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明細書 :機械加工装置及び機械加工方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-150689 (P2015-150689A)
公開日 平成27年8月24日(2015.8.24)
発明の名称または考案の名称 機械加工装置及び機械加工方法
国際特許分類 B44B   3/04        (2006.01)
B44C   1/22        (2006.01)
FI B44B 3/04
B44C 1/22 A
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2014-023509 (P2014-023509)
出願日 平成26年2月10日(2014.2.10)
発明者または考案者 【氏名】本田 尚義
出願人 【識別番号】597065329
【氏名又は名称】学校法人 龍谷大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100121337、【弁理士】、【氏名又は名称】藤河 恒生
審査請求 未請求
要約 【課題】被加工物の表面に彫刻紋様面を造形するのに好適な機械加工装置を提供する。
【解決手段】この機械加工装置1は、被加工物Sの表面に造形する彫刻紋様面Pの仕上げ加工を、非回転の彫刻工具2と彫刻紋様面Pとの相対的な位置設定及び移動を数値制御することにより行うものであって、彫刻工具2は、前方に向かって鋭角の角度に刃先20aが形成された刃先部20と、上方から垂下している主軸部4に主軸部4と「彫刻工具2の中心軸Ce同士が一致するようにして取り付けられている取付部21と、を有し、刃先20aは、少なくとも、彫刻工具2の中心軸Ce上に位置するように設けられている刃先中心点20aaから刃先端点20abまで直線状又は円弧状に形成されている。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
被加工物の表面に造形する彫刻紋様面の仕上げ加工を、非回転の彫刻工具と該彫刻紋様面との相対的な位置設定及び移動を数値制御することにより行う機械加工装置であって、
前記彫刻工具は、前方に向かって鋭角の角度に刃先が形成された刃先部と、上方から垂下している主軸部に該主軸部と該彫刻工具の中心軸同士が一致するようにして取り付けられている取付部と、を有し、
前記刃先は、少なくとも、前記彫刻工具の中心軸上に位置するように設けられている刃先中心点から刃先端点まで直線状又は円弧状に形成されていることを特徴とする機械加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の機械加工装置において、
前記刃先は、前記彫刻工具の前記中心軸に対して線対称的に形成されたものであることを特徴とする機械加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の機械加工装置において、
前記刃先部は、前記彫刻紋様面を加工するときに後方に向かって切削屑を送り出す切削屑排出孔を有していることを特徴とする機械加工装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の機械加工装置において、
前記彫刻紋様面に対する前記刃先の相対的な位置設定及び移動は、制御部によって数値制御され、
該制御部は、分割点設定手段及び姿勢制御手段を有し、
該分割点設定手段は、仕上げ加工後の仮想の前記彫刻紋様面である前記仕上げ彫刻紋様面の下端曲線と上端曲線である仕上げ下端曲線と仕上げ上端曲線にそれぞれ複数個の分割点を設け、
前記姿勢制御手段は、前記刃先中心点が前記仕上げ下端曲線の一つの前記分割点の位置に有るとき、当該分割点からそれに対応する前記仕上げ上端曲線の一つの前記分割点までを結ぶベクトルである彫刻紋様面ベクトルと前記仕上げ下端曲線の当該分割点から次の前記分割点までを結ぶベクトル又は前記仕上げ上端曲線の当該分割点から次の前記分割点までを結ぶベクトルである進行ベクトルとを含む平面である彫刻紋様仮想面に、前記刃先中心点から前記刃先端点を結ぶベクトルである刃先ベクトルが含まれるように制御し、かつ、前記刃先中心点が前記仕上げ下端曲線の一つの前記分割点の位置から次の前記分割点の位置まで移動するとき、前記仕上げ彫刻紋様面に対して前記刃先ベクトルと前記刃先中心点から前記彫刻工具の前記中心軸上を上方に延びるベクトルである工具軸ベクトルとを含む平面である刃先仮想面の角度が一定角度に保たれるように、逐一計算しながら制御することを特徴とする機械加工装置。
【請求項5】
請求項4に記載の機械加工装置において、
前記刃先中心点が前記仕上げ下端曲線の一つの前記分割点の位置に有って当該分割点を含む前記彫刻紋様仮想面に前記刃先ベクトルが含まれるように制御されるとき、前記刃先ベクトルは、前記彫刻紋様面ベクトルから前記進行ベクトル側に傾斜するように制御されることを特徴とする機械加工装置。
【請求項6】
被加工物の表面に造形する彫刻紋様面の仕上げ加工を、非回転の彫刻工具と該彫刻紋様面との相対的な位置設定及び移動を数値制御することにより行う機械加工方法であって、
前記彫刻工具が、前方に向かって鋭角の角度に刃先が形成された刃先部と、上方から垂下している主軸部に該主軸部と該彫刻工具の中心軸同士が一致するようにして取り付けられている取付部と、を有しており、前記刃先が、少なくとも、前記彫刻工具の中心軸上に位置するように設けられている刃先中心点から刃先端点まで直線状又は円弧状に形成されている機械加工装置を用い、
仕上げ加工後の仮想の前記彫刻紋様面である前記仕上げ彫刻紋様面の下端曲線と上端曲線である仕上げ下端曲線と仕上げ上端曲線にそれぞれ複数個の分割点を設け、
前記刃先中心点が前記仕上げ下端曲線の一つの前記分割点の位置に有るとき、当該分割点からそれに対応する前記仕上げ上端曲線の一つの前記分割点までを結ぶベクトルである彫刻紋様面ベクトルと前記仕上げ下端曲線の当該分割点から次の前記分割点までを結ぶベクトル又は前記仕上げ上端曲線の当該分割点から次の前記分割点までを結ぶベクトルである進行ベクトルとを含む平面である彫刻紋様仮想面に、前記刃先中心点から前記刃先端点を結ぶベクトルである刃先ベクトルが含まれるように制御し、かつ、前記刃先中心点が前記仕上げ下端曲線の一つの前記分割点の位置から次の前記分割点の位置まで移動するとき、前記仕上げ彫刻紋様面に対して前記刃先ベクトルと前記刃先中心点から前記彫刻工具の前記中心軸上を上方に延びるベクトルである工具軸ベクトルとを含む平面である刃先仮想面の角度が一定角度に保たれるように、逐一計算しながら制御することを特徴とする機械加工方法。
【請求項7】
請求項6に記載の機械加工方法において、
前記刃先中心点が前記仕上げ下端曲線の一つの前記分割点の位置に有って当該分割点を含む前記彫刻紋様仮想面に前記刃先ベクトルが含まれるように制御されるとき、前記刃先ベクトルは、前記彫刻紋様面ベクトルから前記進行ベクトル側に傾斜するように制御されることを特徴とする機械加工方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の表面に彫刻紋様面を造形するのに好適な機械加工装置及び機械加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械加工分野においては、被加工物の表面に複雑な模様を形成するとき、荒加工から仕上げ加工まで、切削刃を高速回転させて切削する回転工具(ボールエンドミルなど)の工具径を徐々に小さくして繰り返し加工する方法が広く用いられる。しかし、回転工具によっては加工し切れない又は加工できない模様があるため、非回転の工具を併用することも提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、回転工具によって荒加工をした後、矩形の切刃を先端部に有したヘール加工工具(バイト)によって仕上げ加工する機械加工方法が記載されている。このヘール加工工具は、面と面とが交差する部分(キャラクタライン)など、回転工具によっては削り切れない削り残し部分を削り取ることができる。また、特許文献2には、回転工具によって荒加工をした後、山形や船底形などの先端部を有した振動工具によって、様々な溝深さや曲線などを反映した模様の線彫り加工を行う機械加工方法が記載されている。ここでは、振動工具の姿勢を制御しながら振動させ、先端部の打撃によって被加工物の表面に塑性変形を生じさせることにより線彫り加工を行っている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平6-254742号公報
【特許文献2】特開2008-217275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、欄間や仏壇等の製作において彫刻刀を使った職人により古来より造形されてきた彫刻紋様の面(彫刻紋様面)は、様々な方向に様々な角度を持ってうねっており、回転工具による加工や特許文献1及び2で示したような加工など従来の機械加工方法では、その造形の特徴を再現するのは非常に困難であった。
【0006】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、被加工物の表面に彫刻紋様面を造形するのに好適な機械加工装置及び機械加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の機械加工装置は、被加工物の表面に造形する彫刻紋様面の仕上げ加工を、非回転の彫刻工具と該彫刻紋様面との相対的な位置設定及び移動を数値制御することにより行う機械加工装置であって、前記彫刻工具は、前方に向かって鋭角の角度に刃先が形成された刃先部と、上方から垂下している主軸部に該主軸部と該彫刻工具の中心軸同士が一致するようにして取り付けられている取付部と、を有し、前記刃先は、少なくとも、前記彫刻工具の中心軸上に位置するように設けられている刃先中心点から刃先端点まで直線状又は円弧状に形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の機械加工装置は、請求項1に記載の機械加工装置において、前記刃先は、前記彫刻工具の前記中心軸に対して線対称的に形成されたものであることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の機械加工装置は、請求項1又は2に記載の機械加工装置において、前記刃先部は、前記彫刻紋様面を加工するときに後方に向かって切削屑を送り出す切削屑排出孔を有していることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の機械加工装置は、請求項1~3のいずれか1項に記載の機械加工装置において、前記彫刻紋様面に対する前記刃先の相対的な位置設定及び移動は、制御部によって数値制御され、該制御部は、分割点設定手段及び姿勢制御手段を有し、該分割点設定手段は、仕上げ加工後の仮想の前記彫刻紋様面である前記仕上げ彫刻紋様面の下端曲線と上端曲線である仕上げ下端曲線と仕上げ上端曲線にそれぞれ複数個の分割点を設け、前記姿勢制御手段は、前記刃先中心点が前記仕上げ下端曲線の一つの前記分割点の位置に有るとき、当該分割点からそれに対応する前記仕上げ上端曲線の一つの前記分割点までを結ぶベクトルである彫刻紋様面ベクトルと前記仕上げ下端曲線の当該分割点から次の前記分割点までを結ぶベクトル又は前記仕上げ上端曲線の当該分割点から次の前記分割点までを結ぶベクトルである進行ベクトルとを含む平面である彫刻紋様仮想面に、前記刃先中心点から前記刃先端点を結ぶベクトルである刃先ベクトルが含まれるように制御し、かつ、前記刃先中心点が前記仕上げ下端曲線の一つの前記分割点の位置から次の前記分割点の位置まで移動するとき、前記仕上げ彫刻紋様面に対して前記刃先ベクトルと前記刃先中心点から前記彫刻工具の前記中心軸上を上方に延びるベクトルである工具軸ベクトルとを含む平面である刃先仮想面の角度が一定角度に保たれるように、逐一計算しながら制御することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の機械加工装置は、請求項4に記載の機械加工装置において、前記刃先中心点が前記仕上げ下端曲線の一つの前記分割点の位置に有って当該分割点を含む前記彫刻紋様仮想面に前記刃先ベクトルが含まれるように制御されるとき、前記刃先ベクトルは、前記彫刻紋様面ベクトルから前記進行ベクトル側に傾斜するように制御されることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の機械加工方法は、被加工物の表面に造形する彫刻紋様面の仕上げ加工を、非回転の彫刻工具と該彫刻紋様面との相対的な位置設定及び移動を数値制御することにより行う機械加工方法であって、前記彫刻工具が、前方に向かって鋭角の角度に刃先が形成された刃先部と、上方から垂下している主軸部に該主軸部と該彫刻工具の中心軸同士が一致するようにして取り付けられている取付部と、を有しており、前記刃先が、少なくとも、前記彫刻工具の中心軸上に位置するように設けられている刃先中心点から刃先端点まで直線状又は円弧状に形成されている機械加工装置を用い、仕上げ加工後の仮想の前記彫刻紋様面である前記仕上げ彫刻紋様面の下端曲線と上端曲線である仕上げ下端曲線と仕上げ上端曲線にそれぞれ複数個の分割点を設け、前記刃先中心点が前記仕上げ下端曲線の一つの前記分割点の位置に有るとき、当該分割点からそれに対応する前記仕上げ上端曲線の一つの前記分割点までを結ぶベクトルである彫刻紋様面ベクトルと前記仕上げ下端曲線の当該分割点から次の前記分割点までを結ぶベクトル又は前記仕上げ上端曲線の当該分割点から次の前記分割点までを結ぶベクトルである進行ベクトルとを含む平面である彫刻紋様仮想面に、前記刃先中心点から前記刃先端点を結ぶベクトルである刃先ベクトルが含まれるように制御し、かつ、前記刃先中心点が前記仕上げ下端曲線の一つの前記分割点の位置から次の前記分割点の位置まで移動するとき、前記仕上げ彫刻紋様面に対して前記刃先ベクトルと前記刃先中心点から前記彫刻工具の前記中心軸上を上方に延びるベクトルである工具軸ベクトルとを含む平面である刃先仮想面の角度が一定角度に保たれるように、逐一計算しながら制御することを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の機械加工方法は、請求項6に記載の機械加工方法において、前記刃先中心点が前記仕上げ下端曲線の一つの前記分割点の位置に有って当該分割点を含む前記彫刻紋様仮想面に前記刃先ベクトルが含まれるように制御されるとき、前記刃先ベクトルは、前記彫刻紋様面ベクトルから前記進行ベクトル側に傾斜するように制御されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非回転の彫刻工具を用いて、被加工物の表面に彫刻紋様面を造形するのに好適な機械加工装置及び機械加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る機械加工装置を示す模式的な外観図である。
【図2】同上の機械加工装置の彫刻工具の中心軸を含む断面で切断した右側面視断面図である。
【図3】同上の機械加工装置の彫刻工具を示す正面図であって、(b)は(a)を説明するためのものである。
【図4】同上の機械加工装置の彫刻工具を示すものであって、(a)が左側面図、(b)が右側面図である。
【図5】同上の機械加工装置の刃先の変形例を示す正面図であって、(b)は(a)を説明するためのものである。
【図6】同上の機械加工装置の刃先の他の2種類の変形例を示す正面図である。
【図7】同上の機械加工装置の分割点設定手段を説明するための模式的な斜視図である。
【図8】同上の機械加工装置の分割点設定手段の手順の例を説明するためのフロー図である。
【図9】同上の機械加工装置の分割点設定手段を説明するための模式的な2個の平面図である。
【図10】同上の機械加工装置の姿勢制御手段の手順の例を説明するためのフロー図である。
【図11】同上の機械加工装置の刃先部の動作を示す断面図である。
【図12】同上の機械加工装置の動作の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態を、以下説明する。本発明の実施形態に係る機械加工装置1は、図1に示すように、被加工物Sの表面に造形する彫刻紋様面Pの仕上げ加工を、非回転の彫刻工具2と彫刻紋様面Pとの相対的な位置設定及び移動を数値制御することにより行うものである。被加工物Sは、木材又は合成樹脂材料等の比較的やわらかい材料のものである。被加工物Sは、被加工物支持台3に固定支持されている。

【0017】
彫刻紋様面Pは、機械加工装置1による仕上げ加工の前に、荒加工によって大まかな形状が形成されている。この荒加工は、回転工具(ボールエンドミルなど)による加工が行われる。回転工具による加工を行う機械加工装置は、機械加工装置1の彫刻工具2のかわりに回転工具を用い、その回転工具に応じた数値制御を行うものを用いることができる。回転工具による加工は、従来からの技術であり、本発明の要旨ではないので詳しい説明は省略する。

【0018】
彫刻工具2は、図2に示すように、前方(図においては左方向)に向かって鋭角の角度(例えば、5°~20°)(図2の最下部又は後述する図11参照)に刃先20aが形成された刃先部20を有している。刃先20aは、仕上げ加工前の彫刻紋様面Pに押し当てて前進させることによってその表面を削ることができる。また、彫刻工具2は、上方から垂下している主軸部4(図1参照)に、主軸部4と彫刻工具2の中心軸Ce同士が一致するようにして取り付けられている取付部21を有している。取付部21は、他の彫刻工具(例えば、回転工具)と同様に柱状である。

【0019】
刃先20aは、少なくとも刃先中心点20aaから刃先端点20abまで直線状又は円弧状に形成されたものである。刃先中心点20aaは、彫刻工具2の中心軸Ce上に位置するように設けられており、刃先20aの最下点でもある。ここで、刃先中心点20aaから刃先端点20abを結ぶベクトルを刃先ベクトルVaとし、刃先中心点20aaから彫刻工具2の中心軸Ce上を上方に延びるベクトルを工具軸ベクトルVbとする。刃先ベクトルVaと工具軸ベクトルVbとを含む平面を刃先仮想面20sとする(図1と後述する図3(b)及び図5(b)参照)。

【0020】
刃先20aの最も基本的なものは、図3(a)及び図4に示すように、彫刻工具2の中心軸Ceに対して線対称的に直線状に、刃先中心点20aaから両方の刃先端点20ab、20ab’まで形成されたものである。刃先20aは、この他、彫刻紋様面Pの様々な形状の加工に最適なように、図5(a)に示すように彫刻工具2の中心軸Ceに対して線対称的に円弧状に、刃先中心点20aaから両方の刃先端点20ab、20ab’まで形成されたものや、図6(a)、(b)に示すように彫刻工具2の中心軸Ceに対して片側だけに直線状又は円弧状に、刃先中心点20aaから刃先端点20abまで形成されたものなどとすることが可能である。なお、図3(b)及び図5(b)はそれぞれ、図3(a)及び図5(a)において、刃先ベクトルVaと工具軸ベクトルVbと刃先仮想面20sを示したものである。

【0021】
また、刃先部20は、彫刻紋様面Pを加工するときに後方に向かって切削屑を送り出す切削屑排出孔20bを有している。この切削屑排出孔20bにより、切削屑を後方に送り出すと、切削屑が刃先20aの近辺に溜まらず、加工状況を目視できるようになる。なお、切削屑排出孔20bの周縁の下側部分は、前端が刃先20aとなっている。

【0022】
彫刻紋様面Pに対する刃先20aの相対的な位置設定及び移動の制御は、制御部5によって数値制御される。彫刻紋様面Pに対して刃先20aは、互いに直交するX軸方向、Y軸方向、Z軸方向と、X軸まわりの回転方向(A軸方向)及びY軸まわりの回転方向(B軸方向)と、主軸部4の中心軸Ceまわりの回転方向(C軸方向)、に相対的に自由に動き得る(図1参照)。

【0023】
制御部5は、彫刻紋様面Pの仕上げ加工を制御するために、以下に示す分割点設定手段51と姿勢制御手段52を有している。制御部5は、一般に、CPU、制御プログラム記憶部、データ記憶部などをハードウェアとして有するものであり、分割点設定手段51と姿勢制御手段52は、通常、制御プログラムによって実現される。また、以下の説明において、仕上げ彫刻紋様面PSは、図7に示すように、仕上げ加工後の仮想の彫刻紋様面Pを言い、仕上げ下端曲線Laと仕上げ上端曲線Lbはそれぞれ、仕上げ彫刻紋様面PSの下端曲線と上端曲線を言う。

【0024】
分割点設定手段51は、仕上げ下端曲線Laに複数個の分割点Daを設け、仕上げ上端曲線Lbに複数個の分割点Dbを設ける。

【0025】
分割点設定手段51は、詳細には、図8に示すような手順で実現することができる。先ず、仕上げ加工後のデータから仕上げ彫刻紋様面PSの仕上げ下端曲線Laと仕上げ上端曲線Lbを抽出する(S1)。仕上げ下端曲線Laと仕上げ上端曲線LbがXY平面上において交差する場合は、それらを分割処理する(S2及びS3)。それから、図9(a)(又は図9(b))に示すように、XY平面上において、仕上げ下端曲線Laの両端における法線を計算する(S4)。XY平面上においてその法線まで仕上げ上端曲線Lbの長さがない場合(仕上げ上端曲線Lbが短い場合)は、図9(a)の破線で示すように、仕上げ上端曲線Lbを延長する(S5)。また、場合としては少ないが、法線と仕上げ上端曲線Lbが交差する場合(仕上げ上端曲線Lbが長い場合)は、図9(b)に示すように、その法線よりも外側の仕上げ彫刻紋様面PSの部分である法線外部分PSaを抽出する(S6)。そして、仕上げ下端曲線Laに複数個の分割点Daを設け(S7)、仕上げ上端曲線Lbに複数個の分割点Dbを設け(S8)、それぞれの分割点の数を等しくする。

【0026】
ここで、仕上げ下端曲線Laの一つの分割点Daからそれに対応する仕上げ上端曲線Lbの一つの分割点Dbまでを結ぶベクトルを彫刻紋様面ベクトルVpとする(図7参照)。また、仕上げ下端曲線Laの一つの分割点Dbから次の分割点Dbまでを結ぶベクトルを進行ベクトルVqとし、また、彫刻紋様面ベクトルVpと進行ベクトルVqとを含む平面を彫刻紋様仮想面PIとする。

【0027】
姿勢制御手段52は、図10に示すように、刃先20aの刃先中心点20aaが仕上げ下端曲線Laの一つの分割点Daの位置に有るときには、当該分割点Daを含む彫刻紋様仮想面PIに刃先ベクトルVaが含まれるように制御し(S9)、かつ、刃先中心点20aaが一つの分割点Daの位置から次の分割点Daの位置まで移動するとき、仕上げ彫刻紋様面PSに対する刃先仮想面20sの角度が一定角度に保たれるように逐一計算しながら制御する(S10)。

【0028】
ここで、刃先20aだけが仕上げ彫刻紋様面PSに接触するように、図4(a)、(b)で示すような刃先20aよりも後方の刃先部20の外側面20cは、仕上げ彫刻紋様面PSに接触せず、図11に示すように、後方になるにつれて仕上げ彫刻紋様面PSから離れて行くような形状としてある。刃先20aが移動するとき、仕上げ彫刻紋様面PSに対する刃先仮想面20sの角度が一定角度に保たれるならば、仕上げ彫刻紋様面PSに対する刃先部20の外側面20cの角度も一定角度(例えば、2°~10°)に保たれる。そうすることで、刃先部20の彫刻紋様面Pによる抵抗を少なくしている。

【0029】
また、刃先20aが彫刻紋様面Pから受ける力(抵抗)を分散するために、刃先中心点20aaが仕上げ下端曲線Laの一つの分割点Daの位置に有って当該分割点Daを含む彫刻紋様仮想面PIに刃先ベクトルVaが含まれるように制御されるとき、刃先ベクトルVaは、彫刻紋様面ベクトルVpから進行ベクトルVq側に少し傾斜するように制御されるのが好ましい。

【0030】
なお、仕上げ上端曲線Lbの一つの分割点Dbから次の分割点Dbまでを結ぶベクトルを進行ベクトルVqとして、彫刻紋様面ベクトルVpとこの進行ベクトルVqを含む平面を彫刻紋様仮想面PIとしてもよい。

【0031】
また、仕上げ彫刻紋様面PSの上述した法線外部分PSaが有る場合は、刃先中心点20aaを止めて刃先端点20abを回転させるなどして、法線外部分PSaを仕上げ加工することが可能である。

【0032】
このような数値制御を行う機械加工装置1は、彫刻紋様面Pが被加工物Sの表面から突起したものである場合や被加工物Sの表面から彫り込んだ溝状である場合など、様々な方向に様々な角度を持ってうねっている彫刻紋様面Pの加工が容易にできる。彫刻工具2は、彫刻紋様面Pに応じて、上述した数値制御によって、図3に示したような形状のものの他、図5及び図6で示したような形状のものなどを用いることができる。

【0033】
また、機械加工装置1は、回転工具によっては削り切れない彫刻紋様面Pの下端曲線の近傍部分を削り取ることができる。例えば、図12で示す曲線Lcaより下の部分は、彫刻紋様面Pの立ち上がりが急で回転工具によっては削り切れない部分である。この部分は、図3に示したような彫刻工具2を有した機械加工装置1により、図中の曲線Lcbに示すように、削り取ることができる。その結果、彫刻刀を使ったような立ち上がりが急な彫刻紋様面Pに仕上げ加工することができる。

【0034】
機械加工装置1を使用すると、仕上げ加工は、刃先20aの1回の走査で行うことも可能である。従って、荒加工から仕上げ加工まで回転工具を用いた場合に比べ、回転工具による繰り返し加工の数を少なくして仕上げ完了までの加工時間を短縮することができる。

【0035】
このようにして、欄間や仏壇等の製作において彫刻刀を使った職人よって古来より造形されてきた彫刻紋様面Pの加工が、機械加工装置1によって自動化できるため、職人不足などの解消に貢献できる。

【0036】
以上、本発明の実施形態に係る機械加工装置について説明したが、本発明の機械加工装置は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内での様々な設計変更が可能である。また、本発明の機械加工方法は、実施形態に記載した機械加工装置を用いて、被加工物の表面に造形する彫刻紋様面の仕上げ加工を行う機械加工方法に係るものであり、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内での様々な設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 機械加工装置
2 彫刻工具
20 刃先部
20a 刃先部の刃先
20aa 刃先中心点
20ab 刃先端点
20b 切削屑排出孔
20c 刃先部の外側面
20s 刃先仮想面
21 取付部
3 被加工物支持台
4 主軸部
5 制御部
51 分割点設定手段
52 姿勢制御手段
S 被加工物
P 彫刻紋様面
PS 仕上げ彫刻紋様面
PI 彫刻紋様仮想面
Ce 主軸部及び彫刻工具の中心軸
La 仕上げ下端曲線
Da 仕上げ下端曲線の分割点
Lb 仕上げ上端曲線
Db 仕上げ上端曲線の分割点
Va 刃先ベクトル
Vb 工具軸ベクトル
Vp 彫刻紋様面ベクトル
Vq 進行ベクトル
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11