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明細書 :(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩、及び、(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩を製造する方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-140317 (P2015-140317A)
公開日 平成27年8月3日(2015.8.3)
発明の名称または考案の名称 (E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩、及び、(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩を製造する方法
国際特許分類 C07C 271/28        (2006.01)
C07C 311/16        (2006.01)
C07C 269/06        (2006.01)
C07C 303/40        (2006.01)
C07D 209/12        (2006.01)
FI C07C 271/28 CSP
C07C 311/16
C07C 269/06
C07C 303/40
C07D 209/12
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 31
出願番号 特願2014-014060 (P2014-014060)
出願日 平成26年1月29日(2014.1.29)
発明者または考案者 【氏名】岩澤 哲郎
【氏名】井手 将貴
出願人 【識別番号】597065329
【氏名又は名称】学校法人 龍谷大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000914、【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C204
4H006
Fターム 4C204AB01
4C204BB01
4C204CB03
4C204DB16
4C204EB02
4C204FB13
4C204GB01
4H006AA01
4H006AA02
4H006AC30
4H006BB11
4H006BB12
4H006BB15
4H006BB21
4H006BB31
4H006BB61
4H006BE53
4H006RA38
4H006RB34
要約 【課題】位置及び立体選択的な制御を行って得られたブロモヨードエナミドの提供。
【解決手段】下記化学式(I)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩。
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(Aは、芳香族炭化水素基又は環状脂肪族炭化水素基であり、前記芳香族炭化水素基又は環状脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよく、前記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよく;B及びDはB及びDに隣接する窒素原子を含んで環を形成している、又は、Bが電子求引性基であって、かつ、Dが水素原子、若しくは、置換基を有していても有していなくてもよい芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基であり、上記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよい)
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記化学式(I)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩。
【化1】
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前記化学式(I)中、
Aは、芳香族炭化水素基又は環状脂肪族炭化水素基であり、前記芳香族炭化水素基又は環状脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよく、前記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよく、
B及びDは、B及びDに隣接する窒素原子を含んで環を形成している、又は、
Bが電子求引性基であって、かつ、Dが水素原子、若しくは、置換基を有していても有していなくてもよい芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基であり、前記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよい。
【請求項2】
前記化学式(I)中、B及び/又はDがカルバメート系保護基、アミド系保護基、イミド系保護基、スルホン系保護基、アルキル基、、又は、ベンジル基である請求項1に記載の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩。
【請求項3】
前記化学式(I)中、B及び/又はDはトシル基、ベンジル基、メトキシカルボニル基又はエトキシカルボニル基である請求項2に記載の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩。
【請求項4】
前記化学式(I)中、B及びDは、B及びDに隣接する窒素原子を含んで下記化学式(II)で示す環を形成している請求項1に記載の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩。
【化2】
JP2015140317A_000024t.gif
(式中、点線の円弧は、窒素原子と炭素原子を繋ぐ骨格部分の一部と共に環構造が形成されていることを示す。Rは、水素原子又は環構造の置換基となる基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に同一又は異なって複数個結合していてもよい。)
【請求項5】
前記化学式(I)中、B及びDは、B及びDに隣接する窒素原子を含んで下記化学式(III)で示す環を形成している請求項1に記載の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩。
【化3】
JP2015140317A_000025t.gif
(式中、R及びRは、水素原子又は環構造の置換基となる基を表し、環構造に同一又は異なって複数個結合していてもよい。)
【請求項6】
前記化学式(I)中、Aが、フェニル基、シクロヘキシル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基又はピリジル基であり、さらに、置換基を有していても有していなくてもよく、前記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよい、請求項1~5のいずれかに記載の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩。
【請求項7】
前記化学式(I)中、Aにおいて、前記置換基が、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、置換又は無置換フェニル基、置換又は無置換ナフチル基、置換又は無置換アントリル基、及び、置換又は無置換ピレニル基からなる群から選択される少なくとも1つである請求項1~6のいずれかに記載の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩。
【請求項8】
下記化学式(IV)で表されるイナミド誘導体と、臭化ヨウ素のエーテル溶液とを反応させて、下記化学式(I)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩を製造する方法。
【化4】
JP2015140317A_000026t.gif
【化5】
JP2015140317A_000027t.gif
前記化学式(IV)及び(I)中、
Aは、芳香族炭化水素基又は環状脂肪族炭化水素基であり、前記芳香族炭化水素基又は環状脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよく、前記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよく、
B及びDは、B及びDに隣接する窒素原子を含んで環を形成している、又は、
Bが電子求引性基であって、かつ、Dが水素原子、若しくは、置換基を有していても有していなくてもよい芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基であり、前記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよい。
【請求項9】
N-ヨードスクシンイミド及びブロモトリメチルシランの組み合わせ、又は、N-ブロモスクシンイミド及びヨードトリメチルシランの組み合わせにより系中発生させた臭化ヨウ素と、下記化学式(IV)で表されるイナミド誘導体とを反応させて、下記化学式(I)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩を製造する方法。
【化6】
JP2015140317A_000028t.gif
【化7】
JP2015140317A_000029t.gif
前記化学式(IV)及び(I)中、
Aは、芳香族炭化水素基又は環状脂肪族炭化水素基であり、前記芳香族炭化水素基又は環状脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよく、前記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよく、
B及びDは、B及びDに隣接する窒素原子を含んで環を形成している、又は、
Bが電子求引性基であって、かつ、Dが水素原子、若しくは、置換基を有していても有していなくてもよい芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基であり、前記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよい。
【請求項10】
前記化学式(IV)で表されるイナミド誘導体に、ブロモトリメチルシラン又はヨードトリメチルシランを加え、続けてN-ブロモスクシンイミド又はN-ヨードスクシンイミドを加えることにより系中発生させた臭化ヨウ素と、前記化学式(IV)で表されるイナミド誘導体とを反応させる請求項9に記載の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩を製造する方法。
【請求項11】
N-ヨードスクシンイミド及びブロモトリメチルシランを混合する、又は、N-ブロモスクシンイミド及びヨードトリメチルシランを混合することにより臭化ヨウ素を系中発生させ、前記化学式(IV)で表されるイナミド誘導体を加えて反応させる請求項9に記載の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩を製造する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩、及び、(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エナミドは様々な官能基に変換することができるため、ビルディングブロックとして、有機化学では重要な中間体である。というのも、エナミドは生理活性や薬理活性を示す興味深い単位構造として知られているためである。さらに近年では、炭素-窒素、炭素-炭素結合形成反応を起こす新しいタイプの求核剤として、機能することが分かってきた。なかでも、ハロゲンがビシナル位に隣接したジハロエナミドは、様々なエナミドに変換できることから、合成化学的な視点において、極めて価値が高い分子である。というのも、エナミドのsp2炭素とハロゲンの結合は高い反応性を有するので、エナミドの持つ可能性と重要性を高める価値を持つからである。
【0003】
ジハロエナミドの中でも、ブロモヨードエナミドは有用性が著しく高い。なぜなら、金属-ハロゲン交換反応により様々な官能基を導入することができ、遷移金属触媒反応によるクロスカップリングを起こすことで炭素-炭素結合を容易に形成する可能性が高いからである。また、電子豊富なオレフィンとヨウ素、臭素の弱い結合は高い反応性を有しており、窒素を含んだ複雑な分子を合成する際に役立つため、潜在的な価値が高い。しかしながら、このジハロエナミドは価値が高いにもかかわらず、位置および立体選択的なヨードブロモ化が困難であるために効果的な合成法がいまだ確立されていない。
【0004】
非特許文献1には、(Z)-2-ハロ-1-ヨードアルケンをアルキンから合成する方法が記載されている。
また、非特許文献2には、アルキンにヨウ素と水素を付加させて(E)-α-ヨードエナミドを合成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Zhengwang Chen, Huanfeng Jiang, Yibiao Li, and Chaorong Qi, Chem. Commun., 2010, 46, 8049-8051.
【非特許文献2】Akihiro H. Sato, Kazuhiro Ohashi, and Tstsuo Iwasawa, Tetrahedron Letters 2013, 54, 1309-1311
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に記載された方法は、2段階で臭素とヨウ素をそれぞれアルキンに付加させる方法である。ここで、1段階で臭素とヨウ素を付加させる方法として、アルキンへの臭化ヨウ素の化学量論的付加による隣接ジハロビニルの合成という方法が考えられる。
この方法は一見可能であるように思えるが、吸湿性を持ち危険な臭化ヨウ素を直接反応に用いることは大変不便であることに加え、位置及び立体選択的な制御が難しい。
そのため、他の方法により1段階で臭素とヨウ素を付加させ、かつ、位置及び立体選択的な制御を行ってブロモヨードエナミドを提供する方法が望まれていた。
【0007】
そこで、本発明は、位置及び立体選択的な制御を行って得られたブロモヨードエナミドを提供すること、及び、1段階で臭素とヨウ素を付加させ、かつ、位置及び立体選択的な制御を行ってブロモヨードエナミドを提供する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩は、下記化学式(I)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩である。
【化1】
JP2015140317A_000002t.gif
上記化学式(I)中、
Aは、芳香族炭化水素基又は環状脂肪族炭化水素基であり、上記芳香族炭化水素基又は環状脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよく、上記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよく、
B及びDは、B及びDに隣接する窒素原子を含んで環を形成している、又は、
Bが電子求引性基であって、かつ、Dが水素原子、若しくは、置換基を有していても有していなくてもよい芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基であり、上記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよい。
【0009】
本発明の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩を製造する方法の第1の態様は、下記化学式(IV)で表されるイナミド誘導体と、臭化ヨウ素のエーテル溶液とを反応させて、下記化学式(I)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩を製造する方法である。
【化2】
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【化3】
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上記化学式(IV)及び(I)中、
Aは、芳香族炭化水素基又は環状脂肪族炭化水素基であり、上記芳香族炭化水素基又は環状脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよく、上記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよく、
B及びDは、B及びDに隣接する窒素原子を含んで環を形成している、又は、
Bが電子求引性基であって、かつ、Dが水素原子、若しくは、置換基を有していても有していなくてもよい芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基であり、上記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよい。
【0010】
本発明の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩を製造する方法の第2の態様は、N-ヨードスクシンイミド及びブロモトリメチルシランの組み合わせ、又は、N-ブロモスクシンイミド及びヨードトリメチルシランの組み合わせにより系中発生させた臭化ヨウ素と、下記化学式(IV)で表されるイナミド誘導体とを反応させて、下記化学式(I)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩を製造する方法である。
【化4】
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【化5】
JP2015140317A_000006t.gif
上記化学式(IV)及び(I)中、
Aは、芳香族炭化水素基又は環状脂肪族炭化水素基であり、上記芳香族炭化水素基又は環状脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよく、上記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよく、
B及びDは、B及びDに隣接する窒素原子を含んで環を形成している、又は、
Bが電子求引性基であって、かつ、Dが水素原子、若しくは、置換基を有していても有していなくてもよい芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基であり、上記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、位置及び立体選択的な制御を行って得られた(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩が提供され、かつ、位置及び立体選択的な制御を行ってブロモヨードエナミドを提供する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、化学式(1)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I-a)のH NMRチャートである。
【図2】図2は、化学式(1)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I-a)の13C NMRチャートである。
【図3】図3は、化学式(2)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体のH NMRチャートである。
【図4】図4は、化学式(2)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体の13C NMRチャートである。
【図5】図5は、化学式(3)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体のH NMRチャートである。
【図6】図6は、化学式(3)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体の13C NMRチャートである。
【図7】図7は、化学式(4)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体のH NMRチャートである。
【図8】図8は、化学式(4)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体の13C NMRチャートである。
【図9】図9は、化学式(5)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体のH NMRチャートである。
【図10】図10は、化学式(5)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体の13C NMRチャートである。
【図11】図11は、化学式(6)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体のH NMRチャートである。
【図12】図12は、化学式(6)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体の13C NMRチャートである。
【図13】図13は、化学式(7)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体のH NMRチャートである。
【図14】図4は、化学式(7)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体の13C NMRチャートである。
【図15】図15は、化学式(8)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体のH NMRチャートである。
【図16】図16は、化学式(8)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体の13C NMRチャートである。
【図17】図17は、化学式(9)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体のH NMRチャートである。
【図18】図18は、化学式(9)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体の13C NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について例を挙げて説明する。ただし、本発明は、以下の説明に限定されない。

【0014】
[(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩]
本発明の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩は、前述のとおり、下記化学式(I)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩である。
【化6】
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上記化学式(I)中、
Aは、芳香族炭化水素基又は環状脂肪族炭化水素基であり、上記芳香族炭化水素基又は環状脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよく、上記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよく、
B及びDは、B及びDに隣接する窒素原子を含んで環を形成している、又は、
Bが電子求引性基であって、かつ、Dが水素原子、若しくは、置換基を有していても有していなくてもよい芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基であり、上記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよい。

【0015】
上記化学式(I)のAは、芳香族炭化水素基又は環状脂肪族炭化水素基である。
芳香族炭化水素基、環状脂肪族炭化水素基の環状の基の環員数(環を構成する原子の数)は、特に限定されないが、例えば、5~32、5~24、6~18、6~12、または6~10であってもよい。

【0016】
Aが芳香族炭化水素基である場合は、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基またはピリジル基であることが好ましく、これらの基は、さらに、置換基を有していても有していなくてもよく、上記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよい。上記置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシル基、アルカノイル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシアルキル基、メルカプトアルキル基、ヒドロキシ基、シアノ基、メルカプト基、アミノ基、アミノアルキル基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリール基、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基、アルキルシリル基、ジアルキルシリル基、トリアルキルシリル基、重水素原子、ホルミル基、置換または無置換フェニル基、置換または無置換ナフチル基、置換または無置換アントリル基、および、置換または無置換ピレニル基からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
また、本発明において、芳香族炭化水素基という場合は、特に断らない限り、ヘテロアリール基も含む。

【0017】
Aが環状脂肪族炭化水素基である場合は、非芳香族性の環式炭化水素基をいう。上記環状脂肪族炭化水素基では、例えば、その環を構成する炭素原子の少なくとも一つが、酸素(O)、硫黄(S)、窒素(N)等のヘテロ原子で置き換わっていてもよいし、置き換わっていなくてもよい。
環状脂肪族炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチル基、シクロプロピル基等が挙げられる。

【0018】
本発明において、環状脂肪族炭化水素基がさらに置換基を有する場合、その置換基は、特に限定されないが、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシル基、アルカノイル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシアルキル基、メルカプトアルキル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミノアルキル基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリール基(フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基またはピリジル基等)、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基、アルキルシリル基、ジアルキルシリル基、トリアルキルシリル基、重水素原子、ホルミル基、置換または無置換フェニル基、置換または無置換ナフチル基、置換または無置換アントリル基、置換または無置換ピレニル基等が挙げられる。上記置換基は、特に限定しない限り、1個でも複数でも、または存在しなくてもよく、複数の場合は同一でも異なっていてもよい。

【0019】
上記化学式(I)のB及びDは、B及びDに隣接する窒素原子を含んで環を形成していてもよい。
B及びDが隣接する窒素原子を含んで環を形成する場合、環員数(環を構成する原子の数)は、特に限定されないが、例えば、5~32、5~24、5~18、5~12、または5~10であってもよい。また、その環を構成する原子として、窒素原子、炭素原子の他に酸素(O)、硫黄(S)等のヘテロ原子が含まれていてもよい。
特に、環構造として下記化学式(II)で示す環を形成していることが好ましい。
【化7】
JP2015140317A_000008t.gif
(式中、点線の円弧は、窒素原子と炭素原子を繋ぐ骨格部分の一部と共に環構造が形成されていることを示す。Rは、水素原子又は環構造の置換基となる基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に同一又は異なって複数個結合していてもよい。)

【0020】
特に、環構造として下記化学式(V)~(VII)に示すいずれかの構造の環を形成していることが好ましい。
【化8】
JP2015140317A_000009t.gif

【0021】
また、上記化学式(I)中のB及びDは、B及びDに隣接する窒素原子を含んで下記化学式(III)で示す環を形成していてもよい。
【化9】
JP2015140317A_000010t.gif
(式中、R及びRは、水素原子又は環構造の置換基となる基を表し、環構造に同一又は異なって複数個結合していてもよい。)

【0022】
上記化学式(I)中のB及びDがB及びDに隣接する窒素原子を含んで環を形成している場合、環構造の置換基としてのR、R及びRは、特に限定されないが、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシル基、アルカノイル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシアルキル基、メルカプトアルキル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミノアルキル基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリール基、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基、アルキルシリル基、ジアルキルシリル基、トリアルキルシリル基、重水素原子、ホルミル基、置換または無置換フェニル基、置換または無置換ナフチル基、置換または無置換アントリル基、置換または無置換ピレニル基等が挙げられる。上記置換基は、特に限定しない限り、1個でも複数でも、または存在しなくてもよく、複数の場合は同一でも異なっていてもよい。

【0023】
また、上記化学式(I)中のB及びDは、
Bが電子求引性基であって、かつ、Dが水素原子、若しくは、置換基を有していても有していなくてもよい芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基であってもよい。また、上記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよい。

【0024】
電子求引性基としてのBとしては、ニトロ基、シアノ基、トシル基(Ts)、メシル基(Ms)、2-ニトロベンゼンスルホニル基(ノシル基、Ns)、トリフルオロメチルスルホニル基、ハロゲン、フェニル基、アシル基、アルカノイル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)等が挙げられる。
また、Bが電子求引性基である場合のDとしては、水素原子、若しくは、置換基を有していても有していなくてもよい芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、上記化学式(I)中のAとして例示されたものと同様のものが挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、鎖状脂肪族炭化水素基又は環状脂肪族炭化水素基であることが好ましい。鎖状脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基が挙げられる。環状脂肪族炭化水素基としては、上記化学式(I)中のAとして例示されたものと同様のものが挙げられる。

【0025】
上記化学式(I)中、B及び/又はDとしては、保護基として用いられる置換基を使用することができ、特に、アミノ基の保護基として用いられる置換基を使用することが好ましい。
保護基としては、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz、Z)、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル基(Teoc)等のカルバメート系保護基、トリフルオロアセチル基等のアミド系保護基、フタロイル基等のイミド系保護基、トシル基(Ts)、ノシル基(Ns)等のスルホン系保護基、及び、ベンジル基(Bz)等が挙げられる。
なお、B及び/又はDがアミド系保護基又はイミド系保護基であるとは、B及び/又はDそれ自体がアミド基又はイミド基であるわけではなく、B及び/又はDに隣接する窒素原子を含んでアミド基又はイミド基を構成する基であることを意味する。
これらの中でも、トシル基、ベンジル基、メトキシカルボニル基又はエトキシカルボニル基がより好ましい。

【0026】
本発明の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体としては、例えば、下記化学式(1)~(9)のいずれかで表される、(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【化10】
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【0027】
なお、本発明の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体に互変異性体または立体異性体(例:幾何異性体、配座異性体および光学異性体)等の異性体が存在する場合は、いずれの異性体も、本発明の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体に含まれる。
なお、上記幾何異性体とは、臭素及びヨウ素が付加している2重結合以外の2重結合の存在によって生じる幾何異性体を意味する。
また、本発明の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体が塩を形成可能である場合は、その塩も、本発明の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体に含まれる。上記塩は、酸付加塩でも塩基付加塩でもよい。さらに、上記酸付加塩を形成する酸は無機酸でも有機酸でもよく、上記塩基付加塩を形成する塩基は無機塩基でも有機塩基でもよい。上記無機酸としては、特に限定されないが、例えば、硫酸、リン酸、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜フッ素酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜フッ素酸、亜塩素酸、亜臭素酸、亜ヨウ素酸、フッ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過フッ素酸、過塩素酸、過臭素酸、過ヨウ素酸等が挙げられる。上記有機酸も特に限定されないが、例えば、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p-ブロモベンゼンスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸、ヒドロキシカルボン酸、プロピオン酸、マロン酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。上記無機塩基としては、特に限定されないが、例えば、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩等があげられ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。上記有機塩基も特に限定されないが、例えば、アルコールアミン、トリアルキルアミン、テトラアルキルアンモニウム、およびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等が挙げられる。上記アルコールアミンとしては、例えば、エタノールアミン等が挙げられる。上記トリアルキルアミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等が挙げられる。上記テトラアルキルアンモニウムとしては、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム等が挙げられる。これらの塩の製造方法も特に限定されず、例えば、上記(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体に、上記のような酸や塩基を公知の方法により適宜付加させる等の方法で製造することができる。

【0028】
[(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体の製造方法]
本発明の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体の製造方法は、臭化ヨウ素と、下記化学式(IV)で表されるイナミド誘導体とを反応させて、下記化学式(I)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩を製造する方法であり、第1の態様と第2の態様がある。
本発明の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩を製造する方法の第1の態様は、下記化学式(IV)で表されるイナミド誘導体と、臭化ヨウ素のエーテル溶液とを反応させて、下記化学式(I)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩を製造する方法である。
また、本発明の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩を製造する方法の第2の態様は、N-ヨードスクシンイミド及びブロモトリメチルシランの組み合わせ、又は、N-ブロモスクシンイミド及びヨードトリメチルシランの組み合わせにより系中発生させた臭化ヨウ素と、下記化学式(IV)で表されるイナミド誘導体とを反応させて、下記化学式(I)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩を製造する方法である。
【化11】
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【化12】
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上記化学式(IV)及び(I)中、
Aは、芳香族炭化水素基又は環状脂肪族炭化水素基であり、上記芳香族炭化水素基又は環状脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよく、上記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよく、
B及びDは、B及びDに隣接する窒素原子を含んで環を形成している、又は、
Bが電子求引性基であって、かつ、Dが水素原子、若しくは、置換基を有していても有していなくてもよい芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基であり、上記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよい。

【0029】
化学式(I)及び(IV)中のA、B、Dとしては、本発明の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体において説明したものと同様の構造が挙げられるのでその詳細な説明は省略する。

【0030】
まず、本発明の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体の製造方法の第1の態様について説明する。
第1の態様のスキームは、下記スキーム1に例示される反応である。
【化13】
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化学式(IV)で表されるイナミド誘導体と、臭化水素のエーテル溶液とを反応させて、化学式(I)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩を製造する方法である。
以下、本明細書において、上記方法を「方法A」とも呼ぶ。

【0031】
まず、上記化学式(IV)で表されるイナミド誘導体を準備する。イナミド誘導体(IV)は、市販品を用いてもよいし、適宜合成してもよい。
イナミド誘導体(IV)を合成する方法としては、特に限定されないが、下記スキーム2中の化合物(X)および(XI)を、銅触媒下で反応させて合成してもよい。
上記イナミド誘導体(IV)の合成は、例えば、Zhang, Y.; Hsung, R. P.; Tracey, M. R.; Kurtz, K. C. M.; Vera, E. L. Org. Lett. 2004, 6, 1151-1154の手法に基づいて、アルキンとアミンを反応させることによって行うことができる。
【化14】
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【0032】
つぎに、上記スキーム1のとおり、上記化学式(IV)で表されるイナミド誘導体と、臭化水素のエーテル溶液とを反応させて、化学式(I)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩を製造する。

【0033】
上記スキーム1の反応は、例えば、以下のようにして行うことができる。すなわち、まず、上記化学式(IV)で表されるイナミド誘導体を、溶媒に溶解する。上記溶解は、予め脱気および不活性ガス置換を行った反応系(反応容器)内で行うことが好ましい。上記不活性ガスは、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられる。上記溶媒は、例えば、非極性溶媒でもよいし、極性溶媒でもよいし、上記非極性溶媒と上記極性溶媒との混合溶媒でもよい。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族溶媒、ペンタン、ヘキサン等のアルカン、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等のアミド、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、水等が挙げられる。これらの溶媒は、例えば、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
これらの中でも、ジクロロメタン、トルエン、ヘキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、及び、水からなる群から選択された少なくとも1種を用いることが好ましい。
スキーム1ではトルエンを溶媒として示している。

【0034】
一方、臭化ヨウ素のエーテル溶液を調製する。第1の態様においては、バルクの臭化ヨウ素を直接反応に用いるのではなく、臭化水素をエーテル中に溶解させてエーテル溶液として反応に用いる。エーテルとしては、特に限定されるものではなく、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等が使用可能である。

【0035】
つぎに、上記イナミド誘導体の溶液に、上記臭化ヨウ素のエーテル溶液を滴下等の方法により混合し、その後、所定温度(エイジング温度)において保持する。上記保持温度(エイジング温度)は、特に限定されず、例えば、-20℃以下であり、好ましくは-45℃以下であり、より好ましくは-78℃以下である。上記温度の下限は、特に限定されないが、例えば、-100℃以上である。上記保持時間は、特に限定されず、例えば、1~30分の範囲、好ましくは1~10分の範囲である。
その後、室温程度まで温度を上昇させて保持しながら所定時間撹拌することが望ましい。
昇温時間は、特に限定されず、例えば、10~180分の範囲、好ましくは20~120分の範囲、より好ましくは、30~60分の範囲である。
また、室温程度まで温度上昇させた後の保持時間は、特に限定されず、例えば、10~180分の範囲、好ましくは20~120分の範囲、より好ましくは、30~90分の範囲である。

【0036】
上記イナミド誘導体と上記臭化ヨウ素のエーテル溶液との混合割合は、特に限定されないが、上記混合割合は、上記イナミド誘導体に対する上記臭化ヨウ素が、1当量以上であることが好ましく、1.5当量以上であることがより好ましく、2.0当量以上であることがさらに好ましい。臭化ヨウ素が1.5当量以上であると、(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体への反応が完結しやすく収率を高くすることができる。また、上記イナミド誘導体に対する上記臭化ヨウ素の割合が7当量以下であることが好ましく、5当量以下であることがより好ましく、3当量以下であることがさらに好ましい。

【0037】
次に、本発明の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体の製造方法の第2の態様について説明する。
第2の態様は、系中発生させた臭化ヨウ素と上記化学式(IV)で表されるイナミド誘導体とを反応させて、上記化学式(I)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体又はその塩を製造する方法である。
臭化ヨウ素は、N-ヨードスクシンイミド及びブロモトリメチルシランの組み合わせ、又は、N-ブロモスクシンイミド及びヨードトリメチルシランの組み合わせにより系中発生させる。
上記化学式(IV)で表されるイナミド誘導体をどの段階で添加するかによって、具体的なスキームが2通り考えられる。

【0038】
スキーム3は、上記化学式(IV)で表されるイナミド誘導体に、ブロモトリメチルシランを加え、続けてN-ヨードスクシンイミドを加えることにより系中発生させた臭化ヨウ素と、上記化学式(IV)で表されるイナミド誘導体とを反応させる反応である。
【化15】
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(スキーム3中、NISはN-ヨードスクシンイミドを示す)
なお、スキーム3においてブロモトリメチルシランに代えてヨードトリメチルシランを用い、かつ、N-ヨードスクシンイミドに代えてN-ブロモスクシンイミドを用いても同様の反応を行うことができる。
以下、本明細書において、イナミド誘導体にブロモトリメチルシラン又はヨードトリメチルシランを加え、N-ヨードスクシンイミド又はN-ブロモスクシンイミドを加えることにより系中発生させた臭化ヨウ素とイナミド誘導体を反応させる方法を「方法B」とも呼ぶ。

【0039】
スキーム3では、イナミド誘導体を溶媒に溶解させ、ブロモトリメチルシランを溶媒に溶解させた溶液を滴下等の方法により混合し、その後、所定温度(エイジング温度)において保持する。上記保持温度(エイジング温度)は、特に限定されず、例えば、-20℃以下であり、好ましくは-45℃以下であり、より好ましくは-78℃以下である。上記温度の下限は、特に限定されないが、例えば、-100℃以上である。上記保持時間は、特に限定されず、例えば、1~30分の範囲、好ましくは1~10分の範囲である。

【0040】
次に、N-ヨードスクシンイミドを溶媒に溶解させた溶液を加える。その後、室温程度まで温度を上昇させて保持しながら所定時間撹拌することが望ましい。
昇温時間は、特に限定されず、例えば、10~180分の範囲、好ましくは20~120分の範囲、より好ましくは、30~60分の範囲である。
また、室温程度まで温度上昇させた後の保持時間は、特に限定されず、例えば、10~180分の範囲、好ましくは20~120分の範囲、より好ましくは、30~90分の範囲である。

【0041】
スキーム4は、N-ヨードスクシンイミド及びブロモトリメチルシランを混合することにより臭化ヨウ素を系中発生させ、上記化学式(IV)で表されるイナミド誘導体を加えて反応させる反応である。以下、本明細書においてスキーム4に例示される方法を「方法C」とも呼ぶ。
【化16】
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なお、スキーム4においてブロモトリメチルシランに代えてヨードトリメチルシランを用い、かつ、N-ヨードスクシンイミドに代えてN-ブロモスクシンイミドを用いても同様の反応を行うことができる。
以下、本明細書において、N-ヨードスクシンイミド及びブロモトリメチルシランの混合又はN-ブロモスクシンイミド及びヨードトリメチルシランの混合により系中発生させた臭化ヨウ素とイナミド誘導体を反応させる方法を「方法C」とも呼ぶ。

【0042】
スキーム4では、N-ヨードスクシンイミドを溶媒に溶解させた溶液を準備し、ブロモトリメチルシランを溶媒に溶解させた溶液を滴下等の方法により混合し、その後、所定温度(エイジング温度)において保持する。上記保持温度(エイジング温度)は、特に限定されず、例えば、-20℃以下であり、好ましくは-45℃以下であり、より好ましくは-78℃以下である。上記温度の下限は、特に限定されないが、例えば、-100℃以上である。上記保持時間は、特に限定されず、例えば、1~30分の範囲、好ましくは1~10分の範囲である。

【0043】
次に、イナミド誘導体を溶媒に溶解させた溶液を加える。その後、室温程度まで温度を上昇させて保持しながら所定時間撹拌することが望ましい。
昇温時間は、特に限定されず、例えば、10~180分の範囲、好ましくは20~120分の範囲、より好ましくは、30~60分の範囲である。
また、室温程度まで温度上昇させた後の保持時間は、特に限定されず、例えば、10~180分の範囲、好ましくは20~120分の範囲、より好ましくは、30~90分の範囲である。

【0044】
スキーム3、4において、イナミド誘導体(IV)は、第1の態様と同様に準備することができる。
また、イナミド誘導体を溶解する溶媒の種類も第1の態様と同様にすることができる。
スキーム3、4ではトルエンを溶媒として示している。
ブロモトリメチルシラン又はヨードトリメチルシランは、溶媒に溶解させた状態で準備する。溶媒としては、イナミド誘導体を溶解する溶媒として例示した溶媒を使用することができる。イナミド誘導体を溶解する溶媒とブロモトリメチルシラン又はヨードトリメチルシランを溶解する溶媒とは、同一でも、異なってもよいが、同一であることが好ましい。

【0045】
第1の態様又は第2の態様で合成した(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体の精製または単離方法も、特に限定されず、定法にしたがって行うことができる。具体的には、例えば、後述の実施例のような方法でもよいし、それに限定されず、他の任意の方法でもよい。
また、反応の進行状況は、例えば、TLC(薄層クロマトグラフィー)等により追跡してもよい。

【0046】
ここで、イナミドの3重結合に臭化水素が付加する場合、下記(E-1)、(E-2)、(Z-1)、(Z-2)の4種類の異性体が生じる可能性が考えられる。
【化17】
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しかし、本発明の製造方法によると異性体が生じることがなく、(E-1)で示される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体のみを選択的に得ることができる。
また、この反応においては、粗生成物の段階においても異性体は一切観測されず、単一異性体のみが生成する。
さらに、本発明の製造方法によると、グラムスケールで(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体のみを選択的に得ることができる。

【0047】
本発明によれば、例えば、下記(1)~(3)のような効果を得ることも可能である。ただし、これらの効果は、例示であって、本発明を何ら限定しない。
(1)本発明の製造方法によれば、イナミド及びその誘導体に対して、1段階で臭素とヨウ素をイナミドに付加させて、かつ、位置及び立体選択的な制御を行って(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体のみを与えることができる。
(2)本発明の製造方法によれば、ごく一般的な反応条件のもと、短い反応時間で単一異性体をほとんど定量的に得られる。また、グラムスケールで(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体を得ることができる。
(3)本発明の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体を用いると、炭素原子とヨウ素、炭素原子と臭素の結合エネルギーが弱く、置換反応が生じやすい。また、エナミン結合は電子豊富なため求核攻撃により付加反応が生じやすい。そのため、様々な構造の化合物の基質として利用可能である。特に、窒素原子を導入することができるので、医薬品、ファインケミカルズ分野で用いられる基質として有用である。また、エナミドの窒素原子に保護基として適用可能な置換基を結合させておくと、保護基を後で取り外すことが容易であるため便利である。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【実施例】
【0049】
<機器>
H及び13CNMRスペクトルは、BRUKER-SPECTROSPIN-400(商品名)および5mmQNPプローブを用い、それぞれ400MHzおよび100MHzで記録した。ケミカルシフト値は、微量のモノプロトン溶媒の共鳴を内部標準とし、外部のテトラメチルシラン(TMS)を間接的に参照して百万分率(ppm)で記録した。略号sは、一重線(シングレット)を表し、dは、二重線(ダブレット)を表し、tは、三重線(トリプレット)を表し、qは、四重線(カルテット)を表し、mは、多重線(マルチプレット)を表す。元素分析はア・ラビット・サイエンス社(http://www.rabit-sc.jp/)にて実施した。
なお、特に断らない限り、「Anal.」は元素分析値を表し、元素分析値について、「Calcd. For」は計算値を表し、「Found」は実測値を表す。
マススペクトルは、JEOL GC-mate II(商品名)を用いてEIモードで、及び、Finnigan LCQ DECA(商品名)を用いてESIモードで測定した。カラムクロマトグラフィーは、シリカゲル(関東化学株式会社、商品名Silica Gel 60N)を用いて行った。薄層クロマトグラフィー分析は、Merck silica gel 60 F254(商品名)を用いて行った。反応は、特に断らない限り、アルゴン雰囲気下で行った。
【実施例】
【0050】
<試薬>
試薬は、関東化学株式会社、和光純薬工業株式会社、東京化成工業株式会社から購入した。全ての試薬は、さらなる精製をせずに使用した。
イナミド化合物は、下記文献(1a)(1b)に記載された方法に従い、アルキンとアミンとのクロスカップリングにより調製した。クロスカップリング反応の開始材料であるアミン、硫酸銅5水和物、1,10-フェナントロリン及びリン酸カリウムは、和光純薬工業株式会社及びナカライテスク社から購入し、さらなる精製をせずに使用した。
文献(1a) R. C. Larock, Comprehensive Organic Transformations: A Guide to Functional Group Preparations; Wiley-VCH: New York, 1999;
(1b) Z. Rappoport, The chemistry of enamines. In The Chemistry of Functional Groups; John Wiley and Sons: 1994, New York.
【実施例】
【0051】
[実施例1]
スキーム1、3、4に示す方法A、B、Cのそれぞれによって、イナミド(IV-a)から(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I-a)を合成した。
【化18】
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【実施例】
【0052】
<イナミド(IV-a)の調製>
(1)<アルキンからのアルキニルブロマイド((ブロモエチニル)ベンゼン)の調製>
フェニルアセチレン(3.3mL、30mmol)の乾燥アセトン(60mL)溶液に、N-ブロモスクシンイミド(NBS)(5.9g、33mmol)及びAgNO(51mg、0.3mmol)を加えた。反応混合物を室温で約2時間攪拌し、TLC分析で観察した。TLCにおいて開始材料のアルキンが無くなったら、混合物をセライトパッド及びフロリジルでろ過し、次いで揮発性物質を全て留去した。ヘキサンを溶離液としたショートプラグカラムクロマトグラフィーで残留物を精製し、目的の(ブロモエチニル)ベンゼンを4.9g(収率91%)の薄黄色油状物質として得た。臭化物はすぐに分解する傾向にあるため、得られた(ブロモエチニル)ベンゼンをそれ以上精製することなく、すぐに次のクロスカップリング工程に進んだ。
(2)<クロスカップリングによるイナミド(IV-a)の調製>
バイアルに入った(ブロモエチニル)ベンゼン(1.4g、8.0mmol)の脱水トルエン(24mL)溶液に、N-フェニルカルバミン酸メチル(1.5g、9.6mmol)、KPO(3.4g、16mmol)、硫酸銅5水和物(400mg、16mmol)、及び1,10-フェナントロリン(577mg、3.2mmol)を加えた。アルゴン雰囲気下、反応混合物に蓋をして、オイルバスにて80℃で15時間加熱した。反応の進行状況はTLC分析で観察した。完了後、反応混合物を室温にまで冷却し、酢酸エチル15mLで希釈した。混合物をセライトパッドでろ過し、ろ液を真空下で濃縮した。未精製の残留物を、ヘキサン/酢酸エチル=19/1の溶離液を用いてカラムクロマトグラフィーで精製し、1.6g(収率80%)の黄色油状物質としてイナミド(IV-a)を得た。
【実施例】
【0053】
イナミド(IV-a)の機器分析値:
H NMR(400MHz、CDCl)δ7.55(dd,J=1.2,8.6Hz,2H),7.45-7.40(m,4H),7.33-7.28(m,4H),3.92(s,3H)
13C NMR(100MHz,CDCl)δ154.9,139.7,131.5,129.1,128.4,128.0,127.2,124.8,123.0,83.0,70.3,54.5
【実施例】
【0054】
<TMSBr(ブロモトリメチルシラン)の1M塩化メチレン溶液の調製>
チューブに封入されたTMSBr(25mL)を東京化成工業株式会社から購入した。TMSBr3mLを乾燥塩化メチレン(20mL)へ加えて、実験に用いる無色のTMSBrの1M 塩化メチレン溶液を得た。保存溶液については、わずかに黄変していたものの、少なくとも3週間は安定していた。
【実施例】
【0055】
<方法Aによる(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I-a)の合成>
アルゴン雰囲気下、イナミド(IV-a)(281mg、1.1mmol)のトルエン(4.5mL)溶液(-78℃)に、臭化ヨウ素(348mg、1.7mmol)のジエチルエーテル(3.4mL)溶液を5分間滴下混合し、室温まで加温した。
1時間撹拌後、チオ硫酸ナトリウム飽和水溶液を加えて0℃で反応を停止させ、更に10分撹拌して、室温まで加温した。トルエン(10mL×3)を加えて水層を抽出し、有機層を食塩水(20mL)で洗浄した後、NaSOで脱水し、濃縮して粗生成物(524mg)を得た。
これをショートプラグカラムクロマトグラフィー(溶離液は塩化メチレンのみ)で精製し、塩化メチレン/ヘキサンを溶媒とした再沈殿を行い、361mg(収率71%)の白色固体として(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I-a)を得た。
【実施例】
【0056】
<方法Bによる(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I-a)の合成>
アルゴン雰囲気下、イナミド(IV-a)(126mg、0.5mmol)の無水トルエン(1.5mL)溶液(-78℃)に、TMSBrの1M塩化メチレン溶液(0.75mL)を5分間滴下混合し、混合物を3分間撹拌した。
次に、N-ヨードスクシンイミド(NIS:169mg、0.75mmol)のアセトニトリル溶液(1.5mL)を5分間かけて加え、冷却バスを外して室温まで加温した。
さらに1時間撹拌後、チオ硫酸ナトリウム飽和水溶液を加えて0℃で反応を停止させ、更に10分撹拌して、室温まで加温した。
トルエン(10mL×3)を加えて水層を抽出し、有機層を食塩水(20mL)で洗浄した後、NaSOで脱水し、濃縮して粗生成物(240mg)を得た。
これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液はヘキサン:塩化メチレン=4:1)で精製し、192mg(収率83%)の黄白色固体として(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I-a)を得た。
【実施例】
【0057】
<方法Cによる(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I-a)の合成>
アルゴン雰囲気下、N-ヨードスクシンイミド(NIS:1.35g、6.0mmol)の無水トルエン(16mL)溶液(-78℃)に、TMSBrの1M塩化メチレン溶液(6.0mL)を7分間滴下混合し、混合物を5分間撹拌した。
次に、イナミド(IV-a)(1.00g、4.0mmol)の無水トルエン(12mL)溶液を5分間かけて加え、冷却バスを外して室温まで加温した。
さらに1時間撹拌後、チオ硫酸ナトリウム飽和水溶液を加えて0℃で反応を停止させ、更に10分撹拌して、室温まで加温した。
トルエン(15mL×3)を加えて水層を抽出し、有機層を食塩水(30mL)で洗浄した後、NaSOで脱水し、濃縮して粗生成物(1.86g)を得た。
これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液はヘキサン:塩化メチレン=2:1)で精製し、1.74g(収率95%)の黄白色固体として(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I-a)を得た。
【実施例】
【0058】
(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I-a)の機器分析値:
H NMR (400 MHz, CDCl) 7.58 (dd, J = 7.5, 1.3 Hz, 2H), 7.46-7.31 (m, 8H), 3.94 (s, 3H) ppm
13C NMR (100 MHz, CDCl) 153.2, 142.5, 138.8, 129.3, 129.2, 128.8, 128.7, 127.4, 125.5, 119.5, 99.3, 54.4 ppm
FAB-MS m/z: 458 ([MH]), 330([M-I]
IR (neat): 2962, 1724, 1627, 1492, 1435, 1311, 1265, 1218 cm-1
Anal. Calcd for C1613BrINO: C, 41.95; H, 2.86; N, 3.06. Found: C, 41.83; H, 2.87; N, 2.71.
図1及び図2には、化学式(1)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I-a)のH NMRチャート及び13C NMRチャートをそれぞれ示した。
【実施例】
【0059】
方法A、B、Cのいずれの方法によっても、(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I-a)が得られ、粗生成物の段階で、H NMR、13C NMRの結果からほとんど単一異性体であることが確認できた。
また、方法B及びCにおいては、グラムスケールでの(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I-a)の合成に成功した。
収率に関しては、方法Aよりも系中発生型臭化ヨウ素を用いた方法B、Cの方が優れていた。
【実施例】
【0060】
[実施例2]
下記Entry1-8では、スキーム3に示す方法Bにおける(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I-a)の合成条件について、下記表1に示すように、溶媒の種類、エイジング温度を変更して(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I-a)を合成した。
また、Entry9ではスキーム4に示す方法Cにおける(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I-a)の合成を、Entry1と同じ溶媒の種類、エイジング温度、各原料の仕込み量により行った。
方法B及びCによる(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I-a)の合成は、実施例1に記載した方法に準拠し、イナミド(IV-a)の仕込み量は126mg(0.50mol)とし、溶媒の量は2mL、TMSBrの1M塩化メチレン溶液及びN-ヨードスクシンイミドの0.5Mアセトニトリル溶液を用いた。
下記表1に、各合成条件での(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I-a)の収率(%)及び純度(%)を示す。
副生成物としてはイナミドに臭化水素が付加した(E)-メチル-1-ブロモ-2-フェニルビニル-(フェニル)カルバメートが見られた。
【実施例】
【0061】
【表1】
JP2015140317A_000020t.gif
【実施例】
【0062】
表1に示すように、Entry1~9のいずれの合成条件によっても、(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I-a)を合成できた。
温度条件に関し、低温条件の方が良い収率で(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I-a)が得られることが分かった(Entry1-4)。
溶媒として塩化メチレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)を用いたところ、収率は溶媒にトルエンを用いた場合より小さくなっていた。
方法Cを用いると、副生成物が生じることなく90%という極めて高い収率で円滑にヨードブロモ化が進行した。
【実施例】
【0063】
[実施例3]
スキーム4(方法C)に示す反応式とはハロゲン源を逆にして、下記スキーム5に示すように、N-ブロモスクシンイミド(NBS)とヨードトリメチルシラン(TMSI)を用いて(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I-a)の合成を行った。その結果、(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I-a)が63%の収率でほとんど単一異性体として得られた。
【化19】
JP2015140317A_000021t.gif
【実施例】
【0064】
[実施例4]
本実施例では、出発原料として、下記表2に示すイナミド誘導体(IV)を使用した他は実施例1と同様にして、方法A、B、Cのそれぞれの手法により、下記表2に示す(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I)を合成した。
各方法による収率を表2にまとめて示す。
【実施例】
【0065】
【表2】
JP2015140317A_000022t.gif
【実施例】
【0066】
表2に示したイナミド誘導体(IV)は公知の化合物であり、先行文献に記載された機器分析値とよく一致したことを確認した後使用した。
【実施例】
【0067】
Entry10-17において、(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I)が得られた。但し、方法によっては多くの異性体が生じていて単離が困難であった例(Entry13、14の方法A、CやEntry16の方法A)があった。これらの例の収率は測定できないため表中に「-」で示している。
【実施例】
【0068】
Entry10~17で合成した(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I)の機器分析値を下記に示す。
図3~18には、Entry10~17で合成した、化学式(2)~(9)で表される(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体のH NMRチャート及び13C NMRチャートを示した。
【実施例】
【0069】
10:メチル(E)-1-ブロモ-2-シクロヘキシル-2-ヨードビニル(フェニル)カルバメート(黄色粘稠物)
H NMR (400 MHz, CDCl) 7.46-7.43 (m, 2H), 7.39-7.35 (m, 2H), 7.28-7.25 (m, 1H), 3.84 (s, 3H), 2.36-2.29 (m, 1H), 1.81-1.79 (m, 2H), 1.74-1.70 (m, 2H), 1.61-1.59 (m, 1H), 1.48-1.36 (m, 4H), 1.26-1.19 (m, 1H) ppm
13C NMR (100 MHz, CDCl) 153.3, 138.8, 129.1, 126.9, 124.9, 117.5, 54.2, 47.4, 33.0, 32.8, 25.8, 25.7 ppm
FAB-MS m/z: 464 ([MH]), 336 ([M-I]
IR (neat) 2923, 2849, 1735, 1593, 1489, 1442, 1298, 1231 cm-1
Anal. Calcd for C1619BrINO: C, 41.40; H, 4.13; N, 3.02. Found: C, 41.42; H, 4.01; N, 2.82.
【実施例】
【0070】
11:(E)-(S)-3-(1-ブロモ-2-ヨード-2-フェニルビニル)-4-フェニルオキサゾリジン-2-オン(黄白色固体:反応溶媒としてトルエンに代えて塩化メチレンを用い、塩化メチレン/メタノールの混合溶媒を用いて再結晶を行った)
H NMR (400 MHz, CDCl) 7.63-7.21 (m, 8H), 7.15 (dd, J = 7.6, 2.3 Hz, 2H), 5.25 (dd, J = 9.2, 9.2 Hz, 1H), 4.74 (dd, J = 9.2, 9.2 Hz, 1H), 4.44 (dd, J = 9.2, 9.2 Hz, 1H) ppm
13C NMR (100 MHz, CDCl) 153.0, 142.3, 134.2, 130.0, 129.2, 129.1, 129.0, 128.8, 128.5, 114.9, 99.2, 70.1, 62.3 ppm
FAB-MS m/z : 469 ([MH]
IR (neat) 2922, 1455, 1440, 1338, 1207, 1165, 1100, 1061, 1018 cm-1
Anal. Calcd for C1713BrINO: C, 43.43; H, 2.79; N, 2.98. Found: C, 43.31; H, 2.78; N, 2.75.
【実施例】
【0071】
12:(E)-N-ベンジル-N-(1-ブロモ-2-ヨード-2-フェニルビニル)-4-メチルベンゼンスルホンアミド(白色固体:ベンゼンを用いて再結晶を行った)
H NMR (400 MHz, CDCl) 7.94 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.50-7.48 (m, 2H), 7.38-7.22 (m, 8H), 7.02 (dd, J = 8.1, 1.7 Hz, 2H), 4.83 (d, J = 12.8 Hz, 1H), 4.00 (d, J = 12.8 Hz, 1H), 2.47 (s, 3H) ppm
13C NMR (100 MHz, CDCl) 145.1, 143.4, 135.0, 132.9, 131.2, 123.0, 129.4, 129.0, 128.9, 128.6, 128.5, 128.1, 118.9, 104.5, 53.3, 22.0 ppm
MS (MALDI-TOF) m/z: 567 ([MH]
IR (neat) 2921, 1594, 1456, 1347, 1165 cm-1
Anal. Calcd for C2219BrINOS: C, 46.50; H, 3.37; N, 2.46. Found: C, 46.49; H, 3.29; N, 2.37.
【実施例】
【0072】
13:(E)-N-ベンジル-N-(1-ブロモ-2-(4-シアノフェニル)-2-ヨードビニル)-4-メチルベンゼンスルホンアミド(黄白色固体:アセトニトリルを用いて再結晶を行った)
H NMR (400 MHz, CDCl) 7.92 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.58 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.48-7.46 (m, 2H), 7.39-7.38 (m, 5H), 7.09 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 4.84 (d, J = 12.9 Hz, 1H), 3.96 (d, J = 12.9 Hz, 1H), 2.48 (s, 3H) ppm
13C NMR (100 MHz, CDCl) 147.8, 145.4, 134.7, 132.7, 132.6, 131.2, 130.1, 129.3, 129.2, 129.1, 128.6, 120.5, 118.6, 112.6, 101.4, 53.4, 22.1 ppm
MS (MALDI-TOF) m/z: 592 (M
IR (neat) 2222, 1594, 1495, 1456, 1346, 1164 cm-1
Anal. Calcd for C2318BrINS: C, 46.56; H, 3.06; N, 4.72. Found: C, 46.56; H, 3.07; N, 4.57.
【実施例】
【0073】
14:(E)-N-(1-ブロモ-2-ヨード-2-フェニルビニル)-N,4-ジメチルベンゼンスルホンアミド(白色固体:メタノールを用いて再結晶を行った)
H NMR (400 MHz, CDCl) 7.87 (d, J = 7.9 Hz 2H), 7.39-7.29 (m, 7H), 2.96 (s, 3H), 2.45 (s, 3H) ppm
13C NMR (100 MHz, CDCl) 144.9, 142.4, 134.5, 129.8, 129.3, 129.2, 128.7, 128.6, 120.1, 101.5, 36.2, 22.0 ppm
MS (FAB) m/z: 492 ([MH]); IR (neat): 2922, 1595, 1440, 1354, 1260, 1163, 1086, 982 cm-1; Anal.
Calcd for C1615BrINOS: C, 39.05; H, 3.07; N, 2.85. Found: C, 39.06; H, 3.09; N, 2.82.
【実施例】
【0074】
15:(E)-1-(2-ブロモ-1-ヨード-2-フェニルビニル)-1-H-インドール-2-カルボン酸エチル(白色固体:方法A及びBでは、塩化メチレン/ヘキサンの混合溶媒により再沈殿を行った。方法Cではエタノールを溶媒とした再結晶を行った)
H NMR (400 MHz, CDCl) 7.75 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.62-7.59 (m, 2H), 7.53-7.44 (m, 5H), 7.41-7.37 (m, 1H), 7.33-7.29 (m, 1H), 4.47 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 1.46 (t, J = 7.1 Hz, 3H) ppm
13C NMR (100 MHz, CDCl) 160.6, 142.3, 137.4, 129.4, 129.0, 128.9, 127.9, 127.2, 126.9, 123.3, 123.0, 114.3, 114.1, 112.0, 99.5, 61.4, 14.8 ppm
FAB-MS m/z: 496 ([MH]), 368, ([M-I]
IR (neat) 1708, 1534, 1474, 1442, 1396, 1380, 1325, 1261, 1200, 1144 cm-1
Anal. Calcd for C1915BrINO: C, 46.00; H, 3.05; N, 2.82. Found: C, 45.75; H, 3.02; N, 2.59.
【実施例】
【0075】
16:(E)-1-(1-(2-ブロモ-1-ヨード-2-フェニルビニル)-1H-インドール-3-イル)エタノン(白色固体:アセトニトリルを用いて再結晶を行った)
H NMR (400 MHz, CDCl) 8.84 (dd, J = 8.4, 1.6 Hz, 1H), 7.89 (s, 1H), 7.55-7.52 (m, 2H), 7.50-7.39 (m, 6H), 2.61 (s, 3H) ppm
13C NMR (100 MHz, CDCl) 193.6, 141.8, 135.6, 133.9, 129.8, 129.0, 128.9, 126.4, 125.0, 124.2, 123.4, 120.8, 112.6, 111.6, 99.8, 28.1 ppm
FAB-MS m/z: 466 ([MH]), 386, ([M-Br]
IR (neat) 1660, 1527, 1475, 1448, 1346, 1302, 1221 cm-1
Anal. Calcd for C1813BrINO: C, 46.38; H, 2.81; N, 3.01. Found: C, 46.26; H, 2.78; N, 2.72.
【実施例】
【0076】
17:(E)-メチル-ブロモ-2-ヨード-2-(4-メトキシフェニル)-ビニル(フェニル)カルバメート(白色固体)
H NMR (400 MHz, CDCl) 7.57, (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.43 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.36-7.31 (m, 3 H), 6.87 (d, J = 8.7 Hz, 2 H), 3.93 (s, 3H), 3.83 (s, 3H) ppm
13C NMR (100 MHz, acetone-d) 160.8, 153.3, 139.5, 135.4, 130.9 (2つのピークが重なっている), 129.7, 127.5, 125.5, 114.6, 100.8, 55.7, 54.3 ppm
FAB-MS m/z : 487([M]
IR (neat) 2593, 2837, 1727, 1601, 1436, 1291, 1245cm-1
HRMS(MALDI-TOF)Calcd for C1715BrINO3(M+):486.9208,Found 486.9255.
【実施例】
【0077】
上記実施例1~4から、本発明の製造方法により、化学式(1)~(9)に具体的に示す本発明の(E)-1-ブロモ-2-ヨードエナミド誘導体(I)が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上のとおり、本発明によればイナミド及びその誘導体に対して、系中発生型ハロゲン化水素を完璧な位置および立体制御を伴ってイナミドに付加させて、(E)-1-ハロ-エナミド誘導体のみを、簡便に、高純度で得ることができる。また、グラムスケールで(E)-1-ハロ-エナミド誘導体を得ることができる。
また、本発明の製造方法は、基質適用範囲が広く、かつ、溶媒やプロトン供与体として、一般的に用いられている様々な種類の溶媒、プロトン供与体を用いて反応を行うことができる。
また、本発明の(E)-1-ハロ-エナミド誘導体は、様々な構造の化合物の基質として利用可能である。特に、窒素原子を導入することができるので、医薬品、ファインケミカルズ分野で用いられる基質として有用である。また、エナミドの窒素原子に保護基として適用可能な置換基を結合させておくと、保護基を後で取り外すことが容易であるため便利である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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