子であることが明らかとなった。そこで、ゲルの形成条件をより詳細に評価することを試みた。
【実施例】
【0163】
具体的には、Tripodona(4-18-18)(X=4)(配列番号1、2、3)、Tetrapodna(4-18-18)(X=4)(配列番号2、4、5、6)、Hexapodna(4-18-18)(X=4)(配列番号2、3、4、7、9、10)およびTetrapodna(8-16-16)(X=8)(配列番号22、23、24、25)を含む水溶液のDNA濃度を表4の行に示すように変化させ、また、NaCl濃度を表4の列に示すように変化させ、種々のDNA濃度とNaCl濃度において、ゲルが形成されるか否かを評価した。結果を表4-1~4-4に示す。ゲル化が観察された場合は○、溶液状(ゾル状)であった場合は×として結果を示す。
【実施例】
【0164】
表4:種々のDNA濃度とNaCl濃度におけるゲル化の評価
【表4-1】
JP2012144560A1_000022t.gif
【表4-2】
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【表4-3】
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【表4-4】
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【実施例】
【0165】
表4-1~4-4から理解されるように、Tripodnaの場合はTetrapodnaやHexapodnaと比較してゲル化しにくい傾向があり、接着性突出末端の塩基数Xが大きい場合、よりゲル化しやすい傾向があった。表4-1~4-4の結果からこの傾向を数式にまとめると、以下のようになる:
(1)ゾルとして維持される条件:Xの関数として、
NaCl濃度=80mM/x以下、かつ、
DNA濃度=0.3mM+1.6/xmM以下
(2)ゲルとして維持される条件:Xの関数として、
NaCl濃度=640mM/x-60mM以上、かつ、
DNA濃度=3.2/xmM以上。
即ち(1)の条件を満たすようなゾル状溶液のDNA濃度およびNaCl濃度を(2)の条件を満たすようにそれぞれ上昇させることにより、ゲル化が起こると考えられる。
【実施例】
【0166】
[実施例13]
ゲルを形成する温度条件の検討
さらにゲル化には温度条件も関与している可能性を検討した。Tetrapodna(4-18-18)(配列番号2、4、5、6)、Hexapodna(4-18-18)(配列番号2、3、4、7、9、10)、およびTetrapodna(8-16-16)(配列番号22、23、24、25)を用い、NaCl濃度を150mMにて固定し、DNA濃度を様々に変更し、どのような温度条件でゲルとして存在するかあるいはゾルとして存在するかを調べた。
【実施例】
【0167】
結果を以下の表5に示す。
【表5】
JP2012144560A1_000026t.gif
【実施例】
【0168】
以上から、いずれの場合も温度が高くなるとゾル化するが、高DNA濃度であるほうがゲル化しやすく、Xの長さが長い方がゲル化しやすい傾向にあることが判明した。
【実施例】
【0169】
[実施例14]
リガーゼを用いて調製したゲルとの特性の比較:
(14-1)リガーゼを用いないDNAハイドロゲルの調製:
表1に示すTetrapodna(8-16-16)-1-01~04を、1.5M NaClを含むTEバッファー(10mM Tris-HCl、1mM EDTA、pH8)で溶解し、各ODNの終濃度が0.5mMとなるように調製した。各ODN混合物を、95℃まで加熱後、徐々に冷却することでDNAハイドロゲルを得た。
【実施例】
【0170】
(14-2)リガーゼを用いるDNAハイドロゲルの調製:
以下の表6に示すP-tetrapodna(4-18-18)-1-01~04(表1中の配列の5’末端にリン酸基が付されたもの)を、50mM NaClを含むTEバッファー(10mM Tris-HCl、1mM EDTA、pH8)で溶解し、各ODNの終濃度が0.75mMとなるように調製した。各ODN混合物を、95℃まで加熱後、徐々に冷却することでP-tetrapodnaを得た。生成物にT4DNAリガーゼ(200ユニット;Promega、WI、USA)とライゲーションバッファー(300mM Tris-HCl、100mM MgCl、100mM DTT、10mM ATP)を加え、16℃で16時間反応させ、DNAハイドロゲル(リガーゼ使用)を得た。
【表6】
JP2012144560A1_000027t.gif
【実施例】
【0171】
(14-3)ゲル粘弾性の測定:
得られたゲルまたは溶媒をチューブに入れ、ゲル粘弾性測定器(株式会社中山電機製)にセットした。測定棒をゲルの上端まで降下させ、その後、測定棒を500μm降下させたときの荷重値(重量)を経時的に測定した。
結果を図22に示す。図中のピーク値は、ゲルの固さに対応するパラメータである。同じDNA濃度条件では、自己ゲル化核酸を用いて調製したDNAハイドロゲルのほうが高値を示した(約1600mgと約400mg)。リガーゼを用いない自己ゲル化核酸は、リガーゼを用いて作製するDNAハイドロゲルよりも強固であることが明らかになった。また、図22中の緩和曲線の傾きは、ゲルの粘弾性に対応するパラメータである。自己ゲル化核酸を用いて調製したDNAハイドロゲルのほうが緩やかであり、粘弾性に優れることが明らかになった。リガーゼを用いて作製したDNAハイドロゲルは、もろいものであった。
【実施例】
【0172】
[実施例15]
3~12のpodを有するpolypodna調製物のPAGE分析:
表1中の配列を用いて、実施例1と同様の方法によって、ssDNA、dsDNAおよび各poolypodna調製物を調製し、20分間、200Vで6%ポリアクリルアミドゲル上にそれぞれを泳動した。
結果を図23に示す。図23AおよびBにおける各レーンと、泳動物の対応を以下の表7に示す。
【表7】
JP2012144560A1_000028t.gif
【実施例】
【0173】
図23Aに示すように、tripodna36、tetrapodna36、pentapodna36、hexapodna36、およびoctapodna36では主要な単一のバンドが観察された。このことから、polypod様構造が高い効率で形成されていることがわかった。他方、dodecapodna36については、主要なバンドが形成されなかった。dodecapodnaは、熱安定性が低く、8のpodと12のpodの間には、臨界点があることが考えられる。また、pod数が増えると泳動度は低下した。
図23Bのレーン2~5は、30、60、または90ヌクレオチドからなるtripodnaについてのPAGE分析を示す。tripodna中のODN長が増えることで泳動度は高くなった。泳動度は、polypodna調製物中の塩基数によって変わるようである。240塩基からなる各種のpolypodnaの泳動度(図23B、レーン6~8)はほぼ同じであった。このことから、泳動度がヌクレオチド数に依存するものであり、立体構造には依存しないと考えられる。
【実施例】
【0174】
[実施例16]
CDスペクトル(円二色性スペクトル):
表1中の配列を用いて、実施例1と同様の方法によって、dsDNA36、A36、(CG)、および各poolypodna調製物を調製した。5mM塩化ナトリウムを含有するTEバッファーで、アニーリング後の各DNAサンプルを、最終DNA濃度25μg/mlまで希釈した。そして、25℃で0.1cm経路長の石英セルを用いて4℃でJASCO-820型分光偏光計(JASCO、東京、日本)を用いて、DNAのCDスペクトル(円二色性スペクトル)を記録した。DNAのCDスペクトル(円二色性スペクトル)は、200nmから320nmの範囲で計測した。比較を促すために、モル楕円率が得られるように、CDスペクトル(円二色性スペクトル)につき、バックグラウンド除去、平滑化、および濃度調整を行った。
結果を図24に示す。dsDNA36の場合、280nmおよび240nm近辺にそれぞれ陽性および陰性ピークが観察された。これは、B型DNAの典型的なスペクトルである。全てのpolypodnaは、dsDNA36と同様のピークを示した(図24A)。図24Bにおける(CG)のスペクトルは、Z型DNAの典型である。hexapodna36は、これと異なるピークを示した。これらのことから、各polypodnaは、二本鎖DNAの通常条件下での構造であるB型DNA構造をとることが明らかになった。
【実施例】
【0175】
[実施例17]
Tm値および見かけのサイズ:
表1中の配列を用いて、実施例1と同様の方法によって、各DNA調製物を調製した。TMSPC-8温度調節器18を備えた島津UV-1600PC分光計(京都、日本)を用いて、260nmでpolypodnaまたは他のDNA調製物の吸光度を計測した。5mMのナトリウム濃度での融解曲線から、それぞれについての融解温度(Tm)を求めた。
また、20℃でMalvern Zetasizer 3000HS(Malvern Instruments、Malvern、UK)を用いて動的光散乱法により、それぞれのpolypodnaの見かけのサイズを測定した。計測を少なくとも3回繰り返し、結果を、再現可能な結果の平均±標準誤差(S.E.)として表した。サイズの結果は、3つ(tripodna36、tetrapodna36、pentapodna36、hexapodna36、tripodna80、tetrapodna60、pentapodna48、hexapodna40)または6つ(octapodna36、tripodna60、tripodna90)の計測の平均±SEとして表した。
それぞれの結果を表8に示す。
【表8】
JP2012144560A1_000029t.gif
【実施例】
【0176】
表8に示されるように、dsDNA36のTm値は、36merのODNを用いる他の調製物よりも高かった。Tm値は、pod数の関数であり、pod数が増えれば、Tm値は下がることが明らかになった。また、tripodna調製物のTm値は、ODN長に依存し、Tripodna90が最大のTm値を示すことが明らかになった。
また、表8に示されるように、ODN長が30から90に増えると、tripodna調製物の見かけのサイズが増すことが明らかになった。240塩基を有するpolypodna(Tripodna80、Tetrapodna60、Pentapodna48、Hexapodna40)のサイズも、ODN長に依存した。36merのODNからなるpolypodna調製物については、pod数が増えると、そのサイズは、わずかに増えた。これは、pod数が多い調製物では、塩基のスタッキング(stacking)が減少し、構造が膨張したためであろうと推測される。
【実施例】
【0177】
[実施例18]
血清中のPolypodnaの安定性:
表1中の配列を用いて、実施例1と同様の方法によって、各poolypodna調製物を調製した。RPMI1640培地で希釈した20%マウス血清とともに、37℃で10μg/100μlの濃度で、各Polypodna調製物をインキュベートした。インキュベーションの0、2、4、8、12または24時間後、サンプル溶液の10μlアリコートを、プラスチックチューブに移し、20μlの0.5M EDTA溶液と混合して分解を停止させ、使用まで-20℃で保存した。これらのサンプルを、4℃で12%PAGEに泳動し、SYBR Gold(Molecular Probes、Eugene、OR、SA)で染色した。Multi Gauge software(富士フィルム、東京、日本)を用いてDNAバンドの密度を定量的に評価した。
結果を図25A~Dに示す。これらの実験は、3回行い、同様の結果が得られた。図25AおよびCは、1つの代表的なゲルである。図25AおよびBに示されるように、tripodnaのpod長が長いほど、分解率が高いことが明らかになった。また、図25CおよびDに示されるように、pod数が多いほど、マウス血清中での安定性は低いことが明らかになった。これは、DNAが、体液中では主にエキソヌクレアーゼで分解されるため、pod数が多く末端数が多いとDNAは分解されやすいためであろうと推測される。
【実施例】
【0178】
[実施例19]
局所リンパ節へのDNAハイドロゲルの移行:
表1におけるHexapodna(8-16-16)-2-01を32Pで末端標識した。すなわち、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(T4 PNK;タカラバイオ、大津、日本)を用いて、37℃で30分間、ODNを、γ-32P ATPと反応させ、80℃で12分間加熱してT4 PNKを変性させた。NAP5カラム(GEヘルスケア、東京、日本)を用いて標識産物を精製した。トレーサー量の32P-hexapodna(8-16-16)-2-01および以下の表9に示す他のODNを用いて32P-標識サンプルを調製した。
【表9】
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【実施例】
【0179】
それぞれの32P-DNAサンプルを10mg/kgの投与量で4週齢雄ICRマウスの背面皮膚に注入した。注入から所定間隔後、マウスを、イソフルランで麻酔し、背面皮膚ならびに鼠径および腋窩リンパ節を、それぞれ、注入部位および局所リンパ節から採取した。それぞれのサンプルを、700μlのSoluene-350(パーキンエルマー日本株式会社、神奈川、日本)を含有する20mlポリプロピレンシンチレーションバイアルに入れ、60℃で一晩インキュベーションして消化した。そのバイアルに、2-プロパノール(200μl)および過酸化水素(200μl、30%w/v;三徳化学工業株式会社、東京、日本)を連続的に添加した。泡立ちが消えるまでサンプルを室温で放置した。
次に、サンプルに100μlの5M塩化水素溶液および5mlのClear-sol I(ナカライテスク株式会社、京都、日本)を添加した。サンプルの放射線を、Tri-Carb 3110TR液体シンチレーション分光計(パーキンエルマー、Norwalk、CT、USA)で計数した。結果を、サンプルごとの放射線の注入量のパーセンテージとして計算し、3匹のマウスの平均±S.D.として表す。
結果を図26に示す。図26に示されるように、DNAハイドロゲルは、hexapodnaやssDNAよりも長く注入部位に残り、長期間をかけて局所リンパ節に移行することが明らかになった。このことは、DNAハイドロゲルの徐放性の高さを裏付ける。
【実施例】
【0180】
[実施例20]
DNAハイドロゲルの崩壊、DNAハイドロゲルからのDXR放出、およびマウスにおける腫瘍増殖:
表1に示すODN(hexapodna(8-16-16)-2-01~06、およびhexapodna(8-16-16)-3-01~06)を用いて、実施例1と同様にしてDNAハイドロゲルを調製した。
ドキソルビシン(DXR)/DNAハイドロゲルを調製するため、Mili-Q水中でDXRを注射器に添加し、2つのhexapodna調製物を、連続的にDXRに添加した。室温での1時間のインキュベーションの後、混合物をDXR/DNAハイドロゲルとして用いた。DXRおよびDNAの混合率を、1:40重量率に固定した。
DXR/DNAハイドロゲル(300μg/10μl)に、10μl生理食塩水または20%マウス血清を添加し、37℃でインキュベートした。所定の時間経過後に、サンプルを採取した。2000×gでの5秒間の遠心分離の後、上清を採取し、分光光度計(UV-1600、島津、日本)およびマルチラベルカウンター(ARVOTM MX 1420、Wallac、Finland)で、それぞれ485および560nmの励起および発光波長で、DNAの吸光度およびDXRの蛍光を測定し、それぞれ、DNAおよびDXRの濃度を推定した。
結果を図27の左上図および左下図に示す。DNAハイドロゲルは、生理食塩水中よりもマウス血清中で早く分解した(図27左上)。また、DNAハイドロゲル中DXRは、マウス血清中において、生理食塩水よりも多く放出された(図27左下)。
表1に示すODN(hexapodna(8-16-16)-2-01~06、およびhexapodna(8-16-16)-3-01~06)を用いて、実施例1と同様にしてハイドロゲルを調製し、上と同様にしてDXR/DNAハイドロゲルを調製した。一方、Colon26/Luc細胞(5×10細胞/マウス)をBALB/cマウスの背面皮膚に接種した。そして、腫瘍接種の9日後、生理食塩水、DXR(7.5μg/マウス)、DNAハイドロゲル(300μg/マウス)、またはDXR/DNAハイドロゲル(7.5μgDXRおよび300μgDNA/マウス)をマウスの腫瘍内に注入した。キャリパーを用いて定期的に腫瘍サイズを測定した。
結果を図27の右図に示す。DXRは、DNAハイドロゲル中に含めることで、高い腫瘍増殖抑制能を示すことが明らかになった(図27の右図)。
【実施例】
【0181】
[実施例21]
IL-6誘導:
表1に示す配列のうち、以下の表10のODNを用いて、DNAサンプルを調製した。
【表10】
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【実施例】
【0182】
マウス樹状DC2.4細胞を、5×10細胞/ウェルの密度で96ウェル培養プレートに蒔き、5%CO中、37℃で一晩インキュベートした。表示された濃度でDNAサンプルを細胞に添加し、細胞を16時間インキュベートした。
続いて、上清を採取し、計測まで-80℃で保存した。製造者のプロトコール(BD Biosciences、San Diego、CA、USA)にしたがい、IL-6の濃度を酵素結合免疫測定法(ELISA)によって測定した。
結果を図28に示す。図28に示されるように、ハイドロゲルの状態のCpGDNAは、一本鎖やhexapodnaのCpGDNAよりも、高い免疫刺激性を示すことが明らかになった。
【実施例】
【0183】
[実施例22]
DNA調製物によるRAW264.7細胞からのサイトカイン放出:
表1中の配列を用いて、実施例1と同様の方法によって、各サンプルを調製した。
10%加熱不活性化FBS、0.15%重炭酸ナトリウム、100ユニット/mlペニシリン、100mg/mlストレプトマイシン、および2mML-グルタミンを添加したRPMI1640培地において、5%COを含有する加湿空気中、37℃でネズミマクロファージ様細胞RAW264.7を増殖させた。続いて、24ウェルまたは96ウェル培養プレート上に、5×10細胞s/mlの密度で細胞を撒き、使用に先立ち24時間培養した。
2.5×10細胞/ウェルの密度でRAW264.7細胞を24ウェルプレートに撒き、処置前に24時間インキュベートした。そして、0.5mlOpti-MEM中に希釈したssDNA、dsDNA、または数種類のpolypodnaを、0.5、1または2μg/mlの最終濃度で細胞に添加した。細胞を、8時間インキュベートし、上清を回収し、使用まで-70℃で保存した。OptEIATMセット(Pharmingen、San Diego、CA、USA)を用いる酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって、上清中のTNF-αおよびIL-6の濃度を測定した。
結果を3つの測定の平均±SDとして表し、図29に示す。データは、4つ(TNF-α)または2つ(IL-6)の独立の実験の代表である。図中の*は、値が検出限界を下回ったことを示す。ssDNA、dsDNAの場合には、ほとんどTNF-α放出がなかった。これに対し、polypodna調製物は、DNAの濃度依存的に、RAW264.7細胞からのサイトカイン放出を誘導した(図29A)。また、pod数が多いと、TNF-α放出量が増えることも明らかになった。同様の結果は、IL-6放出についての図29Bにも示される。このことから、polypodna調製物は、pod数が多いほど、CpGDNAの免疫刺激活性が高くなることが明らかになった。
【実施例】
【0184】
[実施例23]
polypodna調製物によるRAW264.7細胞からのTNF-α放出:
表1中の配列を用いて、実施例1と同様の方法によって、各poolypodna調製物を調製したほかは、実施例22と同様の実験を行った。但し、添加したDNAは、それぞれの場合で等量にした。
結果を、3つの測定の平均±SDとして、図30に示す。データは、4つ(図30A)または3つ(図30B)の独立の実験の代表である。図中の*は、値が検出限界を下回ったことを示す。図30Aに示されるように、tripodnaにおいてヌクレオチド数が増えると、TNF-α放出も増えた。また、図30Bに示されるように、240ヌクレオチドからなるpolypodna調製物のうち、hexapodna40が、最も高いTNF-α放出を示した。これらのことから、pod数を増大させることが、CpGDNAの免疫刺激活性を増大させるために有効であることが分かった。
【実施例】
【0185】
[実施例24-1]
RAW264.7細胞におけるDNAの取り込み:
表1中の配列を用いて、前述の材料および方法、ならびに実施例1と同様の方法によって、Alexa Fluor 488-標識DNAサンプルを調製した。96ウェルプレート上で5×10細胞/ウェルの密度でRAW264.7細胞を、Alexa Fluor 488-標識ssDNA、dsDNA、またはpolypodnaとともに、37または4℃で8時間、インキュベートした。その後、200μlリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で二度細胞を洗浄し採取した。そして、CellQuestソフトウェア(version 3.1、BD Biosciences)を用いて、フローサイトメトリー(FACS Calibur、BD Biosciences、NJ、USA)によって細胞の平均蛍光強度(MFI)を測定した。
結果を図31Aに示す。平均蛍光強度は、octapodna、hexapodna、pentapodna、tetrapodna、tripodnaの順に高く、細胞放出は、サイトカイン放出の場合と同傾向であった。このことから、pod数が増えれば、サイトカイン誘導が増えることがわかった。
【実施例】
【0186】
[実施例24-2]
DNA取り込みの蛍光顕微鏡観察:
RAW264.7細胞を、13mm直径ガラスカバースリップ上に撒き、24時間インキュベートした。培養培地を、Alexa Fluor 488-標識hexapodna36を含有するOpti-MEMに置換した。37℃での3時間のインキュベーションの後、細胞を、PBSで3回洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで20分間固定し、再び、PBSで3回洗浄した。そして、核を染色するために、60nMの4’,6-ジアミノ-2-フェニルインドール(DAPI)を加え、10分のインキュベーションの後に、PBSで3回洗浄した。そして、カバースリップをSlowFade(登録商標)Gold(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)でガラススライド上に載せ、蛍光顕微鏡(Biozero BZ-8000、キーエンス、大阪、日本)を用いて観察した。
結果を図31B~Eに示す。図中、Bは、DAPI染色、Cは、Alexa Fluor 488-標識hexapodna36、Dは、重ね合わせ画像、Eは、明視野を示す。図31B~Eに示すように、蛍光シグナルは、細胞内で点状に検出された。このことから、細胞取り込みは、エンドサイトーシスにより行われることが示唆された。
【実施例】
【0187】
[実施例25]
TLR9依存的活性化:
表1の配列のうち、配列番号86~95の配列を用いて、実施例1と同様の方法によって、DNAサンプルを調製した。
【実施例】
【0188】
次に、文献(Blood、2000;96:3029-39)に記載のようにして、8から10週齢雄C57BL/6マウス、およびC57BL/6の遺伝的背景を有するTLR9ノックアウトマウス(TLR9-/-)から骨髄由来樹状細胞(BMDC)を作り出した。すなわち、26ゲージ針を用いてRPMIで大腿骨および脛骨を洗い流して、骨髄細胞を単離した。40μm細胞ろ過器(BD Falcon、Franklin Lakes、NJ、USA)を通したろ過の後、骨髄細胞を5分間0.86%塩化アンモニウム中に再懸濁し、赤血球を溶解させた。
その後、10%加熱不活性化FBS、0.2%重炭酸ナトリウム、100IU/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、2mML-グルタミン、0.5mMモノチオグリセロール、および100ng/mlマウス組換えFlt-3リガンド(Peprotech、Rocky Hill、NJ、USA)を補充したRPMIに、5×10細胞/mlの密度で8日間、残存細胞を培養した。5%CO含有加湿空気において、37℃で細胞を増殖させた。培養の7日目、非接着性細胞を採取し、これをBMDCとして用いた。サイトカイン放出実験のために、細胞を、3×10細胞/ウェルの密度で96ウェル培養プレート上に再プレートした。細胞を、2μg/mlのssDNA(Tripodna(0-18-18)-1-02)またはpolypodnaとともに24時間インキュベートした。その後、培養上清を採取し、酵素結合免疫測定法(ELISA)に用いるまで-80℃で保存した。マウスIL-6の濃度を、OptEIATMセット(Pharmingen、San Diego、CA、USA)を用いて測定した。
結果を図32に示す。CpGを含むpolypodnaで調製したハイドロゲルによるIL-6放出は、TLR9依存的であることが明らかになった。
【実施例】
【0189】
[実施例26]
単球依存的polypodna取り込み:
表1の配列のうち、配列番号96~104の配列を用いて、実施例1と同様の方法によって、DNAサンプルを調製した。
【実施例】
【0190】
Ficoll-Paque PLUS(GE healthcare、Piscataway、NJ、USA)密度勾配遠心分離によって、製造者のプロトコールにしたがって、健常ボランティアの末梢血からヒト末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。採取されたPBMCを6×10細胞/ウェルの密度で48ウェル培養プレート上に再プレートし、サイトカイン放出実験に用いた。96ウェル培養プレート上で、6×10細胞/ウェルの濃度のPBMCを、4時間、2μg/mlのAlexa Fluor 488-標識polypodna調製物とともにインキュベートした。その後、細胞を、200μlリン酸緩衝生理食塩水を用いて二度洗浄して採取した。そして、細胞の蛍光強度を、CellQuestソフトウェア(version 3.1、BD Biosciences)を用いて、フローサイトメトリー(FACS Calibur、BD Biosciences、Franklin Lakes、NJ、USA)によって分析した。PBMCの調査のため、前方散乱(FSC)および側方散乱(SSC)特性(Clin Chem、1998;44:966-72.)に基づき細胞をゲートした。その後、単球リッチ領域1およびリンパ球リッチ領域2における細胞のMFIを測定した。
結果を図33に示す。polypodnaの取り込みは、単球によるものであることが明らかになった。
【実施例】
【0191】
[実施例27]
IL-6 mRNA発現の誘導:
表1中の配列のうち、以下の表11に示されるODNを用いて、実施例1と同様の方法によって、各DNAサンプルを調製した。
【表11】
JP2012144560A1_000032t.gif
【実施例】
【0192】
イソフルランでの麻酔下で、C57BL/6マウスの背面皮膚に200μg/マウスの投与量でそれぞれのDNAサンプルを注入した。注入後の所定間隔において、マウスをイソフルランで麻酔し、そして、背面皮膚ならびに鼠径および腋窩リンパ節をそれぞれ注入部位および局所リンパ節として、採取した。皮膚サンプルの総RNAを、RNeasy mini kit(QIAGEN GmbH、Hilden、Germany)を用いて、製造者のプロトコールに従って抽出した。リンパ節の総RNAを、Sepasol RNAI super(ナカライテスク)を用いて抽出した。抽出したRNAを、ReverTra Ace(登録商標)qPCR RT Kit(TOYOBO、大阪、日本)を用いて逆転写した。mRNA発現の定量的分析のために、KAPA SYBR FAST ABI Prism 2X qPCR Master Mix(KAPA BIOSYSTEMS、Boston、MA、USA)を用いて総RNAについてRT-PCRを行った。増幅に用いたODNプライマーは、次の表12のとおりである。StepOnePlus Real Time PCR System(Applied Biosystems、Foster City、CA、USA)を用いて、蛍光染料であるSYBR GREENのインターカレーションを介して、増幅産物をオンラインで検出した。IL-6 mRNA発現を、β-アクチンのmRNAレベルで正規化した。
【表12】
JP2012144560A1_000033t.gif
結果を図34に示す。CpGハイドロゲルは、IL-6mRNAの発現を持続的に強く誘導することが明らかになった。
【実施例】
【0193】
[実施例28]
OVA/CpGDNAハイドロゲルによる適応免疫反応の誘導:
(28-1)血清サンプルの採取
表1の配列を用いて、実施例1と同様の方法によって、DNAサンプルを調製した。イソフルランでの麻酔下、200μgDNAサンプルおよび50μgOVA(10μl/投与)、または50μgOVA(20μl/投与)を含有する完全フロインドアジュバント(CFA)を、C57BL/6マウスの背面皮膚に注入した。0、7、および14日目の3回、マウスに免疫付与した。最後の免疫付与の7日後、マウスを屠殺し、血清および脾臓を採取した。血清サンプルを計測まで-80℃で保存した。
(28-2)OVA-特異的IgG:
ELISAによってOVA特異的総IgGレベルを測定するために、血清サンプルを連続的に希釈した。すなわち、4℃で8~16時間、96ウェル平底プレートをOVA(1mg/ml)で被覆した。そして、5%BSAを含有するリン酸緩衝生理食塩水(T-PBS)中の0.5w/w%Tween-20でウェルをブロックした。T-PBSでの洗浄の後、希釈した100μl血清サンプルを連続的にそれぞれのウェルに添加した。37℃での2時間のインキュベーションの後、T-PBSで5回、ウェルを洗浄し、そして、5%BSA-含有T-PBSで3000:1に希釈した100μlのanti-IgG-HRP conjugate(Sigma、St.Louis、MO、USA)を、それぞれのウェルに添加した。37℃での1時間のインキュベーションの後、それぞれのウェルを、T-PBSで洗浄し、その後、クエン酸リン酸塩緩衝液(pH5)中の20μl過酸化水素を含有する200μlの新たに調製したo-フェニレンジアミン二塩酸塩(和光純薬工業株式会社、大阪、日本)溶液を、それぞれのウェルに添加した。インキュベーションの4分後、50μlの1M硫酸を添加し、その後、490nmで吸光度を測定した。
結果を図35の左図に示す。ハイドロゲルにすることによって、IgG力価が上昇することが明らかになった。
(28-3)脾臓細胞からのIFN-γ:
最後の免疫付与の7日後、機械的解剖によって、脾臓細胞を単離した。混入した赤血球を1.5M塩化アンモニウムで溶解した。OVA(1mg/ml)の存在下で、5×10細胞/mlの密度で、96ウェル培養プレート中で、4日間、脾臓細胞を培養した。上清を採取して、計測まで-80℃で保存した。製造者のプロトコールに従って、ELISAによって、IFN-γの濃度を測定した(Ready-SET-Go! mouse IFN-γ ELISA、eBioscience、San Diego、CA、USA)。
結果を図35の中央図に示す。ハイドロゲルにすることによって、IFN-γの濃度が上昇することが分かる。
(28-4)CTLアッセイ:
最後の免疫付与の7日後、機械的解剖によって、脾臓細胞を単離した。1.5M塩化アンモニウムで混入赤血球を溶解した。CTLを準備するために、37℃で5%CO中で5日間、マイトマイシンCで処理した5×10EG7-OVA細胞とともに脾細胞(5×10細胞)を共培養した。標的細胞、すなわち、EG7-OVAおよびEL4を、51Cr-標識クロム酸ナトリウム(Na51CrO、富士フイルムRIファーマ、東京、日本)で標識した。ブーストした脾細胞を、連続的に希釈し、37℃で4時間、標的細胞とともに共インキュベートした。エフェクター細胞(脾細胞)なしの、および1%Triton-Xありのインキュベーションから、それぞれ、51Crの自然放出および最大放出を評価した。上清の放射線をガンマ計数器で測定した。特異的溶解のパーセンテージを、次の方程式にしたがって計算した:
特異的溶解の% = (観察放出-自然放出)/(最大放出-自然放出)
結果を図35の右図に示す。一本鎖の状態や核酸単位(polypodna)の状態で用いた場合よりも、ハイドロゲルの場合には、特異的溶解が高いことが分かる。
【実施例】
【0194】
[実施例29]
副作用:
表1の配列を用いて、実施例1と同様の方法によって、DNAサンプルを調製した。
イソフルランでの麻酔下、C57BL/6マウスの背面皮膚に、200μgDNAサンプルおよび50μgOVA(10μl)、50μgOVA(10μl)を含有するCFA、または100μgAlumおよび50μgOVA(20μl)を注入した。注入の7日後、注入部位を含む皮膚を摘出し、4%パラホルムアルデヒド中で固定し、パラフィンに組み込み、薄切りにして5μm切片にし、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。染色したサンプルを、組織学的評価のために、顕微鏡(Biozero BZ-8000、キーエンス、大阪、日本)下で、観察した。上述のように1週間間隔での第三の免疫付与の7日後、異なる組のC57BL/6マウスから脾臓を採取した。脾臓の重量を測定し、脾腫を評価した。
結果を図36に示す。図36の左図に示すように、ハイドロゲルの場合には、注入部位への免疫細胞の浸潤が少なく、局所的な副作用が少ないことが明らかになった。また、図36の右図に示すように、ハイドロゲルの場合には、脾臓の肥大化が小さく、全身性の副作用も少ないことが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0195】
徐放剤、免疫増強剤、組織移行性DNA等の各種用途に利用可能である。本発明の組成物から作製されるゲルは、幅広い物質(薬物、抗原、細胞)に対して、コントロールドリリースシステムとしての利用が考えられる。また、CpGモチーフに代表される免疫活性化構造を組み込むことで、免疫アジュバントとしての機能も付与可能であり、抗癌剤や抗原タンパク質、免疫細胞との相乗効果が期待できる。また、ゾル(溶液)状態での投与が可能であることから、スプレー剤としても開発可能であり、鼻腔等への抗原投与にも有用と考えられ、免疫応答の制御を必要とする治療に幅広く利用できる。
図面
【図8-2】
0
【図22】
1
【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8-1】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図23】
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【図36】
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