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明細書 :生体活性アルミナの製造方法、アパタイト-アルミナ複合材料の製造方法、および生体活性アルミナ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-037537 (P2015-037537A)
公開日 平成27年2月26日(2015.2.26)
発明の名称または考案の名称 生体活性アルミナの製造方法、アパタイト-アルミナ複合材料の製造方法、および生体活性アルミナ
国際特許分類 A61L  27/00        (2006.01)
A61K   6/04        (2006.01)
FI A61L 27/00 K
A61K 6/04
請求項の数または発明の数 14
出願形態 OL
全頁数 26
出願番号 特願2014-145534 (P2014-145534)
出願日 平成26年7月16日(2014.7.16)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 平成26年 5月 9日 第13回松本ボーンフォーラムにおいて発表
優先権出願番号 2013148825
優先日 平成25年7月17日(2013.7.17)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】樽田 誠一
【氏名】齋藤 直人
【氏名】薄井 雄企
【氏名】青木 薫
【氏名】植田 直樹
【氏名】福井 亮太
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100090170、【弁理士】、【氏名又は名称】横沢 志郎
【識別番号】100142619、【弁理士】、【氏名又は名称】河合 徹
【識別番号】100153316、【弁理士】、【氏名又は名称】河口 伸子
審査請求 未請求
テーマコード 4C081
4C089
Fターム 4C081AB02
4C081AB03
4C081AB04
4C081AB05
4C081AB06
4C081BA12
4C081BA13
4C081BB04
4C081BB08
4C081CF032
4C081CF151
4C081CF162
4C081DC02
4C081DC03
4C081DC06
4C081EA02
4C081EA06
4C089AA06
4C089BA04
4C089BA16
4C089CA04
4C089CA06
要約 【課題】アルミナを主成分とする基材の表面にアパタイトが強固に形成しやすいように改質した生体活性アルミナの製造方法、アパタイト-アルミナ複合材料の製造方法、および生体活性アルミナを提供すること。
【解決手段】生体活性を備えた生体活性アルミナを製造するにあたって、基材形成工程ST1において、アルミナを主成分とする所定形状の基材を形成した後、研磨工程ST2において、基材の表面を研磨して基材の表面を粗面にする。次に、リン導入工程ST3では、加熱したリン酸溶液に基材を接触させて基材の表面にリンを導入する。リン導入工程ST3の後、基材とカルシウムイオン含有溶液とを接触させて基材の表面にカルシウムを導入してもよい。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
アルミナを主成分とする所定形状の基材を形成する基材形成工程と、
加熱したリン酸溶液に前記基材を接触させて当該基材の表面にリンを導入するリン導入工程と、
を有することを特徴とする生体活性アルミナの製造方法。
【請求項2】
前記リン導入工程の後、
カルシウムイオン含有溶液に前記基材を接触させて当該基材の表面にカルシウムを導入するカルシウム導入工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の生体活性アルミナの製造方法。
【請求項3】
前記基材形成工程の後、前記リン導入工程の前に、前記基材の表面を研磨して当該基材の表面を粗面にする研磨工程を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の生体活性アルミナの製造方法。
【請求項4】
前記基材では、前記アルミナ中にカーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブが含まれていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の生体活性アルミナの製造方法。
【請求項5】
前記基材の表面にカルシウムイオンおよびリン酸水素イオンを含有する処理液を接触させて前記基材の表面の少なくとも一部にアパタイトを形成するアパタイト形成工程を行うことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の生体活性アルミナの製造方法。
【請求項6】
アルミナを主成分とする所定形状の基材を形成する基材形成工程と、
加熱したリン酸溶液に前記基材を接触させて当該基材の表面にリンを導入するリン導入工程と、
前記基材の表面にカルシウムイオンおよびリン酸水素イオンを含有する処理液を接触させて前記基材の表面の少なくとも一部にアパタイトを形成するアパタイト形成工程と、
を有することを特徴とするアパタイト-アルミナ複合材料の製造方法。
【請求項7】
前記リン導入工程の後、前記アパタイト形成工程の前に、
カルシウムイオン含有溶液に前記基材を接触させて当該基材の表面にカルシウムを導入するカルシウム導入工程を行うことを特徴とする請求項6に記載のアパタイト-アルミナ複合材料の製造方法。
【請求項8】
前記基材形成工程の後、前記リン導入工程の前に、前記基材の表面を研磨して当該基材の表面を粗面にする研磨工程を行うことを特徴とする請求項6または7に記載のアパタイト-アルミナ複合材料の製造方法。
【請求項9】
前記基材では、前記アルミナ中にカーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブが含まれていることを特徴とする請求項6乃至8の何れか一項に記載のアパタイト-アルミナ複合材料の製造方法。
【請求項10】
アルミナを主成分とする所定形状の基材の表面にリンが導入されていることを特徴とする生体活性アルミナ。
【請求項11】
前記基材の表面は、粗面に形成されていることを特徴とする請求項10に記載の生体活性アルミナ。
【請求項12】
前記基材の表面にカルシウムが導入されていることを特徴とする請求項10または11に記載の生体活性アルミナ。
【請求項13】
前記基材では、前記アルミナ中にカーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブが含まれていることを特徴とする請求項10乃至12の何れか一項に記載の生体活性アルミナ。
【請求項14】
前記基材の表面の少なくとも一部にアパタイトが形成されていることを特徴とする請求項10乃至13の何れか一項に記載の生体活性アルミナ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミナを主成分とする基材の表面をアパタイトが形成しやすいように改質した生体活性アルミナの製造方法、アパタイト-アルミナ複合材料の製造方法、および生体活性アルミナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミナ(Al2O3)は、強度、耐摩耗性、耐熱性、耐食性、熱伝導性等の面で優れていることから、各種分野で使用されている。また、アルミナは、生体親和性を有することから、人工関節の骨頭部分、人工骨、歯科材料等といった生体材料としても使用されている。生体材料とは、怪我や病気などにより本来の機能を果たさなくなった生体や、機能が低下した生体を補助または修復することを目的とし、生体内に用いられる人工材料のことである。
【0003】
しかしながら、アルミナは、高い生体親和性を示すものの、生体不活性材料として分類されており、骨に対する結合性を示さない。このため、アルミナ製の生体材料は、生体内で骨との結合部分に緩み等の不具合が生じてしまう。骨と化学結合する生体活性を示す材料としてハイドロキシアパタイトがあるが、ハイドロキシアパタイトは、アルミナに比べ強度が非常に低いため、大きな荷重がかかる骨の代替材料として使えない。従って、アルミナに生体活性を付与すれば、より優れた生体材料として応用範囲が広がる。
【0004】
アルミナ等のセラミックスに生体活性を付与する技術としては、ジルコニア-アルミナ複合体をH3PO4、H2SO4、HClまたはNaOH等の水溶液に浸漬することが提案されている。かかる化学処理を行ったジルコニア-アルミナ複合体を擬似体液に浸漬すると、ジルコニア粒子上にハイドロキシアパタイトが析出することが確認されている(非特許文献1、2)。従って、ジルコニア-アルミナ複合体に上記の化学処理を行えば、ジルコニア-アルミナ複合体に生体活性を付与することができるといえる。
【0005】
また、バテライト(炭酸カルシウム)粒子をエタノール中に分散させた液にアルミナを浸漬することによってアルミナの表面にバテライト粒子をコーティングすることが提案されている。かかるコーティング処理を行ったアルミナを擬似体液に浸漬すると、アルミナ上にハイドロキシアパタイトが析出することが確認されている(非特許文献3)。従って、アルミナにバテライト粒子をコーティングすれば、アルミナに生体活性を付与することができるといえる。
【0006】
また、Caイオン/リン酸イオンを含む溶液中に酸化チタンやアルミナ等の基材を浸漬し、基材の表面でカルシウムフォスフェイトを沈殿させることで、生体活性物質のコーティングを行う技術が提案されている(特許文献1、非特許文献4)。なお、非特許文献4には、かかる技術により形成されたコーティング層は、剥がれやすいという欠点を有しているが、熱処理を行うことにより、剥がれやすさが改善されるとともに、熱処理によってリン酸カルシウムがハイドロキシアパタイトに転移すると記載されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2006-151729号公報
【0008】

【非特許文献1】Masaki Uchida,Hyun-Min Kim,Tadashi Kokubo,Masahiro Nawa,Taiyo Asano,Kenji Tanaka,Takashi Nakamura,Journal of Biomedical Materials Research,Vol.60[2],277-282 (2002).
【非特許文献2】M.G.Faga,A.Vallee,A.Bellosi,M.Mazzocchi,N.N.Thinh,G.Martra,S.Coluccia,Journal of the European Ceramic Society,32,2113-2120 (2012).
【非特許文献3】Akiko Obata,Daiki Hasegawa,Jin Nakamura,Julian R.Jones,Toshihiro Kasuga,Materials Science and Engineering c,32,1976-1981(2012).
【非特許文献4】Irena Pribsic,Sabina Beranic Klopcic,Tomaz Kosmac,Journal of the American Ceramic Society,93 [1],288-294 (2010).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1、2に記載の技術では、ジルコニア-アルミナ複合体のジルコニア粒子上にハイドロキシアパタイトが析出することから、ジルコニアに生体活性を付与できたといえても、アルミナに生体活性を付与できたとはいえない。ここで、ジルコニアは、液体中での転移に起因する劣化が発生するため、アルミナと違って、生体材料等としての要求に対して懸念がでている。
【0010】
一方、特許文献1や非特許文献3、4に記載の技術では、基材の表面にコーティングしたバテライト粒子やカルシウムフォスフェイトのコーティング層は、生体材料等として用いるにはアルミナとの結合力が弱いという問題がある。
【0011】
そこで、本発明の課題は、アルミナを主成分とする基材の表面にアパタイトが強固に形成しやすいように改質した生体活性アルミナの製造方法、アパタイト-アルミナ複合材料の製造方法、および生体活性アルミナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る生体活性アルミナの製造方法では、アルミナを主成分とする所定形状の基材を形成する基材形成工程と、加熱したリン酸溶液に前記基材を接触させて当該基材の表面にリンを導入するリン導入工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る生体活性アルミナの製造方法では、基材がアルミナであるため、高い強度を有する。従って、人工関節の骨頭部分、人工骨および歯科材料等といった生体材料として用いることができる。また、本発明に係る生体活性アルミナでは、リン導入工程によって、基材を構成するアルミナの表面にリンが導入されているので、生体活性アルミナが生体内で体液と接触すると、アルミナ表面のリンがアパタイト生成の核となり、アパタイトが成長する。このため、生体材料(生体活性アルミナ)と骨とが強固に結合する。従って、生体内において生体材料(生体活性アルミナ)に緩み等の不具合が発生しにくい。また、アパタイト生成の核は、アルミナの表面に導入されたリンを用いて生成され、かかるリンは、沈殿により生成されたリン酸カルシウムより、アルミナとの結合力が強い。従って、本発明によれば、アパタイトがアルミナから剥離しにくい。
【0014】
本発明において、前記リン導入工程の後、カルシウムイオン含有溶液に前記基材を接触させて当該基材の表面にカルシウムを導入するカルシウム導入工程を行うことが好ましい。かかる構成によれば、アルミナの表面から供給されるカルシウムを用いて、アパタイトがスムーズに生成される。それ故、生体内において生体材料(生体活性アルミナ)と骨とが速やかに結合しやすい。
【0015】
本発明において、前記基材形成工程の後、前記リン導入工程の前に、前記基材の表面を
研磨して当該基材の表面を粗面とする研磨工程を行うことが好ましい。かかる構成によれば、基材の表面が粗面になることで、アパタイトが生成されやすい。
【0016】
本発明において、前記基材では、前記アルミナ中にカーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブが含まれていることが好ましい。かかる構成によれば、基材に靱性を付与することができるので、生体活性アルミナの脆さを解消することができる。また、アルミナだけでなく、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブも起点にしてアパタイトが生成する。
【0017】
本発明において、前記基材の表面にカルシウムイオンおよびリン酸水素イオンを含有する処理液を接触させて前記基材の表面の少なくとも一部にアパタイトを形成するアパタイト形成工程を行うことが好ましい。
【0018】
また、本発明に係るアパタイト-アルミナ複合材料の製造方法では、アルミナを主成分とする所定形状の基材を形成する基材形成工程と、加熱したリン酸溶液に前記基材を接触させて当該基材の表面にリンを導入するリン導入工程と、前記基材の表面にカルシウムイオンおよびリン酸水素イオンを含有する処理液を接触させて前記基材の表面の少なくとも一部にアパタイトを形成するアパタイト形成工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
本発明に係るアパタイト-アルミナ複合材料では、基材がアルミナであるため、高い強度を有する。従って、人工関節の骨頭部分、人工骨および歯科材料等といった生体材料として用いることができる。また、本発明に係るアパタイト-アルミナ複合材料では、基材を構成するアルミナの表面にリンが導入されているので、アパタイト-アルミナ複合材料をカルシウムイオンおよびリン酸水素イオンを含有する処理液に接触させると、アルミナの表面のリンが、アパタイト生成の核となり、アパタイトが成長する。また、アパタイト生成の核は、アルミナの表面に導入されたリンを用いて生成され、かかるリンは、沈殿により生成されたリン酸カルシウムより、アルミナとの結合力が強い。従って、本発明によれば、アパタイトがアルミナから剥離しにくい。
【0020】
本発明において、前記リン導入工程の後、カルシウムイオン含有溶液に前記基材を接触させて当該基材の表面にカルシウムを導入するカルシウム導入工程を行うことが好ましい。かかる構成によれば、アルミナの表面から供給されるカルシウムを用いて、アパタイトがスムーズに生成される。
【0021】
本発明において、前記基材形成工程の後、前記リン導入工程の前に、前記基材の表面を研磨して当該基材の表面を粗面にする研磨工程を行うことが好ましい。かかる構成によれば、基材の表面が粗面になることで、アパタイトが生成されやすい。
【0022】
本発明において、前記基材では、前記アルミナ中にカーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブが含まれていることが好ましい。かかる構成によれば、基材に靱性を付与することができるので、アパタイト-アルミナ複合材料の脆さを解消することができる。また、アルミナだけでなく、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブも起点にしてアパタイトが生成する。
【0023】
また、本発明に係る生体活性アルミナは、アルミナを主成分とする所定形状の基材の表面にリンが導入されていることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る生体活性アルミナでは、基材がアルミナであるため、高い強度を有する。従って、人工関節の骨頭部分、人工骨および歯科材料等といった生体材料として用いることができる。また、本発明に係る生体活性アルミナでは、基材を構成するアルミナの表面
にリンが導入されているので、生体活性アルミナが生体内で体液と接触すると、アルミナ表面のリンが、アパタイト生成の核となり、アパタイトが成長する。このため、生体材料(生体活性アルミナ)と骨とが強固に結合しやすい。従って、生体内において生体材料(生体活性アルミナ)と骨との間に緩み等の不具合が発生しにくい。また、アパタイト生成の核は、アルミナの表面に導入されたリンがある部分で生成され、かかるリンは、沈殿により生成されたリン酸カルシウムより、アルミナとの結合力が強い。従って、本発明によれば、アパタイトがアルミナから剥離しにくい。
【0025】
本発明において、前記基材の表面を粗面とした構成を採用することができる。かかる構成によれば、アパタイトが生成されやすい。
【0026】
本発明において、前記基材の表面にカルシウムが導入されていることが好ましい。かかる構成によれば、アルミナの表面から供給されるカルシウムを用いて、アパタイトがスムーズに生成される。それ故、生体内において生体材料(生体活性アルミナ)と骨とが強固に結合しやすい。
【0027】
本発明において、前記基材では、前記アルミナ中にカーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブが含まれていることが好ましい。かかる構成によれば、基材に靱性を付与することができるので、生体活性アルミナの脆さを解消することができる。また、アルミナだけでなく、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブも起点にしてアパタイトが生成する。
【0028】
本発明において、前記基材の表面の少なくとも一部にアパタイトが形成されている構成を採用してもよい。生体活性アルミナを生体材料として生体内に入れる際、基材の表面の少なくとも一部にアパタイトが形成されている構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る生体活性アルミナおよびアパタイト-アルミナ複合材料は、基材がアルミナであるため、高い強度を有する。従って、人工関節の骨頭部分、人工骨および歯科材料等といった生体材料として用いることができる。また、本発明においては、基材を構成するアルミナの表面にリンが導入されているので、カルシウムイオンおよびリン酸水素イオンを含有する液に接触すると、アルミナ表面のリン酸が、アパタイト生成の核となり、アパタイトが成長する。ここで、リンは、沈殿により生成されたリン酸カルシウムより、アルミナとの結合力が強い。従って、本発明によれば、アパタイトがアルミナから剥離しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態1に係る生体活性アルミナの製造方法を示す工程図である。
【図2】研磨工程において125μmの粗さのダイヤモンド研磨板で研磨した後のアルミナ焼結体を電子顕微鏡で観察した像の説明図である。
【図3】研磨工程において125μmの粗さのダイヤモンド研磨板で研磨した後、温度が140℃のリン酸溶液を用いてリン導入工程を行った後のアルミナ焼結体を電子顕微鏡で観察した像の説明図である。
【図4】リン導入工程を行う前のアルミナ焼結体のXPSスペクトルを示す説明図である。
【図5】研磨工程において125μmのダイヤモンド研磨板で研磨した後、140℃で1hのリン導入工程を行ったアルミナ焼結体のXPSスペクトルを示す説明図である。
【図6】研磨工程において125μmのダイヤモンド研磨板で研磨した後、140℃で5hのリン導入工程を行ったアルミナ焼結体のXPSスペクトルを示す説明図である。
【図7】研磨工程において125μmのダイヤモンド研磨板で研磨した後、140℃で1hのリン導入工程を行い、その後、1.5SBF中に7日間浸漬したアルミナ焼結体の表面のSEM像を示す説明図である。
【図8】研磨工程において125μmのダイヤモンド研磨板で研磨した後、140℃で5hのリン導入工程を行い、その後、1.5SBF中に7日間浸漬したアルミナ焼結体表面のSEM像を示す説明図である。
【図9】研磨工程において125μmのダイヤモンド研磨板で研磨した後、140℃で5hのリン導入工程を行い、その後、1.5SBF中に7日間浸漬したアルミナ焼結体表面の断面を示す説明図である。
【図10】研磨工程において125μmのダイヤモンド研磨板で研磨した後、140℃で1h、3h、5hのリン導入工程を行い、その後、1.5SBF中に7日間、浸漬したアルミナ焼結体表面のXRDパターンを示す説明図である。
【図11】研磨工程において125μmのダイヤモンド研磨板で研磨した後、140℃で1hのリン導入工程を行い、その後、1.5SBF中に7日間、浸漬したアルミナ焼結体表面に析出した粒子のFT-IRスペクトルを示す説明図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係る生体活性アルミナの製造方法を示す工程図である。
【図13】140℃で1hのリン導入工程を行った後、カルシウム導入工程において1mol/LのCaCl2水溶液に24h浸漬し、その後、1.5SBF中に7日間浸漬したアルミナ焼結体の表面を電子顕微鏡で観察して得られた像の説明図である。
【図14】140℃で5hのリン導入工程を行った後、カルシウム導入工程において1mol/LのCaCl2水溶液に24h浸漬し、その後、1.5SBF中に7日間浸漬したアルミナ焼結体の表面を電子顕微鏡で観察して得られた像の説明図である。
【図15】140℃で1hのリン導入工程を行った後、カルシウム導入工程において1mol/LのCaCl2水溶液に24h浸漬し、その後、1.5SBF中に7日間浸漬したアルミナ焼結体表面のXRDパターンを示す説明図である。
【図16】140℃で1hのリン導入工程を行った後、カルシウム導入工程において1mol/LのCaCl2水溶液に24h浸漬し、その後、1.5SBF中に7日間浸漬した際にアルミナ焼結体表面に析出した粒子のFT-IRスペクトルを示す説明図である。
【図17】カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブをアルミナに添加した複合焼結体の破断面を電子顕微鏡で観察した結果を示す説明図である。
【図18】繊維径が100nmのカーボンナノファイバーを用いた複合焼結体(基材)にリン導入工程を行った後、1.5SBF中に7日間、浸漬したときの表面を電子顕微鏡で観察した結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を説明する。

【0032】
[実施の形態1]
(概要)
図1は、本発明の実施の形態1に係る生体活性アルミナの製造方法を示す工程図である。

【0033】
図1に示すように、本形態の生体活性アルミナの製造方法では、まず、基材形成工程ST1において、アルミナを主成分とする所定形状の基材を形成する。本形態において、生体活性アルミナは、人工関節の骨頭部分、人工骨および歯科材料等といった生体材料として利用される。このため、基体は、骨頭部分、人工骨および歯科材料等の形状に形成される。

【0034】
次に、リン導入工程ST3では、加熱したリン酸溶液に基材を接触させて基材の表面に
リンを導入する。

【0035】
本形態では、基材形成工程ST1の後、リン導入工程ST3の前に、基材の表面を研磨して基材の表面を粗面とする研磨工程ST2を行う。本発明における「研磨」とは、研磨板等を用いた工程を意味し、研磨前より研磨後において表面粗さが小となっている場合、および表面粗さが大となっている場合のいずれをも含む意味である。

【0036】
かかる製造方法によれば、アルミナを主成分とする所定形状の基材の表面にリンが導入された生体活性アルミナが得られる。すなわち、本形態のアルミナが生体内で体液と接触すると、アルミナ表面のリンが、アパタイト生成の核となり、アパタイトが成長する。従って、本形態のアルミナを生体材料として用いれば、生体材料と骨とが強固に結合する。それ故、生体内において生体材料(生体活性アルミナ)に緩み等の不具合が発生しにくい。また、アパタイトの核は、アルミナの表面に導入されたリンを用いて生成され、かかるリンは、沈殿により生成されたリン酸カルシウムより、アルミナとの結合力が強い。従って、本形態によれば、生体活性を付与するために導入したリンや、基材表面のリンから生成したアパタイトがアルミナから剥離しにくい。それ故、本形態の生体活性アルミナは生体材料に適している。また、基材形成工程ST1の後、リン導入工程ST3の前に研磨工程ST2を行うため、基材の表面が粗面となり、アパタイトが生成されやすい。

【0037】
(基材形成工程ST1の具体例)
基材形成工程ST1においては、高純度アルミナ粉体30gを高純度アルミナビーズ(直径0.5mm)およびアルミナ製ポットを用い、イソプロパノール150 mlを分散媒として24hボールミルにより処理した。その後、ホットスターラー上で乾燥させ、100メッシュのふるいに通すことで整粒した。

【0038】
本形態では、生体活性アルミナを各種形状の生体材料として用いるが、アルミナの生体活性等を評価するにあたり、得られた粉体から0.3g秤取し、ペレット状に一軸加圧成形し、その後、200MPaで静水圧成形(CIP)した。次に、得られた成形体を大気中1300℃で2h焼成してアルミナ焼結体(基材)とした。かかるアルミナ焼結体の密度をアルキメデス法により測定したところ、アルミナ焼結体の相対密度はいずれも98%以上であった。また、アルミナの粒径は1~2μm程度であった。なお、アルミナ焼結体の直径は7.8mmである。

【0039】
(研磨工程ST2の具体例)
研磨工程ST2では、アルミナ焼結体を125μm、45μm、1μmの粗さのダイヤモンド研磨板やダイヤモンドスラリーで研磨した。このとき、アルミナ焼結体の上下面を研磨し、厚さを1.55mmに調整した。

【0040】
図2は、研磨工程ST2において125μmの粗さのダイヤモンド研磨板で研磨した後のアルミナ焼結体を電子顕微鏡で観察した像の説明図である。

【0041】
(リン導入工程ST3の具体例)
リン導入工程ST3では、研磨したアルミナ焼結体(基材)と85%リン酸溶液100mlとを三ツ口フラスコに入れた後、リービッヒ冷却器を取り付け、マントルヒーターと温度調節器を用いて還流した。この際、温度を100℃、120℃、140℃または150℃として、各温度での保持時間を1h、3h、5hとした。そして、還流後にアルミナ焼結体を蒸留水で洗浄し、60℃で乾燥した。

【0042】
なお、各試料とリン導入処理条件との組み合わせは、例えば、以下の通りである。
125μm研磨(粗研磨)・・ダイヤモンド研磨板使用
140℃:1h、3h、5h
120℃:1h、3h、5h
100℃:1h、3h、5h
45μm研磨・・ダイヤモンド研磨板使用
150℃:1h、5h
140℃:1h、3h、5h
1μm研磨(鏡面研磨)・・ダイヤモンドスラリー使用
150℃:1h
140℃:1h、3h、5h

【0043】
(処理後のアルミナの表面状態評価)
研磨工程ST2およびリン導入工程ST3を行ったアルミナ焼結体を試料台に導電性カーボン両面テープで固定した後、白金を蒸着し、電界放射型電子顕微鏡で観察した。

【0044】
また、研磨工程ST2において125μmのダイヤモンド研磨板で研磨したアルミナ焼結体、および140℃で1h、3h、5hのリン導入工程を行ったアルミナ焼結体の表面粗さを超深度形状測定顕微鏡で測定した。

【0045】
図3は、研磨工程ST2において125μmの粗さのダイヤモンド研磨板で研磨した後、温度が140℃のリン酸溶液を用いてリン導入工程ST3を行った後のアルミナ焼結体を電子顕微鏡で観察した像の説明図であり、図3(a)、(b)、(c)は各々、処理時間が1h、3h、5hのときの観察結果である。

【0046】
125μmのダイヤモンド研磨板で研磨したアルミナ焼結体について、リン導入工程ST3を行う前のSEM像と、リン導入工程ST3を行った後のSEM像とを比べると、研磨工程ST2を行った後に見られた研磨傷がリン導入工程ST3を行うと無くなり、表面が均一に荒れた状態になったことが観察された。これは、リン導入工程ST3において、アルミナ焼結体の表面が侵食されたためと考えられる。また、リン導入工程ST3を140℃で行ったアルミナ焼結体の表面と、リン導入工程ST3を120℃で行ったアルミナ焼結体の表面とでは、見かけ上、大きな違いはなかった。

【0047】
研磨工程ST2において、125μmのダイヤモンド研磨板で研磨したアルミナ焼結体の表面と、かかるアルミナ焼結体にリン導入工程ST3を行った後の表面のRa(算術平均粗さ)値を測定したところ、リン導入工程ST3を140℃で1h行ったアルミナ焼結体ではRa値が0.559から0.347~0.393に変化し、リン導入工程ST3によって、Ra値が平均で-0.189μm変化した。また、リン導入工程ST3を140℃で3h行ったアルミナ焼結体ではRa値が0.405から0.276~0.217に変化し、リン導入工程ST3によって、Ra値が平均で-0.159μm変化した。また、リン導入工程ST3を140℃で5h行ったアルミナ焼結体ではRa値が0.451から0.206~0.303に変化し、リン導入工程ST3によって、Ra値が平均で-0.197μm変化した。また、研磨工程ST2において、1μmダイヤモンドスラリーで研磨したアルミナ焼結体では、表面が鏡面になるが、リン導入工程ST3によってアルミナ焼結体表面が侵食された。

【0048】
(リン導入工程ST3後の基材表面の元素分析)
リン導入工程ST3を行った後のアルミナ焼結体(基材)を銅板に導電性カーボン両面テープで固定し、X線光電子分光装置を用いてリンの分析を行なった。

【0049】
図4は、リン導入工程ST3を行う前のアルミナ焼結体のXPSスペクトルを示す説明図である。図5は、研磨工程ST2において125μmのダイヤモンド研磨板で研磨した後、140℃で1hのリン導入工程ST3を行ったアルミナ焼結体のXPSスペクトルを示す説明図である。図6は、研磨工程ST2において125μmのダイヤモンド研磨板で研磨した後、140℃
で5hのリン導入工程ST3を行ったアルミナ焼結体のXPSスペクトルを示す説明図である。なお、アルミナ焼結体は絶縁体のため、XPS測定においてX線を照射すると正に帯電するチャージアップが起こり、スペクトルのシフトが生じた。このため、測定されたピークはシフトを考慮し解析した。

【0050】
図4に示すXPS測定結果と、図5および図6に示すXPS測定結果とを比較すれば分かるように、リン導入工程ST3を140℃の温度で行った場合、XPSスペクトルにリンのピークが現れた。それ故、アルミナ焼結体の表面にリンが導入されたことが確認できた。

【0051】
これに対して、リン導入工程ST3を120℃以下の温度で1h、3h、5h行ったアルミナ焼結体では、XPSスペクトルにリンのピークは現れなかった。それ故、120℃以下での上記処理時間では、アルミナ焼結体の表面にほとんどリンは導入されなかったといえる。

【0052】
(生体活性の評価方法)
本形態では、上記の各工程を行ったアルミナ焼結体の生体活性を評価するため、アルミナ焼結体を擬似体液(SBF)の無機イオン濃度を1.5倍とした1.5SBF(評価用処理液)に浸漬し、アパタイトの生成を確認した。

【0053】
ここで、1.5SBF(評価用処理液)および擬似体液(SBF)は、表1に示す組成(単位=イオン濃度/mM/L)を有しており、人血漿に対応している。

【0054】
【表1】
JP2015037537A_000003t.gif

【0055】
次に、調製した1.5SBF40 mlと処理したアルミナ焼結体1個とをサンプル瓶に入れ、蓋が取れないようビニールテープを巻いた。それを38℃の温度に保ったシェイキングバス中で、シェイキングした状態を7日間保持した。その後、アルミナ焼結体を取り出し、超純水を用いて数回洗浄した。洗浄した後、60℃で乾燥した。

【0056】
(生体活性の評価結果)
1.5SBFに7日間浸漬したアルミナ焼結体を試料台に導電性カーボン両面テープで固定した後、白金を蒸着し、電界放射型電子顕微鏡で観察した。

【0057】
図7は、研磨工程ST2において125μmのダイヤモンド研磨板で研磨した後、140℃で1hのリン導入工程ST3を行い、その後、1.5SBF中に7日間浸漬したアルミナ焼結体の表面のSEM像を示す説明図であり、図7(a)、(b)は各々、低倍率での観察結果および高倍率での観察結果である。図8は、研磨工程ST2において125μmのダイヤモンド研
磨板で研磨した後、140℃で5hのリン導入工程ST3を行い、その後、1.5SBF中に7日間浸漬したアルミナ焼結体表面のSEM像を示す説明図であり、図8(a)、(b)は各々、低倍率での観察結果および高倍率での観察結果である。図9は、研磨工程ST2において125μmのダイヤモンド研磨板で研磨した後、140℃で5hのリン導入工程ST3を行い、その後、1.5SBF中に7日間浸漬したアルミナ焼結体表面の断面を示す説明図であり、図9(a)、(b)、(c)は各々、走査電子顕微鏡によって得た反射電子(Back Scattered Electron;BSE)像、倍率を高めた反射電子像、およびさらに倍率を高めた反射電子像である。

【0058】
図7、図8および図9に示す結果から分かるように、140℃で1h、5hのリン導入工程ST3を行ったアルミナ焼結体では、1.5SBF中への浸漬によって表面に球状の粒子が析出していることが確認された。また、粒子の析出はアルミナ焼結体の表面全体で見られ、析出粒子の大きさは大きいもので10μm程度であった。1hと5hの処理で析出量を比べると、若干ではあるが、1hリン酸処理したアルミナ焼結体の方が析出量は多いように観察された。なお、リン導入工程ST3の温度が120℃である場合、粒子の析出は見られなかった。

【0059】
また、研磨工程ST2において125μmのダイヤモンド研磨板で研磨した後、140℃で1h、3hおよび5hのリン導入工程ST3を行い、その後、1.5SBF中に7日間浸漬する実験を繰り返し行ったところ、析出が確認された割合は、以下に示す結果
1h・・20%
3h・・50%
5h・・100%
のとおりであり、リン導入工程ST3の時間が長い程、析出が確実に起こることが確認された。

【0060】
さらに、研磨工程ST2において1μm、45μm、125μmのダイヤモンド研磨板やダイヤモンドスラリーで研磨した後、140℃で1h、3hおよび5hのリン導入工程ST3を行い、その後、1.5SBF中に7日間浸漬する実験を繰り返し行ったところ、析出量は以下に示す結果
1μm = 45μm < 125μm
のとおりであり、表面を粗くした方が、析出が確実に起こることが確認された。

【0061】
また、リン導入工程ST3におけるリン酸溶液の温度(100℃、120℃、140℃、150℃)と析出量との関係を調査したところ、リン酸液の温度が高い程、例えば、140℃以上の場合、析出が確実に起こることが確認された。

【0062】
(析出物の同定)
1.5SBF中に浸漬したアルミナ焼結体の表面に析出した析出物の同定を行なった。かかる同定を行うにあたって、1.5SBF浸漬後に粒子が析出したアルミナ焼結体の表面を、X線回折装置(XRD)を用いて分析した。測定条件は以下の通りである。
スキャンスピード:2θ=2.00°/min
サンプリング幅:0.0200°
出力:30.0 mA、15KV
測定角度:4°~70°

【0063】
また、アルミナ焼結体表面から剥ぎ取った析出物を、フーリエ変換赤外線分光装置(FT-IR)を用いて分析した。測定条件は以下の通りである。
積算回数:40
分解能:4.0cm-1
測定範囲:450~4000cm-1

【0064】
図10は、研磨工程ST2において125μmのダイヤモンド研磨板で研磨した後、140℃で1h、3h、5hのリン導入工程ST3を行い、その後、1.5SBF中に7日間、浸漬したアルミナ焼結体のXRDパターンを示す説明図である。図10に示すように、32°付近に三角のマークを付したピークが検出され、かかるピークは、ハイドロキシアパタイトと推測されるピークである。

【0065】
図11は、研磨工程ST2において125μmのダイヤモンド研磨板で研磨した後、140℃で1hのリン導入工程ST3を行い、その後、1.5SBF中に7日間、浸漬したアルミナ焼結体のFT-IRスペクトルを示す説明図である。図11に示すように、1050cm-1付近にPO43-由来と推測されるピークが検出され、1500cm-1付近にCO32-由来と推測されるピークが検出され、3400cm-1付近にOH由来と推測されるピークが検出された。従って、アルミナ焼結体の表面に析出した粒子はハイドロキシアパタイトのPO43-の一部がCO32-に置換した骨類似アパタイトであるといえる。それ故、本形態によれば、アルミナ焼結体に生体活性を付与することができたといえる。

【0066】
(アルミナ表面からのアパタイト析出のメカニズム)
上記検討の結果より、140℃でリン導入工程ST3を行うことにより、アルミナ焼結体(基材)の表面にリンが導入されることが確認され、かかるリンは、リンあるいはリン酸基として存在している可能性が高い。また、140℃でリン導入工程ST3を行ったアルミナ焼結体(基材)は、1.5SBF中へ浸漬することによって、表面にアパタイトからなる球状粒子の析出が確認された。それ故、140℃でリン導入工程ST3を行ったアルミナ焼結体は、表面にアパタイトが形成しやすいように改質された生体活性アルミナであるといえる。すなわち、本形態の生体活性アルミナでは、リン導入工程ST3によってアルミナ焼結体の表面にリンが導入され、そのリンが骨類似アパタイト形成の核生成サイトとして働いたと考えられる。

【0067】
なお、上記評価以外にも各種実験を行ったところ、140℃で3hのリン導入工程ST3を行ったアルミナ焼結体では、アルミナ焼結体1個当たりの1.5SBFの溶液量を120mlに増加させることにより、140℃で1h、5hのリン導入工程ST3を行ったアルミナ焼結体より、多くの粒子の析出がみられた。これに対して、アルミナ焼結体1個当たりの1.5SBFの溶液量を20mlに減らすと、表面での析出はみられなくなった。

【0068】
[実施の形態2]
図12は、本発明の実施の形態2に係る生体活性アルミナの製造方法を示す工程図である。

【0069】
図12に示すように、本形態でも、実施の形態1と同様、基材形成工程ST1において、アルミナを主成分とする所定形状のアルミナ焼結体(基材)を形成する。また、リン導入工程ST3では、加熱したリン酸溶液に基材を接触させて基材の表面にリンを導入する。また、基材形成工程ST1の後、リン導入工程ST3の前に、基材の表面を研磨して基材の表面を粗面にする研磨工程ST2を行う。

【0070】
本形態では、リン導入工程ST3の後、カルシウム導入工程ST4において、カルシウムイオン含有溶液に基材を接触させて基材の表面にカルシウムを導入し、生体活性アルミナを得る。

【0071】
例えば、研磨工程ST2において125μmのダイヤモンド研磨板で研磨したアルミナ焼結体を140℃で1h、3h、5hのリン導入工程ST3を行い、その後、カルシウム導入工程ST
4では、50mmol/Lまたは1mol/LのCaCl2(塩化カルシウム)水溶液にそれぞれ24h浸漬した。そして、蒸留水で洗浄し、60℃で乾燥した。

【0072】
図13は、140℃で1hのリン導入工程ST3を行った後、カルシウム導入工程ST4において1mol/LのCaCl2水溶液に24h浸漬し、その後、1.5SBF中に7日間浸漬したアルミナ焼結体の表面を電子顕微鏡で観察して得られた像の説明図であり、図13(a)、(b)、(c)は各々、低倍率で観察した結果、中倍率で観察した結果、高倍率で観察した結果である。図14は、140℃で5hのリン導入工程ST3を行った後、カルシウム導入工程ST4において1mol/LのCaCl2水溶液に24h浸漬し、その後、1.5SBF中に7日間浸漬したアルミナ焼結体の表面を電子顕微鏡で観察して得られた像の説明図であり、図14(a)、(b)は各々、低倍率で観察した結果、高倍率で観察した結果である。

【0073】
図13から分かるように、140℃で1hのリン導入工程ST3を行った後、カルシウム導入工程ST4を行うと、アルミナ焼結体表面にはより多くの析出物がみられた。また、析出の形態はこれまでの結果と異なり、アルミナ焼結体の表面は、厚い膜状の析出物によって覆われ、膜状の析出物の上に球状の粒子が析出していた。また、図14から分かるように、140℃で5hのリン導入工程ST3を行った後、カルシウム導入工程ST4を行った場合でも、アルミナ焼結体表面にはより多くの析出物がみられた。

【0074】
図15は、140℃で1hのリン導入工程ST3を行った後、カルシウム導入工程ST4において1mol/LのCaCl2水溶液に24h浸漬し、その後、1.5SBF中に7日間浸漬したアルミナ焼結体のXRDパターンを示す説明図である。図15に示すように、32°付近の他にも、26°、49°および52°にハイドロキシアパタイトと推測されるピークが検出された。特に32°付近のピークは、図10に示す結果に比して鋭く、大きなピークであった。

【0075】
図16は、140℃で1hのリン導入工程ST3を行った後、カルシウム導入工程ST4において1mol/LのCaCl2水溶液に24h浸漬し、その後、1.5SBF中に7日間浸漬した際にアルミナ焼結体の表面に析出した粒子のFT-IRスペクトルを示す説明図である。図16に示すように、550cm-1付近および1050cm-1付近にPO43-由来と推測されるピークが検出され、900cm-1および1500cm-1付近にCO32-由来と推測されるピークが検出され、3400cm-1付近にOH由来と推測されるピークが検出された。また、図11に示す結果に比して、ピークは鋭く、図11に示すスペクトルでは検出できなかった550cm-1付近のPO43-由来のピークも検出された。

【0076】
このように、カルシウム導入工程ST4を行えば、アルミナ焼結体の表面にリンの他にCa2+が導入され、かかるCa2+が1.5SBF中に溶出することにより、1.5SBFでの過飽和度が高くなることで、粒子の析出が促進される。このため、アパタイトの核形成および成長がより促進する。

【0077】
[実施の形態3]
上記実施の形態1、2においては、高純度アルミナ粉体を加圧成形した後、焼結したアルミナ焼結体を基材として用いたが、本形態では、基材形成工程ST1において、高純度アルミナ粉体をボールミルにより処理する際、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブを添加した複合焼結体を基材として用いる。ここで、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブは、硫酸と硝酸との混合した液での酸処理等の分散処理を行った後、ボールミルに添加する。カーボンナノファイバーやカーボンナノチューブとしては、繊維径が5nm~20nmのもの、50nm~90nmのもの、100nmのものを用いることができ、繊維長は10~20μmである。

【0078】
図17は、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブをアルミナに添加した
複合焼結体の破断面を電子顕微鏡で観察した結果を示す説明図であり、図17(a)、(b)、(c)は、繊維径が50nm~90nmのカーボンナノファイバーを用いた複合焼結体を観察した結果、繊維径が100nmのカーボンナノファイバーを用いた複合焼結体を観察した結果、および繊維径が5nm~20nmのカーボンナノチューブを用いた複合焼結体を観察した結果である。

【0079】
かかる基材に対して生体活性を付与するにあたって、本形態でも、実施の形態1、2と同様、リン導入工程ST3を行う。また、基材形成工程ST1の後、リン導入工程ST3の前に、基材の表面を研磨して基材の表面を粗面にする研磨工程ST2を行うこともある。また、リン導入工程ST3の後、カルシウム導入工程ST4を行うこともある。

【0080】
その結果、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブとアルミナとの複合焼結体に生体活性を付与した生体活性アルミナを得ることができる。

【0081】
従って、本形態の生体活性アルミナを1.5SBF等、リン酸水素イオンおよびカルシウムイオンを含有する水溶液と接触させれば、図17に示すように、生体活性アルミナの表面にアパタイトが形成される。

【0082】
図18は、繊維径が100nmのカーボンナノファイバーを用いた複合焼結体(基材)にリン導入工程ST3を行った後、1.5SBF中に7日間、浸漬したときの表面を電子顕微鏡で観察した結果を示す説明図である。

【0083】
図18に示すように、本形態では、アルミナ表面およびカーボンナノファイバーを起点にアパタイトの核が形成された後、アパタイトが成長する。また、本形態では、基材がカーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブとアルミナとの複合焼結体からなるため、基材に靱性を付与することができる。

【0084】
[実施の形態4]
上記実施の形態1、2、3においては、アパタイトを形成する前のアルミナ焼結体(基材)を生体材料として用いる形態であったが、アルミナ焼結体(基材)の表面の少なくとも一部にアパタイトを形成したものを生体材料として用いてもよい。すなわち、表面にリン、あるいはリンおよびカルシウムを導入したアルミナ焼結体(基材)を1.5SBF等、リン酸水素イオンおよびカルシウムイオンを含有する水溶液と接触させるアパタイト形成工程を行い、アルミナ焼結体(基材)の表面の少なくとも一部にアパタイトを形成したものを生体材料として用いてもよい。

【0085】
[実施の形態5]
上記実施の形態1~4では、生体材料として用いる場合を中心に説明したが、生体材料以外に用いるアパタイト-アルミナ複合材料を製造するために、図1または図12に示す工程を行った後、1.5SBF等、リン酸水素イオンおよびカルシウムイオンを含有する水溶液と接触させるアパタイト形成工程を行い、基材の表面の少なくとも一部にアパタイトを形成してもよい。
図面
【図1】
0
【図12】
1
【図2】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図8】
8
【図9】
9
【図10】
10
【図11】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17