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明細書 :新規ヌクレオシドアナログ及びその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成26年5月22日(2014.5.22)
発明の名称または考案の名称 新規ヌクレオシドアナログ及びその利用
国際特許分類 C07H  21/04        (2006.01)
C07H  19/173       (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
FI C07H 21/04 CSPB
C07H 19/173 ZNA
C12N 15/00 A
C12Q 1/68 A
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 30
出願番号 特願2012-547929 (P2012-547929)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り
国際出願番号 PCT/JP2011/078604
国際公開番号 WO2012/077800
国際出願日 平成23年12月9日(2011.12.9)
国際公開日 平成24年6月14日(2012.6.14)
優先権出願番号 2010276135
優先日 平成22年12月10日(2010.12.10)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , MD , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IS , JP , KE , KG , KM , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US , UZ , VC , VN
発明者または考案者 【氏名】佐々木 茂貴
【氏名】谷口 陽祐
【氏名】河口 亮太
出願人 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100140109、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 新次郎
【識別番号】100075270、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100101373、【弁理士】、【氏名又は名称】竹内 茂雄
【識別番号】100118902、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 修
【識別番号】100117813、【弁理士】、【氏名又は名称】深澤 憲広
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B063
4C057
Fターム 4B024AA11
4B024CA09
4B024HA12
4B063QA11
4B063QQ42
4B063QR32
4B063QR55
4B063QR56
4B063QS34
4B063QX02
4C057BB02
4C057CC03
4C057DD01
4C057LL31
4C057LL42
4C057LL44
4C057MM04
要約 DNA中の8-oxo-dGを検出するための技術を提供する。下記の新規化合物による。
【化1】
JP2012077800A1_000027t.gif
(式中、R1は、H、又は3'-水酸基の保護基、オリゴデオキシヌクレオチド基1(ODN基1)、又は-P(OR3)R4であり、このときR3はリン酸基の保護基であり、R4は窒素原子上に炭素数1~6個の同一又は異なるアルキル基が2個結合したジアルキルアミノ基であり;R2は、水素原子、5'-水酸基の保護基、又はオリゴデオキシヌクレオチド基2(ODN基2)である。)。本発明の化合物は、核酸の酸化的変異の検出に有用である。
特許請求の範囲 【請求項1】
次式で表される、アデノシン-1,2-ジアザフェノキサジン(adenosine-1,3-diazaphenoxazine, Adap)ヌクレオシドアナログ含有オリゴデオキシヌクレオチド
【化1】
JP2012077800A1_000025t.gif
(式中、R1は、オリゴデオキシヌクレオチド基1(ODN基1)であり;
R2は、オリゴデオキシヌクレオチド基2(ODN基2)である。)。
【請求項2】
8-オキソデオキシグアノシン(8-oxo-dG)の検出のための、請求項1に記載のオリゴデオキシヌクレオチド。
【請求項3】
ラベルされた、請求項1に記載のオリゴデオキシヌクレオチド
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のオリゴデオキシヌクレオチドを、8-oxo-dGを含有する標的DNAにハイブリダイズさせる工程を含み、このときオリゴデオキシヌクレオチドは標的DNAの少なくとも8-oxo-dGを含有する一部の塩基配列に相補的な塩基配列からなるが、8-oxo-dGに相補する位置にAdapヌクレオシドアナログを含有するものであり、それによりオリゴデオキシヌクレオチドが標的DNAに選択的にハイブリダイズする、8-oxo-dGを含有する標的DNAを検出する方法。
【請求項5】
蛍光物質又はクエンチャー物質の一方でラベルされ、塩基配列Aからなる請求項1に記載の第1オリゴデオキシヌクレオチド、及び
蛍光物質又はクエンチャー物質の他方でラベルされ、塩基配列Aに相補的な塩基配列Bからなるが、Adapヌクレオシドアナログに相補する位置に天然のヌクレオチドを含有する、第2オリゴデオキシヌクレオチド
を少なくとも備える、二本鎖オリゴデオキシヌクレオチドプローブ。
【請求項6】
第1オリゴデオキシヌクレオチドの5'末端が蛍光物質でラベルされ、第2オリゴデオキシヌクレオチドの3'末端がクエンチャー物質でラベルされている、請求項5に記載のプローブ。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のプローブを、8-oxo-dGを含有する標的DNAに供与する工程を含み、このとき第1オリゴデオキシヌクレオチドは標的DNAの少なくとも8-oxo-dGを含有する一部の塩基配列に相補的な塩基配列からなるが、8-oxo-dGに相補する位置にAdapヌクレオシドアナログを含有するものであり、それにより第2オリゴデオキシヌクレオチドと標的DNAとの鎖交換反応が起こり、蛍光物質が発光する、8-oxo-dGを含有する標的DNAを検出する方法。
【請求項8】
次式で表される、化合物
【化2】
JP2012077800A1_000026t.gif
(式中、R1は、H、又は3'-水酸基の保護基、又は-P(OR3)R4であり、このときR3はリン酸基の保護基であり、R4は窒素原子上に炭素数1~6個の同一又は異なるアルキル基が2個結合したジアルキルアミノ基であり;R2は、水素原子、又は5'-水酸基の保護基である。)。
【請求項9】
R1が、-P(OR3)R4であり、このときR3が、メチル基、2-シアノエチル基、又は2-トリメチルシリルエチル基であり、R4が、ジイソプロピルアミノ基であり;R2が、5'-水酸基の保護基である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
R3が、2-シアノエチル基であり;R2が、4,4'-ジメトキシトリチル基である、請求項9に記載の化合物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物及びその利用に関する。本願発明の新規化合物は、DNA鎖中の8-oxo-dGを、選択的に認識可能な蛍光プローブとして有用である。
【背景技術】
【0002】
8-oxo-deoxyguanosine(8-oxo-dG)は生体内で活性酸素種によってdeoxyguanosine(dG)より生成するDNA損傷体のひとつであり、老化や神経変性疾患、酸化ストレスとの関連が示唆されている。また、構造の変化からcytosineだけではなくadenosineとの塩基対形成が可能になっており、このためトランスバージョン変異を誘発することも分かっている。8-oxo-dGの検出のために、現在、電気化学的方法、質量分析や抗体などを用いた検出方法が開発されている。
【0003】
本発明者らは、guanineと高い結合能を持つ既知化合物G-clampを基に設計した8-oxoG-clampが8-oxo-dGに選択的に結合し、結合による蛍光光度の変化で検出が可能であることを示した(非特許文献1)。また、8-oxoG-clampの誘導体とそれらの8-oxo-dG認識能(非特許文献2)、さらにはオリゴヌクレオチドに組み込むことによりDNA中の8-oxo-dGとdGを部分的に区別できる可能性も示した(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】O. Nakagawa, S. Ono, Z. Li, A. Tsujimoto, S. Sasaki, Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 4500-4503.
【非特許文献2】Z. Li, O. Nakagawa, Y. Koga, Y. Taniguchi, S.Sasaki, Bioog. Med. Chem. 2010, 18, 3992-3998.
【非特許文献3】T. Nasr, Z. Li, O. Nakagawa, Y. Taniguchi, S. Ono, S. Sasaki, Bioorg. Med. Chem.Lett., 2009, 19, 727-730.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
我々がすでに開発した8-oxoG-clampは分子認識能が主に水素結合で行なわれているため有機溶媒中では効果的に8-oxo-dG とdGを識別できるが、水中での認識は未だ達成されていない。水中で8-oxo-dGを識別できるのは現在のところ抗体だけに限られている。
【0006】
DNA中の8-oxo-dGの検出はさらに技術的に困難で実現されておらず、現状はDNAをヌクレオシドまで酵素分解し、成分としての8-oxo-dGを検出することが一般的手法となっている。最近、8-oxo-dGとポリアミンとの特異的な化学反応性を用いて、ビオチン‐アビジン融合horseradish peroxidase を組み合わせることによる、高感度な検出法が報告された。しかしながら、DNA中の8-oxo-dGを酵素分解することなく、簡便に配列特異的に検出する技術は開発されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、DNA中に存在する場合であっても、8-oxo-dGとdGとを効果的に識別できる分子を創製した。本発明は、以下を提供する:
[1] 次式で表される、アデノシン-1,2-ジアザフェノキサジン(adenosine-1,3-diazaphenoxazine, Adap)ヌクレオシドアナログ含有オリゴデオキシヌクレオチド
【0008】
【化1】
JP2012077800A1_000003t.gif
(式中、R1は、オリゴデオキシヌクレオチド基1(ODN基1)であり;
R2は、オリゴデオキシヌクレオチド基2(ODN基2)である。)。
[2] 8-オキソデオキシグアノシン(8-oxo-dG)の検出のための、[1]に記載のオリゴデオキシヌクレオチド。
[3] ラベルされた、[1]に記載のオリゴデオキシヌクレオチド
[4] [1]~[3]のいずれか一に記載のオリゴデオキシヌクレオチドを、8-oxo-dGを含有する標的DNAにハイブリダイズさせる工程を含み、このときオリゴデオキシヌクレオチドは標的DNAの少なくとも8-oxo-dGを含有する一部の塩基配列に相補的な塩基配列からなるが、8-oxo-dGに相補する位置にAdapヌクレオシドアナログを含有するものであり、それによりオリゴデオキシヌクレオチドが標的DNAに選択的にハイブリダイズする、8-oxo-dGを含有する標的DNAを検出する方法。
[5] 蛍光物質又はクエンチャー物質の一方でラベルされ、塩基配列Aからなる[1]に記載の第1オリゴデオキシヌクレオチド、及び
蛍光物質又はクエンチャー物質の他方でラベルされ、塩基配列Aに相補的な塩基配列Bからなるが、Adapヌクレオシドアナログに相補する位置に天然のヌクレオチドを含有する、第2オリゴデオキシヌクレオチド
を少なくとも備える、二本鎖オリゴデオキシヌクレオチドプローブ。
[6] 第1オリゴデオキシヌクレオチドの5'末端が蛍光物質でラベルされ、第2オリゴデオキシヌクレオチドの3'末端がクエンチャー物質でラベルされている、[5]に記載のプローブ。
[7] [5]又は[6]に記載のプローブを、8-oxo-dGを含有する標的DNAに供与する工程を含み、このとき第1オリゴデオキシヌクレオチドは標的DNAの少なくとも8-oxo-dGを含有する一部の塩基配列に相補的な塩基配列からなるが、8-oxo-dGに相補する位置にAdapヌクレオシドアナログを含有するものであり、それにより第2オリゴデオキシヌクレオチドと標的DNAとの鎖交換反応が起こり、蛍光物質が発光する、8-oxo-dGを含有する標的DNAを検出する方法。
[8] 次式で表される、化合物
【0009】
【化2】
JP2012077800A1_000004t.gif
(式中、R1は、H、又は3'-水酸基の保護基、又は-P(OR3)R4であり、このときR3はリン酸基の保護基であり、R4は窒素原子上に炭素数1~6個の同一又は異なるアルキル基が2個結合したジアルキルアミノ基であり;R2は、水素原子、又は5'-水酸基の保護基である。)。
[9] R1が、-P(OR3)R4であり、このときR3が、メチル基、2-シアノエチル基、又は2-トリメチルシリルエチル基であり、R4が、ジイソプロピルアミノ基であり;R2が、5'-水酸基の保護基である、[8]に記載の化合物。
[10] R3が、2-シアノエチル基であり;R2が、4,4'-ジメトキシトリチル基である、[9]に記載の化合物。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】TBDMS保護Adapに対するTBDMS保護8-oxo-dG及びdGの添加による蛍光消光。TBDMS保護AdapのCHCl3中1 μM溶液中にTBDMS保護8-oxo-dG及びdGのCHCl3溶液を滴下し、蛍光スペクトルの変化を観測した。
【図2】Adapを組み込んだ13PyXの蛍光スペクトルによる13PuY中の8-oxo-dGによる特異的消光。13PyX 50 nM 緩衝溶液(100 mM NaCl, 10 mM sodium phosphate buffer、pH 7.0、30℃)に中に13PuY緩衝溶液を滴下した。溶液中の13PuY濃度は25 nM及び50 nM。
【図3】Adapを組み込んだ13PuXの蛍光スペクトルによる13PyY中の8-oxo-dGによる特異的消光。13PuX 50 nM 緩衝溶液(100 mM NaCl, 10 mM sodium phosphate buffer、pH 7.0、30℃)に中に13PyY緩衝溶液を滴下した。溶液中の13PuY濃度は25 nM及び50 nM。
【図4】Adapを組み込んだ13PyXの蛍光スペクトルによる長鎖80 mer 基質80PuY及び80PuY-2中の8-oxo-dGの特異的検出。13PuX 100 nM 緩衝溶液(100 mM NaCl, 10 mM sodium phosphate buffer、pH 7.0、25℃)に中に80PuY緩衝溶液を滴下した。80PuYの濃度:0, 10, 20, 50, 100, 200 nM。
【図5】ODN1-ODN3プローブの蛍光スペクトル。測定は、100 mM NaCl, 10 mM sodium phosphate buffer中、pH 7.0、30℃で実施され、Cy3は546 nmで存在した。(A) 10 nMのODN13、(B) 10 nMのODN14、(C) 蛍光検出の写真画像。写真は、同じbuffer中、10 nMのODN1、250 nMのODN3、及び10 nMのODN13又はODN14の50 μL溶液で撮影。
【図6】マスクされたプローブの蛍光回復。(A) 二本鎖含有Cy3-5'-Adap (ODN1)及びT-, C-, G-又はA- 3'-BHQプローブ(ODN3~6)、並びに天然A-T対(ODN2-ODN3) (B)二本鎖含有Adap-3'-BHQ (ODN7)及びCy3-5'-T, -C, -G又は-Aプローブ(ODN9~12)、並びに天然A-T対(ODN8-ODN9)。測定は、100 mM NaCl, 10 mM sodium phosphate buffer中、pH 7.0、30℃で、10 nM の各プローブ及び10 nM の標的ODN13(灰色バー)又はODN14 (黒バー)を用いて実施され、Cy3は546 nmで存在し、562 nmで検出した。
【図7】長鎖DNA中の8-oxo-dG検出のタイムコース。測定は、100 mM NaCl, 10 mM sodium phosphate buffer中、pH 7.0、40℃で、ODN1-ODN3 プローブ(10 nM)及び標的80 mer ODN (ODN15又はODN16, 10 nM)を用いて実施され、Cy3は546 nmで存在し、562 nmで検出した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で、「オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)」というときは、特に記載した場合を除き、その塩基配列及び塩基数には特に制限はなく、必要に応じ、塩基配列は、標的とする核酸の塩基配列に対して相補的になるように設計され、塩基数は、標的核酸とハイブリダイズすることが可能な数とすることができる。

【0012】
本発明で「核酸」というときは、特に記載した場合を除き、DNA又はRNAをいう。本発明で「核酸」というとき、特に記載した場合を除き、DNAであることが好ましい。

【0013】
本発明で「オリゴデオキシヌクレオチド基(ODN基)」というときは、特に記載した場合を除き、3'末端又は5'末端で隣接する基に結合しているか、又は結合可能な、オリゴデオキシヌクレオチド部分を指す。

【0014】
式(I)がオリゴデオキシヌクレオチド(以下、Adap含有ODNということがある。)を表す場合、ODN基1及びODN基2はいずれも、リン酸基を末端に有し、かつ該リン酸基を介してアデノシン-1,2-ジアザフェノキサジン(adenosine-1,3-diazaphenoxazine, Adap)ヌクレオシドアナログ部分に結合可能な、オリゴデオキシヌクレオチド部分であってもよい。ODN基1及びODN基2は、それぞれ独立に、5~100塩基長であることが好ましく、10~30塩基長であることがより好ましい。ODN基1及びODN基2は、DNA合成前駆体である本発明の化合物から、ホスホロアミダイト法を用いて核酸自動合成機により、合成することができる。

【0015】
式(I)のR1及び/又はR2が、水酸基の保護基である場合、それぞれ独立して、従来技術の水酸基の保護基から適宜選択可能である。具体例は、TBDMS(TBSと記載することもある) (tert-ブチルジメチルシリル)基、DMTr(4,4'-ジメトキシトリチル)基、TBDPS (tert-ブチルジフェニルシリル)基、TES (トリエチルシリル)基 、TIPS(トリイソプルピルシリル)基、DMES (ジメチルエチルシリル)基 、THP(テトラヒドロピラニル)基、EE(エトキシエチル)基 、MOM(メトキシメチル)基、Bn(ベンジル)基である。R1及びR2における水酸基の保護基は、好ましくはTBDMS基であり、R1が-P(OR3)R4であるとき、R2の特に好ましい例は、DMTr基である。

【0016】
式(I)のR1は、-P(OR3)R4であってもよい。このとき、R3はリン酸基の保護基であり、リン酸基の保護基としては、ホスホロアミダイト法に用いられるものであれば、従来技術の保護基から適宜選択可能である。具体例は、メチル基、2-シアノエチル基、2-トリメチルシリルエチル基である。またR1が-P(OR3)R4とき、R4は、窒素原子上に炭素数1~6個の同一又は異なるアルキル基が2個結合したジアルキルアミノ基である。ジアルキルアミノ基の好ましい例は、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジメチルアミノ基である。2個のアルキル基は、互いに結合して環を形成していてもよい。この例は、モルホリン-1-イル基である。

【0017】
本発明の式(I)で表わされる化合物は、具体的には下記のものを包含する。

【0018】
【化3】
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【0019】
【化4】
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また、本発明の化合物のうち、-P(OR3)R4であるものはDNA合成前駆体として用いることができるが、DNA合成前駆体である本発明の化合物のうち、特に好ましい例は下記のものである。

【0020】
【化5】
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本発明の化合物の機能・作用:
これまでの本発明者らの研究結果に基づく重要な考察は、2本鎖DNAの配列の中央付近で8-oxoG-clampと8-oxo-dGが、下記に示すような錯体を形成するときには、相手DNA鎖が障害となりベンジルオキシ基が望ましい構造をとりにくくなるということである。

【0021】
【化6】
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このことは8-oxoG-clampが2本鎖DNA末端に組み込まれた場合には比較的に8-oxo-dGとdGが区別されていることからも示された。また、未発表結果で、ベンジロキシカルボニル基を2-アミノピリジン-6-イル基に置き換えても、8-oxoG-clampと8-oxo-dGが維持されるということを見出している。これらの情報から、蛍光団であり、かつdGとWatson-Crick塩基対を形成する1,3-diazaphenoxazine骨格をアデニン骨格と連結した分子adenine-diazaphenoxazine (Adap)を設計した(下記参照)。省略名は構造式を表す頭文字から命名した。

【0022】
この分子設計の有利な点は、認識すべき8-oxo-dGがDNA中でとりうる特別なコンフォーメーションを標的にしている点である。すなわち、一般にDNA中のdGはアンチ配座が優先するが、8-oxo-dGは8位の酸素原子とバックボーンのリン酸との反発がありシン配座もとることができる。Adap自身はアンチ配座が優先すると予想され、この配座でシン配座の8-oxo-dGと多点水素結合の効果的な形成を期待した[化7]。一方、アンチ配座のdGがAdapと錯体形成するためには、不安定なシン配座への変換が必要となる。さらにシン配座dGとAdapの錯体ではこれまで考察したように、dGの7位窒素原子とAdapの1位窒素原子との電子反発による不安定化が生じる。このようにAdapはDNA中の8-oxo-dGとは有利な相互作用が予想されるのに対して、dGとは不利な要因が多く予想され、DNA中における効果的な識別が達成されるものと本発明者らは期待した。

【0023】
【化7】
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【0024】
【化8】
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本発明の化合物の製造方法:
本発明の式(I)の化合物は、次のようにして製造することができる。

【0025】
Adap及びそのDNA合成前駆体の合成経路を下記のScheme 1にまとめた。まず、5-bromouracilをHMDS (1,1,1,3,3,3-Hexamethyldisilazane)中で加熱還流したあと、HMDSを留去し、残渣をCH3CNに溶解しヨウ化メチルと反応させ、1-methyl-5-bromouracil (1)を得ることができる。これに2-nitro resorcinolを還元して得られる2,6-dihydroxyanilineと1をPPh3及びCCl4を用いる光延縮合条件にてカップリングさせ、2を得ることができる。引き続きN-Fmoc-2-aminoethanolと2をPPh3とDIADを用いる光延縮合条件で、3が得られる。3をアンモニア-メタノール溶液中室温で反応させ閉環及びFmoc基が脱保護された4を得ることができる。4と2’O-,5’O-diTBDMS-6-chloroadenosineを1-propanol中DIPEA共存下で過熱還流することによってプリン環で芳香族置換反応がおこり、TMDMS保護された目的化合物Adap(5)を得ることができる。TBDMS保護Adap(5)は有機溶媒中での分子認識の評価に用いた(実施例参照)。

【0026】
引き続き、5のTBDMS保護基をTBAFで脱保護し、6を得、ピリジン中でDMTrClと反応させ、5’-水酸基の保護、2-Cyanoethyl-N,N'-diisopropylchlorophosphorodiamiditeとの反応により、DNA合成前駆体であるβ‐ホスホロアミダイト体(7)を得ることができる。7のCH3CN溶液を固相DNA合成装置を用いてODN(oliogodeoxynucleotide)に組み入れた。このようにして合成したODNをDNA中の8-oxo-dG認識能の評価に用いた(実施例参照)。

【0027】
【化9】
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本発明の化合物の使用方法:
式(I)で表わされるオリゴデオキシヌクレオチド(Adap含有ODN)は、
次のような機能を有する。
(1)Adapに対応する位置に8-oxo-dGを有する相補鎖と二本鎖を形成し、安定化する(融解温度Tmの上昇)。
(2)DNA中のdGと8-oxo-dGとを識別できる。
(3)2本鎖形成の際に、蛍光標識を消光する。

【0028】
このような機能に基づき、本発明のAdap含有ODN は、核酸中の8-oxo-dGの検出のために用いうる。

【0029】
Adap含有ODNは、多点型水素結合により8-oxodGを認識し、さらには特異的蛍光消光作用による検出が可能な人工核酸として用いることができる(Y. Taniguchi, R. Kawaguchi, S. Sasaki, J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 7272-7275)のみならず、標的配列を検出した際に、蛍光を増強するように用いることもできる(Y. Taniguchi, Y. Koga, K. Fukabori, R. Kawaguchi, S. Sasaki, Bioorg. Med. Chem. Lett. in press, Available online 4 November 2011)。より詳細には、蛍光物質又はクエンチャー物質の一方でラベルされた、Adap含有ODN(「第1デオキシオリゴヌクレオチド」ということもある。)、及び蛍光物質又はクエンチャー物質の他方でラベルされ、塩基配列Aに相補的な塩基配列Bからなるが、Adapヌクレオシドアナログに相補する位置に天然のヌクレオチドを含有する、第2オリゴデオキシヌクレオチドを少なくとも備える、二本鎖プローブ(duplex prove)として用いることもできる。この概念を示した図を、以下に示す。

【0030】
【化10】
JP2012077800A1_000012t.gif
本発明で「蛍光物質」というときは、特に記載した場合を除き、蛍光を発することのできる物質をいう。

【0031】
本発明で「クエンチャー物質」というときは、特に記載した場合を除き、励起エネルギー吸収剤であって、近くの蛍光物質の蛍光を抑制する機能を有する物質をいう。

【0032】
本発明の特定の態様においては、蛍光物質とクエンチャー物質とが組み合わせて使用される。この組み合わせは、目的の効果を発揮し得る限り特に制限はないが、リアルタイムPCR等で用いられている蛍光物質とクエンチャー物質との組み合わせを参考に、選択することができる。このような例としては、FAM及びIBFQ、FAM及びTAMRA、TET及びIBFQ、HEX及びIBFQ、Cy5及びIBFQ、FAM及びBHQ1又は2、TET及びBHQ1又は2、HEX及びBHQ1又は2、MAX NHSエステル及びIBFQ、MAX NHSエステル及びBHQ1又は2、Cy3及びIBRQ、Cy3及びBHQ2、TYE563及びIBRQ、TYE563及びBHQ2、TEX615及びIBRQ、TEX615及びBHQ2、Cy5及びIBRQ、Cy5及びBHQ2、TYE665及びIBRQ、TYE665及びBHQ2、FAM及びTAMRA NHSエステル、JOE NHSエステル及びIBFQ、JOE NHSエステル及びBHQ1又は2、TAMRA NHSエステル及びIBRQ、TAMRA NHSエステル及びBHQ2、ROX NHSエステル及びIBRQ、ROX NHSエステル及びBHQ2、Texas Red-X NHSエステル及びIBRQ、Texas Red-X NHSエステル及びBHQ2が挙げられる。

【0033】
これまで述べてきたように、生体内で生じたDNA中の8-oxo-dGは、修復酵素によってヌクレオシドとして除去されるが、修復機構を免れた一部が変異を引き起こし、ひいては疾患の原因となる異常遺伝子の発生につながるものと考えられている。本発明は、核酸中のグアニンの酸化的変異を検出するために、より詳細にはDNA中の8-oxo-dGを検出するために用いることができる。このような検出は、DNA中のグアニンの酸化変異に関連した疾患又は状態の研究のために有用である。DNAの酸化的変異、特にDNA中のグアニンの酸化変異に関連した疾患又は状態には、老化、神経変性疾患、脳老化が含まれる。このような検出の対象となるDNAは、生細胞中のDNA、又は生体由来の試料に含まれるDNAであり得る。

【0034】
本発明で「検出方法」というときは、特に記載した場合を除き、対象である8-oxo-dGの有無及び/又は存在量を評価するための方法を指す。
【実施例1】
【0035】
[メチルブロモウラシル(1)の合成]
アルゴン気流下5-ブロモウラシル(1)(11g, 58.3mmol)を1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン(HMDS, 40ml, 192.1mmol)中130℃で加熱還流した。12時間後室温に戻し、真空ポンプにて過剰のHMDSを留去後、さらにアルゴン気流下にて無水アセトニトリル(80ml)で希釈しヨウ化メチル(15ml, 240.9mmol)を加えて60℃で加熱還流を行なった。さらに12時間後室温に戻し、茶色の溶液に20%チオ硫酸ナトリウム水溶液100mlを加えてクエンチし、白濁した反応溶液を得た。アセトニトリルを減圧留去し、残った水層を酢酸エチル300mlで10回抽出、芒硝乾燥、濃縮し白色固体を得た。EtOH中で再結晶により精製し、8.11g (39.5mmol, 67.8%, white crystal)の目的物を得た。
【実施例1】
【0036】
【数1】
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[化合物2の合成]
メチルブロモウラシル(1.91g, 9.32mmol)及びトリフェニルホスフィン(3.67g, 13.98mmol)を無水アセトニトリル 50mlで二回、無水ジクロロメタン50mlで一回共沸し、アルゴン気流下にて無水ジクロロメタン-四塩化炭素(1:1)混合溶媒70mlに懸濁し70℃で加熱還流した。4時間後、黄色の反応液を室温に戻し、2-アミノレゾルシノール(1.4g, 11.1mmol)及びジアザビシクロウンデセン(2.53ml, 20.5mmol)を加え、さらに室温にて撹拌した。24時間後、黒色の反応液に5%クエン酸水溶液10ml及びメタノール20mlを加えて激しく撹拌し、生じた沈殿物を吸引ろ過により採取し、黄色固体の目的物 (940mg 32.3%)を得た。さらにろ液を濃縮して得られた残渣をシリカゲル吸着カラムクロマトグラフィー(関東60N 200ml, クロロホルム:メタノール=80:1)にて目的物(381.6mg 13.1%)を得た。
【実施例1】
【0037】
【数2】
JP2012077800A1_000014t.gif
[化合物3の合成]
化合物2(304.1mg, 0.97mmol)及びFmocアミノエタノール(413.6mg, 1.46mmol)を無水アセトニトリル10mlで三回、無水ジクロロメタン10mlで一回共沸後、アルゴン気流下にて無水ジクロロメタン12mlに溶解した。トリフェニルホスフィン(432.5mg 1.65mmol)を加えて10分撹拌した後0℃氷浴にて冷却し、アゾジカルボン酸ジイソプロピル40%トルエン溶液(0.77ml, 1.46mmol)を滴下した。滴下終了後室温に戻し、12時間撹拌した。黄色の反応溶液を酢酸エチル30mlで希釈し、飽和塩化アンモニウム水溶液30mlで洗浄、芒硝乾燥し濃縮した。得られた黄色オイルをカラムクロマトグラフィー(富士シリシア NH, 100ml, クロロホルム:メタノール=100:1)にて精製し、目的物の黄色固体(538.4mg, 96%)を得た。
【実施例1】
【0038】
【数3】
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[化合物4の合成]
化合物3(538.4mg 0.932mmol)を7Mアンモニアメタノール溶液35mlに溶解し、室温で3日間撹拌した。黒色の反応液を減圧下溶媒留去し濃縮後、カラムクロマトグラフィー(富士シリシア NH, 100ml, ジクロロメタン:メタノール:トリエチルアミン=150:1:1→100:1:1→100:2:1 )にて精製し、目的物の蛍光性黄色粉末(317.7mgを得た。このものはトリエチルアミンを含んでいたがこれ以上精製せずに次の反応に用いた。一部精製し純粋黄色粉末化合物を得た。
【実施例1】
【0039】
【数4】
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[TBDMS保護Adap(5)の合成]
アルゴン気流下、2’O-,5’O-diTBDMS-6-chloroadenosine (300mg 0.600mmol)の無水1-プロパノール溶液(5ml)に化合物4 (129.7mg 0.473mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(0.123ml, 0.710mmol)を加え、100℃にて加熱還流した。12時間後室温に戻し、飽和重曹水10mlにて希釈後プロパノールを減圧下溶媒留去。残った溶液に50ml酢酸エチル及び飽和重曹水20mlを加え分液し、有機層を精製水、飽和食塩水にて洗浄、さらに芒硝乾燥し濃縮した。得られた茶色固体をカラムクロマトグラフィー(富士シリシア FL60D, 40ml, ヘキサン:ジクロロメタン:トリエチルアミン=1:2:0.03)にて精製し、蛍光性黄色粉末(154.mg, 44.3%)を得た。
【実施例1】
【0040】
【数5】
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[Adap(6)の合成]
化合物5(144.7 mg, 0.196 mmol)のTHF (2 mL)溶液に0.43 mL 1M TBAF のTHF溶液を加え、室温で40分間攪拌後、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(富士シリシア FL60D, 40ml,ジクロロメタン:メタノール:トリエチルアミン=100:1:1→20:1:0.2)にて精製し、蛍光性黄色粉末(11mg)を得た。このものはTBAを含んでいたが、次の反応にはこのまま使用した。一部を精製して純粋な化合物を得た。
【実施例1】
【0041】
【数6】
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[アミダイトDNA合成前駆体(7)の合成]
化合物6(115 mg)をdry pyridineで3回共沸して乾燥したのちpyridine (3 mL)に溶解した。この溶液にDMTrCl (132.8 mg, .392 mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。反応液をAcOEtで希釈し、飽和NaHCO3水溶液、飽和食塩水の順番に洗浄しNa2SO4乾燥、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(富士シリシア FL60D, 40ml,CHCl3:メタノール:トリエチルアミン=200:1:→100:1:1)にて精製し黄色粉末(123mg 77 %)を得た。この化合物をpyridineで2回共沸し、ジクロロメタン2 mLに溶解し、氷浴で冷却した。これにアルゴン雰囲気下、順番にDIPEA (0.159 mL, 0.912 mmol)と 2-cyanoethyl-N,N'-diisopropylchlorophosphorodiamidite (0.102 mL, 0.456 mmol)を加え、1時間反応させた。反応液をAcOEtで希釈し、飽和NaHCO3水溶液、飽和食塩水の順番に洗浄しNa2SO4乾燥、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(富士シリシア FL60D, 40ml, ヘキサン:AcOEt=11:→1:5)にて精製し黄色油状物質を得た (144.6mg 95 %)。
【実施例1】
【0042】
【数7】
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【実施例1】
【0043】
【数8】
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【実施例2】
【0044】
[Adapを組み込んだDNAの合成と精製]
Adapは下記の配列のX部分に組み込んだ。13塩基のODNはピリミジン塩基に挟まれた配列13PyXとプリン塩基に挟まれた13PuXを合成した。また、スタッキング効果を調べるための配列として末端部分に組み込んだ自己相補的配列のCG-Xを合成した。Adapのジオール体(6)の水溶液のUV吸収を測定し、dAのモル吸光係数を基準として260 nmにおけるモル吸光係数 (ε = 0.00297 (μM)-1)を得た。ODNの濃度測定にはこの値を用いた。
13PyX: 5’ CTTTCT X CTCCTT 3’ (ピリミジン鎖中にXを組み込んだODN)(配列番号:1)
13PuX: 5’ AAGGAG X AGAAAG 3’ (プリン鎖中にXを組み込んだODN)(配列番号:2)
CG-X: 5’ X-CGCGCG 3’
[有機溶媒中での蛍光による分子認識評価]
まず、CHCl3溶液中での分子認識機能を評価した。これまでの検討では、CHCl3溶液中では水素結合が強く作用し、8-oxo-dGとdGは効果的に区別できないことが示されている(前掲非特許文献3参照)。分子認識機能は、TBDMS保護AdapのCHCl3中1 μM溶液中にTBDMS保護8-oxo-dG及びdGのCHCl3溶液を滴下し、蛍光スペクトルの変化を観測することにより評価した。
【実施例2】
【0045】
図1に、TBDMS保護Adap(5)に対してTBDMS保護8-oxo-dG及びdGの滴定による蛍光スペクトルの変化を示した。8-oxo-dG体はdG体よりも消光効率が高かったが、この条件では有効な区別は観測されなかった。
【実施例2】
【0046】
[2本鎖DNA融解曲線の測定、Adapの安定化効果の検討]
自己相補的配列のCG-Xを用いて融解温度を測定した。融解温度は2-16μMのODN7CG-Xを含む緩衝液(1M NaCl, 10 mM phosphate buffer, pH=7.0)を用いて、1分あたり1℃温度を上昇させ260nmにおける吸光度の変化を観測した。各濃度での融解温度のプロットから熱力学パラメーターを求めた。融解温度は0.1 mM ODNにおける計算値として表した。
【実施例2】
【0047】
結果をTable 1にまとめた。測定方法は、文献この結果から末端部分のアデノシンは塩基対を形成しないものの融解温度を上昇させており、末端部分におけるスタッキングの効果を示している。
【実施例2】
【0048】
【表1】
JP2012077800A1_000021t.gif
同様に、末端部分にAdapを組み込んだものも同様に融解温度の上昇効果を示したが、この値はアデノシンによる上昇効果と大きな違いはなく、Adapのphenoxazine部分によるスタッキング効果はほとんど生じていないことが示された。
【実施例2】
【0049】
つぎに、13py-13pu 2本鎖ODNを用いて同様の融解温度測定を行なった。融解温度は2-12μMのODN13pyとその相補鎖を含む緩衝液(100 mM NaCl, 10 mM phosphate buffer, pH=7.0)を用いて、1分あたり1℃温度を上昇させ260nmにおける吸光度の変化を観測した。各濃度での融解温度のプロットから熱力学パラメーターを求めた。融解温度は2μM ODNにおける実測値として表した。
【実施例2】
【0050】
結果をTable 2にまとめた。ミスマッチは融解温度を低下させるがTable 2ではA-Gの組み合わせで、相補配列より約8-15℃程度の低下を示している。 Adapは対面するdA, dC, dT, dGに対してミスマッチ程度の低い融解温度を示したが、8-oxodGに対しては相補的組み合わせと同程度の高い安定性を示した。このことはAdapは2本鎖内でスタッキング効果が大きくないことを合わせて考慮すると、8-oxo-dGと期待通りに特異的な水素結合塩基対を形成しているものと考えられる。プリン鎖13PuXにAdapを組み込んだピリミジン鎖の8-oxo-dGの識別効果についてはTable 3にまとめた。13PuXはピリミジン鎖13PyY中の8-oxo-dGに対して高いTm値を示し、選択的な安定化能を持つことが示された。この結果、Adapはピリミジン鎖中あるいはプリン鎖中のいずれにおいても8-oxo-dGに対して特異的な安定化能を持つことが確認された。
【実施例2】
【0051】
【表2】
JP2012077800A1_000022t.gif
つぎに、13PyY-13PuX 2本鎖ODNを用いて同様の融解温度測定を行なった。融解温度は2-12μMのODN13pyとその相補鎖を含む緩衝液(100 mM NaCl, 10 mM phosphate buffer, pH=7.0)を用いて、1分あたり1℃温度を上昇させ260nmにおける吸光度の変化を観測した。各濃度での融解温度のプロットから熱力学パラメーターを求めた。融解温度は2μM ODNにおける実測値として表した。
【実施例2】
【0052】
結果を表3に示した。
【実施例2】
【0053】
【表3】
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[蛍光応答によるDNA内8-oxo-dGの認識能の評価]
ピリミジン鎖にAdapを組み込んだ13PyX を用いてプリン鎖13PuY中の8-oxo-dG の検出を検討した。Adapを組み込んだ13PyX, 5’ CTTTCT X CTCCTT 3’の 50 nM溶液にYの位置にdA, dC, dT, dG, 8-oxo-dGを組み込んだ13PuY, GAA AGA Y GAG GAA 5’ (配列番号:3)を添加して蛍光スペクトルの変化を測定した。13PyX 50 nM 緩衝溶液(100 mM NaCl, 10 mM sodium phosphate buffer、pH 7.0、30℃)に中に13PuY緩衝溶液を滴下した。溶液中の13PuY濃度は25 nM及び50 nMとした。
【実施例2】
【0054】
結果を図2にまとめた。13PyXのAdapの対となる部位に8-oxo-dGがある13PuYの添加では1:1の混合比で非常に効果的に蛍光の消光が観測された(図2A)。一方、Y=dG及びY=dTの13PuYの添加ではわずかではあるが、蛍光強度が増大した(図2B, C)。dAにはほとんど蛍光応答を示さなかったが(図2D)、dCに対してはわずかな消光が見られた(図2E)。この実験結果から、AdapはDNA中の8-oxo-dGを効果的かつ選択的に検出できることが確認された。
【実施例2】
【0055】
また、プリン鎖中にAdapを組み込んだ13PuX を用いてピリミジン鎖13PyY中の8-oxo-dG の検出を検討した。Adapを組み込んだ13PuX, 3’ GAA AGA X GAG GAA 5’の 50 nM溶液にYの位置にdA, dC, dT, dG, 8-oxo-dGを組み込んだ13PyY, 5’ CTT TCT Y CTC CTT 3’’を添加して蛍光スペクトルの変化を測定した。
【実施例2】
【0056】
結果を図3にまとめた。8-oxo-dGを持つ13PyYの添加では1:1の混合比で非常に効果的に蛍光の消光が観測された(図3A)。一方、Y=dG, dA, dCを含む13PuYの添加ではほとんど蛍光応答を示さなかった(図3B, D, E)。dTに対してはわずかながら蛍光が増大した (図3C)。これらの実験結果から、Adapはプリン鎖中及びピリミジン鎖中の8-oxo-dGを効果的かつ選択的に検出できることが確認された。
【実施例2】
【0057】
つぎに、長鎖DNA中の8-oxo-dGの検出が可能かどうか80merDNA基質、80PuYを用いて検討した。13PuX 100 nM 緩衝溶液(100 mM NaCl, 10 mM sodium phosphate buffer、pH 7.0、25℃)に中に80PuY緩衝溶液を滴下した。80PuYの濃度は、0, 10, 20, 50, 100, 200 nMとした。
【実施例2】
【0058】
dGに対してはわずかな蛍光の増大がみられるものの(図4B)、8-oxo-dGに対しては効果的な消光が観測され(図4A)、長鎖DNA中の8-oxo-dGも効果的に検出できることが示された。さらに、長鎖内にdGを含む同じ配列と8-oxo-dG を含む配列の2個を同時にもつDNAを基質に用いたところ、効果的な消光が見られた(図4C)。このことから、長鎖DNA中に2本鎖を形成できる可能性のある配列があっても競合することなく目的配列中の8-oxo-dGの検出が可能であることが確認された。
【実施例3】
【0059】
[二本鎖プローブに関する検討]
Adap含有オリゴヌクレオチド(ODN)として、5'末端がCy3でラベルされたODN1、及び3'末端がBHQ2でラベルされたODN7を合成した。ODN1とODN7のAdapと同じ位置にアデノシンを有するODN2とODN8を、コントロールプローブとして合成した。ODN1とODN7を含む二本鎖プローブにおいて、適切な相補対を決定するために、BHQ2ラベルしたODN3-6とCy3ラベルしたODN9-12を合成した。本実施例で合成したものは下記の通りである。
【実施例3】
【0060】
【化11】
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Adapと8oxo-dGの対を含む二本鎖のTm値は、対応する天然のdA-T塩基対の場合より高い(Tm, ℃; 47.2 vs 41.9)が、Adapとチミンの対は、天然のdA-T塩基対の場合と同程度のTm値を有した(Tm, ℃; 39.6 vs 41.9)。
【実施例3】
【0061】
次いで、100 mM NaCl, 10 mM sodium phosphate buffer中、pH 7.0、すべての組み合わせのTm値よりも低い30℃において、蛍光強度の変化を測定した。ODN1(10 nm)の562 nmにおける蛍光強度は、ODN3(50 nM)を添加することにより消失した(図5)が、8-oxo-dGを含むODN13(10nM)をこの混合物に追加すると、蛍光強度が増加した(図5A)。一方、dGを有するODN14の添加によっては、蛍光強度の増加は生じなかった(図5B)。これらの結果から、ODN3からODN13への鎖置換によって、ODN13中の8-oxo-dGが充分に識別されたことが分かった。Adap含有プローブの蛍光の増加による8-oxo-dGの選択的な検出は、異なるプローブ濃度(1~100 nM)及び反応温度(20~40 ℃)で確認された。また、本システム中の意図しない蛍光を減らすためにODN3の過剰量(250 nm)を添加することによって、DNA中の8-oxo-dGの有無に応じて、OFF-to-ON蛍光シグナルが視覚的に検出できた(図5C)。
【実施例3】
【0062】
[二本鎖プローブにおいて対となるODNに関する検討]
同様の鎖交換実験を、ODN1及び他のパートナーのプローブODN4、ODN5又はODN6の組み合わせで行い、ODN1の適切なパートナーを探検した。Adap-dC、Adap-dG及びAdap- dAは異なるTm値を示し、効果的に消光した。これらの二本鎖プローブは、ODN13とODN14と鎖交換反応に供された(図6A)。Adap-C、G又はAを含む二本鎖プローブの蛍光回復の程度は、Adap-Tを含むものよりも高かったが、ODN14(dG)による蛍光回復が見られた。これらの結果から、AdapとTとの対を含む二本鎖プローブODN1-ODN3との対を、DNA中の8-oxo-dGの検出に適したプローブとして決定した。比較のために、天然の二本鎖ODN2 -ODN3(A-T塩基対)について試験したところ、ODN13(8-oxo-dG)とODN14(dG)のいずれの添加によっても、蛍光強度は増加しなかった。
【実施例3】
【0063】
ODN7~12を用いて、本システムを検証した。適切に蛍光が回復したことにより、これらのプローブを用いた場合にもDNAの鎖交換反応が生じたことが示された(図6B)。ODN7-ODN9プローブは、標的DNA中の8-oxo-dGとdGとを区別することができた。一方、二本鎖プローブが、ODN7とODN10(Adap-C)、ODN11(Adap-G)、ODN12(Adap-A)との間で形成されたものは、ODN14(dG)の添加によっても、蛍光変化を示した。また、天然ODN8-ODN9プローブ(dA-T)はODN13とODN14とで同様の蛍光変化を示し、完全にマッチする塩基対は、この検出システムでの使用に適していないことが分かった。以上のことから、Adap-T対を有する二本鎖ODNプローブを、8-oxo-dGの検出に適したプローブとして再度決定した。興味深いことに、ODN7二本鎖プローブの蛍光回復の値は、ODN1プローブのものよりわずかに低くなった。3'-又は5'-末端に導入された疎水性の蛍光物質が、二本鎖プローブの熱力学的及び/又は動力学的安定性に影響を与える可能性がある。
【実施例3】
【0064】
このように、Adap-TマスクODNを含むFRETプローブは、DNA中の8-oxo-dGの蛍光検出に有用なツールであることが確認された。
【実施例3】
【0065】
[長鎖DNAを用いたタイムコース]
ODN1-ODN3プローブ(10 nM)、及びODN15(10 nm)又はODN16(10 nM)を使用して、80 merのDNA中の8-oxo-dGを検出する際のタイムコースを調べた。結果を図7に示す。ODN15は、8-oxo-dGを一の配列中に有し、ODN16は、dGを2つ、一の配列中に有していた。蛍光の変化は、562 nmにおいて、DNA鎖交換反応が加速される40℃でモニターした。
【実施例3】
【0066】
ODN1-ODN3プローブへODN15を添加すると、蛍光強度は急激に増加し、3分以内にプラトーに達した。一方、ODN16を追加することでは蛍光強度は変化しなかった。これらの結果により、ODN1-ODN3プローブが、このような条件下で、比較的長いDNA中の8-oxo-dG の存在を検出するのに便利なツールであることが示された。
【実施例3】
【0067】
以上示してきたように、本発明者らは、非天然Adap- T塩基対8-oxo-dGを含む、DNA中の8-oxo-dG の検出のためのOFF-to-ON型蛍光プローブを設計した。この対は、Adapの塩基認識をマスクし、標的DNA中の8-oxo-dGの存在下で効果的な鎖交換反応を生じる。その結果、Adap-Tプローブは、効率的に蛍光を発し、DNA中の8-oxo-dGとdGとの完全な識別が達成される。このシステムは、様々な核酸中の8-oxo-dG検出のために、有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図7】
4
【図5】
5
【図6】
6