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明細書 :金属ナノ粒子のPCP複合体とその作製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5946456号 (P5946456)
登録日 平成28年6月10日(2016.6.10)
発行日 平成28年7月6日(2016.7.6)
発明の名称または考案の名称 金属ナノ粒子のPCP複合体とその作製方法
国際特許分類 C08G  79/00        (2006.01)
C08L  85/00        (2006.01)
C08K   3/00        (2006.01)
B01J  35/08        (2006.01)
B01J  31/28        (2006.01)
C01C   1/04        (2006.01)
B82Y  30/00        (2011.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
FI C08G 79/00
C08L 85/00
C08K 3/00
B01J 35/08 B
B01J 31/28 M
B01J 31/28 Z
C01C 1/04 E
B82Y 30/00
B82Y 40/00
請求項の数または発明の数 10
全頁数 12
出願番号 特願2013-528009 (P2013-528009)
出願日 平成24年8月3日(2012.8.3)
国際出願番号 PCT/JP2012/069845
国際公開番号 WO2013/021944
国際公開日 平成25年2月14日(2013.2.14)
優先権出願番号 2011171542
優先日 平成23年8月5日(2011.8.5)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年7月27日(2015.7.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】北川 宏
【氏名】小林 浩和
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】小森 勇
参考文献・文献 特開2006-248989(JP,A)
調査した分野 C08G 79/00
B01J 31/28
B01J 35/08
B82Y 30/00
B82Y 40/00
C01C 1/04
C08K 3/00
C08L 85/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
コアがシェルで覆われたコア-シェル構造を有する複合体であって、コアが金属ナノ粒子であり、シェルが多孔性配位高分子(PCP)であり、かつ、前記PCPが金属イオンと有機配位子から構成される、複合体。
【請求項2】
前記金属ナノ粒子が貴金属ナノ粒子である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
表面から金属ナノ粒子に到達するまでのPCP層の平均厚さが1~200nmである、請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
PCPを構成する有機配位子が、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、インダン、インデン、ピレン、1,4-ジヒドロナフタレン、テトラリン、ビフェニレン、トリフェニレン、アセナフチレン、アセナフテンからなる群から選ばれる芳香環に2個、3個又は4個のカルボキシル基が結合した化合物(前記有機配位子は、F,Cl、Br,Iなどのハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アシルアミノ基、シアノ基、水酸基、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、直鎖又は分岐を有する炭素数1~4のアルコキシ基、直鎖又は分岐を有する炭素数1~4のアルキル基、SH、トリフルオロメチル基、スルホン酸基、カルバモイル基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基からなる群から選ばれる置換基で1,2又は3置換されていてもよい)、不飽和2価カルボン酸、2以上の環内窒素原子により配位可能な含窒素芳香族化合物(前記置換基により1、2または3置換されていてもよい。)からなる群から選ばれる、請求項1~3のいずれかに記載の複合体。
【請求項5】
前記金属ナノ粒子が金、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、銀、銅、鉄、ルテニウム、ロジウム、亜鉛、それらの合金もしくは酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の触媒である、請求項1~4のいずれかに記載の複合体。
【請求項6】
金属ナノ粒子のサイズが、1~200nmである、請求項1~4のいずれかに記載の複合体。
【請求項7】
前記金属ナノ粒子の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上或いは95%以上が前記PCP層を通るガス状の反応物と接触し得る、請求項1~5のいずれかに記載の複合体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の複合体の触媒としての使用。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載の複合体の金属ナノ粒子と、前記PCPにより吸着されるガス状の物質を反応させて化合物を生成させることを特徴とする、前記化合物の製造方法。
【請求項10】
前記ガスが水素と窒素であり、金属ナノ粒子が鉄系の触媒であり、生成物がアンモニアである、請求項9に記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ナノ粒子とPCP(Porous Coordination Polymer;多孔性配位高分子)を有する複合体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒反応に関与するガスをPCPで捕獲し、確実に反応させ、高効率・高選択な反応を実現するためには、ナノ触媒表面にPCPが被覆した構造を有するPCP複合触媒の開発が必要不可欠である。
【0003】
非特許文献1は、PCPを予め作製した後に金属ナノ粒子を複合化しているため、金属ナノ粒子はPCPの外部に付着した構造を有し、金属ナノ粒子とPCPの複合効果は限られたものであった。
【0004】
非特許文献2は、酸化鉄の存在下に金属イオン(Al、Cu)と配位子(bpdc、btc)を作用させて金属イオンと配位子の複合体を形成させているが、この複合体は薬物の徐放性製剤などの用途に用いられるものであり、酸化鉄はその磁性により磁石を用いて目的の位置に輸送するためのものであり、酸化鉄ナノ粒子の表面の一部でPCPと一体化しているだけであり、酸化鉄粒子はPCPの内部に存在しない。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Eur.J.Inorg.Chem., 2010, 3701-3714
【非特許文献2】ChemComm, 2011, 47, 3075-3077
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、金属ナノ粒子とPCPが相互作用する複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の複合体及びその製造方法を提供するものである。
項1. 金属ナノ粒子を多孔性配位高分子(PCP)の内部に含む複合体であって、前記PCPが金属イオンと有機配位子から構成される、複合体。
項2. 前記金属ナノ粒子が貴金属ナノ粒子である、項1又は2に記載の複合体。
項3. 表面から金属ナノ粒子に到達するまでのPCP層の平均厚さが1~200nmである、項1に記載の複合体。
項4. 前記PCPが金属イオンとカルボキシル基を有する配位子と環内窒素原子により配位可能な含窒素芳香族化合物から構成される、項1~3のいずれかに記載の複合体。
項5. 前記金属ナノ粒子が金、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、銀、銅、鉄、ルテニウム、ロジウム、亜鉛、それらの合金もしくは酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の触媒である、項1~4のいずれかに記載の複合体。
項6. 前記複合体のサイズが1~500nmである、項1~5のいずれかに記載の複合体。
項7. 前記金属ナノ粒子の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上或いは95%以上が前記PCP層を通るガス状の反応物と接触し得る、項1~6のいずれかに記載の複合体。
項8. 項1~7のいずれかに記載の複合体の触媒としての使用。
項9. 項1~7のいずれかに記載の複合体の金属ナノ粒子と、前記PCPにより吸着されるガスを反応させて化合物を生成させることを特徴とする、前記化合物の製造方法。
項10. 前記ガスが水素と窒素であり、金属ナノ粒子が鉄系の触媒であり、生成物がアンモニアである、項9に記載の製造方法
項11. 金属ナノ粒子及び溶媒の存在下で金属イオンと多価カルボン酸配位子及び/又は含窒素ヘテロ環配位子を混合することを特徴とする、項1~7のいずれかに記載の複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のPCPは金属イオンとそれと配位する有機配位子によって構成され、金属イオンと有機配位子の種類を組み合わせることによって、無限といえるほどの物質の多様性がある。ゼオライト、活性炭などの吸着材に比べ分子設計の自由度は極めて高く、ガス分子を大量かつ安定に貯蔵する吸着材としての性質を有している。さらに、PCPはその細孔内部にガスを選択的にかつ高濃度に取り込むことが可能であるため、多孔性配位高分子(PCP)複合触媒では、既存のナノ材料を凌駕する高効率・高選択性に優れた触媒材料になり得る。
【0009】
本発明によれば、金属ナノ粒子をPCPの内部に含むコア・シェルタイプのPCP複合粒子が得られる。
【0010】
また、PCP部分に選択的にガスが吸着され金属触媒と反応されるため、選択的な触媒反応が可能になる。
【0011】
本発明のPCP系複合触媒では、合目的、合理的な構築手法により、種々の触媒開発研究に広く応用利用可能である。特に、均一系触媒(分子触媒)のPCPへの固定化やナノ金属触媒とのPCP複合化により、均一系触媒の長期利用によるコスト削減や「確実に取り込み(PCPによる選択吸着)、確実に反応させる(ナノ触媒による物質変換)」という、高効率・高選択な反応が実現できる。謂わば、触媒活性化する副生ガスのみをPCPで捕獲し、確実に反応させることができる。また、PCP複合触媒においては、分子触媒やナノ触媒を高密度に担持させることに加えて、細孔壁が謂わば「仕切り板」になるので、シンタリング(粒成長による活性点の劣化)を防ぐことができ、金属ナノ粒子同士の凝集・融合が抑制されるため、金属ナノ触媒の長寿命化が期待される。また、均一系触媒である錯体分子触媒をPCP細孔内に固定化することから流出を防ぐことができ、繰り返し使用可能な触媒となる。
【0012】
さらに、細孔が吸着ガスを有することから触媒毒となるガスからの被毒を防ぐことも可能である。他方、PCPのナノ細孔が分子ストレスを引き起こすことが報告されている。このことから、基質が特異なナノ空間ストレスにより変形しその結果活性化され、さらに併存する触媒に効率よく活性化されることが期待される。
【0013】
これまでにPCP複合触媒はPCPの表面に触媒が分散したものしか得られていない。特にガス変換の触媒として使用する際、PCPと触媒の界面の割合が重要であるが、PCPはマイクロメートルオーダーで非常に大きく、活性金属種と接している割合は非常に少なく、高効率な反応を起こすことは非常に困難である。
【0014】
PCPの内部へナノ触媒を埋め込んだ、もしくナノ触媒表面にPCPを被覆したコア・シェルタイプの本発明のPCP複合体は、活性金属種と接している割合は非常に大きく、高効率な反応を起こすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】PCP-活性金属種複合体の合成スキーム
【図2】PCP-活性金属種複合体のXRDパターン(左)とIRスペクトル(右)
【図3】PCP-活性金属種複合体のTEMイメージ(左)とEDSスペクトル(右)
【図4】PCP-活性金属種複合体のN2吸着等温曲線(77 K)
【図5】金属ナノ粒子の形状(立方体、プレート、truncated octahedron, 正八面体)を示す。
【図6】Pd粉末(黒)、立方体型の活性金属種(青)および複合体(赤)のサイクリックボルタモグラム
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の複合体は、金属ナノ粒子を多孔性配位高分子(PCP)の内部に含む複合体である。ここで、「内部に含む」とは、金属ナノ粒子をPCPにより被覆すること、あるいは、金属ナノ粒子をPCPの内部へ埋め込んだことを意味する。PCPは、例えば図4の右側に示されるように、いくつかの層を形成し、金属ナノ粒子全体を覆っている。前記複合体は、金属ナノ粒子が内部に1つのみ存在しているのが好ましいが、金属ナノ粒子が複数個存在していてもよい。PCPは、多数の細孔を有し、この細孔は、図4に示すように三次元的に形成されているのが好ましいが、二次元或いは一次元的に形成されてもよい。PCPの細孔は、通常規則的に形成されている。金属ナノ粒子はPCPに密着固定して内部に含まれていてもよく、PCPの内部に移動可能な状態で含まれていてもよい。例えば袋状のPCPの内部に、PCPの内腔よりも小さい少なくとも1個の金属ナノ粒子が移動可能に含まれていてもよい。PCPと親和性のあるガス状の物質はこの細孔を通って内部の金属ナノ粒子表面に濃縮されて供給され、反応後の物質はPCPの細孔から外部に放出される。PCPは反応原料のガス状物質との親和性が高く、反応後の生成物の親和性が低いことが、金属ナノ粒子触媒を用いて触媒反応を行うために好ましい。このように、新たな物質がPCPから金属ナノ粒子に次々供給され、反応後の生成物は細孔から外部に次々放出されるため、金属ナノ粒子が触媒の場合、その反応効率は非常に大きくなる。金属ナノ粒子の触媒は、例えば水素と窒素からアンモニアを製造する触媒、アンモニア、メタン、エタン、プロパンなどの炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコールから水素を生成する触媒、炭酸ガス、一酸化炭素などと反応してCOOH,CHO、CHOHなどの炭素数1の基を伸長する触媒などが挙げられる。

【0017】
例えば、金属ナノ粒子が触媒である場合には、触媒反応に必要な反応物質を触媒表面に濃縮することができ、化学反応などを効率的に行うことができる。PCPは、構成する金属イオン、配位子の種類を変えることにより、細孔のサイズ、細孔に取り込む化合物の種類を自在に変えることができるため、種々の反応を金属ナノ粒子表面で行うことができる。PCPを表面に有することにより、複合体外部の反応原料のガス状物質濃度が低くても、PCPと親和性のあるガス状物質のPCP内部及び金属ナノ粒子表面の濃度は飛躍的に高くなるので、PCPの存在により反応効率は著しく向上する。また、同じ反応を行う場合のガス状の反応原料の分圧を著しく低下させることができる。

【0018】
好ましい実施形態において、本発明の複合体はコア(金属ナノ粒子)-シェル(PCP)構造を有するものである。ここで、コア-シェル構造を有する複合体は、単一の金属ナノ粒子(コア)がPCP(シェル)で覆われていてもよく、複数の金属ナノ粒子(コア)がPCP(シェル)で覆われていてもよい。また、本発明の複合体は、粉末状であってもよく、薄膜状などの膜状であってもよい。さらに、本発明の複合体が粉末状である場合、粒状に成形してもよい。

【0019】
金属ナノ粒子は、PCPの細孔から供給されたガス状の物質と相互作用(化学反応、触媒反応など)するものであるため、複合体の内部で金属ナノ粒子は触媒反応などに利用可能な表面をできるだけ多く供給することが好ましい。従って、本発明の複合体は、シート状ないしフィルム状のような形状であれば金属ナノ粒子が多数存在していても有効表面積が十分大きいのでよく、塊状の場合には、内部に閉じこめられた金属ナノ粒子ができるだけ少なくなるように、粒子サイズが小さいことが好ましい。塊状の形状の場合の複合体の大きさは、1~500nm程度、好ましくは1~100nm程度である。これらの粒子が横方向に広がっている場合には、複合体が多くの粒子を含んでいてもよい。例えば、図3の複合体は多くの金属ナノ粒子が横方向に広がったものであるので、本発明の好ましい複合体の1つの実施形態である。一方、図4の複合体は、PCPの細孔から多数の反応物質が金属ナノ粒子に供給され、反応後の生成物は外部に放出される。PCP層は、外部のガス状物質をPCP層の内部で濃縮するためにはある程度の厚さが必要になるが、PCP層が厚すぎると金属ナノ粒子のあるところまでガス状物質が到達するのに時間がかかるようになる。好ましいPCP層の厚さは1~100nm程度、好ましくは1~20nm程度である。

【0020】
本発明の金属ナノ粒子は、立方体、直方体、プレート状、truncated octahedron或いは(正)八面体などの主として平面から構成される形状を有するものが好ましいが(図5)、球状、楕円体状、リン片状などの任意の形状であってよい。

【0021】
本発明の複合体は、金属ナノ粒子が全面的にPCPで覆われた構造を有し、外部から供給されるガス状又は液体状の物質はPCPの一定の大きさの孔を通って金属ナノ粒子の表面に供給される。従って、金属ナノ粒子が触媒作用を有する場合、本発明の複合体は特定の原料(PCPに吸着されるガス)から特定の物質を高い選択性で得ることができる。

【0022】
金属ナノ粒子は、金属(合金を含む)もしくは金属酸化物から構成される。

【0023】
金属としては、金、白金、銀、銅、ルテニウム、スズ、パラジウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ニッケル、コバルト、亜鉛、鉄、イットリウム、マグネシウム、マンガン、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどが挙げられる。金属酸化物としては、PtO、CuO、酸化ルテニウム(IV)、酸化ロジウム、酸化ルテニウム、Fe、Fe、ZnO、酸化オスミウム(IV)、などが挙げられる。

【0024】
金属ナノ粒子のサイズとしては、0.5~200nm程度、好ましくは1~100nm程度、より好ましくは5~20nm程度である。

【0025】
本発明の金属ナノ粒子は、表面処理をすることができる。このような表面処理としては、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマーによる表面処理が好ましい。このような表面処理により親水性ポリマーを結合させることができる。或いは、SH基を有する親水性ポリマーを金属ナノ粒子と反応させることで、親水性ポリマーを導入(表面処理)することができる。

【0026】
本発明の他の実施形態では、SH基と他の反応性基(例えばアミノ基、水酸基、カルボキシル基など)を有する化合物と金属ナノ粒子を反応させて金属-S結合を生成させ、それにより導入された他の反応性基(例えばアミノ基、水酸基、カルボキシル基など)に配位子と金属イオンを反応させることで、PCP層を形成することができる。或いは金属ナノ粒子の表面或いは表面付近にPCPの構成要素である金属イオンもしくは有機配位子を結合、吸着もしくは相互作用などにより存在させることができればそこからPCPを形成することができる。

【0027】
なお、SH基を有するポリマー、化合物などは、光照射により金属ナノ粒子との結合を切断することができ、それにより金属ナノ粒子表面を露出することができる。金属ナノ粒子は触媒反応などに用いる場合、活性な表面が露出していることが望ましいためである。

【0028】
本発明の複合体は、金属ナノ粒子の希薄溶液(懸濁液)にPCPの構成要素(金属イオン、配位子)を低濃度で加えてPCPを形成させ、金属イオンがPCPの内部に含まれた複合体のみを遠心分離などの手法により分離して製造してもよい。このような方法によると、金属イオンはチオール化合物などにより表面処理されていないので、触媒反応が効率よく行える利点がある。複合体の製造を超音波などの作用かに行うことで、複合体の粒子を小さくし、金属ナノ粒子の凝集(重なり)を防止することもできる。

【0029】
金属ナノ粒子の表面にPCPを構成可能な(配位結合可能な)官能基を導入するための物質としては、例えばp-メルカプトフェノール、アミノベンゼンチオール、p-メルカプトピリジン、p-メルカプト安息香酸、11-メルカプト-1-ウンデカノール、11-メルカプトウンデカン酸などが挙げられる。SH基を介して金属ナノ粒子にPCPを構成可能な(配位結合可能な)官能基を導入する場合、この官能基はSH基よりも金属ナノ粒子との結合が弱いものが挙げられる。金属ナノ粒子が金属酸化物の場合には、OH、COOHなどの酸素を有する官能基により金属ナノ粒子と結合させることができる。

【0030】
本発明で使用する金属ナノ粒子は、公知の方法に従い製造できる。具体的にはAdv. Funct. Mater. 2009, 19, 189-200に記載の方法が例示できる。

【0031】
本発明の複合体として、例えば実施例で使用した表面処理されたPdナノ粒子は、保護ポリマーであるpoly(N-vinyl-2-pyrrolidone)およびNa2PdCl4水溶液に還元剤および(1 0 0)面だけを保護し、結晶成長を制御するキャッピング試薬を加え、還元することにより立方体の形状を有するPdナノクリスタルを作製することができる。本発明の複合体は金属ナノ粒子の表面からPCPを組み上げていくことで得ることができる。PCPの配位子成分と同じ官能基を末端に有する自己組織化単分子膜(SAM)で金属表面を置換することが望ましい。SAMで置換された金属ナノ粒子にPCPの原料を加え加熱・撹拌することにより、金属ナノ粒子-PCP複合体を作製することができる。

【0032】
Pd以外の金属ナノ粒子についても同様にして本発明の複合体を製造することができる。

【0033】
PCPは、通常2層以上(例えば2~100層、好ましくは3~50層、より好ましくは4~30層、特に4~20層)の金属と配位子からなる層を有し、この層が繰り返されるが、例えば金属イオン及び/又は配位子は、層ごとに変えて電子の一連の流れを実現することで、太陽電池の素子として使用することができる。

【0034】
本明細書において、PCPとしては、金属イオンと有機配位子から構成され、カウンターアニオンを含んでいてもよい。金属イオンとしては、マグネシウム、カルシウム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、カドミウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、白金、ルテニウム、モリブデン、ジルコニウム、スカンジウムなどのイオンが好ましく、マグネシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などの金属のイオンがより好ましい。金属イオンは、単一の金属イオンを使用してもよく、2種以上の金属イオンを併用してもよい。

【0035】
PCPを構成するリガンドとしては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、インダン、インデン、ピレン、1,4-ジヒドロナフタレン、テトラリン、ビフェニレン、トリフェニレン、アセナフチレン、アセナフテンなどの芳香環に2個、3個又は4個のカルボキシル基が結合した化合物(前記リガンドは、F,Cl、Br,Iなどのハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アセチルアミノ基などのアシルアミノ基、シアノ基、水酸基、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、メトキシ、エトキシなどの直鎖又は分岐を有する炭素数1~4のアルコキシ基、メチル、エチル、プロピル、tert-ブチル、イソブチルなどの直鎖又は分岐を有する炭素数1~4のアルキル基、SH、トリフルオロメチル基、スルホン酸基、カルバモイル基、メチルアミノなどのアルキルアミノ基、ジメチルアミノなどのジアルキルアミノ基などの置換基で1,2又は3置換されていてもよい)、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和2価カルボン酸、ピラジン、4,4’-ビピリジル、ジアザピレン、などの2以上の環内窒素原子により配位可能な含窒素芳香族化合物(前記置換基により1、2または3置換されていてもよい。)などが挙げられる。配位子が中性の場合、金属イオンを中和するのに必要なカウンターアニオンを有する。このようなカウンターアニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、過塩素酸イオンなどが挙げられる。

【0036】
上記の金属イオンと有機配位子を含むPCPは、シート状などの二次元細孔又は複数のシートがアキシャル位に配位する二座配位子を構成要素として含む三次元細孔を有するPCPを包含するが、例えば以下の一次元細孔を有するPCPを使用することもできる。
IRMOF-1, Zn4O(BDC)3 (H2BDC= benzenedicarboxylic acid)
MOF-69C, Zn3(OH2)(BDC)2
MOF-74, M2(DOBDC) (H2DOBDC=2,5-dihydroxyterephthalic acid, M=Zn, Co, Ni, Mg)
HKUST-1, Cu3(BTC)2 (H3BTC=1,3,5-benzenetricarboxylic acid)
MOF-508, Zn(BDC)(bipy)0.5
Zn-BDC-DABCO,Zn2(BDC)2(DABCO), (DABCO=1,4-diazabicyclo[2.2.2]-octane)
Cr-MIL-101, Cr3F(H2O)2O(BDC)3
Al-MIL-110, Al8(OH)12{(OH)3(H2O)3}[BTC]3,
Al-MIL-53, Al(OH)[BDC]
ZIF-8, Zn(MeIM)2, (H-MeIM=2-methylimidazole)
MIL-88B, Cr3OF(O2C-C6H4-CO2)3
MIL-88C, Fe3O(O2C-C10H6-CO2)3
MIL-88D, Cr3OF(O2C-C12H8-CO2)3
CID-1 [Zn2(ip)2(bpy)2] (Hip=isophthalic acid, bpy=4,4'-bipyridine)

【0037】
本発明で使用するPCPは、例えば以下の文献、総説(Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 2334-2375.;Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 2-14.;Chem. Soc. Rev., 2008, 37, 191-214.;PNAS, 2006, 103, 10186-10191.;Chem.Rev.,2011, 111, 688-764.;Nature, 2003, 423, 705-714.)などに記載されているが、これらに限定されず、公知のPCPあるいは今後製造され得るPCPを広く使用することができる。

【0038】
PCPと金属ナノ粒子の割合(重量比)は、PCP 1~99重量%:金属ナノ粒子99~1重量%、好ましくはPCP 10~50重量%:金属ナノ粒子50~90重量%である。

【0039】
PCPにより吸着されるガス(メタン、エタン、一酸化炭素、二酸化炭素、エチレン、アセチレン、ベンゼン、トルエンなど)、金属ナノ粒子触媒(Au,Pt,Pd,Niなど)、他の反応成分(水素、アンモニア、酸素、水、シラン、HCNなど)、生成物(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、酢酸、メタノール、エタノールなど)は、以下のような組み合わせが挙げられる。なお、PCPは全て適用可能である。

【0040】
【表1】
JP0005946456B2_000002t.gif
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことはいうまでもない。
実施例1
(1)Pd cubes の合成(図1)
立方体型活性金属種(Pd)を用い、PCPとの複合化の検討を行った。
【実施例】
【0042】
立方体型Pdは、Na2PdCl4水溶液(17.4mM )にポリビニルピロリドン(PVP;105mg)、アスコルビン酸(60mg)及びKBr(300mg)を加え、80℃で3時間還元することにより、表面にPVPが付着したPdナノ粒子(10nm)を得た。
(2)配位子置換(PVP→SAM)
(1)で得られたPdナノ粒子の水溶液にHOOC-(CH2)10-SH(70mg)のエタノール溶液を加え、80℃で1時間反応させることにより、HOOC-(CH2)10-SHをSH基を介してPd粒子に結合させた。
HOOC-(CH2)10-SHは、活性金属種の表面からPCPを組み上げていくため、PCPの配位子成分と同じ官能基(COOH)を末端に有する自己組織化単分子膜(SAM)で金属(Pd)表面を置換するために使用した。
(3)複合化
自己組織化単分子膜(SAM)で金属(Pd)表面を置換した粒子の水懸濁液にZn(NO3)2/DMF(40mg)を加え、100℃で1.5時間反応させて、ZnイオンをHOOC-(CH2)10-SHの末端のCOOH基に結合し、次いでジヒドロキシ1,4-ベンゼンジカルボン酸(10mg)のDMF溶液を加え、100℃で24時間加熱・撹拌することにより、活性金属種-PCP複合体を作製した(図1)。
【実施例】
【0043】
図2に得られた複合体の粉末X線回折の結果を示す。複合体の粉末X線回折パターンでは活性金属種とPCPに由来する回折ピークがそれぞれ観測された。また、赤外吸収スペクトル測定の結果から、単一のPCPと同じ位置にPCPに由来する伸縮振動がされたことから目的の生成物ができていることを確認した。複合体を構成するPCPのXRDピークは単独のPCPに比べ、ブロードになっていることがわかる。この結果は作製されたPCP複合体のPCPの結晶子サイズが小さいことを示している。
【実施例】
【0044】
そこで、PCPと活性金属種との複合状態について検討するため、透過型電子顕微鏡を用いた高分解能TEM観察およびEDSスペクトル測定を行った。図3より、立方体型の活性金属種の周りに非常に薄い膜が形成していることがわかる。この膜の成分について調べるためEDSスペクトルの分析を行った。中心部分は活性金属種とPCPを構成する金属イオンに由来するスペクトルが得られた。一方、表面部分を分析すると、PCPを構成する金属イオン成分のみが得られた。活性金属種の周りにPCP膜が形成した複合体を得ることに成功した。これまでにナノ触媒表面にPCPを被覆したコア・シェルタイプのPCP複合体に関する報告例はなく、この結果が初めての例である。
【実施例】
【0045】
実際、得られた複合体が多孔性材料であるかどうか検討するため、77 Kにおいて窒素の吸着等温曲線の測定を行った。図4に吸着測定の結果を示す。N2圧力に伴い低圧力側でマクロ孔に由来する吸着が観測されたことから、この複合体は多孔性を有することが明らかになった。このように活性金属種の周りをPCPで覆う方法を見出すことに成功した。
【実施例】
【0046】
実施例2
実施例1で得た複合体を電極触媒として用い、ギ酸酸化反応を実施した。立方体型の活性金属種および複合体をそれぞれ2.5mgとカーボンペースト (CPO) 2.5 mgをエタノール11.5 μlと「ナフィオン(登録商標)」〔デュポン社製、固形分濃度5質量%の十倍希釈サンプル〕11.5 μlの混合溶媒に添加し、超音波を照射して懸濁液とした。この懸濁液23μLをグラッシーカーボン電極〔3mm径、電極面積は7.1mm2〕に塗布し、乾燥することで修飾電極を得た。この修飾電極を濃度0.5Mの硫酸および1.0 Mギ酸の混合溶液中に浸漬し、室温、大気圧下、アルゴン雰囲気において、銀塩化銀電極電位に対して-0.1~1.00Vの走査範囲で、10mV/sの走査速度で電位をサイクルした。結果を図6に示す。
文献1(J. Phys. Chem. C 2010, 114, 21417-21422)と同様、Pd粉末を用いた場合には0.15Vおよび0.65 V付近に、ギ酸の酸化反応に対応する電流ピークが確認できる。複合体においてもギ酸の酸化反応に対応する触媒電流が観測されたことから、当該複合体は触媒活性を有することがわかった。さらに、複合体のギ酸酸化電流値は2 mA程度であり、立方体型の活性金属種の電流値と比較すると、非常に高い触媒活性を示していることから、PCPを被覆することで触媒活性を飛躍的に向上させることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
PCPへの担持技術においても、均一系触媒から固相のままで用いる不均一系触媒まで種々の触媒開発研究に広く応用利用可能であるため非常に重要である。具体的には、アンモニア合成、有機反応触媒(クロスカップリング反応、メタセシス反応など)など多方面にわたって産業界にインパクトを与える基盤技術となりうる。当該複合体は水素、メタノール、ギ酸などを燃料として用いた燃料電池の電極触媒としても有用である。基質を濃縮させることができるPCPを用いることにより、高効率に反応が進行し、高い電流効率を示すことが期待される。また、メタノール、ギ酸を用いた系では中間生成物である一酸化炭素が触媒毒となり、電極の触媒活性を低下させる問題があるが、一酸化炭素を吸着するPCPを用いることで、生成した一酸化炭素をPCPが吸着し、系外に放出可能であるため、効率よく反応を進行させ且つ耐久性も兼ね備えた電極触媒に成り得る。電極上の酸化・還元反応においても有用であり、PCPによる基質の濃縮効果や分子ストレスなどにより、より低エネルギーの電位で且つ効率的に反応を起こすことが可能である。CO2を還元させる電極触媒として用いた場合、PCP細孔内部にCO2を高密度に取り込み電子と反応しギ酸やシュウ酸などの含酸素化合物を生成させることができる。また、PCP細孔内を疎水性にすることにより、生成物を細孔外にすばやく取り除くことができるため、シンタリング(粒子の凝集)に伴う触媒活性の劣化を防ぐことができる。また、一酸化炭素の酸化反応の場合にもCO、O2のみを吸着できるPCP(オープンメタルサイトやCOやO2のみ通すことのできる細孔径にする)を合成することで、一酸化炭素と酸素のみを濃縮し、内部の金属触媒で反応させることができる。炭素-炭素結合を作るうえで欠かせない反応(クロスカップリング反応 、メタセシス反応など)を行う場合、PCPの細孔内部を疎水性にし、細孔サイズを制御することで、あるサイズをもった有機物(基質)しか取り込むことができないように設計し、選択的に反応させることができ、マイルドな条件でかつ高い選択性を有する有用な有機反応触媒にもなる。また、細孔内に不飽和サイトを付与することにより、例えば二重結合を有するオレフィンのみを吸着させ、反応させることもできる。このようにPCPの細孔径、細孔内の性質(疎水性・親水性)、不飽和サイトを考慮することで目的の基質のみを高効率かつ高選択的に反応させることができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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