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明細書 :太陽電池、フォトニック結晶基板、太陽電池パネルおよび太陽電池を備えた装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6037288号 (P6037288)
登録日 平成28年11月11日(2016.11.11)
発行日 平成28年12月7日(2016.12.7)
発明の名称または考案の名称 太陽電池、フォトニック結晶基板、太陽電池パネルおよび太陽電池を備えた装置
国際特許分類 H01L  31/0236      (2006.01)
H01L  31/0216      (2014.01)
B82Y  20/00        (2011.01)
FI H01L 31/04 280
H01L 31/04 240
B82Y 20/00
請求項の数または発明の数 20
全頁数 41
出願番号 特願2013-543028 (P2013-543028)
出願日 平成24年11月8日(2012.11.8)
国際出願番号 PCT/JP2012/079012
国際公開番号 WO2013/069740
国際公開日 平成25年5月16日(2013.5.16)
優先権出願番号 2011244869
優先日 平成23年11月8日(2011.11.8)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年9月28日(2015.9.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】重田 博昭
【氏名】宮西 晋太郎
【氏名】小川 裕之
【氏名】川森 秀次
【氏名】野田 進
【氏名】冨士田 誠之
【氏名】田中 良典
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審査官 【審査官】小濱 健太
参考文献・文献 国際公開第2011/083674(WO,A1)
調査した分野 H01L 31/02-31/078
H01L 31/18-31/20
H01L 51/42-51/48
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-50/15
H02S 99/00
特許請求の範囲 【請求項1】
光の入射側に設けられた透明基板と、
上記透明基板上に形成された第1の透明導電膜と、
上記第1の透明導電膜の表面上に設けられ、複数の凹凸で形成されたフォトニック結晶構造と、
上記フォトニック結晶構造の凹凸に沿って形成された、少なくとも1層の光電変換層とを備え、
上記第1の透明導電膜および上記フォトニック結晶構造は、上記光電変換層よりも屈折率の小さい材料で形成されていること
を特徴とする太陽電池。
【請求項2】
上記凹凸を構成する凹部または凸部の一方が、上記フォトニック結晶構造の基本要素をなしているとともに、
上記フォトニック結晶構造は、第1の径を持つ上記基本要素が、第1の格子定数で配列された第1の副構造と、上記第1の径と異なった第2の径を持つ上記基本要素が、第1の格子定数と異なった第2の格子定数で、上記第1の副構造の格子点の一部を置き換えるように配列された第2の副構造とを含む、少なくとも2種類の副構造を含み、
上記第1の径および第2の径は、上記第1の透明導電膜の面内方向における上記基本要素の断面の径であること
を特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
上記凹凸を構成する凹部または凸部の一方が上記フォトニック結晶構造の基本要素をなしているとともに、上記基本要素は、中心軸の方向が上記透明導電膜の表面と実質的に垂直な柱形状をしており、中心軸に垂直な断面の形状が円形、楕円形または多角形であり、上記多角形は、直線状の辺を、曲線状の辺に置き換えた形状、または、上記多角形の頂点に円弧状の丸みをつけた形状を含んでいること
を特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池。
【請求項4】
上記凹凸を構成する凹部または凸部の一方が、上記フォトニック結晶構造を形成するための基本要素をなしているとともに、
上記フォトニック結晶構造は、4つの凹部または4つの凸部を正方格子状に配置した単位格子を備え、該単位格子を二次元的、かつ周期的に配置することによって構成され、
上記4つの凹部または4つの凸部の断面の形状は、該断面を含む面内方向に沿って、4つの断面の形状のいずれかを、他の断面の形状の位置に平行移動させても、形状的に相互に不一致となるという条件を満たしていること
を特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項5】
上記4つの凹部または4つの凸部の断面の形状は、大きさが互いに異なる相似形であること
を特徴とする請求項4に記載の太陽電池。
【請求項6】
上記4つの凹部または4つの凸部の断面の形状は三角形であり、
4つの断面の形状のいずれかを、他の断面の形状の位置に平行移動させても、形状的に相互に不一致となるという上記条件を満たすように、各三角形の向きまたは形状が設定され、
上記三角形は、上記三角形の直線状の辺を、曲線状の辺に置き換えた形状、または、上記三角形の頂点に円弧状の丸みをつけた形状を含んでいること
を特徴とする請求項4に記載の太陽電池。
【請求項7】
上記光電変換層の上記第1の透明導電膜と反対側の表面に形成された第2の透明導電膜を備え、当該第2の透明導電膜は、上記光電変換層よりも屈折率の小さい材料で形成されていること
を特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項8】
上記光電変換層は、吸収する光の主な波長域が異なる少なくとも2層の光電変換層を有していること
を特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項9】
上記フォトニック結晶構造は、透明な誘電体で形成されていること
を特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項10】
上記フォトニック結晶構造は、透明な導電体で形成されていること
を特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項11】
上記太陽電池は、光の入射側と反対側の表面に、上記光電変換層側から入射した光を上記入射側へと反射し、かつ上記光電変換層の電極として機能する金属電極層が形成されていること
を特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項12】
光電変換層が積層されるフォトニック結晶基板であって、
透明基板と、
上記透明基板の一方の表面上に設けられた透明導電膜とを備え、
上記透明導電膜の表面には、フォトニック結晶構造を形成するための複数の凹凸が、周期的に形成され、
上記透明導電膜および上記複数の凹凸は、上記複数の凹凸に沿って形成された上記光電変換層の形成材料よりも屈折率の小さい材料で形成されており、
上記凹凸の形成材料は、上記透明導電膜上に積層された透明な導電体であること
を特徴とするフォトニック結晶基板。
【請求項13】
光電変換層が積層されるフォトニック結晶基板であって、
透明基板と、
上記透明基板の一方の表面上に設けられた透明導電膜とを備え、
上記透明導電膜の表面には、フォトニック結晶構造を形成するための複数の凹凸が、周期的に形成され、
上記透明導電膜および上記複数の凹凸は、上記複数の凹凸に沿って形成された上記光電変換層の形成材料よりも屈折率の小さい材料で形成されており、
上記一方の表面の形状が、上記複数の凹凸の形状に対応した凹凸の形状をなし、
上記透明導電膜の表面に形成された上記複数の凹凸は、上記一方の表面における凹凸の形状が反映されたものであること
を特徴とするフォトニック結晶基板。
【請求項14】
光電変換層が積層されるフォトニック結晶基板であって、
透明基板と、
上記透明基板の一方の表面上に設けられた透明導電膜とを備え、
上記透明導電膜の表面には、フォトニック結晶構造を形成するための複数の凹凸が、周期的に形成され、
上記透明導電膜および上記複数の凹凸は、上記複数の凹凸に沿って形成された上記光電変換層の形成材料よりも屈折率の小さい材料で形成されており、
上記複数の凹凸を構成する凹部または凸部の一方が上記フォトニック結晶構造を形成するための基本要素をなしているとともに、
上記複数の凹凸は、第1の径および第1の格子定数を持つ第1の副構造と、当該第1の副構造の格子点の一部を置き換えるように配列され、上記第1の径および第1の格子定数とはそれぞれ異なった第2の径および第2の格子定数を持つ第2の副構造とを含む、少なくとも2種類の副構造を含み、
上記第1の径および第2の径は、上記透明導電膜の面内方向における上記基本要素の断面の径であること
を特徴とするフォトニック結晶基板。
【請求項15】
光電変換層が積層されるフォトニック結晶基板であって、
透明基板と、
上記透明基板の一方の表面上に設けられた透明導電膜とを備え、
上記透明導電膜の表面には、フォトニック結晶構造を形成するための複数の凹凸が、周期的に形成され、
上記透明導電膜および上記複数の凹凸は、上記複数の凹凸に沿って形成された上記光電変換層の形成材料よりも屈折率の小さい材料で形成されており、
上記凹凸を構成する凹部または凸部の一方が、上記フォトニック結晶構造を形成するための基本要素をなしているとともに、
上記フォトニック結晶構造は、4つの凹部または4つの凸部を正方格子状に配置した単位格子を備え、該単位格子を二次元的、かつ周期的に配置することによって構成され、
上記4つの凹部または4つの凸部の断面の形状は、該断面を含む面内方向に沿って、4つの断面の形状のいずれかを、他の断面の形状の位置に平行移動させても、形状的に相互に不一致となるという条件を満たしていること
を特徴とするフォトニック結晶基板。
【請求項16】
上記凹凸の形成材料は、上記透明導電膜上に積層された透明な誘電体であること
を特徴とする請求項12から15のいずれか1項に記載のフォトニック結晶基板。
【請求項17】
上記4つの凹部または4つの凸部の断面の形状は、大きさが互いに異なる相似形であること
を特徴とする請求項15に記載のフォトニック結晶基板。
【請求項18】
上記4つの凹部または4つの凸部の断面の形状は三角形であり、
4つの断面の形状のいずれかを、他の断面の形状の位置に平行移動させても、形状的に相互に不一致となるという上記条件を満たすように、各三角形の向きまたは形状が設定され、
上記三角形は、上記三角形の直線状の辺を、曲線状の辺に置き換えた形状、または、上記三角形の頂点に円弧状の丸みをつけた形状を含んでいること
を特徴とする請求項15に記載のフォトニック結晶基板。
【請求項19】
請求項1から11のいずれか1項に記載の太陽電池を1ユニットとして、複数の上記ユニットが一次元的または二次元的に配列されたことを特徴とする太陽電池パネル。
【請求項20】
請求項1から11のいずれか1項に記載の太陽電池、または請求項19に記載の太陽電池パネルを電源として備えたことを特徴とする装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトニック結晶構造を備えた太陽電池の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、例えば、太陽電池または光センサなどに、入射光を光電変換することで電気信号に変換する光電変換素子が一般的に用いられている。このような光電変換素子には半導体が用いられており、半導体のバンドギャップ(価電子帯と伝導帯のエネルギー差)を越えるエネルギーを持った電磁波(光)が入射したとき、半導体において電子が、価電子帯から伝導帯へ励起され、光電変換が発生する。
【0003】
半導体による光電変換素子として、p型半導体層、真性半導体層およびn型半導体層の各層の隣接構造を備えた、いわゆるpin型太陽電池がある。
【0004】
pin型太陽電池は、入射した光と半導体の格子構造との相互作用によって、真性半導体層で電子および正孔が生成され、効率良く電流を取り出すことができるので、太陽電池の用途に適している。また、各層が太陽電池の表面と平行に積層された縦型構造であることは、太陽電池の占有面積を小さくするのに有利である。
【0005】
さて、各半導体は、それぞれの持つバンド構造およびバンドギャップによって、光を吸収する波長が異なる。
【0006】
例えば、アモルファスシリコン半導体(a‐Si)では、波長700nm程度以下に吸収があることが一般的に知られている(光の吸収端が700nm付近にある)。吸収端より短波長の電磁波(光)では、光起電力材料において光の吸収があるため、光起電力材料では光電変換が発生する。また、加工方法や製造方法の改善により、現在では、820nm程度まで光吸収が起こせるようになっており、波長700nmから820nm程度までの帯域でも光起電力の発生が期待できる。
【0007】
アモルファスシリコン半導体の場合、波長約520nmを吸収のピークとして、波長が520nm付近から、吸収端の波長である820nmの方へ大きくなるとともに、吸収率が低下する。これは、吸収ピークから半導体の吸収端にかけての波長域では、光と電子との相互作用が弱くなるため、吸収端側の波長の光は半導体を透過しやすくなるためである。したがって、半導体の吸収端近傍では光電変換効率が悪くなる。なお、吸収ピークから短波長側の吸収端にかけての波長の光でも同様である。
【0008】
半導体の吸収端近傍における光吸収率を増加させるには、半導体を厚膜化する必要がある。しかしながら、半導体の厚膜化はコストの増加等を招き、不利である。
【0009】
そこで、光電変換層を厚膜化することなく、光の吸収量を増加させるためのさまざまな技術が開発されている。
【0010】
[特許文献1:散乱効果を有する太陽電池]
図28に示すように、特開昭63-313874号公報には、光の吸収量の増大を図った太陽電池用基板1000が開示されている。具体的には、ガラス基板1010上に多数の凸部を有する透明電導膜1020を形成する。この透明電導膜1020の表面の凹凸により、入射光が半導体層と上記透明電導膜1020との界面で散乱されるので、半導体層内での多重反射および屈折が起こる。その結果、光路長が延伸して、光の吸収量が増大することが、同公報では述べられている。
【0011】
[特許文献2:共振効果を利用した光の吸収]
図29に示すように、特開2002-368244号公報には、太陽電池本体2000に含まれる透明電極2010の表面上に、誘電体で形成された複数の誘電体アンテナ2020を突出して設ける技術が開示されている。太陽から照射される電磁波を上記誘電体アンテナ2020によって受信して、太陽電池本体2000の半導体光電層2030に供給することで、太陽光を効率よく発電電力として出力することが述べられている。
【0012】
[特許文献3:タンデム構造太陽電池]
2層以上の光電変換層を有する構造の太陽電池は、タンデム構造太陽電池あるいはタンデム型太陽電池と呼称されている。
【0013】
特開2005-217041号公報には、バンドギャップの異なる材料で形成された第1、第2の半導体層を有し、上記2層の半導体層の間に光透過性絶縁層が形成された、タンデム構造太陽電池が開示されている。このような構成において、2層の半導体層のバンドギャップを異ならせることで、光吸収の強く起こる波長をずらし、広い波長範囲で光吸収が起こるようになっている。
【0014】
[特許文献4:ブラッグ反射による光吸収率の増加]
媒質および誘電率の異なる周期構造が、光の波長と同程度の周期で媒質内に形成されたものを、フォトニック結晶という。
【0015】
特開2006-24495号公報には、フォトニック結晶からなる周期構造を有し、該周期構造に起因したブラッグ反射に基づく光閉込め効果を有する光電変換層を備えた光電変換素子が記載されている。
【先行技術文献】
【0016】

【特許文献1】日本国公開特許公報「特開昭63-313874号公報(1988年12月21日公開)」
【特許文献2】日本国公開特許公報「特開2002-368244号公報(2002年12月20日公開)」
【特許文献3】日本国公開特許公報「特開2005-217041号公報(2005年8月11日公開)」
【特許文献4】日本国公開特許公報「特開2006-24495号公報(2006年1月26日公開)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記のように、特許文献1および2に開示された太陽電池では、光電変換層内を進行する光の光路長を長くしたり、光電変換層に取り込まれる光量を増やしたりすることによって、光電変換層の光吸収率を高めている。しかし、光電変換層による光吸収率が本来低い光の波長領域では光吸収率が低いことは変わらないため、光の変換効率向上に強い制限がある。
【0018】
また、特許文献2では特に、アンテナで受信された光は光電変換層へ垂直に入射することから、光電変換層に光を斜めに入射させる場合と比べて光の吸収率は小さくなるという問題がある。
【0019】
特許文献3においても、バンドギャップの異なる半導体層を積層することで、1層の半導体層を有する太陽電池と比べると、光吸収の大きい波長領域を拡大しているが、やはりそれぞれの層の半導体の吸収端付近では光吸収率が大変低くなり、これを改善するためには半導体を厚膜化させる必要がある。しかし、半導体の厚膜化は、材料のコストの増大などにつながり、好ましくない。
【0020】
特許文献4の問題点は、ブラッグ反射の起こる波長が、フォトニック結晶の構造周期で決定されるので、限られた反射条件(ブラッグ反射条件)を満たす波長の光のみにしか光閉じ込めの効果が生じないことである。
【0021】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、フォトニック結晶構造を備えた太陽電池の光の吸収率を高め、太陽電池の起電力を増大させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係る太陽電池は、上記の課題を解決するために、
(1)光の入射側に設けられた透明基板と、
(2)上記透明基板上に形成された第1の透明導電膜と、
(3)上記第1透明導電膜の表面上に設けられ、複数の凹凸で形成されたフォトニック結晶構造と、
(4)上記フォトニック結晶構造の凹凸に沿って形成された、少なくとも1層の光電変換層と、
(5)上記第1透明導電膜および上記フォトニック結晶構造は、上記光電変換層よりも屈折率の小さい材料で形成されていることを特徴とする。
【0023】
(界面反射の低減効果)
第1に、本発明の太陽電池の構成によれば、フォトニック結晶構造が、光の入射側に位置する第1の透明導電膜と光電変換層との境界に設けられている。これにより、透明基板に入射した光は、第1の透明導電膜を通過するだけで、フォトニック結晶構造に到達することができる。そして、第1の透明導電膜およびフォトニック結晶構造を形成する材料の屈折率は、光電変換層の屈折率よりも小さい。
【0024】
なお、第1の透明導電膜は、光電変換層で発生した電流を外部に取り出すための電極としての機能を有する導電性の膜である。
【0025】
従って、透明基板からフォトニック結晶構造に至るまでの間に、界面反射を引き起こす層の数が最小限になっているので、上記境界に第1の透明導電膜側から入射した光の界面反射を最小限に抑えることができる。
【0026】
従って、本発明の太陽電池は、太陽電池内での界面反射を低減させ、光電変換層での光吸収を増加させることができる。
【0027】
例えば、透明導電膜の屈折率が2で、光電変換層の屈折率が4、フォトニック結晶構造の屈折率が2であるとする。
【0028】
この場合、屈折率2の第1の透明導電膜側から進行してフォトニック結晶との境界へ至った光は、フォトニック結晶構造と光電変換層との組み合わせが示す実効屈折率(等価屈折率)に従って、界面反射もしくは屈折する。
【0029】
このとき、フォトニック結晶構造は、屈折率が2であるので、その実効屈折率は、光電変換層の屈折率4よりも小さく、第1の透明導電膜の屈折率2よりも大きなものとなる。
【0030】
その結果、フォトニック結晶構造がない場合(屈折率2の第1の透明導電膜と屈折率4の光電変換層とが界面を持つ場合)と比較して、界面反射が低減されることになる。なぜならば、一般的に、第1の媒質から第2の媒質へ光が入射する場合、第1の媒質の屈折率と第2の媒質の屈折率との差が小さいほど、反射率は小さくなるためである。
【0031】
(光閉じ込め効果)
第2に、上記の構成によれば、第1の透明導電膜の表面に、複数の凹凸で形成されたフォトニック結晶構造が設けられている。
【0032】
フォトニック結晶構造とは、光の波長程度の大きさの格子定数をもってそれぞれの格子点に構造体が配置された、周期構造のことである。
【0033】
フォトニック結晶構造は、その周期によって、特定の波長の光と相互作用し、該特定波長の光を共振させることができる。
【0034】
さらに、上記光電変換層は上記フォトニック結晶構造の凹凸に沿って形成されるため、フォトニック結晶構造の凹凸が、フォトニック結晶構造と光電変換層との界面において、光電変換層に転写される。従って、光電変換層もフォトニック結晶構造と同じ周期構造を有することになる。
【0035】
すると、特定波長の光が光電変換層内に進入したとき、該特定波長の光は、光電変換層の周期構造と共振を起こすことによって、光電変換層における光吸収が向上するので、光電変換される当該特定波長の光の量を増加させることができる。
【0036】
すなわち、フォトニック結晶構造が転写された周期構造を有する光電変換層を備えた太陽電池は、特定波長の光の吸収を高めることができ、しかもフォトニック結晶構造の格子定数を調節することによって、光電変換層の光吸収率が小さくなる波長域における光吸収率を、選択的に増大させることができる。
【0037】
言い換えれば、第1の透明導電膜上にフォトニック結晶構造が形成されていることによって、特定波長の光を共振させ、該特定波長の光を光電変換層内に閉じ込めるという光閉じ込め効果が生じる。
【0038】
そして、この光閉じ込め効果と、前述した界面反射低減の効果とによって、太陽電池の光の吸収率を高め、太陽電池の起電力を増大させることができる。
【0039】
本発明に係るフォトニック結晶基板は、上記の課題を解決するために、透明基板と、上記透明基板の一方の表面上に設けられた透明導電膜とを備え、上記透明導電膜の表面には、フォトニック結晶構造を形成するための複数の凹凸が、周期的に形成され、上記透明導電膜および上記複数の凹凸は、光電変換層の形成材料よりも屈折率の小さい材料で形成されていることを特徴とする。
【0040】
上記の構成によれば、上記凹凸を覆うように、少なくとも1層の光電変換層を形成することにより、既に説明したように、フォトニック結晶構造による光吸収率向上の効果と、界面反射低減の効果とによって、起電力を増大させた太陽電池を得ることができる。
【0041】
すなわち、上記フォトニック結晶基板を用いて、起電力を増大させた太陽電池を作製することができる。
【0042】
本発明に係る太陽電池パネルは、上記太陽電池のいずれかを1ユニットとして、複数の上記ユニットが一次元的または二次元的に配列されたことを特徴とする。
【0043】
これにより、光の吸収率が高い太陽電池が配列されているので、光電変換率の高い太陽電池パネルを得ることができる。
【0044】
上記太陽電池のいずれかを電源として備えた装置もまた、本発明の1つのカテゴリーである。そのような装置は、上記太陽電池を電源として動作する携帯型または据え置き型の電子機器、家電製品または広告塔などが含まれる。
【0045】
また、上記太陽電池パネルを電源として備えた装置もまた、本発明の1つのカテゴリーである。そのような装置は、上記太陽電池パネルを電源として動作する携帯型または据え置き型の電子機器または家電製品のほかに、車両または広告塔なども含まれる。
【0046】
なお、ある着目した請求項に記載された構成と、その他の請求項に記載された構成との組み合わせが、その着目した請求項で引用された請求項に記載された構成との組み合わせのみに限られることはなく、本発明の目的を達成できる限り、その着目した請求項で引用されていない請求項に記載された構成との組み合わせが可能である。
【発明の効果】
【0047】
本発明の太陽電池は、光の入射側に設けられた透明基板上の第1の透明導電膜の表面に、フォトニック結晶構造を形成し、上記第1の透明導電膜および上記フォトニック結晶構造を、光電変換層よりも屈折率の小さい材料で形成したので、従来の太陽電池、あるいは従来のフォトニック結晶構造を備えた太陽電池と比較して、より広い波長域の光を、より多く吸収する(光吸収率が高い)ことができる。
【0048】
その結果、太陽電池の光電変換率が上昇するという効果を奏する。
【0049】
また、本発明のフォトニック結晶基板は、透明基板の一方の表面上に設けられた透明導電膜の表面に、フォトニック結晶構造を形成し、上記透明導電膜および上記フォトニック結晶構造を、光電変換層の形成材料よりも屈折率の小さい材料で形成したので、上記フォトニック結晶基板を用いて、起電力を増大させた太陽電池を作製することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施形態1の太陽電池の全体構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1に示すフォトニック結晶構造の効果を示す説明図であり、(a)はフォトニック結晶構造による光の共振効果を示し、(b)は光の閉じ込め効果を示している。
【図3】実施形態1のフォトニック結晶構造の一例を示す図であり、(a)は構造体の二次元配置を示し、(b)は、(a)中に示すA-B線における要部矢視断面を示し、(c)は、(a)中に示すC-D線における要部矢視断面を示している。
【図4】実施形態1のフォトニック結晶構造の他の例において、構造体の二次元配置を示す平面図である。
【図5】図1の太陽電池において、Q値およびS値を決定するパラメータを示す説明図である。
【図6】アモルファスシリコン半導体(a-Si)およびマイクロクリスタルシリコン半導体(μc-Si)の光の波長に対する感度特性を示すグラフである。
【図7】フォトニック結晶構造による共振状態を示すグラフであり、電磁界解析結果を示すグラフである。
【図8】太陽電池に進入した光の様子を示す簡略図であり、(a)は図1の太陽電池の場合を示し、(b)は、従来技術の太陽電池の場合を対比的に示している。
【図9】太陽電池内に進入した光の界面反射の様子について、フォトニック結晶構造の形成位置の違いによる界面反射の違いを対比的に示す説明図である。
【図10】単層の半導体層で構成された光電変換層を含む太陽電池の構成を示す模式的な断面図である。
【図11】マイクロクリスタルシリコン半導体の光の波長に対する感度特性を示すグラフである。
【図12】実施形態1の太陽電池の製造工程を順に示す説明図である。
【図13】実施形態2の太陽電池の全体構成を概略的に示す断面図である。
【図14】実施形態2のフォトニック結晶構造の一例を示す図であり、(a)は孔状の構造体の二次元配置を示し、(b)は、(a)中に示すA-B線における要部矢視断面を示し、(c)は、(a)中に示すC-D線における要部矢視断面を示している。
【図15】実施形態2のフォトニック結晶構造の他の例において、構造体の二次元配置を示す平面図である。
【図16】実施形態2の太陽電池において、単層の半導体層で構成された光電変換層を備えた変形例を示す模式的な断面図である。
【図17】実施形態3の太陽電池の全体構成を概略的に示す断面図である。
【図18】柱状の構造体によって2種類の周期構造を備えた実施形態3のフォトニック結晶構造を示す平面図である。
【図19】図18に示すフォトニック結晶構造を備えた加工済み基板の断面を示し、(a)は、図18の(a)におけるA-B線矢視断面を示し、(b)は、図18の(a)におけるC-D線矢視断面を示し、(c)は、図18に示すフォトニック結晶構造が孔状の構造体で形成されている変形例において、上記A-B線矢視断面を示し、(d)は、その変形例における上記C-D線矢視断面を示している。
【図20】図17の太陽電池において、Q値およびS値を決定するパラメータを示す説明図である。
【図21】実施形態3の太陽電池の製造方法を順に示す説明図である。
【図22】実施形態3の太陽電池の変形例を示す模式的断面図である。
【図23】加工済み基板の他の例と、その加工済み基板を備えた太陽電池の製造工程を順に示す説明図である。
【図24】実施形態4のフォトニック結晶構造の一例を示す図であり、(a)は、そのフォトニック結晶構造を備えた太陽電池を概略的に示し、(b)は、そのフォトニック結晶構造を備えた加工済み基板を概略的に示し、(c)は、円柱状の構造体の二次元配置を示している。
【図25】実施形態4のフォトニック結晶構造の他の例を示す平面図である。
【図26】実施形態4のフォトニック結晶構造のさらに他の例を示す平面図である。
【図27】実施形態4のフォトニック結晶構造のさらに他の例を示す平面図である。
【図28】従来の太陽電池の構成例を示す概略断面図である。
【図29】従来の太陽電池の他の構成例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の実施の一形態について図1から図12および図23を参照して説明すれば、以下のとおりである。但し、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。

【0052】
〔実施形態1〕
(太陽電池の構成)
図1は、本実施形態の太陽電池1の全体構成を概略的に示す断面図である。

【0053】
太陽電池1は、透明基板10と、上記透明基板10の上に形成された第1の透明導電膜11と、上記第1の透明導電膜11の表面上に、複数の凸部を設けることによって形成されたフォトニック結晶構造30と、上記フォトニック結晶構造30の凹凸に沿って形成された半導体層21とを備えている。

【0054】
なお、透明基板10と、第1の透明導電膜11と、フォトニック結晶構造30とは、フォトニック結晶基板を構成している。

【0055】
上記複数の凸部のうちの1つの凸部を、フォトニック結晶構造30の基本要素としての構造体31と呼ぶ。一般に、フォトニック結晶構造とは、光の波長程度の大きさの格子定数をもってそれぞれの格子点に構造体が配置された、周期構造のことである。

【0056】
また、上記半導体層21は、本発明に係る太陽電池が備えている「少なくとも1層の光電変換層」に相当する。半導体層21は、フォトニック結晶構造30の凹凸に沿って、すなわち隣接して形成されているので、半導体層21とフォトニック結晶構造30との界面では、半導体層21に、フォトニック結晶構造30の凹凸形状を反転させた凹凸形状が形成されている。

【0057】
さらに付言すれば、フォトニック結晶構造30が、第1の透明導電膜11の表面に上記構造体31を設けることによって構成されている場合、構造体31の周囲は、半導体層21の材料によって埋められている。

【0058】
本実施形態の太陽電池1は、上記光電変換層として、吸収する光の主な波長域が半導体層21とは異なる半導体層22を備え、いわゆるタンデム型の太陽電池として構成されている。

【0059】
半導体層21と半導体層22とは、光が太陽電池1へ入射する側(透明基板10側)からこの順番で形成され、全体として光電変換層20を構成している。

【0060】
第1の透明導電膜11およびフォトニック結晶構造30を形成する材料の屈折率は、後述するように、半導体層21の屈折率よりも小さい。

【0061】
上記光電変換層20に第2の透明導電膜12が積層され、第2の透明導電膜12を金属電極層14が覆っている。

【0062】
なお、各透明導電膜11,12は、光電変換層20で発生した電流を外部に取り出す機能を有する導電性の膜である。

【0063】
上記の構成によれば、透明基板10は光が太陽電池1へ入射する側の最前面に配され、また金属電極層14は光が太陽電池1に入射する側とは反対側の最後面に配されている。光電変換層20は、透明導電膜11,12によって挟まれ、金属電極層14および第1の透明導電膜11を外部抵抗で接続することで、電気信号を外部に出力することができる。

【0064】
(界面反射の低減効果)
第1に、太陽電池1の構成によれば、フォトニック結晶構造30が、光の入射側に位置する第1の透明導電膜11と光電変換層20との境界に設けられている。これにより、透明基板10に入射した光は、第1の透明導電膜11を通過するだけで、フォトニック結晶構造30に到達することができる。

【0065】
従って、透明基板10からフォトニック結晶構造30に至るまでの間に、界面反射を引き起こす層の数が最小限になっているので、上記境界に第1の透明導電膜11側から入射した光の界面反射を最小限に抑えることができる。

【0066】
さらに、第1の透明導電膜11およびフォトニック結晶構造30を形成する材料の屈折率は、半導体層21の屈折率よりも小さいので、フォトニック結晶構造30の存在が、界面反射を一層抑えることになる。

【0067】
この理由は、フォトニック結晶構造の実効屈折率によって説明できる。例えば、透明導電膜の屈折率が2で、光電変換層の屈折率が4、フォトニック結晶構造の屈折率が2であるとする。

【0068】
この場合、屈折率2の第1の透明導電膜11側から進行してフォトニック結晶構造30との境界へ至った光は、フォトニック結晶構造30と半導体層21との組み合わせが示す実効屈折率(等価屈折率)に従って、界面反射もしくは屈折する。

【0069】
このとき、フォトニック結晶構造30は、屈折率が2であるので、その実効屈折率は、半導体層21の屈折率4よりも小さく、第1の透明導電膜11の屈折率2よりも大きなものとなる。

【0070】
その結果、フォトニック結晶構造30がない場合(屈折率2の第1の透明導電膜11と屈折率4の半導体層21とが界面を持つ場合)と比較して、屈折率の変化が緩和され、界面反射が低減されることになる。なぜならば、一般的に、第1の媒質から第2の媒質へ光が入射する場合、第1の媒質の屈折率と第2の媒質の屈折率との差が小さいほど、反射率は小さくなるためである。

【0071】
従って、太陽電池1は、太陽電池1内における界面反射を低減させ、光電変換層20での光吸収を増加させることができる。

【0072】
(フォトニック結晶構造の効果)
第2に、フォトニック結晶構造30によって、光を光電変換層20内に閉じ込めることができる結果、光電変換層20による光吸収率を高める効果が得られる。

【0073】
図2は、図1に示すフォトニック結晶構造の効果を示す説明図であり、(a)はフォトニック結晶構造による光の共振効果を示し、(b)は光の閉じ込め効果を示している。

【0074】
図2の(a)に示すように、フォトニック結晶構造30は、その周期によって、特定の波長の光と相互作用し、該特定波長の光を共振させることができる。

【0075】
さらに、上記光電変換層20の半導体層21は、フォトニック結晶構造30の凹凸に沿って、凸部と凸部との間の凹部を埋めるように形成されている。このため、フォトニック結晶構造30の凹凸が、フォトニック結晶構造30と半導体層21との界面において、少なくとも半導体層21に転写される。従って、半導体層21もフォトニック結晶構造30と同じ周期構造を有することになる。

【0076】
すると、特定波長の光が半導体層21内に進入したとき、該特定波長の光は、半導体層21の周期構造と共振を起こすことによって、半導体層21における光吸収が向上するので、光電変換される当該特定波長の光の量を増加させることができる。

【0077】
すなわち、フォトニック結晶構造30が転写された周期構造を有する半導体層21を備えた太陽電池1は、特定波長の光の吸収を高めることができる。しかも、フォトニック結晶構造30の格子定数(ピッチ)を調節することによって、半導体層21の光吸収率が小さくなる波長域における光吸収率を、選択的に増大させることができる。

【0078】
言い換えれば、第1の透明導電膜11上にフォトニック結晶構造30が形成されていることによって、特定波長の光を共振させ、該特定波長の光を半導体層21内に閉じ込めるという光閉じ込め効果が生じる。

【0079】
そして、この光閉じ込め効果と、前述した界面反射低減の効果とによって、太陽電池1の光の吸収率を高め、太陽電池1の起電力を増大させることができる。

【0080】
図2の(b)は、光電変換層20全体において得られるトータルの光閉じ込め効果を表している。トータルの光閉じ込め効果は、下記の(1)~(4)の効果の相乗効果によって得られる。

【0081】
(1)半導体層21における光の共振による光閉じ込め効果、
(2)半導体層22にも、フォトニック結晶構造が転写されているため、半導体層22における光の共振による光閉じ込め効果、
(3)高屈折率の光電変換層20が、低屈折率の2つの透明導電膜11,12で挟まれていることによる光ファイバーの原理に基づく光閉じ込め効果、
(4)金属電極層14が、光電変換層20で光電変換されずに通り抜けた光を、再び光電変換層20内へと戻すように反射する反射効果。

【0082】
なお、上記(2)の効果が得られるのは、半導体層22にも、フォトニック結晶構造が転写されているからである。

【0083】
(太陽電池1の詳細な構成)
以下では、太陽電池1を構成するそれぞれの要素について、その性質および材料などを詳細に説明する。

【0084】
透明基板10は、例えばガラスを材料とする両表面が平坦な基板であり、できるだけ光吸収の小さな材料で形成されていることが望ましい。

【0085】
透明基板10の厚さは、本発明において特に限定されるものではないが、太陽電池1の光入射側表面における多重反射を防ぐために、入射光の波長よりも十分(例えば光の波長の10倍以上)大きな厚さとすることが望ましい。

【0086】
透明基板10のガラス以外の材料として、SiO、SiNなどの無機透明誘電体、あるいはポリカーボネート、アクリルなどの有機透明誘電体が挙げられる。

【0087】
第1の透明導電膜11および第2の透明導電膜12は、透明で、導電性を有しており、かつ屈折率が光電変換層20よりも小さな材料で形成される。

【0088】
透明導電膜11,12は、例えば透明な導電体であるSnOを材料として形成されている。

【0089】
透明導電膜11,12の材料としては、SnOの他にも、ITO(Indium-Tin-Oxide)、ZnOなどを選択することもできる。

【0090】
また、図1において説明したように、第1の透明導電膜11と第2の透明導電膜12とで、光電変換層20を挟む構成となっており、光電変換層20で得られた電流を、外部へと取り出せるようになっている。

【0091】
また、屈折率が小さい透明導電膜11,12(屈折率2程度)によって、屈折率が大きい光電変換層20(屈折率4程度)を両側から挟む構成となっている。このため、前述したように、高屈折率のコアを低屈折率のクラッドで被覆することで光を伝播させる光ファイバと同じ原理で、光電変換層20から外部へと漏れ出ようとする光を閉じ込める機能が得られる。この機能によって、未だ光電変換されていない光が何度も光電変換層20内を往復することになるので、光電変換層20による光の吸収率を向上させることができる。

【0092】
なお、第1の透明導電膜11の厚みは、できるだけ薄い方が好ましい。なぜならば、膜の厚さが薄いほど光の吸収量が少なくなるので、入射光が光電変換層20以外で吸収されることによる光電変換効率の損失を小さくすることができるからである。

【0093】
透明導電膜を、誘電体で形成された膜としてもよく、漏れ出ようとする光を閉じ込める効果を得ることはできる。ただし、この場合には、光電変換層20から外部へと電流を取り出すための別構成を必要とする。

【0094】
第1の透明導電膜11上には、透明で光電変換層20よりも屈折率の小さい誘電体を材料とする構造体31を周期的に配置することによって、フォトニック結晶構造30が形成される。

【0095】
なお、上記構造体31の材料となる透明な誘電体としては、光電変換層20よりも、屈折率が小さい材料から選択することが好ましく、屈折率が0.4以上小さい材料から選択することがより好ましい。

【0096】
例えば、半導体層21がアモルファスシリコン(a-Si)半導体層で構成され、半導体層22がマイクロクリスタルシリコン(μc-Si)半導体層で構成されるとする。どちらの材料も、屈折率は4程度なので、構造体31の材料としては、透明で屈折率が1.4程度であるSiOを使用することができる。

【0097】
なお、構造体31の材料となる誘電体としては、SiOあるいはSiNなどの無機透明誘電体のほかに、ポリカーボネート、アクリルなどの有機透明誘電体を使用することも可能である。

【0098】
金属電極層14は、光電変換層20の電極としての機能を有する金属でできた層である。金属電極層14の材料としては、例えば、光反射率が高く、電気伝導度が大きなアルミニウム(Al)を使用することができる。

【0099】
金属電極層14の材料を、アルミニウムのように光の反射率の大きなものとすることにより、金属電極層14を、上記のように電極として機能させると共に、光の反射率の大きい金属反射層としても機能させることができる。すなわち、光電変換層20内で光電変換されず、金属電極層14側へと透過してきた光を、再び光電変換層20へと反射させることができ、光の吸収率が高まる。さらに、金属電極層14を太陽電池1の裏面の全面を覆うように形成すれば、光電変換層20を透過した光を確実に反射することができ、光の吸収率をさらに高くすることができる。

【0100】
金属電極層14の材料としては、アルミニウム同様に反射率の大きい物質である銀(Ag)などを使用することもできる。

【0101】
図6に、光の波長に対する半導体層21,22の感度特性を示す。アモルファスシリコン半導体層は、短波長域の光をよく吸収するので、光入射側に近い半導体層21には、短波長域の光に対する吸収向上の効果を持たせている。

【0102】
また、マイクロクリスタルシリコン半導体層は、長波長域の光をよく吸収するので、半導体層22には、長波長域の光に対する吸収向上の効果を持たせている。

【0103】
さらに、フォトニック結晶構造30は、半導体層21および半導体層22を備えた光電変換層20自体の光吸収効果を増強するので、太陽電池1は、広い波長帯域の光の吸収効率を高めることができる。

【0104】
これにより、光電変換層20の薄膜化が可能になるので、光電変換層20のために使用する材料を減らし、プロセス時間を減らすことができ、結果として、太陽電池1のコストダウンを図ることができる。

【0105】
(半導体層に関する補足説明)
それぞれの半導体層21、22は、真性半導体層(i層)をp型半導体層とn型半導体層とで挟んだpin縦型構造となっている。pin縦型構造は、光の入射側(透明基板10側)から、正孔をドープしたp型半導体層、i型半導体(真性半導体)層、電子をドープしたn型半導体層の順で積層することによって形成される。

【0106】
太陽電池1において、透明基板10を通って光電変換層20に入射した光は、主にi型半導体層において、光と半導体の格子との相互作用によって、電子と正孔とを発生させるとともに、電子を価電子帯から導電帯へと励起する。励起された電子は、第1および第2の透明導電層11,12を流れる電流となって、外部で電圧として取り出される。

【0107】
なお、光電変換層20を構成する半導体層21,22の構造は、上記pin縦型構造に特に限定されるものではないが、pin縦型構造の特徴として、真性半導体層で生成された電子および正孔から、効率良く電流を取り出すことができるので、太陽電池1の用途に適している。また、縦型構造であることは太陽電池1の占有面積を小さくするのに有利である。

【0108】
(フォトニック結晶構造の具体例1)
図1に示すフォトニック結晶構造30は、第1の透明導電膜11の表面上に所定のピッチで、複数の構造体31を、例えば正方格子状に配列した構成である。したがって、図1に示すフォトニック結晶構造30は、単一の周期構造を有している。

【0109】
これに対し、図3に、複数の周期構造を持ち、光の共振を、より多くの波長で起こすことができるフォトニック結晶構造30aを示す。フォトニック結晶構造30aを備えた太陽電池を、太陽電池1aとする。

【0110】
図3の(a)は構造体32,33の二次元配置を示し、(b)は、(a)中に示すA-B線における太陽電池1aの要部矢視断面を示し、(c)は、(a)中に示すC-D線における太陽電池1aの要部矢視断面を示している。

【0111】
上記フォトニック結晶構造30aは、大きさの異なる2種類の構造体32,33が、上記第1の透明導電膜11の表面を含む面方向に、異なる格子定数を持つように配置されている。構造体32,33は、どちらも第1の透明導電膜11の面と垂直な中心軸を有する柱状である。

【0112】
構造体32,33を、第1の透明導電膜11の表面を含む面によって切断した断面の形状は、図3の(a)に示すように、例えば、円形である。しかし、これに限らず、三角形、および後述する図4に示す四角形を含む多角形でもよい。

【0113】
また、構造体32,33の形状は、円柱状ではあっても、断面が真円でなくてもよく、楕円であってもかまわない。また、断面が多角形の柱状の場合には、多角形の頂点が円弧状、すなわち丸みを帯びていたり、辺が曲線的、すなわち側面が曲面になっていてもよい。さらに、構造体32,33の形状は、柱状でなくてもよく、例えば、第1の透明導電膜11の表面に対して垂直方向に中心軸を有する角錐台または円錐台の形状などであってもよい。

【0114】
以下では、第1の透明導電膜11の表面と平行な面における構造体32,33の断面を、単に「断面」と呼ぶ。これは実施形態2以降も同様とする。

【0115】
フォトニック結晶構造30aは、第1の径rを持つ構造体33が、第1の格子定数aで配列された第1の副構造と、第2の径Rを持つ構造体32が、第2の格子定数Aで、上記第1の副構造の格子点の一部を置き換えるように配列された第2の副構造とを含んでいる。

【0116】
第2の径Rは、第1の径rより大きく(R>r)、第2の格子定数Aは、第1の格子定数aの例えば2倍(A=2a)に設定されている。この格子定数の条件では、図3の(a)(c)に示すように、構造体32,33が、交互に並ぶ行列と、図3の(a)(b)に示すように、相対的に小さい格子定数の構造体33のみが並ぶ行列とが生じる。

【0117】
なお、第1の径rを、第2の径Rより大きくしてもよい(R<r)。また、図3の(a)には、構造体32,33を正方格子状に配置した例を示したが、これに限らず、構造体32,33を三角格子状に配置してもよい。いずれにしても、第2の格子定数Aは、第1の格子定数aの整数倍であれば、上記第1の副構造の構造体33の一部を置き換えるように、構造体32を配置することができ、光吸収率向上の効果を得ることができる。

【0118】
(フォトニック結晶構造の具体例2)
図3に示す構造体32,33は、円柱の形状を有しているが、円柱を四角柱に置き換えてもよい。図4は、四角柱の構造体32b,33bが、第1および第2の副構造を構成したフォトニック結晶構造30bを示す平面図である。

【0119】
フォトニック結晶構造30bは、第1の径wを持つ構造体33bが、第1の格子定数aで配列された第1の副構造と、第2の径W(W>w)を持つ構造体32bが、第2の格子定数Aで、上記第1の副構造の格子点の一部を置き換えるように配列された第2の副構造とを含んでいる。

【0120】
なお、第1の径wは、構造体33bの断面のサイズを表している。すなわち、第1の径wは、断面が正方形の構造体33bにおいて、当該正方形の1辺の長さに等しいともいえるし、あるいは、当該正方形に内接する円の直径に等しいともいえる。第2の径Wについても同様である。

【0121】
図3のフォトニック結晶構造30aに関するその他の説明は、フォトニック結晶構造30bにも同様にあてはまるので、省略する。

【0122】
(共振の大きさQ値、光吸収の大きさS値)
次に、太陽電池1aにおいて、上記フォトニック結晶構造30aによる共振強度の大きさQ、および光の吸収率Sがどのように決定されるかについて述べる。

【0123】
以下では、図3のフォトニック結晶構造30aの場合について述べるが、rをwに、RをWにそれぞれ読み替えれば、図4のフォトニック結晶構造30bの場合についても同様である。

【0124】
Q値は、ある波長における光のフォトニック結晶構造による共振の強度(大きさ)であり、図5に示す各種パラメータによって決定される。図5は、図1の太陽電池1において、Q値およびS値を決定するパラメータを示す説明図である。

【0125】
各種パラメータは、以下のとおりである。
(1)第1、第2の副構造の格子定数aとA(A=2a)
(2)第1、第2の副構造の構造体断面の径rとR
(3)第1、第2の副構造の構造体の中心軸方向長さ(柱の高さ)d
(4)透明基板10の光入射側表面から金属電極層14の光電変換層20側表面までの距離L
(5)光電変換層20を構成するすべての半導体層のある波長λの光に対する屈折率n(λ)(iは自然数)。

【0126】
すなわち、共振の大きさQは、下記のように、上記(1)~(5)をパラメータとする非線形関数である。なお、下記のQ(λ)は、光電変換層20を構成する半導体層が2層の場合を示している。
Q(λ)=f(a,r,R,d,L,n(λ),n(λ))
また、ある波長λの光に対するフォトニック結晶構造による吸収率Sは、以下のパラメータによって決定される。
(A)上記パラメータ(1)~(5)により決定されたQ値
(B)フォトニック結晶構造30aから金属電極層14の光電変換層20側表面までの距離h
(C)ある波長λの光に対する光電変換層20の吸収係数として、結晶シリコンの吸収係数α(λ)
(D)光電変換層20の厚さt。

【0127】
すなわち、光の吸収率Sは、下記のように、上記(A)~(D)をパラメータとする非線形関数である。
S(λ)=g(Q(λ),α(λ),h,t)
従って、上記(1)~(5)および上記(A)~(D)を変えることによって、ある波長λの光に対するQ値およびS値を調整することができる。

【0128】
(フォトニック結晶構造の周期決定方法)
次に、上記フォトニック結晶構造30aの周期(格子定数)はどのように決定されるのか、その決定方法について説明する。

【0129】
前述のように、光電変換層20における光吸収率の大きさは、前述のフォトニック結晶構造30aによる光の共振の大きさ(Q値)に依存している。上記光の共振は、フォトニック結晶構造による光閉じ込め効果をもたらす。すなわち、フォトニック結晶構造30aによる光の共振強度が大きくなるほど、光電変換層20内に光が閉じ込められ、より多くの光が光電変換層20で吸収されることにつながる。

【0130】
フォトニック結晶構造30aによって、ある波長における光電変換層20の光吸収率をできるだけ高くしようと思えば、その波長におけるQ値ができるだけ大きくなるように、フォトニック結晶構造30に含まれる第1および第2の副構造の格子定数を設定すればよい。

【0131】
本実施形態の光電変換層20は、アモルファスシリコン(a-Si)半導体層21と、マイクロクリスタルシリコン(μc-Si)半導体層22とを積層したタンデム構造となっている。

【0132】
図6は、アモルファスシリコン半導体およびマイクロクリスタルシリコン半導体の光の波長に対する感度特性を示すグラフである。

【0133】
図6に示す半導体層21,22の感度特性に基づき、半導体層21,22のトータルの感度特性が落ち始める750nm付近の波長から長波長側での光吸収率を上昇させるように、フォトニック結晶構造30aの格子定数を設定する。

【0134】
どの波長域における光吸収率を増加させるかについては、フォトニック結晶構造30aの格子定数を変えることによって、自由に決定することができる。

【0135】
図7は、フォトニック結晶構造が形成された部位に対して、有限要素法を用いた電磁界解析を行い、その部位における電磁界強度を計算した結果を示す。同図のグラフの両軸について、格子定数を波長で割って無単位とした規格化周波数(=格子定数/波長)を横軸とし、電磁界の相対強度を縦軸とした。

【0136】
なお、第1の副構造の格子定数をa、構造体33の径をr=0.3aとし、第2の副構造の格子定数をA=2a、構造体32の径をR=0.4aとして計算した。

【0137】
図7では、2つの周期構造を持つフォトニック結晶構造30aの電磁界強度を実線で示す一方、比較のために、格子定数aおよびr=0.3aの構造体33のみを配置した単一の周期構造を持つフォトニック結晶構造の電磁界強度を破線で示した。

【0138】
共振効果の検証(時間による減衰特性のシミュレーション)を行い、材料の特性(吸収係数)から得られるQ値を計算すると、規格化周波数0.356において、最適条件に近いQ値が得られることがわかる。そこで、この規格化周波数0.356が、図6の感度特性に基づいて選択した波長750nmと対応するように、格子定数aおよびAを決める。

【0139】
格子定数=波長×規格化周波数であるから、第1の副構造の格子定数aは、a=750nm×0.356=267≒270nmとすればよい。このとき、第2の副構造の格子定数Aは約540nmである。

【0140】
さらに、図7では、単一の周期構造を持つフォトニック結晶構造の場合、規格化周波数0.26以上で、複数の共振ピークが出現している。そうすると、単一の周期構造を持つフォトニック結晶構造の場合、長波長側の共振効果は、270/0.26=1038nmまでとなる。

【0141】
これに対し、フォトニック結晶構造30aの場合、規格化周波数0.15以上で、複数の共振ピークが出現している。すなわち、フォトニック結晶構造30aの場合、長波長側の共振効果は、270/0.15=1800nmまでとなる。しかも、フォトニック結晶構造30aの場合、より多くの共振ピークが出現している。したがって、複数の周期構造を持つフォトニック結晶構造の方が、広い波長範囲で、共振効果が向上していることがわかる。

【0142】
以上のように、フォトニック結晶構造30の格子定数a,A(=2a)を決めることで、750nmから1800nmまでの広い波長域でフォトニック結晶構造30aによる光閉じ込め効果が生じ、上記波長域では光吸収の増大効果が得られることが期待できる。

【0143】
(従来の太陽電池との対比)
図8の(a)は、太陽電池1に進入した光の様子を示す簡略図であり、図8の(b)は、従来技術の太陽電池100に進入した光の様子を対比的に示す簡略図である。太陽電池100は、前記特許文献1に開示されたようなテクスチャー構造を有している。図中の矢印の向きと太さとにより、光の進行方向と光量とを示している。

【0144】
従来の太陽電池100では、透明導電膜111と半導体層121との界面において、透明導電膜111にテクスチャー構造を形成している。透明導電膜111と半導体層121との間の屈折率差に起因して、上記界面で光の反射が生じる。そこで、このテクスチャー構造は、上記界面で生じる光の反射を抑え、散乱によって半導体層121,122内における光路長を増加させ、その結果として、光吸収を増大させる機能を持つ。

【0145】
しかしながら、光を半導体層121,122内に閉じ込める機能はないため、光電変換効率を高めようとすると、半導体層121,122を厚膜化する必要がある。このため、例えば、半導体層121の厚さは200nm、半導体層122の厚さは1800nmに設定される。

【0146】
一方、本実施形態の太陽電池1では、第1の透明導電膜11と半導体層21との界面において、第1の透明導電膜11にフォトニック結晶構造30を設けている。フォトニック結晶構造30の凹凸は、半導体層21と半導体層22との界面にも転写されている。なお、図8の(a)は、フォトニック結晶構造30の凹凸が半導体層22と第2の透明導電膜12との界面にも転写された、より好ましい形態を示している。

【0147】
後述するフォトニック結晶構造30の反射率低減効果を得て、光電変換層20内へ進入した光は、フォトニック結晶構造30の光共振効果によって、光電変換層20内に閉じ込められる(光閉じ込め効果)。従って、光電変換層20が吸収しうる波長の光の吸収率を、100%まで向上させることができる。この結果、光吸収を向上させて、光電変換効率を従来と同等以上としながら、光電変換層20の膜厚を従来よりも薄膜化することができる。

【0148】
これにより、例えば、半導体層21の厚さを200nm、半導体層22の厚さを400nmに設定することができる。

【0149】
(フォトニック結晶構造における反射率低減効果)
太陽電池1または1aは、フォトニック結晶構造30,30aまたは30bが形成される位置にも特徴がある。

【0150】
太陽電池1または1aでは、フォトニック結晶構造30,30aまたは30bが、光電変換層20を構成する半導体層21,22のうち、基板により近い半導体層21と、第1の透明導電膜11との間に形成されている。これにより、界面反射を抑え、光電変換層20内へ入射光を多く取り込むことができる。

【0151】
この界面反射を抑える効果(反射率低減効果)について、図9の(a)(b)に従って説明する。図9は、太陽電池内に進入した光の界面反射の様子について、フォトニック結晶構造の形成位置の違いによる界面反射の違いを対比的に示す説明図である。

【0152】
図9の(b)に示す参考の太陽電池100aでは、フォトニック結晶構造が、半導体層Aと半導体層Bの間の透明導電膜上に形成されている。このため、透明基板側から透明導電膜(例えば、屈折率2)と半導体層A(例えば、屈折率4)との界面へ入射した光は、透明導電膜よりも半導体層Aの屈折率が大きいことによって透明基板側へと反射される光の量が増える。

【0153】
一方、図9の(a)の太陽電池1では、太陽電池100aと同じ材料を用いた場合、透明基板10側から入射した光は、第1の透明導電膜11(例えば、屈折率2)とフォトニック結晶構造30(例えば、屈折率2)との界面へ入射する。このとき、フォトニック結晶構造30の屈折率が光電変換層20の屈折率(例えば、屈折率4)よりも小さいことによって、フォトニック結晶構造30の実効屈折率(等価屈折率)は、光電変換層の屈折率4よりも小さく、第1の透明導電膜の屈折率2よりも大きなものとなる。

【0154】
この場合、屈折率2の第1の透明導電膜11側から進行してフォトニック結晶構造30との境界へ至った光は、実効屈折率に従って界面反射もしくは屈折する。この結果、フォトニック結晶構造30がない場合(屈折率2の第1の透明導電膜と屈折率4の光電変換層とが界面を持つ場合)と比較して、界面反射が低減されることになる。

【0155】
なぜならば、一般的に、第1の媒質から第2の媒質へ光が入射する場合、第1の媒質の屈折率と第2の媒質の屈折率との差が小さいほど、反射率は小さくなるためである。

【0156】
このように、太陽電池1または1aは、フォトニック結晶構造30,30aまたは30bによる反射率低減効果を効果的に発現することができる。

【0157】
以上のように、フォトニック結晶構造30,30aまたは30bによる光閉じ込め効果(図2の(b))と、上記の第1の透明導電膜11とフォトニック結晶構造30,30aまたは30bとの界面における反射率低減効果(図9の(a))とによって、本実施形態の太陽電池1または1aは、太陽光エネルギーの全波長域における吸収量の総和(積分)を高めることができる。言い換えれば、入射された光のエネルギーに対する起電力の割合(IPCE:光電変換効率;Incident Photon-to-Current Efficiency)を増加することができる。

【0158】
なぜならば、従来技術では光電変換層によって吸収されず、起電力に変換されていなかった波長域の太陽光を、フォトニック結晶構造による界面反射低減効果および光閉じ込め効果によって、起電力へと変換することが可能となるからである。

【0159】
(太陽電池の変形例)
太陽電池1または1aの変形例として、光電変換層が単層の半導体層で構成された太陽電池1bについて、以下に説明する。図10は、太陽電池1bの構成を示す模式的な断面図である。なお、説明の便宜上、前述した構成要素と同じ構成要素には、同じ番号を付与し、その説明を省略する。

【0160】
太陽電池1bは、光の入射側から、前記ガラス基板10、前記第1の透明導電膜11、フォトニック結晶構造30c、光電変換層20b、第2の透明導電膜12、金属電極層14の順番に積層されている。

【0161】
フォトニック結晶構造30cには、前述のフォトニック結晶構造30,30aまたは30bのいずれかと同じ構造を適用することができる。

【0162】
光電変換層20bを構成する半導体としては、例えば、波長の長い光に対する吸収率が高いマイクロクリスタルシリコンを使用することができる。

【0163】
図11に、マイクロクリスタルシリコンの光の波長に対する感度特性を示す。光電変換層20bが単層である場合には、光の入射側に他の半導体層が存在せず、他の半導体層による光吸収がないので、マイクロクリスタルシリコンの図11に示す感度特性は、図6に示した感度特性とは異なっている。

【0164】
半導体層の材料としては、Si、Ge、GaNINGaP、(In)GeAs、GaAsなどを選択することもできる。

【0165】
上記フォトニック結晶構造30cを設けた構成により、図11に示すように、750nm以上の波長の長い光に対する吸収率を高め、太陽電池の起電力を増大させることができる。

【0166】
(太陽電池1の製造工程)
太陽電池1の製造工程を、図12の(a)~(c)に基づいて説明する。なお、以下で示される膜厚に関する数値は一例であって、適宜変更可能である。

【0167】
まず、ガラス製の透明基板10上にSnOを蒸着して、第1の透明導電層11を形成する。

【0168】
次にフォトニック結晶構造30a(または30,30b)を形成する。フォトニック結晶構造30aの形成には、公知の半導体プロセス技術であるリソグラフィを用いることができる。

【0169】
まず、フォトニック結晶構造30aの材料として、SiOを第1の透明導電層11上に350nmの厚みで蒸着し、SiO層を形成する。なお、SiOの形成においては、上記蒸着に代えて、SOG(Spin-on Glass;塗布ガラス)液をスピンコート法によって塗布してもよい。

【0170】
SiOは、(可視域の)光をほとんど吸収しない。さらに、SiOの屈折率(1.5程度)は、光電変換層20の屈折率(4.0程度)よりも小さい。

【0171】
次に、形成したSiO層の上に、ポジ型のレジスト(感光剤)を900nmの厚みで塗布し、つづいて電子ビームを用いて露光することで、フォトニック結晶構造30aの断面のパターン(2種類の円形が、各格子定数で周期的に配列している)を描画する。ポジ型のレジストとは、露光して現像したときに、露光された部分が除去されるタイプのレジスト(感光材料)である。

【0172】
続いて、上記パターンの全体にわたって、アルミニウム(Al)を300nmの厚みで蒸着し、アルミニウム膜を形成する。このアルミニウム膜は、以下で述べるように、エッチングのマスクとして使用するためのものである。

【0173】
その後、現像をおこないレジストが除去されると、フォトニック結晶構造30aの構造体32,33の形成部位にのみ、アルミニウム膜およびレジストが残る。

【0174】
つづいて、四フッ化炭素(CF)をエッチングガスとする誘導結合型反応性イオンエッチング(ICP-RIE:Inductive Coupled Plasma-Reactive Ion Etching)を用い、構造体の形成部位に残ったアルミニウム膜によってマスクされていない部位のSiO層を精度よく除去する。すると、アルミニウム膜によってマスクされた部位のSiO層だけが残る。

【0175】
なお、上記エッチングの際には、エッチング時間を調整することにより、マスクされていない部位に積層されたSiO層が消失し、その下の第1の透明導電膜11が露出するまで除去する。その理由について以下に説明する。

【0176】
フォトニック結晶構造30aの材料として使用されるSiOは電気を通さない絶縁体であるため、光電変換層20で発生した電流は、フォトニック結晶構造30aを通過することはできない。そこで、光電変換層20から第1の透明導電膜11へ電流が送られるためには、光電変換層20と第1の透明導電膜11とが直接的に接触していなければならない。従って、フォトニック結晶構造30aの構造体32,33以外の部分は、第1の透明導電膜11が露出するまで、エッチングしなければならない。

【0177】
続いて、塩酸(HCl)を用いたウェットエッチングにより、残るアルミニウム膜を除去する。

【0178】
以上の工程により、構造体32,33が第1の透明導電膜11上に二次元的に配列された、図12の(a)に示す加工済み基板99(フォトニック結晶基板)が作製される。

【0179】
この中間加工品である加工済み基板99を、製品として、市場に流通させてもよい。加工済み基板99用いて、以下の工程を別の製造工場で実行することによって、起電力を増大させた太陽電池を作製することができる。なお、加工済み基板99は、本発明に係るフォトニック結晶基板に相当する。

【0180】
次に、図12の(b)に示すように、上記加工済み基板99の表面全体にアモルファスシリコン(a-Si)を蒸着し、形成された層にp型不純物をドープすることによってp型アモルファスシリコン半導体層を形成し、その上にアモルファスシリコンを蒸着してi型アモルファスシリコン半導体層を形成し、さらにその上にアモルファスシリコンを蒸着し、n型不純物をドープすることによりn型アモルファスシリコン半導体層を形成する。以上により、p型半導体層、i型半導体層、n型半導体層がこの順で積層した、pin縦型の半導体層21が形成される。

【0181】
このとき、半導体層21は、前の工程で形成されたフォトニック結晶構造30aの上に形成されるので、フォトニック結晶構造30aの持つ凹凸が半導体層21に転写される。

【0182】
同様の手順により、マイクロクリスタルシリコン半導体層22を、上記アモルファスシリコン半導体層21上に形成する。これにより、半導体層21,22で構成された光電変換層20が完成する。

【0183】
次に、前述の第1の透明導電膜11と同様に、SnOを蒸着して第2の透明導電膜12を形成する。

【0184】
このとき、SnOを蒸着する厚さによっては、第2の透明導電膜12に、フォトニック結晶構造30aのもつ凹凸が、ある程度転写され、第2の透明導電膜12の表面は凹凸になるが、集積回路等の作製で用いられているCMP(Chemical Mechanical Polishing;化学的機械研磨)またはエッチングによって平坦化することもできる。

【0185】
第2の透明導電膜12を平坦とすることによって、次の工程で積層する金属電極層14も平坦になるので、金属電極層14にフォトニック結晶構造30aの凹凸が転写されている場合と比べて、電気抵抗を小さくすることができ、電力の取り出しに有利になると考えられる。

【0186】
最後に、第2の透明導電膜12の上にアルミニウムを蒸着することで、金属電極層14が形成される。

【0187】
以上の工程によって、図12の(c)に示す太陽電池1が完成する。

【0188】
ここまで、単層、あるいは2層の半導体層で構成された光電変換層を含む太陽電池について述べてきたが、光電変換層が2層よりも多い半導体層で形成されることも本発明の範囲である。いずれの場合でも、光電変換層は、含まれる半導体層が順に積層されることによって形成される。光電変換層に含まれる半導体層は、光吸収ピーク波長が異なる半導体材料を選択することが望ましい。

【0189】
(フォトニック結晶基板の変形例)
フォトニック結晶基板としての前記加工済み基板99は、透明基板10上に成膜した第1の透明導電膜11の表面上に、透明誘電体の凹凸構造を設けた構成を備えていた。

【0190】
これに対し、図23の(a)に示すように、透明基板10の表面上に、透明誘電体の凹凸構造を設け、この凹凸構造を第1の透明導電膜411によって被覆した加工済み基板499を、フォトニック結晶基板としてもよい。これにより、透明基板10の表面と第1の透明導電膜411との界面に、フォトニック結晶構造を形成することができる。透明基板10の表面と第1の透明導電膜411との界面は、光入射側に最も近い界面なので、界面反射の影響を最小にした光をフォトニック結晶構造に入射させることができる。

【0191】
透明基板10上の凹凸構造の基本要素は、凸状の構造体でもよいし、孔状の構造体でもよいことは、既に説明したとおりである。

【0192】
加工済み基板499では、透明基板10上の凹凸構造が、第1の透明導電膜411の表面の凹凸構造となるように転写されている。従って、第1の透明導電膜411の表面の凹凸構造を、光電変換層で被覆することによって、第1の透明導電膜411と光電変換層との界面にも、フォトニック結晶構造を形成することができる。

【0193】
加工済み基板499(透明基板10上に凸状の構造体を形成する場合)の製造方法としては、まず、ガラス製の透明基板10上に、SiOまたはSiNなどの無機透明誘電体、あるいはポリカーボネートまたはアクリルなどの有機透明誘電体を蒸着し、透明誘電体層を形成する。続いて、フォトレジストを塗布し、電子ビームで構造パターンを転写し、エッチングを行えば、透明基板10の表面部分に、透明誘電体の構造体が周期的に配列した凹凸構造が形成される。

【0194】
この後、図23の(b)(c)に示すように、上述した工程と同様に、半導体層21,22、第2の透明導電膜12、金属電極層14(金属反射層)を順次積層することにより、太陽電池400が完成する。

【0195】
太陽電池400の光電変換層を構成する半導体層は、他の実施形態と同様に、単層でもよいし3層以上の複層であってもかまわない。

【0196】
〔実施形態2〕
本発明の太陽電池に関する第2の実施形態について、図13から図15に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態1にて説明した図面と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。このことは、実施形態3以降についても同様とする。

【0197】
(太陽電池の構成)
図13は、実施形態2の太陽電池200の全体構成を概略的に示す断面図である。図13に示すように、太陽電池200は、前記第1の透明導電膜11の上に、無機または有機の透明誘電体を材料として形成された層に、周期的に配列する柱状の孔231が形成されたフォトニック結晶構造230を含むものである。この孔231の周期的な配列によって、第1の透明導電膜11上に凹凸による周期構造が形成されている。以下、孔231のことを孔状の構造体231と呼ぶ。

【0198】
なお、図13では、便宜上、孔231内に空間が在るかのように描画しているが、実際には、第1の透明導電膜11上の上記凹凸に沿って、前記第1の半導体層21が形成されるので、孔状の構造体231は、第1の半導体層21によって充填されている。これにより、屈折率が異なる透明誘電体および第1の半導体層21の周期構造が形成されることによって、フォトニック結晶構造230が形成されている。

【0199】
孔状の構造体231が、第1の半導体層21によって充填されていることは、以下の2点において重要である。
(1)フォトニック結晶としては、孔231内に空間が在る場合と比べて、屈折率の差が大きくなることから、光吸収向上の効果がより大きくなる。
(2)太陽電池としては、その上にある第1の透明導電膜11と光電変換層20とのコンタクトをとる面積が大きくなるため、電子の移動を妨げず、高い変換効率を得やすくなる。

【0200】
孔状の構造体231は、単一の周期構造を持つフォトニック結晶構造230を形成している。しかし、図3の(a)に示すフォトニック結晶構造30aと同様に、孔の径および格子定数を異ならせた複数の周期構造を持つフォトニック結晶構造230aを形成してもよい。

【0201】
図14は、孔状の構造体232,233によって構成されたフォトニック結晶構造230と、フォトニック結晶構造230を備えた加工済み基板299を示す図である。図14の(a)は孔状の構造体232,233の二次元配置を示し、(b)は、(a)中のA-B線における加工済み基板299の矢視断面を示し、(c)は、(a)中のC-D線における加工済み基板299の矢視断面を示している。

【0202】
図14の(a)に示すように、フォトニック結晶構造230aは、第1の径rを持つ孔状の構造体233が、第1の格子定数aで配列された第1の副構造と、第2の径Rを持つ孔状の構造体232が、第2の格子定数Aで、上記第1の副構造の格子点の一部を置き換えるように配列された第2の副構造とを含んでいる。

【0203】
各径R,rおよび各格子定数A,aの設定の仕方、並びに、構造体232,233の形状については、実施形態1で説明したとおりである。この格子定数の条件では、図14の(a)(c)に示すように、孔状の構造体232,233が、交互に並ぶ行列と、図14の(a)(b)に示すように、相対的に小さい格子定数の孔状の構造体233のみが並ぶ行列とが生じる。

【0204】
なお、図14の(a)に示すフォトニック結晶構造230aでは、孔の断面形状が円形になっているが、これに限らず、三角形および図15に示す四角形を含む多角形でもよいし、楕円形でもよい。

【0205】
図15に示す孔状の構造体232,233は、径W,wを正方形の1辺の長さによって示している。径W,wについては、図4に示すフォトニック結晶構造30bについて説明したとおりである。

【0206】
また、孔状の構造体232,233の形状は、円柱状ではあっても、断面が真円でなくてもよく、楕円であってもかまわない。また、断面が多角形の柱状の場合には、多角形の頂点が円弧状、すなわち丸みを帯びていたり、辺が曲線的、すなわち側面が曲面になっていてもよい。さらに、孔状の構造体232,233の形状は、柱状でなくてもよく、例えば、第1の透明導電膜11の表面に対して垂直方向に中心軸を有する角錐台または円錐台の形状などであってもよい。

【0207】
(太陽電池200の製造工程)
フォトニック結晶構造230または230aを形成するためには、実施形態1において、フォトニック結晶構造30,30aまたは30bを製造するために使用したポジ型のフォトレジストを、ネガ型のフォトレジストに変えればよい。

【0208】
ネガ型のフォトレジストは、ポジ型のフォトレジストとは反対に、露光されなかった部分が、現像したときに除去されるタイプのレジストである。

【0209】
これにより、透明基板210上に積層された第1の透明導電膜211上にSiO層を形成し、実施形態1と同様のパターンを描画し、現像をして、エッチングをすると、SiO層に円柱状の孔が形成される。この結果、孔状の構造体232,233が周期的に配列されたフォトニック結晶構造230aを持つ加工済み基板299(図14の(b)(c))が完成する。

【0210】
(太陽電池200の変形例)
図16は、実施形態2の太陽電池において、単層の半導体層で構成された光電変換層を備えた変形例を示す模式的な断面図である。

【0211】
太陽電池200の変形例として、図16に示す太陽電池200aのように、光電変換層20cを単層の半導体層で構成してもよい。光電変換層20cの具体的な構成には、図10を参照して説明した単層の光電変換層20bと同じ構成を適用することができる。

【0212】
〔実施形態3〕
本発明の太陽電池に関する第3の実施形態について、図17~22に基づいて説明すれば、以下のとおりである。

【0213】
(太陽電池の構成)
図17に示すように、本実施形態の太陽電池300は、フォトニック結晶構造330を構成する構造体331を、透明誘電体ではなく、導電性を有する透明材料によって形成したことを特徴としている。図17に、本実施形態の一例として、透明導電層に、円柱状の凸部を周期的かつ二次元的に設けたフォトニック結晶構造330を含む太陽電池300の断面図を示す。

【0214】
なお、太陽電池300を構成するフォトニック結晶構造330以外の要素は、実施形態1で述べた太陽電池1と同じである。ただし、太陽電池300は、構造体331を設けた透明導電層を備えているので、第1の透明導電膜11の厚みを太陽電池1より薄くできる、あるいは第1の透明導電膜11を省略することもできる。第1の透明導電膜11を省略した場合、入射光量の損失を小さくできるので、太陽電池300の光電変換率を向上させるのに有利である。

【0215】
上記透明導電層の材料として、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンなどの導電性樹脂を使用することができる。

【0216】
太陽電池300と太陽電池1(図1)との構造上の差異は、太陽電池1では、フォトニック結晶構造30の隣り合う構造体31同士は分離しているが、太陽電池300では、フォトニック結晶構造330の隣り合う構造体331の間(凹部)が、透明導電層によって連続していることである。

【0217】
これは、光電変換層20で発生した電流が、光電変換層20から第1の透明導電膜11へと移動するために、太陽電池1のように、光電変換層20と第1の透明導電膜11とが、直接的に接触している必要はないからである。つまり、太陽電池300では、フォトニック結晶構造330が導電性を有する材料で形成されているため、光電変換層20で発生した電流は、光電変換層20からフォトニック結晶構造330を通って第1の透明導電膜11へと移動できるからである。

【0218】
よって、フォトニック結晶構造330の形成工程におけるエッチング工程を行う際には、各構造体331の間に、エッチングの残滓(フォトニック結晶構造330の材料でできた層)が残ってもよい。従って、エッチング時間の調整を簡便にしたり、短縮したりすることができる。

【0219】
(周期構造)
フォトニック結晶構造330は、単一の周期構造を備えていてもよいし、複数の周期構造を備えていてもよい。

【0220】
図18の(a)に、構造体332および構造体333によって2種類の周期構造を備えたフォトニック結晶構造330aの平面図を示す。また、図19の(a)は、フォトニック結晶構造330aを備えた加工済み基板399(フォトニック結晶基板)の断面を示し、かつ、図18の(a)におけるA-B線矢視断面を示している。図19の(b)は、図18の(a)におけるC-D線矢視断面を示している。

【0221】
構造体332および構造体333の各径R,r、格子定数A,aおよび形状は、図3の(a)を参照して説明したフォトニック結晶構造30aの構造体32および構造体33と同じである。従って、その説明を省略する。

【0222】
また、図18の(b)に示すフォトニック結晶構造330bのように、構造体332および構造体333を、第1の径wを持つ四角柱の構造体333b、および第2の径Wを持つ四角柱の構造体332bに置き換えてもよい。この点は、図4の(b)を参照しながら、フォトニック結晶構造30bについて説明したとおりである。

【0223】
(Q値およびS値を決めるパラメータ)
太陽電池300のQ値およびS値は、実施形態1で説明したように、下記の非線形関数によって表される。

【0224】
Q(λ)=f(a,r,R,d,L,n(λ),n(λ))
S(λ)=g(Q(λ),α(λ),h,t)
Q値およびS値の算出に必要な各パラメータを図20に示すが、各パラメータの定義についても、実施形態1で説明したとおりである。なお、構造体332,333の各中心軸方向長さ(柱の高さ)dは、図20に示すように、隣合う構造体の間に形成される凹部内に充填された半導体層21の凹部内における厚みに等しい。

【0225】
(太陽電池300の製造工程)
図21の(a)~(c)に従って、本実施形態の太陽電池300の製造工程を説明する。

【0226】
はじめに、透明基板10上に第1の透明導電膜11を蒸着する。続いて、例えばポリアセチレン層を積層し、実施形態1で述べた工程と同様にリソグラフィによって、複数の円柱状の構造体331,332または333を含むフォトニック結晶構造330または330aを形成する。これにより、柱状の構造体331,332または333が、透明導電層に周期的に配列されたフォトニック結晶構造330または330aを持つ加工済み基板399が得られる(図21の(a))。

【0227】
以下、図21の(b)(c)に示す工程を、図12の(b)(c)を参照して説明した工程と同様に行うことによって、導電性を有するフォトニック結晶構造330、330aまたは330bを含む太陽電池300が完成する(図15(c))。

【0228】
(太陽電池300の変形例)
本実施形態と実施形態2とを組み合わせることにより、図19の(c)(d)に示すように、透明導電層に設けた複数の孔(凹部)状の構造体332c,333cによってフォトニック結晶構造を構成することもできる。すなわち、導電性を有するフォトニック結晶構造330、330aまたは330bは、本実施形態のように凸部で形成することもできるし、また実施形態2のように凹部で形成することもできる。

【0229】
孔状の構造体332c,333cの各径W,w、格子定数A,aおよび形状は、図4を参照して説明したフォトニック結晶構造30bの構造体32bおよび構造体33bと同じである。

【0230】
また、本実施形態においても、光電変換層を構成する半導体層は2層以外であっても構わない。図22に、1層の半導体層で構成された光電変換層20bを備えた、太陽電池300aの例を示す。

【0231】
(実施形態4)
本発明の太陽電池に関する実施形態4について、図24~図27に基づいて説明すれば、以下のとおりである。

【0232】
図24の(a)に、本実施形態の太陽電池501の断面図を示す。太陽電池501は、透明基板10、第1の透明導電膜11、フォトニック結晶構造530、半導体層21および半導体層22で構成された光電変換層20、第2の透明導電膜12、金属電極層14をこの順番で積層した構成である。実施形態1の太陽電池1とは、フォトニック結晶構造の点で異なっているが、それ以外の構成については、太陽電池1と共通している。

【0233】
太陽電池501の光電変換層20を構成する半導体層は、他の実施形態と同様に、単層でもよいし3層以上の複層であってもかまわない。

【0234】
本実施形態のフォトニック結晶構造530は、図24の(b)に加工済み基板599(フォトニック結晶基板)を示すように、第1の透明導電膜11上に周期的に配列した凸状の構造体531を基本要素として備えている。

【0235】
さらに、フォトニック結晶構造530は、図24の(c)に示すように、互いに非同一の形状を持つ4つの構造体531を正方格子状(格子定数a)に配置した単位格子540を備えている。この単位格子540が、例えば、一定のピッチ2aで、二次元的かつ周期的に配置されている。

【0236】
図24の(c)に示す例では、構造体531の断面の形状が円形、つまり構造体531の形状が円柱なので、単位格子540を構成する4つの円柱の直径r,r,r,rを互いに非同一に設定している。例えば、4つの直径の大小関係を、r>r>r>rと設定している。

【0237】
したがって、図24の(c)に示す例は、4つの構造体531の断面の形状を、大きさの互いに異なる相似形とした場合の一例である。大きさの互いに異なる相似形という条件が満たされる限り、構造体531の断面形状は、真円に限定されず、楕円形、多角形など、光の共振を強めるのに有利な形状を選択することができる。

【0238】
なお、三角形、四角形、五角形などの多角形には、直線状の辺で囲まれた多角形ばかりではなく、曲率を持った円弧状の辺で囲まれた多角形を含めることができる。円弧状の辺は、多角形の外側に凸状になっていてもよいし、多角形の内側に凹状になっていてもよい。

【0239】
このように、単位格子540を構成する4つの構造体531の形状を互いに非同一にした場合、以下の不一致条件が満たされる。不一致条件とは、上記断面を含む面内方向に沿って、4つの断面の形状のいずれかを、他の断面の形状の位置に平行移動させても、形状的に相互に不一致となるという条件のことである。

【0240】
これにより、フォトニック結晶構造530は4種類の周期構造を持つことになるので、より広い波長域で、より強い共振が生じる結果、光電変換率が増大した太陽電池を得ることができる。

【0241】
なお、1つの単位格子540内で、4つの円柱をどのように配置するかは、限定されず任意でよい。ただし、フォトニック結晶構造の周期性を保つ必要があるため、フォトニック結晶構造530に含まれた全ての単位格子540は、4つの円柱を同じ配置としている。これにより、隣り合う単位格子540のピッチが2aとすれば、直径rを持つ構造体531のピッチ(格子定数)も2aとなり、他の直径r,r,rを持つ構造体531のピッチ(格子定数)も、それぞれ2aとなる。

【0242】
また、実施形態3と同様に、フォトニック結晶構造530を導電性を有する透明材料で形成してもよい。

【0243】
さらに、図23を参照して説明したように、4つの構造体531からなる単位格子540を透明基板10上に周期的に配置し、その上を第1の透明導電膜で被覆して、第1の透明導電膜の表面に、透明基板10上の凹凸構造を転写するようにしてもよい。

【0244】
(実施形態4の変形例1)
図25は、上記フォトニック結晶構造530の変形例としてのフォトニック結晶構造630を示す平面図である。

【0245】
フォトニック結晶構造630は、図25に示すように、三角形の断面形状を持つ4つの構造体631を正方格子状(格子定数a)に配置した単位格子640を備えている。この単位格子640が、例えば、一定のピッチ2aで、二次元的かつ周期的に配置されている。

【0246】
三角形の形状が、正三角形またはそれに近い形状の場合には、Q値を求めるときに用いるパラメータである構造体断面の径Rまたはrとして、図25に示す三角形の高さhtを用いることができる。

【0247】
図25に示す例では、単位格子640内に図示された4つの三角形は、合同である。ただし、前述した不一致条件を満足するために、第1の透明導電膜11の表面に平行な面内における上記4つの三角形の向きが4通りに異なっている。なお、三角形の向きを、4つの三角形の同じ頂点から、対向辺に下ろした垂線の方位と言い換えることもできる。

【0248】
これにより、4つの三角形のいずれかを、他の三角形の位置に平行移動させても、形状的に相互に不一致となる。

【0249】
また、三角形の3つの角度の少なくとも1つ、または3つの辺の少なくとも1つを、4つの三角形同士で互いに相違させた場合、または、大きさが4通りの相似形とした場合にも、上記不一致条件は満たされる。

【0250】
なお、上記三角形の直線状の辺を、曲線状の辺に置き換えた形状、または、上記三角形の頂点に円弧状の丸みをつけた形状をも、三角形という形状の概念に含めてもよい。

【0251】
(実施形態4の変形例2)
フォトニック結晶構造530およびフォトニック結晶構造630は、透明基板10または第1の透明導電膜11の表面状に凸状の構造体531または構造体631を設けていた。

【0252】
これに対し、図26および図27に示すように、透明基板10または第1の透明導電膜11の表面状に、透明誘電体層または透明導電層を成膜し、その透明誘電体層または透明導電層に、孔状の構造体531aまたは構造体631aを周期的に形成してもよい。

【0253】
なお、孔状の構造体531aまたは構造体631aの形状に関するパラメータおよび格子定数などは、凸状の構造体531または構造体631と共通である。

【0254】
図24~図27に示す例では、4つの基本要素の各断面形状は、円形または三角形のように、いずれも同種の形状である。しかしながら、前述の不一致条件は、4つの基本要素の各形状が、円形、三角形、四角形および楕円形のように、互いに異種の形状である場合にも充足されるので、この形態もまた実施形態4の範疇に含まれる。

【0255】
本実施形態に係る太陽電池パネルは、上記太陽電池のいずれかを1ユニットとして、複数の上記ユニットが一次元的または二次元的に配列された構成を備えている。

【0256】
これにより、光の吸収率が高い太陽電池が配列されているので、光電変換率の高い太陽電池パネルを得ることができる。

【0257】
上記太陽電池のいずれかを電源として備えた装置もまた、本発明の1つのカテゴリーである。そのような装置は、上記太陽電池を電源として動作する携帯型または据え置き型の電子機器、家電製品または広告塔などが含まれる。

【0258】
また、上記太陽電池パネルを電源として備えた装置もまた、本発明の1つのカテゴリーである。そのような装置は、上記太陽電池パネルを電源として動作する携帯型または据え置き型の電子機器または家電製品のほかに、車両または広告塔なども含まれる。

【0259】
本発明に係る上記太陽電池では、
(1)上記凹凸を構成する凹部または凸部の一方が、上記フォトニック結晶構造の基本要素をなしているとともに、
(2)上記フォトニック結晶構造は、第1の径を持つ上記基本要素が、第1の格子定数で配列された第1の副構造と、上記第1の径と異なった第2の径を持つ上記基本要素が、第1の格子定数と異なった第2の格子定数で、上記第1の副構造の格子点の一部を置き換えるように配列された第副構造とを含む、少なくとも2種類の副構造を含み、
(3)上記第1の径および第2の径は、上記第1の透明導電膜の面内方向における上記基本要素の断面の径であることを特徴とする。

【0260】
上記の構成によれば、上記フォトニック結晶構造は、上記第1の透明導電膜の表面に周期的に配列された凹部または凸部によって構成され、各凹部(または各凸部)は、断面の径および格子定数が異なる少なくとも2種類の副構造を形成している。

【0261】
これにより、上記フォトニック結晶構造による光の共振は、フォトニック結晶構造が単一の周期構造を持つ場合と比較して、より広い波長範囲で発生するとともに、共振の強度も増大する。

【0262】
これは、第1および第2の副構造のそれぞれが、異なる共振周波数を持つことに加えて、2つの副構造が共存することによって、新たな共振が生じたり、共振を強め合ったりするからと考えられる。

【0263】
すなわち、上記フォトニック結晶構造によって、より広い波長域で、より強い共振が生じるので、結果として光電変換層における光電変換率を増大させることができる。

【0264】
本発明に係る上記太陽電池では、上記凹凸を構成する凹部または凸部の一方が上記フォトニック結晶構造の基本要素をなしているとともに、上記基本要素は、中心軸方向が上記透明導電膜の表面と実質的に垂直な柱形状をしており、中心軸に垂直な断面の形状が円形、楕円形または多角形であり、上記多角形は、直線状の辺を、曲線状の辺に置き換えた形状、または、上記多角形の頂点に円弧状の丸みをつけた形状を含んでいることを特徴とする。

【0265】
上記構成によれば、フォトニック結晶構造を構成する基本要素としての構造体その中心軸の方向が上記透明導電膜の表面と実質的に垂直な柱形状をしていることから、フォトレジストおよび電子ビームによる現像、およびエッチングなどの公知の半導体プロセス技術を用いることにより、比較的容易に構造体、言い換えるとフォトニック結晶構造を作製することができる。

【0266】
本発明に係る上記太陽電池では、
(1)上記凹凸を構成する凹部または凸部の一方が、上記フォトニック結晶構造を形成するためのの基本要素をなしているとともに、
(2)上記フォトニック結晶構造は、4つの凹部または4つの凸部を正方格子状に配置した単位格子を備え、該単位格子を二次元的、かつ周期的に配置することによって構成され、
(3)上記4つの凹部または4つの凸部の断面の形状は、該断面を含む面内方向に沿って、4つの断面の形状のいずれかを、他の断面の形状の位置に平行移動させても、形状的に相互に不一致となるという条件を満たしていることを特徴とする。

【0267】
上記の構成において、上記4つの凹部または4つの凸部の断面の形状は、該断面を含む面内方向に沿って、4つの断面の形状のいずれかを、他の断面の形状の位置に平行移動させても、形状的に相互に不一致となるという条件(不一致条件)を満たしているとは、どのような意味かを説明する。なお、上記凹部または凸部のことを、以下、基本要素と呼ぶ。

【0268】
最も簡単な例を挙げると、4つの基本要素の各形状が、互いにサイズの異なる相似形である場合、上記不一致条件が満たされる。互いにサイズの異なる相似形では、4つの断面の形状のいずれかを、他の断面の形状の位置に平行移動させても、形状的に一致しないことは明らかである。

【0269】
他の例を挙げると、4つの基本要素の各形状が、互いに異なる角度を含む三角形である場合、三角形の合同条件が満たされないから、上記不一致条件が満たされる。

【0270】
さらに他の例を挙げると、4つの基本要素の各形状が、合同条件を満たした三角形ではあるが、該断面を含む面内において、少なくとも1つの頂点が異なる方位を向いている場合、上記不一致条件が満たされる。

【0271】
さらに、4つの基本要素の各形状が、円形、三角形、四角形および楕円形のように、互いに異種の形状である場合、上記不一致条件が満たされることはいうまでもない。

【0272】
上記の構成によれば、単位格子を二次元的、かつ周期的に配置しているので、上記不一致条件を満たす4つの基本要素のそれぞれが、単位格子と同じ周期で、二次元的に配置されている。

【0273】
このような単位格子によってフォトニック結晶構造を構成した場合、そのフォトニック結晶構造には、4種類の周期構造が含まれることになる。

【0274】
これにより、上記フォトニック結晶構造による光の共振は、フォトニック結晶構造が単一の周期構造を持つ場合と比較して、より広い波長範囲で発生するとともに、共振の強度も増大する。

【0275】
これは、4種類の周期構造のそれぞれが、異なる共振周波数を持つことに加えて、4種類の周期構造が共存することによって、新たな共振が生じたり、共振を強め合ったりするからと考えられる。

【0276】
すなわち、上記フォトニック結晶構造によって、より広い波長域で、より強い共振が生じるので、結果として光電変換層における光電変換率を増大させることができる。

【0277】
また、本発明に係る太陽電池では、上記4つの凹部または4つの凸部の断面の形状は、大きさが互いに異なる相似形であることを特徴とする。

【0278】
大きさが互いに異なる相似形には、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形など、任意の形状が含まれる。

【0279】
なお、断面の形状が円形の場合、フォトニック結晶の周期構造の等方性が最も高くなるため、強い共振効果を得やすくなる。また、製造の容易さの観点では、四角形が優れている。

【0280】
また、本発明に係る太陽電池では、上記4つの凹部または4つの凸部の断面の形状は三角形であり、4つの断面の形状のいずれかを、他の断面の形状の位置に平行移動させても、形状的に相互に不一致となるという上記条件を満たすように、各三角形の向きまたは形状が設定され、上記三角形は、上記三角形の直線状の辺を、曲線状の辺に置き換えた形状、または、上記三角形の頂点に円弧状の丸みをつけた形状を含んでいることを特徴とする。

【0281】
断面の形状が三角形の場合、電磁界分布の制御が行いやすく、光吸収の効果を決定する共振の大きさ(Q値)の設計が行いやすくなる。ただし、設計の容易さと光吸収向上の効果とは、直接的に結びつかない。光吸収向上の効果を高めるには、材料の持つ光吸収特性(吸収係数)と共振の大きさ(Q値)との整合性を取ることが重要である。

【0282】
また、本発明に係る太陽電池は、上記光電変換層の上記第1の透明導電膜と反対側の表面に形成された第2透明導電膜を備え、当該第2の透明導電膜は、上記光電変換層よりも屈折率の小さい材料で形成されていることを特徴とする。

【0283】
上記の構成によれば、本発明に係る太陽電池は、第1および第2の透明導電膜が、光電変換層を上下から挟むように形成されていることによって、フォトニック結晶構造による共振効果によって得られる光閉じ込めの効果に、2層の透明導電膜による光閉じ込めの効果をプラスすることができる。

【0284】
透明導電膜による光閉じ込め効果について説明すると、まず、第1および第2の透明導電膜の屈折率は、光電変換層の屈折率よりも小さい。従って、屈折率が光電変換層より小さい媒質からなる透明導電膜によって、光電変換層を挟むことによって、高屈折率のコアを低屈折率のクラッドで被覆することで光を伝播させる光ファイバと同じ原理で、光電変換層を抜けて外部へと漏れ出ようとする光を閉じ込めることができる。この光閉じ込め効果によって、未だ吸収されていない光が光電変換層内を何度も往復することになるので、光電変換層による光の吸収率を一層向上させることができる。

【0285】
本発明に係る上記太陽電池の上記光電変換層は、吸収する光の主な波長域が異なる少なくとも2層の光電変換層を有していることを特徴とする。

【0286】
上記構成によれば、1層の光電変換層と比較して、より広い波長域の光を吸収できるので、光電変換率を上昇させることができる。

【0287】
本発明に係る上記太陽電池の上記フォトニック結晶構造は、透明な誘電体で形成されていることを特徴とする。

【0288】
上記構成のように、フォトニック結晶構造が透明な誘電体で形成されていると、誘電体は共振条件を満たした波長の光としか共振せず、共振しない波長の光を通過させるので、入射光のエネルギーを奪うことがない。

【0289】
従って、入射光のエネルギーが光電変換層以外のところで吸収されることによるエネルギー損失を小さくすることができる。

【0290】
本発明に係る上記太陽電池のフォトニック結晶構造は、透明な導電体で形成されていることを特徴とする。

【0291】
フォトニック結晶構造が誘電体を材料としている場合には、誘電体が電気を通さない絶縁体であるため、光電変換層で発生した電流を、上記誘電体を介さずに第1の透明導電膜へと導くための通路が必要となる。そのため、光電変換層(例えば光電変換層のアモルファスシリコン半導体)が、少なくとも一部において、第1の透明導電膜と直接的に接触していなければならない。そのためには、フォトニック結晶構造の形成工程において、フォトニック結晶構造を構成する凹凸の凹部では、第1の透明導電膜が露出するまで、誘電体で形成された層をエッチングしなければならない。

【0292】
一方で、本構成のように、フォトニック結晶構造が導電性を有する材料で形成されている場合には、光電変換層で発生した電流は、光電変換層からフォトニック結晶構造を通って第1の透明導電膜へと移動することができる。そのため、光電変換層と第1の透明導電膜とが直接的に接触している必要はない。

【0293】
従って、フォトニック結晶構造の形成工程において、フォトニック結晶構造を構成する凹凸の凹部では、第1の透明導電膜が露出するまで、導電体で形成された層をエッチングする必要がなく、凹部内に、導電体の残滓が残っていてもよい。

【0294】
すなわち、フォトニック結晶構造が導電性を有していることによって、フォトニック結晶構造の形成工程を簡易化することができる。例えば、エッチング時間の調整を簡便にしたり、短縮したりすることができる。

【0295】
本発明に係る上記太陽電池は、光の入射側と反対側の表面に、上記光電変換層側から入射した光を上記入射側へと反射し、かつ上記光電変換層の電極として機能する金属電極層が形成されていることを特徴とする。

【0296】
上記構成によれば、金属電極層は、光電変換層で光電変換されずに通り抜けた光を、再び光電変換層内へと戻すように反射するので、光電変換率を向上させることができる。

【0297】
本発明に係る上記フォトニック結晶基板の上記凹凸の形成材料は、上記透明導電膜上に積層された透明な誘電体であってもよい。

【0298】
これにより、既に説明したように、入射光のエネルギーの損失を小さくした太陽電池を得ることができる。

【0299】
本発明に係る上記フォトニック結晶基板の上記凹凸の形成材料は、上記透明導電膜上に積層された透明な導電体であってもよい。

【0300】
これにより、既に説明したように、フォトニック結晶構造の形成工程を簡易化することができる。

【0301】
本発明に係る上記フォトニック結晶基板では、上記透明基板の上記一方の表面の形状が、上記複数の凹凸の形状に対応した凹凸の形状をなし、上記透明導電膜の表面に形成された上記複数の凹凸は、上記一方の表面における凹凸の形状が転写されたものであってもよい。

【0302】
上記の構成によれば、上記透明導電膜上に透明な導電体を積層した構成と同様に、フォトニック結晶構造の形成工程を簡易化することができる。

【0303】
本発明に係る上記フォトニック結晶基板では、
(1)上記複数の凹凸を構成する凹部または凸部の一方が上記フォトニック結晶構造を形成するための基本要素をなしているとともに、
(2)上記複数の凹凸は、第1の径および第1の格子定数を持つ第1の副構造と、当該第1の副構造の格子点の一部を置き換えるように配列され、上記第1の径および第1の格子定数とはそれぞれ異なった第2の径および第2の格子定数を持つ第2の副構造とを含む、少なくとも2種類の副構造を含み、
(3)上記第1の径および第2の径は、上記透明導電膜の面内方向における上記基本要素の断面の径であることを特徴とする。

【0304】
これにより、より広い波長域で、より強い共振が生じる結果、光電変換率が増大した太陽電池を得ることができる。

【0305】
本発明に係る上記フォトニック結晶基板では、
(1)上記凹凸を構成する凹部または凸部の一方が、上記フォトニック結晶構造を形成するための基本要素をなしているとともに、
(2)上記フォトニック結晶構造は、4つの凹部または4つの凸部を正方格子状に配置した単位格子を備え、該単位格子を二次元的、かつ周期的に配置することによって構成され、
(3)上記4つの凹部または4つの凸部の断面の形状は、該断面を含む面内方向に沿って、4つの断面の形状のいずれかを、他の断面の形状の位置に平行移動させても、形状的に相互に不一致となるという条件を満たしていることを特徴とする。

【0306】
これにより、フォトニック結晶構造は4種類の周期構造を持つことになるので、より広い波長域で、より強い共振が生じる結果、光電変換率が増大した太陽電池を得ることができる。

【0307】
本発明に係る上記フォトニック結晶基板では、上記4つの凹部または4つの凸部の断面の形状は、大きさが互いに異なる相似形であってもよい。

【0308】
本発明に係る上記フォトニック結晶基板では、上記4つの凹部または4つの凸部の断面の形状は三角形であり、4つの断面の形状のいずれかを、他の断面の形状の位置に平行移動させても、形状的に相互に不一致となるという上記条件を満たすように、各三角形の向きまたは形状が設定され、上記三角形は、上記三角形の直線状の辺を、曲線状の辺に置き換えた形状、または、上記三角形の頂点に円弧状の丸みをつけた形状を含んでいてもよい。

【0309】
本発明は上述した実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上記実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる他の実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0310】
本発明は、フォトニック結晶構造を備えた基板、およびその基板を用いて作製する太陽電池全般に利用することができる。
【符号の説明】
【0311】
1,1a,1b 太陽電池
10 透明基板
11 第1の透明導電膜
12 第2の透明導電膜
14 金属電極層
20 光電変換層
21,22 半導体層
30,30a,30b,30c フォトニック結晶構造
31,32,33 構造体(基本要素)
32 構造体
32b、33b 構造体(基本要素)
99,299、399、499、599 加工済み基板(フォトニック結晶基板)
200,200a 太陽電池
230,230a フォトニック結晶構造
231,232,233 孔状の構造体(基本要素)
300,300a 太陽電池
330,330a,330b,330c フォトニック結晶構造
331,332,333 構造体(基本要素)
332c,333c 孔状の構造体(基本要素)
400 太陽電池
501 太陽電池
530 フォトニック結晶構造
531 構造体(基本要素)
531a 孔状の構造体(基本要素)
540 単位格子
630 フォトニック結晶構造
631 構造体(基本要素)
631a 孔状の構造体(基本要素)
640 単位格子
r,w 第1の径
R,W 第2の径
a,A 格子定数
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26
【図28】
27
【図29】
28