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明細書 :癌治療剤及び癌の予後判定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5954796号 (P5954796)
登録日 平成28年6月24日(2016.6.24)
発行日 平成28年7月20日(2016.7.20)
発明の名称または考案の名称 癌治療剤及び癌の予後判定方法
国際特許分類 A61K  39/395       (2006.01)
A61P   1/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
FI A61K 39/395 ZNAT
A61P 1/00
A61P 35/00
G01N 33/53 D
請求項の数または発明の数 9
全頁数 8
出願番号 特願2013-507810 (P2013-507810)
出願日 平成24年3月30日(2012.3.30)
国際出願番号 PCT/JP2012/058668
国際公開番号 WO2012/133814
国際公開日 平成24年10月4日(2012.10.4)
優先権出願番号 2011080261
優先日 平成23年3月31日(2011.3.31)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年3月25日(2015.3.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】土屋 創健
【氏名】辻本 豪三
【氏名】清水 一治
【氏名】嶋田 裕
【氏名】塚田 一博
個別代理人の代理人 【識別番号】110001656、【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
審査官 【審査官】加藤 文彦
参考文献・文献 特表2003-527858(JP,A)
特表2005-537786(JP,A)
TSUCHIYA,S. et al,MicroRNA-210 regulates cancer cell proliferation through targeting fibroblast growth factor receptor,The Journal of biological chemistry,2011年 1月,Vol.286, No.1,p.420-428
SCHILD,C. et al,Aberrant expression of FGFRL1, a novel FGF receptor, in ovarian tumors,International journal of molecular medicine,2005年,Vol.16, No.6,p.1169-1173
調査した分野 A61K 39/395
A61P 1/00
A61P 35/00
G01N 33/53
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
FGFRL1と抗原抗体反応し、食道扁平上皮癌細胞の増殖を抑制する抗体又はその抗原結合性断片を有効成分として含有する食道扁平上皮癌治療剤であって、前記抗体が、配列番号2に示されるFGFRL1のアミノ酸配列のN末端から378番目のアミノ酸までの領域と抗原抗体反応する抗体である、食道扁平上皮癌治療剤
【請求項2】
前記抗体が、FGFRL1のN末端領域と抗原抗体反応する抗体である請求項1記載の癌治療剤。
【請求項3】
生体から分離した癌組織中のFGFRL1の発現量を調べることを含み、FGFRL1の発現量が多いことが、予後が悪いであろうことを示す、癌の予後の判定方法であって、前記FGFRL1の発現量を、配列番号2に示されるFGFRL1のアミノ酸配列のN末端から378番目のアミノ酸までの領域と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を用いて調べる、癌の予後の判定方法
【請求項4】
前記癌が食道扁平上皮癌である請求項記載の方法。
【請求項5】
FGFRL1の発現量を免疫組織化学により調べる請求項3又は4記載の方法。
【請求項6】
生体組織から抽出したFGFRL1若しくはその断片又は生体から分離した血液中のFGFRL1若しくはその断片を測定することを含み、FGFRL1又はその断片の存在濃度が健常人の組織又は血中のFGFRL1又はその断片の濃度よりも高いことが、癌の存在を示す、癌の検出方法であって、前記FGFRL1又はその断片の存在濃度を、配列番号2に示されるFGFRL1のアミノ酸配列のN末端から378番目のアミノ酸までの領域と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を用いて測定する、癌の検出方法
【請求項7】
前記癌が食道扁平上皮癌である請求項記載の方法。
【請求項8】
癌患者から分離した組織中又は血液中のFGFRL1若しくはその断片を測定することを含み、FGFRL1又はその断片の存在濃度が高いことが、予後が悪いであろうことを示す、癌の予後の判定方法であって、前記FGFRL1又はその断片の存在濃度を、配列番号2に示されるFGFRL1のアミノ酸配列のN末端から378番目のアミノ酸までの領域と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を用いて測定する、癌の予後の判定方法
【請求項9】
前記癌が食道扁平上皮癌である請求項記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、癌治療剤、癌の予後判定方法及び癌の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食道癌は、発生頻度で8番目、死亡者数で6番目に多い癌である。我国においては、食道癌の9割以上が食道扁平上皮癌(esophageal squamous cell carcinoma (ESCC))である。ESCCは高頻度に遠隔転移、再発を起こす、悪性度の高い癌であり、一般的に予後が悪い。
【0003】
一方、卵巣がんにおいて、線維芽細胞成長因子レセプター様タンパク質1(fibroblast growth factor receptor like-1、以下、「FGFRL1」)の異常発現が観察されることが報告されている(非特許文献1)。しかしながら、この報告ではFGFRL1の発現量に関する統計的な解析は行われておらず、FGFRL1の機能に関する解析も行われていない。したがって、この報告はFGFRL1による細胞増殖の促進やその発現量を用いた予後予測への関連性さらには、産業上の利用性については何ら類推させるものではない。また、マイクロRNA(microRNA, miRNA)-210が、腫瘍形成に関与し、そのターゲット遺伝子の1つがFGFRL1であることも報告されているが(非特許文献2)。この報告に関しても、予後予測やFGFRL1の治療薬用途への利用に関して明示しているものではない。さらに、本願発明者らは先に、食道扁平上皮癌において、マイクロRNA-210が、FGFRL1を介して癌細胞の増殖を調節していることを見出した(非特許文献3)。しかしながら、当該報告ではマイクロRNA-210の標的遺伝子がFGFRL1であることを解明し、その後のパスウェイを論じた報告であり、抗FGFRL1抗体を癌の治療薬や予後予測のツールとして用いることを示唆するものではない。
【0004】
一方、FGFRL1は線維芽細胞成長因子受容体 (FGFRs)に類似する分子という名称が付されているが、他のFGFRsとは異なり、細胞内のシグナル伝達領域であるチロシンキナーゼドメインが欠損しており、他のFGFRsとの構造上の違いは明らかであり(非特許文献4)、かつ機能面に関しても他のFGFRsと異なり、細胞増殖の抑制に働くものと考えられてきた(非特許文献5)。したがって、他のFGFRsとは明確に区別され得る分子であり、その生物学的役割とそこから導かれる産業上の利用性に関してもFGFRL1はFGFRsとは明確に区別されるというべきである。
【0005】

【非特許文献1】International Journal of Molecular Medicine 16, 1169-1173, 2005
【非特許文献2】Molecular Cell 35, 856-867, 2009.
【非特許文献3】Journal of Biological Chemistry 286, 420-428, 2011
【非特許文献4】Genomics 69, 275-279, 2000
【非特許文献5】Journal of Biological Chemistry 278, 33857-33865, 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、食道扁平上皮癌のような癌の新規な治療剤を提供することである。また、本発明の目的は、食道扁平上皮癌のような癌の予後の判定方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、低侵襲的に採取可能な試料を用いて食道扁平上皮癌のような癌のような癌の検出又は予後の判定を行う方法を提供することである。
【0007】
本願発明者らは、下記実施例に具体的に記載する通り、多数の食道扁平上皮癌患者から食道扁平上皮癌組織を採取し、FGFRL1の発現を調べ、その発現量と予後の関連を追跡調査した結果、FGFRL1の発現量が多いと予後が悪いことを見出した。さらに、抗FGFRL1抗体を食道扁平上皮癌細胞に作用させることにより、癌細胞の増殖を抑制できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、FGFRL1と抗原抗体反応し、食道扁平上皮癌細胞の増殖を抑制する抗体又はその抗原結合性断片を有効成分として含有する食道扁平上皮癌治療剤であって、前記抗体が、配列番号2に示されるFGFRL1のアミノ酸配列のN末端から378番目のアミノ酸までの領域と抗原抗体反応する抗体である、食道扁平上皮癌治療剤を提供する。また、本発明は、生体から分離した癌組織中のFGFRL1の発現量を調べることを含み、FGFRL1の発現量が多いことが、予後が悪いであろうことを示す、癌の予後の判定方法であって、前記FGFRL1の発現量を、配列番号2に示されるFGFRL1のアミノ酸配列のN末端から378番目のアミノ酸までの領域と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を用いて調べる、癌の予後の判定方法を提供する。さらに、本発明は、生体組織から抽出したFGFRL1若しくはその断片又は生体から分離した血液中のFGFRL1若しくはその断片を測定することを含み、FGFRL1又はその断片の存在濃度が健常人の組織又は血中のFGFRL1又はその断片の濃度よりも高いことが、癌の存在を示す、癌の検出方法あって、前記FGFRL1又はその断片の存在濃度を、配列番号2に示されるFGFRL1のアミノ酸配列のN末端から378番目のアミノ酸までの領域と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を用いて測定する、癌の検出方法を提供する。さらに本発明は、癌患者から分離した組織中又は血液中のFGFRL1若しくはその断片を測定することを含み、FGFRL1又はその断片の存在濃度が高いことが、予後が悪いであろうことを示す、癌の予後の判定方法であって、前記FGFRL1又はその断片の存在濃度を、配列番号2に示されるFGFRL1のアミノ酸配列のN末端から378番目のアミノ酸までの領域と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を用いて測定する、癌の予後の判定方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、食道扁平上皮癌のような癌の新規な治療剤が提供された。また、本発明により、食道扁平上皮癌のような癌の予後の新規な判定方法が提供された。この方法によれば、悪性度の高い食道扁平上皮癌のような癌の予後を判定することができるので、的確な治療方法を選択することが可能となり、癌の治療に寄与する。さらに、本発明により、低侵襲的に採取可能な試料を用いて食道扁平上皮癌のような癌のような癌の検出を行う方法が提供された。この方法は、低侵襲的であるので被検者の負担が少なく、健康診断等においても容易に癌の検出を行うことができ、癌の早期発見、早期治療が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】下記実施例で行った、食道扁平上皮癌の免疫組織化学の結果を正常組織と比較して示す写真である。
【図2】下記実施例において測定した、食道扁平上皮癌組織中のFGFRL1の発現量と、患者の生存率及び生存月数の関係を示す図である。
【図3】下記実施例において測定した、食道扁平上皮癌細胞に抗FGFRL1抗体を作用させた際の細胞の増殖力を、対照抗体処理と比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記の通り、本発明の食道扁平上皮癌治療剤は、FGFRL1と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を有効成分として含有する。前記抗体は、配列番号2に示されるFGFRL1のアミノ酸配列のN末端から378番目のアミノ酸までの領域と抗原抗体反応する抗体である。FGFRL1は、そのアミノ酸配列も遺伝子の塩基配列も公知である。FGFRL1のcDNAの塩基配列及びそれがコードするアミノ酸配列は、例えばNCBI Accession NO. NM_001004356.2に記載されている。ここに記載されているFGFRL1遺伝子のcDNAの塩基配列及びそれがコードするアミノ酸配列を配列番号1に、該アミノ酸配列を取り出したものを配列番号2に示す。FGFRL1は、1回膜貫通型タンパク質である。

【0012】
ここで用いられる抗体は、癌細胞の増殖を抑制する抗体であり、FGFRL1のN末端領域と抗原抗体反応する抗体、すなわち、FGFRL1のN末端領域中、又はN末端領域を全部若しくは一部含む領域中(すなわち、N末端領域とそれ以外の領域に跨がる領域等)に対応エピトープを有する抗体が好ましい。ここで、N末端領域は、FGFRL1の細胞外領域、すなわち、配列番号2に示されるアミノ酸配列のN末端から378番目のアミノ酸までの領域を意味する。抗体は、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。なお、FGFRL1のN末端領域を対応エピトープとするポリクローナル抗体は市販もされているので、このような市販品を好ましく用いることができる。また、上記抗体の断片であって、抗原結合性を有する断片、例えば、Fab断片やF(ab')2断片等を用いることもできる。なお、癌細胞の増殖抑制効果の有無は、例えば下記実施例に記載するように、周知のWST1法等により行うことができる。

【0013】
抗体は、遺伝子工学的に作製されたものであってもよく、ヒトにおける拒絶反応を抑制するためにFc領域をヒト抗体に置き換えたヒト化抗体等でもよい。さらに、抗体医薬においては、生体内でのプロテアーゼによる分解を受けにくくするために抗体の一端にポリエチレングリコール(PEG)鎖等を結合したものが広く用いられている。本発明の癌治療剤においても、同様に、上記した抗体又はその抗原結合性断片をそっくり含み、その一端にPEG鎖等の安定化構造を付加したものを有効成分として用いることができる。なお、PEG化により抗体又はその抗原結合性断片を安定化する場合には、PEGのサイズは分子量数千~5万、好ましくは1万~5万程度である。また、ポリペプチドの一端にPEGを結合する方法は周知である。このような安定化構造を付加したものも本発明でいう「抗体又はその抗原結合性断片」に包含される。

【0014】
さらに本抗体は、癌に対する低分子抗腫瘍剤や細胞毒性を有する化合物を化学的に結合させて、複合的な抗腫瘍剤として利用することや、本抗体を癌細胞に対する薬物送達システム(Drug delivery system, DDS)のナビゲーターとして利用することにも利用できる。

【0015】
本発明の癌治療剤の投与経路は、非経口投与でも経口投与でもよいが、癌組織への注射、静脈注射、筋肉注射等の非経口投与が好ましい。投与量は、病態や対象疾患の程度に応じて適宜設定することができるが、例えば、体重1kgあたり0.1~20mg/回の投与量で投与され、好ましくは1~10mg/回で投与される。また、本発明の癌治療剤は、周知の方法により製剤することができ、例えば、生理緩衝液中に溶解した溶液の形態とすることができる。また、これに周知の添加剤を添加したものであってよい。

【0016】
本発明の癌治療剤の治療対象となる癌としては、特に限定されないが、上皮の固形癌が好ましく、特に食道扁平上皮癌が好ましい。

【0017】
本願発明者らは、下記実施例において具体的に記載するように、癌組織中のFGFRL1の発現量を指標として癌の予後、すなわち、癌治療開始後の生存率を判定することが可能であることを見出した。従って、本発明は、生体から分離した癌組織中のFGFRL1の発現量を調べることを含み、FGFRL1の発現量が多いことが、予後が悪いであろうことを示す、癌の予後の判定方法をも提供する。FGFRL1の発現量は、免疫組織化学等の免疫測定により行うことができる。免疫測定には、上記した配列番号2に示されるFGFRL1のアミノ酸配列のN末端から378番目のアミノ酸までの領域と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を用いることができ、FGFRL1の細胞外領域にエピトープを有するポリクローナル抗体若しくはモノクローナル抗体を好ましく用いることができる。上記の通り、このようなポリクローナル抗体は市販もされているので、市販品を用いることも可能である。FGFRL1は、膜に貫通した状態で発現しているので、免疫測定としては下記実施例に記載するような免疫組織化学染色が好ましいがこれに限定されるものではない。

【0018】
予後は、FGFRL1の発現量が多いほど悪い可能性が高い。従って、多数の同一種類の癌患者についてFGFRL1の発現量とその予後を予め調べておくことにより、FGFRL1の発現量がどの程度であればどのような予後になる可能性が高いかを判定することができる。例えば、免疫組織化学染色により発現量を調べる場合には、下記実施例に具体的に記載するように、癌組織当たりの染色面積(0%: -、1-50%: +、51-100%: ++)、細胞あたりの強陽性レベルを(+++)、陰性を(-)とし、正常組織に対するFGFRL1の発現程度を勘案して、合算して(++)以上を陽性(すなわち、予後が悪い)と判定することができる。

【0019】
上記の通り、FGFRL1は、1回膜貫通型タンパク質であり、プロテアーゼの作用を受ける構造を細胞外領域に有しているので、組織から抽出した組織液や血液中にFGFRL1又はその断片が遊離している可能性があると考えられる。本願発明者らは、組織から抽出した組織液や血液中に遊離しているFGFRL1又はその断片を定量することにより、癌の検出が可能であることに想到した。本発明は、生体組織から抽出したFGFRL1若しくはその断片又は生体から分離した血液中のFGFRL1若しくはその断片を測定することを含み、FGFRL1又はその断片の存在濃度が健常人の組織又は血中のFGFRL1又はその断片の濃度よりも高いことが、癌の存在を示す、癌の検出方法をも提供する。この場合、組織抽出液や血液中のFGFRL1又はその断片は、配列番号2に示されるFGFRL1のアミノ酸配列のN末端から378番目のアミノ酸までの領域と抗原抗体反応する抗体を用いた免疫測定により定量することが可能である。この場合の免疫測定としては、体液中の各種タンパク質の定量に広く用いられているELISAや、蛍光標識又は化学発光標識を用いたサンドイッチ法や、ラテックス粒子上に抗体を固定化した感作粒子を用いる免疫凝集法等の周知の方法により行うことができる。この場合のカットオフ値は、健常人の平均値に対して有意な値とすることができる。例えば、1.0ユニット/mLとすることができ、この場合のユニット値は、類似疾患との分別と患者背景因子によって変動し得るが、健常人の組織あるいは血中の存在濃度を基準として決定される。


【0020】
また、組織から抽出した組織液や血液中にFGFRL1又はその断片の存在量に基づき、上記した癌組織中でのFGFRL1の発現量に基づく場合と同様、癌の予後の判定を行うことができる。この場合、予後評価の判定基準は生存率あるいは再発率の場合に異なり、疾患に応じて判断される。

【0021】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
実施例1 免疫組織化学染色
69名の食道扁平上皮癌患者から採取した食道扁平上皮癌組織の組織切片を作製し、脱パラフィン(キシレン浸漬5分・3回、100% エタノール浸漬3分・2回、95% エタノール浸漬3分、90% エタノール浸漬3分、85% エタノール浸漬3分、流水水洗5分、蒸留水浸漬5分)後、熱処理による抗原賦活化処理(0.1 mM EDTA含有 1 mM トリス緩衝液 (pH 9.0)中にて95℃で40分処理し、室温で20分冷却後、流水水洗し、蒸留水浸漬)を行った。次に3% 過酸化水素水(室温10分)で内因性ペルオキシダーゼをブロックし、蒸留水で3回洗浄後、0.005% Tween 20、15 mM NaCl 含有 5 mM トリス緩衝液 (pH 7.2)に室温で5分浸漬し、平衡化する。Dako REAL 抗体希釈液 (Dako)で抗FGFRL1抗体 H-300(Santa cruse)を50倍に希釈し、室温で30分処理した。0.005% Tween 20(商品名)、15 mM NaCl 含有 5 mM トリス緩衝液 (pH 7.2)にて3回洗浄後、Dako ChemMate ENVISIONキット(Dako)を用いて、DAB(ジアミノベンジジン)発色させ、蒸留水で洗浄後、Dako REAL Hematoxylin(蒸留水で4倍希釈し、Tween 20を加えて0.01% Tween 20(商品名)に調整)にて室温で3分間対比染色を行った。その後、水洗、脱水、透徹、封入(水洗5分、80% エタノール浸漬5分、90% エタノール浸漬5分、95% エタノール浸漬5分、100% エタノール浸漬5分・2回、キシレン浸漬5分・3回後、Leica CV5030にて封入)を行った。癌組織当たりの染色面積(0%: 0、1-50%: 1、51-100%: 2)と染色強度(no signal: 0、weak: 1、moderate: 2、marked: 3)によりスコア化を行い、合算して4以上をFGFRL1タンパク質高発現、4未満をFGFRL1タンパク質低発現と定義し、Kaplan-Meier法及びログランク検定により両者の患者の生存率を比較した。
【実施例】
【0023】
免疫組織化学染色の結果を図1、FGFRL1の発現量の高低と生存率及び生存月数との関係を図2に示す。図2から明らかなように、FGFRL1の発現量が多い場合に予後が悪く、60ヶ月後の生存率はFGFRL1の発現量が少ない場合の1/3強であった。
【実施例】
【0024】
実施例2 薬理効果
0.22μmのPVDF膜のフィルター(Millipore)で濾過されたウシ胎仔血清(5%、Equitech-Bio)、ペニシリン(100 unit/ml、Meiji)、ゲンタシン(4.44 mg/l、Schering)、炭酸水素ナトリウム(0.2%)を含むHam F12(Nissui)/RPMI1640(Gibco)培地(pH 6.8)中、食道扁平上皮癌由来細胞株KYSE-170を96穴ディッシュ上に播種し (5X103 cells/100μL/well)、5% CO2、湿度100%、37 ℃の条件下で培養した。24時間後、上述のHam F12/RPMI1640培地で希釈された抗FGFRL1抗体 H-300(認識部位:N末・細胞外領域)もしくはC-20(認識部位:C末・細胞内領域)(Santa cruse)及びそれぞれが由来する動物のコントロールIgG(Santa cruse)で処理し(最終濃度 20μg/ml)、24時間培養後に市販の試薬を用いた周知のWST1法により細胞増殖を評価した。
【実施例】
【0025】
結果を図3に示す。図3に示されるように、FGFRL1のN末端領域、すなわち、細胞外領域をエピトープとするモノクローナル抗体を用いた場合には、食道扁平上皮癌細胞の増殖は、対照抗体処理に比べて有意に抑制された。従って、このような抗体は、食道扁平上皮癌の治療薬として有用である。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図1】
2