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明細書 :磁気共鳴イメージング装置及び画像処理装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-039407 (P2015-039407A)
公開日 平成27年3月2日(2015.3.2)
発明の名称または考案の名称 磁気共鳴イメージング装置及び画像処理装置
国際特許分類 A61B   5/055       (2006.01)
FI A61B 5/05 311
A61B 5/05 380
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2013-170529 (P2013-170529)
出願日 平成25年8月20日(2013.8.20)
発明者または考案者 【氏名】伏見 育崇
【氏名】坂下 尚孝
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
個別代理人の代理人 【識別番号】100089118、【弁理士】、【氏名又は名称】酒井 宏明
審査請求 未請求
テーマコード 4C096
Fターム 4C096AA20
4C096AB04
4C096AC01
4C096AD06
4C096AD14
4C096BA50
4C096DC18
4C096DC36
要約 【課題】脳脊髄液(CSF:cerebrospinal fluid)における酸素による造影効果を解析することが可能な磁気共鳴イメージング装置及び画像処理装置を提供する。
【解決手段】シーケンス制御部120と、解析部133bとを備える。シーケンス制御部120は、脳脊髄液が流れる撮像対象部位の磁気共鳴信号を、被検体による酸素吸入期間内の複数の時相にて収集する。解析部133bは、複数の時相にて収集された磁気共鳴信号を解析する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
脳脊髄液が流れる撮像対象部位の磁気共鳴信号を、被検体による酸素吸入期間内の複数の時相にて収集するシーケンス制御部と、
前記複数の時相にて収集された磁気共鳴信号を解析する解析部と
を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記酸素吸入期間は、酸素吸入前の期間、酸素吸入中の期間、及び酸素吸入後の期間のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記シーケンス制御部は、酸素吸入中における脳脊髄液の信号値の時間的な変化を解析可能な時間分解能により、前記磁気共鳴信号を複数の時相にて収集することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記解析部は、各時相にて収集された磁気共鳴信号を用いて再構成された各磁気共鳴画像から、脳脊髄液が存在する脳脊髄液領域を更に細分化した個別領域を抽出し、抽出した領域毎に、解析を行うことを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記解析部は、前記個別領域として脳溝部の領域と脳室部の領域とを抽出し、抽出した領域毎に、解析を行うことを特徴とする請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記解析部は、前記個別領域毎に脳脊髄液の信号値の統計値を算出し、算出した統計値を時系列にプロットしたグラフを生成し、生成したグラフを表示部に表示することを特徴とする請求項4又は5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記解析部は、各時相にて収集された磁気共鳴信号のうち、少なくとも2つの時相に対応する磁気共鳴信号を用いて再構成された少なくとも2つの時相に対応する磁気共鳴画像同士の差分画像を算出し、算出した差分画像を表示部に表示することを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記解析部は、酸素吸入が停止される直前の時相に対応する磁気共鳴画像と、酸素吸入が開始される直前の時相に対応する磁気共鳴画像との差分画像を算出し、算出した差分画像を表示部に表示することを特徴とする請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記解析部は、酸素吸入が停止された後の時相に対応する磁気共鳴画像と、酸素吸入が停止される直前の時相に対応する磁気共鳴画像との差分画像を算出し、算出した差分画像を表示部に表示することを特徴とする請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
磁気共鳴イメージング装置によって、被検体による酸素吸入期間内の複数の時相にて収集された、脳脊髄液が流れる撮像対象部位の磁気共鳴信号、又は、前記磁気共鳴信号から再構成された磁気共鳴画像を記憶する記憶部と、
前記磁気共鳴信号又は前記磁気共鳴画像に基づいて、酸素吸入中における、脳脊髄液の信号値の時間的な変化を解析する解析部と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)は、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをそのラーモア(Larmor)周波数のRF(Radio Frequency)パルスによって磁気的に励起し、この励起に伴って発生する磁気共鳴信号から画像を生成する撮像法である。
【0003】
この磁気共鳴イメージングの分野においては、酸素による造影効果というものが知られている。例えば、反転パルスを印加してから脳脊髄液(CSF:cerebrospinal fluid)の縦磁化成分が0になるまでの時間をTI(Inversion Time)として設定するFLAIR(Fluid Attenuated Inversion Recovery)法と呼ばれる撮像法がある。酸素供給下でこのFLAIR法を用いて撮像した場合に、CSFのコントラストに変化が生じることが報告されている。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】American Journal Of Neuroradiology 2003;24(9):1863-8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、脳脊髄液(CSF)における酸素による造影効果を解析することが可能な磁気共鳴イメージング装置及び画像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、シーケンス制御部と、解析部とを備える。シーケンス制御部は、脳脊髄液が流れる撮像対象部位の磁気共鳴信号を、被検体による酸素吸入期間内の複数の時相にて収集する。解析部は、前記複数の時相にて収集された磁気共鳴信号を解析する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成を示す機能ブロック図。
【図2】図2は、第1の実施形態におけるパルスシーケンスを説明するための図。
【図3】図3は、第1の実施形態におけるCSFの信号値を説明するための図。
【図4】図4は、第1の実施形態における撮像の処理手順を示すフローチャート。
【図5】図5は、第1の実施形態における解析の処理手順を示すフローチャート。
【図6】図6は、第1の実施形態におけるマスクを説明するための図。
【図7】図7は、第1の実施形態におけるダイナミックカーブを説明するための図。
【図8】図8は、第1の実施形態における解析の処理手順を示すフローチャート。
【図9】図9は、第1の実施形態における差分画像を説明するための図。
【図10】図10は、第1の実施形態における差分画像を説明するための図。
【図11】図11は、第2の実施形態におけるパルスシーケンスを説明するための図。
【図12】図12は、第2の実施形態におけるダイナミックカーブを説明するための図。
【図13】図13は、第2の実施形態における差分画像を説明するための図。
【図14】図14は、CSFの流れを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置及び画像処理装置を説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、各実施形態において説明する内容は、原則として、他の実施形態においても同様に適用することができる。

【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置100の構成を示す機能ブロック図である。図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石101と、静磁場電源102と、傾斜磁場コイル103と、傾斜磁場電源104と、寝台105と、寝台制御部106と、送信コイル107と、送信部108と、受信コイル109と、受信部110と、シーケンス制御部120と、計算機130とを備える。なお、MRI装置100に、被検体P(例えば、人体)は含まれない。また、図1に示す構成は一例に過ぎない。例えば、シーケンス制御部120及び計算機130内の各部は、適宜統合若しくは分離して構成されてもよい。

【0010】
静磁場磁石101は、中空の円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に静磁場を発生する。静磁場磁石101は、例えば、超伝導磁石等であり、静磁場電源102から電流の供給を受けて励磁する。静磁場電源102は、静磁場磁石101に電流を供給する。なお、静磁場磁石101は、永久磁石でもよく、この場合、MRI装置100は、静磁場電源102を備えなくてもよい。また、静磁場電源102は、MRI装置100とは別に備えられてもよい。

【0011】
傾斜磁場コイル103は、中空の円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石101の内側に配置される。傾斜磁場コイル103は、互いに直交するX、Y、及びZの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、傾斜磁場電源104から個別に電流の供給を受けて、X、Y、及びZの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生する。傾斜磁場電源104は、傾斜磁場コイル103に電流を供給する。

【0012】
寝台105は、被検体Pが載置される天板105aを備え、寝台制御部106による制御の下、天板105aを、被検体Pが載置された状態で、傾斜磁場コイル103の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、寝台105は、長手方向が静磁場磁石101の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御部106は、計算機130による制御の下、寝台105を駆動して天板105aを長手方向及び上下方向へ移動する。

【0013】
送信コイル107は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、送信部108からRFパルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。送信部108は、対象とする原子の種類及び磁場強度で定まるラーモア周波数に対応するRFパルスを送信コイル107に供給する。

【0014】
受信コイル109は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、高周波磁場の影響によって被検体Pから発せられる磁気共鳴(MR:Magnetic Resonance)信号を受信する。受信コイル109は、MR信号を受信すると、受信したMR信号を受信部110へ出力する。

【0015】
なお、上述した送信コイル107及び受信コイル109は一例に過ぎない。送信機能のみを備えたコイル、受信機能のみを備えたコイル、若しくは送受信機能を備えたコイルのうち、1つ若しくは複数を組み合わせることによって構成されればよい。

【0016】
受信部110は、受信コイル109から出力されるMR信号を検出し、検出したMR信号に基づいてMRデータを生成する。具体的には、受信部110は、受信コイル109から出力されるMR信号をデジタル変換することによってMRデータを生成する。また、受信部110は、生成したMRデータをシーケンス制御部120へ送信する。なお、受信部110は、静磁場磁石101や傾斜磁場コイル103等を備える架台装置側に備えられてもよい。

【0017】
シーケンス制御部120は、計算機130から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源104、送信部108及び受信部110を駆動することによってパルスシーケンスを実行し、被検体Pの撮像を行う。ここで、シーケンス情報は、撮像を行うための手順を定義した情報である。シーケンス情報には、傾斜磁場電源104が傾斜磁場コイル103に供給する電流の強さや電流を供給するタイミング、送信部108が送信コイル107に供給するRFパルスの強さやRFパルスを印加するタイミング、受信部110がMR信号を検出するタイミング等が定義される。例えば、シーケンス制御部120は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサである。

【0018】
なお、シーケンス制御部120は、傾斜磁場電源104、送信部108及び受信部110を駆動して被検体Pを撮像した結果、受信部110からMRデータを受信すると、受信したMRデータを計算機130へ転送する。

【0019】
計算機130は、MRI装置100の全体制御や、MR画像の生成等を行う。計算機130は、インタフェース部131、記憶部132、制御部133、入力部134、表示部135、及び画像生成部136を備える。

【0020】
インタフェース部131は、シーケンス情報をシーケンス制御部120へ送信し、シーケンス制御部120からMRデータを受信する。また、インタフェース部131は、MRデータを受信すると、受信したMRデータを記憶部132に格納する。記憶部132に格納されたMRデータは、制御部133によってk空間に配置される。この結果、記憶部132は、k空間データを記憶する。

【0021】
記憶部132は、インタフェース部131によって受信されたMRデータや、制御部133によってk空間に配置されたk空間データ、画像生成部136によって生成された画像データ等を記憶する。例えば、記憶部132は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等である。

【0022】
入力部134は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。入力部134は、例えば、マウスやトラックボール等のポインティングデバイス、キーボード等の入力デバイスである。表示部135は、制御部133による制御の下、撮像条件の入力を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、画像生成部136によって生成されたMR画像等を表示する。表示部135は、例えば、液晶モニタ等の表示デバイスである。

【0023】
制御部133は、MRI装置100の全体制御を行い、撮像やMR画像の生成、MR画像の表示等を制御する。例えば、制御部133は、CPU、MPU等のプロセッサである。また、制御部133は、図1に示すように、撮像条件設定部133a及び解析部133bを有する。撮像条件設定部133aは、撮像条件の入力をGUI上で受け付け、受け付けた撮像条件に従ってシーケンス情報を生成する。また、撮像条件設定部133aは、生成したシーケンス情報をシーケンス制御部120へ送信する。

【0024】
解析部133bは、各時相のMR画像から、CSFが存在するCSF領域を更に細分化した個別領域(例えば、脳溝部の領域、脳室部の領域)を抽出し、抽出した領域毎に解析を行う。また、解析部133bは、個別領域毎にCSFの信号値の統計値(例えば、平均値)を算出し、算出した統計値を時系列にプロットしたグラフを生成し、生成したグラフを表示部135に表示する。また、解析部133bは、少なくとも2つの時相に対応するMR画像同士の差分画像を算出し、算出した差分画像を表示部135に表示する。なお、解析部133bによる処理の詳細は、後述する。

【0025】
画像生成部136は、k空間データを記憶部132から読み出し、読み出したk空間データにフーリエ変換等の再構成処理を施すことで、MR画像を生成する。

【0026】
第1の実施形態においては、「脳」を撮像対象部位としてCSFの動態を撮像する例を説明する。具体的には、第1の実施形態に係るシーケンス制御部120は、酸素吸入下におけるCSFの動態を捉えるべく、酸素吸入下、脳のスライス像(2次元断面像)を酸素吸入期間内の複数の時相にて収集する。なお、酸素吸入期間とは、酸素吸入前の期間、酸素吸入中の期間、及び酸素吸入後の期間のうち、少なくとも1つを含む期間である。

【0027】
図2は、第1の実施形態におけるパルスシーケンスを説明するための図である。図2では、スライス選択傾斜磁場、読み出し傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場を省略し、RFパルスの印加タイミングを示している。図2に示すように、第1の実施形態において、シーケンス制御部120は、酸素吸入前後を含む酸素吸入期間の全体に亘り、およそ数秒から数十秒の時間分解能で、脳のスライス像を連続的に収集し続ける。なお、図2においては、酸素吸入開始の経過時間が「300sec」であり、酸素吸入停止の経過時間が「600sec」の例を示すが、一例に過ぎない。

【0028】
また、第1の実施形態においては、FASE(Fast Asymmetric Spin Echo)法に、縦磁化を反転させるIR(Inversion Recovery)パルスを組み合わせたパルスシーケンスを用いる例を説明する。図2に示すように、各TR(Repetition Time)において、シーケンス制御部120は、まず、図示しないトリガ信号(例えば、心電信号、脈波信号、呼吸信号等の生体信号や、MRI装置100のクロック)から所定の遅延時間経過後、IRパルス(領域・周波数非選択のIRパルス)を印加する。この結果、撮像領域内の組織の縦磁化は反転するので、撮像領域内のCSFの縦磁化も反転する。

【0029】
続いて、シーケンス制御部120は、IRパルスの印加後、所定のTI経過後、撮像領域に関して励起パルス(例えば、90°)を印加し、続いてリフォーカスパルス(例えば、180°)を連続的に印加する。このリフォーカスパルスの印加に伴い、複数のMR信号が次々に発生する。FASE法のシングルショットでは、この1TRで収集された複数のMR信号それぞれに異なる位相エンコードを与え、1TRで収集された複数のMR信号から1つのスライス像を再構成する。なお、第1の実施形態において、このTIには、後述するように、CSFのT1値を目安に適切な値が設定される。また、第1の実施形態において、TRは、数秒から数十秒といったオーダーである。これは、酸素吸入中におけるCSFの信号値の時間的な変化を解析可能な時間分解能である。もっとも、実施形態はこれに限られるものではない。TRは、CSFの動態観察に求められる時間分解能であることの他、CSFの縦磁化の回復、高速撮像法との兼ね合い等により、適宜設定することができる。

【0030】
そして、シーケンス制御部120は、図2に示すように、上述した撮像を繰り返すことで、酸素吸入前後を含む酸素吸入期間の全体に亘り、時相t、時相t+1、時相t+2、といったように、脳のスライス像を連続的に収集し続ける。トリガ信号に従ってイメージングを行う場合は、同一スライスに関して、トリガ信号から所定の遅延時間(同じ遅延時間)後に上述した撮像を繰り返す。これにより、トリガ信号から同じスライス位置・撮像タイミングの異なる時相の複数枚の断層像が得られる。即ち、酸素吸入前後を含む酸素吸入期間の全体に亘り、時相t、時相t+1、時相t+2、といったように、予め定められた期間について脳のスライス像を連続的に収集する。

【0031】
図3は、第1の実施形態におけるCSFの信号値を説明するための図である。上述したように、第1の実施形態において、TIには、CSFのT1値を目安に適切な値が設定される。この点を説明すると、まず、領域を選択せずにIRパルスが印加されることで、図3に示すように、撮像領域内のCSFの縦磁化は、「+Mz」から「-Mz」に反転する。その後CSFの縦磁化は徐々に回復し、やがて、縦磁化が0となるヌルポイントに到達する。縦磁化が反転したタイミングからヌルポイントに到達するまでの時間は、「CSFのT1値」に対応しており、CSFのT1値から計算したり、或いは後述の準備スキャンにより適切な値が設定される。

【0032】
ところで、酸素による造影効果は、酸素によるT1値短縮効果であると考えられる。即ち、酸素吸入時のCSFにおいては、図3の点線に示すように、縦磁化の回復が早まり、ヌルポイントが前倒しになると考えられる。すると、酸素吸入下でないCSFのT1値を目安に設定されたTIによって撮像が行われた場合、CSFの本来のヌルポイントにおいて、酸素吸入下のCSFは信号値を有しており、酸素吸入下の信号値と、酸素吸入下でない信号値との間には、図3に示すような、信号値の変化(差)が存在する。第1の実施形態においては、酸素吸入下におけるこの信号値の変化に着目し、CSFが存在する領域を積極的に描出すべく、酸素吸入下でないCSFのT1値を目安にTIに設定して撮像を行う。CSFのT1値に応じてTRを設定すると考えてもよい。CSFのT1値は1,000msec以上であり、TRはT1値より長く設定されるのが好ましい。実効TE(Echo Time)は、任意の値で良いが、例えば、CSFのヌルポイント付近の時刻に設定してもよい。なお、IRパルスを印加しない場合も、TRをT1値より長く設定しなくてもよいが、T1値に応じた最適な値とするのが好ましい。

【0033】
図4は、第1の実施形態における撮像の処理手順を示すフローチャートである。なお、通常、図4に示す処理の前に、操作者は、撮像条件入力用のGUI上で、脳のMR画像を得るための一連のプロトコル群(例えば、位置決め画像収集用のプロトコル、感度マップ撮像用のプロトコル、シミング撮像用のプロトコル、イメージングスキャン用のプロトコル等)を選択済みである。シーケンス制御部120は、選択された一連のプロトコル群に従って、図4に示す各種処理を実行する。

【0034】
上述したように、第1の実施形態においては、被検体Pに酸素吸入をさせながら撮像をすることを想定する。このため、図4に示すように、まず、被検体Pに酸素マスクが装着され、シールドルーム外に設置された酸素ボンベ等により、管を通して酸素が供給される状態に準備される(ステップS101)。なお、酸素マスクは、外部からの空気が混入しないように、十分に密閉して装着される。また、酸素の供給は、外部からの調整を可能なようにする。

【0035】
続いて、シーケンス制御部120は、位置決め画像の収集や、感度マップ撮像、シミング撮像等の各種準備スキャンを実行する(ステップS102)。例えば、シーケンス制御部120は、脳のスライス像の撮像位置を設定するための位置決め画像として、被検体Pの脳のコロナル像及びサジタル像を撮像し、これらの位置決め画像を表示部135に表示する。すると、例えば、操作者が、表示部135に表示された位置決め画像上でスライス像の撮像位置を指定し、撮像条件設定部133aが、指定された撮像位置を、スライス像の撮像位置として設定する(ステップS103)。

【0036】
第1の実施形態において、スライス像の撮像位置は、例えば、脳の代表的なアキシャル像を得ることができる位置に設定される。例えば、前交連(AC:Anterior Commissure)上端と、後交連(PC:Posterior Commissure)下端とを結ぶAC-PCラインの位置に設定される。あるいは、サジタル像上のシルビウス溝を若干傾けたラインの位置に設定される。あるいは、視床基底核や脳梁等、脳内の主たる構造物を含むように設定される。

【0037】
続いて、シーケンス制御部120は、イメージングスキャンを実行する(ステップS14)。例えば、第1の実施形態において、シーケンス制御部120は、ステップS103で設定された撮像位置を撮像領域として、FASE法にIRパルスを組み合わせたパルスシーケンスを実行する。また、第1の実施形態において、シーケンス制御部120は、酸素吸入前後を含む酸素吸入期間の全体に亘り、脳のスライス像を連続的に収集し続ける。このため、シーケンス制御部120は、図2に示すように、酸素吸入を開始する前の「酸素吸入前」の期間、酸素吸入中の「酸素吸入中」の期間、及び、酸素吸入を停止した後の「酸素吸入後」の期間それぞれについて、CSFの動態観察に求められる十分な時間を設ける。

【0038】
例えば、1,200秒間の撮像において、経過時間300秒のタイミングで、被検体Pに対する酸素供給が開始され、経過時間600秒のタイミングで、被検体Pに対する酸素供給が停止される。なお、この酸素供給の開始や停止のタイミングは、操作者によって手動で制御されてもよいし、あるいは、撮像条件の1つとして事前に設定され、酸素供給の装置と連動して、自動的に行われてもよい。

【0039】
こうして、シーケンス制御部120による制御によって収集されたMRデータは、計算機130へと転送され、計算機130の画像生成部136が、MR画像を生成し、表示部135に表示する(ステップS105)。

【0040】
以上が、第1の実施形態における撮像の処理手順であるが、実施形態はこれに限られるものではなく、撮像の処理手順は、運用の形態等に応じて適宜変更される。例えば、「脳」を撮像対象部位とした1つの検査には、通常、複数のイメージングスキャンが含まれる。即ち、酸素吸入下で行う図2のイメージングスキャンのみならず、例えば、酸素吸入を行わずに脳全体の3次元のT1強調画像を収集するイメージングスキャンや、同じく酸素吸入を行わずに脳全体の3次元のT2強調画像を収集するイメージングスキャン等、1つの検査において、様々なイメージングスキャンが、操作者による操作を適宜挿入しながら、連続的に実行される。

【0041】
このような場合、例えば、図4のステップS103の撮像位置の設定は、必ずしも、ステップS102で収集された位置決め画像上で行われなければならないものではない。撮像位置の設定は、連続的に実行される複数のイメージングスキャンのうち、前段のイメージングスキャンで収集され、生成されたMR画像を利用して、そのMR画像上で行われてもよい。また、ステップS105のMR画像の生成や表示も、必ずしも撮像の処理手順の中で行われなければならないものではない。例えば、MR画像の生成や表示は、後述する解析の処理手順の中で行われてもよい。

【0042】
図5は、第1の実施形態における解析の処理手順を示すフローチャートである。なお、第1の実施形態においては、主に2つの解析手法を想定するが、図5は、解析手法1の処理手順である。

【0043】
まず、解析部133bは、解析対象のMR画像を記憶部132から読み出し、読み出したMR画像に対して画像処理を施すことで、このMR画像から、CSFが存在する領域(CSF領域)を抽出する(ステップS201)。なお、CSF領域の抽出やマスクの生成に用いられるMR画像は、図4の撮像の処理手順で収集された、複数の時相に対応するMR画像群のうちの1つを用いてもよいし、MR画像群の平均画像を用いてもよいし、あるいは別途収集されたMR画像(例えば、別のイメージングスキャンで収集された3次元のT1強調画像)を用いてもよい。

【0044】
例えば、解析部133bは、SPM(Statistical Parametric Mapping)と呼ばれる画像解析ソフトによって、Realignment(位置合わせ)、Normalization(基準化)、Smoothing(平滑化)、Statistical Analysis(統計処理)の4つの過程を含む画像解析を行い、MR画像からCSF領域を抽出する。そして、解析部133bは、抽出したCSF領域を、CSF領域全体のマスクf(x,y)とする。例えば、マスクf(x,y)では、CSF領域のピクセルに「1」、CSF領域以外のピクセルに「0」が割り当てられる。なお、CSF領域を抽出する手法は、SPMに限られるものではなく、他の画像解析の手法(例えば、閾値処理)によってもよい。

【0045】
続いて、解析部133bは、ステップS201で抽出されたCSF領域を脳溝(cerebral sulcus)部の領域と脳室(brain ventricle)部の領域とに識別し、脳溝部のマスク及び脳室部のマスクそれぞれを生成する(ステップS202)。なお、CSF領域を脳溝部の領域と脳室部の領域とに識別した理由は、血管が多く酸素供給が多い領域とそうでない領域との間に有意な差異が現れるのではないかと考えたためである。

【0046】
例えば、解析部133bは、解析対象のMR画像を表示部135に表示し、操作者から、例えば、円形のROI(Region Of Interest)の指定を受け付ける。脳室部は目視による確認が比較的容易であるので、操作者は、脳室部を囲むように、円形のROIを指定する。すると、解析部133bは、ステップS201で生成したCSF領域全体のマスクf(x,y)と、操作者から指定されたROIのマスクg(x,y)とをピクセル同士で乗算することで、脳室部のマスクfv(x,y)を生成する。即ち、fv(x,y)=f(x,y)×g(x,y)である。「×」は、ピクセル毎の乗算を意味する。また、マスクfv(x,y)では、脳室部の領域のピクセルに「1」、脳室部の領域以外のピクセルに「0」が割り当てられる。

【0047】
また、例えば、解析部133bは、CSF領域全体のマスクf(x,y)から脳室部のマスクfv(x,y)をピクセル同士で減算することで、脳溝部のマスクfs(x,y)を生成する。即ち、fs(x,y)=f(x,y)-fv(x,y)である。「-」は、ピクセル毎の減算を意味する。また、マスクfs(x,y)では、脳溝部の領域のピクセルに「1」、脳溝部の領域以外のピクセルに「0」が割り当てられる。

【0048】
図6は、第1の実施形態におけるマスクを説明するための図である。例えば、図6に示すように、解析部133bは、MR画像から、脳溝部のマスクfs(x,y)及び脳室部のマスクfv(x,y)を生成する。

【0049】
続いて、解析部133bは、図4の撮像の処理手順で収集されたMR画像群に含まれる各時相のMR画像それぞれに対して、ステップS202で生成された脳溝部のマスク及び脳室部のマスクを適用し、各MR画像から、脳溝部の領域及び脳室部の領域それぞれの信号値を抽出する(ステップS203)。即ち、解析部133bは、各時相のMR画像それぞれに対して、脳溝部のマスクfs(x,y)及び脳室部のマスクfv(x,y)を乗算することで、各MR画像から、脳溝部の領域及び脳室部の領域それぞれの信号値を抽出する。

【0050】
そして、解析部133bは、脳溝部の領域及び脳室部の領域それぞれについて、信号値を時系列にプロットしたダイナミックカーブのグラフを生成し、表示部135に表示する(ステップS204)。

【0051】
図7は、第1の実施形態におけるダイナミックカーブを説明するための図である。例えば、解析部133bは、各MR画像から抽出した脳溝部の領域及び脳室部の領域それぞれの信号値(画素値)について、平均値を求める。そして、解析部133bは、図7に示すように、脳溝部の領域及び脳室部の領域それぞれについて、縦軸を信号強度(SI:Signal Intensity)、横軸を経過時間(秒)とするグラフを生成し、各時相の画素値の平均値をプロットし、各プロット点を線で結ぶことでダイナミックカーブを表示する。また、図7に示す例では、信号強度1,000での正規化も行っている。図7の(A)は、脳溝部の領域(CSFs)のダイナミックカーブであり、(B)は、脳室部の領域(CSFv)のダイナミックカーブである。

【0052】
なお、図7においては、説明の便宜上、「酸素吸入前(Pre-O2)」、「酸素吸入中(O2)」、「酸素吸入後(Post-O2)」それぞれの期間を線種の違いで表現したが、例えば、それぞれの期間毎に線の色を変えて表現してもよい。例えば、解析部133bは、「酸素吸入前(Pre-O2)」のダイナミックカーブを青色の線で表現し、「酸素吸入中(O2)」のダイナミックカーブを赤色の線で表現し、「酸素吸入後(Post-O2)」のダイナミックカーブを緑色の線で表現する等、色を変えて表現してもよい。

【0053】
また、例えば、解析部133bは、「酸素吸入前(Pre-O2)」と「酸素吸入中(O2)」との境界、及び、「酸素吸入中(O2)」と「酸素吸入後(Post-O2)」との境界を、縦方向の点線によって明示してもよい。

【0054】
図7の(A)及び(B)に示されるように、酸素吸入が開始されると直ぐに、CSF領域の画素値に変化が現れることが分かる。また、同様に、酸素吸入が停止されると直ぐに、CSF領域の画素値に変化が現れることが分かる。また、図7の(A)及び(B)に示されるように、脳溝部の方が脳室部に比較してその変化の度合いが大きいことから、脳溝部の方が脳室部に比較して酸素の造影効果が大きいと考えられる。また、この脳溝部のダイナミックカーブに現れているように、酸素吸入が開始されると直ぐに上昇した画素値は、ある値に達したところで飽和状態に達しているようにも観察される。

【0055】
なお、図7においては、「酸素吸入前(Pre-O2)」、「酸素吸入中(O2)」、「酸素吸入後(Post-O2)」それぞれの期間全てに亘るダイナミックカーブを生成して表示する例を説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、いずれか1つ若しくは2つの期間のダイナミックカーブを生成してもよい。また、例えば、各期間に含まれる時相の数を減らして、ダイナミックカーブを生成してもよい。例えば、「酸素吸入前(Pre-O2)」については、少なくとも「酸素吸入中(O2)」の期間における信号値の時間的変化が分かるように、「酸素吸入中(O2)」の期間に入る直前の時相についてのみ、信号値をプロットしてもよい。

【0056】
次に、図8は、第1の実施形態における解析の処理手順を示すフローチャートである。なお、上述したように、第1の実施形態においては、主に2つの解析手法を想定するが、図8は、解析手法2の処理手順である。

【0057】
まず、解析部133bは、図4の撮像の処理手順で収集された、複数の時相に対応するMR画像群のうち、少なくとも2時相分のMR画像を記憶部132から読み出す(ステップS301)。例えば、第1の実施形態において、解析部133bは、酸素吸入が開始される直前の時相に対応するMR画像(Pre-O2)、酸素吸入が停止される直前の時相に対応するMR画像(O2)、及び、酸素吸入が停止された後の時相(所望の時相)に対応するMR画像(Post-O2)を記憶部132から読み出す。

【0058】
続いて、解析部133bは、読み出したMR画像同士の差分画像を生成し、表示部135に表示する(ステップS302)。例えば、解析部133bは、酸素吸入中の時相に対応するMR画像(O2)から、酸素吸入前の時相に対応するMR画像(Pre-O2)を差分する差分処理を施す。また、例えば、解析部133bは、酸素吸入前、酸素吸入中、酸素吸入後のいずれか、例えば酸素吸入前の多時相のMR画像群(Pre-O2)に対して平均化処理を施す。また、解析部133bは、酸素吸入前、酸素吸入中、酸素吸入後の少なくとも2つの期間に関して、期間毎に平均化処理したMR画像を差分する差分処理を施す。

【0059】
図9及び10は、第1の実施形態における差分画像を説明するための図である。図9の(A)は、酸素吸入が停止される直前の時相に対応するMR画像(O2)から、酸素吸入が開始される直前の時相に対応するMR画像(Pre-O2)を差し引いた差分画像である。酸素吸入に伴う酸素の造影効果によってCSFの画素値は高くなるため、この差分画像においては、酸素の造影効果によって変化が現れたCSFが白く描出される。

【0060】
一方、図9の(B)は、酸素吸入が停止された後の時相に対応するMR画像(Post-O2)から、酸素吸入が停止される直前の時相に対応するMR画像(O2)を差し引いた差分画像である。酸素吸入に伴う酸素の造影効果が解消されてCSFの画素値は低くなるため、この差分画像においては、変化が現れたCSFが黒く描出される。

【0061】
また、解析部133bは、図10に示すように、CSFの画素値の変化の度合いに応じて色を割りあてたカラーマッピング画像を生成してもよい。図10の(A)は、複数の時相のMR画像群の平均画像である。また、(B)は、酸素吸入が停止される直前の時相に対応するMR画像(O2)から、酸素吸入が開始される直前の時相に対応するMR画像(Pre-O2)を差し引いた差分画像であり、差分により算出された画素値に応じて、カラーを割り当てたカラーマッピング画像である。また、(C)は、酸素吸入が停止された後の時相に対応するMR画像(Post-O2)から、酸素吸入が停止される直前の時相に対応するMR画像(O2)を差し引いた差分画像であり、差分により算出された画素値に応じて、カラーを割り当てたカラーマッピング画像である。(B)及び(C)のカラーマッピング画像の右横には、カラーバーが表示されている。

【0062】
図10においては、説明の便宜上、カラーを、濃淡の違いで表現しているが、解析部133bは、例えば、画素値の大きいものから順に、黄色・赤色・黒色・青色・水色のような色の割り当てに従って、カラーマッピング画像を生成する。

【0063】
上述してきたように、第1の実施形態によれば、被検体Pの酸素吸入下、高時間分解能で脳のスライス像が連続的に収集され、収集された複数の時相のスライス像群からCSFの動態が解析されるので、酸素による造影効果の時間的な変化を解析することが可能になる。また、第1の実施形態によれば、例えば、CSF領域が脳溝部の領域と脳室部の領域とに区分けされて解析されるので、酸素による造影効果の空間的な違いを解析することが可能になる。このように、第1の実施形態によれば、CSFの時間的及び/又は空間的な酸素の造影効果を評価することができ、脳血管障害やCSF自体の障害の診断等における新しい臨床的知見を見出すことができる。

【0064】
(第2の実施形態)
続いて、第2の実施形態を説明する。第1の実施形態においては、FASE法にIRパルスを組み合わせたパルスシーケンスを用いる例を説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。第2の実施形態においては、シーケンス制御部120が、IRパルスを組み合わせないFASE法のパルスシーケンスを用いる例を説明する。なお、第2の実施形態におけるMRI装置100は、第1の実施形態におけるMRI装置100と同様の構成を備える。

【0065】
図11は、第2の実施形態におけるパルスシーケンスを説明するための図である。第2の実施形態においては、IRパルスの印加を伴わず、CSFの縦磁化の回復を考慮する必要がないため、図2と図11とを比較すると分かるように、第1の実施形態に比較して、TRを短くすることができる。この結果、第2の実施形態においては、時間分解能をより高くすることが可能である。もっとも、第2の実施形態においては、IRパルスの印加による縦磁化の反転がないため、CSFの信号値の変化として現れる酸素の造影効果は、第1の実施形態のようにヌルポイントとの差分として現れる場合に比較すると、小さいものになり易い。

【0066】
撮像の処理手順や解析の処理手順は、第2の実施形態においても、第1の実施形態にて説明したものと同様に実現することができる。図12は、第2の実施形態におけるダイナミックカーブを説明するための図であり、図13は、第2の実施形態における差分画像を説明するための図である。

【0067】
第1の実施形態と同様、解析部133bは、図12に示すように、脳溝部の領域及び脳室部の領域それぞれについて、縦軸を信号強度、横軸を経過時間(秒)とするグラフを生成し、各時相の画素値の平均値をプロットし、各プロット点を線で結ぶことでダイナミックカーブを表示する。図12の(A)は、脳溝部の領域(CSFs)のダイナミックカーブであり、(B)は、脳室部の領域(CSFv)のダイナミックカーブである。

【0068】
図7に示すダイナミックカーブと、図12に示すダイナミックカーブとでは、縦軸のスケールに違いがある。即ち、第2の実施形態における画素値の変化は、第1の実施形態に比較して極めて小さいことが分かる。また、図7に示すダイナミックカーブと、図12に示すダイナミックカーブとでは、第2の実施形態におけるダイナミックカーブの方が、時間分解能が高いことが分かる。

【0069】
また、第1の実施形態と同様、解析部133bは、図13に示すように、CSFの画素値の変化の度合いに応じて色を割りあてたカラーマッピング画像を生成してもよい。図13の(A)は、複数の時相のMR画像群の平均画像である。また、(B)は、酸素吸入が停止される直前の時相に対応するMR画像(O2)から、酸素吸入が開始される直前の時相に対応するMR画像(Pre-O2)を差し引いた差分画像であり、差分により算出された画素値に応じて、カラーを割り当てたカラーマッピング画像である。また、(C)は、酸素吸入が停止された後の時相に対応するMR画像(Post-O2)から、酸素吸入が停止される直前の時相に対応するMR画像(O2)を差し引いた差分画像であり、差分により算出された画素値に応じて、カラーを割り当てたカラーマッピング画像である。なお、解析部133bは、第1の実施形態と同様、カラーマッピング画像でない、図9相当の差分画像を生成して表示してもよい。

【0070】
(その他の実施形態)
なお、実施形態は、上述した実施形態に限られるものではない。

【0071】
(3次元データの収集)
上述した実施形態においては、酸素吸入下におけるCSFの動態を捉えるべく、シーケンス制御部120が、酸素吸入下、脳のスライス像(2次元断面像)を複数の時相にて収集する手法を説明した。しかしながら、実施形態はこれに限られるものではなく、脳全体の3次元データを収集してもよい。例えば、第2の実施形態においては、IRパルスを組み合わせないFASE法のパルスシーケンスを用いる例を説明した。この場合は、CSFの縦磁化の回復を考慮する必要がないため、TRを比較的短くすることができた。例えば、シーケンス制御部120は、このパルスシーケンスを利用して、3次元データを収集してもよい。

【0072】
また、例えば、シーケンス制御部120は、時間分解能を下げることで、3次元データを収集してもよい。その他、例えば、シーケンス制御部120は、パラレルイメージング(PI:Parallel Imaging)法等の高速撮像法を利用して、3次元データを収集してもよい。

【0073】
(セグメンテーション)
上述した実施形態においては、セグメンテーションの一例として、CSF領域を、脳溝部の領域と脳室部の領域とにセグメンテーションする例を説明したが、実施形態はこれに限られるものではなく、解析の目的等に応じたセグメンテーションを適用すればよい。例えば、CSF領域を、脳の左右でセグメンテーションしてもよいし、又は、ピクセル単位若しくは複数のピクセル群単位でセグメンテーションしてもよい。

【0074】
(準備スキャンによりTIを設定)
上述した実施形態においては、TIに、CSFのT1値を目安に適切な値が設定される例を説明したが、例えば、適切なTIを準備スキャンで求めてもよい。例えば、シーケンス制御部120は、CSFのT1値を目安にTIを変化させながら準備スキャンを行い、その結果得られたMR画像やMR信号を自動若しくは操作者による手動によって解析し、適切なTIを求めてもよい。例えば、シーケンス制御部120は、図4に示したステップS104の前段でこの準備スキャンを行う。例えば、シーケンス制御部120は、TR毎にTIを変えながら、TR毎に1枚のスライス像を収集する。その後、例えば、シーケンス制御部120は、収集した複数枚のスライス像を解析して、酸素の造影効果が最も顕著に現れる(推測される)スライス像を特定し、特定したスライス像に対応するTIを、イメージングスキャンのTIとして設定する。あるいは、例えば、シーケンス制御部120は、収集した複数枚のスライス像を表示部135に表示し、操作者からスライス像の指定を受け付けることで、酸素の造影効果が最も顕著に現れるスライス像を特定してもよい。

【0075】
なお、準備スキャンの手法は上述した手法に限られるものではない。例えば、シーケンス制御部120は、1TR内において異なるTIのMR信号(例えば、1セグメント分)を連続的に収集してもよい。この場合、シーケンス制御部120は、例えば1セグメント分のMR信号を解析して、適切なTIを求めてもよいし、その解析結果を表示部135に表示して、操作者からの指定を受け付けてもよい。また、シーケンス制御部120は、複数のTRに亘って1スライス像分のMR信号が収集された場合には、上述した手法と同様にTI毎にスライス像を生成し、そのスライス像を解析したり、表示部135に表示する等して、所望のスライス像を特定してもよい。

【0076】
(パルスシーケンス)
上述した実施形態においては、酸素の造影効果を観測し易いパルスシーケンスとして、FASE法にIRパルスを組み合わせたパルスシーケンスや、IRパルスを組み合わせないFASE法のパルスシーケンスの例を説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。酸素の造影効果を観測可能なパルスシーケンス、即ち、縦磁化の違いを画像化することが可能なパルスシーケンスであれば、パルスシーケンスの種類を問うものではない。例えば、FSE(Fast Spin Echo)法や、balancedSSFP(Steady-State Free Precession)法等、他の種類のパルスシーケンスにも、同様に適用することができる。

【0077】
また、上述した実施形態においては、励起パルスとして、フリップ角90°のRFパルスを印加した後、リフォーカスパルスとして、フロップ角180°のRFパルスを印加する例を説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、FASE法によってMR信号を収集する場合には、CFA(Constant Flip(Flop) Angle)法及びVFA(Variable Flip(Flop) Angle)法のいずれを適用してもよい。CFA法の場合、例えば、励起パルスのフリップ角90°、リフォーカスパルスのフリップ角(フロップ角)120°のように、任意且つ一定のフリップ角(フロップ角)のRFパルスが印加される。一方、VFAの場合、リフォーカスパルスのフリップ角(フロップ角)を変化させながらRFパルスが印加される。また、例えば、balancedSSFP法によってMR信号を収集する場合、α°/2、α°、α°、・・・、α°のように、steady stateが成立する任意のフリップ角のRFパルスが印加される。

【0078】
(複数回の酸素吸入)
上述した実施形態においては、被検体Pに対して1回の酸素供給を行い、1回の酸素吸入期間の全体に亘り脳のスライス像を連続的に収集し続ける例を説明した。しかしながら、実施形態はこれに限られるものではない。被検体Pに対して酸素供給を複数回連続して行い、複数回の酸素吸入期間の全体に亘って、脳のスライス像を連続的に収集し続けてもよい。この場合、例えば、解析部133bは、複数回の酸素吸入期間の全体に亘ってダイナミックカーブを生成し、表示してもよい。また、例えば、解析部133bは、異なる回の酸素吸入期間において時相が対応するMR画像同士(例えば、酸素吸入が停止される直前の時相に対応するMR画像(O2)同士)の差分画像を生成し、表示してもよい。また、例えば、解析部133bは、異なる回の酸素吸入期間において時相が対応するMR画像同士を加算の上、加算した画像同士で、上述した実施形態と同様の差分画像を生成してもよい。このように、解析部133bは、上述してきた実施形態とは異なる解析を行い、その解析結果を表示することができる。

【0079】
(撮像対象部位)
上述した実施形態においては、「脳」を撮像対象部位としてCSFの動態を撮像する例を説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。図14は、CSFの流れを説明するための図である。図14に示すように、CSFは、脳内では脳室内及びくも膜下腔に、脊柱管内では脊髄くも膜下腔に存在し、これらが循環している。そこで、上述した実施形態は、例えば、「脊髄」を撮像対象部位とした場合にも、同様に適用することができる。

【0080】
(複数人分の解析)
上述した実施形態においては、1人の被検体から得られたMR画像を解析して、1人の被検体の解析結果を表示する例を説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、解析部133bは、複数人の被検体から得られたMR画像群を、例えば、平均値や最大値、最小値といった観点から解析し、複数人の被検体の解析結果を表示してもよい。例えば、正常な複数人の被検体から得られた解析結果を生成しておけば、後に、1人の被検体から得られたMR画像の解析結果と比較することで、この1人の被検体が、正常であるか否かの判別に利用することも可能である。

【0081】
(画像処理装置)
上述した実施形態においては、MRI装置100が各種処理を実行する場合を説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、MRI装置100に替わり、画像処理装置や、MRI装置100と画像処理装置とを含む画像処理システムが、上述した各種処理を実行してもよい。ここで、画像処理装置とは、例えば、ワークステーション、PACS(Picture Archiving and Communication System)の画像保管装置(画像サーバ)やビューワ、電子カルテシステムの各種装置などである。この場合、例えば、画像処理装置は、MRI装置100によって収集されたk空間データ、あるいは、k空間データから再構成されたMR画像を、MRI装置100から、若しくは、画像サーバからネットワーク経由で受信することで、あるいは、記録媒体を介して操作者から入力されることなどで、受け付けて、記憶部に記憶する。そして、画像処理装置は、記憶部に記憶したこのk空間データやMR画像を対象として、上述した各種処理(例えば、解析部133bによる処理、図5や図8に示す処理手順)を実行すればよい。

【0082】
(具体的な数値、処理の順序)
また、上述した実施形態において例示した具体的な数値(例えば、300secや600sec)や処理の順序(例えば、図4、5、8に示す処理手順)は、原則として、一例に過ぎない。

【0083】
(プログラム)
また、上述した実施形態の中で示した処理手順に示された指示は、ソフトウェアであるプログラムに基づいて実行されることが可能である。上述した実施形態で記述された指示は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ、又はこれに類する記録媒体に記録される。コンピュータは、この記録媒体からプログラムを読み込み、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させれば、上述した実施形態のMRI装置100や画像処理装置と同様の動作を実現することができる。また、コンピュータがプログラムを取得する場合又は読み込む場合は、ネットワークを通じて取得又は読み込んでもよい。

【0084】
以上述べた少なくとも1つの実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置及び画像処理装置によれば、脳脊髄液(CSF)における酸素による造影効果を解析することができる。

【0085】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0086】
100 MRI装置
120 シーケンス制御部
133 制御部
133a 撮像条件設定部
133b 解析部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図11】
7
【図12】
8
【図14】
9
【図6】
10
【図9】
11
【図10】
12
【図13】
13